説明

ヒンジ構造

セントラルシャフト(2)と、その周囲に旋回可能に配置されたミラーハウジング(3)と、を含んでなる自動車のドアミラーユニットに使用するヒンジ構造(1)であって、前記ミラーハウジング(3)の底面(4)は、セントラルシャフト(2)の基部の支持面(5)上に支持され、さらに、ミラーハウジング(3)の突出位置に対応するセントラルシャフト(2)とミラーハウジング(3)との間の所定角度位置を協働して決定する第1(6)および第2(7)の無端面を含み、前記第1無端面(6)はミラーハウジング(3)の支持面(5)から離れた側に担持され、第2無端面(7)は軸方向へ移動可能に回転連結してセントラルシャフト(2)に接続されることを特徴とする前記ヒンジ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セントラルシャフトと、その周囲に旋回可能に配置されたミラーハウジングと、を含んでなる自動車のドアミラーユニットに使用するヒンジ構造であって、前記ミラーハウジングの底面は、セントラルシャフト基部で支持面上に支持され、さらに、ミラーハウジングの突出位置に対応する、セントラルシャフトとミラーハウジングとの間の所定角度位置を、協働して決定する第1および第2無端面を有するヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、前述のヒンジ構造は公知である。通常、セントラルシャフトは、支持面としての基板を有する。第1無端面は、ミラーハウジングの底面に位置するカムにより形成され、第2無端面は、セントラルシャフトの基板上に位置するカムにより形成される。
【0003】
通常、セントラルシャフトは、自動車の車体に基板により固定され、これにより、突出位置にあるミラーハウジングは、自動車の車体に対して実質的に横方向へ伸展する。
【0004】
ヒンジ構造により、ミラーハウジングは、突出位置から折畳位置へ後方へ回転し、ミラーハウジングの突出は少なく、車体により沿った位置で後方へ伸展する。
【0005】
典型的には、ドアミラーユニットは、ミラーハウジングの折畳位置と突出位置との間での調整を可能とする電気駆動装置を有する。
【0006】
公知のヒンジ構造では、無端面が協働してばねの作用に抗し、無端面が協働する際の電流の強さの制限に基づく遮断回路により駆動が遮断される。
【0007】
公知のヒンジ構造の問題点として、ミラーハウジングの底面およびセントラルシャフトの基部の支持面が、無端面が協働する結果として軸方向へ相互に離反することがある。特に、この現象は、駆動が遮断される際に発生する減速の結果として起こる。その結果、ミラーハウジングと支持面との間で、風切音を発生させる溝を形成することもある。さらに、ミラーハウジングの支持が、結果として不安定になることもあり、例えば、ミラーハウジングに担持されたミラーのガラスが、運転中に望ましくない振動した画像を形成することもある。また、基板のカムは比較的高い表面圧力に耐え得ることが要求され、実際には、基板は、強度上の理由により比較的高価な金属部品として設計されることになる。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述した問題点を克服する、本明細書の冒頭で述べたヒンジ構造の提供を目的とする。その目的を達成するために、本発明のヒンジ構造は、第1無端面が、ミラーハウジングの支持面から離れた側に担持され、第2無端面が軸方向へ移動可能に回転連結してセントラルシャフトに接続され、セントラルシャフト基部の支持面およびその上に支持されたミラーハウジングの底面に無端面を含まないことを特徴とする。ミラーハウジングの支持面から離れた側に無端面を取り付けることにより、表面が上昇する結果として生じるミラーハウジングと支持面との間の溝の形成を回避することができ、支持面上のミラーハウジングの支持を実際に高めることができる。これにより、溝の形成により発生する風切音と安定性の問題を克服することができる。さらに、他の場所に配置される無端面により、ミラーハウジングの底面とセントラルシャフトの基部の支持面との間の接触面が大きくなる。これにより、より低い最高許容表面圧力を有する材料からミラー基部を製造することができる。その結果、ミラー基部は、例えば、金属よりも安価なプラスチック素材から製造することができる。
【0009】
軸コンプライアンスは、セントラルシャフトの周囲に配置されたリング上に、例えば、軸方向に摺動可能および回転連結するように、第2無端面を設けることにより実現される。リングの軸コンプライアンスは、例えば、制止部材によりストロークを軸方向に制限されたリングを配置することにより制限することができる。制止部材は、固定することもできるが、ばねの作用を受けることもできる。また、リングは、軸方向のばねの作用を直接受ける位置に配置することもできる。当然、第2無端面および/またはその担体の変形によっても軸コンプライアンスは実現することができる。
【0010】
第2無端面とセントラルシャフトとの間の回転連結は、例えば、堅固な回転連結として設計することもできるが、離脱可能な回転連結および/またはフリーストロークを有する回転連結とすることもできる。
【0011】
無端面が協働する際のセントラルシャフトに対する第2無端面の軸コンプライアンスは、例えば、電気的接触を確立または切断することにより駆動を遮断するのに利用することができる。
【0012】
有利に、軸方向へ移動可能に回転連結してヒンジシャフト周囲にカムリングが配置され、前記カムリングは、外周に沿って不規則に分布するカムパターンを有して設計され、前記カムリングは、ミラーハウジングの支持面から離れた底面側の相対するカムパターンと協働する。カムリングのカムの側面およびミラーハウジングは、それぞれ第1および第2無端面を形成する。外周に沿って不規則に分布するカムパターンを形成することにより、カムリングとミラーハウジングは一方向にのみ協働することができる。必要であれば、無端面は回転方向にフリーストローク無しで協働することができる。このように、接触面が大きくなることにより、無端面の表面圧力が小さくなり、例えば、金属の代わりにプラスチックを使用することができる。ミラーハウジングとセントラルシャフトとの間の角度の調整は、例えば、カムリングと協働する無端面を含まない制止カムにより制限することができる。
【0013】
外周に沿って不規則に分布するカムパターンは、第1無端面がミラーハウジングの底面に位置するカムにより形成され、第2無端面がセントラルシャフトの基板上に位置するカムにより形成されるヒンジ構造において、有利に利用することができる。
【0014】
本発明のさらに有利な実施形態は、従属請求項において説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を、図に示す2つの具体的な実施形態に基づいてより詳細に説明する。
図は、本発明の好ましい実施形態を概略的に説明する具体例にすぎず、非限定的かつ具体的な実施形態として提供される。
図において、同一または対応する部品は同一の参照番号により示す。
【0016】
図1は、自動車のドアミラーユニットに使用するヒンジ構造1を示す。ヒンジ構造1は、セントラルシャフト2およびその周囲に、二重矢印P1で示す方向に旋回可能に設けられたミラーハウジング3を含んでなる。ミラーハウジング3の底面4は、セントラルシャフト2の基部の支持面5上に支持される。
【0017】
ヒンジ構造1は、さらに、ミラーハウジングの突出位置に対応する、セントラルシャフト2とミラーハウジング3との間の所定角度位置を協働して決定する第1無端面6および第2無端面7を有する。図1は、突出位置にあるヒンジ構造1を示す。
【0018】
第1無端面6は、ミラーハウジング3の支持面から離れた底面側に形成される。第2無端面7は、軸方向へ移動可能および回転可能に連結してセントラルシャフト2に接続される。セントラルシャフト2の基部の支持面5およびその上に支持されるミラーハウジングの底面4には、無端面がない。支持面および底面は、直接および溝を形成することなく、実質的に平面として協働する。
【0019】
本明細書中に示す具体的な実施形態において、軸コンプライアンスは、キー溝21により軸方向に摺動可能および回転可能に連結して、セントラルシャフト2の周囲に配置されたリング8により担持されるカム20上に、第2無端面7を形成することにより実現することができる。リングの変位はこれまで、制止部材9によりストロークを軸方向に制限されたリング8を位置させることにより制限されてきた。制止部材は、セントラルシャフト2の周囲に配置されたコイルばね10の作用を受ける。本具体的な実施形態において、制止部材9は支持体11によりセントラルシャフト2上に支持される。
【0020】
折畳位置と突出位置との間での調整中、ミラーハウジング3は、ばねの作用を受ける支持面5上に支持されないことから、調整には駆動力をあまり必要としない。突出位置に到達すると無端面が協働し、リング8はセントラルシャフト2に沿って軸沿いに上方へ制止部材9の位置まで移動する。
【0021】
更なる上方への移動は、ばねの作用を受ける制止部材9により制止される。その結果、突出位置にあるミラーハウジング3は、ばねの作用を受けて支持面5上に支持される。
【0022】
電気駆動が利用される場合、駆動は、例えば、無端面が協働する際の電流の強さの制限に応じた遮断回路により遮断される。または、リング8の軸方向上方への移動は、電気的接触を確立または切断することによって電気駆動を遮断するのに利用することができる。
【0023】
図2に、カムリング11を有して設計された第2実施形態を示す。カムリング11は、セントラルシャフト2の周囲に設けられ、それによりフリーストロークで軸方向に摺動可能および回転連結する。カムリング11は、外周に沿って不規則に分布するカムパターン12を有して設計される。カムリング11は、ミラーハウジング3の底面4の支持体5から離れた側の相対するカムパターン13と協働する。カムリング11のカム12,13の側面およびミラーハウジング3はそれぞれ第1無端面6および第2無端面7を形成する。外周に沿って不規則に分布するカムパターンを利用することにより、カムリング11およびミラーハウジング3は一方向にのみ協働することができる。本具体的実施形態において、無端面は回転方向に、フリーストローク無しで協働する。そのようなカムリングの利用により、接触面が大きくなり、表面圧力が比較的低くなる。
【0024】
カムリングは、セントラルシャフト2へフリーストロークで回転連結される。突出位置に到達した際のミラーハウジング3とセントラルシャフト2との間の角度調整は、無端面を含まずに設計された制止部材カム14,15により制限される。上記具体的実施形態で説明したように、無端面7の上昇により、カムリング11は、制止部材と接触するまで軸沿いに上方へ移動する。本具体的実施形態において、制止部材は、支持体11上にばねの作用を受けて支持される歯車16として設計される。本具体的実施形態において、セントラルシャフト2は、支持面5で受容する外殻として設計される。この外殻を通じて補助シャフトを挿入してばねを担持することができ、その補助シャフトは基板を有してもよい。支持面、外殻、および任意の補助シャフトは、必要であれば、1つの部品に組み込むことができることは明らかである。
【0025】
本発明は、本明細書中に提示した具体的実施形態に限定されない。後述の請求の範囲において説明される本発明の範囲内において、多様な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態によるヒンジ構造の概略側面図である。
【図2】本発明の第2実施形態によるヒンジ構造の解体された状態の概略斜視図である。
【図3】図2に示すヒンジ構造の組み立てた状態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セントラルシャフトと、その周囲に旋回可能に配置されたミラーハウジングと、を含んでなる自動車のドアミラーユニットに使用するヒンジ構造であって、前記ミラーハウジングの底面は、前記セントラルシャフト基部の支持面上に支持され、さらに、前記ミラーハウジングの突出位置に対応するセントラルシャフトとミラーハウジングとの間の所定角度位置を協働して決定する第1および第2無端面を含み、前記第1無端面は前記ミラーハウジングの支持面から離れた側に担持され、第2無端面は軸方向へ移動可能に回転連結して前記セントラルシャフトに接続され、前記セントラルシャフトの基部の支持面およびその上に支持された前記ミラーハウジングの底面は無端面を持たないことを特徴とするヒンジ構造。
【請求項2】
前記無端面が、軸方向に摺動可能に回転連結して、前記セントラルシャフトの周囲に配置されたリング上に担持されることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ構造。
【請求項3】
前記リングが、制止部材によりストロークを軸方向に制限されて配置されることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ構造。
【請求項4】
前記リングまたは前記制止部材が、軸方向にばねの作用を受けることを特徴とする請求項2または3に記載のヒンジ構造。
【請求項5】
前記第2無端面と前記セントラルシャフトと間の回転連結が、フリーストロークを有する回転連結であることを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載のヒンジ構造。
【請求項6】
無端面が協働する際のセントラルシャフトに対する前記無端面またはその担体の軸コンプライアンスが、電気的接触を確立または切断することを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のヒンジ構造。
【請求項7】
カムリングが軸方向へ摺動可能に回転連結して前記セントラルシャフトの周囲に形成/配置され、前記カムリングが、外周に沿って不規則に分布するカムパターンを有して設計され、前記ミラーハウジングの底面の支持面から離れた側の相対するカムパターンと協働し、前記リング上の前記カムの側面および前記ミラーハウジングが、それぞれ前記第1および第2無端面を形成することを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載のヒンジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−536899(P2009−536899A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510904(P2009−510904)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050209
【国際公開番号】WO2007/133077
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505079235)エムシーアイ(ミラー コントロールズ インターナショナル)ネザーランドズ ベスローテン フエンノートシャップ (13)
【Fターム(参考)】