説明

ヒンジ機構およびこれを搭載した電子機器

【課題】構成部品の種類および点数を削減する。小型化。外部負荷への強度を向上させる。
【解決手段】ヒンジ機構10は、第1、第2の軸部材11、12と、これらの軸部材を両側から挟み込む第1、第2の保持部材13、14と、保持部材を締め付ける固定部材15および止め部材16と、によって構成される。第1、第2の軸部材11、12は、回転軸となる、回転楕円体形状を有する回転楕円体部11、12と、筐体に接続される筐体連結部11、12と、回転楕円体部と筐体連結部とを連結する接続部11、12と、から構成される。保持部材13、14の回転楕円体部11、12との接触部は、回転楕円体部11、12の表面形状に倣う形状となっている。保持部材13、14は、軸受けとして機能すると共に、軸部材11、12にトルクを付与する機能を果たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末機に代表される折畳み型電子機器に搭載されるヒンジ機構に関し、特に構造の単純化を図り、これに付随して部品点数削減、小型化、外部負荷への強度向上を実現したヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、その可搬性の高さから、表示部を配置した筐体と操作部を配置した筐体とが、ヒンジ機構により開閉可能に連結された、折り畳み型の携帯情報端末機が普及している。また、多機能化に伴う操作性向上のために、メール入力やカメラ撮影やWeb視聴やTV閲覧など使用するソフトウェア上の機能に応じてスタイル(筐体間の相対位置)が変化する携帯情報端末機が登場している。
【0003】
上記のスタイルが変化する端末の内、図6A、図6Bに示すような、端末可搬時には表示部101を配置した第1の筐体101と、操作部102を搭載した第2の筐体102とが表示部101と操作部102とを対向するように折畳める〔持ち運び状態、図6A(a)〕とともに、Web閲覧やTV視聴やタッチパネル操作時には、持ち運び状態から筐体間の相対位置が360°開状態とし、表示部101と操作部102とを表に向けるようにして第1の筐体101と第2の筐体102とが折畳める〔360°開状態、図6B(d)〕360°開くことが可能な情報端末100が知られている。この情報端末では、図6A(a)に示す閉状態から、第1の筐体101と第2の筐体102とをそれぞれ開閉軸57、58を中心として90°ずつ開いて図6A(b)に示す180°開状態とし、更に図6B(c)に示すように、一方の筐体例えば第2の筐体102を180°に開き続いて第1の筐体101を180°に向けて開いて、図B6(d)に示す360°開状態とする。
360°開可能な情報端末100は、第1の筐体101と第2の筐体102とが、一般的なヒンジ機構50a、50bおよび連結部材103にて連結されて構成されている。
【0004】
次に、一般的なヒンジ機構について図7A、図7Bを参照して説明する。図7A(a)は一般的なヒンジ機構50の斜視図、図7A(b)はその分解斜視図、図7B(c)は、図7A(a)のK−K線での断面で示す動作説明図である。ヒンジ機構50は、回転動作時の軸となる軸部材51と、軸部材51の周囲に、軸部材51に対して周回方向に空転する円筒状の第1の摺動部材52と、摺動部材52と当接するとともに軸部材51と連動して回転する円筒状の第2の摺動部材53と、摺動部材53の摺動部材52との当接面の反対面に当接する荷重発生源54とが配置され、更に軸部材51に対し周回方向に空転する筐体連結部材55と、軸部材51と連動して回転する連結部材56を配置することで構成されている。ここで、筐体連結部材55は、このヒンジ機構を第1、第2の筐体101、102と連結するために用いられ、また連結部材56は、連結部材103と連結するために用いられる。あるいは、連結部材103の一部を構成する。また、軸部材51が、開閉軸57、58に相当している。
【0005】
軸部材51を、例えば図7B(c)のS方向に回転させると、摺動部材53が軸部材51と連動してS方向へ回転する。これに対し摺動部材52は軸部材51に対して空転するので、摺動部材52と摺動部材53とは摺動することとなる。更に荷重発生源54から摺動部材53へ荷重Pが加えられているので、摺動部材52と摺動部材53の間に大きな摩擦力が発生している。この摩擦力により、S方向とは逆方向に筐体の開閉位置を保持(仮止め)するトルクT(筐体位置保持トルク)が発生する。また、設計者は必要に応じて摺動部材52と摺動部材53との当接面に凸凹部を設け、回動位置で凸部と凹部が噛み合い筐体位置保持トルクTが変動するようにすることもある。このトルクTの変動が、利用者にクリック感や、筐体間の相対位置を固定するトルクと感じられ、携帯情報端末機の使用感を向上させることになる。なお、この種の一般的な構成のヒンジ機構は、例えば特許文献1などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−64000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したような従来の一般的なヒンジ機構では、部品製作上の観点から回転動作中心やトルク発生や筐体間連結といった作用を発生させる部品を個別に分け(6種類)、これを複数個用いてヒンジ機構を構成しており、この関係上、構成部品の種類および部品点数が多くなることや、構成部品の外部負荷への耐強度の関係からヒンジ機構の小型化に限界があること、逆に小型化を図ると外部負荷への強度が低下することといった課題が発生する。
【0008】
この小型化への限界について敷衍するに、ヒンジ機構の構成部品には、落下衝撃や捻り、曲げ、荷重発生源からの荷重といった外部負荷からの影響による折れ、割れ、変形などの不具合を、各構成部品自体で防止するためにある程度の大きさが必要となる。例えば携帯情報端末向けの一般的なヒンジ機構で言えば、軸部材では、落下衝撃や捻り、曲げからの負荷に対する強度確保のために、最小でも1.5mm程度の径が、摺動部材では、落下衝撃や荷重発生源からの荷重に対する強度確保のために、軸部材を通す穴から径方向に1mmずつ程度の肉厚を増した径(径で言えば軸部材の径に2mm加えた径)が必要となる。従って、一般的な携帯情報端末向けのヒンジ機構自体では、径方向の小型化の限界は3.5mm程度ということになる。
【0009】
また、逆に強度低下について例を挙げるに、ヒンジ機構を小型化すると、ヒンジ機構の各構成部品のサイズが小さくなるので、サイズ縮小による部品自体の強度の低下や、外部負荷を受ける面積が低減したことによる圧力増大といった要因が発生し、構成部品単体の強度が低下する。これにより例えば、落下の衝撃荷重により軸部材が変形したり、荷重発生源の荷重により摺動部材が割れたりするといった不具合が発生し易くなる。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、構成部品の種類および点数を削減することができ、これに伴って小型化することができ、更に外部負荷への強度を向上させることができるヒンジ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、開閉可能に連結された第1の筐体と第2の筐体を有する電子機器のそれらの二つの筐体を連結するヒンジ機構であって、
楕円の長軸または短軸を回転中心とする回転楕円体の形状を有する第1の回転楕円体部と、前記第1の回転楕円体部に直結されて形成された、前記第1の筐体と連結するための第1の筐体連結部とを有する第1の軸部材と、
前記第1の回転楕円体部と同一形状の第2の回転楕円体部と、前記第2の回転楕円体部に直結されて形成された、前記第2の筐体と連結するための第2の筐体連結部とを有する第2の軸部材と、
前記第1、第2の回転楕円体の前記回転中心が互いに平行となるように、前記第1、第2の回転楕円体部を前記回転中心の方向より押圧して前記第1の軸部材と前記第2の軸部材とを同時に保持する一対の保持部材と、
を含んで構成され、前記第1の回転楕円体部および前記第2の回転楕円体部をそれぞれ前記第1、第2の軸部材の回転軸とすることを特徴とするヒンジ機構、が提供される。
【0011】
[作用]
軸部材は、その回転楕円体部が保持部材に当接して、これに保持されており、回転楕円体部を回転軸(ヒンジの回転軸となる)として回転可能になっている。そして、回転楕円体部の断面が楕円状であり、回転楕円体部が当接する保持部材の当接部が回転楕円体に倣う形状の開口部であることにより、軸部材の回転動作の周回方向以外に動くことが抑制され、各軸部材、各保持部材、延いては軸部材に連結される端末の筐体がグラついたり、ブレたりすることが抑制される。
【0012】
また、軸部材を、つまり回転楕円体を回転させた際、保持部材は、回転楕円体部に対し保持力(図4のP)を発生している。このとき、保持力に対してある程度の角度を持った面である回転楕円体の表面が保持部材に当接していることにより、この保持力を面に受けながら回転している回転楕円体部の表面と保持部材の当接部には摩擦力が発生している。この摩擦力を基に回転方向とは反対方向にトルクが発生する。軸部材には筐体との連結部が設けてあるので、第1の筐体を第1の軸部材とを連結し、第2の筐体を第2の軸部材とを連結し、保持部材で第1の軸部材と第2の軸部材とを連結していることにより、第1の筐体と第2の筐体が連結されている。つまり、上記した課題解決手段により、安定した(構成部品がグラついたり、ブレたりすることなく)回転動作の軸、トルク発生、筐体間の連結といったヒンジ機構としての動作を、少ない部品点数により果たすことができる。本発明のヒンジ機構では、軸部材に回転動作の軸とトルク発生(摺動)と筐体連結といった機能を、保持部材にトルク発生(摺動および荷重発生)や軸受けといった機能を負わせており、各構成部品にヒンジとしての複数の作用を持たせているので、部品点数、種類を削減することができるのである。
また、ヒンジ機構に必要なトルクを軸部材(の回転楕円体部)と保持部材との接触により得ているので、トルク発生のための摺動部材を軸部材に配置する必要がない。これにより小型化が可能になる。
【0013】
トルク発生のための摺動部である軸部材の当接部が回転楕円体部の表面であるので、従来のヒンジ機構の摺動部材に比べ、接触面積が広くなる。このため、外部負荷からの接触面に掛かる圧力を低減させることができ、構成部品の外部負荷への強度を向上させることができる。また、軸部材上に摺動部品を配置する必要がないので、軸部材を大きくすることができ、軸部材の強度を一層向上させることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒンジ機構は、筐体連結部を有する二つの回転楕円体部をそれぞれ回転軸とし、それらを保持する(挟みこむ)保持部材が軸受とするものであるので、格別の摺動部材を用いることなく必要なトルクを得ることができ、従って構成部品の種類および点数を削減することができ、小型化を実現することができる。これにより、更に外部負荷に対する強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のヒンジ機構の第1の実施の形態を示す斜視図と分解斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態のヒンジ機構に用いられる第1、第2の軸部材の斜視図と断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態のヒンジ機構に用いられる第1、第2の保持部材の斜視図と断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態のヒンジ機構の動作を説明するための斜視図と断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態のヒンジ機構に用いられる第1の軸部材と第1の保持部材の斜視図と断面図。
【図6A】従来のヒンジ機構を用いて構成された360°回動する携帯情報端末の開閉動作説明図(その1)。
【図6B】従来のヒンジ機構を用いて構成された360°回動する携帯情報端末の開閉動作説明図(その2)。
【図7A】従来の一般的なヒンジ機構の斜視図と分解斜視図。
【図7B】従来の一般的なヒンジ機構の動作を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態のヒンジ機構を示す斜視図と分解斜視図である。このヒンジ機構10は、360°開くことのできる情報端末向けのものである。図1に示されるように、ヒンジ機構10は、第1、第2の軸部材11、12と、これらの軸部材を挟み込んで保持する第1、第2の保持部材13、14と、第1の保持部材13と第2の保持部材14とを締め付ける一対の固定部材15および止め部材16とから構成されている。
【0017】
第1の軸部材11は、楕円の長軸を回転軸とする回転楕円体形状の回転楕円体部11と、例えば図6に示される情報端末の第1の筐体101に連結される筐体連結部11と、回転楕円体部11と筐体連結部11とを連結する接続部11とを有する。ここで、回転楕円体部11の中心線(楕円の長軸に相当する)と、筐体連結部11および接続部11を通る中心線とは直交している。同様に、第2の軸部材12は、楕円の長軸を回転軸とする回転楕円体形状の回転楕円体部12と、例えば図6に示される情報端末の第2の筐体102に連結される筐体連結部12と、回転楕円体部12と筐体連結部12とを連結する接続部12とを有する。そして、回転楕円体部12の中心線と、筐体連結部12および接続部12を通る中心線とは直交している。
【0018】
第1の軸部材11と第2の軸部材12とは、その回転楕円体部11と回転楕円体部12において、それぞれ二つの開口を有する第1、第2の保持部材13、14により挟み込まれる。そして、第1、第2の保持部材13、14は、一対の固定部材15と止め部材16を用いて締め付けられ、互いに平行となるように固定される。固定部材15と止め部材16とは例えば螺合により結合される。このとき、回転楕円体部11と回転楕円体部12との中心線は平行になされており、またそれぞれの中心線は、第1、第2の保持部材13、14に設けられた開口の中心と一致しており、回転楕円体部11と回転楕円体部12とは、第1、第2の保持部材13、14により軸支されている。第1、第2の軸部材11、12の回転楕円体部11と回転楕円体部12との表面は、第1、第2の保持部材13、14の開口の側面(図3の当接部13、13、14、14参照)と接触しており、固定部材15と止め部材16とによって第1、第2の保持部材13、14を締め付けることにより、回転楕円体部11と回転楕円体部12とに対して荷重(トルク)が発生するようになっている。ここで、止め部材16は、固定部材15の先端を保持部材14にカシメることや溶接するなどの代替手段によりこれに固着することができるので、省略が可能である。
【0019】
図2(a)は、第1の軸部材11の斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線での断面図である。また図2(c)は、第2の軸部材12の斜視図であり、図2(d)は図2(c)のB−B線での断面図である。
図2(b)において、Yは、図示された楕円の長軸である。第1の軸部材11の回転楕円体部11は、図2(b)に示される楕円の長軸Yを中心とした回転楕円体であるので、Yは、回転楕円体部11の中心線でもある。同様に、図2(d)において、Yは、図示された楕円の長軸であり、かつ第2の軸部材12の回転楕円体部12の中心線でもある。
【0020】
図3(a)は、第1の保持部材13の斜視図であり、図3(b)は図3(a)のC−C線での断面図である。また、図3(c)は、第2の保持部材14の斜視図であり、図3(d)は図3(a)のD−D線での断面図である。
図3(a)に示すように、第1の保持部材13には、回転楕円体部11と回転楕円体部12とに係合する開口が開けられており、その開口の側面は、回転楕円体部11、12の表面に接触する当接部13、13になっている。図3(b)に回転楕円体部11、12の、その中心線Yを通る断面を仮想的に点線にて示す。図3(b)に示すように、第1の保持部材13に開けられた回転楕円体部11、12と係合する開口は、係合する回転楕円体部に倣う形状に形成されており、従って、第1の保持部材13の当接部13、13は、回転楕円体部11、12の表面に面接触することになる。そして、これらの部材がヒンジ機構に組み立てられたとき、保持部材13に開けられた二つの開口の中心は、回転楕円体部11、12の中心線Yと一致することになる。
同様に、図3(c)に示すように、第2の保持部材14には、回転楕円体部11と回転楕円体部12とに係合する開口が開けられており、その開口の側面は、回転楕円体部11、12の表面に接触する当接部14、14になっている。図3(d)に回転楕円体部11、12の、その中心線Yを通る断面を仮想的に点線にて示す。図3(d)に示すように、第2の保持部材14に開けられた回転楕円体部11、12と係合する開口は、回転楕円体に倣う形状に形成されており、従って、第2の保持部材14の当接部14、14は、回転楕円体部11、12の表面と面接触することになる。これらの部材がヒンジ機構に組み立てられたとき、保持部材14に開けられた二つの開口の中心は、回転楕円体部11、12の中心線Yと一致することになる。そして、保持部材13、14に保持された第1、第2の軸部材11、12が回動するとき、回転楕円体部11、12の中心線Yが回動の中心となる。
【0021】
[動作の説明]
次に、図4を参照して第1の実施の形態のヒンジ機構の動作を説明する。図4(a)は、第1の実施の形態のヒンジ機構10の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のE−E線での断面図である。いま、ヒンジ機構10の第1の軸部材11を、その回転楕円体部11の中心線Yを回転中心として一方向(図の矢印Z方向)に回転させようとすると、第1の保持部材13の当接部13と第2の保持部材14の当接部14とが、軸部材11の回転楕円体部11の形状に倣う形状であることから、軸部材11の回転楕円体部11は、第1、第2の保持部材13、14の当接部13、14と接触しつつZ方向に摺動回転することになる。
【0022】
ここで、第1の軸部材11が、第1の保持部材13と第2の保持部材14に保持されている(挟み込まれている)ことにより、回転楕円体部11には、その中心線(Y)と平行な方向に、保持(締め付け)荷重Pが発生している。回転楕円体部11は中心線を回転中心とする回転軸を構成しているが、これに接触する各保持部材の当接部13、14が回転楕円体形状をなしていることにより、この締め付け荷重Pを、回転楕円体部11は(つまり第1の軸部材11は)その側面で受けることが可能になっている。ここに、第1の軸部材11の回転楕円体部11と各保持部材の当接部13、14との間には摩擦力が発生する(接触面が荷重Pの方向に対して直交する成分を有しているため。)。この摩擦力により、回動方向(Z方向)とは反対方向に、筐体間の位置を保持するトルクTが発生する。このトルクTの大きさとしては、保持(締め付け)荷重Pの大きさと、回転の中心と当接面との間の距離と、回転楕円体部11と各保持部材の当接部13、14との接触面の摩擦係数に依存する。また、上記したように、第1の軸部材11の回転楕円体部11と各保持部材との当接面が面接触するようになっているので、軸部材11の回転楕円体部11と保持部材13、14が安定して摺動し、トルクTは安定して発生する。ここで、上記した保持(締め付け)荷重Pについて補足するに、この荷重は、各保持部材が剛体からなる場合は、固定部材15と止め部材16とが各保持部材を挟む圧力であり、各保持部材が弾性体である場合は、各保持部材が歪み、元に戻ろうとする復元力である。
【0023】
また、第1の軸部材11の回転楕円体部11と保持部材13および14の当接部13および14の形状が回転楕円体形状をしていることから(接触面が回転楕円体部の中心点に対して等距離にないから)、軸部材11を回転方向以外の方向〔図4(b)のW、X方向〕に動かそうとしても、軸部材11の回転楕円体部11が各保持部材の当接部13、14と干渉するので、軸部材11が第1の回転軸6を中心とした周回方向以外に動くことが抑制される(第1の軸部材11や保持部材13および14が、延いてはこのヒンジに連結された情報端末の筐体がグラつくのを抑制することができる。)。以上、第1の軸部材11について動作説明を行なったが、第2の軸部材12についても同様である。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態のヒンジ機構によれば、筐体間の連結を行なって回動動作を行なうことによって筐体間の開閉が可能であるが、その回転動作時に各構成部品がグラついたり、ブレたりすることがなく、安定したトルクを発生させることが可能である。そして、各軸部材を180°回転させることにより、筐体を360°にまで開くことができ、かつ任意の角度の保持しておくことが可能である。
【0025】
ところで、、第1の軸部材11の回転楕円体部11および第2の軸部材12の回転楕円体部12と各保持部材13、14の当接部の形状を変更したり、当接面の表面粗さを変更したりすることにより、第1の軸部材11で発生するトルクと第2の軸部材12上で発生するトルクを異ならせることができる。つまり、利用者が必要に応じて、第1の軸部材11と第2の軸部材12とで発生させるトルクの値をそれぞれ任意に調整可能であるということである。これにより、例えば第1の軸部材11のトルクを小さく、第2の軸部材12上のトルクを大きくして、筐体を動かした際に、最初に第1の軸部材11が回転し、第1の軸部材11の回転動作が完了したのち、第2の軸部材12が回転するといった動作が可能となる。
【0026】
[第2の実施の形態]
図5(a)は、本発明の第2の実施の形態のヒンジ機構において用いられる第1の軸部材21の斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のF−F線での断面図である。また図5(c)は、本発明の第2の実施の形態のヒンジ機構において用いられる第1の保持部材23の斜視図であり、図5(d)は、図5(c)のG−G線での断面図である。第2の軸部材と第2の保持部材については、図示してなく、また特に説明することもないが、これらは、第1の軸部材ないし第1の保持部材と同等の構成を有するものである。本実施の形態のヒンジ機構は、第1の実施の形態の場合と同様に、360°回動可能な情報端末向けに用いられるものである。
【0027】
図5(a)、(b)に示すように、第1の軸部材21は、第1の実施の形態と同様に、基本的に楕円の長軸を中心として回転させて形成した回転楕円体の形状を有する回転楕円体部21と、例えば図6に示される第1の筐体101に接続される筐体連結部21と、回転楕円体部21と筐体連結部21とを連結する接続部21とを有する。本実施の形態においては、回転楕円体部21には、回転楕円体部21の表面をオフセットさせた凹部2111が形成されている。凹部2111の表面もまた回転楕円体の形状をなしており、そして、凹部2111の表面形状は、回転楕円体部21のそれの一部と同等である。
【0028】
図5(c)、(d)に示すように、第1の保持部材23には、第1の軸部材21と第2の軸部材の回転楕円体部を保持する開口が開けられており、その開口の側面は、回転楕円体部21の表面形状に倣う形状の当接部23、23になされている。ここで、当接部23、23には凸部2311、2321が形成されており、そして、凸部2311、2321の表面形状は、回転楕円体部21の凹部2111の表面形状に倣うものとなっている。
第1の保持部材23は、これと同一形状の第2の保持部材と協働して、第1、第2の軸部材を挟み込み、荷重を加えつつこれらを保持する。このとき、第1、第2の保持部材の開口の中心は、第1、第2の軸部材の回転楕円体部の中心線と一致している。
【0029】
次に、第2の実施の形態のヒンジ機構の動作について説明する。図5に示される軸部材および保持部材を用いて組み立てたヒンジ機構を搭載した情報端末において、第1の軸部材21を、その回転楕円体部21の凹部2111以外の部分が、第1、第2の保持部材の凸部(2311)に当接している状態で回転させると、第1の実施の形態の場合と同様に、このヒンジ機構により筐体間の位置を保持するトルクTが安定して発生する。
更に、第1の軸部材21を回転させて、第1の軸部材21の凹部2111と第1、第2の保持部材(23)の凸部(2311)とが噛み合った場合は、上記の状態から保持荷重や当接状態が変化するので、発生するトルクの値が変動する。つまり、上記のように第1、第2の軸部材(21)と第1、第2の保持部材(23)当接面に凸部と凹部を設けることで、クリック感や、筐体間の相対位置を決めるトルクを発生させることができる。なお、凹部2111および凸部2311の広さを調整することで、クリック感や位置決めトルクを発生させる回転角度を調整できる。また、図面において軸部材21側に凹部が、保持部材23側に凸部が設けられているが、逆にして軸部材21側に凸部が、保持部材23側に凹部が設けられていてもよい。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施の形態に付いて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜の変更が可能なものである。例えば、実施の形態では、軸部材の回転軸となる回転楕円体部は、楕円の長軸を回転中心としたものであったが、短軸を回転中心とする回転楕円体部であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10、50、50a、50b ヒンジ機構
11、21 第1の軸部材
11、12、21 回転楕円体部
2111 凹部
11、21 筐体連結部
11、21 接続部
12 第2の軸部材
13、23 第1の保持部材
13、13、14、14、23、23 当接部
2311、2321 凸部
14 第2の保持部材
15 固定部材
16 止め部材
51 軸部材
52、53 摺動部材
54 荷重発生源
55 筐体連結部材
56 連結部材
57、58 開閉軸
P 荷重
T トルク
Y 回転楕円体の中心線(楕円の長軸)
100 情報端末
101 第1の筐体
101 表示部
102 第2の筐体
102 操作部
103 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に連結された第1の筐体と第2の筐体を有する電子機器のそれらの二つの筐体を連結するヒンジ機構であって、
楕円の長軸または短軸を回転中心とする回転楕円体の形状を有する第1の回転楕円体部と、前記第1の回転楕円体部に直結されて形成された、前記第1の筐体と連結するための第1の筐体連結部とを有する第1の軸部材と、
前記第1の回転楕円体部と同一形状の第2の回転楕円体部と、前記第2の回転楕円体部に直結されて形成された、前記第2の筐体と連結するための第2の筐体連結部とを有する第2の軸部材と、
前記第1、第2の回転楕円体の前記回転中心が互いに平行となるように、前記第1、第2の回転楕円体部を前記回転中心の方向より押圧して前記第1の軸部材と前記第2の軸部材とを同時に保持する一対の保持部材と、
を含んで構成され、前記第1の回転楕円体部および前記第2の回転楕円体部をそれぞれ前記第1、第2の軸部材の回転軸とすることを特徴とするヒンジ機構。
【請求項2】
前記保持部材の前記第1、第2の回転楕円体部との当接部は、前記第1、第2の回転楕円体と面接触するように、回転楕円体に倣う形状に開口された開口の壁面であることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ機構。
【請求項3】
二つの前記保持部材間には、両者を締結する連結部材が設置されており、その締結力によって回転体の回転トルクが調整されていることを特徴とするヒ請求項1または2に記載のヒンジ機構。
【請求項4】
前記第1の回転楕円体部の回転中心と前記第1の軸部材の中心線とが直交し、前記第2の回転楕円体部の回転中心と前記第2の軸部材の中心線とが直交していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のヒンジ機構。
【請求項5】
前記第1の回転楕円体部もしくは前記第2の回転楕円体部の表面に凹部もしくは凸部を設け、前記保持部材の前記回転楕円体部と当接する面に凸部もしくは凹部を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のヒンジ機構。
【請求項6】
前記第1の回転楕円体部もしくは前記第2の回転楕円体部の凹部もしくは凸部の表面は回転楕円体の一部をなしており、前記保持部材の前記回転楕円体部と当接する面に設けた凸部もしくは凹部の表面は回転楕円体に倣う形状をなしていることを特徴とする請求項5に記載のヒンジ機構。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれかに記載されたヒンジ機構を配置したことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを0°〜360°の角度に開くことができることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第1の回転楕円体および前記第2の回転楕円体に作用するトルクにより前記第1の筐体と前記第2の筐体とを任意の角度に開いた状態に保持できることを特徴とする請求項7または8に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2010−223385(P2010−223385A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73090(P2009−73090)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】