説明

ヒートシール装置

【課題】被シール体内部の空気を他の気体で置き換えて開口部をシールするに際して、容易に空気と他の気体とを置き換えることができるとともに、被シール体内部への気体の入り過ぎを防ぐことができるヒートシール装置を提供する。
【解決手段】内容物が収容された包装袋Pの開口部Aをシールするヒートシール装置Hであって、開口部A近傍を挟持するための第1押圧部40と第1受け部50とを有する挟持部、及び、開口部Aをシールするためのヒーターを有するシール圧着部を備えた圧着作動部4,5と、開口部Aから包装袋P内部へ気体を導入するノズル6と、包装袋P内部の空気及び導入された気体の一部を開口部Aから排出する排気機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物が収容された被シール体の開口部をシールするヒートシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容した樹脂製フィルムの包装袋(被シール体の一例)の開口部をシールするのに、簡便性、確実性などの利点を有することからヒートシール装置が多用されている(例えば、下記特許文献1,2に開示されるインパルス式ヒートシーラーを参照)。
【0003】
上記の包装袋の中に収容される内容物としては、食品、医療用器具、機械部品、薬など種々のものが例として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176598号公報
【特許文献2】特開2007−022602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記において、開口部のシールを行うに際して、包装袋内部に気体を導入してからシールを行う場合がある。例えば、食品の酸化を防止し、風味や品質が低下することを防止する目的として、包装袋内部の空気を窒素ガスと置き換えて封入する場合がある。
【0006】
この場合、上記特許文献1,2記載のヒートシール装置において、包装袋の開口部を開き、包装袋の内部にノズルを挿入して窒素ガスの導入を行った後、ノズルを抜いて開口部をシールする方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、窒素ガスの導入は、ノズルを挿入した状態でノズル回りの開口部を押圧した状態で行われるため、空気と窒素ガスとが置き換わりにくく、また、窒素ガスが入り過ぎても抜けにくい、といった問題がある。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、被シール体内部の空気を他の気体で置き換えて開口部をシールするに際して、容易に空気と他の気体とを置き換えることができるとともに、被シール体内部への気体の入り過ぎを防ぐことができるヒートシール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係るヒートシール装置は、
内容物が収容された被シール体の開口部をシールするヒートシール装置であって、
開口部近傍を挟持するための押圧部材と受け部材とを有する挟持部、及び、開口部をシールするためのヒーターを有するシール圧着部を備えた圧着作動部と、
ノズルと、
被シール体内部の空気及び導入された前記気体の一部を前記開口部から排出する排気機構とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成によるヒートシール装置の作用効果を説明する。本発明に係るヒートシール装置は、被シール体の開口部近傍を挟持するための押圧部材と受け部材とを有する挟持部、及び、開口部をシールするためのヒーターを有するシール圧着部を備えた圧着作動部を備えており、内容物が収容された被シール体の開口部をシールすることができる。また、ヒートシール装置は、開口部から被シール体内部へ窒素ガスなどの気体を導入することができるノズルを備えており、被シール体は、内部に気体を導入、充填された後に開口部がシールされる。本発明に係るヒートシール装置は、排気機構をさらに備えており、ノズルで被シール体内部へ気体を導入する一方で、被シール体内部の空気及び導入された気体の一部を開口部から排出することができるので、開口部近傍を挟持部で挟持されている状態であっても、空気と導入される気体とが置き換わりやすく、また、入り過ぎた気体が抜けやすくなる。その結果、本発明に係るヒートシール装置は、被シール体内部の空気を他の気体で置き換えて開口部をシールするに際して、容易に空気と他の気体とを置き換えることができるとともに、被シール体内部への気体の入り過ぎを防ぐことができる。
【0011】
本発明に係るヒートシール装置において、前記排気機構は、前記押圧部材と前記受け部材の挟持面の少なくとも一方に設けた溝部であることが好ましい。
【0012】
挟持部は、被シール体を挟持するための押圧部材と受け部材とを有しており、押圧部材と受け部材の挟持面の少なくとも一方に溝部を設けているので、一方の挟持面と他方の挟持面との間に空隙が形成される。これにより、押圧部材の挟持面と受け部材の挟持面とで開口部近傍が挟持された状態であっても、開口部は完全な緊密状態ではなく、被シール体内部にもともと存在していた空気及び導入された気体の一部を開口部から被シール体外部へ排出することができる。
【0013】
本発明に係るヒートシール装置において、前記排気機構は、弾性変形可能な円弧状断面を有する、前記押圧部材と前記受け部材の挟持面であることが好ましい。
【0014】
挟持部は、被シール体を挟持するための押圧部材と受け部材とを有しており、押圧部材と受け部材の挟持面は、弾性変形可能な円弧状断面を有している。これにより、押圧部材の挟持面と受け部材の挟持面とで開口部近傍が挟持された状態であっても、被シール体内の圧力が高くなった場合には、円弧状断面の挟持面が弾性変形して両者の挟持面の間に隙間が形成され、被シール体内部にもともと存在していた空気及び導入された気体の一部を開口部から被シール体外部へ排出することができる。
【0015】
本発明に係るヒートシール装置において、前記排気機構は、前記ノズルに隣接して設けられた排気管であることが好ましい。
【0016】
ノズルに隣接して排気管が設けられているので、ノズルで被シール体内部へ気体を導入する一方で、被シール体内部にもともと存在していた空気及び導入された気体の一部を排気管を介して開口部から被シール体外部へ排出することができる。排気管をノズルと共に開口部から被シール体内へ挿入しておけば、被シール体内部にもともと存在していた空気及び導入された気体の一部を開口部から被シール体外部へ容易に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ヒートシール装置の外観構成を示す斜視図
【図2】ヒートシール装置の外観構成を示す正面図
【図3】ヒートシール装置の外観構成を示す側面図
【図4】第1実施形態に係るヒートシール装置の動作を示すフローチャート
【図5】第1実施形態に係るヒートシール装置の動作を示す動作図
【図6】第2実施形態に係る排気機構の外観構成を示す側面図
【図7】第3実施形態に係る排気機構の外観構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
本発明に係るヒートシール装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、ヒートシール装置の外観構成を示す斜視図である。図2は、ヒートシール装置の外観構成を示す正面図である。図3は、ヒートシール装置の外観構成を示す側面図である。
【0019】
図に示すように、ヒートシール装置Hは、本体部1と、この本体部1の上面に設けられた操作部2とを備えている。本体部1の手前側には、開口部Aをシールすべき包装袋P(被シール体に相当)を載置する載置プレート3が設けられている。
【0020】
また、本体部1の上部手前側には、圧着レバー部4が設けられており、シールを行う時は、この圧着レバー部4が押し下げられる。圧着レバー部4は、本体部1の奥側に設定された所定の軸芯周りに回転可能に支持されている。圧着レバー部4は、手動により直接押し下げるようにしてもよいが、載置プレート3と連動させ、包装袋Pを載置した載置プレート3を押し下げることで、押し下げるように構成してもよい。また、センサーなどを設けておき、包装袋Pが所定位置にセットされると、圧着レバー部4が自動で押し下げられるようにしてもよい。
【0021】
圧着レバー部4には、第1押圧部40と第2押圧部41が配置されている。第1押圧部40が、第2押圧部41よりも手前側に配置されている。なお、第1押圧部40と第2押圧部41は、独立して動くことが可能である。
【0022】
圧着レバー部4に対応するように、本体部1には圧着レバー受け部5が配置されている。第1押圧部40と第2押圧部41には、第1受け部50と第2受け部51がそれぞれ対応する。第1押圧部40と第1受け部50は、本発明の押圧部材と受け部材にそれぞれ相当し、また、両者を合わせて挟持部に相当し、包装袋Pの開口部A近傍を挟持する機能を有している。第2押圧部41と第2受け部51とを合わせて、本発明のシール圧着部に相当し、開口部Aをシールする機能を有している。
【0023】
第1押圧部40と第1受け部50の挟持面は、ゴムなどの弾性材料により形成される。なお、第1押圧部40と第1受け部50の挟持面は、スポンジなどの樹脂材料により形成されてもよい。第1押圧部40の挟持面、第1受け部50の挟持面のうち少なくとも一方には、溝部が設けられる。本実施形態では、図に示すように、第1受け部50の挟持面に溝部50bが設けられている例を示す。溝部50bは、挟持面にほぼ等間隔で複数設けられているが、個数やそれぞれの間隔は適宜設定される。溝部50bの断面形状は、特に限定されず、図のような半円形のほか、例えば四角形、三角形などでも構わない。
【0024】
第1受け部50の挟持面に溝部50bが設けられていることで、第1押圧部40の挟持面と第1受け部50の挟持面とが互いに接した場合であっても、両者の間には複数の空隙が形成される。すなわち、第1押圧部40の挟持面と第1受け部50の挟持面とで包装袋Pの開口部A近傍が挟持された状態であっても、包装袋Pを構成する2枚のフィルムは完全な緊密状態ではなく、気体は溝部50bの部分でフィルム間を移動可能となっている。これにより、包装袋P内部の気体を、開口部Aを介して外部へ排出することができる。
【0025】
第2押圧部41と第2受け部51は、包装袋Pの開口部Aを押圧・挟持してシールする機能を有している。第2受け部51は、その上部に不図示の線状ヒーターが内蔵されており、その表面部はフッ素樹脂シートにより被覆されている。これにより、樹脂製の包装袋Pの融着片が付着しにくく、たとえ付着したとしてもはがれ易いようになっている。線状ヒーターは、包装袋Pの開口部Aの長さをカバーできるように十分な長さを有している。なお、線状ヒーターを第2押圧部41に内蔵するようにしてもよく、第2押圧部41と第2受け部51の両方に内蔵するようにしてもよい。
【0026】
第1押圧部40は、第2押圧部41に対して上下方向にスライド自在に取り付けられている。また、第1押圧部40は、バネなどの付勢手段により第2押圧部41に対して下方向に付勢されており、通常の状態では、第2押圧部41よりも下方に突出している。
【0027】
本体部1には、前後方向に移動可能なノズル6が設けられている。ノズル6は、図2の正面図に示すように、第1押圧部40と第1受け部50とに挟まれる空間のほぼ中心に設けられている。ノズル6を、本体部1の奥側から第1押圧部40と第1受け部50との間の空間まで移動することで、包装袋P内へ挿入することが可能である。第1押圧部40と第1受け部50には、両者の間にノズル6があっても包装袋Pの開口部A近傍を挟持可能なように、挟持面にそれぞれ切欠き部40a,50aが設けられている。これにより、ノズル6は、第1押圧部40と第1受け部50により包装袋Pの開口部近傍を挟持した状態で、包装袋P内部へ窒素ガスなどの気体を導入することができる。なお、ノズル6は、包装袋P内部の空気を吸入して排出する機能を備えるようにしてもよく、窒素ガスなどを導入する前に、包装袋P内の空気をあらかじめ減少させてもよい。
【0028】
<作動フローチャート>
次に、本実施形態に係るヒートシール装置Hの動作を図4のフローチャートと、図5に示す動作図に基づいて説明する。図5は、ヒートシール装置Hの主要部を正面から見た正面図である。
【0029】
まず、操作部2に設けられたノズル出入りボタンを押す(S1)。これにより、ノズル6は前進し(S2)、第1押圧部40と第1受け部50との間の空間に移動する(図5(a))。
【0030】
次に、包装袋Pを載置プレート3の上にセットする(S3)。この際、ノズル6の先端が、開口部Aから包装袋Pの内部に挿入された状態となるようにセットする(図5(b))。包装袋Pの内部には、所定の内容物が収容された状態である。内容物の例としては食品などが挙げられ、本発明のヒートシール装置は、店頭販売されるパンをその場で包装袋Pに収容して封をする場合などに好適に使用することができる。
【0031】
次に、包装袋Pを載置した載置プレート3を押し下げることで、これに連動して圧着レバー部4も押し下げられる(S4)。これにより、圧着レバー部4に配置された第1押圧部40と、対向する第1受け部50とによって、開口部Aの近傍が挟持される(S5)(図5(c))。
【0032】
次に、操作部2に設けられた給気開始ボタンを押す(S6)。これにより、ノズル6から窒素ガスが噴出され、包装袋P内部に窒素ガスが送り込まれる(S7)。このとき、上述のように、第1受け部50の挟持面には複数の溝部50bが設けられているので、第1押圧部40の挟持面と第1受け部50の挟持面とで包装袋Pの開口部A近傍が挟持された状態であっても、包装袋Pを構成する2枚のフィルムは完全な緊密状態ではない。これにより、包装袋P内部の空気及び導入された窒素ガスの一部を、開口部Aを介して外部へ排出することができる。その結果、容易に空気と窒素ガスとを置き換えることができるとともに、包装袋P内部への窒素ガスの入り過ぎを防ぐことができる。
【0033】
窒素ガスの供給が終了するとノズル6は後退する(S8)。ノズル6の後退は、任意の時間経過した後にノズル出入りボタンを押して後退させてもよく、また、窒素ガスの供給時間を予め設定しておき、設定時間を経過したら自動で後退するように構成してもよい。
【0034】
ノズル6が後退した後、さらに載置プレート3を押し下げることで、これに連動して圧着レバー部4も押し下げられる(S9)(図5(d))。これにより、付勢手段により下方向に付勢されていた第1押圧部40が上方に押し上げられ、第2押圧部41と第2受け部51とで開口部Aが圧着されるようになる。次いで、第2受け部51に内蔵されたヒーターを加熱し、開口部Aを熱溶着することで開口部Aがシールされる(S10)。
【0035】
ヒーターによる所定時間の加熱が完了すると、圧着レバー部4を開放する(S11)(図5(e))。これにより、開口部A近傍の挟持状態が解除され、シールされた包装袋Pを取り出すことができる。
【0036】
引き続いて別の包装袋Pのシール動作を行なう場合には、ステップS1に戻り、同様の動作を繰り返せばよい。ただし、圧着レバー部4を開放した後に、自動でノズル6を前進させるようにしておき、包装袋PをセットするステップS3に戻るようにしてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の排気機構として、押圧部材と受け部材の挟持面が弾性変形可能な円弧状断面を有するように構成してもよい。図6は、この実施形態に係る挟持部の一例を示す側面図である。第1押圧部40の挟持面と第1受け部50の挟持面の断面形状は、図のような円弧状をしており、これらの挟持面は弾性変形して撓むことが可能となっている。第1押圧部40及び第1受け部50は、例えばシリコンゴムなどの材料で構成することができる。
【0038】
包装袋Pの開口部A近傍を挟持する際には、図6(a)に示すように、第1押圧部40の先端と第1受け部50の先端とが互いに接近するように構成されている。なお、図6(a)においてノズル6は不図示であり、実際のノズル6の部分では、第1押圧部40の挟持面と第1受け部50の挟持面は上下方向に撓むようにしてノズル6を挟持している。包装袋Pは、開口部Aが第1押圧部40と第1受け部50の先端の外側方になるようにして挟持される。図6(a)のような第1押圧部40と第1受け部50とで包装袋Pの開口部A近傍を挟持した状態では、包装袋Pの外部から空気が侵入するのは困難である。
【0039】
その一方で、ノズル6により包装袋P内部へ窒素ガスを導入していき、包装袋Pの内部の圧力(気圧)が所定値よりも高くなった場合には、図6(b)に示すように、包装袋Pによって押された第1押圧部40と第1受け部50とが互いに反対方向へ撓むことで、両者の挟持面の間に隙間が形成され、包装袋P内部の空気及び導入された窒素ガスの一部を開口部Aから包装袋P外部へ排出することが可能となる。
【0040】
<第3実施形態>
さらに、本発明の排気機構として、ノズル6に隣接するように排気管7を設けてもよい。図7は、ノズル6及び排気管7の外観構成を示す斜視図である。図7(a)は、ノズル6の両側に隣接するようにチューブ状の排気管7を設けた例を示す。図7(b)は、ノズル6の両側の排気管7を一体に成形した例を示す。このような排気管7を設けることで、包装袋P内部の空気及び導入された窒素ガスの一部を開口部Aから包装袋P外部へ排出することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
H ヒートシール装置
P 包装袋
A 開口部
1 本体部
2 操作部
3 載置プレート
4 圧着レバー部
5 圧着レバー受け部
6 ノズル
7 排気管
40 第1押圧部
41 第2押圧部
50 第1受け部
50b 溝部
51 第2受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容された被シール体の開口部をシールするヒートシール装置であって、
開口部近傍を挟持するための押圧部材と受け部材とを有する挟持部、及び、開口部をシールするためのヒーターを有するシール圧着部を備えた圧着作動部と、
前記開口部から被シール体内部へ気体を導入するノズルと、
被シール体内部の空気及び導入された前記気体の一部を前記開口部から排出する排気機構とを備えるヒートシール装置。
【請求項2】
前記排気機構は、前記押圧部材と前記受け部材の挟持面の少なくとも一方に設けた溝部であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール装置。
【請求項3】
前記排気機構は、弾性変形可能な円弧状断面を有する、前記押圧部材と前記受け部材の挟持面であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール装置。
【請求項4】
前記排気機構は、前記ノズルに隣接して設けられた排気管であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−31936(P2011−31936A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179505(P2009−179505)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000236964)富士インパルス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】