説明

ヒートパイプ式冷却器

【課題】ヒートパイプ式冷却器の受熱ブロックの両側にそれぞれ取り付けられた半導体素子相互に温度差が生じる場合に、それぞれの半導体素子を冷却する。
【解決手段】ヒートパイプ式冷却器1は、半導体素子を取り付ける第1および第2の素子取付面2a,2bが設けられた受熱ブロック2と、受熱ブロック2の第1および第2の素子取付面2a,2bの間に位置する面に取り付けられた複数本のヒートパイプ3と、ヒートパイプ3の放熱部に設けられた複数枚の冷却フィン44とを備えている。ヒートパイプ3は、第1の素子取付面2a側と、第2の素子取付面2b側に分離して配設されている。冷却フィン44は、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bに共通に一体に取り付けられ、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの間に通気口5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力変換装置における平型半導体素子の冷却用に用いられるヒートパイプ式冷却器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置では、電力用半導体素子の大容量化、高速化に伴い、発熱損失の増大が問題となっている。このため電力用半導体素子用冷却器の冷却効率の向上を図り、発熱損失の増大に対応して装置の大型化を避けることが重要な技術課題となっている。
【0003】
電力変換装置における電力用半導体素子としては、平型に構成されるダイオード、サイリスタ、GTO、IGBTなどが用いられ、その冷却器にはヒートパイプ式冷却器が用いられている。
【0004】
ヒートパイプ式冷却器は、平型半導体素子が取り付けられる直方体状の受熱ブロックと、この受熱ブロックに取り付けられ、それぞれ受熱部および放熱部を有し、放熱部に複数枚の冷却フィンが取り付けられた複数本のヒートパイプとを備えている。
【0005】
ヒートパイプは、銅やアルミニウム等の熱伝導性の良い金属からなる円筒管の内部に純水等の冷媒を封入して構成されている(特許文献1,2参照)。
【0006】
この種のヒートパイプ式冷却器においては、平型半導体素子の構造上、その両面を冷却する必要があることから、特許文献1の図9(a)に記載されているように、1個の平型半導体素子を2個のヒートパイプ式冷却器の受熱ブロックで挟むようにして使用する構成が一般的である。
【0007】
また電力変換装置では、その回路構成から複数個の平型半導体素子が用いられるので、これら複数個の半導体素子を、特許文献1の図9(b)に記載されているように、複数個のヒートパイプ式冷却器の間に配設し、一括して積層したスタック構造として構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−172639号公報
【特許文献2】特開2006−269629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようなヒートパイプ式冷却器を用いた平型半導体素子の冷却構造では、ヒートパイプ式冷却器の受熱ブロックの両側に取り付けられる平型半導体素子の温度上昇に差が生じた場合、温度の低い側の平型半導体素子の冷却効率が低下する問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ヒートパイプ式冷却器の受熱ブロックの両側にそれぞれ取り付けられる平型半導体素子相互に温度差が生じる場合であっても、それぞれの平型半導体素子を効率よく冷却することのできるヒートパイプ式冷却器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明によるヒートパイプ式冷却器は、対向する面に平型半導体素子を取り付ける第1および第2の素子取付面が設けられた直方体形状の受熱ブロックと、この受熱ブロックの対向する第1および第2の素子取付面の間に位置する面に取り付けられた複数本のヒートパイプと、これら複数本のヒートパイプの放熱部に設けられた複数枚の冷却フィンと、を備え、複数本のヒートパイプが、第1の素子取付面側に配設される第1のヒートパイプ列と、第2の素子取付面側に配設される第2のヒートパイプ列に分離して配設されていて、前記第1および第2のヒートパイプ列の冷却フィンは、前記第1および第2のヒートパイプ列に共通に一体に取り付けられ、前記第1および第2のヒートパイプ列の間に位置する部分に通気口が形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の素子取付面に取り付けられる平型半導体素子からの熱は、その近傍に位置する第1のヒートパイプ列のヒートパイプを介して冷却フィンから放熱され、第2の素子取付面に取り付けられる平型半導体素子からの熱は、その近傍に位置する第2のヒートパイプ列のヒートパイプを介して冷却フィンから放熱されることになり、第1および第2の素子取付面に温度差が生じても効率よく放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)ないし(d)は、本発明による第1の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図、(d)は(a)の上面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明による第2の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図3】(a)および(b)は、本発明による第3の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図4】(a)および(b)は、本発明による第4の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図5】(a)ないし(c)は、本発明による第5の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるヒートパイプ式冷却器の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(a)ないし(d)は、本発明による第1の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図、(d)は(a)の上面図である。図1(a)ないし(d)において、ヒートパイプ式冷却器1は、直方体形状の受熱ブロック2と、複数本のヒートパイプ3と、複数枚の冷却フィン4a,4bとを備えている。
【0015】
受熱ブロック2は、高い熱伝導性を有する金属で直方体形状に構成され、その対向する面に平型半導体素子を取り付ける第1および第2の素子取付面2a,2bが設けられている。複数本のヒートパイプ3は、それぞれ円筒管の内部に冷媒を封入して構成されており、受熱部および放熱部を有している。
【0016】
これら複数本のヒートパイプ3は、受熱ブロック2の対向する第1および第2の素子取付面2a,2bの間に位置する面2cに、それぞれの受熱部が所定の間隔をおいて埋設されるように取り付けられており、また第1の素子取付面2a側に配設される第1のヒートパイプ列3aと、第2の素子取付面2b側に配設される第2のヒートパイプ列3bに分離して配設されている。
【0017】
第1のヒートパイプ列3aを構成する複数本(図示では3本)のヒートパイプ3の放熱部には、これらヒートパイプ3に共通に複数枚の冷却フィン4aがヒートパイプ3の軸方向に沿って所定の間隔をおいて設けられており、また第2のヒートパイプ列3bを構成する複数本(図示では3本)のヒートパイプ3の放熱部には、これらヒートパイプ3に共通に複数枚の冷却フィン4bがヒートパイプ3の軸方向に沿って所定の間隔をおいて設けられている。
【0018】
各冷却フィン4a,4bは、第1および第2の素子取付面2a,2bの対向する方向に対して直交する方向に給排気が行われるように、両端部が傾斜するように折り曲げられている。
【0019】
これにより、第1の素子取付面2aに取り付けられる図示しない平型半導体素子からの熱は,その近傍に位置する第1のヒートパイプ列3aのヒートパイプ3を介して冷却フィン4aから放熱され、第2の素子取付面2bに取り付けられる図示しない平型半導体素子からの熱は、その近傍に位置する第2のヒートパイプ列3bのヒートパイプ3を介して冷却フィン4bから放熱されることになる。
【0020】
また図示しないが、第2の素子取付面2bに取り付けられる平型半導体素子の反対側にさらにヒートパイプ式冷却器を配設するようにして複数個の半導体素子とヒートパイプ式冷却器を交互に積層するスタック構造とした場合においても、1個の平型半導体素子は、その両側の近傍に位置するヒートパイプ列によって確実に放熱されることになり、隣合う平型半導体素子との間で発熱に温度差が生じても、その影響を受けることなく効率的に冷却されることになる。
【0021】
図2(a)および(b)は、本発明による第2の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図である。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの冷却フィン14a,14bは、ヒートパイプ3の軸方向の取付位置を相対的に長さLだけずらして2列の冷却フィン14a,14bが千鳥状配置となるように構成されているところにある。長さLは、たとえば、冷却フィン14a,14bのピッチ(ヒートパイプ3の軸方向)の半分である。
【0022】
これにより、各ヒートパイプ列3a,3bは、互いの冷却フィン14a,14bにおける冷却風の流れが分離し、それぞれ円滑な流れが構成されることから、第1および第2の素子取付面2a,2bの放熱効率を向上させることができる。
【0023】
図3(a)および(b)は、本発明による第3の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図である。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの冷却フィン24a,24bが、それぞれ近傍に位置する素子取付面2a,2b側から吸気し、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの間から排気するように両端部を傾斜させて構成されているところにある。
【0024】
各冷却フィン24a,24bは、第1および第2の素子取付面2a,2bの対向する方向と同じ方向であるが、ヒートパイプ式冷却器1の外側から内側にそれぞれ独立して給排気が行われる。
【0025】
これにより、第1の素子取付面2aからの熱は,その近傍に位置する第1のヒートパイプ列3aの冷却フィン24aから放出され、第2の素子取付面2bからの熱は、その近傍に位置する第2のヒートパイプ列3bの冷却フィン24bから放出され、各ヒートパイプ列3a,3bの放熱系統が相互に干渉することなく独立して放熱を行うことから、第1および第2の素子取付面2a,2bの放熱効率を向上させることができる。
【0026】
図4(a)および(b)は、本発明による第4の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図である。本実施の形態が第3の実施の形態と異なる点は、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの冷却フィン34a,34bが、それぞれ第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの間から吸気し、近傍に位置する素子取付面2a,2b側から排気するように両端部を傾斜させて構成されているところにある。
【0027】
本実施の形態においても、第3の実施の形態と同様に、第1の素子取付面2aからの熱は,第1のヒートパイプ列3aの冷却フィン34aから放出され、第2の素子取付面2bからの熱は、第2のヒートパイプ列3bの冷却フィン34bから放出されることになり、各ヒートパイプ列3a,3bの放熱系統が相互に干渉することなく独立して放熱を行うので、第1および第2の素子取付面2a,2bの放熱効率を向上させることができる。
【0028】
図5(a)ないし(c)は、本発明による第5の実施の形態に係るヒートパイプ式冷却器を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の上面図である。
本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの冷却フィン44が、第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの各ヒートパイプ3に共通に一体に取り付けられており、その第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの間に位置する部分に通気口5が形成されているところにある。
【0029】
これにより、冷却フィン4a,4bは、両端部の傾斜により流れる冷却風のみならず、通気口5を上昇する冷却風も取り込んで放熱することができ、しかも対峙する第1および第2のヒートパイプ列3a,3bの熱的な干渉も低減されることになるので、第1および第2の素子取付面2a,2bの放熱効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1:ヒートパイプ式冷却器
2:受熱ブロック
2a,2b:素子取付面
3:ヒートパイプ
3a,3b:ヒートパイプ列
4a,4b,14a,14b,24a,24b,34a,34b,44:冷却フィン
5:通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する面に平型半導体素子を取り付ける第1および第2の素子取付面が設けられた直方体形状の受熱ブロックと、
この受熱ブロックの対向する第1および第2の素子取付面の間に位置する面に取り付けられた複数本のヒートパイプと、
これら複数本のヒートパイプの放熱部に設けられた複数枚の冷却フィンと、
を備え、
前記複数本のヒートパイプが、前記第1の素子取付面側に配設される第1のヒートパイプ列と、前記第2の素子取付面側に配設される第2のヒートパイプ列に分離して配設されていて、
前記第1および第2のヒートパイプ列の冷却フィンは、前記第1および第2のヒートパイプ列に共通に一体に取り付けられ、前記第1および第2のヒートパイプ列の間に位置する部分に通気口が形成されていること、
を特徴とするヒートパイプ式冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114466(P2012−114466A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53334(P2012−53334)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【分割の表示】特願2007−155058(P2007−155058)の分割
【原出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】