説明

ヒートポンプ給湯装置

【課題】
ヒートポンプ給湯装置において湯切れを無くし、給湯の使用パターンに関係なくエネルギー効率を向上させる。
【解決手段】
ヒートポンプ給湯装置100は、ヒートポンプ冷媒回路90と、ヒートポンプ冷媒回路で加熱された水を貯湯する貯湯タンク21とを備える。ヒートポンプ冷媒回路で発生した湯と貯湯タンクに貯えた湯とは、給湯端末19,36aに供給可能である。ヒートポンプ冷媒回路を運転して、発生した湯を給湯端末に供給するときに、給湯端末への供給停止が、ヒートポンプ冷媒回路を運転開始してから所定時間内であれば、ヒートポンプ冷媒回路の運転を継続する。そして、ヒートポンプ冷媒回路で加熱された水を貯湯タンクに貯湯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式の給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ給湯装置は、貯湯式ヒートポンプ給湯装置と瞬間式ヒートポンプ給湯装置に大別される。従来の貯湯式ヒートポンプ給湯装置の例が特許文献1に記載されている。この公報に記載のヒートポンプ給湯装置の加熱能力は、4.5 〜6kW程度であり、深夜時間帯に安価な夜間電力を利用して、65〜90℃の高温湯に沸上げる。そして沸きあがった高温の湯を、容量300〜480Lの貯湯タンクに貯えている。日中の給湯時には、貯湯タンクに貯えた高温湯に水を混合して使用する。
【0003】
従来の瞬間式ヒートポンプ給湯装置の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載のヒートポンプ給湯装置では、給水管から導入された水を水熱交換器で昇温し、そのまま使用端末に給湯して、大型の貯湯タンクを不要としている。そして、ヒートポンプ回路の運転開始直後の圧力条件が安定するまでは、水を温めるのに十分な凝縮熱を発生させることができないので、立上がりの短時間だけ小型の給湯タンクに貯蔵した湯に水熱交換器からの水を混合して給湯している。
【0004】
従来の瞬間式ヒートポンプ給湯装置の他の例が、特許文献3に記載されている。この公報に記載のヒートポンプ給湯装置は、応答性と安定性とを両立した給湯を可能とするため、ヒートポンプサイクルの放熱器の冷媒流路と熱交換する水流路を備えた熱交換器での所要加熱量を設定する負荷設定手段と、この負荷設定手段の設定値に応じて熱交換器の加熱量を制御する加熱制御手段を有する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−134070号公報
【特許文献2】特開2003−279133号公報
【特許文献3】特開2003−240344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の貯湯式ヒートポンプ給湯装置では、予め加熱して貯湯した高温湯を使用するので、同一湯量を消費するのであれば、給湯パターンに応じてエネルギー効率が変化することはない。これは、エネルギー効率と給湯パターンが独立の関係にあるからである。その結果、手洗いのような細切れの給湯パターンでも、風呂湯張りのような連続給湯が長い給湯パターンでも、給湯のエネルギー効率は同じになる。貯湯タンクに貯えた高温湯を使い切る場合には、給湯開始から給湯停止までの時間にかかわらず、エネルギー効率をほぼ一定にした使用法が可能である。しかし、貯湯タンクの湯を使い切ると、給湯装置の加熱能力が小さいので、すぐには沸き上げることができず、湯切れが発生する。
【0007】
一方、特許文献2に記載の瞬間式ヒートポンプ装置では、例えば、貯湯式の約5倍の加熱能力も可能である。その結果、湯を使いたい時に必要な分だけ沸かすことができるとともに、大形の貯湯タンクが不要となり、小形省スペース化が可能である。しかも、ヒートポンプにより加熱する水の温度が設定温度に達したら、給湯タンクからの出湯を停止して、ヒートポンプだけから給湯するので、連続給湯が可能で、湯切れの心配がない。
【0008】
しかしながら、この特許文献2に記載の瞬間式ヒートポンプ給湯装置では、ヒートポンプの立上り時に、圧縮機で加圧して加熱された冷媒ガスの熱が、圧縮機や水冷媒熱交換器を暖めるのにも費やされる。その結果、本来必要な給湯水への加熱量が減少する。ヒートポンプの消費電力に対する水加熱能力の割合であるCOP、いわゆるエネルギー効率が低下する。このことは、ヒートポンプの立上り状態で運転を停止する、細切れの給湯パターンで顕著となる。
【0009】
特許文献3に記載の瞬間湯沸し型のヒートポンプ給湯装置においても、給湯開始直後は、圧縮機で圧縮され高温になった冷媒の熱が、圧縮機や水冷媒熱交換器にも伝熱し、圧縮機や水冷媒熱交換器を加温するのに費やされる。その結果、給湯開始直後のヒートポンプ給湯装置のCOPが低下し、使用者が望む温度の湯を望む量だけ給湯することが困難になる。
【0010】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、ヒートポンプ給湯装置において、湯切れを防止するとともに、湯の使用パターンに関係なくエネルギー効率を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の特徴は、水を加熱するヒートポンプ冷媒回路と、このヒートポンプ冷媒回路が加熱した水を貯湯する貯湯タンクとを備え、ヒートポンプ冷媒回路で発生した湯と貯湯タンクに貯えた湯とを給湯端末に供給可能なヒートポンプ給湯装置において、ヒートポンプ冷媒回路を運転してから所定時間経過するまではこのヒートポンプ冷媒回路の運転を停止させないように制御する制御装置を設けたことにある。
【0012】
そしてこの特徴において、制御装置は、ヒートポンプ冷媒回路を運転して水を加熱し、湯として給湯端末に供給を継続しているときであって、このヒートポンプ冷媒回路を運転開始してから所定時間経過する前に給湯端末への供給が停止されたら、このヒートポンプ冷媒回路の運転を停止せずにヒートポンプ冷媒回路で加熱された水を貯湯タンクに貯湯するように制御することが望ましい。また、制御装置は、貯湯タンクへの貯湯に切替わってから所定時間経過したときまたは貯湯タンクの湯の液位が所定位置に達したら、ヒートポンプ冷媒回路を停止するようにしてもよい。なお、上記所定時間を、1分ないし5分とするのがよい。
【0013】
また、貯湯タンクは複数の湯の流出入口を有し、この流出入口は貯湯タンクの上部および中間部に形成されており、制御装置は、ヒートポンプ冷媒回路で加熱された水の温度に応じて流出入口を切替えるものであってよい。また、ヒートポンプ冷媒回路は冷媒と水とが熱交換する水冷媒熱交換器を有し、水冷媒熱交換器で加熱された湯水と貯湯タンクの上部の湯水とを混合する湯水混合弁と、水冷媒熱交換器と湯水混合弁と貯湯タンクの中間部とを接続する切替弁とを設け、この切替弁は、水冷媒熱交換器を湯水混合弁にだけ連通させる切替え位置と、水冷媒熱交換器を貯湯タンクの中間部にだけ連通させる切替え位置と、貯湯タンクの中間部を湯水混合弁にだけ連通させる切替え位置とを有するものが好ましい。
【0014】
さらに、貯湯タンクの上部および中間部に湯の流出入口を設け、制御装置は、この貯湯タンクの湯だけを給湯するときは、貯湯タンクの上部と中間部に設けた流出入口を用いて貯湯タンクの湯を供給するのがよい。制御装置は、給湯端末から湯の使用要求があったら貯湯タンクから湯を供給し、予め定めた時間経過したときに使用要求が継続していたら、ヒートポンプ冷媒回路を起動するのが好ましい。この予め定めた時間を、10秒ないし1分とするのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒートポンプ給湯装置が備える圧縮機の短時間運転を回避したので、ヒートポンプ給湯装置の湯切れを防止できるとともに、湯の使用パターンに関係なくヒートポンプ給湯装置のエネルギー効率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るヒートポンプ給湯装置の一実施例を、図面に基づいて説明する。図1および図2に、ヒートポンプ給湯装置100の系統図を示す。ヒートポンプ給湯装置
100は、ヒートポンプ冷媒回路90および給水回路91,給湯回路92,風呂湯張り回路93,風呂追焚き加熱回路94,風呂追焚き吸熱回路95,タンク沸き戻し回路96に大別される。ヒートポンプ冷媒回路90の冷媒は二酸化炭素であり、ヒートポンプ冷媒回路90からは高温の湯が供給可能である。
【0017】
次に各回路ごとにその構成を、以下に説明する。ヒートポンプ冷媒回路90は、冷媒を圧縮して高温の冷媒とする圧縮機1、この圧縮機1で圧縮され高温となった冷媒と給湯のために供給された水(給水)とが熱交換する水冷媒熱交換器2、この水冷媒熱交換器2を出た冷媒を減圧する膨張弁3、この膨張弁3を出た低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器4を冷媒配管で接続して構成されている。
【0018】
圧縮機1は、インバータ制御により容量制御が可能になっており、低速(例えば1000
rpm)から高速(例えば6000rpm)まで回転速度を可変である。蒸発器4は空気冷媒熱交換器であり、室外ファン5により室外の大量の空気と減圧された冷媒とを熱交換させる。
【0019】
水冷媒熱交換器2は、冷媒側伝熱管2aと水側伝熱管2bとを有しており、冷媒側伝熱管2aの冷媒の流れと水側伝熱管2bの水の流れとは対向流になっている。そして、高温高圧の冷媒と低温の水とが熱交換する。即ち、水冷媒熱交換器2の入口で低温であった水が水側伝熱管2bを通過する際に徐々に加熱され、水冷媒熱交換器2の出口で、後述する制御装置120により設定された所定の温度に昇温される。
【0020】
給水回路91は、外部から上水を取り込むための給水金具11,取り込んだ上水を適正な水圧に調整する減圧弁12,給水量を測定する給水流量センサ13,給水がどれだけ水冷媒熱交換器2に流れているかを測定する水冷媒熱交換器流量センサ15,水冷媒熱交換器2側から給水金具11側へ水が逆流するのを防止するための逆止弁14を有する。給水金具11から水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bまでが水配管で接続されている。
【0021】
給湯回路92は、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bからヒートポンプ給湯装置100の外部の給湯配管に接続される給湯金具19までの水管路と、各部材とを含む。水冷媒熱交換器2から給湯金具19の間には、水側伝熱管2bで加熱された湯水を貯える貯湯タンク21と、水側伝熱管2bで加熱された湯水と貯湯タンク21に溜められた湯水とを混合するのに用いる第1湯水混合弁16と、第1湯水混合弁16を通過した湯水に給水回路
91から給水された水を混合するのに用いる第2湯水混合弁17と、第2湯水混合弁17を通過した湯水の流量を調整する流量調整弁18とが配置されている。
【0022】
また、切替弁40は、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bと第1湯水混合弁16との間に設けられ、貯湯タンク21の中間部21bとも接続可能である。なお、貯湯タンク21の上部21aは、第1湯水混合弁16と接続され、貯湯タンク21の下部21cは、給水回路91と接続されている。
【0023】
切替弁40は、三方弁である。切替弁40は、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bと第1湯水混合弁16だけを連通させる、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bと貯湯タンク
21の中間部21bだけを連通させる、貯湯タンク21の中間部21bと第1湯水混合弁16だけを連通させる、ことを切替える。
【0024】
切替弁40を切替えて、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bと第1湯水混合弁16だけを連通させる場合について説明する。第1湯水混合弁16で、水側伝熱管2bで加熱された湯水と貯湯タンク21の上部21aに溜められた湯水とが、混合される。これにより、給湯回路が形成される。
【0025】
貯湯タンク21には、タンク沸き戻し回路96の水冷媒熱交換器2が予め加熱した湯が貯えられる。制御装置120の指令により、貯湯タンク21に蓄えられた約60〜90℃の高温の湯を、水冷媒熱交換器2から供給された湯水と混合するのに、第1湯水混合弁
16を用いる。具体的には、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水が予め設定された温度に昇温されるまで、第1湯水混合弁16から、制御装置120で設定された所定の温度の湯水が供給される。
【0026】
なお、使用者が望む温度や出湯量(給湯負荷)が、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力を超えているときには、水冷媒熱交換器2から供給される所望の温度に達していない湯水に貯湯タンク21に貯えた高温の湯を常に混合する。そして、制御装置120で決定された所定の温度の湯水を、使用者に供給する。
【0027】
切替弁40を切替え、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bを貯湯タンク21の中間部
21bだけに連通させると、タンク沸き戻し回路96が形成される。タンク沸き戻し回路96については、後述する。切替弁40を切替え、貯湯タンク21の中間部21bを第1湯水混合弁16だけに連通させると、給湯回路92が形成される。このとき、第1湯水混合弁16では、貯湯タンク21の中間部21bに溜めた中温の湯水と貯湯タンク21の上部21aに溜めた高温の湯水が混合される。
【0028】
第2湯水混合弁17の一方の流入口は、水管路17bに接続されている。水管路17bは、給水回路91から分岐して形成されている。第2湯水混合弁17では、制御装置120の指令により、第1湯水混合弁16で混合された湯水と給水回路91から供給される水が混合される。制御装置120は、設定した給湯温度(約35〜60℃程度)の湯を、給湯金具19から出湯するために、第1湯水混合弁16と第2湯水混合弁17の開閉を制御する。
【0029】
風呂湯張り回路93は、給湯回路92の流量調整弁18と給湯金具19とを接続する管路19bから分岐している。風呂湯張り回路93は、分岐部19aから浴槽36に湯水を供給するための入出湯金具35までを含む。風呂湯張り回路93の配管中には、注湯電磁弁31およびフロースイッチ32,風呂循環ポンプ33,水位センサ34が、順次配置されている。
【0030】
注湯電磁弁31は、分岐部19aから浴槽36側に湯を導くのに用いられる。フロースイッチ32は、風呂湯張り回路93中の湯の流れを検出する。風呂循環ポンプ33は、追焚き時に浴槽36の湯水を、水冷媒熱交換器2に給水するのに用いられる。水位センサ
34は、浴槽36に注湯された湯水の水位を検出する。入出湯金具35と浴槽36に取り付けた風呂循環アダプタ36aとを、水管路36bで接続する。
【0031】
風呂追焚き加熱回路94は、浴槽36の湯水を再加熱するための回路であり、風呂追焚き熱交換器29を有している。風呂追焚き熱交換器29の2次冷媒側伝熱管29aの出口側に機内循環ポンプ23が接続されている。機内循環ポンプ23は、水管路29c内の水を加圧して水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bに供給する。水側伝熱管2bでは、水を加熱する。加熱されて温度上昇した水(高温水)は、給湯回路92から分岐した配管27b中に設けた追焚き電磁弁27と逆止弁28を通過する。ここで、風呂追焚き加熱回路94が動作中は、追焚き電磁弁27は開状態になっている。
【0032】
逆止弁28を経た高温水は、風呂追焚き熱交換器29の2次冷媒側伝熱管29aに流入する。風呂追焚き熱交換器29では、2次冷媒側伝熱管29a内の高温水の流れと浴槽水側伝熱管29b内の湯水の流れとが、対向流を形成している。浴槽水側伝熱管29b内の湯水と熱交換した高温水は、温度低下して低温水になり、機内循環ポンプ23に流入する。その後、低温水は、給水回路91の逆止弁14の下流側に接続された水管路14bから水冷媒熱交換器2に戻される。以後、風呂追焚き運転を継続している間中、この風呂追焚き加熱回路94を水が循環する。
【0033】
風呂追焚き吸熱回路95は、浴槽36内の湯水を加温する回路であり、浴槽36に設けた風呂循環アダプタ36aから、浴槽水を入出湯金具35を通じて風呂追焚き熱交換器
29に導く。浴槽36から取り出された浴槽水は、水位センサ34を経て、風呂循環ポンプ33に導かれる。風呂循環ポンプ33は、浴槽水を加圧してフロースイッチ32を介して風呂追焚き熱交換器29に供給する。このとき、風呂湯張り回路93に設けた注湯電磁弁31を閉状態にして、浴槽水を風呂追焚き熱交換器29に導く。浴槽水は、風呂追焚き熱交換器29の浴槽水側伝熱管29bを流通する際に加熱され、入出湯金具37を介して風呂循環アダプタ36aに戻される。
【0034】
タンク沸き戻し回路96は、水冷媒熱交換器2で加熱した湯を貯湯タンク21に導く回路である。切替弁40を切替えて、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bを第1湯水混合弁16にだけ連通させる場合について説明する。このとき、タンク沸き戻し回路96には、貯湯タンク21とこの貯湯タンクに送湯するための機内循環ポンプ23と、切替弁40と、第1湯水混合弁16とが含まれる。タンク沸き戻し回路96を動作させるときは、風呂追焚き加熱回路94が有する追焚き電磁弁27を閉にする。
【0035】
第1湯水混合弁16で、水冷媒熱交換器2側と貯湯タンク21側とを連通させる。第2湯水混合弁17では、第1湯水混合弁16と給水側とを遮断する。この状態で、機内循環ポンプ23を運転して、貯湯タンク21内の水を貯湯タンク21の下部から水冷媒熱交換器2に供給する。水冷媒熱交換器2で、貯湯タンク21内の水を約60〜90℃の高温水に加熱する。加熱された高温水は、第1湯水混合弁16を経て、貯湯タンク21の上部に戻される。
【0036】
なお、ヒートポンプ冷媒回路90を立上げる時などは、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力が十分でない。そこで、水冷媒熱交換器2が所定の温度で水を加熱するまで、風呂追焚き加熱回路94を用いて、予熱運転する。具体的には、追焚き電磁弁27を開とし、第1湯水混合弁16の水冷媒熱交換器2側と貯湯タンク21とを遮断する。第2湯水混合弁17の第1湯水混合弁16と給水側とも遮断する。この状態で、機内循環ポンプ23を運転し、水冷媒熱交換器2と風呂追焚き熱交換器29との間を水が循環するようにする。
【0037】
切替弁40を切替え、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bを貯湯タンク21の中間部
21bにだけ連通させる場合を、以下に説明する。この場合のタンク沸き戻し回路96は、貯湯タンク21とこの貯湯タンクに送湯するための機内循環ポンプ23と、切替弁40とを含む。タンク沸き戻し回路96を動作させるときは、風呂追焚き加熱回路94が有する追焚き電磁弁27を閉にする。
【0038】
第1湯水混合弁16は、貯湯タンク21側と第2湯水混合弁17側とを遮断する。この状態で、機内循環ポンプ23を運転して、貯湯タンク21内の水を、貯湯タンク21の下部21cから水冷媒熱交換器2に供給する。水冷媒熱交換器2で、貯湯タンク21内の水を60℃より低い、例えば、約40℃の中温水に加熱する。中温水は、切替弁40を経て、貯湯タンク21の中間部21bに戻される。
【0039】
なお、中温水を貯湯タンク21の中間部21bに貯湯するのは、次のような場合である。ヒートポンプ冷媒回路90を運転して給湯した時に、所定時間よりも短い時間で給湯回路92の給湯金具19からの給湯が停止したら、ヒートポンプ冷媒回路90を停止せず、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水の送湯先を給湯金具19から貯湯タンク21に変更する。そして、貯湯タンク21に加熱された湯水を貯湯し、ヒートポンプ冷媒回路90の運転時間を延長する。これにより、ヒートポンプ冷媒回路90の立上り状態で運転を停止するような、エネルギー効率の低い状態での使用時間を短縮する。
【0040】
例えば、給湯金具19から42℃の湯水が給湯されているときに、この温度状態(中温水)で貯湯タンク21に貯湯するなら、貯湯タンク21の貯湯位置を中間部21bにする。貯湯タンク21の残湯量が少ないと判断したら、給湯金具19から給湯していた温度より高い温度、例えば、60〜90℃の高温水に水冷媒熱交換器2で加熱する。そして、貯湯タンク21の上部21aに貯湯する。このように、貯湯タンク21の残湯量に合わせて、供給される水の水冷媒熱交換器2での加熱温度を設定し、設定された加熱温度に応じて貯湯タンク21の貯湯口を選定し、貯湯するのが望ましい。
【0041】
上記各回路を動作させるときの、制御装置120を用いた切替え動作について、以下に説明する。制御装置120は、ヒートポンプ冷媒回路90を運転/停止させる。また、圧縮機1の回転速度や膨張弁3の開度を制御する。さらに、給湯回路92の湯水混合弁16,17,流量調整弁18等の水関係機器にも制御信号(CS)を出力して制御する。なお、本実施例に示すヒートポンプ給湯装置100は、ヒートポンプ冷媒回路90の圧縮機1の吐出側に、圧縮機吐出圧力センサ51を有している。さらにヒートポンプ給湯装置100は、多数の温度センサを有しており、これらは制御装置120に、図示を省略したが、接続されている。
【0042】
ヒートポンプ冷媒回路90では、圧縮機1の吐出側に圧縮機吐出温度センサ50が、蒸発器4の冷媒入口側には蒸発器冷媒入口温度センサ52が、冷媒出口側には蒸発器冷媒出口温度センサ53が、蒸発器4の近傍には外気温度センサ54が、それぞれ設けられている。給水回路91では、給水金具11の近傍に給水温度センサ60が、給水ライン中であって水冷媒熱交換器2の水入口側よりも上流に、水冷媒熱交換器水入口温度センサ61がそれぞれ設けられている。
【0043】
給湯回路92では、水冷媒熱交換器2の水出口側よりも下流に水冷媒熱交換器水出口温度センサ62が、第1湯水混合弁16と第2湯水混合弁17の間の給湯ラインに混合温度センサ63が、第2湯水混合弁17の下流の給湯ラインに給湯温度センサ64が、それぞれ設けられている。貯湯タンク21では、高さ方向に位置を変えて、複数のタンク温度センサ65a〜65cが設けられている。
【0044】
このように各種センサを配置したヒートポンプ給湯装置100においては、宅内に配置した図示しないリモコンを用いて、使用者が所望の給湯温度Twsを設定する。制御装置120は、設定された所望の給湯温度Twsに基づいて、所望の温度の湯が給湯設備から給湯されるように上記各弁等を制御する。つまり、制御装置120は、第2湯水混合弁
17の下流に設けた給湯温度センサ64の目標温度を、設定給湯温度よりα0だけ高い温度(Tws+α0)に設定する。第1湯水混合弁16と第2湯水混合弁17との間に設けた混合温度センサ63の目標温度を、この温度よりもさらにα1だけ高い温度(Tws+α0+α1)に設定する。水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度は、さらに
α2だけ高い温度(Tws+α0+α1+α2)に設定される。
【0045】
本実施例では、水管路での放熱を考慮して、給湯回路92の上流になればなるほど、水冷媒熱交換器2に近ければ近いほど、目標温度を高く設定している。外乱等により、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bの出口温度や、第1湯水混合弁16から流出した湯水の混合温度が多少変動しても、所望の給湯温度より若干高めに温度設定し、その設定温度となるよう第2湯水混合弁17に流入する湯に混合する水の量を制御したので、所望の温度に調整できる。その結果、温度変動の少ない給湯を実現できる。
【0046】
タンク沸き戻し回路96を動作させる運転中に、切替弁40を切替えて、貯湯タンク
21の上部21aから貯湯する場合は、水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度を、季節や湯の使用量などの条件に応じて、高温水の温度である60〜90℃の範囲で変化させる。切替弁40を切替えて、貯湯タンク21の中間部21bから貯湯する場合は、水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度を、例えば、約40℃の中温水に設定する。
【0047】
中温水に温度設定するのは、ヒートポンプ冷媒回路90を運転して給湯するときであって、所定時間よりも短い時間で給湯回路92の給湯金具19からの給湯が終了した場合である。この場合、ヒートポンプ冷媒回路90を停止させないで、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水の送湯先を、給湯金具19から貯湯タンク21に変更する。水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度を大幅に変更しないで、給湯金具19から給湯される中温の給湯水と同程度の温度に設定される。中温水のまま貯湯するので、中温(例えば40℃)から高温(例えば60℃)に昇温させるための、加熱に要するエネルギーを節約することができる。
【0048】
ヒートポンプ冷媒回路90を動作させるときは、圧縮機1を回転速度制御する。水冷媒熱交換器2を含む冷媒循環系の熱容量が大きいので、圧縮機1の回転速度を変化させても、水冷媒熱交換器2の水出口温度はすぐには変化しない。すなわち、水出口温度の応答速度は遅い。そこで、水冷媒熱交換器2の水出口温度と関係する特性であって、応答速度の速い圧縮機1の吐出圧力を、制御目標に用いる。貯湯式ヒートポンプ給湯装置では、所望温度の湯を瞬時に供給できるが、瞬間式ヒートポンプ給湯装置100ではヒートポンプ冷媒回路90の立上がり特性に、供給タイミングが左右される。
【0049】
以下に、瞬間式ヒートポンプ給湯装置100の立上がり特性を改善する方法を説明する。圧縮機1の吐出圧力は、水冷媒熱交換器2の水出口温度が高ければ高いほど、高い。目標吐出圧力Pd0は、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twh(=Tws+α0+
α1+α2)の関数であり、(式1)で表される。
【0050】
Pd0=f(Twh) …(式1)
目標吐出圧力Pd0と実際の吐出圧力Pdとの偏差ΔEpd(=Pd0−Pd)が0となるように、圧縮機1の回転速度を制御する。その際、例えば、圧縮機1の回転速度を、偏差ΔEpdおよび(偏差ΔEpd−前回偏差ΔEpd)の関数として、増減する。
【0051】
ヒートポンプ冷媒回路90を流れる水の流量が変化して、実際の吐出圧力Pdが目標吐出圧力Pd0に到達していても、水冷媒熱交換器2の水出口温度が目標値から外れていることも予想される。水冷媒熱交換器2の水出口温度が目標値に近づくように、目標吐出圧力Pd0を随時補正する。
【0052】
すなわち、所望の流量は使用者側の蛇口等の開度で決まり、リモコンから所望の給湯温度Twsが設定されるから、これら設定温度および使用流量に基づいて、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twhとなるように、制御装置120が圧縮機1の回転速度を制御する。また、膨張弁3の開度を、過熱度制御する。具体的には、蒸発器4の冷媒出口温度と冷媒入口温度の温度差である過熱度が所定値となるように、膨張弁3の開度を制御する。
【0053】
以下、給湯開始から停止までの一連の運転中におけるヒートポンプ給湯装置100の動作について説明する。給湯金具19や注湯電磁弁31,浴槽金具37等に接続された給湯端末における湯の使用時間が数十秒程度と短い場合には、圧縮機1を起動しない。その代わり、給湯端末へ、貯湯タンク21から湯を供給する。
【0054】
図3に、給湯端末を開閉したときに、ヒートポンプ冷媒回路90がどのように運転/停止されるかを、タイミングチャートで示す。図3(a)は、ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始から、例えば、180秒以上経過した後に給湯端末が閉じられた場合であり、図3(b)は、ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始から、例えば、180秒経たないうちに、給湯端末が閉じられた場合である。圧縮機1の頻繁な運転/停止による性能低下を防止するために、給湯端末が開かれても所定時間だけは、圧縮機1を運転しない。圧縮機1が起動してヒートポンプ冷媒回路90が起動したら、いずれの場合でも、給湯端末が閉じられてから所定時間、例えば、180秒経過するまで、ヒートポンプ冷媒回路90を運転し続ける。
【0055】
より詳細を、以下に説明する。給湯金具19に接続された図示しない蛇口が開栓されると、水道圧により給水金具11から流入した上水が、減圧弁12および給水流量センサ
13,逆止弁14,水冷媒熱交換器流量センサ15,水冷媒熱交換器2,切替弁40,第1湯水混合弁16,第2湯水混合弁17,流量調整弁18,給湯金具19を順次経て、蛇口から流出する。なお、水冷媒熱交換器2と第1湯水混合弁16とが連通するように、切替弁40を切替える。このとき、上記給湯ラインに設けた給水流量センサ13が水流を検出してから、例えば30秒間だけはヒートポンプ冷媒回路90の圧縮機1を起動しない。給水流量センサ13の検出時間の長さを、制御装置120が備える図示しないタイマで計測する。タイマは、給水流量センサ13に設けられていてもよい。
【0056】
給湯端末に貯湯タンク21から湯を供給するには、混合温度センサ63の目標温度と貯湯タンク21の中間部タンク温度センサ65bの温度との関係により、2通りの供給方法がある。図4に、図1に示したのと同様のヒートポンプ給湯装置の系統図を示す。この図4では、貯湯タンク21の上部21aに貯めた高温の湯水と、貯湯タンク21の中間部
21bに貯めた中温の湯水を混合して給湯する場合に形成される水流路を、太実線で示している。混合温度センサ63の目標温度が、貯湯タンク21の中間部タンク温度センサ
65bの温度よりも高い場合である。
【0057】
すなわち、給湯端末へ給湯する混合温度センサ63の目標温度は、貯湯タンク21の上部21aの60〜90℃の高温水より低い。そのため、貯湯タンク21の中間部21bの湯水温度が、混合温度センサ63の目標温度より低かったら、貯湯タンク21の上部21aの湯水と中間部21bの湯水とを適切に混合すれば、混合温度センサ63の目標温度の湯水を生成することができる。このとき、切替弁40は、貯湯タンク21の中間部21bと第1湯水混合弁16とを連通するように、切替えられている。
【0058】
貯湯タンク21に貯湯される中温水の元は、2種類ある。1つは、高温で貯湯タンク
21に貯湯された後、放熱により温度の低下した湯水である。もう1つは、ヒートポンプ冷媒回路90を運転して給湯しているときに、短時間だけ給湯回路92の給湯金具19から給湯して給湯が終了した場合である。この後者の場合には、ヒートポンプ冷媒回路90を停止させないで、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水の送り先を、給湯金具19から貯湯タンク21に変更している。
【0059】
これらの中温水は、そのままでは、給湯水としての温度が低く、給湯水として使用できない。しかし、高温水と混合すれば、有効に使用できる。つまり、ヒートポンプ冷媒回路90で生成した後に何らかの理由で温度が低い中温となった水の熱量を、有効に使い切ることができる。それとともに、貯湯タンク21内の中温水量を低減したので、タンク沸き戻しの際に、水冷媒熱交換器2の水入口温度を低下させることができ、タンク沸き戻しにおけるCOPが向上する。この理由は、沸き戻し温度が同一であれば、水冷媒熱交換器2の入水温度が低いほど、COPが高くなるからである。
【0060】
混合温度センサ63の温度が目標温度(Tws+α0+α1)になるように、制御装置120が、第1湯水混合弁16の開度を制御する。そして、第1湯水混合弁16で、貯湯タンク21の上部21aの高温湯と中間部21bの中温水とを混合する。さらに、給湯温度センサ64の温度が目標温度(Tws+α0)になるように、下流の第2湯水混合弁
17で混合させる水量を、制御装置120が制御する。第2湯水混合弁17で湯水の混合量を調整されて、蛇口には適温の湯が供給される。
【0061】
図5に、図1と同様のヒートポンプ給湯装置100の系統図を示す。この図5では、制御装置120及び各センサと制御装置120の接続関係を省略しているが、これらについては、図1の実施例と同様である。貯湯タンク21の上部21aに貯めた高温の湯水と、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bを通過した給水とを混合して給湯する水経路を、太実線で示している。本図は、混合温度センサ63の目標温度が貯湯タンク21の中間部タンク温度センサ65bの温度以下の場合に相当する。切替弁40は、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bと第1湯水混合弁16とが連通するように、切替えられている。
【0062】
混合温度センサ63の温度が、目標温度(Tws+α0+α1)になるように、制御装置120が、第1湯水混合弁16の開度を制御する。そして、第1湯水混合弁16で貯湯タンク21の上部21aの高温湯と水冷媒熱交換器2から流出した加熱されていない水とを混合する。さらに、給湯温度センサ64の温度が目標温度(Tws+α0)になるように、下流の第2湯水混合弁17で混合させる水量を、制御装置120が制御する。第2湯水混合弁17で湯水の混合量を調整されて、蛇口には適温の湯が供給される。
【0063】
本実施例では、蛇口などの給湯端末の使用が30秒以内であれば、圧縮機1を起動しない。タンク沸き戻し回路96を用いた貯湯運転で作った貯湯タンク21内の湯だけを使用する。したがって、水流が検出されれば、圧縮機1を起動する従来の方法に比べて、圧縮機1の使用時間が短かくなる。それととともに、頻繁な圧縮機1の起動/停止を防止できる。なお、給湯要求が無い時に、ヒートポンプ冷媒回路90と機内循環ポンプ23を運転し、発生した湯を貯湯タンク21に貯える。その際、貯湯タンク21の水は、機内循環ポンプ23および水冷媒熱交換器2,第1湯水混合弁16の順に、水経路を循環する。
【0064】
なお本実施例では、ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始条件として、給湯開始からの所定時間を用いている。しかしながら、例えば給湯量が多くて、貯湯タンク21の残湯量が所定量以下、または、温度センサの温度が所定値以下になったら、給湯開始から所定時間経過していなくても、ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始を早めるようにしてもよい。
【0065】
給湯端末から30秒以上継続して湯を使用するときは、ヒートポンプ冷媒回路90を作動させる。つまり、給水流量センサ13が水流を検出してから30秒経過したら、圧縮機1を起動する。この時の水経路は、図5に示した経路と同じである。切替弁40を切替えて、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2bを第1湯水混合弁16に連通させる。
【0066】
ヒートポンプ冷媒回路90が立上がるまでは、ヒートポンプ冷媒回路90から供給される湯水は、制御装置120が設定した所定の目標温度に達していない。そこで、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水と、貯湯タンク21に貯わえた、例えば、約60℃の湯とを混合する。混合温度センサ63が検出する温度が、所定の目標温度となるように、第1湯水混合弁16の開度を調整する。
【0067】
圧縮機1を起動すると、時間が経過するにつれて、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力が徐々に増加する。その結果、第1湯水混合弁16では、水冷媒熱交換器2側の流量が徐々に増加し、貯湯タンク21側の流量が徐々に減少する。使用者の所望の温度と出湯量が、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力以下であれば、水冷媒熱交換器2側の温度が所定の温度に到達したら、貯湯タンク21側からの湯の供給を止め、ヒートポンプ冷媒回路90側からだけ連続給湯する。
【0068】
一方、使用者の所望の温度と出湯量が、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力を超えているときには、水冷媒熱交換器2から所定の温度に達していない湯水が供給される。この所定温度に達していない湯水に、貯湯タンク21に貯えた高温の湯を混合して、使用者の所望の温度と出湯量の湯が、給湯端末から供給される。貯湯タンク21に貯えられた高温湯が無くなったら、給湯温度をそのままにして、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力で供給可能な流量まで、流量調整弁18が流量を絞る。この状態で、ヒートポンプ冷媒回路90から給湯端末に連続給湯する。
【0069】
給湯端末が閉じられたことを給水流量センサ13が検出した場合、ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始からの経過時間で、図3に示すようにヒートポンプ給湯装置100の動作が異なる。ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始から180秒以上経過している場合、貯湯タンク21の温度センサ65a〜65cが検出した湯温が設定値以上であれば、図示しない制御装置120が残湯量が多いと判断して、圧縮機1を停止する。
【0070】
貯湯タンク21の温度センサ65a〜65cが検出した湯温が設定値に満たないときには、残湯量が少ないと判断して、沸き戻し回路96を用いて沸き戻し運転する。この時の貯湯運転での水経路を、図6に太線で示す。約60〜90℃の高温水を、貯湯タンク21の上部21aから貯湯する。この図6でも、制御装置及び制御装置と各センサの接続関係を省略しているが、それらについては、図1に示した実施例と同様である。
【0071】
ヒートポンプ冷媒回路90の運転開始から180秒経過していない場合、ヒートポンプ冷媒回路90を停止しないで、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水の送り先を給湯端末から貯湯タンク21に変更する。貯湯タンク21に貯湯することで、ヒートポンプ冷媒回路90の運転時間を延長できる。この時、貯湯タンク21の温度センサ65a〜65cが検出した湯温が、設定値に満たないときには、残湯量が少ないと判断する。そして、図6に示した例と同じように、約60〜90℃の高温水を、貯湯タンク21の上部21aから貯湯する。貯湯タンク21に湯が所定高さまで貯えられたら、ヒートポンプ冷媒回路90を停止する。
【0072】
上記以外の場合には、図7に太線で示す水経路を形成する。この場合、中温水を貯湯タンク21の中間部21bから、貯湯する。水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度を、大幅には変更しない。給湯端末への中温(例えば42℃)の給湯水と同程度の温度を設定する。すなわち、ヒートポンプ冷媒回路90の出湯温度に応じて、貯湯タンク21の適切な位置に貯湯する。貯湯タンク21への貯湯に切替わってから所定時間経過したとき、または貯湯タンク21に湯が所定高さまで貯えられたとき、ヒートポンプ冷媒回路
90を停止する。
【0073】
本実施例によれば、ヒートポンプ給湯機を立上り状態でだけ運転して停止するという、エネルギー効率の低い運転及び短時間運転を回避することができる。なお、本実施例では、給湯端末が開かれたことを給水流量センサ13が検出してから30秒経過後に、圧縮機1を起動させているが、使用者ごとに圧縮機の起動時間を変えてもよい。また、使用時間帯で、この時間を変えてもよい。さらに、学習制御を用いて、使用者の給湯パターンを学習し、給湯時間の短い場合と長い場合を統計し、圧縮機の起動時間を決定してもよい。
【0074】
本実施例では、1個の貯湯タンク21を有する場合について説明したが、直列に複数個の貯湯タンクを接続した場合でも、同様の手順を踏むことにより、同様の効果が得られる。この場合、複数の貯湯タンクを直列に接続する配管部に、切替弁40を設けるのがよい。
【0075】
なお、図1に示したヒートポンプ給湯装置100は、風呂自動湯張り機能も有している。使用者が、図示しないリモコンを用いて風呂温度を、例えば42℃に設定し、図示しない風呂自動湯張りボタンをONにすると、風呂湯張り回路93の注湯電磁弁31が開く。このとき、水道圧により給水金具11から流入した水が、減圧弁12および給水流量センサ13,逆止弁14,水冷媒熱交換器流量センサ15,水冷媒熱交換器2,第1湯水混合弁16,第2湯水混合弁17,流量調整弁18,注湯電磁弁31,フロースイッチ32,風呂循環ポンプ33,水位センサ34,入出湯金具35,風呂循環アダプタ36aを経て、加温されて浴槽36へ供給される。
【0076】
風呂自動湯張りにおいては、上水の給水を給水流量センサ13が検出する。しかし、風呂自動湯張りボタンがONになっているので、給湯時間が長いと、制御装置120は自動的に判断する。そこで制御装置120は、給水流量センサ13が水流を検出してから30秒経過しないうちに、ヒートポンプ冷媒回路90の圧縮機1を起動する。
【0077】
ここで、制御装置120は給水流量センサ13の流量が所定値となるように、流量調整弁18の開度を制御する。ヒートポンプ冷媒回路90が立上がるまでの湯水の温度は、制御装置120に設定された所定の目標温度より低い。そこで、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水と、貯湯タンク21に貯えた約60℃の湯を第1湯水混合弁16で混合する。そして、混合温度センサ63が検出する温度が目標温度となるように、制御装置120が第1湯水混合弁16での混合量を制御する。なお、貯湯タンク21の湯を再加熱もしくは貯湯することは、上記給湯端末からの給湯後と同様である。また制御装置120は、ヒートポンプ冷媒回路90の起動時に、給湯端末からの給湯と同様に、各弁を切替え制御する。
【0078】
浴槽36の湯が所定の水位になったことを水位センサ34が検出したら、制御装置120は注湯電磁弁31をOFFにする。リモコンは風呂湯張りが完了したことを、メロディ等で知らせる。この時、貯湯タンク21に取り付けた温度センサ65aの湯温が設定値未満であれば、残湯量が少ないと制御装置120は判断する。そして、沸き戻し回路96を用いて、沸き戻し運転する。温度センサ65aの湯温が設定値以上であれば、残湯量が多いと制御装置120が判断し、圧縮機1を停止させる。
【0079】
以上述べたように、本実施例によれば、給湯を開始してから所定時間経過した後に圧縮機を起動するので、短時間だけの給湯におけるヒートポンプ冷媒回路の起動を回避でき、エネルギー効率の低い立上り運転の運転時間を低減できる。また、ヒートポンプ冷媒回路を用いて給湯端末に給湯する時に、所定時間よりも短い時間で給湯端末への給湯が終了したら、ヒートポンプ冷媒回路を停止させないで、貯湯タンクへの貯湯運転に移行することで、ヒートポンプ冷媒回路の短時間運転を回避することができる。したがって、ヒートポンプ給湯装置のエネルギー効率が向上する。
【0080】
なお、上記実施例では、給湯端末を開にしてから30秒後に、ヒートポンプ冷媒回路を運転しているが、この時間は10秒ないし1分程度の範囲であれば、圧縮機の頻繁な起動/停止を回避できる。また、ヒートポンプ冷媒回路の運転後、3分以上継続して運転させているが、この時間も1分ないし5分程度であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るヒートポンプ給湯装置の一実施例の回路図である。
【図2】図1に示したヒートポンプ給湯装置の各部の回路図である。
【図3】給湯端末の開閉とヒートポンプ冷媒回路の運転停止の関係を説明する図である。
【図4】図1に示したヒートポンプ給湯装置の給湯運転を説明する図である。
【図5】図1に示したヒートポンプ給湯装置の給湯運転を説明する図である。
【図6】図1に示したヒートポンプ給湯装置の貯湯運転を説明する図である。
【図7】図1に示したヒートポンプ給湯装置の貯湯運転を説明する図である。
【符号の説明】
【0082】
1 圧縮機
2 水冷媒熱交換器
3 膨張弁
4 蒸発器
13 給水流量センサ
15 水冷媒熱交換器流量センサ
16 第1湯水混合弁
17 第2湯水混合弁
18 流量調整弁
21 貯湯タンク
31 注湯電磁弁
36 浴槽
40 切替弁
50 吐出温度センサ
51 吐出圧力センサ
52 蒸発器冷媒入口温度センサ
53 蒸発器冷媒出口温度センサ
61 水冷媒熱交換器水入口温度センサ
62 水冷媒熱交換器水出口温度センサ
63 混合温度センサ
64 給湯温度センサ
90 ヒートポンプ冷媒回路
100 ヒートポンプ給湯装置
120 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱するヒートポンプ冷媒回路と、このヒートポンプ冷媒回路が加熱した水を貯湯する貯湯タンクとを備え、前記ヒートポンプ冷媒回路で発生した湯と前記貯湯タンクに貯えた湯とを給湯端末に供給可能なヒートポンプ給湯装置において、前記ヒートポンプ冷媒回路を運転してから所定時間経過するまではこのヒートポンプ冷媒回路の運転を停止させないように制御する制御装置を設けたことを特徴とするヒートポンプ給湯装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ヒートポンプ冷媒回路を運転して水を加熱し、湯として給湯端末に供給を継続しているときであって、このヒートポンプ冷媒回路を運転開始してから所定時間経過する前に給湯端末への供給が停止されたら、このヒートポンプ冷媒回路の運転を停止せずにヒートポンプ冷媒回路で加熱された水を前記貯湯タンクに貯湯するように制御することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項3】
前記貯湯タンクは複数の湯の流出入口を有し、この流出入口は貯湯タンクの上部および中間部に形成されており、前記制御装置は、前記ヒートポンプ冷媒回路で加熱された水の温度に応じて流出入口を切替えることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項4】
前記ヒートポンプ冷媒回路は冷媒と水とが熱交換する水冷媒熱交換器を有し、前記水冷媒熱交換器で加熱された湯水と前記貯湯タンクの上部の湯水とを混合する湯水混合弁と、前記水冷媒熱交換器と前記湯水混合弁と前記貯湯タンクの中間部とを接続する切替弁とを設け、この切替弁は、前記水冷媒熱交換器を前記湯水混合弁にだけ連通させる切替え位置と、前記水冷媒熱交換器を前記貯湯タンクの中間部にだけ連通させる切替え位置と、貯湯タンクの中間部を湯水混合弁にだけ連通させる切替え位置とを有することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項5】
前記貯湯タンクの上部および中間部に湯の流出入口を設け、前記制御装置は、この貯湯タンクの湯だけを給湯するときは、貯湯タンクの上部と中間部に設けた流出入口を用いて貯湯タンクの湯を供給することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項6】
前記制御装置は、給湯端末から湯の使用要求があったら貯湯タンクから湯を供給し、予め定めた時間経過したときに使用要求が継続していたら、前記ヒートポンプ冷媒回路を起動することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項7】
前記所定時間を、1分ないし5分としたことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項8】
前記予め定めた時間を、10秒ないし1分としたことを特徴とする請求項6に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項9】
前記制御装置は、貯湯タンクへの貯湯に切替わってから所定時間経過したときまたは貯湯タンクの湯の液位が所定位置に達したら、前記ヒートポンプ冷媒回路を停止することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−138925(P2008−138925A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325102(P2006−325102)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】