説明

ビシクロ[3.3.1]ノナン類およびビシクロ[3.3.1]ノネン類並びに風味剤または芳香成分としてのこれらの使用

本発明は、式(I)


式中、RおよびR〜Rは、明細書中に記載したのと同一の意味を有する、
で表される置換ビシクロ[3.3.1]ノナン類およびビシクロ[3.3.1]ノネン類に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、琥珀様(ambery)、木材様臭気ノート(note)を有する置換ビシクロ[3.3.1]ノナン類およびビシクロ[3.3.1]ノネン類に関する。本発明はさらに、これらの製造方法並びにこれらを含む風味剤(flavour)および芳香組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香産業において、臭気ノートを増強もしくは改善するか、または新たな臭気ノートを付与する新たな化合物に対する継続的な要求が、常にある。
【発明の開示】
【0003】
驚異的なことに、本発明者らは、多くの求められている琥珀様木材様臭気ノートを有し、容易に入手できる安価であり、天然に入手可能な出発物質から製造することができる新規な群の化合物を見出した。
【0004】
本発明の第1の観点において、式(I)
【化1】

式中、
Rは、イソプロピルもしくはイソプロペニルであり;
は、水素、メチルもしくはエチルであり;
およびRは、独立して、水素、メチルもしくはエチルであり;または
およびRは、一緒にエチリデンであり;または
およびRは、一緒に、これらが結合する炭素原子と共にシクロプロパンを形成する2価の基(CHであり;
【0005】
およびRは、独立して、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシもしくはC〜Cアシルオキシ、例えばアセトキシであり;または
およびRは、これらが結合する炭素原子と共に、1,3−ジオキソラン環もしくは1,3−ジオキサン環を形成し;または
およびRは、これらが結合する炭素原子と共に、カルボニル基を形成し;
C2とC3との間の結合は、単結合であるか、もしくは点線は、C2とC3との間の結合と共に二重結合を表し;かつ
C7とC8との間の結合は、単結合であるか、もしくは点線は、C7とC8との間の結合と共に二重結合を表す、
で表される化合物に言及する。
【0006】
本発明の化合物は、数個のキラル中心を含み、これ自体立体異性体の混合物として存在し得るか、またはこれらを、異性体的に純粋な形態として分割することができる。立体異性体を分割することにより、これらの化合物の製造および精製の複雑さが加えられ、従って、当該化合物を、単に経済的な理由によりこれらの立体異性体の混合物として用いるのが、好ましい。しかし、個別の立体異性体を製造するのが望ましい場合には、これを、当該分野において知られている方法、例えば分取HPLCおよびGCにより、または立体選択性合成により達成することができる。
【0007】
式(I)で表される特に好ましい化合物は、5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;4−エチル−5−イソプロペニル−8−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;5−イソプロペニル−3,3,4,8−テトラメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;5−イソプロペニル−8,8−ジメトキシ−2,6−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−2−エン;4,8−ジメチル−5−イソプロペニルスピロ[ビシクロ[3.3.1]ノナン−2,2’−[1,3]ジオキソラン];5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール;5−イソプロペニル−2,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール;5−イソプロピル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノナン−2−オン、5−イソプロペニル−8−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン、5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン、および4,8−ジメチル−5−イソプロペニル−8−メトキシ−ビシクロ[3.3.1]ノン−7−エンである。
【0008】
本発明の化合物は、単独で、またはベース材料と組み合わせて用いることができる。本明細書中で用いる「ベース材料」は、現在入手できる広範囲の天然の、および合成の分子から選択されたすべての既知の着臭剤分子、例えばエッセンシャルオイル、アルコール類、アルデヒド類およびケトン類、エーテル類およびアセタール類、エステル類およびラクトン類、大環状化合物および複素環式化合物、および/または芳香組成物中で着臭剤と組み合わせて慣用的に用いられる1種もしくは2種以上の成分もしくは賦形剤、例えば担体材料、および当該分野において一般的に用いられている他の補助剤との混合物を含む。
【0009】
以下のリストは、本発明の化合物と混ぜ合わせることができる、既知の着臭剤分子の例を含む:
−エーテル油および抽出物、例えばツリーモスアブソリュート(absolute)、メボウキ油、海狸香、コスタス根油、ギンバイカ油、オークモスアブソリュート、ゼラニウム油、ジャスミンアブソリュート、パチョリ油、ローズ油、ビャクダン油、ヨモギ油、ラベンダー油またはイランイラン油;
−アルコール類、例えばシトロネロール、エバノール(Ebanol)(登録商標)、オイゲノール、ファルネソール、ゲラニオール、スーパーミューゲ(Super Muguet)(登録商標)、リナロール、フェニルエチルアルコール、サンダロア(Sandalore)(登録商標)、テルピネオールまたはチンベロール(Timberol)(登録商標)。
【0010】
−アルデヒド類およびケトン類、例えばα−アミルシンナムアルデヒド、ゲオルギーウッド(Georgywood)(登録商標)、ヒドロキシシトロネラール、イソEスーパー(Iso E Super)(登録商標)、イソラルデイン(Isoraldeine)(登録商標)、ヘジオン(Hedione)(登録商標)、マルトール、メチルセドリルケトン、メチルイオノンまたはバニリン;
−エーテルおよびアセタール類、例えばアンブロックス(Ambrox)(登録商標)、ゲラニルメチルエーテル、ローズオキシドまたはスピランブレン(Spirambrene)(登録商標)。
−エステル類およびラクトン類、例えば酢酸ベンジル、酢酸セドリル、γ−デカラクトン、ヘルベトリド(Helvetolide)(登録商標)、γ−ウンデカラクトンまたは酢酸ベチベニル。
−大環状化合物、例えばアンブレットリド、エチレンブラシレートまたはエクサルトリド(Exaltolide)(登録商標)。
−複素環式化合物、例えばイソブチルキノリン。
【0011】
本発明の化合物を、広範囲の芳香用途において、例えば上質および機能的香料、例えば香水、家庭用品、ランドリー製品、ボディーケア製品および化粧品のすべての分野において、用いることができる。この化合物を、特定の用途並びに他の着臭剤成分の性質および量に依存して、広範囲に変化する量で用いることができる。比率は、典型的には、適用品(application)の0.001〜20重量パーセントである。1つの態様において、本発明の化合物を、織物柔軟剤において、0.001〜0.05重量パーセントの量で用いることができる。他の態様において、本発明の化合物を、上質香料において、0.1〜20重量パーセント、一層好ましくは0.1〜5重量パーセントの量で用いることができる。しかし、経験のある香水業者はまた、一層低い、または一層高い濃度を用いて、効果を達成することができるか、または新規な調和を作成することができるため、これらの値は、例としてのみ示される。
【0012】
本発明の化合物は、芳香適用品中において、単に芳香組成物を芳香適用品と直接混合することにより用いることができるか、またはこれらを、一層早期の段階において、封入材料、例えばポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、フィルム形成剤、吸収剤、例えば炭素もしくはゼオライト、環状オリゴ糖類およびこれらの混合物を用いて封入することができるか、またはこれらを、基質に化学的に結合させ、これを、外部の刺激、例えば光、酵素などを適用することにより芳香分子を放出させ、次に適用品と混合するように適合させることができる。
【0013】
従って、本発明はさらに、芳香適用品の製造方法であって、式(I)で表される化合物を、芳香成分として、式(I)で表される化合物を適用品に直接混合することにより、または式(I)で表される化合物を含む芳香組成物を混合し、次にこれを、慣用の手法および方法を用いて芳香適用品に混合することができることにより導入することを含む、前記方法を提供する。
【0014】
本明細書中で用いる「芳香適用品」は、着臭剤を含むすべての製品、例えば上質香料、例えば香水およびオードトワレ;家庭用品、例えば食器洗浄機用の洗浄剤、表面洗浄剤;ランドリー製品、例えば柔軟剤、漂白剤、洗浄剤;ボディーケア製品、例えばシャンプー、シャワー用ジェル;並びに化粧品、例えばデオドラント、バニシングクリームを意味する。製品のこのリストは、例示により示し、いかなる方法によっても限定するものとみなされるべきではない。
【0015】
およびRが、これらが結合する炭素原子と共に、カルボニル基を形成する、式(I)で表される化合物(以下の式(II)を参照)は、α−ピネンをα,β−不飽和カルボン酸類またはこの誘導体、例えばハロゲン化アルケノイル、例えば塩化クロトニル、臭化クロトニルおよび塩化ペンテノイル;または無水アルケノイル、例えば無水クロトン酸と、触媒量の酸、例えばルイス酸またはブレンステッド酸の存在下で反応させることにより、調製することができる。
【化2】

【0016】
驚異的なことに、本発明者らは、式(I)で表されるある種の化合物はまた、α−ピネンをβ,γ−不飽和カルボン酸類またはβ−ヒドロキシカルボン酸類と反応させることにより調製することができ、触媒量の酸の存在下で式(II)で表されるケトンを生成することを見出した。酸性条件により、β,γ−不飽和カルボン酸類およびβ−ヒドロキシカルボン酸類は共に、対応するα,β−不飽和カルボン酸類に変換され、次にこれがα−ピネンと反応すると考えられる。
【0017】
式(II)で表される得られた化合物を、アルキル化して、式(I)で表されるさらなる化合物を生成することができる。式(I)で表されるさらに別の化合物を、C2におけるカルボニル基の還元および/またはアシル化により、またはC2におけるカルボニル基のグリニヤール反応およびアシル化により調製することができる。式(I)で表されるさらなる他の化合物を、水素添加により調製することができる。
【0018】
またはRのいずれも水素ではなく、RおよびRが、これらが結合する炭素原子と共にカルボニル基を形成する、式(I)で表される化合物はまた、α−ピネンをα,β−不飽和α−アルキルカルボン酸類、例えば塩化2−メチルクロトニル、塩化2−エチルクロトニル、無水2−メチルクロトン酸と、触媒量の酸の存在下で反応させることにより、調製することができる。
【0019】
式(I)で表される光学的に純粋な化合物および1種の鏡像体が豊富である式(I)で表される化合物の鏡像体混合物を、それぞれ光学的に純粋なα−ピネンまたは(S)−(+)−α−ピネンもしくは(R)−(−)−α−ピネンのいずれかが豊富である鏡像体混合物から開始することにより、合成することができる。
本発明を、ここで、以下の非限定的な例を参照してさらに記載する。
【0020】
例1:5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(1)
a)30gのα−ピネン((1S)−(−)/(1R)−(+) 90:10、0.22mol)、67.8gの無水クロトン酸(0.44mol、2当量)および4.95gの臭化亜鉛(0.021mol、0.1当量)の混合物を、95℃で7時間加熱した。次に、反応混合物を、50mlのHOで処理し、3時間加熱還流した。EtOでの抽出、有機相のNaSOでの乾燥、続いてVigreux蒸留およびFC(フラッシュクロマトグラフィー)(SiO、ヘキサン/EtO 95:5)により、990mg(2%)の化合物1が得られた。最終生成物の沸点は、0.07torr(0.09mbar)において80℃である。
【数1】

臭気の記載:木材様、樹脂様、モミ、フルーツ様ラズベリーケトン様、オリバナム様、システ(ciste)、琥珀様
【0021】
b)上記に記載した手順により、塩化クロトニルの存在下で(−)−α−ピネンから開始し90℃で4時間。
【数2】

臭気の記載:フルーツ様、木材様、松様、琥珀様。
c)上記に記載した手順により、無水クロトン酸の存在下で(+)−α−ピネンから開始し95℃で6時間。
【数3】

臭気の記載:グレープフルーツ、レッドフルーツ、松様、琥珀様。
【0022】
【表1】

【0023】
例2:4−エチル−5−イソプロペニル−8−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(2)
30℃において、7.35gの塩化2−ペンテノイル(62mmol)および1.7gの塩化亜鉛(12mmol、0.2当量)の、85mlの塩化エチレン中の混合物を、20分以内に、19.4gの(−)−アルファ−ピネン(142mmol、2当量)を20mlの二塩化エチレンに溶解した溶液で滴下して処理した。次に、反応混合物を、30℃で30分間、次に50℃で2時間、および最後に80℃で1時間撹拌した。冷却後、反応混合物を、水性飽和NaCl溶液および水性飽和NaHCO溶液で洗浄した。水性相を、EtOで抽出し、乾燥し(NaSO)、濃縮した。粗製物(26g)のFC(SiO、ヘキサン/EtO 20:1)により、1.74g(13%)の化合物2が得られた。最終生成物の沸点は、0.06torr(0.08mbar)において95℃である。
【0024】
【表2】

臭気の記載:琥珀様、木材様、スパイス様。
【0025】
例3:(1S3S4S5R)−5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(3)
0℃において、15.3mlのLDA(THF/ヘプタン/エチルベンゼン中で2M、31mmol、2.5当量)の溶液を、2.5gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(12mmol)を25mlのTHFに溶解した溶液で滴下して処理した。反応混合物を、0℃で1.5時間撹拌し、2.6mlのヨウ化メチル(41.7mmol、3.4当量)で処理し、25℃で3時間撹拌し、1Mの水性HCl溶液中に注入した。MTBEでの抽出(2×80ml)、有機相のHO、水性飽和NaCl溶液での洗浄、乾燥(MgSO)により、3.6gの粗製物が得られた。FC(ヘキサン/MTBE 24:1)により、0.56g(21%)の化合物3が得られた。最終生成物の沸点は、0.08mbarにおいて120℃である。R(ヘキサン/MTBE 24:1) 0.26。
【0026】
【表3】

臭気の記載:木材様、グリーン、花様、バラ様、琥珀様。
【0027】
例4:5−イソプロペニル−3,3,4,8−テトラメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(4)
55℃において、9.9gのKOH(176mmol、15当量)の40mlのDMSO中の混合物を、2.4gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチル−ビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(11.7mmol)を3.7mlのヨウ化メチル(59mmol、5当量)に溶解した溶液で滴下して処理した。反応混合物を、60℃で1.5時間撹拌し、2.0mlのヨウ化メチル(32mmol、2.7当量)で処理し、60℃で1.5時間撹拌し、1.7mlのヨウ化メチル(27mmol、2.3当量)で処理し、60℃で1.5時間撹拌し、冷却し、200mlの2Mの水性HCl溶液中に注入した。ヘキサンでの抽出(2×100ml)、有機相のHO、水性飽和NaCl溶液での洗浄、乾燥(MgSO)により、2.6gの粗製物が得られた。FC(ヘキサン/MTBE 15:1)により、0.7g(26%)の化合物4が得られた。最終生成物の沸点は、0.08mbarにおいて120℃である。R(ヘキサン/MTBE 15:1) 0.27。
【0028】
【表4】

臭気の記載:木材様、琥珀様。
【0029】
例5:(1S4S5R)−5−イソプロペニル−8,8−ジメトキシ−2,6−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−2−エン(5)
1.5gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(7.3mmol)、1.4gのパラ−トルエンスルホン酸一水和物(7.4mmol、1当量)および0.78gのオルトギ酸トリメチル(7.4mmol、1当量)を50mlのメタノールに溶解した溶液を、60℃で66時間加熱した。次に、反応混合物を冷却し、水性飽和NaHCO溶液(20ml)中に注入した。MTBEでの抽出(2×80ml)、続いて有機相のHOおよび水性飽和NaCl溶液での洗浄、有機相の乾燥(MgSO)により、1.8gの粗生成物が得られた。FC(SiO、ヘキサン/MTBE 30:1)により、1.7g(92%)の化合物5が、無色液体として得られた。最終生成物の沸点は、0.08mbarにおいて130℃である。R(ヘキサン/MTBE 8:1) 0.57。
【0030】
【表5】

臭気の記載:琥珀様、木材様、フルーツ様、甘い。
【0031】
例6:(1S4S5R)−4,8−ジメチル−5−イソプロペニルスピロ[ビシクロ[3.3.1]ノナン−2,2’−[1,3]ジオキソラン](6)
2.0gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(9.8mmol)を100mlのシクロヘキサンに溶解した溶液を、1.8gのエチレングリコール(2.9mmol、3.0当量)および0.2gのパラ−トルエンスルホン酸一水和物(1.0mmol、0.1当量)で処理した。得られた溶液を、3時間加熱還流し(Dean-Stark装置)、冷却し、水性飽和NaHCO溶液(100ml)中に注入した。MTBEでの抽出(2×80ml)、続いて有機相のHO(100ml)および水性飽和NaCl溶液(150ml)での洗浄、有機相のMgSO上での乾燥により、2.6gの粗生成物が得られた。FC(SiO、ヘキサン/MTBE 19:1)により、0.76g(31%)の化合物6が、無色液体として得られた。最終生成物の沸点は、0.09mbarにおいて130℃である。R(ヘキサン/MTBE 19:1) 0.47。
【0032】
【表6】

臭気の記載:フルーツ様、スパイス様、木材様。
【0033】
例7:5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(7Aおよび7B)
【化4】

5℃において、1gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(4.9mmol)を5mlのエタノールに溶解した溶液を、0.37gのNaBH(9.8mmol、2当量)で処理した。次に、反応混合物を、2時間25℃で撹拌し、1Nの水性HCl溶液中に注入し、EtOで抽出した。有機相を、水性飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥し、濃縮した。粗製物(1g、7A/7B 30:70)のFC(ヘキサン/EtO 9:1〜9:2)により、0.1gの7A(10%)、0.2gの7A/7B(1:1、20%)および0.4gの7B(40%)が得られた。
【0034】
(1S2R4S5R)−5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(7A(エクソ))
沸点:0.06torr(0.08mbar)において100℃。
【表7】

臭気の記載:花様、田舎様、バラ様、グリーン。
【0035】
(1S2S4S5R)−5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(7B(エンド))
沸点:0.05torr(0.07mbar)において80℃。
【表8】

臭気の記載:花様、イソノナノール様、グレープフルーツ。
【0036】
例8:5−イソプロペニル−2,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(8Aおよび8B)
【化5】

5℃において、1gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(4.9mmol)を15mlのTHFに溶解した溶液を、EtO中の1.4MのMeLi 21ml(29.4mmol、6当量)で滴下して処理した。反応混合物を、5時間5℃で撹拌し、一晩にわたり25℃に加温し、水性飽和NHCl溶液中に注入し、EtOで抽出した。有機相を、水性飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥し、濃縮した。粗製物(1.2g、出発物質/OHエクソ/OHエンド 17:65:18)のFC(SiO、ヘキサン/EtO 9:1)により、0.2gの出発物質(20%)、0.5gの8A(46%)、0.25gの8A/8B(1:1、23%)および0.1gの8B(9%)が得られた。
【0037】
(1S2R4S5R)−5−イソプロペニル−2,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(8A(エクソ))
沸点:0.07torr(0.09mbar)において80℃。
【表9】

臭気の記載:フルーツ様、田舎様、バラ様、土様。
【0038】
(1S2S4S5R)−5−イソプロペニル−2,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(8B(エンド))
沸点:0.06torr(0.08mbar)において60℃。
【表10】

臭気の記載:フルーツ様、バラ様。
【0039】
例9:5−イソプロピル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノナン−2−オン(9)
25℃において、1gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(4.9mmol)および50mgの10%Pd/Cの、10mlのMeOH中の混合物を、10barのHの下で5時間にわたり撹拌した。濾過(Celite(登録商標))、濃縮およびFC(SiO、ヘキサン/EtO 100:7)により、0.22g(22%)の化合物9が得られた。最終生成物の沸点は、0.07torr(0.09mbar)において75℃である。
【0040】
【表11】

臭気の記載:フルーツ様、田舎様、バラ様、木材様。
【0041】
例10:(1S5R)−5−イソプロペニル−8−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(10)
20.0gの塩化アクリロイル(0.22mol)および3.01gの塩化亜鉛(0.02mol、0.1当量)の、150mlの塩化エチレン中の混合物を、350mlのα−ピネン((1S)−(−)/(1R)−(+) 90:10、2.20mol、10当量)を250mlの塩化エチレンに溶解した溶液で処理し、得られた混合物を、25℃で1時間および50℃で4時間撹拌した。冷却後、反応混合物を、水性飽和NaCl溶液および水性飽和NaHCO溶液で洗浄した。水性相を、EtOで抽出し、乾燥し(NaSO)、濃縮した。粗生成物(48g)を、濾過し(SiO、ヘキサン/EtO 200:6→200:10)、残留物(1.42g)を、15mlのMeOH中の300mgのLiOH・HOで25℃で7時間処理した。得られた混合物を、水性飽和NaCl溶液中に注入し、ヘキサンで抽出し、有機相を、NaSOで乾燥した。FC(SiO、ヘキサン/EtO 30:1)により、347mg(0.8%)の化合物10が得られた。沸点:0.07torr(0.09mbar)において80℃。
【0042】
【表12】

臭気の記載:木材様(松、シーダー材)、琥珀様、甘い。
【0043】
例11:(1S3R4S5R)−5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(11)
方法a)11.81gの塩化2−メチル−ブト−2−エノイル(0.10mol)および1.36gの塩化亜鉛(0.01mol、0.1当量)の、100mlの塩化エチレン中の混合物を、136gのα−ピネン((1S)−(−)/(1R)−(+) 90:10、1mol、10当量)を150mlの塩化エチレンに溶解した溶液で処理し、得られた混合物を、25℃で45分間、50℃で2.5時間および80℃で1時間撹拌した。冷却後、反応混合物を、水性飽和NaCl溶液および水性飽和NaHCO溶液で洗浄した。水性相を、EtOで抽出し、乾燥し(NaSO)、濃縮した。粗生成物(48g)を、濾過し(SiO、ヘキサン/EtO 200:6→200:13)、残留物(5.1g)を、75mlのMeOH中の1gのLiOH・HOで25℃で48時間処理した。得られた混合物を、水性飽和NaCl溶液中に注入し、ヘキサンで抽出した。混ぜ合わせた有機相を、乾燥し(NaSO)、濃縮し、FC(SiO、ヘキサン/EtO 100:3)により精製し、1.6g(7.1%)の化合物11が得られた。
【0044】
方法b)0.116MのEtONaをEtOHに溶解した溶液15mlを、1.5gの5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オンで処理し、4時間加熱還流した。得られた混合物を、50mlの2Mの水性HCl中に注入し、2×50mlのMTBEで抽出した。有機相を、50mlのHO、50mlの水性飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥した。FC(SiO、ヘキサン/MTBE 20:1)により、0.75g(50%)の化合物11が得られた。沸点:0.08mbarにおいて80℃。
【0045】
【表13】

臭気の記載:フルーツ様、コショウ様、木材様、エレミ、ガージャン、琥珀様。
【0046】
例12:4,8−ジメチル−5−イソプロペニル−8−メトキシ−ビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン(12Aおよび12B)
【化6】

2.9gの5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール(14.1mmol、α/β 58:42)を30mlのDMFに溶解した溶液を、0.84gの55〜65%水素化ナトリウム(21mmol、1.5当量)を30mlのDMFに懸濁させた懸濁液に滴加し、得られた混合物を、1.5時間25℃で撹拌し、2.6mlのヨウ化メチル(41.8mmol、3当量)で処理し、4.5時間80℃で加熱し、50mlの2M HCl中に注入し、2×80mlのヘキサンで抽出した。有機相を、2×100mlの1:1の水性飽和NaCl溶液/HOで洗浄し、乾燥し、濃縮した。粗製物(2.17g)のFC(ヘキサン/MTBE 15:1)により、0.25gの12A(8.1%)、0.85gの12B/12A(55:45、27.4%)および1.07gの12B(34.5%)が得られた。
【0047】
(1S2R4S5R)−4,8−ジメチル−5−イソプロペニル−8−メトキシ−ビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン(12A)
【表14】

臭気の記載:木材様、琥珀様。
【0048】
(1S2S4S5R)−4,8−ジメチル−5−イソプロペニル−8−メトキシ−ビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン(12B)
【表15】

臭気の記載:木材様、琥珀様、脂肪様、グリーン。
【0049】
【表16】

【0050】
5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン(1)を芳香組成物に加えることにより、フルーツ(ラズベリー)系の香りを有する上品な木材様−琥珀様ノートが加えられる。これはまた、モミバルサム方向における木材様の調和に一層大きいボリュームを付与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、
Rは、イソプロピルもしくはイソプロペニルであり;
は、水素、メチルもしくはエチルであり;
およびRは、独立して、水素、メチルもしくはエチルであり;または
およびRは、一緒にエチリデンであり;または
およびRは、一緒に、これらが結合する炭素原子と共にシクロプロパンを形成する2価の基(CHであり;
およびRは、独立して、水素、ヒドロキシ、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアシルオキシであり;または
およびRは、これらが結合する炭素原子と共に、1,3−ジオキソラン環もしくは1,3−ジオキサン環を形成し;または
およびRは、これらが結合する炭素原子と共に、カルボニル基を形成し;
C2とC3との間の結合は、単結合であるか、もしくは点線は、C2とC3との間の結合と共に二重結合を表し;かつ
C7とC8との間の結合は、単結合であるか、もしくは点線は、C7とC8との間の結合と共に二重結合を表す、
で表される化合物。
【請求項2】
5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;4−エチル−5−イソプロペニル−8−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;5−イソプロペニル−3,3,4,8−テトラメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン;5−イソプロペニル−8,8−ジメトキシ−2,6−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−2−エン;4,8−ジメチル−5−イソプロペニルスピロ[ビシクロ[3.3.1]ノナン−2,2’−[1,3]ジオキソラン];5−イソプロペニル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール;5−イソプロペニル−2,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オール;5−イソプロピル−4,8−ジメチルビシクロ[3.3.1]ノナン−2−オン、5−イソプロペニル−8−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン、5−イソプロペニル−3,4,8−トリメチルビシクロ[3.3.1]ノン−7−エン−2−オン、および4,8−ジメチル−5−イソプロペニル−8−メトキシ−ビシクロ[3.3.1]ノン−7−エンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1において定義した式(I)で表される化合物を含む、風味剤または芳香組成物。
【請求項4】
請求項1または2において定義した式(I)で表される化合物の、風味剤または芳香成分としての使用。
【請求項5】
風味剤または芳香組成物の製造方法であって、請求項1または2において定義した式(I)で表される化合物を、ベース材料に導入する段階を含む、前記方法。
【請求項6】
芳香適用品の製造方法であって、請求項1または2において定義した式(I)で表される化合物を導入することを含む、前記方法。
【請求項7】
芳香適用品が、香水、家庭用品、ランドリー製品、ボディーケア製品および化粧品からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2007−518743(P2007−518743A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549824(P2006−549824)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000014
【国際公開番号】WO2005/070860
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】