説明

ビス−イミノピリジニル遷移金属触媒成分を使用するエチレンの重合方法

【課題】C2、C2vおよびCs対称性を呈するビス−イミノピリジニル遷移金属成分を使用するエチレン重合方法及び重合特性、ポリマー収率およびポリマー分子量等のポリマー製品の特性を制御し得る方法を提供する。
【解決手段】式(I)の遷移金属触媒成分を使用(式中、Mは4−11族の遷移金属、nは1−3の整数、QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基、PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基。式(I)のAはメチル基、フェニル基、または置換フェニル基、B1とB2はこの触媒成分の対称性に依って同一のあるいは異なる芳香族基である)。水素を含まないまたはエチレンの5モル%未満の量で水素を含有する重合反応域中で上記触媒成分と活性化共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触させてエチレンのホモポリマーまたはコポリマーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C2、C2vおよびCs対称性のビス−イミノピリジニル遷移金属触媒成分を使用して、エチレンポリマーを製造するエチレンの重合方法、特にこのような触媒成分を使用して、ポリマーの収率および分子量を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンホモポリマーおよびエチレン−プロピレンコポリマーなどのエチレンポリマーは種々の重合条件下で種々の重合触媒を使用して製造され得る。このような重合触媒は、通常1つ以上の共触媒と連携して使用されるチーグラー・ナッタ触媒、およびメタロセンおよび他の遷移金属触媒などの非チーグラー・ナッタ触媒を含む。この重合触媒は担持あるいは非担持であり得る。
【0003】
エチレンのホモポリマーあるいはコポリマーは、バッチタイプの反応器または連続反応器であってもよい重合反応器中で種々の条件下で製造され得る。連続重合反応器は、通常、モノマー流を連続的に導入し、そしてポリマー製品を連続的に取り出すループ・タイプ反応器の形をとる。例えば、ポリエチレンまたはエチレン−プロピレンコポリマーなどのポリマーの製造は、このモノマー流を適切な触媒系と共にこの連続ループ−タイプ反応器の中に導入して、所望のエチレンのホモポリマーあるいはコポリマーを製造することを伴う。生成ポリマーは、このループ−タイプ反応器から「フラフ」の形で取り出され、次にこのポリマーをペレットまたは顆粒としての粒子状の形の原材料として製造するように加工される。実質的な量の水素などの分子量調整剤を使用して、所望の分子量のポリマーまたはコポリマーを得ることがエチレンホモポリマーおよびエチレンC3+アルファオレフィンコポリマーの製造においてしばしば行われることである。通常、エチレンの重合においては、水素が調整剤として使用され得、これはエチレン供給流の約10モル%以上の量でこのモノマー供給流の中に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,404,344号明細書
【特許文献2】米国特許第4,767,735号明細書
【特許文献3】米国特許第5,155,080号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、C2、C2vおよびCs対称性を呈するビス−イミノピリジニル遷移金属成分を使用するエチレン重合方法が提供される。異なる対称性の遷移金属触媒成分を使用して、重合特性と生成ポリマー製品の特性を制御し得る。別法としては、使用される配位子成分のかさまたは特性を変えた同一対称の遷移金属触媒成分を使用して、ポリマー収率およびポリマー分子量などの要素を制御し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施においては、C2、C2vまたはCs対称性を有し、そして式
【化1】

【0007】
により特徴付けられる遷移金属触媒成分が提供される。
【0008】
式(I)においては、Mは4−11族の遷移金属であり、nは1−3の範囲内の整数であり、QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり、PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基である。更には、式(I)に関しては、Aはメチル基、フェニル基、または置換フェニル基であり、そして前記触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1とB2は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基またはアントラセニル基であるか;あるいは前記触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1とB2は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは前記触媒はCs対称性を呈し、そしてB1はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2はB1と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基である。活性化共触媒成分も提供される。水素を含まないか、あるいはこのエチレンの5モル%未満である量で水素を含有する重合反応域中でこの触媒成分およびこの共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触させて、このエチレンの重合によりポリマー製品を製造し、続いてこの反応域から前記ポリマー製品を回収する。上記に示したように、このエチレン重合は少量の水素を調整剤として用いて実施され得る。しかしながら、水素または別の他の分子量調整剤の使用は必ずしも必要でなく、そして分子量は本発明で使用される遷移金属触媒成分の対称性を制御することにより制御可能である。前記のように、このポリマー製品はエチレンホモポリマーまたはエチレンとC3+アルファオレフィンのコポリマー、特にエチレン−プロピレンコポリマーであることができる。
【0009】
本発明の一つの態様においては、重合反応域の中に導入される触媒成分は、一方がC2、C2vあるいはCs対称性を呈し、そして他方が前記第1の触媒下位成分の対称性と異なるC2、C2vあるいはCs対称性を呈する、2つの触媒の下位成分の混合物を含んでなる。本発明の更なる態様においては、C2対称性を呈して、そして置換基Aがこの触媒成分の置換基Aよりも大きい分子量のものであるか、あるいは基B1およびB2がこの触媒成分の基B1およびB2よりも低芳香族性である、C2対称性の対応する触媒成分により製造されるポリマーよりも小さい分子量のポリマーを製造する前記触媒成分が使用される。Cs対称性を呈する前記触媒成分を使用する場合には、この方法は、基B1およびB2の少なくとも一方がこの触媒成分の対応する基B1あるいはB2よりも低かさ高性である、Cs対称性の対応する触媒成分により生成されるポリマーよりも大きい分子量のポリマーを製造する。C2v対称性を呈する触媒成分を使用する本発明の更なる態様においては、置換基Aがこの触媒成分の置換基Aよりも小さい分子量のものであるC2v対称性の対応する触媒成分により製造されるポリマーよりも大きい分子量のポリマー製品が製造される。
【0010】
本発明のもう一つの局面においては、この触媒成分はC2対称性を呈して、同一重合条件下でCsあるいはC2v対称性を有する触媒成分による重合により製造されるポリマー製品よりも小さい分子量を有するこのポリマー製品を製造する。触媒成分がC2v対称性を呈する場合には、この重合は、対応する条件下でCs対称性を有する触媒成分によりこの反応域を運転することにより製造されるものよりも大きい分子量を有するポリマー製品を製造する条件下で運転される。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、式(1)中のMは元素周期律表の8−10族から選択される遷移金属である。好ましくは、Mは鉄またはコバルトであり、nは2であり、そしてQは塩素または臭素である。
【0012】
前記のように、水素はこの重合法で使用される必要はない。水素を使用する場合には、水素は、好ましくは0.001−0.02の範囲内の水素/エチレンモル比をもたらす量で導入される。この水素を使用して、水素を導入しない触媒成分の活性に比してこの触媒成分の活性を増大させることができる。
【0013】
本発明のもう一つの態様においては、第1および第2の遷移金属触媒成分を使用するエチレン重合方法が提供される。この第1の遷移金属触媒成分は上述の式(I)により特徴付けられる。この遷移金属触媒成分を第1の活性化共触媒成分と一緒に重合反応域中でエチレンと重合条件下で接触させて、このエチレンの重合により第1のポリマー製品を製造する。このポリマー製品はこの反応域から回収される。前記第1の遷移金属触媒成分と異なり、そして式
【0014】
【化2】

【0015】
により特徴付けられるC2、C2vまたはCs対称性の第2の遷移金属触媒成分が更に提供される。
【0016】
式中、Mは元素周期律表の4−11族から選択される遷移金属であり、nは1−3の整数であり、QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり、PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基であり、A’はメチル基、フェニル基、または置換フェニル基であり、そして前記第2の触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1’とB2’は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフチル基またはアントラセニル基であるか、あるいは前記第2の触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1’とB2’は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは前記第2の触媒成分はCs対称性を呈し、そしてB1’はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2’はB1’と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基である。前記第1の共触媒成分と同一であるか、あるいは異なり得る第2の活性化共触媒成分が準備される。重合反応域中でこの第2の触媒成分およびこの第2の共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触させて、第1のポリマー製品の特徴的な対応する分子量と異なる、特徴的な分子量を有する第2のポリマー製品を製造する。次にこの第2のポリマー製品がこの重合反応域からを回収される。本発明の一つの態様においては、この第1の触媒成分はC2対称性を有し、そしてこの第2の触媒成分はCsあるいはC2v対称性を有して、この第1のポリマー製品よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する。もう一つの態様においては、この第1の触媒成分はC2あるいはCs対称性を有し、そしてこの第2の触媒成分はC2v対称性を有して、この第1のポリマー製品よりも大きい分子量を有する前記第2のポリマーを製造する。本発明のなお更なる態様においては、この第1および第2の触媒成分の両方はC2対称性を有し、そして前記第2の触媒成分の置換基A’はこの第1の触媒成分の置換基Aよりもかさ高であって、この第1のポリマー製品の分子量よりも小さい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する。C2対称性の触媒成分を使用する本発明のもう一つの態様においては、この第2の触媒成分の基B1’およびB2’は基B1およびB2よりも低い芳香族性を有して、この第1のポリマー製品の分子量よりも小さい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する。
【0017】
本発明の更にもう一つの態様においては、この触媒は各々C2v対称性を有する。ここでは、この第2の触媒成分の置換基A’はこの第1の触媒成分の置換基Aよりもかさ高であって、この第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する。本発明の更なる態様においては、この第1および第2の触媒成分がCs対称性を有する場合には、この第2の触媒成分の基B1’はこの第1の触媒成分の基B1よりも大きいかさを有する。加えて、あるいは別法として、この触媒成分がCs対称性を有する場合には、この第2の触媒成分の基B2’は第1の触媒成分の基B2のかさよりも大きいかさを有する。両方の場合に、この第2のポリマー製品はこの第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する。本発明のなお更なる態様においては、上記の式(I)により特徴付けられる第1の遷移金属触媒成分と、この第1の遷移金属触媒成分とは異なる式(I)により特徴付けられる第2の遷移金属触媒成分を包含するエチレン重合方法が提供される。この第1の触媒成分を重合反応域中で第1の活性化共触媒成分及びエチレンと接触させて、第1のエチレンポリマー製品を製造する。第1の遷移金属成分と異なる第2の触媒成分および活性化共触媒成分を重合条件下で運転される反応域の中に導入して、このエチレンの重合によりポリマー製品を製造する。本発明の一つの態様においては、この第1および第2の触媒成分がこの重合反応域の中に混合物として導入される。本発明のもう一つの態様においては、この第1および第2の触媒成分を順次この重合反応域の中に導入して、2つの異なるポリマー製品を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、C2対称性の触媒、Cs対称性の触媒およびC2v対称性の触媒により製造されるポリエチレンの分子量分布を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、C2、C2vおよびCs対称性を有するピリジニル架橋ビス−イミノ遷移金属触媒と、エチレンの重合におけるこれらの使用を包含する。このエチレンは、ホモ重合することにより、あるいはC3+アルファオレフィンと、特にプロピレンから1−ヘキセンまでと共重合させることにより重合され得る。本発明のC2、C2vおよびCs対称性の触媒成分は、元素周期律表(新表記法)の4−11族からの遷移金属、特に元素周期律表の8−11族からの遷移金属を組み込む。本発明の触媒成分において使用するのに好ましい遷移金属は、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅であり、鉄とコバルトが特に好ましい。
本発明の実施において使用される遷移金属触媒成分は、式(I)
【0020】
【化3】

【0021】
により示されるように遷移金属Mによりもたらされる遷移金属中心にキレート化するピリジニル結合のビス−イミノ配位子を組み込んでいる。式(I)中で、QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基である。好ましくは、Qは塩素または臭素の形をとり、Mは鉄またはコバルトであり、そしてnは2である。Aはメチル基、フェニル基、または置換フェニル基である。C2対称性に対しては、B1とB2は同一であり、そして下記に述べるように1−ナフチル基、置換l−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基またはアントラセニル基である。基B1およびB2は遷移金属中心に対してメソまたはラセミであり得る。
【0022】
C2v対称性を呈する触媒に対しては、B1とB2は同一であり、そしてターフェニル基を含むフェニル基または置換フェニル基であり得る。C2v対称性を呈する触媒に対しては、芳香族基B1およびB2は、Cs対称性に関して下記に述べるように配位窒素原子を通る対称面に関して対称的である。
【0023】
Cs対称性を呈する遷移金属触媒成分に対しては、B1とB2は異なる。B1はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2はポリフェニル基、好ましくはターフェニル基である。このように、Cs対称性の場合には、この遷移金属触媒成分は非バランス形であり、そして一方の窒素原子に結合した単核芳香族基と他方の窒素原子に結合した多核芳香族基を組み入れたピリジニル結合のビス−イミノ配位子構造を組み込んでいる。この単核および多核の芳香族基は置換あるいは非置換であり得るが、置換されている場合には、各芳香族基は各基のそれぞれの配位窒素原子に関して対称的であって、Cs対称性を有する配位子構造をもたらす。Cs対称性においては、対称面は、図
【0024】
【化4】

【0025】
の架橋フェニル−ターフェニル構造により示されるように、ビス−イミノ配位子の遷移金属と窒素原子を通って延びる。
【0026】
図(III)においては、対称面は破線により示され、そしてフェニルおよびターフェニル基を図示している紙面に垂直である。フェニル基に関しては、このフェニル基が非置換であるか、4位(直接に遠位の位置)において一置換されているか、同一置換基により2,6位において、あるいは同一置換基により3,5位において二置換されている場合には、Cs対称性が観察される。ターフェニル基に関しては、このターフェニル基が非置換であるか、置換基フェニル基の遠位の位置の4および4’において二置換されているか、あるいは同一置換基により2および2’位において、そして2および2’位における置換基と同一かあるいは異なり得る同一置換基により6および6’位において置換されている場合には、Cs対称性が維持される。図(III)は、置換基フェニル基が窒素結合に関して近位の位置においてこのターフェニル基の主ベンジル基上で置換されているフェニル−ターフェニル配位子構造を図示するが、下記の化合物12−19に示すような本発明の態様を例示するものである。
【0027】
前記のように、本発明の好ましい適用は、遷移金属が鉄であるC2、C2vあるいはCs対称性の触媒の使用を包含する。本発明のこの態様は、式
【0028】
【化5】

【0029】
により図示される。
【0030】
本発明によれば、鉄中心にキレート化するN,N,Nビス−イミノ−ピリジル配位子を含み、X=ClまたはBr、置換基A、B1、およびB2の式(IV)の触媒成分を選択して、錯体のC2、CsあるいはC2v対称性を有する触媒成分を提供する。C2、C2vおよびCs対称性の触媒成分の例は、限定ではないが、次の化合物1から24に示される。
【0031】
次の例示の化合物においては、メチル基は
【0032】
【化6】

【0033】
により、イソプロピル基は
【0034】
【化7】

【0035】
により、そしてターシャリーブチル基は
【0036】
【化8】

【0037】
により示される。この芳香族基の芳香族化は
【0038】
【化9】

【0039】
により、そして脱芳香族化は、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンの場合におけるように
【0040】
【化10】

【0041】
により、あるいは
【0042】
【化11】

【0043】
により示される。
C2対称性
A=メチル、フェニルまたは置換フェニル
1=B2=1−ナフチル;置換−l−ナフチル;5,6,7,8−テトラヒドロ−1
−ナフチル;アントラセニル基
【0044】
【化12】

【0045】
上記の例により示されるように、この配位子構造は、化合物1−4および6−10により示されるように、メソ立体配置を有し得るか、あるいは化合物5および11により示されるように、ラセミ立体配置を有し得る。
Cs対称性
A=メチル、フェニルまたは置換フェニル
1はB2と均等でない。
【0046】
1=フェニルあるいは置換フェニル基
2=ポリフェニル基、ターフェニル基
【0047】
【化13】

【0048】
C2v対称性
A=メチル、フェニルまたは置換フェニル
1=B2=フェニルあるいは置換フェニル基
【0049】
【化14】

【0050】
重合法における本発明の触媒成分を用いるには、これらは活性化共触媒と連携して使用される。好適な活性化共触媒は、メタロセン触媒重合反応で普通に使用されるような共触媒の形をとり得る。このように、この活性化共触媒はアルモキサン共触媒の形をとり得る。アルモキサン共触媒は、また、アルミノキサンまたはポリヒドロカルビルアルミニウムオキサイドとも呼ばれる。このような化合物は、式
【0051】
【化15】

【0052】
の繰り返し単位を有するオリゴマー型あるいはポリマー型化合物を含む。式中、Rは一般に1〜5個の炭素原子を有するアルキル基である。アルモキサンは当分野でよく知られ、そして他の合成経路も当分野の技術者には既知であるが、有機アルミニウム化合物と水とを反応させることにより一般に製造される。アルモキサンは、例えば特許文献1(米国特許第4,404,344号明細書)で開示されているように、線状ポリマーであるか、あるいは環状であり得る。このように、アルモキサンは、アルミニウムおよび酸素原子が交互する鎖を含有し、アルミニウムが置換基、好ましくはアルキル基を担持する、オリゴマー型あるいはポリマー型のアルミニウムオキシ化合物である。線状および環状アルモキサンの構造は、一般に、環状アルモキサンに対しては一般式−(Al(R)−O−)m−により表され、そして線状化合物に対してはR2Al−O−(Al(R)−O)m−AlR2により表されると考えられる。ここでRは独立に各起源でC1−C10ヒドロカルビル、好ましくはアルキルまたはハライドであり、そしてmは1〜約50の、好ましくは少なくとも約4の範囲の整数である。アルモキサンはかご形化合物あるいはクラスター化合物の立体配置でも存在する。アルモキサンは、通常、水とアルミニウムアルキルの反応生成物であり、アルキル基に加えてハライドまたはアルコキシド基を含有し得る。トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのいくつかの異なるアルミニウムアルキル化合物と水とを反応させることによって、いわゆる変成アルモキサンまたは混合アルモキサンが得られる。好ましいアルモキサンはメチルアルモキサンと、少量のイソブチルなどの他の高級アルキル基により変成されたメチルアルモキサンである、アルモキサンは、一般に、少量ないしは実質的な量の出発アルミニウムアルキル化合物を含有する。この好ましい共触媒は、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムのいずれかから製造されるが、時にはそれぞれポリ(メチルアルミニウムオキシド)およびポリ(イソブチルアルミニウムオキシド)と呼ばれる。
【0053】
このアルキルアルモキサン共触媒および遷移金属触媒成分は、オレフィン重合触媒をもたらすいかなる好適な量でも使用される。好適なアルミニウム遷移金属モル比は、10:1〜20,000:1の範囲内、好ましくは100:1〜2,000:1の範囲内にある。通常、この遷移金属触媒成分およびこのアルモキサン、または下記に述べる他の活性化共触媒は特許文献2(Ewenらの米国特許第4,767,735号明細書)に述べられているように運転モードの重合反応器中に導入する前に混合される。この重合方法は、バッチ−タイプ、連続あるいは半連続法のいずれかで実施し得るが、好ましくは、このエチレンの重合は前記に挙げた特許文献2に開示されたタイプのループ−タイプ反応器中で行なわれる。通常のループ−タイプ反応器は、単一ループ反応器または2つの順次連結されたループ反応器中で重合が行なわれるいわゆる二重ループ反応器を含む。Ewenらの特許に述べられているように、この触媒成分を一緒に調合した場合には、これらは直線状の管状予備重合反応器に供給され、ここでループタイプ主反応器の中に導入する前に予備重合モノマー(またはモノマー)と比較的短い時間接触させられる。この主反応器の中に導入する前の種々の触媒成分の混合物に好適な接触時間は、数秒〜2日の範囲内にあり得る。本発明の実施において使用され得る好適な連続重合方法の更なる説明には、全開示が引用により本明細書に組み込まれている、前記に挙げた特許文献2が参照される。
【0054】
本発明の実施に使用可能な他の好適な活性化共触媒は、1つ以上のホウ素原子を含んでなるアニオンと共に触媒カチオンを形成する機能を果す触媒を含む。例として、この活性化共触媒は特許文献3(Elderらへの米国特許第5,155,080号明細書)で開示されているようなトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボロネートの形をとり得る。そこで述べられているように、この活性化共触媒は、遷移金属触媒系中で安定化アニオンとして機能するアニオンを生成する。好適な非配位性アニオンは、[W(PhF5)]-、[Mo(PhF5)]-(式中、PhF5はペンタフルオロフェニルである)、[ClO4-、[S26-、[PF6-、[SbR6-、[AlR4-(式中、各Rは独立にCl、C1−C5アルキル基、好ましくはメチル基、アリール基、例えばフェニルあるいは置換フェニル基、またはフッ素化アリール基である)を含む。Elderらの特許で述べられている方法に従えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボロネートは本発明のピリジニル結合のビス−イミノ配位子と溶媒、例えばトルエン中で反応されて、配位性のカチオン−アニオン性錯体を生成し得る。
このような活性化共触媒の更なる説明には、全開示が引用により本明細書に組み込まれている、前記に挙げた特許文献3が参照される。
【0055】
活性化共触媒の使用に加えて、この重合反応は、この触媒成分とこの活性化共触媒と共に重合反応器に添加されるスカベンジャーまたは重合共触媒の存在下で実施され得る。これらのスカベンジャーは、一般的に元素周期律表のIA、IIA、およびIIIB族の金属の有機金属化合物として特徴付け可能である。実際的な事柄として、重合反応における共触媒として有機アルミニウム化合物が通常使用される。特定の例は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムヒドリドなどを含む。本発明で通常使用されるスカベンジング共触媒は、メチルアルモキサン(MAO)、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を含む。
【0056】
前述したように、このポリエチレン製品の分子量制御は、C2対称性、Cs対称性およびC2v対称性を有する触媒を使用することにより達成可能である。一般に、C2対称性を呈する触媒の使用は、500−100,000の範囲内の比較的小さい分子量を有するエチレンポリマーの高収率をもたらすのに有効である。C2対称性の触媒成分の使用において、置換基Aのかさを変えることにより、あるいは式(1)の置換基B1およびB2の芳香族性を変えることにより分子量制御が実施可能である。このように、C2対称性の触媒成分を使用する場合、分子量は、置換基Aのかさを増大させるか、あるいは置換基B1およびB2の脱芳香族化により減少可能である。
【0057】
このCs対称性の触媒成分は、100,000−650,000の範囲内の中間の分子量を持つエチレンポリマーまたはコポリマーの高収率をもたらす。Cs対称性の触媒成分を使用する場合、分子量制御は、B1および/またはB2の電子供与性置換基のサイズと数を増大させることにより実施可能である。
【0058】
このC2v対称性の触媒成分は、200,000−1,500,000の範囲内の比較的大きい分子量を有するエチレンポリマーまたはコポリマーの高収率の製造において有効である。C2v対称性の触媒成分に対して、置換基Aのかさを調整することにより、分子量に影響を及ぼすことができ、これらの置換基Aのかさの増大は得られるポリマー製品の分子量の増大に対応する。
【0059】
このC2、CsおよびC2v対称性な触媒成分に対しては、分子量制御は、実質的な量の水素などの分子量調整剤を使用することを必要とせずに実施可能である。必要ではないが、少量の水素を使用して、分子量を制御することができる。水素をこの目的に使用する場合、水素は、このエチレン供給の基準で5モル%未満の量、通常このエチレン供給の2モル%以下の量内で使用される。下記に更に詳細に述べる実験により示されるように、これらの極めて少量の水素は、分子量制御に通常使用される水素の量よりもかなり少ないが、本発明で有効に使用可能である。
【実施例】
【0060】
次の実施例1−30は本発明により実施可能である重合法を例示するものである。実施例1−7、15−17および21−24においては、この触媒成分はC2対称性を有するものであった。実施例8−10および25−28においては、この触媒成分はC2v対称性を呈し、そして実施例11−14、18−20および29および30においては、この触媒成分はCs対称性を呈するものであった。次の実施例により示されるように、C2対称性からCs対称性に、次にC2v対称性に変えると、この触媒成分により製造されるポリエチレンの分子量は、全般的に増加を漸次示す。
[図1]は、製造されるポリエチレンの分子量に及ぼす触媒成分の対称性のタイプの影響を図示する。[図1]において、縦軸に面積Aのパーセントと、横軸に対数目盛での分子量により分子量分布がプロットされている。[図1]において、曲線2は化合物1のC2対称性の触媒成分により製造されるポリエチレンの分子量分布のプロットであり、曲線4はCs対称性の触媒13により製造されるポリエチレンの分子量分布のプロットであり、そして曲線6はC2v対称性を呈する触媒成分20により製造されるポリエチレンの分子量分布のプロットである。
【0061】
触媒の対称性を選択することによりポリエチレンの分子量の制御を行うことに加えて、C2、CsおよびC2v対称性の触媒により製造される分子量は、水素および1−ヘキセンの添加によっても制御可能である。エチレン重合時の水素の添加はC2、CsおよびC2v触媒の活性を増大させ、そして製造されるポリエチレンの分子量を増大させる(C2対称性については実施例15および16;Cs対称性については実施例18および19;C2対称性については実施例21および22;C2v対称性については実施例25および26)。重合反応器への1−ヘキセンの添加は分子量の減少を生じる(大部分共重合により)(C2対称性については実施例21および23;C2v対称性については実施例25および27)。水素および1−ヘキセンの添加は低分子量のポリエチレンを高収率で製造せしめる。
[実施例1−7]Cs対称性
【0062】
実施例1−7においては、エンデバー反応器を用いて、重合を行った。各触媒に対して、特定量のこの鉄触媒を20mlのウイートン・ビン中に秤量し、そして3mlの1,2−ジクロロエタンに溶解し、続いて17mlのトルエンにより希釈して、合計20mlの容積とすることにより、原料溶液を作製した。
【0063】
6.08E−05ミリモルの触媒を含有する特定量のこの原料触媒溶液を注入することにより、各重合を行った。次に、この触媒をMAO溶液(トルエン中30重量%)により活性化して、1,000のAl/Fe比をもたらした。次に、イソブタン溶媒を反応器に添加し、そしてエチレンにより加圧し、8.0重量%の全エチレン濃度を維持した。反応器を50℃まで30〜60分間加熱した。反応器を排気することにより、重合を停止した。屈折率検出器付きのWaters Alliance GPC2000により製造したポリマーの分子量をキャラクタリゼーションした。実施例1−7の結果を表1に示す。表1中、2番目の欄はこの触媒の内容識別を示し、3番目の欄は前に開示した番号の構造により触媒を識別し、4番目の欄は触媒成分1グラム・1時間当たりのポリエチレンのグラム数でのこの触媒の活性を示し、5番目および6番目の欄はそれぞれ数平均分子量と重量平均分子量を示し、7番目の欄は「z」平均分子量(分布曲線の高分子量端の尺度)を表し、そして最後の欄は分子量分布を示す。
【0064】
【表1】

[実施例8−10]C2v対称性
【0065】
実施例8−10で使用される重合法は実施例1−7におけるのと同一である。この結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

[実施例11−14]Cs対称性
【0067】
実施例11−14に対する重合法は実施例1−7におけるのと同一である。この結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

[実施例15−20]C2、Cs対称性
【0069】
実施例15−20に対する重合を4Lのジッパークレーブ反応器中で行った。この反応器にi−ブテン(1,200g)とエチレン(100L)を装填した。MAO(トルエン中30重量%)をこの触媒試料に添加することにより、この鉄触媒の原料溶液を作製した。この原料溶液は1,000のAl/Feモル比を有するものであった。各触媒は完全に可溶性であり、暗赤褐色溶液を生じた。この重合試験に対しては、所望の量のこの触媒原料溶液を更なる量のトルエンと共にボンベの中に装填して、約5.0mlの量とする。このボンベをボンベ#2として識別した。次に、1,000等量のMAO(トルエン中30重量%MAO)に加えて合計約5.0mlの溶液を得るのに更なる量のトルエンを識別番号ボンベ#1のもう1つのボンベに装填した。最初にボンベ#1を35℃の特定温度においてイソブタン中7重量%のエチレンを含有する反応器にスカベンジャーとして装填した。ほぼ3分後、ボンベ#2を35℃で反応器の中に装填した。この重合における全Al/Feモル比は2,000であった。発熱が減少し始めるまで、この反応を35℃の設定温度に放置した。発熱が減少し始めたならば、反応温度を所望の温度に設定した。実施例15−20の結果を表4に示す。表4中、3番目の欄は使用される触媒量を示し、そして4番目および5番目の欄はこの重合試験の℃での温度と分での時間を示す。使用される場合には、水素の量をエチレンのモル分率として6番目の欄に示し、そしてグラムでの収率を7番目の欄に、触媒成分1グラム・1時間当たりのポリエチレンのグラム数でのこの触媒の活性を8番目の欄にを示す。最後の4つの欄は、前述のように、Mn、Mw、MzおよびMw/Mnに対するデータを表す。
【0070】
【表4】

[実施例21−30]C2、C2v、Cs対称性
【0071】
実施例21−30で使用される重合手順は実施例15−20におけるのと同一である。実施例15−20で得られる結果を表5に要約する。表5は、1−ヘキセン(使用される場合には)のml数を示す欄が6番目の欄として含まれていることを除いて、表4に表されるデータに対応する。
【0072】
【表5】

【0073】
次の実施例は、ピリジニルビス−イミノ配位子構造とこれらの対応する鉄ジクロリド錯体の作製を示す。実施例31−44はC2対称性を有する錯体の作製を示し、実施例45−52はCs対称性を有する錯体の作製を示し、そして実施例53−56はC2v対称性を有する触媒成分の作製を示す。
[実施例31]2,6−ビス[1−(2−Me−1−ナフチルイミノ)エチル]ピリジンの作製
【0074】
2,6−ジアセチルピリジン(0.33g、2.0ミリモル)と2−メチル−1−イミノナフチルアミン(1.99g、10.7ミリモル)を20mlのエタノールと共に丸底フラスコに添加した。5滴の氷酢酸を添加し、フラスコを封止し、そしてこの溶液を4日間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/エチルアセテート=5/1)後この配位子を単離して、0.42gの収量を得た。
[実施例32]2,6−ビス[1−(2−Me−1−ナフチルイミノ)エチル]ピリジン鉄ジクロリド(錯体2)の作製
【0075】
実施例31からの配位子(0.42g、0.95ミリモル)をTHF(20ml)に溶解した。FeCl2(120.9mg、0.95ミリモル)をこの配位子溶液に添加した。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。暗青緑色の懸濁液が生成した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、所望の錯体2を得た。
[実施例33]2,6−ビス[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルイミノエチル]ピリジンの作製
【0076】
2,6−ジアセチルピリジン(0.54g、3.31ミリモル)と5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルイミン(1.46g、10ミリモル)を20mlのエタノールと共に丸底フラスコに添加した。5滴の氷酢酸を添加し、フラスコを封止し、そしてこの溶液を3日間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/エチルアセテート=5/1)後この配位子を単離して、1.42gの収量を得た。
[実施例34]2,6−ビス[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルイミノ)エチル]ピリジン鉄ジクロリド(錯体3)の作製
【0077】
実施例33からの配位子(0.65g、1.54ミリモル)をCH2Cl2(20ml)に溶解した。20mlのメタノール中のFeCl2・4H2O(0.35g、1.76ミリモル)をこの配位子溶液に添加した。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。暗青緑色の懸濁液が生成した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、所望の錯体3を得た。
[実施例35]2,6−ジベンゾイルピリジンの作製
【0078】
ベンゼン(60ml)中の2,6−ピリジンジカルボニルジクロリド(6.12g、30.0ミリモル)をベンゼン(50ml)中のAlCl3(12.2g、91.5ミリモル)に添加した。この反応混合物を6時間還流した。この反応物をNaHCO3水溶液によりクエンチした。この有機層をエーテル(3×70ml)により抽出し、Na2SO4上で乾燥し、そして溶媒を低真空下で蒸留した。2,6−ベンゾイルピリジンを固体(90%)として単離した。
[実施例36]2,6−ジ(2,4,6−メシチロイル)ピリジンの作製
【0079】
メシチレン(60ml)中の2,6−ピリジンジカルボニルジクロリド(6.12g、30.0ミリモル)をAlCl3(12.2g、91.5ミリモル)に添加した。この反応混合物を6時間還流した。この反応物をNaHCO3水溶液によりクエンチした。この有機層をエーテル(3×70ml)により抽出し、Na2SO4上で乾燥し、そして溶媒を低真空下で蒸留した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/エチルアセテート=5:1)により固体生成物を得た。1HNMRおよびGC分析はいくつかの生成物の存在を示した。
1HNMR(CDCl3)(信号は所望のピリジンに属する):δ8.3−6.5(Harom,Hピリジン)、2.31(s,6H,Me)、1.98(s,6H,Me)、1.81(s,6H、Me)。
[実施例37]ジベンゾイルビス(1−ナフチルイミノ)ピリジン
【0080】
トルエン(20ml)中のTiCl4(0.4ml、3.5ミリモル)をトルエン(50ml)中のジベンゾイルピリジン(0.91g、3.2ミリモル)と1−ナフチルアミン(2.90g、17ミリモル)の混合物に0℃で添加した。添加が完結した後、この反応物を室温で1時間撹拌し、次に3時間還流した。この固体を濾過し、トルエンで洗浄した。溶媒を真空下で除去した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/エチルアセテート=5/1)後この配位子を単離して、0.65gの収量を得た。
[実施例38]2,6−ジベンゾイルピリジン−ビス(1’−ナフチルイミノ)鉄(II)クロリド(錯体6)
【0081】
実施例37からの配位子(0.65g、1.08ミリモル)をTHF(20ml)に溶解した。FeCl2(140mg、1.10ミリモル)をこの配位子溶液に添加した。この反応混合物を室温で3時間撹拌した。暗青緑色の懸濁液が生成した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、錯体6を得る。
[実施例39]ジベンゾイルビス(2’−メチル−1’−ナフチルイミノ)ピリジン
【0082】
トルエン(20ml)中のTiCl4(0.4ml、3.5ミリモル)をトルエン(50ml)中のジベンゾイルピリジン(0.91g、3.2ミリモル)と2−メチル−1−ナフチルアミン(2.26g、19ミリモル)の混合物に0℃で添加した。添加が完結した後、この反応物を室温で1時間、次に還流下で5時間撹拌した。この固体を濾過し、トルエンで洗浄した。溶媒を真空下で除去した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/エチルアセテート=5/1)後、この配位子を単離して、0.60gの収量を得た。
[実施例40]2,6−ジベンゾイルピリジン−ビス(2’−メチル−1’−ナフチルイミノ)鉄(II)クロリド(錯体7)
【0083】
実施例39からの配位子(0.27g、0.43ミリモル)をTHF(20ml)に溶解した。FeCl2(60mg、0.47ミリモル)をこの配位子溶液に添加した。この反応混合物を室温で一夜撹拌した。暗青緑色の懸濁液が生成した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、錯体7を得た。
[実施例41]ジベンゾイルビス(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−1’−ナフチルイミノ)ピリジン
【0084】
トルエン(20ml)中のTiCl4(0.4ml、3.5ミリモル)をトルエン(70ml)中のジベンゾイルピリジン(0.84g、2.9ミリモル)と4、5、6、7−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン(2.64g、18ミリモル)の混合物に0℃で添加した。添加が完結した後、この反応物を室温で1時間、次に還流下で4時間撹拌した。この固体を濾過し、トルエンで洗浄した。溶媒を真空下で除去した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン/エチルアセテート=5/1)後、この配位子を単離して、0.69gの収量を得た。
[実施例42]2,6−ジベンゾイルピリジン−ビス(5’,6’,7’,8’)−テトラヒドロ−1’−ナフチルイミノ)鉄(II)クロリド(錯体9)
【0085】
実施例41からの配位子(0.65g、1.06ミリモル)をTHF(20ml)に溶解した。FeCl2(150mg、1.18ミリモル)をこの配位子溶液に添加した。この反応混合物を室温で一夜撹拌した。暗青緑色の懸濁液が生成した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、錯体9を得る。
[実施例43]2,6−ビス[1−(9−フェナントレン−イミノ)エチル]ピリジン
【0086】
2,6−ジアセチルピリジン(0.25g、1.53ミリモル)と9−アミノフェナントレン(0.59g、3.06ミリモル)を20mlのエタノールと共に丸底フラスコに添加した。5滴の氷酢酸を添加し、このフラスコを封止し、そしてこの溶液を72時間還流した。溶媒を真空下で除去した。トルエン(15ml)とモレキュラーシーブを添加した。この反応混合物を還流下で3日間加熱した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、所望の配位子を得る。
[実施例44]鉄ビス−イミン(9−フェナントレン)(錯体10)の作製
【0087】
実施例43からのビス−イミン(9−フェナントレン)配位子(0.30g、0.58ミリモル))およびTHF(10ml)中の二塩化鉄(II)(75mg)を30℃で4時間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。この固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから結晶化させて、錯体10を得る。
[実施例45]2−[1−(2,6−ジメチルフェニルイミノ(エチル)]−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの作製
【0088】
ベンゼン(30ml)中の2−アセチル−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン(1.70g、4.36ミリモル)、2,6−メチルアニリン(2.3g)および触媒量のp−トルエンスルホン酸一水和物を還流下で2日間加熱した。
溶媒を真空下で除去した。CH2Cl2/ペンタン(1:3)での二重結晶化によって所望の配位子(0.33g)を得た。
1HNMR(CDCl3):δ8.34(d,1H、Hpyr)、8.08(d,1H,Hpyr)、7.77(t,1H,Hpyr)、7.5−6.9(16H,Harom)、2.06(s,3H,CH3−C=N)、2.00(s,6H,CH3)、1.89(s,3H、CH3−C=N)。
[実施例46]2−[1−(2,6−ジメチルフェニルイミノ(エチル]−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄ジクロリド(錯体13)の作製
【0089】
実施例45からの配位子を使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例40におけるのと同一の手順を繰り返した。
[実施例47]2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ(エチル]−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの作製
【0090】
トリメチルアニリンを使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例45におけるのと同一の手順を繰り返した。
1HNMR(CD212):δ8.33(d,1H,Hpyr)、8.10(d,1H,Hpyr)、7.81(t,1H,Hpyr)、7.6−6.9(15H,Harom)2.19(s,3H,PhからのCH3)、2.14(s,6H、PhからのCH3)、2.06(s,3H,CH3−C=N)、1.92(s,3H,CH3−C=N)。
[実施例48]2−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄ジクロリド(錯体14)の作製
【0091】
実施例47からの配位子を使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例40におけるのと同一の手順を繰り返した。
[実施例49]配位子:2−[1−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ(エチル]−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジンの作製
【0092】
2,6−ジイソプロピルアニリンを使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例45におけるのと同一の手順を繰り返した。
1HNMR(CDCl3):δ8.31(d,1H,Hpyr)、8.07(d,1H,Hpyr)、7.77(t,1H,Hpyr)、7.5−7.0(16H,Harom)、2.70(sept,2H,CH(CH32)、2.07(s,3H,CH3−C=N)、1.89(s,3H,CH3−C=N)、1.13(t,12H,CH(CH32)。
[実施例50]2−[1−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ(エチル)]−6−[1−(2,6−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄ジクロリド(錯体15)の作製
【0093】
実施例49からの配位子を使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例40におけるのと同一の手順を繰り返した。
[実施例51]2−[1−(2,6−ジメチルフェニルイミノ(エチル)]−6−[1−(2,6−ビス(4−t−ブチルフェニル)イミノ)エチル]ピリジンの作製
【0094】
2−アセチル−6−[1−(2,6−ビス(4−t−ブチルフェニル)イミノ)エチル]ピリジンおよび2,6−ジメチルアニリンを使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例45におけるのと同一の手順を繰り返した。
[実施例52]2−[1−(2,6−ジメチルフェニルイミノ(エチル)]−6−[1−(2,6−ビス(4−t−ブチルフェニル)イミノ)エチル]ピリジン鉄ジクロリド(錯体17)の作製
【0095】
実施例51からの配位子を使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例40におけるのと同一の手順を繰り返した。
[実施例53]2,6−ジベンゾイルビス(2’,6’−ジイソプロピルフェニルイミノ)ピリジンの作製
【0096】
トルエン(20ml)中のTiCl4(0.4ml、3.5ミリモル)をトルエン(50ml)中のジベンゾイルピリジン(0.91g、3.2ミリモル)(実施例35からの)と2,6−ジイソプロピルアニリン(3.6ml、19ミリモル)の混合物に0℃で添加した。添加が完結した後、この反応物を室温で1時間、次に還流下で10時間撹拌した。この固体を濾過し、トルエンで洗浄した。溶媒を真空下で除去した。この残渣を−10℃でメタノールから結晶化させて、この配位子(0.80g)を得た。
[実施例54]2,6−ジベンゾイルピリジン−ビス(2’,6’−ジイソプロピルフェニルイミノ)鉄II)クロリド(錯体21)の作製
【0097】
実施例53からの配位子(0.50g,0.83ミリモル)をEtOH(20ml)に溶解した。FeCl2・4H2O(0.20g、1.0ミリモル)をEtOH(10ml)に溶解し、この配位子溶液に添加した。この反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、そしてTHF(30ml)を添加した。この反応混合物を一夜撹拌した。暗青色の懸濁液が生成した。溶媒を真空下で除去し、そしてこの固体残渣をCH2Cl2/ヘキサンから再結晶化させて、錯体21を得た。
[実施例55]2,6−メシチルビス(2’,6’−ジイソプロピルフェニルイミノ)ピリジンの作製
【0098】
実施例36からの化合物を使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例53におけるのと同一の手順を繰り返した。
[実施例56]2,6−メシチルビス(2’,6’−ジイソプロピルフェニルイミノ)ピリジン鉄ジクロリド(錯体22)の作製
【0099】
実施例55からの化合物を使用することによりこの反応を行ったことを除いて、実施例54におけるのと同一の手順を繰り返した。
【0100】
前述した実験により示したように、この重合法で使用される触媒成分の対称性を変えることを使用して、このポリマー製品の分子量の変化に影響を及ぼすことができる。このように、C2対称性の第1の触媒成分を使用して、第1のポリマー製品を製造し、第2の触媒成分を使用して、高分子量の第2のポリマー製品を製造し、そしてC2v対称性の更に第3の触媒成分を使用して、更に高分子量の第3のポリマー製品を製造することができる。
【0101】
更に、各対称性のクラスのなかで、配位子構造を変えて、分子量の変化を生じさせることができる。このように、本発明は、上記の式(I)および(II)により示されるように、C2対称性を有する第1および第2の触媒成分を使用して実施可能である。ここで、この第2の触媒成分の置換基A1は、この第1の触媒成分の置換基Aよりもかさ高であって、この第1のポリマー製品の分子量よりも小さい分子量を有する第2のポリマー製品を製造することができる。加えて、基BおよびB2の芳香族性を変えることにより、分子量の制御が実施可能である。このように、この第2の触媒は、この第1の触媒の基B1およびB2よりも低い芳香族性を有する基B1’およびB2’を呈して、この第1のポリマー製品の分子量よりも小さい分子量を有する第2のポリマーを製造し得る。
【0102】
Cs対称性の触媒に対しては、この第2の触媒成分の基B1’がこの第1の触媒成分の基B1よりも大きいかさを有する第1および第2の触媒成分を使用して、この第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造することができる。第1および第2の触媒成分の基B2およびB2’において類似の変更を行うことができる。このように、この第1の触媒成分の基B2よりも大きいかさを有るるように、この第2の成分の基B2’を配合して、この第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造することができる。別法として、あるいはこれに加えて、Cs対称性を有する触媒については、この第2の触媒成分の基B1’は第1の触媒成分のB1よりも大きいかさを有して、この第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造することができる。
【0103】
この触媒成分がC2v対称性を有する場合には、この第2の触媒成分の置換基A’がこの第1の触媒成分の置換基Aよりもかさ高であるようにして、式(I)および(II)に対応する第1および第2の触媒成分を使用して、この第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造することができる。
【0104】
重合手順、触媒あるいは共触媒成分、またはポリマー製品に関する表示「第1」および「第2」は識別するための形容詞であり、この重合反応を行う順序または順番を表示するようには意図されていない。このように、普通の反応器を使用する場合には、この第2の触媒成分をこの反応器の中に導入して、この第1のポリマー製品の製造の前あるいは後に第2のポリマー製品を製造し得る。この第1および第2の触媒成分、共触媒成分およびポリマー製品を包含する重合手順も別々の反応器中で、異なる反応器中で同時あるいは逐次のいずれかで実施可能である。このように、この「第1」の重合手順はループタイプ反応器中で実施され得、一方この「第2」の重合はこのポリマー製品の押し出しおよびペレット化におけるポリマーフラフの処理を伴う同一の、あるいは異なる下流の加工手順と連携して第2のループタイプ反応器中で実施可能である。
【0105】
本発明の重合方法により製造されるエチレンホモポリマーとエチレン−C3+アルファオレフィンコポリマー、例えばエチレンプロピレンコポリマーを含むポリマー製品を使用して、広範で種々の最終使用製品を製造することができる。このように、このポリマー製品は、ブロー成形製品または射出成形製品、例えばミルク、食品、および洗剤用のびん、および例えば玩具とバケツおよび種々の押し出し製品を製造するのに使用され得る。このような押し出し製品は、食料雑貨袋および商品袋を製造するためのフィルム製品、食品用の包装、トラック荷台ライナーおよび荷物用のシート、出荷容器およびバルク貯蔵タンクを含む。製造可能な大きなブロー成形部品は、物品、出荷容器およびバルク貯蔵タンク、および種々の工業用用途、例えば下水管およびガス、オイル、および水輸送用途のパイプで使用するための高圧パイプを含むパイプを含む。このポリエチレン製品は高い電気抵抗を特徴とし、したがって絶縁用途、例えば電気配線製品上の絶縁被覆で使用され得る。限定ではないが、自動車あるいはトラックのダッシュボードおよび室内装飾成形品を含む射出成形品による種々の自動車部品を提供するのに、本発明により製造された成形されたエチレンホモポリマーあるいはコポリマー製品も使用可能である。本発明により製造されるポリマー製品を使用して、射出成形品による最終使用製品を製造する場合には、製造対象の物品の形状に合致する金型の中にこのポリマー製品を射出することにより種々の射出成形部品を製造し得る。示すように、ブロー成形により容器、びんなどを製造し、あるいは押し出しにより薄いフィルム製品を成形することにより種々の物品も製造し得る。フィルムなどに加えて、本発明の方法により製造されるエチレンホモポリマーあるいはコポリマー製品を使用して、種々の繊維、メッシュおよびテキスタイル材料ならびにアパレル物品、例えばガウン、マスク、手袋などを製造し得る。
【0106】
本発明の特定の態様を説明したので、これらの改変が当分野の技術者に示唆され得るということが理解されるであろう。そして本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るようなこのような改変をすべて網羅するように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式
【化1】

(式中、
(i)Mは元素周期律表の4−11族から選択される遷移金属であり;
(ii)nは1−3の整数であり;
(iii)QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり;
(iv)PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基であり;
(v)Aはメチル基、フェニル基、または置換フェニル基である)
により特徴付けられる遷移金属触媒成分を準備し;ここで
1.前記触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1とB2は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基またはアントラセニル基であるか;あるいは2.前記触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1とB2は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは3.前記触媒はCs対称性を呈し、そしてB1はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2はB1と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基であり、
(b)活性化共触媒成分を準備し;
(c)水素を含まないか、あるいはエチレンの5モル%未満である量で水素を含有する重合反応域中で前記触媒成分および前記共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触させて、前記エチレンの重合によりポリマー製品を製造し;そして
(d)前記反応域から前記ポリマー製品を回収する
ことを含んでなるエチレンの重合方法。
【請求項2】
前記ポリマー製品がエチレンホモポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒成分および前記共触媒成分を前記重合反応域中でエチレンおよびC3+アルファオレフィンと接触させて、エチレンと前記C3+アルファオレフィンのコポリマーを製造する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記C3+アルファオレフィンがプロピレンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒成分が、その一方はC2、C2vあるいはCs対称性を呈し、そして他方は前記第1の触媒下位成分の対称性と異なるC2、C2vあるいはCs対称性を呈する2つの触媒の下位成分の混合物を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒成分がC2対称性を呈し、そして置換基Aが前記触媒成分の置換基Aよりも大きい分子量のものであるか、あるいは基B1およびB2が前記触媒成分の基B1およびB2よりも低芳香族性である、C2対称性の対応する触媒成分により製造されるポリマーよりも小さい分子量のポリマーを製造する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒成分がCs対称性を呈し、そして基B1およびB2の少なくとも一方が前記触媒成分の対応する基B1あるいはB2よりも低かさ高性である、Cs対称性の対応する触媒成分により製造されるポリマーよりも大きい分子量のポリマーを製造する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒成分がC2v対称性を呈し、そして置換基Aが前記触媒成分の置換基Aよりも小さい分子量のものである、C2v対称性の対応する触媒成分により製造されるポリマーよりも大きい分子量のポリマーを製造する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒成分がC2対称性を呈し、そしてこのポリマー製品が同一重合条件下でCsあるいはC2v対称性を有する触媒成分による重合により製造されるポリマー製品よりも小さい分子量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒成分がCs対称性を呈し、そして前記反応域中で前記モノマーの重合により生成するポリマーが同一重合条件下でC2対称性を有する触媒成分による重合により生成するポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒成分がC2v対称性を呈し、そして対応する条件下Cs対称性を有する触媒成分によりこの反応域を運転することにより製造されるものよりも大きい分子量を有するポリマー製品を製造する条件下で前記重合反応域が運転される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
水素が導入されない前記触媒成分の活性に比して前記触媒成分の活性を増大させるのに有効な量で水素が前記反応域の中に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水素が0.001−0.02の範囲内の水素/エチレンモル比をもたらす量で導入される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ヘキセンの不存在下で前記エチレンの重合により製造されるポリマー製品に比して前記ポリマー製品の分子量を減少させるのに有効な量で1−ヘキセンが前記反応域の中に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水素とヘキセンが前記エチレンと一緒に前記重合反応域の中に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
Mが元素周期律表の8−10族から選択される遷移金属である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
Mが鉄またはコバルトであり、そしてnが2である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Mが鉄である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Qが塩素または臭素である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Qが塩素である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
この活性化共触媒がアルキルアルモキサンである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)式
【化2】

(式中、
(i)Mは元素周期律表の4−11族から選択される遷移金属であり;
(ii)nは1−3の整数であり;
(iii)QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり;
(iv)PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基であり;
(v)Aはメチル基、フェニル基、または置換フェニル基である)
により特徴付けられる第1の遷移金属触媒成分を準備し;ここで
1.前記第1の触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1とB2は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフチル基ま
たはアントラセニル基であるか;あるいは
2.前記第1の触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1とB2は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは
3.前記第1の触媒はCs対称性を呈し、そしてB1はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2はB1と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基であり、
(b)第1の活性化共触媒成分を準備し;
(c)重合反応域中で前記触媒成分および前記共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触
させて、前記エチレンの重合により第1のポリマー製品を製造し;
(d)前記反応域から前記第1のポリマー製品を回収し;
(e)前記第1の遷移金属触媒成分と異なり、そして式
【化3】

(式中、
(i)Mは元素周期律表の4−11族から選択される遷移金属であり;
(ii)nは1−3の整数であり;
(iii)QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり;
(iv)PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基であり;
(v)A’はメチル基、フェニル基、または置換フェニル基である)
により特徴付けられる第2の遷移金属触媒成分を準備し;ここで
1.前記第2の触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1’とB2’は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基またはアントラセニル基であるか;あるいは
2.前記第2の触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1’とB2’は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは
3.前記第2の触媒はCs対称性を呈し、そしてB1’はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2’はB1’と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基であり、
(f)前記第1の共触媒成分と同一かあるいは異なり得る第2の活性化共触媒成分を準備し;
(g)重合反応域中で前記第2の触媒成分および前記第2の共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触させて、前記エチレンの重合により、前記第1のポリマー製品とは異なる分子量の特徴を有する第2のポリマー製品を製造し;そして
(h)前記反応域から前記第2のポリマー製品を回収する
ことを含んでなるエチレンの重合方法。
【請求項23】
前記第1の触媒成分がC2対称性を有し、そして前記第2の触媒成分がCsあるいはC2v対称性を有して、前記第1のポリマー製品よりも大きい分子量を有する前記第2のポリマーを製造する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の触媒成分がC2あるいはCs対称性を有し、そして前記第2の触媒成分がC2v対称性を有して、前記第1のポリマー製品よりも大きい分子量を有する前記第2のポリマーを製造する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1および第2の触媒成分が各々C2対称性を有し、そして前記第2の触媒成分の置換基A’が前記第1の触媒成分の置換基Aよりもかさ高であって、前記第1のポリマー製品の分子量よりも小さい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1および前記第2の触媒成分が各々C2対称性を有し、そして前記第2の触媒成分の前記基B1’およびB2’が基B1およびB2よりも低い芳香族性を有して、前記第1のポリマー製品の分子量よりも小さい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記第1および第2の触媒成分が各々C2v対称性を有し、そして前記第2の触媒成分の置換基A’が前記第1の触媒成分の置換基Aよりもかさ高であって、前記第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記第1および第2の触媒成分が各々Cs対称性を有し、そして前記第2の触媒成分の
前記基B1’が前記第1の触媒成分の基B1よりも大きいかさを有して、前記第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記第1および第2の触媒成分が各々Cs対称性を有し、そして前記第2の触媒成分の前記基B2’が前記第1の触媒成分の基B2よりも大きいかさを有して、前記第1のポリマー製品の分子量よりも大きい分子量を有する第2のポリマー製品を製造する請求項22に記載の方法。
【請求項30】
(a)式
【化4】

(式中、
(i)Mは元素周期律表の4−11族から選択される遷移金属であり;
(ii)nは1−3の整数であり;
(iii)QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり;
(iv)PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基であり;
(v)Aはメチル基、フェニル基、または置換フェニル基である)
により特徴付けられる第1の遷移金属触媒成分を準備し;ここで
1.前記第1の触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1とB2は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基またはアントラセニル基であるか;あるいは
2.前記第1の触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1とB2は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは
3.前記第1の触媒はCs対称性を呈し、そしてB1はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2はB1と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基であり、
(b)第1の活性化共触媒成分を準備し;
(c)重合反応域中で前記触媒成分および前記共触媒成分をエチレンと重合条件下で接触させて、前記エチレンの重合により第1のポリマー製品を製造し;
(d)前記反応域から前記第1のポリマー製品を回収し;
(e)前記第1の遷移金属触媒成分と異なり、そして式
【化5】

(式中、
(i)Mは元素周期律表の4−11族から選択される遷移金属であり;
(ii)nは1−3の整数であり;
(iii)QはハロゲンまたはC1−C2アルキル基であり;
(iv)PYはピリジニル基の窒素原子によりMと配位しているピリジニル基であり;
(v)A’はメチル基、フェニル基、または置換フェニル基である)
により特徴付けられる第2の遷移金属触媒成分を準備し;ここで
1.前記第2の触媒成分はC2対称性を有し、そしてB1’とB2’は同一であり、そして1−ナフチル基、置換1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基またはアントラセニル基であるか;あるいは
2.前記第2の触媒成分はC2v対称性を呈し、そしてB1’とB2’は同一であり、そしてフェニル基または置換フェニル基であるか;あるいは
3.前記第2の触媒はCs対称性を呈し、そしてB1’はフェニルあるいは置換フェニル基であり、そしてB2’はB1’と異なり、ポリフェニル基またはターフェニル基であり、但し前記第2の触媒成分は前記第1の触媒成分とは異なる対称性を呈するものであることを条件とし;
(f)第2の活性化共触媒成分を準備し;
(g)エチレン、前記第1および第2の触媒成分、および少なくとも1つの活性化共触媒成分を重合反応域の中に導入し、そして前記反応域を重合条件下で運転して、前記エチレンの重合によりポリマー製品を製造し;そして
(h)前記反応域から前記第2のポリマー製品を回収する
ことを含んでなるエチレンの重合方法。
【請求項31】
前記第1および第2の触媒成分が前記第1および第2の触媒成分の混合物で前記重合反
応域の中に導入される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1および第2の触媒成分を順次前記重合反応域の中に導入して、2つの異なるポリマー製品を製造する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法により製造されるポリマー製品。
【請求項34】
エチレンホモポリマーまたはエチレンアルファオレフィンコポリマーを含んでなる請求項32に記載のポリマー製品。
【請求項35】
請求項34に記載のポリマー製品から成形され、前記製品が射出成形により製造される製品、ブロー成形により製造される製品、または押し出しにより製造される製品である製造物品。
【請求項36】
押し出し成形により製造されるフィルムを含んでなる請求項35に記載の物品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−17014(P2011−17014A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195396(P2010−195396)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2006−536632(P2006−536632)の分割
【原出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】