説明

ビタミン機能性材料、及びその製造方法

【課題】
冷蔵庫の庫内にアタッチメント部材として設置することにより、生鮮食料品の鮮度低下の原因となる酸化劣化を抑制し、鮮度保持に寄与することができ、またエアコンや空気清浄機、加湿器などの吹出し口フィルターとして使用することにより、ビタミンエアーの放出により、室内の抗酸化作用や保湿効果などの環境改善効果を期待することができるビタミン機能性材料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
通気孔2を形成したセラミック多孔構造体1にビタミン類を無機または有機化合物のバインダーにより付着保持してビタミン機能性材料を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質基材にビタミン類を含浸させたビタミン機能性材料、及びその製造方法に係り、詳しくは、個人用または業務用の冷蔵庫の庫内に野菜、果物、肉及び魚などの生鮮食料品の鮮度保持用のアタッチメント部材として設置可能であり、エアコンや空気清浄機、加湿器などの吹出し口フィルターとして使用可能なビタミン機能性材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビタミンCなどの機能性ビタミン類は、健康サプリメントや医薬品を始めとして化粧品や衣類などにも含有されており、健康サプリメントの摂取、医薬品の服用、化粧品の塗用、または衣類の着用などによって、人体に直接吸収させるという利用方法であった。
【0003】
例えば、ビタミンCの原料としては、L−アスコルビン酸やその誘導体であるL−アスコルビン酸燐酸マグネシウム塩などが用いられており、これらのビタミン原料はタルクやセリサイト、ベントナイト、酸化チタン、カオリンなどの粘土系無機化合物や、グリセリンなどの高級アルコールやポリビニルアルコールなどの有機化合物に混合されて化粧品として製造されたり、メチルセルロースやデキストリンなどの多糖類に混合されて健康サプリメントや医薬品などとして製造されている。
【0004】
また、冷蔵庫の野菜室を中心とした鮮度保持には、マイナスイオンを発生させて野菜などの鮮度を保持する手法が採用されており、また庫内の脱臭には、活性炭またはパラジウムやマンガン、鉄などの金属を主成分とする脱臭剤や、カテキン、ワサビ、ローズマリーなどの天然材料を主成分とする脱臭剤により、エチレンやメチルメルカプタン、トリメチルアミンなどを抑制する手法が採用されている。
【0005】
さらに、エアコンや空気清浄機、加湿器などにおいては、室内環境を改善する手段として、マイナスイオンを発生させたり、ミクロオーダーの微細なミストを放出したり、コロナ放電や超音波加湿器などを利用したり、活性炭やカテキン、ワサビなどの脱臭剤を用いたりしている。
【0006】
このようなビタミン類やビタミン誘導体を利用した関連技術としては、例えば、「不織布に乾燥化粧品成分を含有した化粧料」に係る発明が特開2004−51521号公報(特許文献1)が挙げられ、含有する化粧品成分がコラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸塩、ビタミン類、ビタミン誘導体及びグリチルリチン酸塩から選ばれる一種又は二種以上であること、化粧品成分として増粘剤を含有すること、不織布がシルクをニードルパンチしたレーヨン不織布であることなどが開示されている。
【特許文献1】特開2004−51521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、健康サプリメント、医薬品や化粧品などの分野においてビタミンCを単体で用いた場合には、その効果に持続力がなく、一回ずつの効果しか期待できない。また、化粧品等で利用されているアスコルビン酸誘導体には、燐酸エステルになったマグネシウム塩やナトリウム塩が代表的に利用されているが、このような状態で使用しても長期安定性は数ヶ月程度しか期待できない。
【0008】
実存するビタミンC材料は、水に易溶解性であり、しかも熱に弱い特性があるので、例えば、加湿器の吹出し口フィルターに用いると、ビタミンCが熱で分解してしまったり、スチームで直ぐに溶けてしまったりして、長期的な使用が期待できない。
【0009】
特許文献1に記載の不織布に乾燥化粧品成分を含有した化粧料は経時安定性、熱安定性に優れているとあるが、飽くまでも化粧料に限定した効果しか期待できない。
【0010】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷蔵庫の庫内にアタッチメント部材として設置した場合には、生鮮食料品の鮮度低下の原因となる酸化劣化を抑制し、鮮度保持に寄与することができ、またエアコンや空気清浄機、加湿器などの吹出し口フィルターとして使用した場合には、ビタミンエアーの放出により、室内の抗酸化作用や保湿効果などの環境改善効果を期待することができるビタミン機能性材料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、多孔質基材にビタミン類を無機または有機化合物のバインダーにより付着保持したことを特徴とするビタミン機能性材料である。
【0012】
請求項2に記載のものは、前記ビタミン類には、ビタミン単体の他、ビタミン誘導体も含まれることを特徴とする請求項1に記載のビタミン機能性材料である。
【0013】
請求項3に記載のものは、前記無機化合物バインダーは、珪酸塩類、燐酸塩類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビタミン機能性材料である。
【0014】
請求項4に記載のものは、前記有機化合物バインダーは、セルロース類、ポリビニルアルコール、エマルション類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビタミン機能性材料である。
【0015】
請求項5に記載のものは、前記多孔質基材に付着保持したビタミン類に、金属イオンまたは金属酸化物の一種類もしくは二種類以上を分散させていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のビタミン機能性材料である。
【0016】
請求項6に記載のものは、前記多孔質基材が複数の通気孔を有する多孔構造体として成型されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のビタミン機能性材料である。
【0017】
請求項7に記載のものは、ビタミン類に無機または有機化合物を加えた混合水溶液に多孔質基材を浸漬させて乾燥させた後に焼成して、多孔質基材にビタミン類を含浸保持させるようにしたことを特徴とするビタミン機能性材料の製造方法である。
【0018】
請求項8に記載のものは、前記ビタミン類には、ビタミン単体の他、ビタミン誘導体も含まれることを特徴とする請求項7に記載のビタミン機能性材料の製造方法である。
【0019】
請求項9に記載のものは、前記無機化合物は、珪酸塩類、燐酸塩類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のビタミン機能性材料の製造方法である。
【0020】
請求項10に記載のものは、前記有機化合物は、セルロース類、ポリビニルアルコール、エマルション類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のビタミン機能性材料の製造方法である。
【0021】
請求項11に記載のものは、前記多孔質基材を前記混合水溶液に浸漬させた後に、金属イオンまたは金属酸化物の一種類もしくは二種類以上を混合分散させた溶液に浸漬させ、これを乾燥させた後に焼成するようにしたことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれかに記載のビタミン機能性材料の製造方法である。
【0022】
請求項12に記載のものは、前記多孔質基材が複数の通気孔を有する多孔構造体として成型されていることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれかに記載のビタミン機能性材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
即ち、請求項1および請求項7に記載の発明によれば、多数の微細孔を有し表面積の大きい多孔質基材にビタミン類を保持させることにより、ビタミン類の含有量を増大させることができ、該ビタミン類を無機または有機化合物のバインダーを用いて保持しているので、その効能を長期的に維持することができる。
【0024】
請求項2および請求項8に記載の発明によれば、ビタミン類として、ビタミン単体の他、ビタミン誘導体も含むことにより、ビタミン類の安定性を確保することができる。
【0025】
請求項3および請求項9に記載の発明によれば、無機化合物として、珪酸塩類、燐酸塩類のうちの一種類または二種類以上から選択されるものを用いることにより、ビタミン類の保持力を有する無機化合物バインダーとして機能させることができ、ビタミン成分の効能を長期的に維持することができる。
【0026】
請求項4および請求項10に記載の発明によれば、有機化合物として、セルロース類、ポリビニルアルコール、エマルション類のうちの一種類または二種類以上から選択されるものを用いることにより、ビタミン類の保持力を有する有機化合物バインダーとして機能させることができ、ビタミン成分の効能を長期的に維持することができる。
【0027】
請求項5および請求項11に記載の発明によれば、前記多孔質基材に含浸保持したビタミン類に、金属イオンまたは金属酸化物を分散させているので、ビタミン成分の溶出速度または溶出量を制御することができ、さらにビタミン類に抗カビ効果を付与することができる。
【0028】
請求項6および請求項12に記載の発明によれば、多孔質基材が複数の通気孔を有する多孔構造体として成型されているので、エアコンや空気清浄機、加湿器などの吹出し口フィルターとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明に係るビタミン機能性材料は、多孔質基材にビタミン類を無機または有機化合物のバインダーにより含浸保持したものであり、以下、各構成要素について説明する。
【0030】
(多孔質基材)
多孔質基材としては、セラミックス材料、天然繊維材、合成繊維材及びパルプ材などを所望の大きさ、形状に加工したものを用いることができ、その他、多孔質で吸水特性を有する材料であればよい。ビタミン類を含浸させる基材としてこれらの多孔質材料を用いるのは、多孔質材料は多数の微細孔を有するので表面積が大きく、その表面のみならず微細孔中にもビタミン類を含浸させることができ、ビタミン類の含有量を増大させることができるからである。
【0031】
セラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアのような単一酸化物、またはゼオライト、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト、シリマナイト、カオリン、セリサイト、珪藻土、長石、蛙目粘土、パーライト、バーミキュライト、セリサイトなどの珪酸塩化合物の粒子、板材等の二次加工品が挙げられる。また、天然繊維材としては、パルプ繊維、綿、ウール繊維及び麻繊維などの繊維、織布、不織布が挙げられる。さらに、合成繊維材としては、ナイロンやレーヨン、ウレタン(ポリウレタンを含む)、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレンなどの繊維、織布、不織布が挙げられる。
【0032】
エアコンや空気清浄機、加湿器などの吹出し口フィルターとして使用する場合には、多孔質基材を予め複数の通気孔を有する多孔構造体として成型してもよい。多孔構造体の形状の代表的なものとしては、ハニカム構造やコルゲート構造などが挙げられる。
また、冷蔵庫の庫内に設置するアタッチメント部材として使用する場合には、パイプ状、シート状、プリーツ状などに加工したもの挙げられるが、これに限るものではない。
【0033】
(ビタミン類)
ビタミン類の原料には、ビタミンC等のビタミン単体の他、ビタミン類の安定性を確保するための補助原料としてビタミン誘導体も含まれる。
ビタミンCの原料としては、例えば、L−アスコルビン酸が挙げられ、また補助原料としては、水溶性のL−アスコルビン酸誘導体である燐酸、ポリ燐酸エステルまたは該エステル金属塩が挙げられる。これら金属塩には、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、鉄などがある。
【0034】
ビタミン機能性材料の機能性には、抗酸化性、抗菌性、脱臭性、保湿性及びアロマテラピー性などから、少なくとも一種類の性質を有する機能を付与することができ、例えば、ビタミン成分としてビタミンC以外にも、ビタミンD、ビタミンEなどの他、ビタミン系原料として、緑茶または緑茶カテキンや、柿カテキン、ステビアなどが挙げられる。
【0035】
(無機または有機化合物バインダー)
多孔質基材に含浸させるビタミン類の成分効能を長期的に維持するために、無機または有機化合物をビタミン原料に混合してビタミン類の保持力を有するをバインダーとして機能させる。
無機化合物としては、例えば、珪酸リチウムや珪酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸ジルコニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、エチルシリケート、シリカゾル、オルガノシリケートなどの珪酸塩、あるいは燐酸、ポリ燐酸、ウルトラポリ燐酸、燐酸アルミニウム、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウムなどの燐酸塩のうちの一種類または二種類以上から選択されるものを用いる。
【0036】
有機化合物としては、例えば、メチルセルロースやカルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ウレタンエマルション、アクリルエマルション、酢酸ビニルエマルションなどのうちの一種類または二種類以上から選択されるものを用いる。
【0037】
例えば、所望量のビタミン原料及びビタミン誘導体原料と所望量の無機または有機化合物とを混合した水溶液に多孔質基材を1時間程度浸漬させて乾燥させた後、所定の温度で焼成して、多孔質基材にビタミン類を含浸保持させる。
【0038】
(金属イオンまたは金属酸化物)
ビタミン類を無機または有機化合物のバインダーで多孔質材料に固定させるのに、水中で使用したり、加湿されたり、過剰な水量と接触する環境では、多孔質基材に含浸保持したビタミン類に、金属イオンまたは金属酸化物を分散させることが好ましい。
【0039】
例えば、多孔質基材を上記混合水溶液に1時間程度浸漬させた後に、金属イオンまたは金属酸化物の一種類もしくは二種類以上をエチルアルコールに混合分散させた溶液に数秒間浸漬させ、これを乾燥させた後に所定の温度で焼成することにより、多孔質基材に含浸保持したビタミン類に金属イオンまたは金属酸化物を分散させることができ、金属イオンまたは金属酸化物を化学反応させて、ビタミン成分の溶出速度または溶出量を制御することができ、さらにビタミン類に抗カビ効果を付与することができる。
このような用途に対応しうる金属としては、銅や銀、亜鉛、鉄、マグネシウム、白金などが挙げられる。
【0040】
以上の説明では、ビタミン原料およびビタミン誘導体と無機または有機化合物とを混合溶解した水溶液に多孔質基材を浸漬させて、多孔質基材の表面および微細孔内にビタミン類を含浸させているが、これに限るものではなく、多孔質基材の表面および微細孔内にビタミン類を付着させる方法として、添着、電着、化学メッキなどの方法が挙げられ、使用する用途に応じて、ビタミン類の成分選択、それらと無機または有機化合物との比率、更には金属イオンまたは金属酸化物の添加率を任意に設計することができる。
【0041】
また、上記手法でビタミン類を含浸保持した多孔質基材は、水素または窒素雰囲気中で加熱処理することで化学的に耐水・耐熱性を付与させながら、長期的にビタミン成分の効能を発現させることができ、特に金属酸化物を使用した場合には水素還元焼成が好ましく、ビタミン類の熱劣化度合いも軽減することができる。
【0042】
このように本発明に係るビタミン機能性材料によれば、ビタミン類の固定はシリカゲルなどの多孔質材料への含浸であり、無機化合物や有機化合物との中和反応による結合によってビタミン成分が解離し難くなり、ビタミン成分の放出性能は無機化合物や有機化合物との反応比率により制御することができる。このようにビタミン成分が無機化合物や有機化合物と化学結合しているので、乾燥状態においても放出し易い。
【0043】
そして、冷蔵庫の庫内にアタッチメント部材として設置すると、野菜、果物、肉及び魚などの生鮮食料品の鮮度低下の原因となる酸化劣化を抑制して鮮度保持することができ、さらに脱臭、抗菌などの効果が期待できる。
【0044】
さらに、エアコンや空気清浄機、加湿器などの吹出し口フィルターとして使用した場合、湿気を有する空気が通気孔を通過または接触すると、ビタミン成分がビタミンエアーとして空気中に放出され易く、室内の抗酸化作用や肌の保湿効果、脱臭、抗菌などの環境改善効果を期待することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限るものではない。
【0046】
〔実施例1〕
まず、基材として多数の微細孔を有するとともに、構造体として多数の通気孔を有する多孔構造体の製造について説明する。
【0047】
325メッシュ以下に粒度調整されたセピオライト粘土60重量部に、200メッシュ以下に粒度調整したコーディエライト、メチルセルロース5重量部を乾式混合し、これにコロイダルシリカ40重量部と水25重量部を加えて湿式混練したものを真空土練機に充填し、その口金部にハニカム状の金型を取り付け、押し出し成型した。この成型体を20〜25℃、湿度75〜85%の無風室で24時間養生したものを毎分5℃で常温から110℃まで加熱乾燥させた。乾燥させた成型体を汎用の電気炉またはガス窯を用いて950℃にて焼成し、30%程度の吸水率を有する図1に示すようなセラミック多孔構造体1を得た。このセラミック多孔構造体1は、略直方体状を呈しており、多数の矩形状の通気孔2が縦横に形成されている。
【0048】
次に、上記セラミック多孔構造体1を用いて行う、本実施例のビタミン機能性材料の製造方法について説明する。
ビタミン類としては、ビタミンC原料のL−アスコルビン酸の他、補助原料としてL−アスコルビン酸燐酸マグネシウムを用いる。また、無機化合物としては25%燐酸、40%コロイダルシリカを用い、金属添加物としては銀を用いる。
【0049】
25%燐酸水溶液40〜100重量部に、ビタミンC原料としてアスコルビン酸5〜20重量部及びアスコルビン酸燐酸マグネシウム1〜3重量部を十分に攪拌して溶解した水溶液を準備し、この水溶液に上記セラミック多孔構造体1を1時間浸漬させる。浸漬したものを取り出した後、これを40%コロイダルシリカ100重量部に5.0重量部のエチルアルコールと0.5重量部の銀を加えた溶液に数秒間浸漬し、速やかに取り出し、80℃に設定した真空乾燥機にて5時間程度乾燥させた。そして、乾燥機から取り出したセラミック多孔構造体1を水素炉に移し、100〜180℃にて3時間焼成処理してハニカム状構造を有するビタミン機能性材料が得られた。
【0050】
表1に示すように、上記ビタミン機能性材料の製造方法に基づいて、25%燐酸水溶液を0〜100重量部まで、40%コロイダルシリカを0〜100重量部まで変化させて6種類のビタミン機能性材料を試作した。なお、表1におけるControlは比較基準として試作したものであり、アスコルビン酸及びアスコルビン酸燐酸マグネシウムのみを原料としている。
【0051】
【表1】

【0052】
試作したビタミン機能性材料(ビタミン・ハニカムセラミックス)を空気清浄機の吹出し口に取り付けた場合に室内に放出される空気中のビタミン濃度について、各試料のビタミン放出濃度を測定した。具体的には、温度25℃、湿度75%RHの室内雰囲気において、空気清浄機の運転を停止した後どのくらいの時間まで空気中にビタミン成分が浮遊残存しているのかを評価し、その評価結果を図2に示す。なお、アスコルビン酸の定量試験としては、DPPHラジカル消去法*−1(*−1、DPPH;1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)を実施した。
【0053】
図2に示すように、アスコルビン酸及びアスコルビン酸燐酸マグネシウムのみを原料とした基準試料(Control)では、急激にビタミン成分の浮遊残存量が低下し、10日を経過した時点で殆どビタミン成分が浮遊残存していないことが分かる。また、25%燐酸水溶液を加えていない試料1についても急激にビタミン成分の浮遊残存量が低下し、13日を経過した時点で殆どビタミン成分が浮遊残存していないことが分かる。さらに、試料2から試料5へと25%燐酸水溶液の混合量を増加するとともに、40%コロイダルシリカの混合量を減少するにつれて、ビタミン成分の浮遊残存量がより緩やかに低下するようになり、試料2から試料5へと順次ビタミン保持性能が増大していることが分かる。
【0054】
〔実施例2〕
まず、本実施例のビタミン機能性材料の製造方法について説明する。
ビタミン類としては、ビタミンC原料のL−アスコルビン酸を用いる。また、無機化合物としては25%燐酸、40%珪酸リチウム、325meshゼオライトを用い、金属添加物としては銀を用いる。
【0055】
25%燐酸水溶液60重量部に、ビタミンC原料としてアスコルビン酸20重量部を十分に攪拌して溶解した水溶液を準備し、この水溶液にゼオライト粉末を1時間浸漬させる。浸漬したゼオライトを取り出し、これを40%珪酸リチウム20〜100重量部に5.0重量部のエチルアルコールと0.5重量部の銀とを加えた溶液に混合させ、80℃に設定した真空乾燥機にて5時間程度乾燥させた。そして、乾燥機から取り出した材料を水素炉に移し、150℃にて3時間焼成処理してビタミン機能性材料が得られた。
【0056】
次に、上記ビタミン機能性材料を用いて、多孔構造体(高吸水性コルゲート)の製造について説明する。
ウレタンエマルション5重量部を混合した水溶液100重量部に、200メッシュ以下に粒度調整された高分子吸収材60重量部を加えて添着したコルゲートを製造した。これに、上記で製造したビタミン機能性材料10〜40重量部をウレタンエマルション100重量部に混合分散させたものを、10〜50g/mの付着量にてコルゲートに添着加工した。それらを100〜105℃で24時間乾燥し、図3に示すようなビタミン担持高吸水性コルゲート11を得た。このビタミン担持高吸水性コルゲート(コルゲート多孔構造体)11は、略円板状を呈しており、多数の山形状の通気孔12が渦巻き状に形成されている。
【0057】
表2に示すように、上記の製造方法に基づいて、40%珪酸リチウムの混合量を20重量部から100重量部まで変化させて6種類の多孔構造体(ビタミン・コルゲート)を試作した。なお、表2におけるControlは比較基準として試作したものであり、アスコルビン酸のみを原料としている。また、試料5では40%珪酸リチウムを加えていない。
【0058】
【表2】

【0059】
試作したビタミン・コルゲートを加湿器のミスト吹出し口に取り付けた状態で、3時間,6時間,9時間の連続運転を行なった。この加湿器の内部には純水を入れ、発生した蒸気ミストが試作コルゲートを通過して外部に放出されるように成っている。そして、蒸気ミスト中にビタミン成分が含まれているのかを確認する目的でミストの結露水を回収し、DPPH法によりビタミン放出量の定量分析を実施した。表2に示す各試料の3時間,6時間,9時間における分析結果を図4に示す。
【0060】
図4に示すように、アスコルビン酸のみを原料とした基準試料(Control)では、3時間までにアスコルビン酸の殆どが放出され、9時間を経過するとアスコルビン酸の放出量が極めて低下しているのが分かる。これに対し、試料1〜試料5では時間経過に伴ってアスコルビン酸の放出量が徐々に増加しており、40%珪酸リチウムの混合量を増加するにつれてアスコルビン酸の放出量が抑えられ、長期間の放出性能を維持しうることが分かる。
【0061】
〔実施例3〕
図5は、シリカゲル等の多孔質セラミックスにビタミン類を含浸させた状態を示す概略図であり、0.1〜3μmφのシリカゲルの一粒子を示している。図示するように、シリカゲルの一粒子21内には多数の微細孔22が存在し、これら微細孔22内にビタミン成分23が含浸しており、それらの隙間には珪酸リチウムや燐酸カルシウム等の無機化合物の反応成分24が結合している。以下、これをビタミンセラミックスと称する。
【0062】
本実施例では、まず、アスコルビン酸、ビタミンセラミックスの皮膚透過性について評価を試みた。皮膚透過性の評価方法は、アスコルビン酸またはビタミンセラミックスの1%水溶液を皮膚1cmに0.5ml塗布した場合の皮膚への透過性について、30分間隔で透過したアスコルビン酸またはビタミンセラミックスの濃度を分析した。
【0063】
図6は、アスコルビン酸、ビタミンセラミックスの皮膚透過性の評価結果を示す説明図であり、AsAはアスコルビン酸を、APMはビタミンセラミックスを示している。図示するように、1%アスコルビン酸(AsA)に比べて、1%ビタミンセラミックス(APM)の方がビタミンの皮膚透過性が高いことが分かる。
【0064】
次に、ビタミンセラミックスの皮膚透過によるビタミンC活性度について評価を試みた。ビタミンC活性度の評価方法は、ビタミンセラミックスの1%水溶液を皮膚1cmに0.5ml塗布した場合の皮膚への透過したビタミンセラミックスのビタミンC(アスコルビン酸)への変換活性を、2時間後および6時間後について分析した。
【0065】
図7は、ビタミンセラミックスの皮膚透過によるビタミンC活性度の評価結果を示す説明図であり、AsAはアスコルビン酸を、APMはビタミンセラミックスを示している。図示するように、2時間後および6時間後において、1%アスコルビン酸(AsA)に比べて、1%ビタミンセラミックス(APM)の方がビタミンCへの変換活性が高いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1で用いるセラミック多孔構造体を示す平面図である。
【図2】実施例1において、ビタミン・ハニカムセラミックスを空気清浄機の吹出し口に取り付けた場合のビタミン成分の浮遊残存量の評価結果を示す説明図である。
【図3】実施例2で用いるコルゲート多孔構造体を示す平面図である。
【図4】ビタミン・コルゲートを加湿器のミスト吹出し口に取り付けた場合の3時間,6時間,9時間におけるビタミン放出量の分析結果を示す説明図である。
【図5】多孔質セラミックスにビタミン類を含浸させた状態を示す概略図である。
【図6】実施例3において、アスコルビン酸、ビタミンセラミックスの皮膚透過性の評価結果を示す説明図である。
【図7】ビタミンセラミックスの皮膚透過によるビタミンC活性度の評価結果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 セラミック多孔構造体
2 矩形状の通気孔
11 コルゲート多孔構造体
12 山形状の通気孔
21 シリカゲルの一粒子
22 微細孔
23 ビタミン成分
24 無機化合物の反応成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材にビタミン類を無機または有機化合物のバインダーにより付着保持したことを特徴とするビタミン機能性材料。
【請求項2】
前記ビタミン類には、ビタミン単体の他、ビタミン誘導体も含まれることを特徴とする請求項1に記載のビタミン機能性材料。
【請求項3】
前記無機化合物バインダーは、珪酸塩類、燐酸塩類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビタミン機能性材料。
【請求項4】
前記有機化合物バインダーは、セルロース類、ポリビニルアルコール、エマルション類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビタミン機能性材料。
【請求項5】
前記多孔質基材に付着保持したビタミン類に、金属イオンまたは金属酸化物の一種類もしくは二種類以上を分散させていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のビタミン機能性材料。
【請求項6】
前記多孔質基材が複数の通気孔を有する多孔構造体として成型されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のビタミン機能性材料。
【請求項7】
ビタミン類に無機または有機化合物を加えた混合水溶液に多孔質基材を浸漬させて乾燥させた後に焼成して、多孔質基材にビタミン類を含浸保持させるようにしたことを特徴とするビタミン機能性材料の製造方法。
【請求項8】
前記ビタミン類には、ビタミン単体の他、ビタミン誘導体も含まれることを特徴とする請求項7に記載のビタミン機能性材料の製造方法。
【請求項9】
前記無機化合物は、珪酸塩類、燐酸塩類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のビタミン機能性材料の製造方法。
【請求項10】
前記有機化合物は、セルロース類、ポリビニルアルコール、エマルション類のうちの一種類または二種類以上から選択されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のビタミン機能性材料の製造方法。
【請求項11】
前記多孔質基材を前記混合水溶液に浸漬させた後に、金属イオンまたは金属酸化物の一種類もしくは二種類以上を混合分散させた溶液に浸漬させ、これを乾燥させた後に焼成するようにしたことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれかに記載のビタミン機能性材料の製造方法。
【請求項12】
前記多孔質基材が複数の通気孔を有する多孔構造体として成型されていることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれかに記載のビタミン機能性材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−56912(P2006−56912A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236975(P2004−236975)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(304038828)有限会社マック (1)
【Fターム(参考)】