説明

ビタミンB1配合ゲル化栄養組成物

【課題】本発明の目的は、ビタミンB1を配合していても風味良好で、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に継続して摂取ができるようにしたビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を提供することにある。
【解決手段】たんぱく質、糖質を主成分とし、ビタミンB1を0.5〜30mg配合したビタミンB1配合ゲル化栄養組成物において、あずき素材を配合したビタミンB1配合ゲル化栄養組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に投与するビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、たんぱく質、糖質を主成分とし、ビタミンB1を0.5〜30mg配合し、さらに、あずき素材を配合することを特徴とするビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者あるいは病後の人など喫食量の少ない人や嚥下能力が低下している人、嚥下機能訓練患者、水分制限患者において、経口摂取が不十分な低栄養患者などには、液状の栄養剤に限らずゲル状の栄養剤も用いられている。すなわち、咀嚼力が弱っている場合は、食材を細かく刻んだり、つぶした形態、嚥下機能が弱っている場合は、ゼリー状やペースト状の形態と咀嚼力、嚥下機能の程度によって食べられる食事形態が異なってくるので、液状もしくはゲル状など、栄養を必要としている人に対して様々な形態の栄養組成物が広く用いられている。
消化器外科手術患者や高齢者において、たんぱく質、エネルギー、ビタミンあるいはミネラルなどの摂取不足状態が長く続くと、免疫機能の低下や新たな疾患の発症を誘引することがある。特に、ビタミンB1は健康的な生活を営むために、欠くことのできない栄養素の一つであり、チアミン2−リン酸(TPP)の形で補酵素としてα−ケト酸の脱炭酸反応と、ヘキソースおよびペントースリン酸間でのトランスケトラーゼ反応系で働き、糖質や分枝鎖アミノ酸の代謝にあずかることが知られている。このため、ビタミンB1を適量に摂取することは重要である。
また、高齢者ではビタミンB1保持能力が低下している可能性があり、良好なビタミンB1栄養状態を維持するためには継続的な補給が必要であることから、栄養組成物にビタミンB1を配合することは目的に適合する。
このビタミンB1は、水溶性ビタミンであり、過剰摂取しても尿中にすみやかに排出されるため、上記観点からはビタミンB1配合量に上限は設定されるものではない。さらに、ビタミンB1は、経口より摂取した場合、体内への吸収は10〜20%であると言われており、これらの観点からある程度過剰量を配合したほうが好ましい。しかしながら、ビタミンB1には特有の臭いがあり、組成設定上マスキングが十分に行えない場合など、栄養組成物としての製剤上の理由で過剰配合が好ましくないことがある。また、栄養組成物を摂取した患者の体臭としてビタミンB1臭がすることがあり、これを不快に感じる場合もあり、QOLの観点から過剰配合が好ましくないことがある。
このため、ビタミンB1を食品に使用する場合、風味に影響し、継続した摂取が困難となり、商品価値が著しく損なわれるため、ビタミンB1臭を十分にマスキングする必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上述の状況に鑑みてなされたもので、ビタミンB1を配合していても風味良好で、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に継続して摂取ができるようにしたビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、たんぱく質、糖質を主成分とし、ゲル化栄養組成物1個当たりビタミンB1を0.5〜30mg配合したビタミンB1配合ゲル化栄養組成物において、あずき素材を配合すると、ビタミンB1特有の風味を十分にマスキングでき、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に継続して摂取ができるビタミンB1配合ゲル化栄養組成物が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に示したものである。
(1)たんぱく質、糖質を主成分とするゲル化栄養組成物であって、ビタミンB1の1重量部に対して、あずき素材を50〜400重量部含有するビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。なお、栄養組成物は1個あたりの量は20〜200gであることが好ましく、50〜120gであることがより好ましい。
(2)該栄養組成物あたり0.5〜30mgのビタミンB1を含有する上記(1)に記載のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。
(3)該栄養組成物100重量部あたりのたんぱく質が1〜20重量部、糖質が5〜30重量部含有し、エネルギーが30〜160kcalである上記(1)または(2)に記載のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。
(4)ゲル強度が1×10〜2×10N/mの範囲である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。
【発明の効果】
【0005】
以上述べたように、本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物は、たんぱく質、糖質を主成分とし、ビタミンB1を配合し、さらに、あずき素材を特定量配合することで、ビタミンB1特有の風味を十分にマスキングでき、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に継続して摂取ができるようにしたビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を詳細に説明する。
本発明で使用するビタミンB1としては、従来使用されているものはいずれも可能であり、例えば、チアミン、フルスルチアミン、チアミンジスルフィド、コカルボキシラーゼ、プロスルチアミン、シコチアミン、チアミンモノホスフェイトジスルフィド、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、ジベンゾイルチアミン、チアミンチオシアン酸など、およびこれらの塩が挙げられる。これらのなかでもチアミンおよびこの塩が好ましい。
本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に配合されるビタミンB1の配合量は、水溶性ビタミンであり、過剰摂取しても尿中にすみやかに排出されるため、上記観点からはビタミンB1配合量に上限は設定されるものではないが、患者に利用されることなく排出されてしまう分のビタミンB1を配合することは経済上好ましくなく、これらの点から上限は30mg/個とすることが好ましい。一方、下限は、ビタミンB1特有の風味が明らかに感じるようになり、継続して摂取することが困難となる場合がある点から0.5mg/個とすることが好ましい。さらに好ましくは、1〜25mg/個である。
【0007】
本発明で用いられるあずき素材のあずきは、マメ科アズキ(Azuki angularis OHWI)の種子であり、このあずきは、その種子を加工したり、抽出したりして使用することができる。
あずき素材としては、例えば、あずきそのものやあずき粉末(生餡)、こし餡、粒餡、ねり餡などのあずき加工物やあずきを原料としたあずきフレーバー、あずき色素、あずきエキスなどのあずき抽出物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に配合されるあずき素材の配合量は、ビタミンB1の1重量部に対して、50〜400重量部であり、好ましくは100〜300重量部である。
あずき素材の配合量がビタミンB1の1重量部に対して、50重量部より少ないと、ビタミンB1臭をマスキングする効果が得られず、400重量部より多くても効果はほとんど変わらなくなる。
【0008】
本発明で使用するたんぱく質としては、従来から、食品に慣用されるものでよく、例えば、鶏卵たんぱく質、乳たんぱく質、大豆たんぱく質、魚たんぱく質、肉たんぱく質、ゼラチンなどのたんぱく質およびこれらの分解物、アミノ酸などが挙げられる。
本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に配合されるたんぱく質の配合量は、栄養組成物100重量部あたりのたんぱく質が1〜20重量部配合されていることが適当であり、好ましくは5〜15重量部である。また、栄養組成物1個あたりとしては、1〜15gが適当であり、好ましくは3〜10gであり、これにより充分なたんぱく質を摂取できる。
本発明で使用する糖質としては、従来から、食品に慣用されるものでよく、例えば、澱粉、デキストリンやブドウ糖及び果糖などの単糖類、マルトース及び乳糖などの二糖類、砂糖、グラニュー糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、粉飴、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に配合される糖質の配合量は、栄養組成物100重量部あたりの糖質が5〜40重量部配合されていることが適当であり、好ましくは15〜30重量部である。また、栄養組成物1個あたり5〜25gが適当であり、好ましくは10〜20gである。また、糖質のエネルギー比としては、40〜70%が好ましい。
【0009】
本発明で使用するゲル化剤としては、ゼラチン、寒天、ペクチン、カラギーナン、グァーガム、ジェランガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、タラガム、マンナン、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特性の異なる物を数種混合して使用することが好ましい。ゲル化剤の配合量は、組成物の総重量を基準として、0.2〜1.0重量%が適当である。栄養組成物1個あたり、下記の範囲が適当である。
ゼラチン 0〜3%、好ましくは0.5〜2%
寒天 0.1〜2.5%、好ましくは0.5〜2%
ペクチン 0.1〜4%、好ましくは2価陽イオンの存在によりゲル化能が増大するため、適時調整が必要。
カラギーナン 0.1〜2.5%、好ましくはミネラルの存在によりゲル化能が増大するため、適時調整が必要。
キサンタン−ガラクトマンナン系(グァーガム、ジェランガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム)0.1〜3%、添加食材、種類、pH、加熱温度により変動があるために好ましくは2%以下が良い。
【0010】
本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物は、たんぱく質、糖質、ビタミンB1ならびにゲル化剤を配合しており、エネルギーが30〜160kcal/個、好適範囲は60〜120kcal/個である。ゲル強度は1×10〜2×10N/m、好適範囲は5×10〜1×10N/mであり、経口摂取した場合に良好な喉越しを有しているものが好ましい。
【0011】
また、本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を製造する際には、製品の種類に応じて通常用いられる適宜な成分を使用することが出来る。
本発明に用いる脂質としては、従来使用されているものはいずれも可能であり、例えば、大豆油、なたね油、コーン油、サフラワー油、キャノーラ油、パーム油、ココヤシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、シソ油、エゴマ油などの植物性油脂、牛脂、ラードなどの動物性油脂、魚油、MCT油などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
脂肪の配合量としては、栄養組成物1個あたり0〜4.5gが適当であり、脂肪のエネルギー比としては0〜40%が好ましい。
【0012】
本発明に用いるミネラルとしては、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、リンなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。
ミネラルの配合量としては、栄養組成物1個あたり、下記の範囲が適当である。
ナトリウム 0〜6000mg、好ましくは10〜3500mg
カルシウム 0〜2300mg、好ましくは80〜600mg
鉄 0〜55mg、好ましくは1〜10mg
リン 0〜3500mg、好ましくは25〜1500mg
マグネシウム 0〜740mg、好ましくは25〜300mg
カリウム 0〜3500mg、好ましくは25〜1800mg
銅 0〜10mg、好ましくは0.1〜5mg
マンガン 0〜11mg、好ましくは0.1〜8mg
亜鉛 0〜30mg、好ましくは1〜15mg
【0013】
本発明に用いるビタミンB1以外のビタミンとしては、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンKなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。
ビタミンの配合量としては、栄養組成物1個あたり、下記の範囲が適当である。
ビタミンB2 0〜20mg、好ましくは0.1〜12mg
ナイアシン 0〜300mg、好ましくは1.5〜15mg
ビタミンB6 0〜60mg、好ましくは0.1〜10mg
葉酸 0〜1000μg、好ましくは20〜200μg
ビタミンB12 0〜100μg、好ましくは0.2〜60μg
ビオチン 0〜1000μg、好ましくは3〜500μg
パントテン酸 0〜55mg、好ましくは0.6〜30mg
ビタミンC 0〜2000mg、好ましくは10〜1000mg
ビタミンA 0〜3000μg、好ましくは60〜600μg
ビタミンE 0〜800mg、好ましくは1〜150mg
ビタミンD 0〜50μg、好ましくは0.3〜5μg
ビタミンK 0〜1000μg、好ましくは2〜700μg
【0014】
以上、本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、必要に応じて、他の成分類や添加剤などを添加してもよい。例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアゴム、色素、香料、保存剤など、通常の食品原料として使用されている添加剤などを適宜添加してもよい。
【0015】
本発明のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を収容する容器としては特に限定されない。容器の材質としては、食品用容器などに通常使用されているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルなど、およびこれらの少なくとも1つを含むフィルムシートなどからの構成包装材、またこれらの素材に酸化ケイ素、酸化アルミ、アルミニウムなどのガスバリアー性物質を蒸着処理した包装材およびこれらの素材を組み合わせた多層フィルムなどが挙げられる。
【0016】
容器への充填、収容は常法に従って行うことができ、例えば、各液を不活性ガス雰囲気下で充填し、施栓し、加熱殺菌する方法が挙げられる。
加熱殺菌方法は、高圧蒸気殺菌、熱水殺菌、熱水シャワー殺菌などの公知の方法を適宜採用することができる。また、殺菌方法の操作条件、例えば、殺菌時間、殺菌温度などは通常のこの種の殺菌操作条件などと同様のものとすることができる。さらに、上記加熱殺菌は、必要に応じて窒素などの不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
このようにして得られたビタミンB1配合ゲル化栄養組成物は、あらかじめビタミンB1を配合していても風味良好で、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に継続して摂取ができる。
【実施例】
【0017】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す配合でビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を調製法1の方法により調製した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
(調製法1)
約50℃の温水1.5kgに撹拌しながら、クエン酸三ナトリウム、乳化剤、脱脂粉乳および粉末油脂を少しずつ投入した。その後、約70℃に昇温し、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、乳酸カルシウム、クエン酸鉄およびトレハロースを粉体混合して、投入した。さらに、ねり餡、赤色色素を投入した。次に、約80℃に加温し、寒天、ゲル化剤および上白糖を粉体混合して、投入した。ビタミンミックスおよびあずきフレーバーを投入し、10分間撹拌保持した。その後、温水を加え、全量を3kgにして、100kg/cmの均質化圧で均質化処理を行い、ビタミンB1配合栄養組成液を得た。このビタミンB1配合栄養組成液を65mL容アルミック缶(登録商標、昭和電工パッケージング社製)に74gずつ充填・封入し、その後、120℃で20分間の熱水殺菌処理を行った後、放冷してビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を得た。
ビタミンB1配合ゲル化栄養組成物のゲル強度は8×10N/mであった。
【0021】
(実施例2)
実施例1において、ビタミンミックスとねり餡を配合せず、チアミン塩酸塩25mgと生餡3gを配合した以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返してビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を得た。なお、このビタミンB1配合ゲル化栄養組成物のゲル強度は3×10N/mであった。
【0022】
(比較例1)
実施例1において、ねり餡300gを50gと上白糖250gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返してビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を得た。なお、このビタミンB1配合ゲル化栄養組成物のゲル強度は7×10N/mであった。
(比較例2)
実施例2において、生餡を配合しない以外は実施例2と全く同じ調製法を繰り返してビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を得た。なお、このビタミンB1配合ゲル化栄養組成物のゲル強度は3×10N/mであった。
【0023】
(評価法)
実施例1および2と比較例1および2のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物を、10名の被験者に食してもらい、ビタミンB1の臭味をマスキングできているかを官能評価した。評価は次に示す5点で行い、平均点を算出した。結果を表3に示す。
5点:ビタミンB1の臭味がせず、おいしく食べられる。
4点:ビタミンB1の臭味があまりせず、食べられる。
3点:どちらともいえない。
2点:ビタミンB1の臭味がわずかにあり、あまり食べられない。
1点:ビタミンB1の臭味があり、食べられない。
実施例1および2は、官能評価の平均点数が4.8および2.6であり、被験者はビタミンB1の臭味がせず、おいしく食べられた、もしくは、ビタミンB1の臭味があまりせず、食べられた。一方、比較例1および2は、官能評価の平均点数が1.8および1.0であり、被験者はビタミンB1の臭味を感じ、あまり食べられなかった、もしくは、食べられなかった。
【0024】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ビタミンB1を配合していても風味良好で、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者、嚥下困難者あるいは低栄養状態の患者に継続して摂取ができるようにしたビタミンB1配合ゲル化栄養組成物に関するものであって、産業上十分に利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たんぱく質、糖質を主成分とするゲル化栄養組成物であって、ビタミンB1の1重量部に対して、あずき素材を50〜400重量部含有することを特徴とするビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。
【請求項2】
該栄養組成物あたり0.5〜30mgのビタミンB1を含有する請求項1に記載のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。
【請求項3】
該栄養組成物100重量部あたりのたんぱく質が1〜20重量部、糖質が5〜30重量部含有し、エネルギーが30〜160kcalである請求項1または2に記載のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。
【請求項4】
ゲル強度が1×10〜2×10N/mの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のビタミンB1配合ゲル化栄養組成物。

【公開番号】特開2007−297346(P2007−297346A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128066(P2006−128066)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】