説明

ビニル置換脂肪酸

本出願では、活性化脂肪酸、活性化脂肪酸を含む医薬組成物、活性化脂肪酸を用いて種々の疾患を治療する方法、及び活性化脂肪酸を調製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2008年5月1日に提出された米国仮特許出願第61/049,649号(その全体が参照によって本明細書に援用される)の優先権を主張する非仮出願である。
(政府の権益)
適用なし。
(共同研究契約の関係者)
適用なし。
(コンパクトディスクで提出した資料の参照による組込み)
適用なし。
【背景技術】
【0002】
(背景)
1. 発明の分野:適用なし。
2. 関連技術の説明:
一酸化窒素(NO)は、内生的に生じた親油性シグナル伝達分子であり、血管恒常性の維持、酸素ラジカル反応の調節、炎症細胞機能、翻訳後タンパク質修飾及び遺伝子発現の制御に関与している。さらに、一酸化窒素誘導種は独特かつユニークな薬理学的特性を示し、例えば、不飽和脂肪酸のような生体分子の酸化及びニトロ化を特異的に媒介することができる。
種々の反応が、標的分子の協奏的酸化、ニトロソ化及びニトロ化が可能な産物を生成する。例えば、一酸化窒素は、スーパーオキシド(O2-)と反応してペルオキシ亜硝酸(ONOO-)及びその共役酸、ペルオキシニトリトロ亜酸(peroxynitritrous acid)(ONOOH)を生成し、後者はホモリシス開裂を受けて二酸化窒素ラジカル(・NO2)及びヒドロキシルラジカル(・OH)を形成し得る。場合によっては、生物学的状況がONOO-とCO2の反応を好み、ニトロソペルオキシ炭酸(ONOOCO2-)を生成し、これが迅速にホモリシスによって・NO2と炭酸(・CO3-)ラジカルを生成するか又は転位を経てNO3-とCO2になる。炎症中、好中球ミエロペルオキシダーゼ及びヘムタンパク質、例えばミオグロビン及びチトクロムcが亜硝酸(NO2-)の・NO2へのH2O2依存性酸化を触媒し、触媒的ヘムタンパク質の空間分布によって影響を受ける生体分子の酸化及びニトロ化をもたらす。・NOとO2の反応が、ニトロソ化及びニトロ化の基質又は反応物であり得る産物を生成することもある。例えば、・NO及びO2の小さい分子径、無電荷性及び親油性が、「分子レンズ(molecular lens)」効果と称するプロセスにおいて生体膜内のこれらの種の濃縮を促進する。疎水性細胞区画内の・NOとO2の溶媒和によって導かれた濃度の上昇が、普通は遅い・NOとO2の反応を加速してN2O3及びN2O4をもたらす。最後に、環境要因も光化学空気汚染及びタバコの煙の産物として・NO2を生じさせる。
【0003】
・NO2による脂肪酸のニトロ化は、いくつかの方法を介して起こり得る。例えば、基底細胞シグナル伝達中にも組織炎症状態中にも・NO2が膜及びリポタンパク質の脂質と反応し得る。in vivoとin vitroの両系内において、・NO2が、ビス-アリル炭素からの水素引抜きによる多価不飽和脂肪酸のラジカル連鎖自動酸化を惹起して、亜硝酸及び共鳴安定化ビス-アリルラジカルを形成することが分かっている。ラジカル環境によっては、脂質ラジカル種が分子酸素と反応してペルオキシラジカルを形成し、さらに反応して脂質ヒドロペルオキシド、ひいては酸化脂質を形成することがある。炎症又は虚血中、O2レベルが低いと、脂質ラジカルがさらに大いに・NO2と反応して、単独でニトロ化した産物、ニトロヒドロキシ脂肪酸付加物及びジニトロ脂肪酸付加物などの複数のニトロ化産物を発生させ得る。これらの産物は、二重結合の反対側の水素引抜き、・NO2の直接付加によって、又は両者によって発生し得る。場合によっては、該反応の後に、生じた中間産物がさらに反応し得る。水素引抜きは二重結合の転位を引き起こして共役ジエンを形成するが、・NO2の付加はメチレン-中断ジエン配置を維持して、単独にニトロ化した多価不飽和脂肪酸をもたらす。この配置は、ONOO-とヘムタンパク質の反応によってか又はCO2とONOO-の反応の二次産物を経て生成され得るニトロニウムイオン(NO2+)によって生じたニトロ化産物と同様である。
多価不飽和脂肪酸と酸性化亜硝酸(HNO2)の反応は、ビス-アリル結合配置を維持している単独にニトロ化した産物の形成を含め、・NO2との直接反応によって生じる当該産物と同様の産物の混成物を発生させ得る。NO2-の酸性化は、不安定種であるHNO2を生じさせ得る。これはN2O3、・NO及び・NO2などの全てニトロ化反応に関与し得る二次産物と平衡状態にある。脂肪酸ニトロ化の機構としてのこの径路の関連性は、NO2-が低pH(例えば、<pH 4.0)にさらされている生理学的及び病理学的状態によって例証される。これは、おそらく胃の区画内でエンドソーム若しくはファゴリソソーム酸化後又は虚血再灌流後の組織内で起こるであろう。
ニトロ化リノール酸(LNO2)は、通常本質的に抗炎症性である頑強な細胞シグナル伝達活性を示すことが分かっている。合成LNO2は、cAMP依存性機構によってヒト血小板機能を阻害し、かつ非cAMP、非cGMP依存性機構によって好中球O2-発生、カルシウム流入、エラスターゼ放出、CD11b発現及び脱顆粒を阻害することができる。LNO2は、部分的にcGMP依存性機構によって血管弛緩をも誘発し得る。全体として、合成脂肪酸から導かれたこれらのデータは、脂肪酸のニトロ誘導体(NO2-FA)が、脂質由来シグナル伝達媒介物質の新分類を表すと推測する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日まで、ニトロ化脂肪酸の臨床上の検出と構造上の特徴づけのギャップが、・NO及び酸素添加脂質シグナル伝達経路を収束する生物学的に関連する脂質シグナル伝達媒介物質としてNO2-FA誘導体を定義することを制限していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明の種々の実施形態は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を含む化合物に関する。一部の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が奇数個の炭素を有する脂肪族鎖を含み、他の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が5〜23個の炭素を有する脂肪族鎖、又は特定実施形態では、5、7、9、11、13、15、17、19、21若しくは23個の炭素を有する脂肪族鎖を含み得る。さらなる実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、糖脂質、グリセロ脂質、リン脂質及びコレステロールエステルであってよい。
【0006】
種々の実施形態の1つ以上の電子求引基としては、限定するものではないが、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)、又はニトロ(-NO2)が挙げられる。ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルであり、特定実施形態では、1つ以上の電子求引基がニトロ(-NO2)基であってよい。一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置してよく、他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置してよい。さらに他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置してよい。特定の実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基であってよい。一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にあってよく、他の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にあってよい。さらに別の実施形態では、1つ以上の電子求引基がsp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のRにあってよく、一部の他の実施形態では、1つ以上の電子求引基がsp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のSにあってよい。
【0007】
種々の実施形態では、炭素-炭素二重結合が、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の脂肪族鎖のいずれの炭素に存在してもよい。一部の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、2つ以上の共役炭素-炭素二重結合を有する脂肪酸であってよく、特定の実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、2つ以上の共役炭素-炭素二重結合のいずれの炭素のところに位置してもよい。特定の実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つがC-9、C-10、C-12、C-13又はその組合せのところに位置し得る。
一部の実施形態では、1つ以上の非炭素-炭素結合、例えば、エステル結合、エーテル結合、及びビニルエーテル結合などが、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の脂肪族鎖上で置換されていてもよく、他の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の脂肪族鎖のいずれかの炭素のところに位置している、電子求引基以外の1つ以上の官能基をさらに含んでよい。
【0008】
特定の実施形態では、1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む。他の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、1種以上の希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤又はその組合せをさらに含んでよく、さらに他の実施形態では、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を、例えば、固体、溶液、粉末、流体エマルション、流体懸濁液、半固体又は乾燥粉末として製剤化し得る。
本発明の種々の実施形態は、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を含む化合物(但し、少なくとも1つの二重結合と関係がある電子求引基はニトロ(-NO2)基でない)をさらに含む。一部の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、天然に存在する脂肪酸又はその誘導体を含んでよく、該実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、偶数個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含み得る。特定の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、4〜24個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含んでよく、他の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、12〜18個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含む。特定の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、例えば、ω-2、ω-3、ω-4、ω-5、ω-6、ω-7、ω-8、ω-9脂肪酸並びにその等価物及び誘導体であってよい。例えば、一部の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、リノレン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ステアリドン酸、ミリストレイン酸、リノール酸、γ-リノール酸、ジホモ-γ-リノール酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸並びにその等価物及び誘導体であってよく、他の実施形態では、不飽和脂肪酸が、リノール酸、オレイン酸、アラキドン酸又はその誘導体から選択される。さらに他の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、例えば、糖脂質、グリセロ脂質、リン脂質及びコレステロールエステルであってよい。
【0009】
一部の実施形態では、少なくとも1つの電子求引基が、C-9、C-10、C-12、C-13又はその組合せのところに位置してよく、他の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、エステル結合、エーテル結合、ビニルエーテル結合又はその組合せから選択される1つ以上の非炭素-炭素結合を含んでよい。
種々の実施形態では、1つ以上の電子求引基は、例えば、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)であってよい。ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである。一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置してよい。他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置してよく、さらに他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置する。なお別の実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基であってよい。
【0010】
特定の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にあってよく、一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にあってよい。他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、sp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のRにあってよく、さらに他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が、sp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のSにあってよい。
本発明の種々の実施形態では、炭素-炭素二重結合が、天然に存在する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の脂肪族鎖のいずれの炭素のところに存在してもよい。一部の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が2つ以上の共役炭素-炭素二重結合を有する脂肪酸であってよく、他の実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが2つ以上の共役炭素-炭素二重結合のいずれかの炭素のところにあり得る。
特定の実施形態では、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含んでよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、1種以上の希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤又はその組合せをさらに含んでよく、他の実施形態では、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を固体、溶液、粉末、流体エマルション、流体懸濁液、半固体又は乾燥粉末として製剤化し得る。
【0011】
本発明の一部の実施形態は、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸(但し、電子求引基はニトロ(-NO2)でない)又はその医薬的に許容できる塩を、治療が必要な対象に有効量投与することによって、状態を治療する方法に関する。該実施形態では、1つ以上の電子求引基は、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o、及び3oアンモニウム(-NR3+)から選択される。ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである。一部の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、12〜18個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含んでよく、他の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸がω-2、ω-3、ω-4、ω-5、ω-6、ω-7、ω-8、又はω-9脂肪酸並びにその等価物及び誘導体であってよい。例えば特定の実施形態では、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、リノレン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ステアリドン酸、ミリストレイン酸、リノール酸、γ-リノール酸、ジホモ-γ-リノール酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸並びにその等価物及び誘導体であってよい。
他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置してよい。他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置してよく、さらに他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置し得る。特定の実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基であってよい。一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にあってよく、他の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にあってよい。特定の実施形態では、有効量は、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の混合物を含んでよく、この混合物は、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα、β、及びγ炭素上に位置している電子求引基を含む。
【0012】
種々の実施形態において、状態は、限定するものではないが、動脈狭窄症、熱傷、高血圧症、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、ループス、ライム病、痛風、敗血症、高熱症、潰瘍、腸炎、骨粗しょう症、ウイルス若しくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸促迫症、肺炎症、肺線維症、喘息、後天性呼吸促迫症候群、タバコ誘発肺疾患、肉芽腫形成、肝臓線維症、移植片対宿主病、手術後炎症、血管形成術後の冠動脈及び末梢血管再狭窄、ステント留置又はバイパス移植、急性及び慢性白血病、Bリンパ球白血病、腫瘍性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎症、乾癬、免疫不全症、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、癌の転移又は増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、及び脱毛症であり得る。
【0013】
本発明の他の実施形態は、状態を治療する方法であって、1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を、治療が必要な対象に有効量投与する工程を含む方法に関する。一部の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が奇数個の炭素を有する脂肪族鎖を含み得る。例えば特定の実施形態では、天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が5〜23個の炭素を有する脂肪族鎖を含み得る。
一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基としては、限定するものではないが、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)、並びにニトロ(-NO2)が挙げられる。ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである。一定の実施形態では、1つ以上の電子求引基が不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置し得る。他の実施形態では、1つ以上の電子求引基が不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置してよく、さらに別の実施形態では、1つ以上の電子求引基が不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置してよい。さらなる実施形態では、1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基であってよい。
一部の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にあってよく、他の実施形態では、1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にあってよい。一定の実施形態では、有効量が、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の混合物を含んでよく、この混合物は、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα、β、及びγ炭素上に位置している電子求引基を含む。
【0014】
一部の実施形態では、状態は、限定するものではないが、動脈狭窄症、熱傷、高血圧症、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、ループス、ライム病、痛風、敗血症、高熱症、潰瘍、腸炎、骨粗しょう症、ウイルス若しくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸促迫症、肺炎症、肺線維症、喘息、後天性呼吸促迫症候群、タバコ誘発肺疾患、肉芽腫形成、肝臓線維症、移植片対宿主病、手術後炎症、血管形成術後の冠動脈及び末梢血管再狭窄、ステント留置又はバイパス移植、急性及び慢性白血病、Bリンパ球白血病、腫瘍性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎症、乾癬、免疫不全症、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、癌の転移又は増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、及び脱毛症であり得る。
【0015】
本発明の種々の実施形態は、いずれかの不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又は天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又は本明細書に記載のこれらのいずれかの医薬的に許容できる塩と、医薬的に許容できる担体若しくは賦形剤とを含み得る医薬組成物に関する。一部の実施形態では、該医薬組成物は、1種以上の希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤又はその組合せをさらに含んでよい。他の実施形態では、医薬組成物を、例えば、固体、溶液、粉末、流体エマルション、流体懸濁液、半固体又は乾燥粉末として製剤化し得る。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも1つの電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の調製方法であって、例えば、不飽和脂肪酸を第二水銀塩及びセレン化合物と接触させる工程、第1工程の結果として生じる中間体を電子求引基供与試薬と接触させる工程、及び第2工程の結果として生じる中間体を酸化剤と反応させる工程を含む方法を包含する。一部の実施形態では、セレン化合物が、例えば、PhSeBr、PhSeCl、PhSeO2CCF3、PhSeO2H及びPhSeCNであってよく、他の実施形態では、第二水銀塩が、例えば、HgCl2、Hg(NO3)2及びHg(OAc)2であってよい。種々の実施形態の電子求引基供与試薬が、例えば、NaNO2、AgNO2及びHSO2OHであってよい。
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも1つの電子求引基を有する不飽和脂肪酸の調製方法であって、一端に電子求引基を有する脂肪族炭化水素を少なくとも含む第1成分と、一端にアルデヒドを有する脂肪族炭化水素鎖を少なくとも含む第2成分と、塩基とを混合して反応混合物を形成する工程、第1中間体を生成する工程(ここで、第1中間体は、第2成分に共有結合した第1成分を含んでアルカンを形成し、電子求引基が第1官能基を形成し、かつアルデヒドから生じたヒドロキシルが第2官能基を形成する)、及び第1中間体の脱水を行なってアルケンを生成する工程を含み得る方法に関する。一部の実施形態では、第1成分の脂肪族炭化水素及び第2成分の脂肪族炭化水素が、炭素数2〜20の長さであってよい。他の実施形態では、第1成分又は第2成分の一方が、電子求引基又はアルデヒドの反対端で脂肪族炭化水素に共有結合した末端基をさらに含んでよく、この官能基は電子求引基又はアルデヒドでない。なお他の実施形態では、官能基が例えば、カルボン酸、炭水化物、ホスファート、グリセロール、及びコレステロールエステルであってよく、なお他の実施形態では、第1成分又は第2成分の一方が、亜リン酸イリド、ホスホナートカルボアニオン、α-シリルカルボアニオン、フェニルスルホン、金属化(metallated)ヘテロアリールアルキルスルホン、ハライド、又は擬似ハライドから選択される官能性試薬をさらに含む。特定実施形態の方法は、反応混合物、第1中間体又はその組合せに触媒を供給する工程を含み、一部の実施形態では、触媒がパラジウム触媒であってよい。種々の実施形態において、少なくとも1つの電子求引基は、限定するものではないが、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、シアノ(-CN)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)、並びにニトロ(-NO2)であってよい。ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである。
【0017】
(図面の説明)
適用なし
(詳細な説明)
本発明の組成物及び方法について記載する前に、記載する特定のプロセス、組成物、又は方法論は変化し得るので、本発明はこれらに限定されないことを理解すべきである。また、この説明で使用する専門用語は、特定のバージョン又は実施形態について記載するという目的のためだけであり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限する意図でないことを理解すべきである。特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施又は試験においては、本明細書で記載するものと同様又は等価のいずれの方法及び材料を使用できるが、以下に好ましい方法、装置、及び材料について記載する。本明細書で言及する全ての出版物は、参照によりその全体が援用される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のため該開示に先行する権利が与えられないと認めるものと解釈すべきでない。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つ(a、an)」、及び「その(the)」は、その文脈が明白にそうでないと指示していな限り、複数の言及を包含することに留意する必要もある。従って、例えば、「1つの細胞(a cell)」は、当業者に知られる1つ以上の細胞及びその等価物への言及である等である。
本明細書で使用する場合、用語「約」は、それが使用されている数の数値のプラス又はマイナス10%を意味する。従って、約50%は、45%〜55%の範囲を意味する。
治療薬と共に使用する場合の「投与する」とは、標的組織の中若しくは上に直接治療薬を投与するか、又は患者に治療薬を投与することによって、標的にされている組織に治療薬がプラスの影響を与えることを意味する。従って、本明細書では、ニトロ化脂質と共に使用する場合の「投与する」という用語は、例えば、静脈内注射によってニトロ化脂質を対象に全身的に供給することによって、該治療薬が標的組織に到達することを包含し得るが、これに限定されない。例えば、注射、経口投与、局所投与によって、又は他の既知手法とこれらの方法を併用することによって、組成物を「投与すること」を達成し得る。このような併用手法としては、加熱、放射線、超音波及び送達薬の使用が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「動物」には、限定するものではないが、ヒト及び非ヒト脊椎動物、例えば野生動物、家畜及び農用動物(farm animal)が含まれる。
「改善する」という用語を用いて、本発明が供給、適用又は投与されている組織の特徴及び/又は身体的性状のいずれかを本発明が変えることを伝える。疾患状態が「改善される」と、その疾患状態と関係がある症状又は身体的特徴が減弱、低減又は排除されるというように、疾患状態と共に用語「改善する」を使用してもよい。
「阻害する」という用語は、症状の発生を防止するために本発明の化合物を投与すること、症状を軽減するすること、又は疾患、状態若しくは障害を排除することを包含する。
【0019】
「医薬的に許容できる」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他成分と適合性でなければならず、かつそのレシピエントに有害でないことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「治療薬」は、患者の望ましくない状態又は疾患を治療し、それらと闘い、それらを軽減、予防又は改善するために利用する薬剤を意味する。部分的に、本発明の実施形態は、炎症、肥満関連疾患、代謝疾患、心血管疾患、脳血管疾患及び神経変性疾患、癌又は細胞の異常増殖の治療に関する。
組成物の「治療的に有効な量」又は「有効量」は、所望の効果を達成するため、すなわち、細胞の活性化、遊走、若しくは増殖を阻害し、遮断し、又は逆転させるために計算した所定量である。本方法で想定される活動には、必要に応じて、内科治療及び/又は予防措置の両者が含まれる。治療効果及び/又は予防効果を得るためにこの発明に従って投与される化合物の明確な用量は、当然に、症例を取り巻く特定の環境、例えば、投与される化合物、投与経路、及び治療する状態などによって決まるであろう。しかし、当然のことながら、投与される有効量は、治療すべき状態、投与する化合物の選択、及び選択した投与経路といった関連する環境の観点から医師によって決定されるので、上記用量範囲は、いかなる場合にも本発明の範囲を限定する意図ではない。この発明の化合物の治療的に有効な量は、典型的に、本化合物を生理学的に耐えられる賦形剤組成で投与した場合に、有効な全身濃度又は組織の局所濃度を達成するのに十分な量である。
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療した」、又は「治療する」という用語は、治療的措置と予防又は防止手段の両者を意味し、その目的は、望ましくない生理学的状態、障害若しくは疾患を防止又は減速(低下)させること、又は有益な若しくは所望の臨床結果を得ることである。この発明の目的のため、有益な若しくは所望の臨床結果として、限定するものではないが、症状の軽減;状態、障害又は疾患の程度の減少;状態、障害又は疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない);状態、障害又は疾患の発生の遅延又は進行の減速;状態、障害又は疾患の回復;及び状態、障害又は疾患の寛解(部分的であれ全体的であれ)、検出できても検出できなくても、又は亢進若しくは改善が挙げられる。治療には、過剰レベルの副作用のない臨床的に有意な反応を誘発することが含まれる。治療は、治療を受けなければ予想される生存時間に比べて延長する生存期間をも包含する。
一般的に言えば、用語「組織」は、特定機能の遂行において結びつけられている同様に特殊化された細胞のいずれの集合をも表す。
【0020】
本明細書で提示する本発明の実施形態は一般的に活性化脂肪酸、特に活性化不飽和脂肪酸に関する。本明細書で使用する場合、「活性化脂肪酸」は、脂肪酸の飽和若しくは不飽和脂肪族鎖の炭素に共有結合した少なくとも1つの電子求引基を有する脂肪酸を表す。該活性化脂肪酸は炭化水素鎖上のいずれの数の位置でいずれの数の電子求引によって置換されていてもよく、該電子求引基は炭素-炭素二重結合と関係があってもなくてもよい。同様に、本明細書に記載の活性化脂肪酸は、電子求引基と関係があってもなくてもよいいずれの数の二重結合を含んでもよい。しかしながら、本発明の種々の実施形態では、活性化脂肪酸の少なくとも1つの二重結合は電子求引基と関係があり得る。該実施形態では、電子求引基は二重結合のcis又はtrans配置のどちらに位置してもよく、或いはsp3キラル/不斉中心のR又はS絶対立体化学のどちらに位置してもよい。例えば、一実施形態では、活性化脂肪酸は1つの電子求引基を有し、別の実施形態では、活性化脂肪酸は、炭化水素鎖に沿って複数の位置にて複数の電子求引で置換されていてもよい。本発明の活性化脂肪酸は、カルボキシ末端炭素から末端メチル(ω)の間の脂肪族炭化水素鎖に沿ったいずれの炭素に位置する電子求引基を有してもよい。一部の実施形態では、電子求引基がカルボキシ末端炭素から約1炭素以内及び末端メチルから約1炭素以内に位置し得る。他の実施形態では、電子求引基はカルボキシ末端炭素及び/又はメチル末端炭素のどちらかの約3炭素以内に位置し、さらに別の実施形態では、電子求引基はカルボキシ末端炭素及び/又はメチル末端炭素のどちらかの約5炭素以内に位置し得る。
【0021】
一定の実施形態では、電子求引基が活性化脂肪酸の二重結合に直接結合した炭素上に位置して「電子求引性ビニル」基を形成し得る。該ビニル基の電子求引基は二重結合のどちらの側にあってもよい。本発明の実施形態によって包含される脂肪酸は、脂肪族炭化水素鎖上のいずれの炭素上にも1又は複数の電子求引性ビニル基を有してよく、不飽和脂肪酸が1つの電子求引基を持ち得るいくつかの様式がある。一実施形態では、第6炭素(C-13)と第7炭素(C-12)の間に1つの二重結合がある18炭素、ω-6脂肪酸である活性化オレイン酸(オカタデカカ-9-エン酸)(「18:1」と表す)がC-13又はC-12のどちらかに電子求引基を有し得る。別の典型的実施形態では、第6炭素(C-13)と第7炭素(C-12)の間及び第9炭素(C-10)と第10炭素(C-9)の間に2つの二重結合がある18炭素、ω-6脂肪酸である活性化リノール酸(オクタデアカ-9,12-ジエン酸)(「18:2」と表す)がC-9若しくはC-10又はC-12若しくはC-13に電子求引基を有し得る。同様に、3、4、5、又は6つ以上の二重結合がある他の多価不飽和脂肪酸は、位置及び電子求引基の全ての可能な順列を含め、いずれかの二重結合炭素上のどちらかの位置に電子求引性を有し得る。
他の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪酸が2つの電子求引基を有してよく、不飽和脂肪酸が2つの電子求引基を持ち得るいくつかの様式がある。例えば、一実施形態では、第6炭素(C-13)と第7炭素(C-12)の間に1つの二重結合がある18炭素、ω-6脂肪酸である活性化オレイン酸(オカタデカカ-9-エン酸)(「18:1」と表す)は、C-13とC-12の両方に電子求引基を有し得る。別の典型的実施形態では、第6炭素(C-13)と第7炭素(C-12)の間及び第9炭素(C-10)と第10炭素(C-9)の間に2つの二重結合がある18炭素、ω-6脂肪酸である活性化リノール酸(オクタデアカ-9,12-ジエン酸)(「18:2」と表す)が位置C-9、C-10、C-12又はC-13のいずれか2つのところに以下の可能な順列で電子求引基を有し得る:C-9とC-10、C-9とC-12、C-9とC-13、C-10とC-12、C-10とC-13、又はC-12とC-13。
【0022】
1つの電子求引基又は2つの電子求引基がある前述の化合物と同様に、3、4、5又は6以上の電子求引基をも有し得る。上記と同一理論に従い、1つの電子求引基又は2つの電子求引基を有する前述の化合物では、3、4、5、又は6以上の二重結合がある多価不飽和脂肪酸は、位置及び電子求引基の全ての可能な順列を含め、いずれの二重結合炭素上のいずれの位置にも複数(置換に利用できる位置に応じて3、4、5又は6以上)の電子求引性を有し得る。さらに、上述したようないずれの実施形態においても、いずれの数の非電子求引基が活性化脂肪酸の脂肪族鎖の炭素に共有結合していてもよい。例えば、一部の実施形態では、本発明の活性化脂肪酸は、活性化脂肪酸の脂肪族鎖の1個以上の炭素に共有結合した1個以上のメチル、C2-C6アルキル、アルケニル、若しくはアルキニル又はアミノを含み得る。
当該技術分野では「電子求引基」という用語が認識されており、隣接原子から価電子を引き付ける、置換基の傾向を表す。すなわち、該置換基は隣接原子に対して電気陰性である。電子求引能力のレベルの定量化は、ハメット・シグマ(σ)定数によって与えらる(例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry, McGraw Hill Book Company, New York, (1977版) pp. 251-259参照)。ハメット定数値は一般的に電子供与基では負であり、電子求引基では正である。例えば、パラ置換されたNH2のハメット定数(σ[P])は、約-0.7であり、ニトロ基のσ[P]は約0.8である。
【0023】
本発明の実施形態は、いずれの既知の電子求引基をも包含する。例えば、電子求引基として、限定するものではないが、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Brなど)、フルオロメチル(-CFn)、シアノ(-CN)、スルホニル(-SOn)、スルホン(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)、並びにニトロ(-NO2)が挙げられる。ここで、各Rは独立に、水素、メチル、又はC2〜C6アルキル、アルケニル、若しくはアルキニルであり得る。一部の実施形態では、電子求引基は、少なくとも約0.2のσを有する強い電子求引基であてよく、一定の実施形態では、電子求引基が双極子を形成し得る。例えば、特定の実施形態では、電子求引基がニトロ、アンモニウム又はスルホニルであり得る。他の実施形態では、本発明の活性化脂肪酸が、例えば、アルコール(-OH)、リバースエステル(-OOCR)、アルキル、アルケニル、アルキニル、1o及び2oアミン(-NR2)、ニトラート(-ONO2)、ニトリト(-ONO)等の非電子求引基又は電子供与基でさらに置換されていてもよい。
【0024】
実施形態の脂肪酸は技術上周知のいずれの不飽和及び多価不飽和脂肪酸であってもよい。用語「脂肪酸」は、脂肪族モノカルボン酸を表す。種々の実施形態が、同定されている天然に存在する脂肪酸と同一又は類似の脂肪族炭化水素鎖を有する活性化脂肪酸を含む。例えば、既知の天然に存在する脂肪酸の脂肪族炭化水素鎖は一般的に非分岐であり、約4〜約24の偶数個の炭素を含み、他に、脂肪族炭化水素鎖に12〜18個の炭素を有する脂肪酸が挙げられる。さらに他の実施形態では、脂肪酸が脂肪族炭化水素鎖に24より多くの炭素を有し得る。本発明の実施形態は、このような天然に存在する脂肪酸のみならず、奇数個の炭素を含み得る天然に存在しない脂肪酸及び/又は天然に存在しないリンカーをも包含する。従って、本発明の一部の実施形態は、奇数個の炭素、例えば、5〜23個の炭素を有する脂肪酸を含み、他の実施形態では、11〜17個の炭素を有する脂肪酸を含む。さらに他の実施形態では、実施形態の脂肪酸が23より多くの炭素を有してもよい。本発明の天然に存在する脂肪酸及び天然に存在しない脂肪酸は、炭素鎖に沿った1以上の位置で分岐していてもよく、種々の実施形態では、各分岐が1〜24個の炭素、2〜20個の炭素又は4〜18個の炭素の脂肪族炭化水素鎖を含んでよく、各分岐は偶数又は奇数個の炭素を有してよい。
【0025】
種々の実施形態の脂肪酸の脂肪族炭化水素鎖は不飽和又は多価不飽和であってよい。用語「不飽和」は、少なくとも1つの二重結合及び/又は置換基を含む脂肪族炭化水素鎖を有する脂肪酸を表す。対照的に、「飽和」炭化水素鎖は、いずれの二重結合又は置換基をも含まない。従って、炭化水素鎖の各炭素が「飽和」して最大数の水素を有する。「多価不飽和」とは、一般的に複数の二重結合がある炭化水素鎖を有する脂肪酸を表す。種々の実施形態の不飽和又は多価不飽和脂肪酸の二重結合は、脂肪族炭化水素鎖に沿ったいずれの位置にあってもよく、cis又はtrans配置のどちらかであり得る。用語「cis」は、二重結合の隣の炭素が同じ側にある二重結合を指し、用語「trans」は、二重結合の隣の炭素が反対側にある二重結合を指す。典型的に「cis」がZと同一配置であり、「trans」がEと同一配置であるが、化合物を命名するためのIUPAC規則がこの反対の名称を与えることもあり、ニトロアルケンに典型的な例である。例えば、ニトロアルケンは2つの炭素基「cis」を有し得るが、化合物の命名で優先する2つの基(アルケンの一方の炭素上のニトロ基とアルケンの他方の炭素上の炭素基)は反対側にあるのでEである。従って、「cis」二重結合のニトロアルケン類似体は実際にはEニトロアルケンである。同様に、「trans」二重結合のニトロアルケン類似体は実際にはZニトロアルケンである。理論に拘束されることを望むものではないが、炭素鎖に沿ったcis配置の二重結合(cis炭素鎖であるがEニトロアルケン)は炭素鎖内に曲がりを含み得る。炭素鎖に沿った「trans」配置の二重結合(trans炭素鎖であるがZニトロアルケン)は炭化水素鎖を曲がらせることはない。本発明の実施形態は、cis又はtrans配置のどちらかの二重結合を有する活性化脂肪酸を含むことができ、活性化脂肪酸及び活性化脂肪酸の幾何異性体を含むcisとtransの組合せを含み得る組成物を包含する。
【0026】
多くの不飽和及び多価不飽和脂肪酸が同定されており、天然に存在することが分かっている。このような天然に存在する不飽和又は多価不飽和脂肪酸は、一般的に、その脂肪族炭化水素鎖内に偶数個の炭素を含む。例えば、天然に存在する不飽和又は多価不飽和脂肪酸は、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22個などの炭素を有し得、オメガ(ω)-3、ω-5、ω-6、ω-7、ω-9脂肪酸が挙げられる。いずれの該脂肪酸も本発明の実施形態で役に立ち得る。記号「ω」を用いて、脂肪族炭化水素鎖の末端メチル炭素を表す。ω-X脂肪酸の二重結合の配置は、ω炭素から炭素数Xの炭素-炭素二重結合である。例えば、ω-6脂肪酸は、ω炭素から逆方向に数えて6番目と7番目の炭素間に二重結合を有し、ω-3脂肪酸は、ω炭素から逆方向に数えて3番目と4番目の炭素間に二重結合を有する。本発明の種々の実施形態は、ニトロ化ω-3脂肪酸、例えば、限定するものではないが、リノレン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサン酸及びステアリドン酸など;ニトロ化ω-5脂肪酸、限定するものではないが、ミリストレイン酸など;ニトロ化ω-6脂肪酸、限定するものではないが、リノール酸、γ-リノール酸、ジホモ-γ-リノール酸及びアラキドン酸など;ニトロ化ω-7脂肪酸、限定するものではないが、パルミトレイン酸など;並びにニトロ化ω-9脂肪酸、限定するものではないが、オレイン酸及びエルカ酸などが挙げられる。当然に、二重結合の配置がカルボン酸の炭素から数えることによって決定されるIUPAC命名法を用いて本発明の脂肪酸を表してもよく、IUPAC命名法を用いると「C-X」は脂肪族炭化水素の炭素を表し、Xはカルボン酸から数えた炭素数である。本発明の実施形態は天然に存在する脂肪酸及びその誘導体の合成等価物をも包含する。
【0027】
本発明の他の実施形態は、例えば、5、7、9、11、13、15、17、19、20、21等の奇数 個の炭素を有し得る天然に存在しない不飽和又は多価不飽和脂肪酸を包含する。天然に存在する脂肪酸のように、天然に存在しない脂肪酸と関係がある1つ以上の二重結合は、脂肪族炭化水素鎖に沿ったいずれの位置にあってもよく、二重結合は、cis又はtrans配置のどちらかであってよい。さらに他の実施形態では、天然に存在しない脂肪酸は、脂肪族炭化水素鎖を中断する1つ以上のリンカー基を含んでよい。例えば、一部の実施形態では、活性化脂肪酸は1つ以上の非炭素-炭素結合、例えば、エステル、エーテル、ビニルエーテル、アミノ、イミン等を脂肪族炭化水素鎖内のいずれの位置にも有し得る。
本発明の種々の実施形態は、脂肪酸の脂肪族鎖のいずれの2個の炭素間にも炭素-炭素二重結合を有し得る不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸にはいずれの数の炭素-炭素二重結合をも存在し得る。例えば一部の実施形態では、多価不飽和脂肪酸は2、3、4、5、又は6以上の炭素-炭素二重結合を有し得る。該実施形態では、1つより多くの各炭素-炭素二重結合は、個々にcis又はtrans配置のどちらかであってよい。一部の実施形態では、多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合の少なくとも1つが関連電子求引基を有し、他の実施形態では、該多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合の1つより多くが関連電子求引基を有し得る。さらに、該実施形態において、電子求引基は、炭素-炭素二重結合の炭素又は炭素-炭素二重結合のどちらかの炭素に直接隣接する炭素のどちらかと関係があってよい。例えば、一部の実施形態では、電子求引基は炭素-炭素二重結合のアルファ(α)炭素に結合し、他の実施形態では、電子求引基が炭素-炭素二重結合のベータ(β)炭素と関係があってよい。さらに他の実施形態では、電子求引基が、炭素-炭素二重結合に直接隣接し、かつ結合しているガンマ(γ)炭素と関係があってよい。多価不飽和脂肪酸が脂肪族鎖に沿って2つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、かつ電子求引基がその2つ以上の炭素-炭素二重結合のいずれか又は2つ以上の炭素-炭素二重結合のそれぞれと関係がある実施形態では、各電子求引基は、それぞれ個々の炭素-炭素二重結と関係があるいずれの炭素に結合していてもよい。例えば、一部の実施形態では、電子求引基は、二重結合のそれぞれと関係があってよく、各二重結合のアルファ(α)炭素、ベータ(β)炭素又はガンマ(γ)炭素のどれかに該電子求引基が結合し得る。他の実施形態では、いくつかの二重結合は、結合した電子求引基を持つことができ、いくつの二重結合は、結合した電子求引基を持たず、結合した電子求引基を有する当該二重結合は、各二重結合のアルファ(α)炭素、ベータ(β)炭素又はガンマ(γ)炭素のどれかに結合した電子求引基を有し得る。
【0028】
特定の実施形態では、少なくとも1つの電子求引基を有する不飽和脂肪酸は共役脂肪酸であってよい。該実施形態では、脂肪族鎖内の2つの炭素-炭素二重結合が、その間にメチレン基が存在しないように相互に隣接している。該共役化合物は一般的に1,3-ジエン、又は共役脂肪酸と呼ばれる。該1,3-ジエンは、6つの位置、すなわち1,3-ジエンの1、2、3、及び/又は4位、並びにジエンに隣接する2個の炭素(1,3-ジエンの炭素を特定する1、2、3、4法と関連させると0及び5位)のいずれにも1つ以上の電子求引基を含んでよい。例えば、1つの関連電子求引基は、上記6つの位置、すなわちジエンの1、2、3、若しくは4位又は1,3-ジエンに隣接する炭素のどちらか(上述したように、0若しくは5位)のいずれにも結合し得る。さらなる実施形態では、2つの関連電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、3つの関連電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、4つの関連電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、5つの関連電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、6つの関連電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合できるであろう。要約すれば、1,3-ジエンにおいて上述した6つの位置のいずれかに結合した電子求引基のいずれの配置も本発明に包含される。
【0029】
一定の実施形態では、本発明の活性化脂肪酸は、調製後に、二重結合のcis/trans配置、二重結合の位置のどちらか、又はその両方が変わるように異性化を受け得る。例えば、一部の実施形態では、炭素-炭素二重結合のγ炭素に結合した電子求引基を有する炭素-炭素二重結合がある活性化脂肪酸を調製することができる。調製後、炭素-炭素二重結合が異性化を受けて、異性化後には電子求引基が炭素-炭素二重結合と共役結合状態となることがある。このような異性化は調製後のいずれの時点でも自発的に起こり得、単一種の活性化脂肪酸を含むように最初は調製されたかもしれないが、引き続き、最初に生成された第1調製活性化脂肪酸の異性体の組合せを含む組成物をもたらし得る。他の実施形態では、炭素-炭素二重結合のγ炭素に結合した電子求引基を有する活性化脂肪酸を調製することができ、この炭素-炭素二重結合は、投与後に異性化を受けて、活性化脂肪酸が炭素-炭素二重と共役した電子求引基を有するようになり得る。
【0030】
さらに他の実施形態では、活性化脂肪酸のカルボキシ末端を修飾することができる。例えば、一部の実施形態では、脂肪酸は、該脂肪酸のカルボキシ末端と関係があるグリセロールを含んでグリセロ脂質を生じさせることがあり、該グリセロ脂質はモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドであってよい。このときジグリセリド又はトリグリセリドの脂肪酸の少なくとも1つが活性化脂肪酸であり、残りのいずれの脂肪酸も飽和又は不飽和脂肪酸であってよい。同様に、他の実施形態では、炭水化物が活性化脂肪酸のカルボキシ末端と関係があって糖脂質を形成することがある。該実施形態では、技術上周知のいずれの炭水化物も糖脂質の炭水化物成分であり得、限定するものではないが、ガラクトース及びグルコースが挙げられる。さらに他の実施形態では、炭水化物が、活性化脂肪酸のカルボキシ末端と関係があるグリセリドと関係があって、グリセロ-糖脂質を形成することがあり、該グリセロ-糖脂質のグリセロ部分と関係がある1又は2つの活性化脂肪酸を有し得る。1つだけの活性化脂肪酸がグリセロ-糖脂質と関係がある実施形態では、グリセロールの残りの位置は飽和若しくは不飽和脂肪酸又は水素、アルキル、又は例えば、アルコール、アミン、ホスファート、ホスホン酸、チオール、スルホン酸などの官能基を含み得る。一定の実施形態では、本発明の活性化脂肪酸のカルボキシ末端がホスファートと関係があって、リン脂質を形成することがある。該実施形態では、ホスファートがカルボキシ末端を介して直接脂肪酸と関係があってよく、或いはホスファートが、1又は2つの活性化脂肪酸がグリセロール成分と結合しているジグリセリドと関係していてよく、1つの活性化脂肪酸だけがグリセロールに結合している実施形態では、グリセロール上の残りの位置は、飽和若しくは不飽和脂肪酸又は水素、アルキル、又は例えば、アルコール、アミン、ホスファート、ホスホン酸、チオール、スルホン酸などの官能基を含み得る。さらなる実施形態では、活性化脂肪酸のカルボキシ末端がコレステロール又は他のステロール成分と関係があってよい。さらに他の実施形態では、カルボキシ末端を第2の活性剤の共有結合で修飾することができる。特定の実施形態では、グリセロールを含むカルボキシ末端の修飾はニトロ基を含み得ない。理論に拘束されることを望むものではないが、活性化脂肪酸のカルボキシ末端の修飾は、投与後の活性化脂肪酸の分配を増強することができ、かつ投与後のミトコンドリアにおけるβ-酸化を阻害することによって活性化脂肪酸の回復力を改善することもできる。
例えば、本発明の実施形態は下記一般式I及びII:
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、R1及びR2は、-H及びいずれかの電子求引基から独立に選択され、該電子求引基としては限定するものではないが、-COH、-COR、-CO、-COOH、-COOR、-Cl、-F、-Br、-I、-CF3、-CN、-SO3-、-SO2R、-SO3H、-NH3+、-NH2R+、-NHR2+、-NR3+及び-NO2-が挙げられ、ここで、R1とR2の少なくとも1つは電子求引基であり、m及びnは独立に1〜20である)の化合物を包含する。一部の実施形態は、下記一般式III:
【0033】
【化2】

III
【0034】
(式中、R1、R2、m及びnは上述した通りであり、R3及びR4は、-H、-COH、-COR、-CO、-COOH、-COOR、-Cl、-F、-Br、-I、-CF3、-CN、-SO3-、-SO2R、-SO3H、-NH3+、-NH2R+、-NHR2+、-NR3+及び-NO2-から独立に選択され、k及びpは、独立に0〜5であり、x及びyは、独立に0〜3であり、ここで、各二重結合はcis又はtrans配置のどちらかである)の化合物を包含する。さらに他の実施形態では、m、n、k又はpと関係があるいずれの炭素も置換されていてもよい。
上記式に含まれる化合物として、限定するものではないが、(E)-9-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸、(E)-10-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸、(E)-8-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸、(E)-11-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸、(E)-10-アセチルテトラデカ-9-エン酸、(E)-9-アセチルテトラデカ-9-エン酸、(E)-11-アセチルテトラデカ-9-エン酸、(E)-8-アセチルテトラデカ-9-エン酸、(E)-13-クロロ-ドコセン-13-エン酸、(E)-14-クロロ-ドコセン-13-エン酸、(E)-12-クロロ-ドコセン-13-エン酸、(E)-15-クロロ-ドコセン-13-エン酸、(E)-10-メチルスルホニルヘキサデカ-9-エン酸、(E)-9-メチルスルホニルヘキサデカ-9-エン酸、(E)-11-メチルスルホニルヘキサデカ-9-エン酸、及び(E)-8-メチルスルホニルヘキサデカ-9-エン酸が挙げられる。他の実施形態は、該化合物のZ-異性体を含む。さらなる実施形態は、例えば、(E)-9-ニトロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-10-ニトロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-8-ニトロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-11-ニトロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-10-アセチルヘプタデカ-9-エン酸、(E)-9-アセチルヘプタデカ-9-エン酸、(E)-11-アセチルオクタヘプタ-9-エン酸、(E)-8-アセチルヘプタデカ-9-エン酸、(E)-10-クロロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-9-クロロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-11-クロロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-8-クロロ-ペンタデカ-9-エン酸、(E)-10-メチルスルホニルノナデカ-9-エン酸、(E)-9-メチルスルホニルノナデカ-9-エン酸、(E)-11-メチルスルホニルノナデカ-9-エン酸、(E)-8-メチルスルホニルノナデカ-9-エン酸、及びその(Z)-異性体を包含する。さらに他の実施形態は、例えば、(E)-9-ニトロ-エイコサ-11,14-イエン酸、(E)-10-ニトロ-エイコサ-8,13-イエン酸、(E)-8-ニトロ-エイコサ-11,14-イエン酸、(E)-11-ニトロ-エイコサ-8,13-イエン酸、(E)-10-アセチルノナデカ-10,13-イエン酸、(E)-9-アセチルノナデカ-9,12-エン酸、(E)-11-アセチルノナデカ-10,13-イエン酸、(E)-8-アセチルノナデカ-9,12-エン酸、(E)-10-クロロ-ヘプタデカ-9,11-イエン酸、(E)-9-クロロ-ヘプタデカ-10,12-イエン酸、(E)-11-クロロ-ヘプタデカ-9,11-イエン酸、(E)-8-クロロ-ヘプタデカ-10,11-イエン酸、(E)-10-メチルスルホニルペンタデカ-9,11-イエン酸、(E)-9-メチルスルホニルペンタデカ-8,9-イエン酸、(E)-11-メチルスルホニルペンタデカ-9,10-イエン酸、及び(E)-8-メチルスルホニルペンタデカ-8,9-イエン酸、並びにその(Z)-異性体を包含する。上記リストで示したように、脂肪族鎖に沿ったいずれかの位置にいずれかの数の炭素-炭素二重結合があるいずれの長さの脂肪酸をも調製することができ、それらは本発明に包含される。
【0035】
上記活性化脂肪酸を医薬的に許容できる製剤として調製することができる。本明細書では、用語「医薬的に許容できる」を用いて、該化合物が医薬製品で使うのに適していることを意味する。例えば、医薬的に許容できるカチオンには金属カチオン及び有機イオンが含まれる。さらに好ましい金属イオンとして、限定するものではないが、適切なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び他の生理学的に許容できる金属イオンが挙げられる。典型的イオンとしては、その普通の原子価のアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛が挙げられる。好ましい有機イオンには、プロトン化三級アミン及び四級アンモニウムカチオンが含まれ、一部として、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインが挙げられる。典型的な医薬的に許容できる酸としては、限定ではなく、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、グルクロン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、フマル酸、プロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸などが挙げられる。
【0036】
本発明の活性化脂肪酸の異性形及び互変異性形並びにこれらの化合物の医薬的に許容できる塩も本発明に包含される。典型的な医薬的に許容できる塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルゲン酸、β-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸から調製される。
本発明の活性化脂肪酸に関連して使われる好適な医薬的に許容できる塩基付加塩としては金属イオン塩及び有機イオン塩が挙げられる。典型的な金属イオン塩としては、限定するものではないが、適切なアルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩及び他の生理学的に許容できる金属イオンが挙げられる。アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛イオンから該塩を作製することができる。三級アミン及び四級アンモニウム塩、例えば一部として、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカイン等から好ましい有機塩を作製することができる。当業者は、本発明の対応する化合物から通常の手段で上記全ての塩を調製することができる。
【0037】
上記本発明の種々の実施形態で述べた活性化脂肪酸を個体に投与して、いくつかの急性と慢性の両炎症状態及び代謝状態を治療、改善及び/又は予防することができる。特定の実施形態では、活性化脂肪酸を用いて急性状態、例えば一般的炎症、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、動脈狭窄症、臓器移植拒絶反応及び熱傷など、並びに慢性状態、例えば、慢性肺傷害及び呼吸促迫症、糖尿病、高血圧症、肥満症、神経変性障害及び種々の皮膚障害などを治療することができる。しかし、他の実施形態では、活性化脂肪酸を用いて、例えば、関節炎、ループス、ライム病、痛風、敗血症、高熱症、潰瘍、腸炎、骨粗しょう症、ウイルス若しくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、肺炎症、肺線維症、喘息、後天性呼吸促迫症候群、タバコ誘発肺疾患、肉芽腫形成、肝臓線維症、移植片対宿主病、手術後炎症、血管形成術後の冠動脈及び末梢血管再狭窄、ステント留置又はバイパス移植、冠動脈バイパス移植(GABG)、急性及び慢性白血病、Bリンパ球白血病、腫瘍性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎症、乾癬、免疫不全症、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、癌の転移又は増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、及び脱毛症などのような慢性又は急性炎症を含む症状を有するいずれの状態をも治療し得る。
【0038】
投与すると、活性化脂肪酸は、炎症を媒介するいくつかの細胞受容体及び/又はタンパク質と相互作用して、それらの活性を阻害又は刺激し、ひいては炎症を阻害又は軽減することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、活性化脂肪酸は、例えば、神経伝達、遺伝子発現、血管機能及び炎症反応などの重要なシグナル伝達活性を調節することができる。これらの活性を促進し得る活性化脂肪酸の化学的性質としては、限定するものではないが、電子求引性ビニル基に隣接するβ炭素の強力な可逆的求電子性、Nef様酸塩基反応を受けてNOを放出する能力、疎水性及び親水性の両区画に分割する能力、並びにGタンパク質共役型受容体及び核内受容体に対する強力な親和性が挙げられる。
例えば、一実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、複数のGタンパク質共役型受容体及び核内受容体、例えば、限定するものではないが、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、例えばPPARα、PPARγ、及びPPARδ等を介して細胞シグナル伝達を媒介することができる。PPARは、単球/マクロファージ、好中球、内皮細胞、脂肪細胞、上皮細胞、肝細胞、メサンギウム細胞、血管平滑筋細胞、神経細胞内といった生物体の至る所で発現され、「活性化」されるといくつかの標的遺伝子の転写を誘発する核内受容体である。PPARの活性化は、例えば、インスリン感受性を高め、慢性炎症プロセスを抑制し、循環遊離脂肪酸レベルを減少させ、内皮細胞機能不全を矯正し、脂肪線条形成を減少させ、プラーク形成を遅らせ、血管壁肥厚を制限し、並びにプラークの安定化及び退縮を増強するといった組織の恒常性を制御する際に種々の役割を果たすことが分かっている。本明細書で例示する活性化脂肪酸は、PPAR活性化と関係があるこれらの各機能を果たすことができる。
【0039】
さらに、活性化脂肪酸は、正常な細胞プロセスを有意に変えずにこれらの機能を果たすことができる。例えば、一実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、活性化脂肪酸を過剰投与した場合でさえ、個体の血圧を正常レベル未満に下げることなく、正常レベルに血圧を下げることによって、高血圧を治療することができる。従って、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の活性化脂肪酸は、過剰投与に伴う悪影響又は伝統的薬物による過剰治療のない個体の治療を提供することができる。
PPARの活性化は、直接又は一部では、PPARのリガンド結合ドメイン内にある高度に保存されたシステイン(ヒトPPARγのCys 285)内の重要なチオールのロッキング(locking)反応によって誘発されることが分かっている。比較的高い濃度の既知のチオール反応性化合物、例えば15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2(15-d PGJ2)を投与するとPPARの部分的活性化が起こることが分かっている。理論に拘束されることを望むものではないが、活性化脂肪酸は、PPARのリガンド結合ドメイン内の反応性チオールのところでPPARに結合し得る。さらに、活性化脂肪酸はPPARの立体構造変化を誘導し得る。さらに具体的には、活性化脂肪酸が結合するとリガンド結合ドメイン(α-ヘリックス12)のC末端が、コリプレッサー放出とコアクチベーター補充の有益なパターンを促進し得る活性立体構造を取ることとなり得る。このように、活性化脂肪酸は、既知のPPAR活性化化合物を超えて、PPAR活性化及びPPAR制御遺伝子の転写を増強することができる。
【0040】
PPARの活性化に加えて、活性化脂肪酸の投与は、細胞シグナル伝達に重要な他のいくつかの因子を活性化するために役に立ち得る。例えば、一実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、炎症中に適応及び防御反応を媒介することが分かっているヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の遺伝子発現及び組織活性を誘発することができる。また、HOによって媒介された適応及び防御炎症反応の活性化は、例えば、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、急性腎不全、血管再狭窄、移植拒絶反応、及び敗血症などの炎症性疾患の治療に役立ち得る。別の実施形態では、活性化脂肪酸は、例えば、グルタチオン(GSH)及びグリセルアルデヒド-3-ホスファートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)等のタンパク質上で触媒システインに共有結合することによって、該タンパク質の可逆的な翻訳後修飾を誘導することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、活性化脂肪酸によるこれらのタンパク質の共有結合性修飾は、これらのタンパク質の疎水性を高めて、膜への転位置を誘発し得、酵素機能、細胞シグナル伝達及びタンパク質輸送の酸化還元制御のための役割を示唆している。さらに別の実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、単球及びマクロファージ内における血管細胞接着分子のNF-κB依存性遺伝子発現及び内皮腫瘍壊死因子-α誘発発現を抑圧することができ、炎症中の回転及び接着を阻害することとなる。従って、活性化脂肪酸は、外科術、傷害又は感染に起因する一般的炎症を治療するために役立ち得る。さらなる実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、いくつかの血管疾患の治療で役立ち得る核内因子赤血球2関連因子2(Nrf-2)の細胞レベルを高めることによって、組織炎症傷害を制限し、かつ血管平滑筋細胞の増殖を阻害することができる。一部の実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、TRPA1及びTRPV1等の一過性受容器電位(TRP)チャネルの活性を修正することができ、疼痛及び炎症のシグナル伝達を修正することができる。他の実施形態では、活性化脂肪酸を用いて、熱ショック因子(HSF)タンパク質を誘発し、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)を阻害することができ、さらに他の実施形態では、活性化脂肪酸を投与して、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)を活性化し得る。
【0041】
なおさらなる実施形態では、活性化脂肪酸は虚血プレコンディショニングに役に立ち得る。例えば、虚血状態下の細胞内でミトコンドリアによって産生されたニトロ化脂肪酸は、虚血状態下で細胞生存を高める、細胞内でいくつかの生理学的変化を生じさせる。活性化脂肪酸を個体に投与することによって、同様の虚血プレコンディショニングを達成することができ、例えば、虚血状態下の心臓組織又は移植時に生存能及び機能を最適化するため保存されている器官の生存を改善できるという効果がある。
本発明の活性化脂肪酸は、それらが活性であるいずれの径路によってもいずれの従来のやり方でも投与することができる。全身投与であっても局所投与であってもよい。例えば、投与は、限定するものではないが、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、頬側、又は眼径路であってよく、又は膣内、吸入によって、デポー注射、又はインプラントによってであってよい。一定の実施形態では、投与が非経口又は静脈内であってよく、全て、持続的な全身取込み、組織半減期及び細胞内送達に有利に働く安定化添加剤の存在下又は非存在下でよい。従って、本発明の化合物の投与様式は(単独又は他の治療薬との併用の場合)、注射可能であり得る(短時間作用性、デポー、インプラント及び皮下又は筋肉内注射されるペレット形)。一部の実施形態では、例えば、外科的切開部位又は関節鏡検査、血管形成術、ステント留置、バイパス手術などが原因の炎症部位のような傷害又は炎症の部位に、活性化脂肪酸を含む注射製剤を沈着させてよい。
【0042】
一定の他の実施形態では、炎症領域に直接適用される軟膏又はローションとして本発明の化合物を局所適用してよい。例えば、一部の実施形態では、本発明の活性化脂肪酸を含むローション又は軟膏を調製して、熱傷、放射線による熱傷、皮膚障害部位、浮腫、又は関節炎にかかった関節などに適用することができる。
本発明の種々の実施形態は、活性化脂肪酸を投与する方法にも関する。特定の投与様式は徴候によって変わり、左右され得る。臨床医は、最適な臨床反応を得るため、臨床医が知っている方法に従って特定の投与経路の選択及び投与計画を調整又は用量設定することができる。投与すべき化合物の量は、治療的に有効な当該量である。投与すべき薬用量は治療する対象の特性、例えば、特定の治療動物、年齢、体重、健康、もしあれば併用療法のタイプ、及び治療頻度に左右されるであろうし、当業者(例えば、臨床医)は容易に決定することができる。当業者は例えば、Goodman & Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition (1996), Appendix II, pp. 1707-1711から又はGoodman & Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition (2001), Appendix II, pp. 475-493から(両方ともその全体が参照によって本明細書に援用される)のガイダンスによって用量を決定できることが分かるだろう。従来のプレニル化酵素インヒビターについては、例えば、J. E. Karp, et al., Blood, 97(11):3361-3369 (2001) and A. A. Adjei, et al., Cancer Research, 60:1871-1877 (2000)(参照によってその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、当該技術分野において承認されている投与量からガイドラインが得られる。
【0043】
種々の実施形態において、各投与サイクル中に送達される活性化脂肪酸の有効量は、約10mg/m2/日〜約1000mg/m2/日の範囲であり得る。一部の実施形態では、有効量が約20mg/m2/日〜約700mg/m2/日、他の実施形態では、有効量が約30mg/m2/日〜約600mg/m2/日であり得る。特定の実施形態では、有効量が約50mg/m2/日、約400mg/m2/日、約500mg/m2/日、又は約600mg/m2/日であり得る。さらに他の実施形態では、活性化脂肪酸の有効量は治療の進行に応じて変わり得る。例えば、投与サイクルを通じて治療が進行するにつれて、投与計画は増減してよく、或いは投与全体を通じて1日用量を増減し得る。さらなる実施形態では、高用量の活性化脂肪酸でさえ一般的に患者に耐えられ、かつ望ましくない生理学的作用をもたらし得ないので、1000mg/m2/日より多く投与してもよい。
一部の実施形態では、上記投与計画を二次形態の治療又は二次薬剤と併用してもよい。
技術上周知のいずれの方法によっても種々の実施形態の活性化脂肪酸を調製し得る。例えば、一実施形態では、下記工程:
i)不飽和脂肪酸を第二水銀塩及びセレン化合物と接触させる工程;
ii)工程i)によって生じる中間体を電子求引基を導入できる試薬又は反応物と接触させる工程;及び
iii)工程ii)によって生じる中間体を酸化剤と反応させる工程
によって活性化脂肪酸を調製することができる。
理論に拘束されることを望むものではないが、下記反応の工程Iに示すように、例えば、PhSeBr、PhSeCl、PhSeO2CCF3、PhSeO2H、PhSeCN等のようなセレン化合物は、例えば、HgCl2、Hg(NO3)2、Hg(OAc)2等のような第二水銀塩によって促進され得る反応で、不飽和脂肪酸の1つ以上の炭素-炭素二重結合と反応して、脂肪酸上に3員環中間体を形成することができる。
【0044】
【化3】

【0045】
電子求引基の源は、例えば、NaNO2、AgNO2、HSO2OH等のような活性化脂肪酸に組み込める電子求引基を発生させ得る技術上周知のいずれの化合物であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、電子求引基(上記反応スキーム中のX)は、上記反応スキームの工程IIに示すように、セレン化合物に付随していた臭素に取って代わることによって、炭化水素鎖に結合するようになり得る。電子求引基は、工程Iに示す3員環エピセレノニウム(episelenonium)イオンと、臭素が攻撃するとして示されている位置で直接反応し得ることも分かる。最後に、上記反応スキームの工程IIIに示すように、酸化剤が反応性セレン-オキソ官能基を形成し、これが分子内転位とZSeOHの脱離を経て炭化水素鎖上に電子求引性ビニル(ニトロビニルとして示される)を形成することとなる。上記反応スキーム中のZは、いずれの数の基であってもよい。例えば、一定の実施形態では、Zがフェニル基であり得る。
【0046】
他の実施形態では、ヘンリー(Henry)反応のような修正アルドール縮合を用いて活性化脂肪酸を調製することができる。ヘンリー反応及びヘンリー法に関連する方法の概説は、例えば、Frederick A. Luzzio, F. A.「ヘンリー反応:最新例」、Tetrahedron 2001, 57, 915-945(その全体が参照によって本明細書に援用される)で見つけられる。ヘンリー反応の既知バリエーションも活性化脂肪酸の調製に有用であり得、全ての該方法が本明細書で例示される。例えば、一部の実施形態において、ヘンリー反応の変形として、限定するものではないが、ヘンリー反応のウィティッヒ(Wittig)様バリエーション、ヘンリー反応のホーナー・ワズワース・エモンズ(Horner-Wadsworth-Emmons)バリエーション、及びヘンリー反応のピーターソン(Peterson)オレフィン化バリエーションが挙げられる。該方法では、二重結合は、反応物に一時的に含まれるが、生成物には含まれない基の補助を利用して形成される。例えば、ウィティッヒ反応はリンイリドを利用してカルボニルとの縮合反応及び脱水反応を助けてアルケンを形成する。縮合及び脱水工程でホーナー・ワズワース・エモンズ反応はホスホン酸エステルを利用し、ピーターソンオレフィン化はケイ素試薬を利用する。ウィティッヒ反応、ホーナー・ウィティッヒ反応、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応などの官能化試薬とカルボニルの反応による主なアルケン形成人名反応の概説は、例えば、Peterson、Johnson、及びJulia反応、Blakemore, P. R.「修正ジュリアオレフィン化:金属化(metallated)ヘテロアリールアルキルスルホンとカルボニル化合物の縮合によるアルケン合成」、J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2002 2563-2585(その全体が参照によって本明細書に援用される)で見つけらる。
【0047】
ヘンリー「ニトロ-アルドール」反応は、ニトロアルカンと、アルデヒドカルボニル又はケトンカルボニルのどちらかを含む化合物との縮合であり、新しく形成されたβ-ヒドロキシニトロアルキル基を有するニトロ-アルドールを形成する。ニトロ-アルドール生成物からの脱水(水の消失)がニトロアルケンの形成につながる。ニトロアルカン-カルボニル縮合を行なってニトロ-アルドールを生じさせるための多くの方法があり、ニトロアルケンからの脱水反応のための多くの方法がある。該方法の例は例えば、Woodcock, S. R.; Marwitz, A. J. V. Bruno, P.; Branchaud, B. P. “Synthesis of Nitrolipids. All Four Possible Diastereomers of Nitrooleic Acids: (E)- and (Z)-, 9- and 10-Nitro-octadec-9-enoic Acids” Organic Letters, 2006, 8, 3931-3934(1つの位置異性体、通常は2つの可能なアルケンcis/trans又はZ/Eジアステレオマーの一方を高純度、通常は高い化学的収率で与える)で見つけられる。この文献は参照によってその全体が本明細書に援用される。
エナンチオ選択的ヘンリー反応も可能であり、この反応には1種以上の触媒の使用が必要なことがあり、本発明の実施形態は、ニトロアルケンの立体特異的異性体を調製するために該方法の使用を含む。例えばBoruwa, J.; Gogoi, N.; Saikia,P.P.; and Barua, N. C. “Catalytic Asymmetric Henry Reaction” Tetrahedron: Asymmetry 2006, 17, 3315-3326(その全体が参照によって本明細書に援用される)は、ニトロアルケンの立体特異的異性体を調製するための方法を開示している。
【0048】
さらに別の実施形態では、カルボニル化合物上への縮合による金属媒介クロスカップリング反応(2つの分子を結合して1つの新しい分子を作ること)によってアルケン(オレフィン)を調製し得る。このような方法は電子求引性置換基を用いたニトロアルケンの形成又は他のアルケンの形成に適用されていないが、該方法は電子求引性置換基を用いたアルケンの合成に適応し得るだろう。例えば、Heck、Sizuki及びStilleの人名クロスカップリング反応を他の反応とともに利用して活性化脂肪酸を調製し得る。このような方法は技術上周知である。該反応の概説は、例えば、Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions de Meijere, Armin / Diederich, Francois (eds.) Wiley-VCH, Weinheim 2004. XXII, ISBN-10:3-527-30518-1及びISBN-13:978-3-527-30518-6(参照によってその全体が本明細書に援用される)で見つけられる。
【0049】
活性化脂肪酸を調製するための種々の実施形態の例は少なくとも下記工程:
i)一端に電子求引基を有する脂肪族炭化水素を少なくとも含む第1成分を、一端にアルデヒドを有する脂肪族炭化水素鎖を含む第2成分と、塩基の存在下で化合させて第1中間体を形成する工程;及び
ii)前記第1中間体からアルケンを生成する工程
を含み得る。
典型的反応を下記スキームI及びIIに示す。
【0050】
【化4】

【0051】
反応スキームI及びIIにおいて、可変Xは電子求引基を表し、本明細書で上述したか又は技術上周知のいずれの電子求引基でもよい。変数n及びmは脂肪族炭化水素鎖内の炭素数を表し、n及びmはいずれの数でもよい。例えば、出発化合物のいずれの脂肪族炭化水素鎖も炭素数2〜20の長さであってよい。さらに、二重結合の位置及び二重結合と関連する電子求引基の配置を具体的に決定することができ、かつ特定の活性化脂肪酸を高収率で生じさせ得る。例えば、スキームIの反応で、mが10の第1基質とnが2の第2基質を化合させることによってオレイン酸を生成し得る。
上記方法を用いていずれの活性化脂肪酸をも生成することができ、かつ天然に存在する類似体も天然に存在しない類似体も合成し得る。例えば、下記IIIで一般的合成方法を示すように、典型的ニトロ化脂肪酸の合成を提示することができる。
【0052】
【化5】

【0053】
該実施形態では、R1及びR2は、いずれの数の炭素を含んでもよい。例えば一実施形態では、R2がCH2CH3であり、R1が(CH2)15CO2R3であり、R3が脂肪酸に含まれるカルボン酸官能基用の保護基である成分から、偶数個の炭素(この場合、全部で20個の炭素)を有する天然に存在する脂肪酸を調製し得る。同様に、R2がCH2CH3であり、R1が(CH2)14CO2R3であり、R3が脂肪酸に含まれるカルボン酸官能基用の保護基である成分から、奇数個の炭素(この場合、全部で19個の炭素)を有する天然に存在しない脂肪酸を調製し得る。異なるR1及びR2基を組み入れることによって、偶数又は奇数のどちらかの炭素を有する本質的にいずれのニトロ化脂質の合成にもスキームIIIに示す方法を適用することができる。例えば、R1及びR2はそれぞれ1〜20個の炭素を有する脂肪族炭素鎖又は置換脂肪族炭素鎖であり得るが、より大きいいずれの炭素数も可能である。さらに、個々のR1及び/又はR2基はいずれの数の炭素-炭素二重結合を含んでもよく、該炭素-炭素二重結合のα、β、又はγ炭素に結合した関連電子求引基を含んでいても含んでいなくてもよい。同様に、個々のR1及びR2基は分岐鎖を含んでよい。該実施形態では、R1及び/又はR2と関連する追加の炭素-炭素二重結合が相互に共役していても、共役していなくても、又は部分的に共役していてもよく、或いは反応の結果として生じた炭素-炭素二重結合と共役するようになるだろう。上述したように、スキームIIIに示す反応を連続的に行なって、関連電子求引基がある複数の炭素-炭素二重結合を有する活性化脂肪酸を生じさせ得る。該実施形態では、一連の各反応の個々のR1及びR2基は炭素数が1〜約12であり得るが、より大きいいずれの炭素数も可能である。
【0054】
一部の実施形態では、個々のR1及びR2基は、二重結合以外のさらなる官能基を含んでよく、それは、反応を行なう前又はスキームIIIに示す反応後に存在する炭素-炭素二重結合と関係があってもなくてもよい。例えば、個々のR1及びR2基は、限定するものではないが、例えば、鎖内にアルキンがある鎖の一部としてのアルキン、アルコール、アルデヒドカルボニル、ケトンカルボニル、カルボニルアルデヒドとケトンの誘導体、例えば、オキシム、ヒドラゾン及び技術上周知のいずれの他のカルボニル誘導体、アミン、アミンに結合した技術上周知の他の基を有するアミン、チオール、チオールにに結合した技術上周知の他の基を有するチオール、技術上周知のいずれの他の官能基(単純官能基として又はそれに結合した別の鎖若しくは基を有する官能基として)等の官能基を含み得る。該官能基は、直鎖又は分岐鎖の炭素に結合し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、さらなる官能基の追加は、特有の細胞又は細胞内の標的を標的にすることができるように、実施形態の活性化脂肪酸のターゲティング及びバイオアベイラビリティーを変え得る。
【0055】
さらに他の実施形態では、分子が、2つ以上の炭素鎖が非炭素基によって結合している複数の炭素鎖を含んでよく、一部の実施形態では、各炭素鎖が分岐しているか又は直鎖であり得る。例えば、一定の実施形態では、2つ以上の炭素鎖を結合できる非炭素官能基として、限定するものではないが、以下に列挙する非常に一般的な官能基中の当該非炭素官能基が挙げられる。
エーテルR1-O-R2
アミンR1-NR3-R2
エステルR1-C(=O)-O-R2
アミドR1-C(=O)-NR3-R2
チオエステルR1-C(=S)-O-R2又はR1-C(=O)-S-R2
チオアミドR1-C(=S)-NR3-R2
有機化合物に含まれ、かつ上に示した一般的な非炭素多価元素(酸素、窒素&イオウ)に加えて、技術上周知、かついずれの他の非炭素多価元素に基づく他の官能基を本発明の実施形態で使用し得る。種々の実施形態において、非炭素鎖がR1、R2又は両方にある上記IIIに示す一般的合成アプローチを利用して、上述したいずれの非炭素鎖をも活性化脂肪酸に組み入れることができる。
【0056】
本発明の化合物及び適切な担体を含む医薬製剤は種々の形態であってよく、限定するものではないが、有効量の本発明の活性化脂肪酸を含む固体、溶液、粉末、流体エマルション、流体懸濁液、半固体、及び乾燥粉末が挙げられる。該製剤に医薬的に許容できる希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤などと共に活性成分を含められることも技術上周知である。投与の手段及び方法は技術上周知であり、専門家は指導用の種々の薬理学の文献を参照することができる。例えば、Modern Pharmaceutics, Banker & Rhodes, Marcel Dekker, Inc. (1979);及びGoodman & Gilman's, The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 6th Edition, MacMillan Publishing Co., New York (1980)(両方ともその全体が参照によって本明細書に援用される)を参考にすることができる。
注入、例えば、ボーラス注入又は持続注入による非経口又は静脈内投与のために本発明の化合物を製剤化することができる。注入用製剤を単位剤形で、例えば、保存剤を添加したアンプル又はマルチドース容器で提供することができる。組成物は、油性若しくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションとして該形態を取ることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含むことができる。
適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて既知技術に従って注射用製剤、例えば無菌注射用水性若しくは油性懸濁液を製剤化し得る。無菌注射用製剤は、無毒の非経口的に許容できる希釈剤又は溶剤中の無菌注射用溶液又は懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。利用し得る許容できるビヒクル及び溶剤には、水、リンゲル液、及び等張食塩水がある。さらに、溶剤又は懸濁媒体として無菌の固定油が慣習的に利用される。この目的のため、合成モノグリセリド又はジグリセリドといったいずれの無菌性固定油をも利用し得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸希釈剤は注射剤の調製に利用を見い出す。本発明の実施形態で役立ち得る追加の脂肪酸希釈剤として、例えば、ステアリン酸、金属ステアラート、ナトリウムステアリルフマラート、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、グリセリルベヘナート、鉱物油、植物油、パラフィン、ロイシン、シリカ、ケイ酸、タルク、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン-グリセロール脂肪エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリエトキシル化ステロール、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化植物油などの1種以上が挙げられる。一部の実施形態では、脂肪酸希釈剤が脂肪酸の混合物であってよい。一部の実施形態では、脂肪酸希釈剤が、脂肪酸エステル、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のグリセリド、又はエトキシル化脂肪酸エステルであってよく、他の実施形態では、脂肪酸希釈剤が、例えば、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、パルミトリル酸、セチルアルコール、カプリルアルコール、カプリリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキドン酸アルコール、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラキルアルコール、キミルアルコール、及びリノレイルアルコール等及びそれらの混合物のような脂肪アルコールであってよい。
【0057】
本発明の他の実施形態は、上述したように調製した活性化脂肪酸を含み、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤などの経口投与用の固体剤形として製剤化する。該実施形態では、活性化合物をスクロース、ラクトース又はデンプン等の1種以上の不活性な希釈剤と混合してよい。該剤形は、通常の慣習におけるように、不活性な希釈剤以外の添加物質、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の潤沢剤を含んでよい。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよく、かつ腸溶コーティングを用いてさらに調製することができる。
固体剤形中の活性化脂肪酸の調製は変化し得る。例えば、一実施形態では、活性化脂肪酸を1種以上の脂肪酸希釈剤、例えば上記脂肪酸希釈剤と混合し、この液体混合物に増粘剤を添加してゼラチンを形成することによって、活性化脂肪酸の液体又はゼラチン製剤を調製することができる。次にゼラチンを単位剤形で被包してカプセル剤を形成し得る。別の典型的実施形態では、上述したように調製した活性化脂肪酸の油性製剤を凍結乾燥させて固体とし、1種以上の医薬的に許容できる賦形剤、担体又は希釈剤と混合して錠剤を形成することができる。さらに別の実施形態では、油性製剤の活性化脂肪酸を結晶化して固体を形成し、医薬的に許容できる賦形剤、担体又は希釈剤と混合して錠剤を形成し得る。
活性化脂肪酸の経口投与に利用し得るさらなる実施形態は液体剤形を含む。該実施形態では、液体剤形として、当技術分野で常用される不活性な希釈剤、例えば水を含む医薬的に許容できるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤が挙げられる。該組成物は、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、並びに甘味料、調味料、及び香料などを含んでもよい。
【0058】
なおさらなる実施形態では、本発明の活性化脂肪酸をデポー製剤として製剤化することができる。このような長時間作用性製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によるか又は筋肉内注射によって投与され得る。約1〜約6カ月又はそれより長い間隔でデポー注射を投与することができる。従って、例えば、適切な高分子材料又は疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂を用いて化合物を製剤化することができ、或いは難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として化合物を製剤化することができる。
注射用製剤に好適な他の希釈剤として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
植物油:本明細書で使用する場合、用語「植物油」は、ポリエチレングリコールの少なくとも1つの鎖が植物油と共有結合する、植物油のエトキシル化から生成された化合物、又は化合物の混合物を表す。一部の実施形態では、脂肪酸が約12〜約18個の炭素を有する。一部の実施形態では、エトキシル化の量が約2〜約200、約5〜100、約10〜約80、約20〜約60、又は約12〜約18のエチレングリコール反復単位で変化し得る。植物油は水素化又は非水素化であってよい。好適な植物油として、限定するものではないが、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、大豆油、安息香酸ベンジル、ゴマ油、綿実油、及びパーム油が挙げられる。他の好適な植物油として、限定するものではないが、MiglyolTM 810及び812(Dynamit Nobel Chemicals, Swedeから入手可能)、NeobeeTM M5(Drew Chemical Corp.から入手可能)、AlofineTM(Jarchem Industriesから入手可能)、LubritabTMシリーズ(JRS Pharmaから入手可能)、SterotexTM(Abitec Corp.から入手可能)、SoftisanTM 154(Sasolから入手可能)、CroduretTM(Crodaから入手可能)、FancolTM(Fanning Corp.から入手可能)、CutinaTM HR(Cognisから入手可能)、SimulsolTM(CJ Petrowから入手可能)、EmConTM CO(Amisol Co.から入手可能)、LipvolTM CO、SES、及びHS-K(Lipoから入手可能)、並びにSterotexTM HM(Abitec Corp.から入手可能)などの市販の合成油が挙げられる。ゴマ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、及び綿実油を含めた他の適切な植物油には、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of Pharmaceutical Excipients, (2006), 5th ed(その全体が参照によって本明細書に援用される)に列挙されている当該植物油が含まれる。好適なポリエトキシル化植物油として、限定するものではないが、CremaphorTM EL又はRHシリーズ(BASFから入手可能)、EmulphorTM EL-719(Stepan productsから入手可能)、及びEmulphorTM EL-620P(GAFから入手可能)が挙げられる。
【0059】
鉱物油:本明細書で使用する場合、用語「鉱物油」は、未精製及び精製(軽)鉱物油の両者を表す。好適な鉱物油として、限定するものではないが、AvatechTMグレード(Avatar Corp.から入手可能)、DrakeolTMグレード(Penrecoから入手可能)、SiriusTMグレード(Shellから入手可能)、及びCitationTMグレード(Avater Corp.から入手可能)が挙げられる。
ヒマシ油:本明細書で使用する場合、用語「ヒマシ油」は、ポリエチレングリコールの少なくとも1つの鎖がヒマシ油と共有結合する、ヒマシ油のエトキシル化から生成された化合物を表す。ヒマシ油は水素化又は非水素化であってよい。ポリエトキシル化ヒマシ油の同義語として、限定するものではないが、ポリオキシルヒマシ油、水素化ポリオキシルヒマシ油、マクロゴールグリセロリリシノレアス(mcrogolglyceroli ricinoleas)、マクロゴールグリセロリヒドロキシステアラス(macrogolglyceroli hydroxystearas)、ポリオキシル35ヒマシ油、及びポリオキシル40水素化ヒマシ油が挙げられる。好適なポリエトキシル化ヒマシ油として、限定するものではないが、NikkolTM HCOシリーズ(Nikko Chemicals Co. Ltd.から入手可能)、例えばNikkol HCO-30、HC-40、HC-50、及びHC-60(ポリエチレングリコール-30水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール-40水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール-50水素化ヒマシ油、及びポリエチレングリコール-60水素化ヒマシ油)、EmulphorTM EL-719(ヒマシ油40モル-エトキシラート、Stepan Productsから入手可能)、CremophoreTMシリーズ(BASFから入手可能)(Cremophore RH40、RH60、及びEL35(それぞれポリエチレングリコール-40水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール-60水素化ヒマシ油、及びポリエチレングリコール-35水素化ヒマシ油)が挙げられる)、並びにEmulgin(登録商標)RO及びHREシリーズ(Cognis PharmaLineから入手可能)が挙げられる。他の好適なポリオキシエチレンヒマシ油誘導体には、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of Pharmaceutical Excipients, (2006), 5th ed.(その全体が参照によって本明細書に援用される)に列挙されている当該誘導体が含まれる。
【0060】
ステロール:本明細書で使用する場合、用語「ステロール」は、ステロール分子のエトキシル化から誘導された化合物、又は化合物の混合物を表す。好適なポリエトキシル化ステロールとして、限定するものではないが、PEG-24コレステロールエーテル、SolulanTM C-24(Amercholから入手可能);PEG-30コレスタノール、NikkolTM DHC(Nikkoから入手可能);Phytosterol、GENEROLTMシリーズ(Henkelから入手可能);PEG-25フィトステロール、NikkolTM BPSH-25(Nikkoから入手可能);PEG-5ソヤステロール(soya sterol)、NikkolTM BPS-5(Nikkoから入手可能);PEG-10ソヤステロール、NikkolTM BPS-10(Nikkoから入手可能);PEG-20ソヤステロール、NikkolTM BPS-20(Nikkoから入手可能);及びPEG-30ソヤステロール、NikkolTM BPS-30(Nikkoから入手可能)あ挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「PEG」はポリエチレングリコールを表す。
ポリエチレングリコール:本明細書で使用する場合、用語「ポリエチレングリコール」又は「PEG」は、式-O-CH2-CH2-のエチレングリコールモノマー単位を含むポリマーを表す。好適なポリエチレングリコールは、ポリマー分子の各末端にフリーのヒドロキシル基を有してよく、或いは低級アルキル、例えばメチル基でエーテル化された1つ以上のヒドロキシル基を有してよい。エステル化性(esterifiable)カルボキシ基を有するポリエチレングリコールの誘導体も適している。本発明で有用なポリエチレングリコールは、いずれの鎖長又は分子量のポリマーであってもよく、分岐を含んでよい。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量が約200〜約9000である。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量が約200〜約5000である。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量が約200〜約900である。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量が約400である。好適なポリエチレングリコールとして、限定するものではないが、ポリエチレングリコール-200、ポリエチレングリコール-300、ポリエチレングリコール-400、ポリエチレングリコール-600、及びポリエチレングリコール-900が挙げられる。名称のダッシュ(-)の後の数はポリマーの平均分子量を表す。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール-400である。好適なポリエチレングリコールとして、限定するものではないが、CarbowaxTM及びCarbowaxTM Sentryシリーズ(Dowから入手可能)、LipoxolTMシリーズ(Brenntagから入手可能)、LutrolTMシリーズ(BASFから入手可能)、及びPluriolTMシリーズ(BASFから入手可能)が挙げられる。
【0061】
プロピレングリコール脂肪酸エステル:本明細書で使用する場合、用語「プロピレングリコール脂肪酸エステル」は、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールと脂肪酸との間で生成されたモノエステル若しくはジエステル又はその混合物を表す。プロピレングリコール脂肪アルコールエーテルを誘導するために有用な脂肪酸として、限定するものではないが、本明細書で定義した当該脂肪酸が挙げられる。一部の実施形態では、モノエステル又はジエステルがプロピレングリコールから誘導される。一部の実施形態では、モノエステル又はジエステルが約1〜約200個のオキシプロピレン単位を有する。一部の実施形態では、分子のポリプロピレングリコール部分が約2〜約100個のオキシプロピレン単位を有する。一部の実施形態では、モノエステル又はジエステルが約4〜約50個のオキシプロピレン単位を有する。一部の実施形態では、モノエステル又はジエステルが約4〜約30個のオキシプロピレン単位を有する。好適なプロピレングリコール脂肪酸エステルとして、限定するものではないが、プロピレングリコールラウラート:LauroglycolTM FCC及び90(Gattefosseから入手可能);プロピレングリコールカプリラート:CapryolTM PGMC及び90(Gatefosseから入手可能);及びプロピレングリコールジカプリロカプラート:LabrafacTM PG(Gatefosseから入手可能)が挙げられる。
ステアロイルマクロゴールグリセリド:ステアロイルマクロゴールグリセリドは、ステアリン酸からか又は主にステアリン酸から誘導された化合物から主に合成されたポリグリコール化(polyglycolized)グリセリドを表すが、この合成では、他の脂肪酸又は他の脂肪酸由来の化合物をも同様に使用し得る。好適なステアロイルマクロゴールグリセリドとして、限定するものではないが、Gelucire(登録商標)50/13(Gattefosseから入手可能)が挙げられる。
【0062】
一部の実施形態では、希釈剤成分が、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、ソルビトール、キシリトール、ポウデレド セルロース、ミクロクリスタリン セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ナトリウムデンプングリコラート、アルファ化デンプン、リン酸カルシウム、金属炭酸塩、金属酸化物、又は金属アルミノケイ酸塩の1種以上を含む。
固体及び/又は液体剤形で使う典型的な賦形剤又は担体として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
ソルビトール:好適なソルビトールとして、限定するものではないが、PharmSorbidex E420(Cargillから入手可能)、Liponic 70-NC及び76-NC(Lipo Chemicalから入手可能)、Neosorb(Roquetteから入手可能)、Partech SI(Merckから入手可能)、及びSorbogem(SPI Polyolsから入手可能)が挙げられる。
デンプン、ナトリウムデンプングリコラート、及びアルファ化デンプンとしては、限定するものではないが、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of Pharmaceutical Excipients, (2006), 5th ed(その全体が参照によって本明細書に援用される)に記載のものが挙げられる。
崩壊剤:崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、及びイオン交換樹脂、食物酸と炭酸アルカリに基づいた起沸性システム、粘土、タルク、デンプン、アルファ化デンプン、ナトリウムデンプングリコラート、セルロースフロック、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸カルシウム、金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、又はリン酸カルシウムの1種以上を含み得る。
【0063】
本発明のなおさらなる実施形態は、他の活性物と併用投与される活性化脂肪酸を含む。活性物としては、例えば、該併用が本明細書に記載の所望効果を達成するのに望ましいか又は有利である考えられる活性なアジュバント、プロテアーゼインヒビター、又は他の適合性薬物若しくは化合物が挙げられる。
以下の非限定例を参照して、本発明並びに使用する方法及び材料を説明する実施形態をさらに理解することができる。
【実施例1】
【0064】
(E)-9-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸の調製
市販の9-ブロモノナノールをジョーンズ(Jones)試薬、すなわち濃硫酸(H2SO4)中の三酸化クロム(CrO3)、67%を用いて酸化して、アリルエステルとして保護されたカルボン酸を形成し(収率92%)、コーンブルム(Kornblum)法、ジエチルエーテル(Et2O)中の硝酸銀(AgNO2)を用いて9-ニトロ-ノナン酸、アリルエステルを全体収率42%で形成した。次にこの中間体を触媒量(10mol%)のDBUの存在下で市販のノニルアルデヒドと化合させることによってニトロアルドール縮合を行なってβ-ヒドロキシニトロ(収率81%)をジアステレオマーの1:1混合物として生成した。β-ヒドロキシニトロエステル中間体を無水酢酸と触媒量のp-トルエンスルホン酸中でアセチル化してβ-アセトキシニトロエステル中間体を高収率で生成し、このβ-アセトキシニトロエステル中間体から0.5当量の炭酸ナトリウム中で水の共沸除去による塩基誘導脱離によってニトロアルケンを生じさせた。立体選択的にクリーンな(E)-異性体ニトロアルケンが収率84%で生成され、アリルニトロアルカンを形成するために異性化又は二重結合の脱共役は必要なかった。生成されたニトロアルケンの遊離酸をギ酸の存在下でパラジウム触媒異性化によって得て、遊離酸(E)-9-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸を収率95%で生成した。市販の出発製品からの全体的な収率は56%だった。ニトロアルケンの塩基性感受性のため、反応と仕上げの両方の全体を通じて一貫した酸性条件が可能だった。
【実施例2】
【0065】
(Z)-異性体の製作
Ono, N, et al. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1987, 1551-1551及びSharpless et al., Am. Chem. Soc. 1973, 95, 2697-2699(両文献ともその全体が参照によって本明細書に援用される)に記載の小野法を利用して、(E)-9-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸から(Z)-9-ニトロ-オクタデカ-9-エン酸を約80%〜約90%の収率で形成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を含む化合物。
【請求項2】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、奇数個の炭素を有する脂肪族鎖を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、5〜23個の炭素を有する脂肪族鎖を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23個の炭素を有する脂肪族鎖を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、糖脂質、グリセロ脂質、リン脂質及びコレステロールエステルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記1つ以上の電子求引基が、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)、並びにニトロ(-NO2)(ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである)から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記1つ以上の電子求引基がニトロ(-NO2)基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記1つ以上の電子求引基が、前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置している、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記1つ以上の電子求引基が、前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置している、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記1つ以上の電子求引基が、前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置している、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記1つ以上の電子求引基が、sp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のRにある、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記1つ以上の電子求引基が、sp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のSにある、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
炭素-炭素二重結合が、前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の脂肪族鎖のいずれかの炭素に存在する、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、2つ以上の共役炭素-炭素二重結合を有する脂肪酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、前記2つ以上の共役炭素-炭素二重結合のいずれかの炭素のところにある、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、C-9、C-10、C-12、C-13又はその組合せのところに位置している、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
エステル結合、エーテル結合、及びビニルエーテル結合から選択される1つ以上の非炭素-炭素結合をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸のいずれかの炭素のところに位置している、電子求引基以外の1つ以上の官能基をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
前記1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
1種以上の希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤又はその組合せをさらに含む、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、前記1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、固体、溶液、粉末、流体エマルション、流体懸濁液、半固体又は乾燥粉末として製剤化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を含む化合物であって、前記少なくとも1つの二重結合と関係がある電子求引基がニトロ(-NO2)基でないことを特徴とする化合物。
【請求項26】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、天然に存在する脂肪酸又はその誘導体を含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、偶数個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、4〜24個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項29】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、12〜18個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項30】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、ω-2、ω-3、ω-4、ω-5、ω-6、ω-7、ω-8、ω-9脂肪酸並びにその等価物及び誘導体から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項31】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、リノレン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ステアリドン酸、ミリストレイン酸、リノール酸、γ-リノール酸、ジホモ-γ-リノール酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸並びにその等価物及び誘導体から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項32】
前記不飽和脂肪酸が、リノール酸、オレイン酸、アラキドン酸又はその誘導体から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項33】
前記不飽和脂肪酸が、糖脂質、グリセロ脂質、リン脂質及びコレステロールエステルから選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項34】
前記少なくとも1つの電子求引基が、C-9、C-10、C-12、C-13又はその組合せのところに位置している、請求項25に記載の化合物。
【請求項35】
エステル結合、エーテル結合、ビニルエーテル結合又はその組合せから選択される1つ以上の非炭素-炭素結合をさらに含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項36】
前記1つ以上の電子求引基が、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)(ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである)から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項37】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置している、請求項25に記載の化合物。
【請求項38】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置している、請求項25に記載の化合物。
【請求項39】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置している、請求項25に記載の化合物。
【請求項40】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基である、請求項25に記載の化合物。
【請求項41】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にある、請求項25に記載の化合物。
【請求項42】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にある、請求項25に記載の化合物。
【請求項43】
前記1つ以上の電子求引基が、sp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のRにある、請求項25に記載の化合物。
【請求項44】
前記1つ以上の電子求引基が、sp3キラル/不斉中心で絶対立体化学のSにある、請求項25に記載の化合物。
【請求項45】
炭素-炭素二重結合が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の脂肪族鎖のいずれかの炭素に存在する、請求項25に記載の化合物。
【請求項46】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、2つ以上の共役炭素-炭素二重結合を有する脂肪酸である、請求項25に記載の化合物。
【請求項47】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、前記2つ以上の共役炭素-炭素二重結合のいずれかの炭素のところにある、請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
前記少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、請求項25に記載の化合物。
【請求項49】
1種以上の希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、抗酸化剤、保存剤又はその組合せをさらに含む、請求項48に記載の化合物。
【請求項50】
医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、前記少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩が、固体、溶液、粉末、流体エマルション、流体懸濁液、半固体又は乾燥粉末として製剤化されている、請求項48に記載の化合物。
【請求項51】
状態を治療する方法であって、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸(但し、前記電子求引基がニトロ(-NO2)でない)又はその医薬的に許容できる塩を、治療が必要な対象に有効量投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記1つ以上の電子求引基が、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)(ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである)から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、12〜18個の炭素を有する脂肪族炭素鎖を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、ω-2、ω-3、ω-4、ω-5、ω-6、ω-7、ω-8、又はω-9脂肪酸並びにその等価物及び誘導体から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、リノレン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ステアリドン酸、ミリストレイン酸、リノール酸、γ-リノール酸、ジホモ-γ-リノール酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸並びにその等価物及び誘導体から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置している、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置している、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置している、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基である、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にある、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にある、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
前記有効量が、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の混合物を含み、前記混合物は、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα、β、及びγ炭素上に位置している電子求引基を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項63】
前記状態が、動脈狭窄症、熱傷、高血圧症、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、ループス、ライム病、痛風、敗血症、高熱症、潰瘍、腸炎、骨粗しょう症、ウイルス若しくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸促迫症、肺炎症、肺線維症、喘息、後天性呼吸促迫症候群、タバコ誘発肺疾患、肉芽腫形成、肝臓線維症、移植片対宿主病、手術後炎症、血管形成術後の冠動脈及び末梢血管再狭窄、ステント留置又はバイパス移植、急性及び慢性白血病、Bリンパ球白血病、腫瘍性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎症、乾癬、免疫不全症、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、癌の転移又は増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、及び脱毛症から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項64】
状態を治療する方法であって、1つ以上の電子求引基を有する天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸又はその医薬的に許容できる塩を、治療が必要な対象に有効量投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項65】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、奇数個の炭素を有する脂肪族鎖を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記天然に存在しない不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸が、5〜23個の炭素を有する脂肪族鎖を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記1つ以上の電子求引基が、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボニル(-CO)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、-F、-Br、-I)、フルオロメチル(-CFn)、フッ化アリル(-CH=CHCH2F)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホン酸(-SO3H)、並びに1o、2o及び3oアンモニウム(-NR3+)、並びにニトロ(-NO2)(ここで、Rは、水素、メチル又はC2-C6アルキルである)から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα炭素上に位置している、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のβ炭素上に位置している、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記1つ以上の電子求引基が、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のγ炭素上に位置している、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
前記1つ以上の電子求引基の少なくとも1つが、電子求引性ビニル基又は電子求引性アリル基である、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がcis配置にある、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
前記1つ以上の電子求引基と関係がある炭素-炭素二重結合がtrans配置にある、請求項64に記載の方法。
【請求項74】
前記有効量が、少なくとも1つの二重結合と関係がある1つ以上の電子求引基を有する不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の混合物を含み、前記混合物は、前記不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸の炭素-炭素二重結合のα、β、及びγ炭素上に位置している電子求引基を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
前記状態が、動脈狭窄症、熱傷、高血圧症、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、ループス、ライム病、痛風、敗血症、高熱症、潰瘍、腸炎、骨粗しょう症、ウイルス若しくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸促迫症、肺炎症、肺線維症、喘息、後天性呼吸促迫症候群、タバコ誘発肺疾患、肉芽腫形成、肝臓線維症、移植片対宿主病、手術後炎症、血管形成術後の冠動脈及び末梢血管再狭窄、ステント留置又はバイパス移植、急性及び慢性白血病、Bリンパ球白血病、腫瘍性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎症、乾癬、免疫不全症、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、癌の転移又は増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、及び脱毛症から選択される、請求項64に記載の方法。

【公表番号】特表2011−519373(P2011−519373A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507440(P2011−507440)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/002628
【国際公開番号】WO2009/134383
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510290245)コンプレクザ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(508226230)ユニヴァーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイアー エデュケイション (4)
【Fターム(参考)】