説明

ビフェニル誘導体の製造方法

【課題】生産効率が高い工業的に優れたビフェニル誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるビフェニル誘導体の製造方法において、


(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体の


(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)臭素をマグネシウム金属と反応させ、グリニャール試薬に転化し、該グリニャール試薬同士を触媒存在下でカップリング反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフェニル誘導体の製造方法に関し、さらに詳しくは、工業的に優れたビフェニル誘導体の製造方法、および、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフェニル誘導体は、有機化学・高分子化学分野で広く用いられる化合物であり、ファインケミカル、医農薬原料、樹脂・プラスチック原料、電子情報材料、光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で有用な化合物である。
【0003】
ビフェニル誘導体の製造方法としては、芳香族ハロゲン化物を出発基質とすることが知られている。特許文献1は、ニッケル触媒存在下で、芳香族塩素化物のグリニャール試薬と芳香族臭素化物とを反応させる方法を提案している。一方、非特許文献1及び2は、芳香族ヨウ素化物又は芳香族臭素化物をマグネシウムと反応させ、グリニャール試薬に転化した後、塩化鉄(III)触媒を用い、酸化剤の共存下、グリニャール試薬同士をカップリングさせる製造方法を提案している。
【0004】
しかし、特許文献1、非特許文献1及び2に記載された方法では、電子吸引性が強いトリフルオロメチル基(−CF)がベンゼン環に結合した化合物を原料とする場合は、ビフェニル誘導体の収率は低く、工業的に適用できるものではなかった。
【0005】
また、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルは、高分子化学分野で広く用いられる化合物であり、特に、ポリイミドやポリアミド等の原料として有用である。この化合物を含むポリイミドやポリアミドは、電子情報材料、光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で使用されている。
【0006】
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法としては、 2-ハロゲン化ベンゾトリフルオリドを原料とし、
(1)金属存在下でカップリングし、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを生成させ、これを蒸留法により単離する工程(カップリング工程)、
(2)2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを硫酸と硝酸の混酸によりジニトロ化し、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを生成させ、晶析法により単離する工程(ジニトロ化工程)、
(3)2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを還元し、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを生成させ、晶析により単離する工程(還元工程)
からなる製造方法が提案されている。
【0007】
(1)のカップリング工程において、特許文献2においては、2-ヨードベンゾトリフルオリドに銅を反応剤とする方法が提案されている。しかし、2-ヨードベンゾトリフルオリドは、高価であり、製造された2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルは、高価なものになる。さらに大量の銅を使うことから、廃液・廃物処理等で環境上の問題がある。一方、非特許文献3では、2-クロロベンゾトリフルオリドに高価なニッケル触媒を用いて、亜鉛を反応剤として使用している。しかし、大量の亜鉛を使うことから、廃液・廃物処理等で環境上の問題がある。
【0008】
(2)のジニトロ化工程において、非特許文献2においては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを無溶媒でニトロ化反応を行っているが、反応温度が高いことから、ビフェニル骨格の4,4’位へのジニトロ化位置選択性が低くかった。また、異性体が多く生成することから、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを単離するのに大きな負荷がかかっていた。さらに反応液の粘性は極めて高いため、そこから目的物を単離することは、工業的には非常に困難である。一方、特許文献2では、塩化メチレンを溶媒として使用することにより、低温で反応を進行させ、かつ、溶媒とニトロ化剤である混酸とが二層分離するため、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジニトロビフェニルの単離が容易であった。しかし、塩化メチレンは、国際がん研究機関(IARC)による発がん性評価で、グループ2B(人に対して発がん性が有るかもしれない物質)に指定されている物質であり、環境上および作業上の問題がある。さらに塩化メチレンは、欧州では使用禁止物質に指定されている。
【0009】
(3)の還元工程において、特許文献3では、パラジウム触媒存在下、ヒドラジンを用いて還元を行っている。しかし、ヒドラジンの毒性は高く、爆発性を有する危険物質であることから、作業上の問題があった。非特許文献3では、パラジウム触媒の存在下、ギ酸アンモニウムにより還元する方法が記載されている。しかし、複数の溶媒を大量に使用することから、基質濃度が低く、生産効率が悪かった。特許文献4では、パラジウム触媒の存在下、酢酸エチル溶媒中で水素により接触還元する方法が記載されている。この方法は、生産効率が高いものの、反応液の着色が著しく、この着色を除去するための精製操作が煩雑となってしまっていた。
【特許文献1】特開昭63−295520号公報(実施例1,2,3,4)
【特許文献2】特開平3−44355号公報(実施例1)
【特許文献3】特開2006−56786号公報(実施例1、2、3)
【特許文献4】米国公開特許2004/0013337号明細書
【非特許文献1】オーガニック・レターズ(ORGANIC LETTERS) Vol.7,No.3 (2005), 491−493
【非特許文献2】オーガニック・レターズ(ORGANIC LETTERS) Vol.7,No.10 (2005),1943−1946
【非特許文献3】Journal of polymer Science Part A, Polymer Chemistry 31巻、2081〜1091頁(1993年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生産効率が高い工業的に優れたビフェニル誘導体の製造方法を提供することである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、環境上の問題が大きい重金属を含む廃棄液や廃棄物の発生が少なく、毒性の低いニトロ化溶媒を使用し、かつ生産効率が高い工業的に優れた2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法は、下記一般式(1)で示されるビフェニル誘導体の製造方法において、
【0013】
【化1】

【0014】
(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体の
【0015】
【化2】

【0016】
(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
臭素原子をマグネシウム金属と反応させ、グリニャール試薬に転化し、該グリニャール試薬同士を触媒存在下でカップリング反応させることを特徴とする。
【0017】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法は、
(1) o−ブロモベンゾトリフルオロライドをカップリングさせて2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを生成し、単離する第一工程、
(2) 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを1,2-ジクロロプロパン溶液中で、ジニトロ化して、晶析により2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを単離する第二工程、
(3) 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを還元し、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを単離する第三工程、
からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法は、グリニャール試薬を中間体として生成し、このグリニャール試薬同士を効率的にカップリング反応させることによりビフェニル誘導体を収率良く生産することができる工業的に優れた製造方法である。
【0019】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法は、o−ブロモベンゾトリフルオロライドを出発基質とし、毒性の低い1,2-ジクロロプロパンを使用することにより、安全性が高く、かつ生産効率が高い工業的に優れた製造方法である。なお、1,2-ジクロロプロパンは、塩化メチレンを使用禁止物質として指定している欧州でも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の詳細を記載する。
【0021】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法は、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体を出発基質とする。
【0022】
【化3】

【0023】
(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
前記式(2)において、nは、好ましくは1である。nが1のときに、本反応において置換基による立体的な反応阻害効果が少ないためより効率的に反応が進行するからである。上記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体は、好ましくは、o-ブロモベンゾトリフルオライドである。
【0024】
本発明において、前記式(2)のベンゼン誘導体の臭素原子をマグネシウム金属と反応させて、グリニャール試薬に転化する。グリニャール試薬への転化反応は、公知の転化反応を利用することができる。
【0025】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法において、マグネシウム金属は、粉末状のものをもちいることが好ましい。
【0026】
グリニャール試薬に転化する反応は、脱水された系で行われる。脱水された系は、脱水した溶媒を用いること或いは安価なグリニャール試薬を添加し、水を除去することで得ることが好ましい。
【0027】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法において、マグネシウム金属の表面酸化皮膜をとり、反応性を高めるため、ヨウ素または臭素或いは、これらを含む安価な化合物を添加することが好ましい。このような化合物の例としては、ヨウ化メチル、臭化メチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、ジブロモエタン等が好ましく挙げられる。
【0028】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法において、グリニャール試薬同士のカップリング反応に用いられる触媒は、Fe、Ag、Cu、Co、Zn、Ni、Pdから選ばれる少なくとも1つの金属またはその化合物が好ましく挙げられ、化合物としては、Fe、Ag、Cu、Co、Zn、Ni、Pdから選ばれる少なくとも1つの金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩が好ましく用いられる。中でも、塩化第一鉄(II)、塩化第二鉄(III)、臭化第一鉄、臭化第二鉄が好ましい。
【0029】
また、触媒の使用量は、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体
【0030】
【化4】

【0031】
(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
1モルに対し、0.01モル%〜20モル%を用いるのが好ましく、0.05モル%〜10モル%がさらに好ましい。触媒の使用量を、上記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体1モルに対し、0.01モル%〜20モル%用いることにより、カップリング反応を効率良くかつ経済的に行うことができる。
【0032】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法は、カップリング反応を酸化剤の共存下で行うことが好ましい。酸化剤共存下では、カップリング反応で還元された触媒が容易に酸化され、再生されるため、触媒のターンオーバー数が向上し、反応収率が向上するからである。
【0033】
酸化剤としては、取り扱いおよび生成物との分離の観点から、ハロゲン化脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数1〜5のハロゲン化脂肪族炭化水素がより好ましい。具体的には、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモメタン、ジブロモメタン、トリブロモメタン、テトラブロモメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ブロモエタン、ジブロモエタン、トリブロモエタン、テトラブロモエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、クロロペンタン、ジクロロペンタン、ブロモプロパン、ジブロモプロパン、トリブロモプロパン、ブロモクロロメタン、ブロモクロロエタンなどが挙げられる。中でも好ましいのは、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ブロモメタン、ジブロモメタン、ブロモエタン、ジブロモエタン、ジブロモプロパンであり、さらに好ましくは、1,2-ジクロロエタンおよび/または1,2-ジクロロプロパンである。
【0034】
また、酸化剤の使用量は、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体
【0035】
【化5】

【0036】
(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
1モルに対し、0.1モル倍量〜5モル倍量用いるのが好ましく、0.2モル倍量〜3モル倍量である。0.1モル倍量より少ないと酸化剤による触媒再生の効果が少ない場合があり、5モル倍量よりも多いと、未反応の酸化剤が残存し、目的物の単離精製で負荷がかかり、非効率的である場合がある。
【0037】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法に用いる溶媒は、好ましくは、グリニャール試薬が生成しやすいエーテル系溶媒が好ましい。溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテル、メチル−ターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。中でも好ましいのは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテル、メチル−ターシャリーブチルエーテルである。
【0038】
また、溶媒の使用量は、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体
【0039】
【化6】

【0040】
グリニャール試薬および生成物の溶解性やスラリー濃度または反応液の性状に応じ、好ましくは、前記式(2)で示されるベンゼン誘導体に対し、0.5〜100モル倍量である。溶媒の使用量が、前記式(2)で示されるベンゼン誘導体に対し、0.5〜100モル倍量であると、グリニャール試薬の収率が高く、生産性が良く、経済的なプロセスとなる。
【0041】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法において、カップリング反応の反応温度は、10〜100℃が好ましく、20〜70℃がさらに好ましい。反応温度が10〜100℃であると、反応がスムーズに進行し、反応が途中で停止することがなく、グリニャール試薬が反応する前に分解することがない。
【0042】
本発明のビフェニル誘導体の製造方法により得られたビフェニル誘導体は、多岐にわたる分野で種々の化合物へ変換することが可能であり、安価かつ効率よく工業的に得られることの意義は大きい。
【0043】
次に、本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法について説明する。
【0044】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法の第一工程は、o-ブロモベンゾトリフルオライドをマグネシウム金属と反応させ、グリニャール試薬に転化し、該グリニャール試薬同士を触媒存在下でカップリング反応させて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを生成し、これを単離する。
【0045】
本発明において、o−ブロモベンゾトリフルオロライドをマグネシウム金属と反応させてカップリングさせる方法としては、o−ブロモベンゾトリフルオロライドの塩素原子をマグネシウム金属と反応させて、グリニャール試薬に転化し、グリニャール試薬同士をカップリングさせる方法が好ましく用いられる。グリニャール試薬への転化反応は、公知の転化反応を利用することができる。
マグネシウム金属は、粉末状のものを用いることが好ましい。グリニャール試薬に転化する反応は、脱水された系で行われる。脱水された系は、脱水した溶媒を用いることあるいは安価なグリニャール試薬を添加し、水を除去することで得ることが好ましい。
【0046】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法において、マグネシウム金属の表面酸化皮膜をとり、反応性を高めるため、ヨウ素、臭素あるいは、これらを含む安価な化合物を添加することが好ましい。このような化合物の例としては、ヨウ化メチル、臭化メチル、ヨウ化エチル、臭化エチル等が好ましく挙げられる。
【0047】
また、触媒の使用量は、o−ブロモベンゾトリフルオロライド1モルに対し、0.01モル%〜20モル%を用いるのが好ましく、0.05%〜10モル%がさらに好ましい。触媒使用量を、o−ブロモベンゾトリフルオロライド1モルに対し、0.01モル%〜20モル%とすることにより、カップリング反応を効率良くかつ経済的に行うことができる。
【0048】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法において、カップリング反応の際に、触媒を用いる。好ましい触媒としては、Fe、Ag、Cu、Co、Zn、Ni、Pdから選ばれる少なくとも1つの金属またはその化合物が挙げられ、化合物としては、Fe、Ag、Cu、Co、Zn、Ni、Pdから選ばれる少なくとも1つの金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩が例示される。中でも塩化第一鉄(II)、塩化第二鉄(III)、臭化第一鉄、臭化第二鉄が好ましい。
【0049】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法は、カップリング反応を酸化剤の共存下で実施することが好ましい。酸化剤は、カップリング反応で還元された触媒を酸化し、再生するため、触媒のターンオーバー数が向上し、反応収率が向上する。
【0050】
酸化剤としては、取り扱いおよび生成物との分離の観点から、ハロゲン化脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数1〜5の物が好ましい。具体的には、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ブロモエタン、ジブロモエタン、トリブロモエタン、テトラブロモエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、クロロペンタン、ジクロロペンタン、ブロモプロパン、ジブロモプロパン、トリブロモプロパン、ブロモクロロメタン、ブロモクロロエタンなどが挙げられる。中でも好ましいのは、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモメタン、ブロモエタン、ジブロモエタン、ジブロモプロパンであり、さらに好ましくは、1,2-ジクロロエタンおよび/または1,2-ジクロロプロパンである。
【0051】
また、酸化剤の使用量は、o−ブロモベンゾトリフルオロライド1モルに対し、0.1モル倍量〜5モル倍量用いるのが好ましく、0.2モル倍量〜3モル倍量である。酸化剤の使用量が、o−ブロモベンゾトリフルオロライド1モルに対し、0.1モル倍量〜5モル倍量であると、酸化剤による触媒再生の効果が大きく、未反応の酸化剤が残存せず、目的物の単離精製が容易で、効率的である。
【0052】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法に用いる溶媒は、好ましくは、グリニャール試薬が生成しやすいエーテル系溶媒が好ましい。溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテル、メチル−ターシャリーブチルエーテル、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。中でも好ましいのは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテル、メチル−ターシャリーブチルエーテルである。
【0053】
また、溶媒の使用量は、好ましくは、o−ブロモベンゾトリフルオロライドに対し、0.5〜100モル倍量である。溶媒の使用量がo−ブロモベンゾトリフルオロライドに対し、0.5〜100モル倍量であると、グリニャール試薬の収率や生産性が高く、経済的なプロセスとなる。
【0054】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法において、カップリング反応の反応温度は、10〜100℃が好ましく、20〜70℃がさらに好ましい。反応温度が10〜100℃であると、反応がスムーズに進行し、反応が途中で停止することがなく、グリニャール試薬が反応する前に分解することがない。
【0055】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法では、カップリング反応の際に、ハロゲン化-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルが副生する。ファインケミカル、医農薬原料、樹脂・プラスチック原料、電子情報材料、光学材料などの原料として、本発明によって得られた2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを、副生したハロゲン化-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルと分離除去せずに用いると、最終製品の品質低下を引き起こす。すなわち純度低下、着色、強度低下、光学特性低下などの品質上の問題が発生する。
【0056】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法において、カップリング反応液から蒸留法により、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを単離取得する方法が好ましく用いられる。さらに好ましくは、蒸留前にカップリング反応液を、水、あるいは、酸性水と混合し、残存グリニャール試薬あるいは活性マグネシウム等を不活性化し、マグネシウム塩を水層に除去した後、二層分離した後、分液して得られた油層から蒸留単離する方法が用いられる。蒸留法は、好ましくは、単蒸留、精留、減圧蒸留、常圧蒸留が用いられ、より好ましくは、減圧蒸留が用いられる。
【0057】
反応で副生したハロゲン化−2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルをできる限り少なくすることが好ましい。2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルよりハロゲン化-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルの方が高沸点であるため、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを留出させ、ハロゲン化-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルをできる限り留出させずに、缶残等に残すなどの蒸留操作が好ましく用いられる。
【0058】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法は、得られた2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル中のハロゲン化-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル含量を0.01重量%〜20重量%にすることが好ましく、さらに好ましくは、0.01重量%〜5重量%である。ハロゲン化-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル含量を、0.01重量%〜20重量%とすることにより、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルから誘導される2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ジアミノビフェニルおよびこれから合成されるポリマーの純度、着色、強度、光学特性などの品質がより高く維持される。
【0059】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法では、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを1,2-ジクロロプロパン溶液中で、ジニトロ化して、晶析により2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを単離する。
【0060】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法の第二工程のニトロ化反応において、溶媒として、1,2-ジクロロプロパンを用いる。1,2-ジクロロプロパンは、国際がん研究機関(IARC)による発がん性評価で、グループ3(ヒトに対する発がん性については分類できない物質)に分類されており、従来ニトロ化溶媒として用いられている塩化メチレンよりも毒性が低いことから、環境上および作業上の問題が低減される。
【0061】
1,2-ジクロロプロパンの使用量は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル1モルに対し、0.5モル倍量〜100モル倍量用いるのが好ましく、3モル倍量〜20モル倍量である。1,2-ジクロロプロパンを、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル1モルに対し、0.5モル倍量〜100モル倍量用いることにより、効率的なジニトロ化反応が進行し、生産効率がよい。
【0062】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法におけるニトロ化剤は、硫酸と硝酸の混酸が一般的に用いられる。混酸は、硝酸1モルに対して硫酸1〜5モル倍であり、混酸中の水分量は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。混酸中の水分が10重量%以下であると、反応速度が低下せず好ましい。
【0063】
混酸の使用量は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルに対し、硝酸として、2モル倍〜5モル倍が好ましい。
【0064】
ニトロ化反応温度の好ましい範囲は、10℃〜100℃であり、さらに好ましくは、30℃〜70℃である。
【0065】
ニトロ化反応液から2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを取り出す方法は、例えば、反応液を油層と混酸層に分離するまで静置し、分液し、取得した油層をアルカリ洗浄および/または水洗浄を実施した後、溶媒である1,2-ジクロロプロパンを濃縮し、晶析により、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを取得する方法が好ましく用いられる。さらに高純度のものを得るために、アルコール溶媒、ハロゲン系溶媒、石油系溶媒を用いて、再結晶してもかまわない。
【0066】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法の第三工程は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを還元し、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを単離する工程である。
【0067】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法における2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルの還元方法は、金属触媒の存在下、水素を用いて行う方法が好ましく用いられる。水素は、分子状水素が好ましい。
【0068】
使用される金属触媒としては、一般的な還元触媒を用いることができ、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト、銅などを使用することができる。工業的にはパラジウム触媒を使用することが好ましい。これらの触媒は、金属の状態でも使用されるが、通常は、分離および回収再利用の点で有利な、カーボン、硫酸バリウム、シリカゲル、アルミナ、セライトなどの担体表面に担持させて用いられる。また、ニッケル、コバルト、銅などのラネー触媒としても用いられる。
【0069】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法における2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルの還元方法で用いられる触媒量は、原料の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルに対して、金属換算で、0.01〜10%重量であり、好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0070】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法における2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルの還元方法で用いられる反応溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセソルブ等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テロラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類およびN,N-ジメチルホルムアミド等も使用でき、特に、炭化水素または炭素数2以上の脂肪族アルコールを使用した場合、得られる2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの着色が少ないことから、好ましい。
【0071】
反応溶媒の使用量は、原料を懸濁させるか、あるいは完全に溶解させるに足りる量で充分であり、通常、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルに対して、1.0〜20重量である。
【0072】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法における2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルの還元反応の反応温度は、一般的には5〜120℃であり、好ましくは、20〜100℃である。
【0073】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法における2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルの還元反応の反応時の水素圧は、好ましくは、0.1〜15MPa、さらに好ましくは、0.3〜2MPaである。
【0074】
本発明の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法において、還元によって得られた2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを含有する反応液から、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジアミノビフェニルを単離する方法は、晶析法によって、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを単離することが好ましく用いられる。
【0075】
晶析法としては、例えば、触媒と反応液を濾別後、反応溶媒を留去し、濃縮して結晶を析出させ、固液分離する方法、あるいは、反応液に酸性水溶液を加え、塩を形成させ水に完溶させた後、水に不溶な不純物を濾別した後、アルカリで中和して、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを析出させ、固液分離する方法がある。
【0076】
さらに高純度化や着色低減のために、得られた結晶を有機溶媒に再溶解し、再結晶させてもよい。再結晶溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセソルブ等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テロラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類およびN,N-ジメチルホルムアミド等も使用でき、特に炭化水素または炭素数2以上の脂肪族アルコールを使用した場合、得られる2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの着色が少ないことから、好ましい。
【0077】
本発明の,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法により得られた2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルは、電子情報材料、光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で使用されており、安価かつ効率よく工業的に得られることの意義は大きい。
【0078】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0079】
以下の実施例及び比較例で用いている試薬類のメーカーグレードは、記載のない限りいずれも1級レベル以上に相当するものである。
【0080】
[実施例1]
テトラヒドロフラン252.4g(3.5mol;nacalai tesque社製)、マグネシウム粉末24.8g(1.02mol;中央工産社製)、を温度計付き1000ml反応器に投入し、系内を窒素置換しながら、撹拌した。エチルマグネシウムブロマイドを少量添加し、系内の水分を除去した。次に臭化エチル2.2g(0.02mol;nacalai tesque社製)を加えた。暫く撹拌し、発熱が起こることを確認後、40℃で1時間熟成した。次に反応液温度50℃に保ちながら、o-ブロモベンゾトリフルオライド225.0g(1.0mol)を滴下した。滴下終了後、50℃で3時間撹拌しながら、熟成した。熟成後にトルエン225.0gで希釈してグリニャール試薬を得た。グリニャール試薬の収率は、98%であった。
【0081】
次に、塩化鉄(III)3.2g(0.02mol;和光純薬社製)にトルエン112.5gを加えた液に、1,2-ジクロロプロパン113.0g(1.0mol;和光純薬社製)を加えた触媒含有溶液へ上記グリニャール試薬溶液を反応液温度50℃に保ちながら、滴下した。滴下終了後、50℃で3時間熟成を行った。o-ブロモベンゾトリフルオライドに対する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルの収率は、84%であった。
【0082】
[比較例1]
実施例1において、o-ブロモベンゾトリフルオライドをo-クロロベンゾトリフルオライドに変えた以外、同様に行った。o-クロロベンゾトリフルオライドに対する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルの収率は、60%であった。
【0083】
[実施例2]
実施例1で得られた反応液に、3重量%塩酸水溶液245.9gを滴下し、十分に撹拌後、静置し、分液した。取得した油を水洗し、再度分液した。o-ブロモベンゾトリフルオライドに対する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを含む油層を減圧濃縮により低沸成分を留去した後、蒸留を実施し、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル109.0g(純度:98%)を取得した。
【0084】
この2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル109.0gおよび1,2-ジクロロプロパン544.0gを1000mlの温度計付き反応器に投入し、撹拌した。これに、97%硝酸71.6g、97%硫酸297.4gを混合した混酸369.0gを反応温度35℃になるように冷却しながら滴下し、滴下終了後6時間熟成した。2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルの転化率100%、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジニトロビフェニルの選択率87%であった。混酸層を分離し、得られた油層を重曹水で1回、水で2回洗浄した。この油層を分取後、減圧濃縮し、メタノール218.0gを加えた。冷却後固液分離して、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジニトロビフェニル結晶109.0g(純度99%)を得た。
【0085】
次に、この2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジニトロビフェニル109.0gとイソプロパノール548gおよびエヌイーケムキャット製5%Pd/C(AER-TYPE:50%含水品)をステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を十分水素置換した後、反応圧が3MPaになるように水素で加圧し、反応温度50〜60℃で、1時間反応させた。
【0086】
反応後、触媒を濾別し、この反応液を減圧下で濃縮し、水を加え、5℃に冷却して、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの結晶を濾別した。60℃で3時間真空乾燥後、取得した2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルは、84.0g(純分換算)であり、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジニトロビフェニルに対する収率は、92%であった。
【0087】
この2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’−ジニトロビフェニル10gをメチルイソブチルケトン90gに溶かした10重量%溶液の色相(APHA比色法)は80であり、430nmの透過率は、92%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるビフェニル誘導体の製造方法において、
【化1】

(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体の
【化2】

(ただし、Aは、トリフルオロメチル基を表し、nは、1〜4の整数とする。)
臭素をマグネシウム金属と反応させ、グリニャール試薬に転化し、該グリニャール試薬同士を触媒存在下でカップリング反応させるビフェニルの製造方法。
【請求項2】
前記式(2)において、nが1である請求項1に記載のビフェニル誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)が、o-ブロモベンゾトリフルオライドである請求項1に記載の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルの製造方法。
【請求項4】
前記触媒が、Fe、Ag、Cu、Co、Zn、Ni、Pdから選ばれる少なくとも1つの金属又はその化合物である請求項1〜3に記載のビフェニル誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記カップリング反応が、酸化剤の共存下で行われる請求項1〜4のいずれかに記載のビフェニル誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、ハロゲン化脂肪族炭化水素である請求項5に記載のビフェニル誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化脂肪族炭化水素が、1,2-ジクロロエタンおよび/または1,2-ジクロロプロパンである請求項6に記載のビフェニル誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記カップリング反応の反応温度が、10〜100℃である請求項1〜7のいずれかに記載のビフェニル誘導体の製造方法。
【請求項9】
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法において、
(1)o-ブロモベンゾトリフルオライドをマグネシウム金属と反応させ、グリニャール試薬に転化し、該グリニャール試薬同士を触媒存在下でカップリング反応させて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを生成し、単離する第一工程、
(2) 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを1,2-ジクロロプロパン溶液中で、ジニトロ化して、晶析により2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを単離する第二工程、
(3) 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを還元し、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを単離する第三工程、
からなる2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法。
【請求項10】
前記第一工程において、カップリング反応後の反応液を、水または酸性水溶液と混合後、静置し、二層分離した後、分液取得した油層から、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを蒸留単離する請求項9に記載の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法。
【請求項11】
前記第二工程において、反応温度が、10℃以上100℃以下である請求項9または10に記載の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法。
【請求項12】
前記第三工程において、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジニトロビフェニルを金属触媒存在下、水素により、接触還元し、晶析により、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルを単離する請求項9〜11のいずれか記載の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法。
【請求項13】
前記第三工程において、反応溶媒として、炭化水素または炭素数2以上の脂肪族アルコールを用いる請求項9〜12のいずれか記載の2,2’-ビス(トリフルオロメチ
ル)-4,4’-ジアミノビフェニルの製造方法。

【公開番号】特開2008−255037(P2008−255037A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97359(P2007−97359)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】