説明

ビリ防止装置及びそれを備える自動ワインダ

【課題】糸継時において給糸ボビンから解舒される糸に付与するテンションを精密かつ容易に調整できる自動ワインダのビリ防止装置を提供する。
【解決手段】キンクプリベンタ17は、給糸ボビン21に接触可能な接触部80と、この接触部80を移動させるためのステッピングモータ41と、を備える。また、キンクプリベンタ17は、ステッピングモータ41の出力軸44に取り付けられる回動部43と、この回動部43と前記接触部80との間に設けられた捩りバネ42と、を備えている。回動部43は、ステッピングモータ41の回転が伝達される出力軸44と一体的に回転する。前記接触部80は前記出力軸44に対し回動可能に取り付けられている。ステッピングモータ41が前記回動部43を回動させることによって、接触部80が捩りバネ42の付勢力によって回動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンから給糸される糸に発生するビリを防止するためのビリ防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動ワインダにおいて、巻取作業中に糸切れや糸切断等が発生した場合や、新しい給糸ボビンが供給された場合には、巻取ボビン側の上糸と給糸ボビン側の下糸とを糸継ぎする必要がある。これを実現するために、自動ワインダは、巻取ボビン側の糸端を捕捉して糸継装置に導くための上糸捕捉案内装置と、給糸ボビン側の糸端を捕捉して糸継装置へ導くための下糸捕捉案内装置と、を備える構成をとることがある。前記上糸捕捉案内装置及び下糸捕捉案内装置は、例えば、その先端から糸を吸引可能な回動アームとして構成することができる。
【0003】
この種の自動ワインダは、例えば特許文献1に開示される。特許文献1の自動ワインダは、前記上糸捕捉案内装置としてのサクションアームと、前記下糸捕捉案内装置としての中継ぎパイプと、を備えている。
【0004】
この自動ワインダにおいて、巻取ボビンを回転させて行う巻取作業中に糸切れや糸切断等が発生した場合、上糸は、慣性回転する巻取ボビン側に巻き取られ、下糸は適宜のトラップ手段に保持される。そして、糸継作業が以下のようにして行われる。即ち、回転を停止した巻取ボビンを逆回転させ、解舒される上糸の糸端を前記サクションアームの先端で吸引することにより捕捉し、これを糸継装置へ導く。また、これとほぼ同時に、前記トラップ手段に保持されている下糸の糸端を中継ぎパイプの先端で吸引することによって捕捉し、下糸を給糸ボビンから解舒させつつ、糸継装置へ導く。その上で、上糸と下糸の糸端を糸継装置で糸継ぎし、巻取作業を再開する。
【0005】
一方、給糸ボビンの糸がすべて巻取ボビンに巻き取られ、新しい給糸ボビンが供給された場合、糸継作業は以下のようにして行われる。即ち、回転を停止した巻取ボビンを逆回転させ、解舒される上糸の糸端を前記サクションアームの先端で吸引することにより捕捉し、これを糸継装置へ導く。また、これとほぼ同時に、新しい給糸ボビン側の糸(下糸)の糸端を空気流によって吹き上げ、これを中継ぎパイプの先端で吸引することによって捕捉する。そして、下糸を給糸ボビンから解舒させつつ、その糸端を中継ぎパイプによって糸継装置へ導く。その上で、上糸と下糸の糸端を糸継装置で糸継ぎし、巻取作業を再開する。
【0006】
ところで、以上の糸継作業において、給糸ボビンから解舒される糸にビリが発生することがある。ここでいうビリとは、糸に生じる不具合の1つであり、糸がちぢれ、螺旋状に絡み合っている状態である。このビリは、下糸を解舒する際にテンションフリーで巻き出すと発生する不具合である。
【0007】
そこで、前記特許文献1の自動ワインダは、糸にテンションを付与することによって、このようなビリの発生を防止するためのキンクプリベンタ(ビリ防止装置)を備えている。このビリ防止装置は、糸切れの際に、中継ぎパイプによる給糸パッケージ側の糸端の吸引作業の開始以前に、ロータリーソレノイドによってビリ防止レバーを給糸ボビンに当接させておく構成となっている。特許文献1のビリ防止装置では、前記ビリ防止レバーの当接状態において、中継ぎパイプに給糸パッケージ側の糸端を吸引するとともに、ビリ防止レバーが給糸パッケージを押さえ付けている力を、中継ぎパイプの吸引力によって給糸パッケージから糸が引き出されない程度の押さえ付け力とされている。
【特許文献1】特開平11−49433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1のビリ防止装置は、ロータリーソレノイドでビリ防止レバーを給糸パッケージに当接させる構成であるために、その押圧力の調整が困難であった。特に、近年の多品種少量生産のニーズに応えるために、自動ワインダでは巻き取る対象の糸種を頻繁に変更することも多くなっているが、特許文献1の構成ではビリ防止レバーの押圧力を状況に応じて変更することができない。従って、例えば、細い糸の場合は押圧力が強すぎて糸切れもしくは損傷等の原因となる一方、太い糸の場合は押圧力が弱すぎて糸が必要以上に解舒され、適切な糸継作業ができない場合があった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、糸継作業時において糸に付与するテンションの調整を精密かつ柔軟に行うことのできる自動ワインダのビリ防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、給糸ボビンの少なくとも一部に接触することによって、前記給糸ボビンから解舒される糸にテンションを付与し、ビリ発生を防止するためのビリ防止装置の以下の構成が提供される。即ち、このビリ防止装置は、前記給糸ボビンに接触可能な接触部と、前記接触部を移動させるためのステッピングモータと、を備える。
【0012】
これにより、回転角度を正確に制御できるステッピングモータを使用して、給糸ボビンに対する接触部の押圧を精密に制御することができる。また、ステッピングモータの回転角度を変更すれば接触部の給糸ボビンへの押圧力を調節できるので、糸継作業時の糸のテンション調整作業が容易になり、作業効率が向上する。
【0013】
前記のビリ防止装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このビリ防止装置は、前記ステッピングモータの回転が伝達される軸部と、前記軸部に取り付けられ、前記軸部と一体的に回転する回動部と、前記回動部と前記接触部との間に設けられたバネ部と、を備える。また、前記接触部は前記軸部に回動可能に取り付けられる。そして、前記ステッピングモータが前記回動部を回動させることによって、前記接触部が前記バネ部の付勢力によって回動される。
【0014】
これにより、回動部の回動によってバネ部を変形させ、これを復元しようとするバネ力によって、接触部を給糸ボビンに安定して押圧することができる。また、回動部の回動角度をステッピングモータで制御することで、前記バネ部の変形量を調整して、接触部が給糸ボビンに押圧される力を精密かつ容易に制御できる。
【0015】
前記のビリ防止装置においては、前記バネ部は捩りバネであることが好ましい。
【0016】
これにより、回動部の回動によって接触部による給糸ボビンへの押圧力を調節可能なコンパクトな構成を実現することができる。
【0017】
前記のビリ防止装置においては、前記接触部を前記給糸ボビンに接触させるように前記ステッピングモータを制御するとともに、前記接触部を前記給糸ボビンに押圧させるための前記ステッピングモータの回転角度を変更可能な制御部を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、制御部を利用してステッピングモータの回転角度を電気的に調整できるので、接触部による給糸ボビンへの押圧力を容易に調整できる。
【0019】
前記のビリ防止装置においては、前記接触部には、前記給糸ボビンに接触可能なブラシ部が備えられていることが好ましい。
【0020】
これにより、ブラシ部が給糸ボビンに対し広い面積で接触して押圧することができる。従って、接触部と給糸ボビンとの間の糸に適切なテンションを安定して付与でき、ビリの発生を効果的に防止できる。
【0021】
また、本発明の第2の観点によれば、前記のビリ防止装置を備える自動ワインダが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0023】
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0024】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0025】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20をトラバースさせるように構成している。
【0026】
前記クレードル23には、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、糸切れ時にクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によってクレードル23が上昇するのと同時に、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0027】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、バルーンコントローラ(解舒補助装置)12と、テンション付与装置13と、糸継装置としてのスプライサ装置14と、クリアラ(糸太さ検出器)15と、を配置した構成となっている。
【0028】
前記ワインダユニット10は、図1に示すように、給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備えている。なお、キンクプリベンタ17を詳細に図示するため、図2ではマガジン式供給装置60の図示を省略している。このマガジン式供給装置60は、図1に示すように、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0029】
このボビン収納装置62はマガジンポケット63を備え、このマガジンポケット63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。この収納孔のそれぞれには、供給ボビン70を傾斜姿勢でセットすることができる。前記マガジンポケット63は図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能であり、この間欠駆動とマガジンポケット63が備える図略の制御弁とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された供給ボビン70は、傾斜姿勢のまま給糸ボビン保持部71へ導かれる。
【0030】
給糸ボビン保持部71は図略の回動手段を備えており、供給ボビン70を前記ボビン供給路から受け取った後、当該供給ボビン70を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、供給ボビン70が巻取ユニット本体16の下部に給糸ボビン21として適切に供給され、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。
【0031】
バルーンコントローラ12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0032】
また、バルーンコントローラ12近傍には、糸継作業時に発生するビリを防止するためのキンクプリベンタ(ビリ防止装置)17が配置されている。なお、このキンクプリベンタ17の詳細については後述する。
【0033】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリー式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0034】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0035】
クリアラ15は、糸20の太さを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出するように構成されており、このクリアラ15のセンサからの信号をアナライザ52(図2)で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。前記クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0036】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する第1中継パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する第2中継パイプ26と、が設けられている。第1中継パイプ25の先端には吸引口32が形成され、第2中継パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。2つの中継パイプ25,26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0037】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、第1中継パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2中継パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30の表面上に存在する上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、第2中継パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内するようになっている。
【0038】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0039】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸側に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された糸20が前記巻取ボビン22に巻き取られることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0040】
次に、図3及び図4を参照してキンクプリベンタ17の構成について説明する。図3は、キンクプリベンタ17を示した側面図である。図4はキンクプリベンタ17の待機状態を示した平面図である。
【0041】
図3及び図4に示すように、前記キンクプリベンタ17は、給糸ボビン21に接触して糸に一定のテンションを付与するための接触部80と、この接触部80を回動させるためのステッピングモータ41と、を備える。接触部80は、回動アーム45と、この回動アーム45の先端部に備えられるブラシ部31と、を備える。
【0042】
このブラシ部31は、円弧状に並べて植えられた多数のブラシ毛を備えている。これらのブラシ毛は適宜の弾性を有しており、また、先端が斜め上を向くように配置されている。従って、回動アーム45の先端部が前記給糸ボビン21にある程度近づくと、前記ブラシ毛の先端が適宜変形しながら当該給糸ボビン21の芯管上部に接触し、その外周面の少なくとも一部を押圧することができる。なお、中継ぎパイプ10の吸引力により給糸ボビン21から必要以上に糸が引き出され無駄糸が多くなることを防ぐため、ブラシ部31が給糸ボビン21の芯管上部を押圧する力は、中継パイプ25に吸引されている糸端が中継パイプ25の吸引力により、給糸ボビン21から糸が引き出されない程度の力で調整される。また、給糸ボビン21の芯管上部をブラシ部31が押圧する力は、上述したように糸の給糸ボビン21からの過剰な引出しを防止し、ビリの発生を防止できる範囲で、なるべく小さくなるように調整される。このような押圧力の調整もステッピングモータ41で精密に行うことができる。
【0043】
前記ステッピングモータ41の出力軸(軸部)44は上下方向に配置されるとともに、その先端が上方に突出している。前記回動アーム45の基端部には図略の挿通孔が形成され、この挿通孔にステッピングモータ41の出力軸44が挿通するように構成されている。回動アーム45は、ステッピングモータ41の出力軸44に対して相対回転可能となっている。
【0044】
ステッピングモータ41の出力軸44の先端部には回動部43が固定され、この回動部43は前記出力軸44と一体的に回転するよう構成されている。この回動部43にはストッパ47が突出状に一体形成されており、このストッパ47は前記回動アーム45の側面に当接可能に構成されている。また、キンクプリベンタ17は、前記回動部43と前記回動アーム45を弾性的に連結するための捩りバネ42を備える。前記出力軸44は、この捩りバネ42のコイル部を挿通している。
【0045】
前記捩りバネ42のバネ線の一端は前記回動部43に係止され、他端は前記回動アーム45に係止されている。これによって捩りバネ42は付勢力を発生し、この付勢力は、前記回動アーム45を回動部43に対して図4の反時計回りに相対回転させるように作用する。従って、図4に示す待機位置では、前記回動アーム45は、その側面に前記回動アーム45のストッパ47を接触させた状態で静止している。
【0046】
図2に示すように、ステッピングモータ41はステッピングモータ制御部51に接続されており、このステッピングモータ制御部51がステッピングモータ41に駆動パルス信号を出力してステッピングモータ41を駆動するようになっている。ステッピングモータ制御部51はユニット制御部50に接続されており、スプライサ装置14、クリアラ15、バルーンコントローラ12等の各部の制御とキンクプリベンタ17の制御を連動させることができる。
【0047】
また、本実施形態の自動ワインダは操作部90を備えており、前記ユニット制御部50は操作部90に接続されている。この操作部90をオペレータが操作することによって、回動アーム45を前記給糸ボビン21に押圧させて糸のビリを防止するためのステッピングモータ41の回転角度(言い換えれば、接触部80の給糸ボビン21に対する押圧力)を、例えば角度の数値を入力することで設定することができる。
【0048】
本実施形態の自動ワインダにおいては、前記操作部90はそれぞれのワインダユニット10に備えられている。これにより、必要な錘のキンクプリベンタ17のみについてステッピングモータ41の回転角度を調整することができる。ただし、前記操作部を、複数錘のワインダユニット10を統括的に管理する前述の機台制御装置に備える構成としても良い。この場合、各錘のキンクプリベンタの調整を操作部によって個別的に行うことが可能に構成すると、上記と同様に、必要な錘だけのキンクプリベンタの調整を行うことができる。
【0049】
次に図4、図5及び図6を参照してキンクプリベンタ17のビリ防止方法に関して説明する。図5はキンクプリベンタ17のブラシ部31が給糸ボビン21に接触している様子を示す平面図である。図6は、ブラシ部31が給糸ボビン21に押圧している状態で、給糸ボビン21から糸が解舒される様子を示す斜視図である。
【0050】
ワインダユニット10が巻取作業を行っているとき、ステッピングモータ制御部51はステッピングモータ41を制御し、前記回動部43を図4に示す位置で静止させる。これに伴い、前記回動アーム45は前記捩りバネ42の作用によって、前記回動部43のストッパ47に接触した状態で静止する。これにより接触部80は図4に示す待機位置とされ、この状態では回動アーム45のブラシ部31は給糸ボビン21に接触せず、十分に離間した位置にある。従って、バルーンコントローラ12の規制部材40を移動してバルーンをコントロールするときに前記回動アーム45等が邪魔にならない。
【0051】
一方、糸が切れる等してスプライサ装置14による糸継作業が必要になると、ユニット制御部50はバルーンコントローラ12の規制部材40を上方へ退避させた上で、ステッピングモータ制御部51に動作信号を送信する。ステッピングモータ制御部51は、前記動作信号を受信すると、駆動パルス信号をステッピングモータ41に送信する。これにより、ステッピングモータ41はパルス数に応じた角度だけ出力軸44を回転させ、回動部43が回動する。なお、このときのステッピングモータ41の回転角度は、前記操作部90によって設定された角度である。この回動部43の回動に伴い、当該回動部43に捩りバネ42を介して連結されている回動アーム45も追従して回動する。
【0052】
やがて、回動アーム45の先端側に取り付けられたブラシ部31が、給糸ボビン21の上端部に接触する。これ以降は回動アーム45の回動が給糸ボビン21によって阻止されるので、回動部43を更に回動させると捩りバネ42のバネ線の両端が拡げられるように変形し、捩りバネ42のバネ力が徐々に増大する。
【0053】
図5には、回動アーム45のブラシ部31が給糸ボビン21に接触してから、更に回動部43を角度Aだけ回動させた接触状態が示されている。この状態(図5及び図6に示す接触部80が接触位置にあるとき)では、捩りバネ42のバネ力によって回動アーム45が給糸ボビン21側に押し付けられ、ブラシ部31が給糸ボビン21の上端の芯管に接触している。
【0054】
これにより、糸継作業のために第1中継パイプ25によって給糸ボビン21側の糸を捕捉してスプライサ装置14へ案内する際に、給糸ボビン21から解舒される糸に対して適宜のテンションを付与してビリを防止するとともに、給糸ボビン21からの糸の解舒量が過大にならないよう調節して糸の無駄を防止することができる。
【0055】
図5及び図6の状態において、ブラシ部31が給糸ボビン21を押圧する力は、接触部80が給糸ボビン21に接触した時点からの回動部43の回動角(上記の角度A)が大きくなるに従って増大する。この点、本実施形態のキンクプリベンタ17では、ステッピングモータ41の回転角度の設定値を前記操作部90で変更することができる。従って、ブラシ部31の給糸ボビン21に対する押圧力(ひいては、解舒される糸に付与するテンション)を簡単に調整することができる。例えば、径の細い糸種の糸を自動ワインダで巻き取る場合は、前記ステッピングモータ41の回転角度が小さくなるように調整することで糸切れを防止し、径の太い糸種であれば、前記回転角度が大きくなるように調整することで糸継作業を円滑に行うことができる。また、前述したように、ブラシ部31が給糸ボビン21を押圧する力を、中継パイプ25の吸引口32によって給糸ボビン21から糸が引き出されない程度の押圧力に調整する。これにより、給糸ボビン21から引き出される無駄糸を少なくすることができる。
【0056】
更に、長期の使用によって捩りバネ42がヘタリを生じ、バネ力が低下して回動アーム45の押圧力が不十分になったとしても、その分だけ前記角度Aを大きくするようにステッピングモータ41の回転角度を制御すれば、回動アーム45の押圧力を回復させて、糸にテンションを適切に付与することができる。従って、捩りバネ42の交換や煩雑な調整作業を省略することができる。
【0057】
前記回動部43の回動角度は、ステッピングモータ41に送信するパルス数を変更することにより精密に調整することができる。従って、給糸ボビン21から解舒される糸のテンションを簡単に微調整することができる。更に、捩りバネの交換等の機械的な構成の変更を伴わずに接触部80の押圧力を電気的に変更できるので、例えば自動ワインダの稼動中に押圧力を調整可能な構成とすることも容易である。
【0058】
以上に示すように、本実施形態のキンクプリベンタ17は、給糸ボビン21の少なくとも一部に接触することによって前記給糸ボビン21から解舒される糸にテンションを付与し、これによってビリ発生を防止するように構成されている。また、このキンクプリベンタ17は、給糸ボビン21に接触可能な接触部80と、この接触部80を移動させるためのステッピングモータ41と、を備える。
【0059】
この構成により、回転角度を正確に制御できるステッピングモータ41を使用して、給糸ボビン21への押圧を精密に制御することができる。また、ステッピングモータ41の回転角度を変更すれば接触部80の給糸ボビン21への押圧力を調節できるので、糸継作業時の糸のテンション調整作業が容易になり、作業効率が向上する。
【0060】
また、本実施形態のキンクプリベンタ17は、前記ステッピングモータ41の回転が伝達される出力軸44と、この出力軸44に取り付けられ出力軸44と一体的に回転する回動部43と、前記回動部43と接触部80との間に設けられた捩りバネ42と、を備える。そして、接触部80は出力軸44に回転自在に取り付けられており、ステッピングモータ41によって回動部43が回動することによって、接触部80が捩りバネ42の付勢力によって回動される。
【0061】
この構成により、回動部43の回動によって捩りバネ42を変形させ、それを復元しようとするバネ力によって、接触部80を給糸ボビン21に安定して押圧することができる。また、回動部43の回動角度をステッピングモータ41で制御することで、捩りバネ42の変形量を調整して、接触部80が給糸ボビン21に押圧される力を精密かつ容易に制御できる。
【0062】
また、本実施形態のキンクプリベンタ17は、回動部43と接触部80とが捩りバネ42によって接続されている。
【0063】
この構成により、回動部43の回動によって接触部80による給糸ボビン21への押圧力を調節可能な構成を、簡素かつコンパクトに実現することができる。
【0064】
また、本実施形態のキンクプリベンタ17はステッピングモータ制御部51を備えており、このステッピングモータ制御部51は、接触部80を給糸ボビン21に接触させるようにステッピングモータ41を制御するように構成している。また、このステッピングモータ制御部51は、接触部80を給糸ボビン21に押圧させるためのステッピングモータ41の回転角度を変更することができる。
【0065】
この構成により、ステッピングモータ制御部51を利用してステッピングモータ41の回転角度を電気的に調整できるので、押圧力を容易に調整できる。
【0066】
また、本実施形態のキンクプリベンタ17においては、前記接触部80には、前記給糸ボビン21に接触可能なブラシ部31が備えられている。
【0067】
この構成により、ブラシ部31が給糸ボビン21に対し広い面積で接触して押圧することができる。従って、接触部80と給糸ボビン21との間の糸に適切なテンションを安定して付与でき、ビリの発生を効果的に防止できる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0069】
上記実施形態のキンクプリベンタ17に備えられている捩りバネ42を省略し、例えばステッピングモータ41の駆動を接触部80に直接伝達して回動させるように変更することができる。
【0070】
前記ステッピングモータ制御部51を省略し、ユニット制御部50が駆動パルス信号をステッピングモータ41に直接送信する構成に変更することができる。
【0071】
上記実施形態では、前記ステッピングモータ41の出力軸44に別部品としての回動部43を固定している。しかしながら、例えばステッピングモータ41の出力軸44を加工することで、当該出力軸44に前記回動部を一体的に形成するように変更することができる。
【0072】
回動部43をステッピングモータ41の出力軸44に直接固定することに代えて、例えば前記出力軸44を減速機構の入力軸と連結した上で、当該減速機構の出力軸に前記回動部を固定するように変更することができる。
【0073】
また、前記回動部43と接触部80(回動アーム45)とを、捩りバネ42に代えて、引張バネ、板バネ等の各種のバネやゴム等の弾性体を介して接続するように変更することができる。
【0074】
上記実施形態で接触部80に備えられているブラシ部31を省略し、例えば前記回動アーム45が給糸ボビン21を直接押圧する構成に変更することができる。
【0075】
上記実施形態では、ステッピングモータ41の回転角度(回動部43の回動角度)を、操作部90で数値を直接入力することにより設定するように構成している。しかしながら、この構成に代えて、予め糸種に応じた回転角度をユニット制御部50等に記憶させておき、操作部90に表示される糸種を選択することによって、記憶された角度に相当する数の駆動パルスをステッピングモータ41に送信する構成とすることができる。
【0076】
上記実施形態のワインダユニット10は、マガジン式供給装置60によって給糸ボビン21を供給しているが、この構成に限らず、例えば、給糸ボビン21をセットしたトレーを適宜の経路に沿って搬送することでワインダユニット10に供給する構成に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係るワインダユニットの側面図。
【図2】ワインダユニットの概略的な構成を示す正面図。
【図3】キンクプリベンタの正面図。
【図4】待機状態のキンクプリベンタの様子を示した平面図。
【図5】接触状態のキンクプリベンタの様子を示した平面図。
【図6】糸継時において、給糸ボビンから解舒される糸にキンクプリベンタが作用している様子を示す斜視図。
【符号の説明】
【0078】
10 ワインダユニット
14 スプライサ装置
17 キンクプリベンタ(ビリ防止装置)
31 ブラシ部
41 ステッピングモータ
42 捩りバネ
43 回動部
44 出力軸(軸部)
45 回動アーム
80 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンの少なくとも一部に接触することによって、前記給糸ボビンから解舒される糸にテンションを付与し、ビリ発生を防止するためのビリ防止装置において、
前記給糸ボビンに接触可能な接触部と、
前記接触部を移動させるためのステッピングモータと、
を備えることを特徴とするビリ防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビリ防止装置であって、
前記ステッピングモータの回転が伝達される軸部と、
前記軸部に取り付けられ、前記軸部と一体的に回転する回動部と、
前記回動部と前記接触部との間に設けられたバネ部と、
を備え、
前記接触部は前記軸部に回動可能に取り付けられ、
前記ステッピングモータが前記回動部を回動させることによって、前記接触部が前記バネ部の付勢力によって回動されることを特徴とするビリ防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載のビリ防止装置であって、
前記バネ部は捩りバネであることを特徴とするビリ防止装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のビリ防止装置であって、
前記接触部を前記給糸ボビンに接触させるように前記ステッピングモータを制御するとともに、前記接触部を前記給糸ボビンに押圧させるための前記ステッピングモータの回転角度を変更可能な制御部を備えることを特徴とするビリ防止装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のビリ防止装置であって、
前記接触部には、前記給糸ボビンと接触可能なブラシ部が備えられていることを特徴とするビリ防止装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のビリ防止装置を備える自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161327(P2009−161327A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2027(P2008−2027)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】