説明

ピアツーピア接続要求機能を有する電話制御装置

【課題】内線通話により通話チャネルが不足する状況でも、外線からの着信または外線への発信が可能な電話制御装置を提供する。
【解決手段】外線からの着信または外線への発信の際、空き通話チャネル監視部16はIP内線インタフェース部13の空き通話チャネルを監視し、通話チャネルが不足の場合に、P2P移行/復帰制御部14は本装置1経由で相互に内線通話中のIP内線端末に対して本装置1を介さないピアツーピア接続へ移行させて、外線通話に必要な通話チャネルを確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外線とIP( Internet Protocol )内線を収容する構内交換装置やボタン電話主装置等の電話制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IP網の高速化と低コスト化に伴い、IP内線を収容する電話制御装置(例えば、IP−PBXやIPボタン電話主装置)が普及しつつある。
通常、この種の電話制御装置では、内蔵する内線インタフェースユニットが制御可能な通話チャネルの数Mに対して、N(N>M)台のIP内線端末がLAN(Local Area Network)を介して繋がる。従って、IP内線端末の発着信に際して、IP内線インタフェースユニットが制御する通話チャネルに空きチャネルが無いとチャネルビジーとなる。
【0003】
これを改善する技術として、インタフェースユニットを複数用意し、第1のインタフェースユニットに着信呼が到来し、第1のインタフェースユニットに空きチャネルが無い場合に、中央制御部を介さないで着信呼を第2のインタフェースユニットに転送する技術がある(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の技術は、電話制御装置の中央制御部の処理を軽減する効果はあるが、インタフェースユニットを増設するものであり経済的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−124037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、内線通話により通話チャネルが不足な状況であっても、外線からの着信または外線への発信が可能な電話制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明は、外線およびIP内線を収容し前記外線と前記IP内線との間で音声データを交換すると共に、前記IP内線と接続された複数のIP内線端末を制御する電話制御装置において、前記IP内線に形成された複数の通話チャネルのいずれかを介して前記IP内線端末と音声データを送受信する内線通信手段と、前記内線通信手段により音声データを送受信する2以上のIP内線端末の音声データを相互に中継して内線通話させる内線通話手段と、前記複数の通話チャネルに空き通話チャネルが有るか否かを監視するチャネル監視手段と、所定のIP内線端末に対して自電話制御装置を介さないピアツーピア接続への移行を要求するピアツーピア移行要求手段と、を有し、前記外線からの着信または前記外線への発信があって、前記チャネル監視手段が空き通話チャネルの不足を検知した場合に、前記ピアツーピア移行要求手段は、前記内線通話手段により相互に内線通話中のIP内線端末に対してピアツーピア接続への移行を要求することを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明の電話制御装置において、前記ピアツーピア接続に移行したIP内線端末に対して前記内線通話手段による内線通話への復帰を指示する復帰指示手段をさらに有し、前記チャネル監視手段が2以上の空き通話チャネルの存在を検知した場合に、前記復帰指示手段は、前記ピアツーピア接続に移行したIP内線端末に対して前記内線通話手段による内線通話への復帰を指示することを特徴とする。
【0008】
さらに、第3の発明は、第1または第2の発明の電話制御装置において、優先して着信させるべき特定の通信相手または優先して発信させるべき特定のIP内線端末の電話番号に係るアドレス情報を登録する特定アドレス登録手段をさらに有し、前記外線からの着信または前記外線への発信が前記特定アドレス登録手段に登録されたアドレス情報に係る着信または発信でないならば、前記チャネル監視手段が空き通話チャネルの不足を検知した場合であっても、前記ピアツーピア移行要求手段は前記内線通話中のIP内線端末に対してピアツーピア接続への移行を要求しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内線通話により通話チャネルが不足の状態であっても、外線からの着信または外線への発信が可能な電話制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】・・・本発明に係る電話制御装置を含むシステム構成図
【図2】・・・本発明に係る電話制御装置のブロック構成図
【図3】・・・本発明に係るシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明に係る電話制御装置の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る実施形態の電話制御装置(以下、本装置と略す)1を含むシステム構成図である。本装置1は、IP回線に対応する構内交換機(IP−PBX)やボタン電話の主装置であって、IP外線3と、N台のIP内線端末2(2a〜2n)が繋がっているIP内線4を収容し、IP外線3とIP内線4との間およびIP内線間4で音声データの交換処理を実行する。
【0012】
IP内線端末2は、IP対応のIP電話機やIP通話機能を有するパソコン(ソフトホン)等の電話端末であって、IPパケットによりデジタル符号化された音声データを送受信する。このIP内線端末2は、IP内線4の通話チャネルを介して本装置1と音声データを送受信して外線または他のIP内線端末2と通話する。また、このIP内線端末2は、本装置1を介さないピアツーピア(以下、P2Pと略す)接続機能を具備し、他のIP内線端末2との間で直接通話することも可能である。
【0013】
IP外線3は、WAN(Wide Area Network)へのアクセス回線であり、例えば、光ファイバ,ADSL,ISDN等の加入者回線である。なお、外線は、IP外線に限定ではなく、アナログ回線やISDN回線等の一般的な電話回線であってもよい。
【0014】
IP内線4は、イーサネット(登録商標)等の有線LANまたは無線LANであり、IP内線4の帯域内に、音声データを含むRTP(Real−time Transport Protocol)パケットを通す通話チャネルが複数形成される。通話チャネル数の上限はLANの帯域、または本装置1のデータ交換処理能力により制限される。例えば、100MbpsのLAN帯域を全てIP内線として使用した場合、確保できる通話チャネル数は約200チャネル程度である。
【0015】
図2は、本装置1の内部ブロック構成図であって、10は本装置1の全体を制御する主制御部、11は通信に係る制御を実行する通信制御部、12はIP外線3と繋がるIP外線インタフェース部、13はIP内線4と繋がるIP内線インタフェース部、14はP2P移行/復帰制御部、15は特定アドレス登録部、16は空き通話チャネル監視部である。
【0016】
通信制御部11は、IP外線インタフェース部12とIP内線インタフェース部13との間で、音声データの交換に係る通信処理および交換処理を実行する。
【0017】
P2P移行/復帰制御部14は、通信制御部11からの指示に従って、通話チャネルを使用し本装置1経由で相互に内線通話中のIP内線端末へP2P接続への移行を指示する。またはP2P接続へ移行してピアツーピアで通話中のIP内線端末へ通話チャネルを使用する元の内線通話への復帰を指示する。
【0018】
特定アドレス登録部15は、優先して着信させるべき通信相手または優先して発信させるべきIP内線端末2の電話番号に係るアドレス情報を登録する手段である。IP外線3からの全ての着信またはIP外線3への全ての発信を内線通話より優先するのであれば、この特定アドレス登録部15は無くても良い。
【0019】
空き通話チャネル監視部16は、IP内線インタフェース部13の空き通話チャネルを監視し、その空きの有無または空きの不足を主制御部10へ通知する。
【0020】
図3は、本発明に係るシーケンス図であって、IP内線端末2aとIP内線端末2bの間で内線通話をしている最中に、IP内線端末2c宛の着信があった場合の例であり、2a,2b,2c以外のIP内線端末の動作シーケンスについては省略している。なお、破線で示すS340のシーケンスはIP内線端末2cからの外線発信要求の場合であり、後で説明する。
【0021】
以下、図2と図3を併用して、本装置1の動作を説明する。IP内線端末2aとIP内線端末2bがIP内線4の通話チャネルaと通話チャネルbを使用して本装置1で折返す内線通話をしている最中に(S301,S302)、IP外線3からIP内線端末2c宛の着信があった場合(S303)、本装置1の空き通話チャネル監視部16はIP内線インタフェース部13に空き通話チャネルが有るかをチェックし、空き通話チャネルが有る場合(S304,Yes)、通常の着信処理を実行する(S305)。通常の着信処理に係るシーケンスの説明は省略する。
【0022】
空き通話チャネルが無い場合(S304,No)、主制御部10へ空き通話チャネルが無い旨を通知する。主制御部10は、各IP内線端末2の動作状態を管理しており、空き通話チャネルが無い旨を通知された場合に、内線通話をしているIP内線端末2をサーチし、通話チャネルaと通話チャネルbを使用して相互に内線通話しているIP内線端末2aとIP内線端末2bの存在を検知する。
【0023】
また、主制御部10は、特定アドレス登録部15を参照して、S303の着信の発信元または着信先が特定の電話番号に係るアドレスであるか否かを判定する(S306)。特定アドレスでなければ(S306,No)、ビジー信号を当該着信(S303)の発信元へ返す(S307)。なお、特定アドレス登録部15は、優先度の高い重要な顧客等の通信相手のアドレス、または特定の担当者や緊急通報等の特定のIP内線端末のアドレスを登録する手段であり、IP外線3からの全ての着信またはIP外線3へ全ての発信を内線通話より優先するのであれば、この特定アドレス登録部15は無くても良く、その場合、S306のステップは省略できる。
【0024】
S306でYesの場合、主制御部10は、IP内線端末2cとの通話チャネルを確保するために、通信制御部11およびP2P移行/復帰制御部14を介してIP内線端末2aとIP内線端末2bへP2P接続への移行を指示し(S310,S311)、内線通話に使用されている通話チャネルaと通話チャネルbを開放させる。P2P接続への移行を指示されたIP内線端末2aとIP内線端末2bはP2P接続への移行処理を実行する(S312,S313)。P2P接続への移行を完了したIP内線端末2aとIP内線端末2bは本装置1を介さないP2P接続による相互通話を開始し(S314)、P2P接続へ移行完了したことを本装置1へ通知する(S315,S316)。
【0025】
ここで、このP2P接続への移行処理(S312,S313)について説明する。例えば、SIP(Session Initiatioin Protocol)の場合、P2P移行/復帰制御部14はIP内線端末2aに対し現在の接続相手先であるIP内線4からIP内線端末2bへ切替えるための指示(IP内線端末2bのIPアドレスと音声ポート番号)をINVITEメソッドで送信し、同時に、P2P移行/復帰制御部14はIP内線端末2bに対し現在の接続相手先であるIP内線4からIP内線端末2aへ切替えるための指示(IP内線端末2aのIPアドレスと音声ポート番号)をINVITEメソッドで送信する。IP内線端末2aとIP内線端末2bはINVITEメソッドで指定されたIPアドレスと音声ポート番号で互い音声パケットを送受信することによりP2P接続へ移行する。
【0026】
なお、P2P接続へ移行した後も、状態監視や制御コマンドを授受する制御チャネルは張られたままであり、主制御10はP2P接続への移行したIP内線端末2aとIP内線端末2bの動作状態を管理できる。
【0027】
P2P接続への移行完了を通知された通信制御部11は、通話チャネルaと通話チャネルbを空きとし、IP内線端末2cを呼出し(S320)、IP内線端末2cが応答すると(S321)、空いた通話チャネル(例えば通話チャネルa)を使用してIP内線端末2cとの通話チャネルを張り、IP内線端末2cは本装置1およびIP外線3を介した外線通話を開始する(S322,S323)。
【0028】
IP内線端末2cと外線との通話が終了すると(S324)、主制御部10は、P2P接続へ移行したIP内線端末2aとIP内線端末2bのP2P通話が継続しているか否か、および2以上の空き通話チャネルが有るかを判定し(S330)、Noであれば本シーケンスは終了する(S331)。
【0029】
P2P通話が継続していて、かつ2以上の空き通話チャネルが有る場合(S330,Yes)、P2P通話中のIP内線端末2aとIP内線端末2bに対して、通話チャネルを使用する内線通話への復帰を指示する(S332,S333)。すると、IP内線端末2aとIP内線端末2bは、P2P接続を解消して、指示された通話チャネルを使用して内線通話状態に移行処理する(S334,S335)。
【0030】
これにより、IP内線端末2aとIP内線端末2bは、本装置1を介した内線通話に復帰し(S336,S337)、本装置1が有する保留や保留転送等の電話サービスを享受することが可能となる。
【0031】
ここで、この内線通話への復帰処理(S334,S335)について説明する。例えば、SIPの場合、P2P移行/復帰制御部14はIP内線端末2aに対して、現在の接続相手先であるIP内線端末2bからIP内線4へ切替えるための指示(IP内線4のIPアドレスと音声ポート番号)をINVITEメソッドで送信する。同様に、P2P移行/復帰制御部14はIP内線端末2bに対して、現在の接続相手先であるIP内線端末2aからIP内線4へ切替えるための指示(IP内線4のIPアドレスと音声ポート番号)をINVITEメソッドで送信する。すると、IP内線端末2aとIP内線端末2bはINVITEメソッドで指定されたIPアドレスと音声ポート番号でIP内線4に接続され通話制御部11の通話チャネルaと通話チャネルbを使用した内線通話に復帰する。
【0032】
次に、IP内線端末2cからIP外線3を介する外線発信要求があった場合について簡単に説明する。S303の代わりにIP内線端末2cからIP外線3への外線発信要求があった場合(S340)、S304以降と同様のシーケンスを実行し、通話チャネルに空きが無い場合、内線通話中のIP内線端末をP2P接続に移行させ(S312,S313)、外線への発信および通話が可能となる。ただし、着信に係るS320,S321の部分は、外線発信に係るコマンドの授受に置き換えて実行する(図示せず)。
【0033】
以上説明した通り、本発明によれば、内線通話により通話チャネルが不足の状態であっても、外線からの着信または外線への発信が可能な電話制御装置を提供できる。
【0034】
また、通常の内線通話は本装置1を介した内線通話なので、本装置1が有する種々のサービス機能を内線通話中のIP内線端末も享受することが出来る。
【0035】
ところで、本発明の実施形態として、通話チャネルに空きが無い場合に、内線通話中のIP内線端末同士をP2P接続へ移行させると説明したが、通話チャネルに空きがあったとしても、帯域不足が想定される場合にも、内線通話中のIP内線端末同士をP2P接続へ移行させるようにしてもよい。例えば、複数通話チャネル分の帯域が必要となる広帯域音声通話(例えば拡声音声会議)を要求する着信または発信があった場合、通常音声1通話分の空き通話チャネルがあったとしても帯域不足である。この場合は、必要な数の通話チャネルを開放させるようにすればよい。
【符号の説明】
【0036】
1・・・電話制御装置
2・・・IP内線端末
3・・・IP外線
4・・・IP内線
10・・・主制御部
11・・・通信制御部
12・・・IP外線インタフェース部
13・・・IP内線インタフェース部
14・・・P2P移行/復帰制御部
15・・・特定アドレス登録部
16・・・空き通話チャネル監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外線およびIP内線を収容し前記外線と前記IP内線との間で音声データを交換すると共に、前記IP内線と接続された複数のIP内線端末を制御する電話制御装置において、
前記IP内線に形成された複数の通話チャネルのいずれかを介して前記IP内線端末と音声データを送受信する内線通信手段と、前記内線通信手段により音声データを送受信する2以上のIP内線端末の音声データを相互に中継して内線通話させる内線通話手段と、前記複数の通話チャネルに空き通話チャネルが有るか否かを監視するチャネル監視手段と、所定のIP内線端末に対して自電話制御装置を介さないピアツーピア接続への移行を要求するピアツーピア移行要求手段と、を有し、
前記外線からの着信または前記外線への発信があって、前記チャネル監視手段が空き通話チャネルの不足を検知した場合に、前記ピアツーピア移行要求手段は、前記内線通話手段により相互に内線通話中のIP内線端末に対してピアツーピア接続への移行を要求することを特徴とするピアツーピア接続要求機能を有する電話制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電話制御装置において、
前記ピアツーピア接続に移行したIP内線端末に対して前記内線通話手段による内線通話への復帰を指示する復帰指示手段をさらに有し、
前記チャネル監視手段が2以上の空き通話チャネルの存在を検知した場合に、前記復帰指示手段は、前記ピアツーピア接続に移行したIP内線端末に対して前記内線通話手段による内線通話への復帰を指示することを特徴とするピアツーピア接続要求機能を有する電話制御装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の電話制御装置において、
優先して着信させるべき特定の通信相手または優先して発信させるべき特定のIP内線端末の電話番号に係るアドレス情報を登録する特定アドレス登録手段をさらに有し、
前記外線からの着信または前記外線への発信が前記特定アドレス登録手段に登録されたアドレス情報に係る着信または発信でないならば、前記チャネル監視手段が空き通話チャネルの不足を検知した場合であっても、前記ピアツーピア移行要求手段は前記内線通話中のIP内線端末に対してピアツーピア接続への移行を要求しないことを特徴とするピアツーピア接続要求機能を有する電話制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−97509(P2011−97509A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251820(P2009−251820)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】