説明

ピザ生地の整形方法及びそれに用いるピザ生地整形用具

【課題】
簡単な用具を使用してピザ生地を容易に中心部が薄く周縁部にいくにしたがって厚く整形する方法及びそれに用いる用具を提供することを目的とする。
【解決手段】
ピザ生地の整形方法において、混捏して塊状になった生地10をほぼ平坦な略円形の上面1と断面位置が上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した側面3を有するピザ生地整形用具の上面1及び側面3に沿って上面11と側面上部12が薄く、側面下部13にいくに従って厚くなるように整形する工程を有するピザ生地の整形方法およびこれに用いるピザ生地整形用具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ピザ生地の整形方法及びピザ生地整形用具に関する。
【背景技術】
【0002】
ピザは小麦粉等の穀粉及や澱粉にイースト等を加え加水して混捏し塊状のピザ生地を調製し、醗酵後適当な大きさに分割したのち、シート状に延展してピザ台を整形し、前記ピザ台にピザソース、チーズ、肉、野菜等のトッピングを乗せ焼成して製造する。
ピザ生地の塊をシート状に整形する方法としては、手作業による麺棒等を使用した方法が知られており、麺棒の外表面に指先模擬こぶを有したピザ皮製作ローラが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、ピザ生地を型を使用して押圧整形する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
ピザ生地の整形において、最も困難なことは、塊状からシート状に整形していく工程であり、ある程度の厚みに整形されたピザ生地をさらに薄くしていくことはそれほど困難ではない。
前記、麺棒を使用する方法では、ある程度の厚みに整形されたシート状の生地をさらに薄く延展するのは容易であるが、塊をシート状に整形するのは困難である。
また、型を使用して押圧整形する方法は、機械設備が必要となる。
さらに、ピザ生地は中心部が薄く、周縁部にいくに従って厚みが増す形状が好まれているが、機械整形では、均一な厚みとなり好ましい形状とならず、麺棒を使用する方法においても麺棒により均一な厚さにした後、中心部を薄くすることが難しいという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平2−182216号公報
【特許文献2】特開昭54−70474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡単な用具を使用してピザ生地を容易に中心部が薄く周縁部にいくにしたがって厚く整形する方法及びそれに用いる用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、
ピザ生地の整形方法において、混捏して塊状になった生地をほぼ平坦な略円形の上面と断面位置が上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した側面を有するピザ生地整形用具の上面及び側面に沿って上面と側面上部が薄く、側面下部にいくに従って厚くなるように整形する工程を有するピザ生地の整形方法によりピザ生地の整形が容易にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明はピザ生地の整形方法において、混捏して塊状になった生地を、ほぼ平坦な略円形の上面と断面位置が上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した側面を有するピザ生地整形用具の上面及び側面に沿って上面と側面上部が薄く、側面下部にいくに従って厚く整形する工程を有するピザ生地の整形方法である。
また、本発明は、 ほぼ平坦な略円形の上面と断面位置が上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した側面を有するピザ生地整形用具であり、前記ピザ生地整形用具の下部側面にピザ生地の整形工程をより容易にするため、さらに保持部を備えたピザ生地整形用具である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のピザ生地整形用具を使用することにより、容易にピザ生地を中心部が薄く、周縁部にいくに従い厚みが増す形状に整形することができる。
また、ピザ生地整形用具の下部側面に保持部を備えた場合には整形工程をさらに容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1(a)は本発明のピザ整形用具の平面図及び図1(b)は正面図である。
本発明のピザ整形用具は、ほぼ平坦な略円形の上面1を有する。
この上面は、延展するピザ生地の塊を載せるために使用する。
ピザ生地を安定させるため、表面は平坦であることが好ましい。
【0008】
上面周縁部2の形状は、略円形であることが好ましい。本発明で略円形とは、楕円形、14角形以上の多角形も含まれる。
上面の大きさは、整形する生地の大きさにより適宜選択できるが直径70mm〜200mm程度であり、大きすぎると、生地を延展しにくくなり、小さすぎると生地を載せたとき安定しない。
上面周縁部2は生地の延展を容易にするため、ラウンドを設けることが好ましい。
【0009】
側面3の形状は、上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した形状となっている。
上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積とは図1(b)に示すように、A−A線断面において側面3により形成される面積が前記A−A線断面より底面側であるB−B線断面において側面3により形成される面積より小さいことをいう。
側面は、多少の凸凹があってもよいが生地を延展し易いように滑らかであることが好ましい。
また、表面は生地が剥離しやすいようにフッ素加工等を施してもよい。
【0010】
上記側面は、生地を目的の厚みになるように側面に沿って整形した場合、生地により覆われる部分であるが、本発明では上記側面の下部にさらに生地の整形に使用しない側面を設けてもよい。
本発明ではこの側面を下部側面という。
【0011】
下部側面は、本発明のピザ生地の整形には直接使用しないのでその形状は特に限定されない。
下部側面を設ける場合は、生地の整形工程がさらに容易になるように側面に保持部を設けることができる。
保持部の種類としては取っ手、フック、フランジ等を挙げることができる。
【0012】
保持部は、作業台と保持部の間に指が入る程度の高さにあることが好ましく、保持部の底面はピザ生地整形用具の底面から20mm〜40mm程度の高さになることが好ましい。
上記保持部は一又は複数でもよい。
取っ手6を側面の対向する位置に設けた例を図2に示す。
図2(a)は正面図、図2(b)は斜視図である。
フランジ7を低位置に取り付け、周縁部を高くした例を図3に示す。
図3(a)は正面図、図3(b)は斜視図である。
【0013】
底面4は、生地の整形工程において安定するよう平坦であることが好ましい。
底面は側面3(下部側面を設ける場合は下部側面5)の周縁部により形成し底面を設けず開口部とすることもできる。
また図4に示すように底面4の軸線上に、断面円形状の凹部8を設け、ピザ整形用具を使用する作業台に断面円形状の凸部9を設けて、凸部8と凹部9を水平方向に回動自在に枢着することによりさらに生地の整形工程を容易にすることができる。
底面の大きさは本発明の側面を形成できる大きさであれば特に限定されないが直径270〜400mm程度である。
【0014】
本発明のピザ整形用具を構成する材料はピザ生地を延展整形する場合に十分な強度があり衛生的な材料であれば特に限定されず、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属や強化プラスチック等を使用することができる。
【0015】
次に本発明のピザ生地の整形方法について説明する。
本発明で整形するピザ生地の原材料は特に限定されず従来公知の原料を使用することができる。
またピザ生地を塊状に混捏し醗酵する方法も特に限定されず従来公知の方法が使用できる。
例えば、小麦粉に、イースト、塩、副資材として必要に応じ澱粉、油脂、増粘剤、乳化剤、色素、香料等を加えてミキサーや手作業により混捏し生地塊を調製し醗酵する。
生地の固さは加水量により調製することができ、通常配合全体100質量部に対し45〜70質量部である。
イーストに代えてベーキングパウダー等の化学膨張剤も使用することができる。
この場合は、醗酵工程の必要はない。
また、イーストや化学膨張剤等の膨張剤を全く使用しない生地であってもよい。
ピザ生地の作成にミックス粉を使用したり、冷凍ピザ生地を解凍して使用してもよい。
【0016】
混捏方法は、手作業でもよく、スパイラルミキサーやダブルアームミキサー等のミキサーを使用することができる。
ミキサーを使用する場合のミキシング時間は低速2〜4分、中高速4〜6分程度である。
醗酵時間は、例えば25℃で10分〜30分間程度である。
上記生地塊を、ピザ台1個分に必要な量に分割しさらに醗酵する。
生地量は、特に限定されないが通常150g〜400g程度である。
醗酵時間は、例えば25℃で1〜8時間程度である。
【0017】
上記醗酵した生地をピザ台の形に整形する工程を図5に示す。
表面に小麦粉まぶしたピザ塊10をピザ生地整形用具の上面1に載せる。
上記ピザ塊を側面に沿って上面と側面上部が薄く、側面下部にいくに従って厚くなるように側面3に沿って延展して整形する。
本発明では、側面に沿うように上から下に延展するので重力を効率的に利用することができ、延展を容易に行うことができる。
生地の厚みは上面11で3〜5mm程度、側面上部12で3〜5mm程度、側面下部周縁部13で7〜10mm程度である。
【0018】
上記延展した生地を平板に移し、ピザ台の形に整形する。
移す方法は、ピザ生地整形用具から剥ぎ取る方法、ピザ生地整形用具を反転し平板にピザ生地を落とす方法がある。
ピザ生地整形用具を反転する場合には、下部側面にある保持部を使用すると作業がさらに容易になる。
【0019】
平板に移したピザ生地14を更に延展し円盤状に整形する。
必要に応じて円周部を盛り上げナポリ風ピザ台とすることもできる。
円盤状に整形した生地15の厚みは特に限定されないが、中央部16で1〜2mm程度、周縁部で3〜5mm程度である。
【0020】
前記ピザ台の使用方法は特に限定されず通常のピザ台と同様に使用できる。
また、上記ピザ台は冷蔵又は冷凍して保存することができる。
【実施例】
【0021】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
小麦粉100質量部、食塩2.5質量部、イースト0.3質量部、水65質量部で生地塊を調製した。25℃で醗酵10分間とり、生地塊を200gに分割した。さらに、25℃発酵4時間取った。
ピザ生地整形用具の上面に上記ピザ塊を載せ、ピザ生地整形用具の側面に沿って上面3mm、側面上部3mm、側面下部7mmになるように整形した。
上記整形したピザ生地をピザ生地整形用具を反転させ、平板に移し、さらに延展して直径280mmのピザ台を調製した。
ピザ台の中心部の厚さは1.5mm、周縁部の厚さは3.8mmであった。
上記ピザ台にトマトソースを塗り、チーズを載せ、オーブンで400℃で2分間焼成してピザを得た。
前記ピザを食したところ、ピザ台はカリッとしたとてもよい食感であった。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のピザ整形用具の実施の形態をを示す図である。(a)は平面図である。(b)は正面図である。
【図2】本発明のピザ整形用具の他の実施の形態を示す図である。(a)は正面図である。(b)は斜視図である。
【図3】本発明のピザ整形用具の他の実施の形態を示す図である。(a)は正面図である。(b)は斜視図である。
【図4】本発明のピザ整形用具の他の実施の形態を示す軸線方向に沿った縦断面図である。
【図5】本発明のピザ整形用具を使用した生地の整形工程を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 上面
2 上面周縁部
3 側面
4 底面
5 下部側面
6 取っ手
7 フランジ
10 ピザ生地塊


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピザ生地の整形方法において、混捏して塊状になった生地を、ほぼ平坦な略円形の上面と断面位置が上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した側面を有するピザ生地整形用具の上面及び側面に沿って上面と側面上部が薄く、側面下部にいくに従って厚く整形する工程を有するピザ生地の整形方法。
【請求項2】
ほぼ平坦な略円形の上面と断面位置が上面から底面に移動するに従って側面によって形成される水平断面の面積が連続して増加する湾曲した側面を有するピザ生地整形用具。
【請求項3】
さらに下部側面に保持部を備えたことを特徴とする請求項2に記載のピザ生地整形用具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−340634(P2006−340634A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167775(P2005−167775)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】