説明

ピストンヘッドとピストンヘッド部材

【課題】 従来のピストンヘッドは突起が平面又はほぼ平面であるため接合されにくく、接合不十分であるため分離してしまい、ピストン本体に溶接できないことがあった。
【解決手段】 ヘッド部材の中央部にリング状の接合突部を突設し、二つのヘッド部材の接合突部の頂部同士を突合わせて拡散接合してある。前記接合突部は裾広がりにし、頂部を幅の狭い平面状にしてある。拡散接合された二つのヘッド部材の接合部の外周に異物が付着している。ヘッド部材はその閉塞面の中央部に接合突起がリング状に突設されている。接合突起は裾広がりであり頂部が幅の狭い平面状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用クーラー、室内用クーラーといった各種分野で使用されるピストンに装着されるピストンヘッドと、そのピストンヘッドを構成するヘッド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のピストンヘッドは図4に示すように二つのヘッド部材Aが連結されている。このピストンヘッドBは図5のように二つのピストン本体Pに溶接固定され、その後に図5のX−X部分から切断して切り離される。
【0003】
従来のピストンヘッドBは図6(a)(b)に示す二つのヘッド部材Aの突起Cが突合わされ、その突起Cの突合わせ面Dがスポット溶接されて連結されている。ヘッド部材Aはアルミ製であり、削り出しにより加工されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のピストンヘッドBは突起Cが平面であるため接合されにくく、連結不十分であるためピストン本体P(図5)に溶接する前に接合部分から分離してしまい、図5のように対向する二つのピストン本体Pに同時に溶接できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件出願のピストンヘッドは請求項1記載のように、二つのヘッド部材のリング状に突設された接合突起の頂部同士が突合わされ、その接合部が拡散接合されている。前記二つのヘッド部材の夫々は、請求項2記載のように、ヘッド部材の接合突起が裾広がりであり、頂部が幅の狭い平面状のものとすることができる。請求項3記載のように、二つのヘッド部材の拡散接合部の外周には、接合時に発生する異物が付着しているものであってもよく、異物が除去されたものであってもよい。
【0006】
本件出願のヘッド部材は、請求項4記載のように、前記ピストンヘッドに使用されるヘッド部材において、部材中央部に接合突部がリング状に突設されたものである。この場合、請求項5記載のように、接合突部を裾広がりとし、接合突部の頂部を幅の狭い平面状とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のピストンヘッド及びヘッド部材は次のような効果がある。
(1)幅の狭い頂部同士が突合わされて拡散接合されているため接合強度が向上し、ピストン本体に溶接する前は勿論、溶接後の後加工によって分離することがない。
(2)頂部が平面状であるため突合わせ時の位置合わせが容易且つ確実になる。
(3)接合突部が裾広がりであるため拡散接合時に加圧されても接合突部は変形しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のピストンヘッド及びヘッド部材の実施形態の一例を以下に示す。図1のピストンヘッド1は図2のヘッド部材2の接合突起3を二つ突合わせて拡散接合してある。ヘッド部材2はアルミ或いはシリコン合金製である。アルミ合金はピストン本体に装着固定されて使用されたときの耐摩耗性の面からシリコン6%程度を含有するものが適する。
【0009】
ヘッド部材2は図3(a)(b)に示すように、内部が中空で、軸方向一方が開口し、他方が閉塞された円形の皿状であり、閉塞面4に突合わせ突起3が突設され、開口側外周縁にピストン本体P(図5)の開口部に差込み可能な差込み縁5が形成されている。差込み縁5はヘッド部材2の大径部6よりも小径のリング状である。ヘッド部材2は削り出しで形成することができ、可能であればプレス成型することもできる。
【0010】
前記接合突起3はリング状であり、その裾7はリングの外側と内側に裾広がりに形成されており、頂部8は幅の狭い平面状になっている。接合突起3の高さ、裾7の広がり角度、頂部8の幅の広さ等は自由に決定できる。ヘッド部材2の大径部6の直径、接合突起3の高さ、裾の広さ等にもよるが、例えば、大径部6の直径が32mm程度、裾7の下端外周直径14mm前後の場合、頂部8の幅は例えば0.5mm〜0.7mm程度が適する。
【0011】
二つのヘッド部材2の接合突起3の頂部8は突合わせた状態で拡散接合されて連結されている。拡散接合には既存の拡散接合と同様にパルス電流が使用され、圧力が加えられる。電流には例えば30ms、15ms以下のパルス幅のパルス電流が適する。その電流、電圧は拡散接合に適する値に選定できる。突合わせされた両接合突起3に加える圧力は電流、電圧、頂部8の幅、総面積等にもよるが例えば2トン程度とすることができる。
【0012】
前記パルス電流の通電と加圧とにより、突合わされた頂部8は加熱、加圧されて接合面間に拡散現象が生じて金属学的に一体化される。このとき頂部8及びその付近の金属が塑性流動により変形し、頂部8の酸化膜が破壊され、破壊された酸化膜や異物(以下「異物類」という)9(図1)が接合部の外に押し出されてその外周縁に付着する。異物9の突出寸法、縦皺は異物9の量によって異なる。異物9は除去することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明のピストンヘッドの一例を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図2】図1(a)のY−Y部分断面図。
【図3】(a)は本発明のヘッド部材の一例を示す斜視図、(b)は(a)のZ−Z部分断面図。
【図4】従来のピストンヘッドの一例を示す斜視図。
【図5】従来のピストンヘッドをピストン本体に溶接固定する場合の説明図。
【図6】(a)は従来のヘッド部材の斜視図、(b)は(a)のW−W部分断面図。
【符号の説明】
【0014】
1 ピストンヘッド
2 ヘッド部材
3 ヘッド部材の接合突起
4 ヘッド部材の閉塞面
5 ヘッド部材の差込み縁
6 ヘッド部材の大径部
7 接合突起の裾
8 接合突起の頂部
9 異物
A ヘッド部材
B ピストンヘッド
C ヘッド部材の突起
D 突合わせ面
P ピストン本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンに装着されるピストンヘッドにおいて、二つのヘッド部材が突合わせ接合され、夫々のヘッド部材は接合突起がリング状に突設され、接合突起の頂部同士が突合わされて接合されたことを特徴とするピストンヘッド。
【請求項2】
請求項1記載のピストンヘッドにおいて、ヘッド部材の接合突起は裾広がりであり、頂部が幅の狭い平面状であり、二つのヘッド部材の接合突起の頂部同士が拡散接合されたことを特徴とするピストンヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のピストンヘッドにおいて、二つのヘッド部材の拡散接合部の外周に、接合時に発生する異物が付着しているもの、又は異物が除去されたものであることを特徴とするピストンヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のピストンヘッドに使用されるヘッド部材において、部材中央部に接合突部がリング状に突設されたことを特徴とするピストンヘッド部材。
【請求項5】
請求項4記載のヘッド部材において、接合突部が裾広がりであり、接合突部の頂部が幅の狭い平面状であることを特徴とするピストンヘッド部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−228734(P2009−228734A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73341(P2008−73341)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(599061213)矢内精工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】