説明

ピボットジョイント

ピボットジョイントは、一端に配置されたボールを有する第1部材と、第1部材のボール上に位置する、1つまたは複数の支承表面を有する固定部材と、第1部材のボール上に位置する、一端に配置された1つまたは複数の支承表面を有する第2部材とを備える。第1部材と第2部材は、ボールの中心の周りで回転可能である。このタイプのピボットジョイントは、スチュアートプラットフォーム(Stewart platform)などの機械で使用するのに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピボットジョイント(pivot joint)、特に、高精度ピボットジョイントに関する。より詳細には、本発明は、2つの部材が、同じ点を中心に回転運動することを可能にするピボットジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ある構造上に配置された球状支持体を含む機械を開示しており、部材が、その構造上で回転運動するように載置される。各球状支持体は、構造内の磁気ソケット(magnetic socket)内に載置される球を備える。各球は2つの部材を支持する。各部材は、磁気ソケットを備え、磁気ソケットは、それぞれのボールに対して自在に旋回可能に部材を保持する。
【0003】
特許文献2は、第1構造のレセプタクル内にボールが保持されるピボットジョイントを開示する。2つのストラットが、支承表面を介してボールに接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6662461号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/063579号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2は、第1構造のレセプタクル内にボールが保持されるピボットジョイントを開示する。2つのストラットが、支承表面を介してボールに接触する。ストラットは、それぞれ、ボールを部分的に受け取り、かつ、ボールに嵌合する穴を一端に備える。2つのストラットは、共に付勢されて、支承表面においてボールとストラットとの接触が確保される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、
一端に配置された少なくとも部分的に球状の領域(part spherical region)を有する第1部材と、
第1部材の少なくとも部分的に球状の領域上に位置する、1つまたは複数の支承表面を有する固定部材と、
第1部材の少なくとも部分的に球状の領域上に位置する、一端に配置された1つまたは複数の支承表面を有する第2部材とを備え、
それにより、第1部材と第2部材が、少なくとも部分的に球状の領域の中心の周りで回転可能であるピボットジョイントを提供する。
【0007】
少なくとも部分的に球状の領域はボールを含むことができる。
【0008】
好ましくは、少なくとも部分的に球状の領域に対して支承表面の一方または両方を付勢するための付勢デバイスが設けられる。付勢デバイスは、例えば、磁石、重力、またはばねを含むことができる。
【0009】
固定部材と第2部材の一方または両方は、少なくとも部分的に球状の領域が受け取られるアセンブリを形成してもよい。
【0010】
第1および第2の支承表面は、ボールとの3つの接触点を有してもよい。第1支承表面および/または第2支承表面は、ボールと線接触(line contact)してもよい(すなわち、円状)。
【0011】
本発明の第2の態様は、
複数のストラットによって、互いに連結された上部および下部構造を備え、
ストラットは、本発明の第1の態様によるピボットジョイントによって、上部および下部構造の少なくとも一方に連結される機械を含む。
【0012】
好ましくは、上部構造と下部構造との間のストラットの長さは調整可能である。
【0013】
次に、本発明の実施形態について、添付図面を参照して、より詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のピボットジョイントの側面図である。
【図2】ソケットの第1の実施形態の平面図である。
【図3】ソケットの第2の実施形態の平面図である。
【図4】ソケットの第3の実施形態の側面図である。
【図5】図1に示すピボットジョイントを使用した機械を示す斜視図である。
【図6】図5の機械において使用するためのストラットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のピボットジョイントは図1に示される。第1部材10は、一端にボール12を備える。このボール12は、できる限り正確に球である。ボールは、知られている方法、例えば、定位置への溶接、螺合、または接着によって部材に取り付けられてもよく、あるいは、ストラットとボールを、一体構成(one piece)として形成してもよい。「ボール(ball)」という用語が使用されるが、ボールは、完全に球状でなくてもよい。ストラットの端において1つまたは複数の部分的に球状の領域があることで十分である。
【0016】
ボール12は、固定構造16内に設けられるソケット14内に着座する。ソケット14は、ボール12を受け取るために、実質的に円形の開口(図2および3の18)を有する。図2および3は、ソケットの2つの実施形態の平面図を示す。図2では、ソケットとボールとの3点接触を実現するために、開口18の内部円周の周りに、3つのパッド20a、20b、20cが設けられる。パッドは、他の機構と置換えられてもよく、好ましくは、傾斜表面にある。図3では、開口18は、ボールに接触し、3つの接触点を形成する3つの突出部22a、22b、22cを備えて形成される。これらは、ソケットと一体にされても、ボールベアリングなどの機構によって形成されてれもよい。これらの両実施形態では、三面体接触は、ボールがソケット内に正確に配置されることを可能にする。
【0017】
ボールとソケットのこの構成は、併進運動を防止しながら、ボールがソケット内で回転することを可能にし、それにより、ボールが取り付けられる部材の回転を可能にする。
【0018】
図4は、ソケットの別の実施形態の側面図を断面で示す。この実施形態では、ソケットは、円錐断面24を有し、ボールは、ボールと円錐との間の円状接触部によって支持される。
【0019】
これらのソケットの実施形態のそれぞれにおいて、ボールを引き寄せるためにソケット内に磁石が設けられ、磁石は、好ましくは、鋼で作られる。これは、ボールが回転することを可能にしながら、ボールをソケット内に保持する。そのため、ソケット内のボールの中心は、固定されたままである。磁石の代わりに、別の付勢デバイス、例えば、重力またはばねが使用されてもよい。ばねが使用される場合、ばねは、第1部材10と固定構造16との間に載置されて、ボール12を定位置に捕捉してもよい。
【0020】
これまで述べたこの構成は、単一部材が、固定構造に対して回転されることを可能にする。しかし、単一ジョイント上に2つの部材を載置することが望ましい場合がある。
【0021】
ピボットジョイント8に載置された第2部材26が示される。部材26は、一端にソケット28を備える。このソケット28は、図2〜4を参照して述べたものと類似の形態を有する。
【0022】
ソケット28は、第1部材によって設けられたボール12上に着座する。こうして、ソケットで終わる部材26は、ボール12の中心30の周りで回転することができ、したがって、ボールで終わる部材が回転するのとほぼ同じ中心の周りで回転することができる。前述と同様に、第2部材は、例えば、磁石、重力、または、ばねによって定位置に付勢されてもよい。ばねが使用される場合、ばねは、第2部材26と固定部材16との間に設けられ、それにより、ボール12を定位置に捕捉してもよい。
【0023】
代替の構成では、ボールが回転することを可能にする数ミクロンのクリアランスを残しながら、ボールがその中にカプセル化されるアセンブリとして、固定構造とソケット28の一方または両方を形成することによって、ボールは、固定構造内に、または、固定構造とソケット28の組合せの中に捕捉されてもよい。
【0024】
このピボットジョイントは、ベースと、上部構造と、ベースを上部構造に結合する複数の、例えば6つのストラットとを備えるスチュアートプラットフォームなどの機械において使用することができる。ストラットは、それぞれの端で、ベースおよび上部構造に回転可能に載置され、そのマウント間のストラットの長さは、ベースに対して上部構造の位置を変えるように調整可能である。
【0025】
特許文献1は、6つのストラットが、ベースを上部構造に結合する機械を開示する。3つのピボットジョイントが、上部構造とベースのそれぞれに設けられ、2つのストラットが各ピボットジョイント上に載置される。
【0026】
図5は、ベース32と上部構造34を有する機械の斜視図である。3つのピボットジョイント36a、36b、36cが、上部構造34内に配置され、3つのピボットジョイント38a、38b、38cが、ベース32内に配置される。6つのストラット40a〜40fは、上部構造34をベース32に連結し、かつ、それぞれの端でピボットジョイントに載置される。各ピボットジョイントは、図1に示す構成を有してもよく、1つのストラットが、ボールに連結され、他のストラットが、ボールに係合したソケットを有する。
【0027】
図6は、図5に示す機械において使用するのに適したストラットの側面図である。ストラット40は、入れ子式に嵌合する内側および外側部品42、44で作られる。ボール12は、ストラットの一端に設けられ、ソケット28は、他端の内部に設けられる。ストラットの長さは常に、一端のボール12と、ソケット28が載置されるボールとの間の距離の正確な尺度である。この長さは、任意の好都合な変換器システム、例えば、部品44に取り付けられた読取ヘッド(図示せず)がその上を通過する部品42内のスケール(図示せず)によって測定される。
【0028】
図6に示すタイプのストラット40は、1つのストラットのソケット端が、別のストラットのボール端上に載置されるように、互い違いの方向で機械に載置されてもよい。これは、ストラットの1つのデザインだけが必要とされるという利点を有する。あるいは、2つのタイプのストラット、すなわち両端にボール、および両端にソケットがあるストラットを使用することができる。
【0029】
上記実施形態は、ソケットが、磁気手段によってボール上に付勢されることを述べるが、他の付勢手段が可能である。例えば、ボールおよびソケットは、重力下で一緒に保持されてもよい。
【0030】
ピボットジョイントのこのデザインは、いくつかの利点を有する。ボールをストラットの1つに取り付けることによって、ボールに隣接するストラットの端は、一端にソケットを有するストラットの場合に必要とされるよりもずっと薄くすることができる。これは、ソケットがボールと3点接触することが好ましく、3つの点が広く離れれば離れるほど、ボールに対するソケットの位置決めがよくなるからである。こうして、両方のストラットが、ソケットを介してボール上に載置される場合に比べて、2つのストラットのより広い運動範囲が可能になる。
【0031】
別の利点は、入れ子式ストラット内のスケールを、ボールに取り付けることができ、それにより、ボール間の距離の測定精度が改善されることである。
【0032】
このタイプの機械は、例えば、腕が上部構造とベースの一方に付加され、測定プローブまたはツールなどの動作モジュールが腕に載置される、座標測定機(coordinate measuring machine)または工作機械(machine tool)として使用することができる。測定される、または、機械加工される部品は、上部構造とベースの他方に載置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に配置された少なくとも部分的に球状の領域を有する第1部材と、
前記第1部材の前記少なくとも部分的に球状の領域上に位置する、1つまたは複数の支承表面を有する固定部材と、
前記第1部材の少なくとも部分的に球状の領域上に位置する、一端に配置された1つまたは複数の支承表面を有する第2部材とを備え、
それにより、前記第1部材と前記第2部材が、前記少なくとも部分的に球状の領域の中心の周りで回転可能であることを特徴とするピボットジョイント。
【請求項2】
前記少なくとも部分的に球状の領域はボールを含むことを特徴とする請求項1に記載のピボットジョイント。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に球状の領域に対して前記支承表面の一方または両方を付勢するための付勢デバイスが設けられることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のピボットジョイント。
【請求項4】
前記付勢デバイスは、磁石、重力、またはばねを含むことを特徴とする請求項3に記載のピボットジョイント。
【請求項5】
前記第1および第2の支承表面の一方または両方は、前記少なくとも部分的に球状の領域との3つの接触点を有することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のピボットジョイント。
【請求項6】
前記第1および第2の支承表面の一方または両方は、前記少なくとも部分的に球状の領域と線接触することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のピボットジョイント。
【請求項7】
前記固定部材と前記第2部材の一方または両方は、前記少なくとも部分的に球状の領域が受け取られるアセンブリを形成することを特徴とする請求項1に記載のピボットジョイント。
【請求項8】
複数のストラットによって、互いに連結された上部および下部構造を備え、
前記ストラットは、請求項1から7のいずれかに記載のピボットジョイントによって、前記上部および下部構造の少なくとも一方に連結されることを特徴とする機械。
【請求項9】
前記上部構造と前記下部構造との間の前記ストラットの長さは調整可能であることを特徴とする請求項8に記載の機械。
【請求項10】
前記第1部材はストラットの第1端を備え、前記第2部材は前記ストラットの第2端を備えることを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−540247(P2009−540247A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514890(P2009−514890)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002179
【国際公開番号】WO2007/144602
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】