説明

ピラジンキナーゼ阻害剤

【課題】キナーゼ阻害剤として有用な化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、タンパク質キナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は又、これらの化合物を含む薬学的に許容される組成物、及び種々の疾患、病態及び障害の処置における本化合物及び組成物を使用する方法も提供する。本発明は又、本発明の化合物を調製するためのプロセスも提供する。一つの実施形態において、本発明は、オーロラタンパク質キナーゼ(オーロラA、オーロラB、オーロラC)及びFLT−3キナーゼのようなタンパク質キナーゼの阻害剤として有用な化合物及びそれらの薬学的に許容される組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、キナーゼ阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は又、本発明の化合物を含む薬学的に許容される組成物、種々の障害の処置において本化合物及び組成物を使用する方法、並びに本化合物を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近年、標的疾患に関連する酵素及びその他の生体分子の構造がより解明されたことで、新たな治療薬の探求に大いに役立っている。広範な研究のテーマとなっている1つの重要なクラスの酵素にタンパク質キナーゼがある。
【0003】
タンパク質キナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御に関与する、構造的に関連のある酵素の大きなファミリーを構成している。タンパク質キナーゼは、その構造及び触媒機能の保存により、共通の祖先型遺伝子から発達したと考えられている。ほぼ全てのキナーゼは、類似のアミノ酸触媒ドメイン250〜300個を含有する。これらのキナーゼは、リン酸化する基質によって幾つかファミリーに分類される場合がある(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質等)。一般的にこれらのキナーゼファミリーそれぞれに対応する配列モチーフが既に同定されている。
【0004】
一般的に、タンパク質キナーゼは、ヌクレオシド三リン酸からシグナル経路に関わるタンパク質受容体へリン酸転移させることにより細胞内シグナリングを媒介する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整又は調節することができる分子の入/切スイッチの役割を果たす。
【0005】
これらのリン酸化事象は、最終的に種々の細胞外及びその他の刺激に反応して誘発される。このような刺激の例には、環境及び化学ストレス信号(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線放射、細菌の内毒素、及びH2O2)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)及び腫瘍壊死因子a(TNF−a))、及び増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、並びに線維芽細胞増殖因子(FGF)が含まれる。細胞外刺激は、細胞増殖、移動、分化、ホルモン分泌、転写因子の活性化、筋収縮、グルコース代謝、タンパク質合成調節、及び細胞周期の調節に関する1つ以上の細胞反応に影響を与える場合がある。
【0006】
多くの疾患は、タンパク質キナーゼ媒介事象により誘発される細胞反応の異常に関連する。これらの疾患には、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝疾患、神経系及び神経変性疾患、癌、心血管系疾患、アレルギー及び喘息、アルツハイマー病、並びにホルモン関連疾患が含まれる。従って、治療薬として有効なタンパク質キナーゼ阻害剤を見付け出すために、医化学の分野では多大な努力が払われてきた。しかし、タンパク質キナーゼに関連する病態の大部分に対する現在利用可能な処置オプションが不足していることを鑑みると、これらのタンパク質標的を阻害する新たな治療薬が依然として大いに必要とされている。
【0007】
オーロラタンパク質は、関連性が強い3種のセリン/スレオニンキナーゼ(オーロラA、B及びCと呼ばれる)のファミリーであり、これらは細胞周期の有糸分裂期の進行において必要不可欠である。具体的に、オーロラAは、中心体の成熟及び分離、有糸分裂紡錘体の形成、及び染色体の正確な分離において重要な役割を果たす。オーロラBは、中期板における染色体の整列の調節、紡錘体集合のチェックポイント、及び細胞質分裂の正確な完了において中心的な役割を果たす染色体パッセンジャータンパク質である。
【0008】
オーロラA、BまたはCの過剰発現は、結腸直腸、卵巣、胃及び侵襲的導管腺癌を含めた様々なヒト癌に認められている。
【0009】
現在、幾つかの研究では、siRNA、優性阻害型又は中和抗体によるヒト癌細胞株におけるオーロラA又はBの枯渇又は阻害によって、4N DNAを有する細胞を蓄積する有糸分裂の進行が崩壊し、場合によりひいては核内倍加及び細胞死につながることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
タンパク質キナーゼは、様々なヒト疾患を処置する新たな治療薬の注目且つ立証された標的物質であり、例としては、Gleevec(登録商標)及びTarceva(登録商標)を含めたキナーゼ阻害剤がある。オーロラキナーゼは、多くのヒト癌との関連性、並びにこれらの癌細胞の増殖において担う役割の点から、特に注目されている。以上により、タンパク質キナーゼを阻害する化合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、タンパク質キナーゼ、例えばオーロラタンパク質キナーゼ(オーロラA、オーロラB、オーロラC)及びFLT−3キナーゼの阻害剤として有用な化合物及びそれらの薬学的に許容される組成物を提供する。これらの化合物は、以下の式Iの化合物であって:
【0012】
【化10】

式中、R、R及びHt環が、本明細書に定義される通りである
化合物;或いはその薬学的に許容される塩により表される。
【0013】
これらの化合物及びそれらの薬学的に許容される組成物は、in vitro、in vivo及びex vivoでキナーゼを阻害するのに有用である。このような使用には、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝疾患、神経系及び神経変性疾患、癌、心血管系疾患、アレルギー及び喘息、アルツハイマー病、並びにホルモン関連疾患を含むがこれらに限定されない種々の疾患、障害又は病態を処置又は予防することが含まれる。その他の使用には、生物学的及び病理学的現象におけるキナーゼの研究;このようなキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究;及び新たなキナーゼ阻害剤の比較評価が含まれる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の式Iの化合物であって:
【化1−1】


式中、
Htがピラゾール又はチアゾールであって、各環が場合により且つ独立してR及びR2’で置換され;
が、H、C1−6脂肪族、NO、CN、ハロ、NH、N(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、O(C1−4脂肪族)、OH、又は−N(C=O)(C1−4脂肪族)であって;前記脂肪族が、場合により1〜3個のフルオロで置換され;
が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はカルボシクリルから選択される5〜7員の単環式環又は8〜10員の二環式環であり、前記ヘテロアリール又はヘテロシクリル環が、窒素、酸素又は硫黄から選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有し、各置換可能な環炭素が、オキソ、T−R又はV−Z−Rにより独立して置換され、各置換可能な環窒素が、−Rにより独立して置換され;
Tが原子価結合又はC1−4アルキリデン鎖であり;
Zが原子価結合又はC1−4アルキリデン鎖であり;
及びR2’が、独立して−R、−T−W−R又はRであるか;或いはR及びR2’が、それらの介在原子と一緒になって、窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、縮合された、5〜8員の不飽和又は部分不飽和環を形成し、R及びR2’により形成される前記縮合環の各置換可能な環炭素が、ハロ、オキソ、−CN、−NO、−R又は−V−Rにより独立して置換され、R及びR2’により形成される前記環の各置換可能な環窒素が、Rにより独立して置換され;
各Rが、独立して−R、−ハロ、−OR、−C(=O)R、−COR、−COCOR、COCHCOR、−NO、−CN、−S(O)R、−S(O)R、−SR、−N(R、−CON(R、−SON(R、−OC(=O)R、−N(R)COR、−N(R)CO(C1−6脂肪族)、−N(R)N(R、−C=NN(R、−C=N−OR、−N(R)COR(R、−N(R)SON(R、−N(R)SOR、又は−OC(=O)N(Rであり;
各Rが、水素、C1−6脂肪族基、C6−10アリール環、5〜10個の環原子を有するヘテロアリール環、又は4〜10個の環原子を有するヘテロシクリル環であって、該へテロアリール環又はヘテロシクリル環が、窒素、酸素又は硫黄から選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有し、該脂肪族基及び各R環が場合によりRにより置換され;
各Rが、−R、−COR、−CO(場合により置換されるC1−6脂肪族)、−CON(R、又は−SOであり;
Vが、
【化1−2】


であり;
Wが、
【化1−3】


であり;
各Rが、独立して水素、又は場合により1〜3個のハロゲンで置換されるC1−6脂肪族であるか;或いは同じ窒素原子上の2個のR基が、窒素原子と一緒になって、4〜6員のヘテロシクリル又は5〜6員のヘテロアリール環を形成し;各Rが、独立して水素、又は場合により1〜3個のハロゲンで置換されるC1−6脂肪族であるか;或いは同じ窒素上の2個のR基が、該窒素と一緒になって、4〜8員のヘテロシクリル又は5〜8員のヘテロアリール環を形成し;
各Rがハロゲン、−CN又は−NOであり;
各Rが、−R’、−ハロ、−OR’、−C(=O)R’、−COR’、−COCOR’、COCHCOR’、−NO、−CN、−S(O)R’、−S(O)R’、−SR’、−N(R’)、−CON(R’)、−SON(R’)、−OC(=O)R’、−N(R’)COR’、−N(R’)CO(C1−6脂肪族)、−N(R’)N(R’)、−C=NN(R’)、−C=N−OR’、−N(R’)CON(R’)、−N(R’)SON(R’)、−N(R’)SOR’、−OC(=O)N(R’)、=NN(R’)、=N−OR’、又は=Oであり;そして
各R’が、独立して水素、又は場合によりNH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)又はハロC1−4脂肪族の0〜4個の出現で置換されるC1−6脂肪族であるか;或いは2個のR’が、それらが結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜6員のカルボシクリル又はヘテロシクリルを形成する
化合物;或いはその薬学的に許容される塩。
(項目2)
Htが
【化2】


であり、式中、各環が場合により且つ独立してR及びR2’で置換される、項目1に記載の化合物。
(項目3)
がH又は場合により置換されるC1−6脂肪族である、項目1又は項目2に記載の化合物。
(項目4)
がH又は場合により置換されるC1−3脂肪族である、項目3に記載の化合物。
(項目5)
2’がH又は場合により置換されるC1−3脂肪族である、項目1〜4の何れか1項に記載の化合物。
(項目6)
がC1−6アルキルであり、R2’がHである、項目1又は項目2に記載の化合物。
(項目7)
がH、C1−6脂肪族、NO、CN、ハロ、NH、N(C1−4脂肪族)、又は−N(C=O)(C1−4脂肪族)である、項目1〜6の何れか1項に記載の化合物。
(項目8)
がH又はFである、項目7に記載の化合物。
(項目9)
がHである、項目8に記載の化合物。
(項目10)
が場合により置換される5〜6員の単環式アリール又はヘテロアリールである、項目1〜9の何れか1項に記載の化合物。
(項目11)
が場合により置換されるフェニルである、項目10に記載の化合物。
(項目12)
が4位においてT−Rで置換される、項目11に記載の化合物。
(項目13)
が−N(R)COR又は−CON(Rである、項目12に記載の化合物。
(項目14)
Tが結合である、項目12又は項目13に記載の化合物。
(項目15)
以下の式Ia:
【化3】


により表される、項目1〜14の何れか1項に記載の化合物。
(項目16)
以下の式Ib:
【化4】


により表される、項目1〜14の何れか1項に記載の化合物。
(項目17)
以下の式:
【化5】


から選択される、項目1に記載の化合物、或いはその薬学的に許容される塩。
(項目18)
項目1〜17の何れか1項に記載の化合物及び薬学的に許容される担体、アジュバント又はビヒクルを含む組成物。
(項目19)
生物学的試料におけるオーロラタンパク質キナーゼ活性を阻害する方法であって、前記生物学的試料を項目1〜17の何れか1項に記載の化合物と接触させることを含む、方法。
(項目20)
患者における癌を処置する方法であって、前記患者に
a)項目18に記載の組成物;又は
b)項目1〜17の何れか1項に記載の化合物
を投与する手順を含む、方法。
(項目21)
患者における増殖性障害を処置する方法であって、前記患者に
a)項目18に記載の組成物;又は
b)項目1〜17の何れか1項に記載の化合物
を投与する手順を含む、方法。
(項目22)
単回投与形態として前記組成物と共に、又は複数回投与形態の一部として前記組成物とは別々に追加の治療薬を前記患者に投与することを含む、項目20又は項目21に記載の方法。
(項目23)
前記増殖性障害が、処置を必要とする患者における黒色腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、或いは結腸癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、中枢神経(CNS)癌、腎臓癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、脳腫瘍(神経膠腫)、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、黒色腫、肉腫若しくは甲状腺癌から選択される癌から選択され、前記方法が、前記患者に
a)項目18に記載の組成物;又は
b)項目1〜17の何れか1項に記載の化合物
を投与することを含む、項目21に記載の方法。
(項目24)
以下の式Iの化合物を調製するプロセスであって:
【化6】


以下の式aの化合物:
【化7】


(式中、Htは、項目1〜17の何れか1項に定義される通りである)
を、以下の式2の化合物:
【化8】


(式中、R及びRは、項目1〜17の何れか1項に定義される通りである)と、好適なカップリング条件下で反応させて、式Iの化合物を形成することを含む、プロセス。
(項目25)
−SH(式中、Rは、項目1〜17の何れか1項に定義される通りである)を、以下の式1の化合物:
【化9】


と、好適な置き換え条件下で反応させて、式2の化合物を形成する手順も更に含む、項目24に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の式Iの化合物であって:
【0015】
【化11】

式中:
Htがピラゾール環又はチアゾール環であって、各環が場合により且つ独立してR及びR2’で置換され;
がT−R又はL−Z−Rであり;
が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はカルボシクリルから選択される5〜7員の単環式環又は8〜10員の二環式環であり、前記ヘテロアリール又はヘテロシクリル環が、窒素、酸素又は硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、環Dの各置換可能な環炭素が、オキソ、T−R又はV−Z−Rにより独立して置換され、環Dの各置換可能な環窒素が、−Rにより独立して置換され;
Tが原子価結合又はC1−4アルキリデン鎖であり;
ZがC1−4アルキリデン鎖であり;
Lが、
【0016】
【化12】

であり;
及びR2’が、独立して−R、−T−W−R又はRであるか、或いはR及びR2’が、それらの介在原子と一緒になって、窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、縮合された、5〜8員の不飽和又は部分不飽和環を形成し、R及びR2’により形成される前記縮合環の各置換可能な環炭素が、ハロ、オキソ、−CN、−NO、−R又は−V−Rにより独立して置換され、R及びR2’により形成される前記環の各置換可能な環窒素が、Rにより独立して置換され;
及びRが、それぞれ独立して−R、−ハロ、−OR、−C(=O)R、−COR、−COCOR、COCHCOR、−NO、−CN、−S(O)R、−S(O)R、−SR、−N(R、−CON(R、−SON(R、−OC(=O)R、−N(R)COR、−N(R)CO(C1−6脂肪族)、−N(R)N(R、−C=NN(R、−C=N−OR、−N(R)COR(R、−N(R)SON(R、−N(R)SOR、又は−OC(=O)N(Rであり;
各Rが、水素、C1−6脂肪族基、C6−10アリール環、5〜10個の環原子を有するヘテロアリール環、又は5〜10個の環原子を有するヘテロシクリル環であって、該ヘテロアリール又はヘテロシクリル環が、窒素、酸素又は硫黄から選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有し、該脂肪族基及び各R環が場合によりRにより置換され;
各Rが、−R、−COR、−CO(場合により置換されるC1−6脂肪族)、−CON(R、又は−SOであり;
Vが、
【0017】
【化13】

であり;
Wが、
【0018】
【化14】

であり;
各Rが、独立して水素、又は場合により置換されるC1−6脂肪族基であるか、或いは同じ窒素原子上の2個のR基が、窒素原子と一緒になって、5〜6員のヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
各Rが、独立して水素、又は場合により置換されるC1−6脂肪族基であるか、或いは同じ窒素上の2個のR基が、窒素と一緒になって、5〜8員のヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
各Rがハロゲン、−CN又は−NOであり;
各Rが、−R’、−ハロ、−OR’、−C(=O)R’、−COR’、−COCOR’、COCHCOR’、−NO、−CN、−S(O)R’、−S(O)R’、−SR’、−N(R’)、−CON(R’)、−SON(R’)、−OC(=O)R’、−N(R’)COR’、−N(R’)CO(C1−6脂肪族)、−N(R’)N(R’)、−C=NN(R’)、−C=N−OR’、−N(R’)CON(R’)、−N(R’)SON(R’)、−N(R’)SOR’、又は−OC(=O)N(R’)であり;そして
各R’が、独立して水素又はC1−6脂肪族基(特定の実施形態においては置換されない)である
化合物;或いはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
幾つかの実施形態において、本発明は、以下の式Iの化合物であって:
【0020】
【化15】

式中:
Htがピラゾール又はチアゾールであって、各環が場合により且つ独立してR及びR2’で置換され;
が、H、C1−6脂肪族、NO、CN、ハロ、NH、N(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、O(C1−4脂肪族)、OH、又は−N(C=O)(C1−4脂肪族)であって;前記脂肪族が、場合により1〜3個のフルオロで置換され;
が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はカルボシクリルから選択される5〜7員の単環式環又は8〜10員の二環式環であり、前記ヘテロアリール又はヘテロシクリル環が、窒素、酸素又は硫黄から選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有し、各置換可能な環炭素が、オキソ、T−R又はV−Z−Rにより独立して置換され、各置換可能な環窒素が−Rにより独立して置換され;
Tが原子価結合又はC1−4アルキリデン鎖であり;
Zが原子価結合又はC1−4アルキリデン鎖であり;
及びR2’が、独立して−R、−T−W−R、又はRであるか、或いはR及びR2’が、それらの介在原子と一緒になって、窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を有する、縮合された、5〜8員の不飽和又は部分不飽和環を形成し、R及びR2’により形成される前記縮合環の各置換可能な環炭素が、ハロ、オキソ、−CN、−NO、−R又は−V−Rにより独立して置換され、R及びR2’により形成される前記環の各置換可能な環窒素が、Rにより独立して置換され;
各Rが、独立して−R、−ハロ、−OR、−C(=O)R、−COR、−COCOR、COCHCOR、−NO、−CN、−S(O)R、−S(O)R、−SR、−N(R、−CON(R、−SON(R、−OC(=O)R、−N(R)COR、−N(R)CO(C1−6脂肪族)、−N(R)N(R、−C=NN(R、−C=N−OR、−N(R)COR(R、−N(R)SON(R、−N(R)SOR、又は−OC(=O)N(Rであり;
各Rが、水素、C1−6脂肪族基、C6−10アリール環、5〜10個の環原子を有するヘテロアリール環、又は4〜10個の環原子を有するヘテロシクリル環であって、該アリール環又はヘテロシクリル環が、窒素、酸素又は硫黄から選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有し、該脂肪族基及び各R環が場合によりRにより置換され;
各Rが、−R、−COR、−CO(場合により置換されるC1−6脂肪族)、−CON(R、又は−SOであり;
Vが、
【0021】
【化16】

であり;
Wが、
【0022】
【化17】

であり;
各Rが、独立して水素、又は場合により1〜3個のハロゲンで置換されるC1−6脂肪族であるか;或いは同じ窒素原子上の2個のR基が、窒素原子と一緒になって、4〜6員のヘテロシクリル又は5〜6員のヘテロアリール環を形成し;各Rが、独立して水素、又は場合により1〜3個のハロゲンで置換されるC1−6脂肪族であるか;或いは同じ窒素上の2個のR基が、窒素と一緒になって、4〜8員のヘテロシクリル又は5〜8員のヘテロアリール環を形成し;
各Rがハロゲン、−CN又は−NOであり;
各Rが、−R’、−ハロ、−OR’、−C(=O)R’、−COR’、−COCOR’、COCHCOR’、−NO、−CN、−S(O)R’、−S(O)R’、−SR’、−N(R’)、−CON(R’)、−SON(R’)、−OC(=O)R’、−N(R’)COR’、−N(R’)CO(C1−6脂肪族)、−N(R’)N(R’)、−C=NN(R’)、−C=N−OR’、−N(R’)CON(R’)、−N(R’)SON(R’)、−N(R’)SOR’、−OC(=O)N(R’)、=NN(R’)、=N−OR’、又は=Oであり;そして
各R’が、独立して水素、又は場合によりNH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)又はハロC1−4脂肪族の0〜4個の出現で置換されるC1−6脂肪族基であるか;或いは2個のR’が、それらが結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜6員のカルボシクリル又はヘテロシクリルを形成する
化合物;或いはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0023】
一実施形態において、Htは、
【0024】
【化18】

であり、式中、各環は、場合により且つ独立してR及びR2’で置換される。
【0025】
特定の実施形態において、R及びRの置換基は、独立してRから選択される。
【0026】
別の実施形態において、Rの場合により置換される脂肪族基は、C1−4脂肪族基である。幾つかの実施形態において、脂肪族基は、場合により1〜3個のハロゲンで置換される。
【0027】
別の実施形態において、Rは、H又はC1−6脂肪族(特定の実施形態においては置換されない)である。
【0028】
別の実施形態において、Rは、H又はC1−3脂肪族(特定の実施形態においては置換されない)である。
【0029】
別の実施形態において、R2’は、H又はC1−3脂肪族(特定の実施形態においては置換されない)である。
【0030】
一実施形態において、Rは、−R、ハロゲン、NO、CN、COR、OR又は−SRである。別の実施形態において、Rは、H又はFである。更に別の実施形態において、RはHである。
【0031】
別の実施形態において、Rは、H、C1−6脂肪族、NO、CN、ハロ、NH、N(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、O(C1−4脂肪族)、OH、又はN(C=O)(C1−4脂肪族)である。幾つかの実施形態において、Rは、H、C1−6脂肪族、NO、CN、ハロ、NH、N(C1−4脂肪族)、又は−N(C=O)(C1−4脂肪族)である。幾つかの実施形態において、前記脂肪族は、場合により1〜3個のフルオロで置換される。
【0032】
一実施形態において、Rは、場合により置換される5〜6員の単環式アリール又はヘテロアリールである。別の実施形態において、Rは、場合により置換されるフェニルである。幾つかの実施形態において、Rは、4位においてT−Rで置換される。
【0033】
一実施形態において、Rは、−N(R)COR、又は−COR(Rである。
【0034】
別の実施形態において、Tは原子価結合である。
【0035】
一実施形態において、本発明の化合物は、以下の式Iaにより表され:
【0036】
【化19】

式中、変数は、本明細書の何れかの実施形態に定義される通りである。
【0037】
一実施形態において、本発明の化合物は、式Ibにより表され:
【0038】
【化20】

式中、変数は、本明細書の何れかの実施形態に定義される通りである。
【0039】
式Ibの好ましい形態において、R2’は水素である。
【0040】
一実施形態において、本発明は、I−1及びI−2の化合物(又はそれらの薬学的に許容される塩)を含む:
【0041】
【化21】

本発明の目的のために、化学元素は、The Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.に従って同定される。更に、有機化学の一般的原理については、それぞれ全体の内容が参考として本明細書で援用される、”Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、及び”March’s Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March,
J., John Wiley & Sons, New York: 2001に記載されている。
【0042】
本明細書に記載される原子の指定数の範囲には、その中の任意の整数が含まれる。例えば、1〜4個の原子を有する基は、1、2、3又は4個の原子を有してもよい。
【0043】
本明細書に記載される本発明の化合物は、例えば、上に概説されるか、又は特定のクラス、サブクラス及び本発明の種により例示されるような、1個以上の置換基で場合により置換される場合がある。「場合により置換される」という語句は、「置換されるか置換されない」という語句と交換可能に使用されることが理解されるであろう。一般的に、「置換される」という用語は、「場合により」という用語の後にあろうとなかろうと、所与の構造において水素基を指定の置換基の基で置き換えることを指す。他に指示がない限り、場合により置換される基は、基の置換可能な各位において置換基を有する場合があり、任意の所与の構造における複数の位置が指定の群から選択される複数の置換基で置換される場合に、この置換基は、全ての位置で同じである場合もあれば、異なる場合もある。本発明により考慮される置換基の組み合わせは、安定しているか、又は化学的に実現可能な化合物の形成を生じるものが好ましい。
【0044】
本明細書で使用される「安定した」という用語は、生成、検出、並びに好ましくは回収、精製、及び本明細書に開示される1つ以上の目的のための使用が可能となる条件に化合物を供しても、化合物が実質的に変化しないことを指す。幾つかの実施形態において、安定した化合物又は化学的に実現可能な化合物は、湿度又はその他の化学的な反応条件の非存在下において、少なくとも1週間、40℃以下の温度に維持した場合に実質的に変化しないものである。
【0045】
本明細書で使用される「脂肪族」又は「脂肪族基」等の用語は、非分枝又は分枝、直鎖又は環式、置換又は非置換の炭化水素を意味し、これは、完全に飽和されるか、又は分子の残りとの単一の結合点を有する1つ以上の不飽和単位を含有する。他に指示がない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。幾つかの実施形態において、脂肪族基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態において、脂肪族基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。更に他の実施形態において、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含有し、尚他の実施形態において、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。好適な脂肪族基には、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル基が含まれるが、これらに限定されない。具体例には、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、sec−ブチル、ビニル、n−ブテニル、エチニル及びtert−ブチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
「シクロ脂肪族」(又は「炭素環式」又は「カルボシクリル」又は「シクロアルキル」等)という用語は、単環式C−C炭化水素又は二環式C−C12炭化水素を指し、これらは、完全に飽和されるか、或いは1つ以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではなく、分子の残りとの単一の結合点を有し、ここで前記二環式環系の何れかの個々の環は3〜7員を有する。好適なシクロ脂肪族基には、シクロアルキル及びシクロアルケニル基が含まれるが、これらに限定されない。具体例には、シクロヘキシル、シクロプロペニル、及びシクロブチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の化合物において、環には、線状縮合、架橋又はスピロ環式環が含まれる。架橋シクロ脂肪族の例には、ビシクロ[3.3.2]デカン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、及びビシクロ[3.2.2]ノナンが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用される「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族」又は「複素環式」等の用語は、1個以上の環員が独立して選択されるヘテロ原子である非芳香族、単環式、二環式又は三環式環系を意味する。幾つかの実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族」又は「複素環式」基は、1個以上の環員が酸素、硫黄、窒素又はリンから独立して選択されるヘテロ原子である3〜14個の環員を有し、本系の各環は、3〜7個の環員を含有する。架橋複素環の例には、7−アザービシクロ[2.2.1]ヘプタン及び3−アザービシクロ[3.2.2]ノナンが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
好適な複素環には、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、及び1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
「ヘテロ原子」という用語は、1個以上の酸素、硫黄、窒素、リン又はケイ素(窒素、硫黄、リン又はケイ素の何れかの酸化形態;何れかの塩基窒素の四級化形態;又は複素環式環の置換可能な窒素、例えばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルの場合)、NH(ピロリジニルの場合)若しくはNR(N置換ピロリジニルの場合)を含む)を意味する。
【0051】
本明細書で使用される「不飽和」という用語は、ある部分が1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0052】
本明細書で使用される「アルコキシ」又は「チオアルキル」という用語は、既に定義されている通り、酸素(「アルコキシ」)又は硫黄(「チオアルキル」)原子を介して主炭素鎖に結合するアルキル基を指す。
【0053】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」及び「ハロアルコキシ」という用語は、場合により1個以上のハロゲン原子で置換されるアルキル、アルケニル又はアルコキシを意味する。「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br又はIを意味する。
【0054】
単独で使用されるか、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」若しくは「アリールオキシアルキル」の場合のようにより大きな部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式及び三環式環系を指し、本系の少なくとも1個の環は芳香族であり、本系の各環は3〜7個の環員を含有する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と交換可能に使用される場合がある。「アリール」という用語は又、以下に定義されるようなヘテロアリール環系も指す。
【0055】
単独で使用されるか、又は「ヘテロアラルキル」若しくは「ヘテロアリールアルコキシ」の場合のようにより大きな部分の一部として使用される「ヘテロアリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式及び三環式環系を指し、本系の少なくとも1個の環は芳香族であり、本系の少なくとも1個の環は、1個以上のヘテロ原子を含有し、本系の各環は、3〜7個の環員を含有する。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」という用語又は「ヘテロ芳香族」という用語と交換可能に使用される場合がある。好適なヘテロアリール環には、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリル及び5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、及びイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル又は4−イソキノリニル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)又はヘテロアリール基(ヘテロアラルキル及びヘテロアリールアルコキシ等を含む)は、1個以上の置換基を含有する場合があり、従って「場合により置換される」場合がある。特に上に及び本明細書に定義されない限り、アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の好適な置換基は、一般的にハロゲン;−R°;−OR°;−SR°;場合によりR°で置換されるフェニル(Ph);場合によりR°で置換される−O(Ph);場合によりR°で置換される−(CH1−2(Ph);場合によりR°で置換される−CH=CH(Ph);場合によりR°で置換される5〜6員のヘテロアリール又は複素環式環;
【0057】
【化22】

から選択され、式中、各独立したR°の出現は、水素、場合により置換されるC1−6脂肪族、非置換の5〜6員のヘテロアリール又は複素環式環、フェニル、−O(Ph)、又は−CH(Ph)から選択されるか、或いは上の定義に関係なく、同じ置換基または異なる置換基上の2つの独立したR°の出現は、各R°基が結合する原子と一緒になって、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、場合により置換される3〜12員の飽和、又は部分不飽和若しくは完全不飽和の単環式又は二環式環を形成する。
【0058】
R°の脂肪族基上の場合による置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、又はハロC1−4脂肪族から選択され、式中、R°の上記C1−4脂肪族基はそれぞれ置換されない。
【0059】
脂肪族基又は非芳香族複素環式環は、1個以上の置換基を含有する場合があり、従って、「場合により置換される」場合がある。他に上に及び本明細書に定義されない限り、脂肪族又はヘテロ脂肪族基の、又は非芳香族複素環式環の飽和炭素上の好適な置換基は、アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素に対して上に列挙したものから選択され、更にこれには以下:即ち、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、又は=NRが含まれ、式中、各Rは、水素又は場合により置換されるC1−6脂肪族基から独立して選択される。
【0060】
他に上に及び本明細書に定義されない限り、非芳香族複素環式環の窒素上の場合による置換基は、一般的に−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R+1、−C(=NH)−N(R、又は−NRSOから選択され;式中、Rは、水素、場合により置換されるC1−6脂肪族、場合により置換されるフェニル、場合により置換される−O(Ph)、場合により置換される−CH(Ph)、場合により置換される−(CH1−2(Ph);場合により置換される−CH=CH(Ph);又は酸素、窒素又は硫黄から独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5〜6員ヘテロアリール又は複素環式環であるか、或いは上の定義に関係なく、同じ置換基又は異なる置換基上の2つの独立したRの出現は、各R°基が結合する原子と一緒になって、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、場合により置換される3〜12員の飽和又は部分不飽和若しくは完全不飽和の単環式又は二環式環を形成する。
【0061】
脂肪族基又はRのフェニル環上の場合による置換基は、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、又はハロ(C1−4脂肪族)から選択され、式中、Rの上記C1−4脂肪族基はそれぞれ置換されない。
【0062】
「アルキリデン鎖」という用語は、直鎖又は分枝炭素鎖を指し、これは、完全に飽和される場合もあれば、1つ以上の不飽和単位を有する場合もあり、分子の残りへの2つの結合点を有する。
【0063】
本明細書で使用される「保護基」という用語は、多官能性化合物中の1つ以上の所望の反応部位を一時的に遮断するために使用される物質を指す。特定の実施形態において、保護基は、以下の特徴を1つ以上、又は好ましくは全て有する:即ち、a)良好な収率にて選択的に反応し、1つ以上の他の反応部位において出現する反応に対して安定した保護基質を得る;及びb)再生された官能基を攻撃しない試薬により良好な収率にて選択的に脱離可能である。保護基の例については、全体の内容が参考として本明細書で援用される、Greene,T.W.,Wuts,P.G in 「Protective Groups in Organic Synthesis」,Third Edition, John Willey&Sons,New York:1999及び本書の他の版に詳述されている。本明細書で使用される「窒素保護基」という用語は、多官能性化合物中の1つ以上の所望の窒素反応部位を一時的に遮断するために使用される物質を指す。好ましい窒素保護基は又、上に例示した特性を有し、特定の例示的窒素保護基も又、全体の内容が参考として本明細書で援用される、Chapter 7 in Greene,T.W.,Wuts,P.G in「Protective Groups in Organic Synthesis」,Third Edition,John Willey&Sons,New York: 1999に詳述されている。
【0064】
幾つかの実施形態において、2つの独立した基の出現は、これらが結合する原子と一緒になって、環を形成する。この環は、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、場合により置換される3〜12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環式又は二環式環である。
【0065】
このような環の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:即ち、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、又はモルホリン−4−イル基。
【0066】
幾つかの実施形態において、アルキル又は脂肪族鎖は、場合により別の原子又は基で中断されてもよい。これは、アルキル又は脂肪族鎖のメチレン単位が、前記の他の原子又は基と場合により置き換えることを意味する。このような原子又は基の例には、−NR−、−O−、−S−、−CO−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRSONR−、−SO−、又は−SO−が含まれるが、これらに限定されず、式中、Rは本明細書に定義される。他に指示がない限り、場合による置き換えによって、化学的に安定した化合物が形成される。場合による中断は、鎖内及び鎖の何れかの端部の両方;即ち、結合点及び/又は末端部の両方で生じてもよい。2つの場合による置き換えは又、化学的に安定した化合物を生じる限り、鎖内で互いに隣接してもよい。他に指示がない限り、置き換え又は中断が末端部で生じる場合、置き換えの原子は末端部上のHに結合する。例えば、−CHCHCHが場合により−O−で中断された場合、結果として得られる化合物は、−OCHCH、−CHOCH、又は−CHCHOHであると考えられる。
【0067】
他に指示がない限り、本明細書に示す構造は、全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー及び幾何異性体(又は立体配座異性体))形態の構造;例えば、各不斉中心のR及びS配置、(Z)及び(E)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)立体配座異性体を含むものとしても意図される。それ故、本化合物の単一の立体化学異性体、並びに鏡像異性体、ジアステレオマー及び幾何異性体(立体配座異性体)の混合物は、本発明の適用範囲内に含まれる。
【0068】
他に指示がない限り、本発明の化合物の全ての互変体形態は、本発明の適用範囲内に含まれる。
【0069】
他に指示がない限り、置換基は、何れかの回転可能な結合の周りを自由に回転してもよい。例えば、
【0070】
【化23】

として示される置換基は、
【0071】
【化24】

も表す。
【0072】
更に、他に指示がない限り、本明細書に示す構造は又、1個以上の同位体に富む原子の存在下においてのみ異なる化合物を含むものとして意図される。例えば、重水素又は三重水素による水素の置き換え、又は13C−若しくは14C−が豊富な炭素による炭素の置き換えを除き本構造を有する化合物は、本発明の範囲内に含まれる。このような化合物は、例えば生物学的検定における分析ツール又はプローブとして有用である。
【0073】
本発明の化合物は、一般的に当業者に公知の方法により調製される場合がある(例えば、参考として本明細書で援用される、国際特許第WO 02/057259号を参照)。これらの化合物は、LCMS(液体クロマトグラフィー質量分析法)及びNMR(核磁気共鳴法)を含むがこれらに限定されない公知の方法により分析される場合がある。
【0074】
スキーム1は、本発明の化合物を調製するために行われる場合がある一般的な合成を図示する。この合成において、ジクロロ−ピペラジン化合物1(適宜、Rで置換)を、チオール(HS−R)と反応させて、化合物2を得る。適切なチオール、並びにこのようなチオールを作製する方法は、当該技術分野で既知である。次いで、化合物2を、適切な複素環アミンと反応させて、式Iの化合物を得る。適切な複素環アミン、即ち、ピラゾール及びチアゾールアミン、並びにこのようなアミンを作製するための方法は、当該技術分野で公知である。これらの反応を実施するための試薬は、当該技術分野で既知である(例えば、Sorrell&Smith,M.B. and March,J.,上掲を参照)。熟練した実施者により認識される通り、保護基は、以下のスキーム1の合成と関連して使用される場合がある(例えば、Greene,T.W.,Wuts,P.G.,上掲を参照)。
【0075】
スキーム1
【0076】
【化25】

従って、本発明の別の実施形態は、式Iの化合物を調製するためのプロセスであって、化合物2を複素環アミンと反応させて式Iの化合物を得ることを含む、プロセスを提供する。
【0077】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物を調製するためのプロセスであって、化合物1をチオール(HS−R)と反応させて化合物2を得ることを含む、プロセスを提供する。特定の実施形態において、本プロセスは更に、複素環アミンの存在下において(本明細書に記載の通り調製される)化合物2を反応させて、式Iの化合物を得ることも含む。
【0078】
一実施形態は、以下の式Iの化合物を調製するプロセスであって:
【0079】
【化26】

以下の式aの化合物:
【0080】
【化27】

(式中、Htは、本明細書に定義される通りである)
を、以下の式2の化合物:
【0081】
【化28】

(式中、R及びRは、本明細書に定義される通りである)と、好適なカップリング条件下で反応させて、式Iの化合物を形成することを含む、プロセスを提供する。好適なカップリング条件は、当業者に公知であり、一般的にはパラジウム触媒、好適な溶剤、及び基剤を伴う。触媒の例には、PdCl(PPh、Pd(Ph、PdCl(dppf)及びPd(dba)が含まれるが、これらに限定されない。基剤の例には、KCO及びNaCOが含まれるが、これらに限定されない。好適な溶剤には、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン及びエタノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
一実施形態は更に、R−SH(式中、Rは、本明細書に定義される通りである)を、以下の式Iの化合物:
【0083】
【化29】

と、好適な置き換え条件下で反応させて、式2の化合物を形成する手順も含む。好適な置き換え条件は、当業者に公知であり、一般的には非求核基剤及び好適な溶剤を伴う。非求核基剤の例には、NaH、LDA、KH、及びKotBuが含まれるが、これらに限定されない。好適な溶剤の例には、THF、DCM、アセトニトリル及びDMFが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の一態様は、タンパク質キナーゼ阻害剤を使用した処置により緩和される患者の疾患状態を処置するための方法であって、このような処置を必要とする患者に式I(本明細書においてはIa及びIbを含む)の化合物の治療有効量を投与することを含む、方法に関する。本方法は、キナーゼ、例えばオーロラキナーゼ(オーロラA、オーロラB、オーロラC)又はFLT−3の阻害剤の使用により緩和される疾患状態を処置するために特に有用である。
【0085】
タンパク質キナーゼ阻害剤としての本化合物の活性は、in vitro、in vivoで、又は細胞株中で検定される場合がある。in vitro検定には、キナーゼ活性又は活性化したキナーゼのATPase活性の何れかの阻害を測定する検定が含まれる。代替となるin vitro検定は、阻害剤のタンパク質キナーゼへの結合能を定量化するものであり、結合前に阻害剤を放射線標識し、阻害剤/キナーゼ複合体を単離し、放射線標識結合量を測定することにより、或いは新たな阻害剤を公知の放射リガンドに結合するキナーゼとインキュベートする競合実験を行うことにより、測定される場合がある。本発明の別の態様は、処置を必要とする対象における癌を処置する方法であって、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩及び抗癌剤の逐次投与又は共投与を含む、方法を対象とする。幾つかの実施形態において、前記抗癌剤は、カンプトテシン、ドキソルビシン、イダルビシン、シスプラチン、タキソール、タキソテレ、ビンクリスチン、タルセバ、MEK阻害剤、U0126、KSP阻害剤、又はボリノスタットから選択される。
【0086】
タンパク質キナーゼ阻害剤又はそれらの薬学的塩は、動物又はヒトに投与するために薬学的組成物に配合される場合がある。キナーゼ媒介病態を処置又は予防するのに有効なタンパク質阻害剤の量及び薬学的に許容される担体を含むこれらの薬学的組成物は、本発明の別の実施形態である。
【0087】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の薬学的に許容される誘導体又はプロドラッグも又、上で特定した障害を処置又は予防する組成物において使用される場合もある。
【0088】
「薬学的に許容される誘導体又はプロドラッグ」は、本発明の化合物の何れかの薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、又はその他の誘導体を意味し、これらは受容体に投与すると、本発明の化合物又は阻害活性代謝産物若しくはその残留物を直接的又は間接的に提供することができる。特に好ましい誘導体又はプロドラッグは、このような化合物を(例えば、経口投与された化合物がより血中に吸収されやすくすることによって)患者に投与すると、本発明の化合物の生物学的利用能を増大させるか、又は親化学種に比べて生物学的コンパートメント(例えば、脳又はリンパ系)への親化合物の送達を増大させるものである。
【0089】
本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグには、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩及びスルホン酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される無機酸及び有機酸、ならびに無機塩基及び有機塩基由来のものが含まれる。好適な酸塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパルギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート、及びウンデカン酸塩が含まれる。その他の酸、例えばシュウ酸は、それ自体薬学的に許容されないものの、本発明の化合物を得る際に中間体として有用な塩及びそれらの薬学的に許容される酸付加塩の調製において使用される場合がある。
【0091】
適切な塩基由来の塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びN(C1−4アルキル)塩が含まれる。本発明は又、本明細書に開示される化合物の何れかの塩基性窒素含有基の四級化も考慮する。水溶性若しくは油溶性又は分散性産物はこのような四級化により得られる場合がある。
【0092】
これらの薬学的組成物において使用される場合がある薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミナム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えばリン酸)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば硫酸プロタミン)、リン酸水素ニナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入式スプレーにより、局所的に、経腸的に、経鼻的に、口腔的に、経膣的に、又は植込み型リザーバーにより投与される場合がある。本明細書で使用される「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内及び頭蓋内注射又は注入法が含まれる。好ましくは、本組成物は、経口、腹腔内又は静脈内投与される。
【0094】
本発明の組成物の滅菌注射型形態は、水性又は油性の懸濁液である場合がある。これらの懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して当該技術分野で既知の技法に従って配合される場合がある。滅菌注射型製剤は又、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶剤の滅菌注射型溶液又は懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール溶液である場合もある。使用される場合がある許容されるビヒクル及び溶剤には、水、リンゲル液及び等張食塩液がある。更に、滅菌された不揮発性油が、溶剤又は懸濁媒体として従来使用される。この目的では、合成モノ又はジグリセリドを含めた何れかの無刺激性の不揮発性油が使用される場合がある。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油又はヒマシ油、特にそのポリオキシエチル化された状態の油と同じように、注射剤の調製において有用である。これらの油剤又は懸濁液は又、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えば、乳液及び懸濁液を含めた薬学的に許容される剤形の配合において一般的に使用されるカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤を含有する場合もある。その他の一般的に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Span及びその他の乳化剤又は生物学的利用能エンハンサーは、薬学的に許容される固体、液体又はその他の剤形の製造に一般的に使用されるが、配合の目的においても使用される場合がある。
【0095】
本発明の薬学的組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液を含むがこれらに限定されない何れかの経口的に許容される剤形で経口投与される場合がある。経口用錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも又、通常添加される。カプセル形態の経口投与において、有用な希釈剤には、ラクトース及び粉末コーンスターチが含まれる。経口用途に水性懸濁液が必要となる場合、有効成分は乳化剤及び懸濁剤と混合される。所望の場合、特定の甘味剤、矯味剤又は着色剤も又添加される場合がある。
【0096】
或いは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与用の座剤の形態で投与される場合がある。これらは、好適な非刺激賦形剤を有する物質を混合することにより調製されてもよいが、この賦形剤は、室温では固体であるが、直腸温度では液体であり、それ故、直腸において溶解して薬剤を放出する。このような材料には、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0097】
本発明の薬学的組成物も又、特に処置の標的が、目、皮膚又は下部腸管の疾患を含めた、局所塗布により容易に到達できる領域又は器官を含む場合に、局所投与される場合もある。これらの領域又は器官のそれぞれには、好適な局所配合物が容易に調製される。
【0098】
下部腸管の局所塗布は、直腸座剤製剤(上記参照)又は好適な浣腸製剤にて行うことができる。局所経皮パッチも使用される場合がある。
【0099】
局所塗布において、薬学的組成物は、1つ以上の担体に懸濁又は溶解される活性成分を含有する好適な軟膏にて配合される場合がある。本発明の化合物の局所投与のための担体には、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、及び水が含まれるが、これらに限定されない。或いは、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解される活性成分を含有する好適なローション又はクリームにて配合してもよい。好適な担体には、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
眼科での使用において、薬学的組成物は、塩化ベンジルアルコニウム等の防腐剤の有無にかかわらず、pH調節された等張性滅菌生理食塩水の微粒化懸濁液として、又は好ましくはpH調節された等張性滅菌生理食塩水の溶液として配合される場合がある。或いは、眼科での使用において、薬学的組成物は、ワセリン等の軟膏にて配合される場合もある。
【0101】
本発明の薬学的組成物は又、鼻エアロゾル又は吸入により投与される場合もある。このような組成物は、薬学的配合の技術分野で周知の技法に従って調製され、ベンジルアルコール又はその他の好適な防腐剤、生物学的利用能を増大させる吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又はその他の従来の可溶化剤又は分散剤を使用した生理食塩溶液として調製される場合がある。
【0102】
担体材料と混合して単回投与形態をもたらす場合があるキナーゼ阻害剤の量は、処置する宿主、特定の投与様式により異なる。好ましくは、本組成物は、阻害剤0.01〜100mg/体重kg/日の用量を、これらの組成物が与えられる患者に投与することができるように配合されなければならない。
【0103】
又、何れかの特定の患者の具体的な用量及び処置計画は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物併用、及び処置する医師の判断、並びに治療する特定の疾患の重症度を含めた種々の因子により異なることも理解されなければならない。阻害剤の量は又、本組成物中の特定の化合物によっても異なる。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明は、キナーゼ媒介病態を処置又は予防する方法であって、上記の薬学的組成物の1つを患者に投与する手順を含む、方法を提供する。本明細書で使用される「患者」という用語は、動物、好ましくはヒトを意味する。
【0105】
本明細書で使用される「キナーゼ媒介状態」という用語は、タンパク質キナーゼが役割を果たすことが知られている疾患又はその他の有害な病態を意味する。このような病態には、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経系及び神経変性疾患、癌、心血管系疾患、アレルギー、及び喘息が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、「癌」という用語には、以下の癌が含まれるが、これらに限定されない:類表皮口部:口腔、口唇、舌、口、咽頭;心部:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液種、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞又は類表皮、未分化型小細胞、未分化型大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸管:食道(扁平上皮細胞癌、喉頭、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫(Karposi’s sarcoma)、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛線腫、過誤腫、平滑筋腫)、結腸、結腸−直腸、結腸直腸;直腸、尿生殖器部:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫、胆管経路;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ種(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨種(孤立性骨軟骨性外骨腫症)、良性軟骨種、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科系:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(頚癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性胞嚢性腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、未分類型癌]顆粒膜−莢膜細胞腫瘍、セルトーリ・ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫)、乳房;血液学系:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、脊髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫]毛様細胞;リンパ細胞障害;皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、角化棘細胞腫、異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬、甲状腺:甲状腺乳頭癌、甲状腺濾胞腺癌;甲状腺髄様癌、未分化型甲状腺癌、多発性内分泌腫瘍2A型、多発性内分泌腫瘍2B型、家族性甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、傍神経節腫;及び副腎:神経芽細胞腫。従って、本明細書で示される「癌細胞」という用語には、上で特定した病態の何れか1つにより罹患された細胞が含まれる。幾つかの実施形態において、癌は、結腸直腸、甲状腺又は乳癌から選択される。
【0106】
幾つかの実施形態において、「癌」という用語には、以下の癌が含まれるが、これらに限定されない:乳房;卵巣;子宮頸部;前立腺;精巣、尿生殖器;食道;喉頭、膠芽腫;神経芽細胞腫;胃;皮膚;角化棘細胞腫;肺;類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌;骨;結腸、腺腫;膵臓、腺癌;甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭状癌;精上皮腫;黒色腫;肉腫;膀胱癌;肝臓癌及び胆管経路;腎臓癌;骨髄性障害;リンパ系障害、ホジキン毛様細胞;口腔及び咽頭(口部)、口唇、舌、口、咽頭;小腸;結腸−直腸、大腸、直腸;脳及び中枢神経系;並びに白血病。
【0107】
好ましくは、これらの方法は、癌、例えば、乳房癌、結腸癌、前立腺癌、皮膚癌、膵臓癌、脳腫瘍、尿生殖器癌、リンパ腺癌、胃癌、喉頭癌及び肺癌(肺腺癌及び小細胞肺癌を含む);脳卒中、糖尿病、骨髄腫、肝腫脹、心肥大、アルツハイマー病、嚢胞性線維症及びウイルス性疾患、又は上記の何れか特定の疾患若しくは障害から選択される病態を処置又は予防するために使用される。
【0108】
幾つかの実施形態において、これらの方法は、黒色腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫から選択される病態、或いは結腸癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、中枢神経(CNS)癌、腎臓癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、脳腫瘍(神経膠腫)、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、黒色腫、肉腫若しくは甲状腺癌から選択される癌を処置又は予防するために使用される。
【0109】
別の実施形態によれば、本発明は、キナーゼ媒介病態を処置又は予防する方法であって、式Iの化合物又は前記化合物を含む組成物を患者に投与する手順を含む、方法を提供する。幾つかの実施形態において、前記キナーゼは、オーロラ又はFLT−3キナーゼである。
【0110】
本発明の別の態様は、患者のキナーゼ活性を阻害する方法であって、式Iの化合物又は前記化合物を含む組成物を患者に投与することを含む、方法に関する。幾つかの実施形態において、前記キナーゼは、オーロラ又はFLT−3キナーゼである。本発明の別の態様は、処置を必要とする患者における癌を処置する方法であって、本発明の化合物でオーロラを阻害することにより癌細胞の有糸分裂を崩壊する手順を含む、方法に関する。
【0111】
本発明の別の態様は、生物学的試料におけるキナーゼ活性を阻害する方法であって、前記生物学的試料を式Iの化合物又は前記化合物を含む組成物と接触させることを含む、方法に関する。本明細書で使用される「生物学的試料」という用語は、in vitro又はex vivoの試料を意味し、これには、細胞培養物又はそれらの抽出物;哺乳動物由来の生検材料又はそれらの抽出物;及び血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液又はその他の体液若しくはそれらの抽出物が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
生物学的試料におけるキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知である種々の目的のために有用である。このような目的の例には、輸血、臓器移植、生物学的標本の保存、及び生物学的検定が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
処置又は予防する特定の病態により、通常この病態を処置又は予防するために投与される追加の薬剤は、本発明の化合物と共に投与される場合がある。例えば、化学療法剤又はその他の抗増殖剤は、増殖性疾患を処置するために本発明の化合物と併用される場合がある。幾つかの実施形態においては、癌を処置するために併用される場合がある。
【0114】
これらの追加の物質は、キナーゼ阻害剤含有化合物又は組成物由来の複数回投与計画の一部として、別々に投与される場合がある。或いは、これらの物質は、単回投与形態の一部に含まれ、単一組成物中のキナーゼ阻害剤と共に混合される場合がある。
【0115】
本発明の化合物の活性を評価するための方法(例えば、キナーゼ検定)は、当該技術分野で公知であり、又、以下の実施例に示される。本発明がより完全に理解されるようにするため、以下の調製及び試験例を示す。これらの実施例は、単に例示を目的としたものであり、如何なる方法でも本発明の範囲を制限するものとして解釈されることはない。
【0116】
化合物I−1及びI−2を、以下のように調製及び分析した。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
【0118】
【化30】

N−(4−(6−クロロピラジン−2−イルチオ)フェニル)シクトプロパンカルボキサミド
N−(4−メルカプトフェニル)シクロプロパンカルボキサミド(16.1mmol)のTHF(25mL)溶液に、0℃にて水素化ナトリウム(16.1mmol)を少量ずつ添加した。添加が完了したら、結果として得られた溶液を室温にて30分間撹拌した。その後、反応混合物を0℃にて冷却し、2,6−ジクロロピラジン(13.4mmol)溶液を添加し、結果として得られた混合物を室温にて16時間撹拌した。水(30mL)及び酢酸エチル(30mL)を添加し、相を分離した。水層を酢酸エチル(2×30mL)で更に抽出し、混合有機相を乾燥させ(MgSO)、真空濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAC/石油エーテル、0〜100%EtOAc勾配)により精製し、クリーム色の固体として表題化合物を得た(2.95g、72%)。
【0119】
【化31】

N−(4−(6−(5−メチルチアゾール−2イルアミノ)ピラジン−2−イルチオ)フェニル)シクロプロパンカルボキサミド(I−1)
N−(4−(6−クロロピラジン−2−イルチオ)フェニル)シクロプロパンカルボキサミド(0.82mmol)及び2−アミノ−5−メチルチアゾール(0.86mmol)の1,4−ジオキサン(3mL)溶液に、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(0.05mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.03mmol)及び炭酸ナトリウム(1.15mmol)を添加した。結果として得られた溶液をマイクロ波(175W、25psi)において120℃にて3時間加熱した。水(10mL)及び酢酸エチル(10mL)を添加し、層を分離した。水層を酢酸エチルで更に抽出し(2×10mL)、混合有機層を乾燥させ(MgSO)、真空濃縮した。残留物をMeOH:CHCl(1:20)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡褐色の固体として表題化合物を得た(42.5mg、14%)。
【0120】
【化32】

(実施例2)
【0121】
【化33】

N−(4−(6−(3−メチル−1H−ピラゾール−5−イルアミノ)ピラジン−2−イルチオ)フェニル)シクロプロパンカルボキサミド(I−2)
N−(4−(6−クロロピラジン−2−イルチオ)フェニル)シクロプロパンカルボキサミド(0.49mmol)及び3−アミノ−5−メチルピラゾール(0.52mmol)の1,4−ジオキサン(3mL)溶液に、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(0.03mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.69mmol)を添加した。結果として得られた溶液をマイクロ波(175W、25psi)において120℃にて30分間加熱した。水(10mL)及び酢酸エチル(10mL)を添加し、層を分離した。水層を酢酸エチルで更に抽出し(2×10mL)、混合有機層を乾燥させ(MgSO)、真空濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAC/石油エーテル、0〜100%EtOAc勾配)により精製した後、質量分離HPLC精製装置(Sunfire C18カラム、溶離剤としてのトリフルオロ酢酸/MeCN/MeOH)を使用して更に精製し、淡黄色の固体として表題化合物を得た(10.6mg、6%)。
【0122】
【化34】

(実施例3:オーロラ2(オーロラA)阻害検定)
標準結合酵素検定(Fox,et al.,Protein Sci.,(1998)7,2249)を使用してオーロラ2の阻害能に対して化合物をスクリーニングする。Hepes 100mM(pH7.5)、MgCl 10mM、DTT 1mM、NaCl 25mM、ホスホエノールピルベート2.5mM、NADH 300μM、ピルビン酸キナーゼ30μg/mL及び乳酸脱水素酵素10μg/mLの混合物において、検定を実施する。検定の最終基質濃度は、ATP 400μM(Sigma Chemicals)及びペプチド570μM(Kemptide,American Peptide[米国カリフォルニア州サニーベール])である。検定を30℃にて及びオーロラ2 40nMの存在下において実施する。
【0123】
オーロラ2及び対象試験化合物を除く上に列挙される試薬全てを含有する検定ストック緩衝溶液を調製する。ストック溶液55μLを96ウェルプレートに入れ、その後、試験化合物のDMSOストック含有連続希釈液2μLを添加する(一般的には、最終濃度7.5μMから始める)。プレートを30℃にて10分間プレインキュベートし、オーロラ2
10μLを添加することにより反応を開始する。反応の開始速度を10分間にわたり、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーで測定する。IC50及びKiデータをPrismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh、GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、非線形回帰分析より算出する。化合物I−1及びI−2は、Ki値<0.1μMにてオーロラ2を阻害する。
【0124】
(実施例4:オーロラ1(オーロラB)阻害検定(放射分析))
HEPES 25mM(pH7.5)、MgCl 10mM、BSA 0.1%及びグリセロール 10%からなる検定緩衝溶液を調製する。DTT 1.7mM及びKemptide 1.5mM(LRRASLG)も含有するオーロラB溶液22nMを検定緩衝液として調製する。96ウェルプレート中のオーロラB溶液22μLにDMSOの化合物ストック溶液2μLを添加し、混合物を25℃にて10分間平衡化する。検定緩衝液に調製したストック[γ−33P]−ATP溶液(約20nCi/μL)16μLを添加することにより、酵素反応を開始し、最終検定濃度800μMとする。反応は、500mMリン酸16μLの添加により3時間後に停止させ、ペプチド基質への33P取り込み濃度を以下の方法により測定する。ホスホセルロース96ウェルプレート(Millipore、カタログ番号MAPHNOB50)を、酵素反応混合物(40μL)を添加する前に100mMリン酸100μLで前処理する。溶液をホスホセルロース膜に30分間浸漬させ、次いで、プレートを100mMリン酸200μLで4回洗浄する。シンチレーション計数(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter、Wallac)の前に、Optiphase 「SuperMix」液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)30μLを乾燥プレートの各ウェルに添加する。[γ−33P]−ATP溶液を添加する前に、全ての検定構成要素を含有する対照ウェルに(酵素を変性させるように作用する)500mMリン酸16μLを添加することにより、酵素触媒されていないバックグランド放射活性の濃度を測定する。酵素触媒された33P取り込み濃度を各阻害濃度にて測定したものから平均バックグランド計数を差し引くことにより算出する。各Ki測定において、一般的に0〜10μM濃度の化合物を範囲とするデータポイント8点を二連で得る(出発化合物ストック10mMからDMSOストックを調製し、続いて1:2.5連続希釈する)。Ki値は、Prismソフトウェアパッケージ(Prism 3.0、Graphpad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して非線形回帰により初速度データより算出する。化合物I−2は、Ki値<1.0μMにてオーロラ2を阻害する。
【0125】
(実施例5:FLT−3 阻害検定)
フィルター結合放射検定を使用して、FLT−3活性の阻害能に対して、化合物をスクリーニングする。この検定は、基質ポリ(Glu、Tyr)4:1(pE4Y)への33P取り込みをモニターする。反応をHEPES 100mM(pH7.5)、MgCl
10mM、NaCl 25mM、DTT 1mM、BSA 0.01%及びDMSO 2.5%を含有する溶液にて実施する。検定の最終基質濃度はATP 90μM及びpE4Y 0.5mg/mL(共に、Sigma Chemicals[米国ミズーリ州セントルイス])である。本発明の化合物の最終濃度は、一般的に0.01〜5μMである。一般的に、試験化合物のDMSOストック10mMから連続希釈液を調製することにより、12点滴定法を実施する。反応は室温にて実施する。
【0126】
2つの検定溶液を調製する。溶液1は、HEPES 100mM(pH7.5)、MgCl 10mM、NaCl 25mM、pE4Y 1mg/mL及びATP 180mMを含有する(各反応において[γ−33p]ATP0.3mCiを含有)。溶液2は、HEPES 100mM(pH7.5)、MgCl 10mM、NaCl 25mM、DTT 2mM、BSA 0.02%及びFLT−3 3nMを含有する。検定を、溶液1 50μL及び本発明の化合物2.5mLそれぞれを混合することにより、96ウェルプレートにて実施する。反応は溶液2を使用して開始する。室温にて20分間インキュベーションし、その後ATP 0.4mMを含有する20%TCA 50μLを使用して反応を停止する。次いで、反応量全てをフィルタープレートに移し、TOMTEC(Hamden、CT)のHarvester 9600により、5% TCAを使用して洗浄する。pE4yへの33P取り込み量をPackard Top Count Microplate Scintillation Counter(Meriden、CT)により分析する。Prismソフトウェアを使用してデータをフィッティングし、IC50又はKiを得る。化合物I−1及びI−2は、Ki値<1.0μMにてFLT−3を阻害する。
【0127】
本明細書で引用する全ての文書は、参考として本明細書で援用される。
【0128】
以上において本発明の幾つかの実施例を記載してきたが、これらの基本的な実施例を変更して、本発明の化合物、方法及びプロセスを利用するその他の実施形態を提供する場合があることは明白である。それ故、本発明の適用範囲は、本明細書の実施例として表されている特定の実施形態よりむしろ添付の特許請求の範囲により定義されることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2013−14632(P2013−14632A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−234358(P2012−234358)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2008−527148(P2008−527148)の分割
【原出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】