説明

ピラン誘導体、香料及び香味料としてそれらを調製かつ使用する方法

本発明は、一般式(I)のピラン誘導体(式中、Yは、5、6、または7員環であって、好ましくは5員環であり、メチルもしくはエチルで一置換または多置換であり、任意に不飽和あってもよく、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、Xは、存在するか、或いは存在せず;Xが存在するとき、R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であって、ここでZは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり;Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつR7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R7、R8、R9は存在し;R5〜R12基が存在するとき、それら基は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である);及び香料もしくは香味料として式(I)のピラン誘導体の少なくとも1種の使用、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料及び香味料の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、ピラン誘導体、それらの調製方法、及び香料及び香味料の分野におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中で使用される用語「香料」及び「芳香性」は、化合物または複数の化合物の混合物が参照されるとき、同じ意味で使用され、嗅覚を心地よく刺激することを意味する。
【0003】
本明細書中で使用される用語「香味」及び「香味料」は、化合物または複数の化合物の混合物が参照されるとき、同じ意味で使用され、味覚及び嗅覚を刺激することを狙いとしている。また本発明における解釈として、用語「香味料」は、任意の液体もしくは固体、ヒトもしくは動物、とりわけ、飲料、日用品、アイスクリーム、スープ、ソース、ディップ、料理、肉製品、料理の付け合わせ、塩味のビスケットもしくはスナック類の香味料に関するものである。これは、ビール、ワイン、及びタバコの香味料も含まれる。
【0004】
香料及び香味料など、本明細書中において使用される用語「感覚刺激性化合物」は、嗅覚または味覚に刺激を与える本発明に係る化合物を示しており、それ故に、それら化合物は香り及び/または味として知覚されることになる。
【0005】
用語「マスキング」とは、製品の組成物中に1以上の分子が侵入することで悪臭もしくは好ましくない香味知覚を低減、或いは除去することを意味する。
【0006】
本発明において、用語「異性体」とは、同じ化学式を有する分子を意味し、同じ数及び同じ種類の原子を意味するが、原子が異なって配置されることを意味する。用語「異性体」は、構造異性体、幾何異性体、光学異性体、及び立体異性体を含む。
【0007】
本発明において、用語「アルキル」または「アルキル基」とは、好ましくは1、2、3、4もしくは5個の炭素原子を有する、任意の直鎖もしくは分岐した飽和炭化水素鎖を意味し、本明細書中においては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチルなど、炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0008】
本発明において、用語「アルケニル」または「アルケニル基」とは、好ましくは2、3、4もしくは5個の炭素原子を有する、任意の直鎖もしくは分岐の、単不飽和または複不飽和炭化水素鎖を意味し、本明細書中においては、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニルまたはペンテニルなど、炭素数2〜5のアルケニル基を示す。
【0009】
本発明において、用語「シクロアルキル」または「シクロアルキル基」とは、好ましくは5、6もしくは7個の炭素原子を有する、任意の環状飽和炭化水素基を意味し、例えば、上記のアルキルもしくはアルケニル基で置換または未置換の、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルなどが挙げられる。
【0010】
本発明において、用語「シクロアルケニル」または「シクロアルケニル基」とは、好ましくは5、6もしくは7個の炭素原子を有する、任意の環状単不飽和または複不飽和炭化水素鎖を意味し、例えば、上記のアルキルもしくはアルケニルで置換または未置換の、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプテニルなどが挙げられる。
【0011】
本発明において、用語「シクロアルキルアセトアルデヒド」は、シクロアルキル基で置換されたアセトアルデヒドを表す。
【0012】
本発明において、用語「シクロアルケニルアセトアルデヒド」は、シクロアルケニル基で置換されたアセトアルデヒドを表す。
【0013】
テトラヒドロピラン及びジヒドロピラン誘導体は、香料原料の重要な位置を占めており、既知化合物を調製するために数多くの研究がなされており、例えば、米国特許第3,681,263号明細書(特許文献1)及び国際公開第04/009749号(特許文献2)に記載されているように、直鎖もしくは分岐したアルキルまたはアルケニルアルデヒドから、或いはスイス特許第655932号(特許文献3)に記載されているように、ベンジルアルデヒドから調製されたローズオキシド(Rose Oxide)及び類似の誘導体が挙げられる。
【0014】
同様に、米国特許第4,963,285号明細書(特許文献4)、米国特許第4,962,090号明細書(特許文献5)に記載されるように、ピラノール類のエステルもしくはエーテルは、香料業界において関心が持たれている。
【0015】
米国特許第2,452,977号明細書(特許文献6)は、環状化合物の製造方法に関連し、この方法によると、不飽和アルコールがアルデヒドと反応することで環内に酸素原子を有する環状化合物が得られる。得られた幾つかの化合物はピランである。
【0016】
新規化合物の需要は、特定の材料の使用に関するより厳しい国際規制基準のみならず、環境に対する懸念及び性能の向上を望む顧客の需要に近年直面している、香味料及び香料の業界の発展にとって極めて重要な課題である。それ故に、新規香料化合物を製造することは重要な課題である。
【0017】
新規芳香性化合物を特定するための他なるピラン誘導体を探索するとき、本出願人は、出発物質として環状側鎖(lateral cyclic chain)、具体的にはシクロアルキルアセトアルデヒド及びシクロアルケニルアセトアルデヒドに注目した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第3,681,263号明細書
【特許文献2】国際公開第04/009749号
【特許文献3】スイス特許第655932号
【特許文献4】米国特許第4,963,285号明細書
【特許文献5】米国特許第4,962,090号明細書
【特許文献6】米国特許第2,452,977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記いずれの文献においても、ピラン誘導体を調製するのにシクロアルキルアセトアルデヒド或いはシクロアルケニルアセトアルデヒドの使用について示唆もなく、また結果として得られるピラン誘導体が新規化合物であることから、それら化合物に由来する嗅覚または感覚器官を刺激する特性に関する従来技術の情報も存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明は、一般式(I)で示されるピラン誘導体に関する。
【化1】

[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であり、好ましくは5員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、かつ任意に不飽和であってもよく、
・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Xは、存在するか、または存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9は存在し、
・R5〜R12基が存在するとき、それら基は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【0021】
好ましくは、Yは、メチルもしくはエチルで一置換または多置換された、任意に不飽和である、5、6、もしくは7員環である。
【0022】
一実施形態によると、本発明に係る好適なピラン誘導体は一般式(I)で示される誘導体である。
[式中、
・Yは、5員環であり、前記環は飽和であるか1つの二重結合を含み、前記環はメチルもしくはエチルで一置換または多置換され、好ましくは、Y=
【化2】

であり、式中、R’1、R’2、及びR’3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基またはエチル基であり、R’1、R’2、及びR’3の少なくとも1つはメチルもしくはエチル基であり、ここで、点線は二重結合を表し、存在するかまたは存在せず、
・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Xは、存在するか、或いは存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9は存在し、
・R5〜R12基が存在するとき、それら基は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、上記の一般式(I)で示されるピラン誘導体である。
[式中、
・Yは、(Y1)、(Y2)、(Y3)または(Y4)のいずれか1つの基であり、
【化3】

・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Xは、存在するか、或いは存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9は存在し、
・それらが存在するとき、R5〜R12基は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【0024】
その他の実施形態では、上記の一般式(I)で示される好適なピラン誘導体は、式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であり、好ましくは5員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、かつ任意に不飽和であってもよく、或いはYは(Y1)、(Y2)、(Y3)、(Y4)基であり、
・R3またはR4の一方は水素原子であり、もう一方の基はメチル基であり、
・R7は、=CH2基であり、かつXは存在せず、或いは、
・R7はメチル基であり、かつXは存在するか、または存在せず;R7がメチル基であってXが存在するとき、Xは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり;R7がメチル基であってXが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R8及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6が存在し、R8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、
・R1、R2、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・存在するとき、R5、R6、R8、R9は、それぞれ水素原子
であるピラン誘導体である。
【0025】
更なる他の実施形態において、上記に示す一般式(I)の好適なピラン誘導体は、4-メチレン-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペント-3-エニルメチル)-テトラヒドロピラン、4-メチル-6-(2,2,3-トリメチル-シクロペント-3-エニルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペント-3-エニルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピラン、4-メチレン-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピラン、4-メチル-6-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-2-(2,2,3-トリメチルーシクロペンチルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-4-(3-メチル-ブト-3-エニルオキシ)-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピランを含む群から選択される。
【0026】
その他の実施形態によると、本発明に係るピラン誘導体は、一般式(I)で示されるピラン誘導体である。
[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、または、
・Yは、5もしくは7員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、または、
・Yは、5もしくは6員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく(但し、二重結合は1’位に存在しない)、または、
・Yは、7員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されているか、一不飽和であり、または、
・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Xは、存在するか、または存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9は存在し、
・R5〜R12基が存在するとき、それら基は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【0027】
第2の実施態様では、本発明は、本発明に係るピラン誘導体の調製方法に関するものであり、前記方法は、一般式(A)の化合物
【化4】

[式中、
Yは、5、6、もしくは7員環であって、好ましくは5員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、かつ任意に不飽和であってもよく、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である]
を、酸存在下で、一般式(B)の化合物
【化5】

[式中、
・R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキル基、または直鎖もしくは分岐した炭素数2〜5のアルケニル基である]
と反応させる。
【0028】
本発明の実施形態によると、方法は、アルコール(B)と反応させる以前に、アルデヒド(A)を一般式(C)のアセタール体
【化6】

[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であり、好ましくは5員環であって、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、かつ任意に不飽和であってもよく、
・R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Zは、R10であり、ここでR10は直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である]
に変換する工程をさらに備える。
【0029】
一実施形態によると、(A)及び/または(B)及び/または(C)は、工学的に純粋な異性体として用いられる。
【0030】
その他の実施形態では、本発明は、化合物(A)または化合物(C)を、酸存在下で、化合物(B)と反応させ、その結果得られる混合物から、式(I)で示される種々の化合物(式中、XはOZであり、Zは水素原子または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、或いはXは存在しない)が分離される、上記記載の方法に関する。
【0031】
本発明のその他の実施形態によると、酸存在下で、化合物(A)と化合物(B)とを反応させ、その結果得られる化合物より、式(I)においてXがOHである化合物が、式(I)においてXが存在しない化合物から分離され、続いて、式(I)においてXがOC(O)R10である化合物を得るためにエステル化反応に供される。エステル化反応は、当業者に知られている従来の方法で実施してよい。
【0032】
本発明のその他の実施形態によると、酸存在下で、化合物(A)を化合物(B)と反応させ、その結果得られる化合物より、式(I)においてXがOHである化合物が、式(I)においてXが存在しない化合物から分離され、続いて、式(I)においてXがOZである化合物(Zは、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である)を得るためにアルキル化反応に供される。
【0033】
アルキル化反応は、当業者に知られている従来の方法で実施してよい。
【0034】
その他の具体的な実施形態では、本発明は、化合物(A)を化合物(B)と反応させ、その結果得られるピラン誘導体の混合物を、酸存在下、脱水反応に供される、上記記載の方法に関するものであり、前記方法は、Xが存在せず、4位に二重結合が存在する、式(I)の化合物の製造をもたらすことになる。
【0035】
分離した工程は、当業者に知られている任意の手法によって実施されてもよい。
【0036】
本発明に係るその他の実施態様は、式(II)の化合物を少なくとも1種、及び/または一般式(III)の化合物を少なくとも1種、及び/または一般式(IV)の化合物を少なくとも1種、並びに任意に、(V)及び/または(VI)を含んでいてもよい組成物である。
【化7】

[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であって、好ましくは5員環であり、任意にメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてよく、かつ任意に不飽和であってもよく、
・R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Zは、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基、或いはC(O)R10基であり、ここで、R10は、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【0037】
本発明は、上述したとおり、式(I)の化合物に関するが、対応する様々な異性体にも関連している。
【0038】
最後の実施態様において、本発明は、上述した式(I)の化合物の使用に関する。
【0039】
第1の実施形態では、本発明は、香料を染み込ませた基材及び濃縮物、芳香剤、香水及び同様の製品;トピック組成物(topic compositions);フェイスクリーム、ボディクリーム、クレンザー、顔用トリートメント、タルクパウダー、毛髪オイル、シャンプー、ヘアローション、バスオイル、バスソルト、シャワー及びバス用ジェル、石鹸、制汗剤、脱臭剤、プレシェイブ、シェイビング、ポストシェイブクリーム及びローション、クリーム類、歯磨き粉、マウスウォッシュ、ポマードなどの化粧品組成物;柔軟剤、洗剤、防臭剤、及び家庭用クリーニング用品などのクリーニング製品;を製造するために香料としての、上記記載した少なくとも1種の化合物もしくは組成物の使用に関する。それ故に、本発明は、式(I)の化合物を少なくとも1種、或いは式(I)の化合物の異性体を1種以上含有している香料組成物にも関連している。
【0040】
第2の実施形態では、本発明は、飲料、日用品、アイスクリーム、スープ、ソース、ディップ、料理、肉製品、料理の付け合わせ、塩味のビスケットもしくはスナック類、及びビール、ワイン、タバコなどの香味組成物または製品を調製するための香味剤としての、上記の少なくとも1つの化合物もしくは組成物の使用に関する。それ故に、本発明は、式(I)の化合物を少なくとも1種、或いは式(I)の化合物の異性体を1種以上含有している香味組成物にも関連している。
【0041】
第3の実施形態では、本発明は、香り及び/または香味料のマスキング剤としての、上記に記載した化合物もしくは組成物の使用に関するものであり、少なくとも1つの式(I)の化合物、または1つ以上の式(I)の化合物の異性体を含む、任意の医薬、化粧品、食品組成物に関連する。それ故に、本発明は、適当な賦形剤、とりわけ医薬または化粧品または食品賦形剤と併用される、本明細書に記載された式(I)の化合物を少なくとも1種以上含有している任意の組成物にも関連している。
【0042】
本発明に係る化合物は、単独またはその他の香料もしくは香味料の原料、溶媒、添加剤或いは固定剤と併用して用いてもよく、当業者は、所望の効果、ならびに香りが放たれたり或いは香味を有したりする製品の特性について選択してもよい。本発明は、例えば、式(I)の化合物の異性体を1種以上含有している任意の組成物を含んでもよい。好適な実施形態によると、本発明は、式(I)の化合物の異性体を少なくとも2もしくは3種含有する組成物に関している。
【0043】
その他の実施形態では、上記のような使用において、本発明に係る化合物を、0.001〜99質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜30質量%の範囲で含む濃縮物として用いられる。これらの数値は、芳香で満たされ、かつ/もしくは風味が付けられる組成物/物質の本質的な特性、及び前記組成物もしくは物質中に含まれるその他の原料の特性に依存することは当業者には明らかであろう。好適な実施形態によると、本発明に係る化合物は、嗅覚的に有効な量で用いられる。ここで、「嗅覚的に有効な量」とは、取り込まれた化合物が感覚的効果を発揮する、物質中の香料/香味料化合物のレベルもしくは量を意味する。
【0044】
以下の実施例は、本発明に係る化合物の調製方法及びそれらの使用について詳しく説明する。それらの実施例は、あくまでも本発明の例示であり、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0045】
実施例1:
4-メチレン-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンテ-3-エニルメチル)-テトラヒドロ-ピラン(A)
4-メチル-6-(2,2,3-トリメチル-シクロペンテ-3-エニルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン(B)
4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンテ-3-エニルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン(C)
の調製
トルエン中、1当量のカンホレンアルデヒドと、2当量の3-メチル-3-ブテン-1-オールとを、触媒量のPTSA存在下加熱し、還流させながら生成した水を除去した。反応終了後(3時間)、混合物を冷却し、トルエンで希釈した。飽和重炭酸塩水溶液及びブラインで洗浄した後、有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして溶媒を濃縮することで粗製オイルを得た。
蒸留して得られた生成物(82℃/0.8torr)は、27:16:57の比率で異性体(A)、(B)、及び(C)を含んでいる。
【化8】

生成物は、極めて強い柑橘系(ビターなオレンジ、プチグレン油)、青葉(ガルバヌム、エンドウ)様の臭気を有している。
異なる異性体を、精密分画蒸留法によって、充填カラムを用いて部分的に還流させながら分離して得た。それぞれの異性体は、2つのジアステレオ異性体の混合物である。
1H-NMR (CDCl3, 200MHz): 共通するプロトンピークδ(ppm) 0.75 (s, 3H), 0.97 (s, 3H), 1.25-2.5 (m, 7H), 1.59 (s, 3H), 5.22 (m, 1H).
特徴的なプロトンピーク:
(A) δ(ppm) 1.25-2.5 (m, 2H), 3.2-3.7 (m, 3H), 4.7 (m, 2H).
(B) δ(ppm) 1.68 (s, 3H), 3.9-4.2 (m, 3H), 5.32 (m, 1H).
(C) δ(ppm) 1.68 (s, 3H), 3.2-3.7 (m, 1H), 3.9-4.2 (m, 2H), 5.4 (m, 7H).
IR (フィルム, cm-1): 796m, 1014m, 1095m, 1122s, 1138m, 1360m, 1382m, 1437m, 1445m, 1463m, 2864s, 2930s, 2955s.
MS [e/m (%)]: 220(M+, 12), 149(5), 135(4), 119(8), 108(100), 93(59), 79(19), 67(35), 53(20), 41(48).
【0046】
実施例2:
4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピランの調製
実施例1で調製した異性体の混合物を、エタノール溶媒中、触媒量のパラジウム木炭(palladium on charcoal)(5%)を添加し、常圧の水素ガス雰囲気下で反応を行うことで、所望のテトラヒドロピラン体を得た。反応混合物をClarcel(登録商標)での濾過により得られた粗生成物を、蒸留(88℃/0.7torr)によって精製した。精製物は、4組のジアステレオ異性体を含む(2つの主生成物及び2つの副生成物であり、それらの比率は、36:42:10:12である)。
生成物は、ビターなオレンジの、木のようであり、若干埃っぽい/麝香の臭気を有している。
1H-NMR (CDCl3, 200MHz): 共通するプロトンピークδ(ppm) 0.46 & 0.48 (s, 3H), 0.65-0.87 (m, 6H), 0.90-1.30 (m, 4H), 1.30-2.20 (m, 9H), 3.10-3.75 (m, 2H).
主異性体:特徴的なプロトンピークδ(ppm) 0.90 (d, J=6.1Hz) & 0.91 (d, J=6.2Hz) : 3H; 3.85-4.0 (m, 1H).
副異性体:特徴的なプロトンピークδ(ppm) 1.01 (d, 1H, J=7.1Hz) & 1.02 (d, 1H, J=7.1Hz) : 3H; 3.10-3.75 (m, 1H).
13C-NMR (CDCl3, 60MHz):
主異性体: 13.9 & 14.26, 22.36 & 24.40, 25.37 & 25.46, 28.11 & 28.39, 30.14 & 30.26, 30.27 & 30.41, 34.75 & 34.82, 37.40 & 37.51, 40.21 & 41.87, 42.03 & 42.35, 44.90 & 44.96, 46.11 & 47.01, 67.99 & 68.12, 76.37 & 77.18.
副異性体(選択された値): 13.90 & 14.26, 18.72 & 19.18, 24.78 & 24.94, 28.0 & 28.32, 32.4 & 32.62, 35.44 & 35.96, 37.19 & 38.82, 44.87, 47.4.
IR (フィルム, cm-1): 1095s, 1177m, 1366m, 1374m, 1386m, 1456m, 1466m, 2838m, 2869s, 2926s, 2952s.
MS [e/m (%)]: 224 (M+, 1), 99(100), 55(18), 43(19), 41(17).
【0047】
実施例3:
4-メチレン-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピラン(A)
4-メチル-6-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン(B)
4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン(C)
の調製
【化9】

実施例1に従って、水素化カンホレンアルデヒドを出発原料として、63:14:23の比率で異性体(A)、(B)及び(C)の混合物を調製した。
生成物の臭気は、実施例1の生成物の臭気と類似している。
主異性体(A):
1H-NMR (CDCl3, 200MHz): δ(ppm) 0.45-0.55 (m, 3H), 0.75-0.85 (m, 6H), 1.0-1.3 (m, 2H), 1.3-1.55 (m, 3H), 1.55-2.0(m, 5H), 2.0-2.4 (m, 2H), 3.1-3.4 (m, 2H), 3.9-4.05 (m, 1H), 4.65-4.75 (m, 2H).
13C-NMR (CDCl3, 60MHz): δ(ppm) 13.89 & 14.23, 25.34 & 25.46, 28.04 & 28.43, 30.11 & 30.24, 35.22 & 35.27, 37.20, 40.81 & 42.24, 44.87 & 44.95, 46.05 & 47.07, 46.14 & 46.19, 68.55 & 68.64, 77.63 & 78.54, 108.01 & 108.17, 144.75 & 144.97.
(B)異性体(特徴的なプロトンピーク):δ(ppm) 3.9-4.05 (m, 3H), 5.25-5.30 (m, 1H).
13C-NMR (CDCl3, 60MHz,選択されたデータ):δ(ppm) 63.12 & 63.44, 72.53 & 72.72, 123.67 & 125.10.
(C)異性体(特徴的なプロトンピーク):δ(ppm) 3.4-3.65 (m, 1H), 3.95-4.15 (m, 2H).
13C-NMR (CDCl3, 60MHz,選択されたデータ):δ(ppm) 65.76 & 65.84, 73.39 & 73.72, 119.65 & 119.74.
【0048】
実施例4:
4-メチル-4-(3-メチル-ブテ-3-エニルオキシ)-2-(2,2,3-トリメチル-シクロ-ペンチルメチル)-テトラヒドロピラン
4-メチル-4-(3-メチル-ブテ-3-エニルオキシ)-2-(2,2,3-トリメチル-シクロ-ペンチルメチル)-テトラヒドロピランは、実施例3で用いた条件下で得られ、精密分画することによってその他の誘導体を分離した。
生成物は、異性体のトランス/シス(60:40)混合物を含んでいる。
【化10】

生成物は、そこまで強くないビターなオレンジのような臭気を有している。
主ジアステレオ異性体、トランス異性体:
1H-NMR (CDCl3, 200MHz):δ(ppm) 0.49 (s, 3H), 0.82 (d, 3H, J = 10.1Hz), 0.83 (s, 3H), 1.0-1.9 (m, 12H), 1.28 (s, 3H), 1.74 (s, 3H), 2.24 (t, 2H, J = 7.1Hz), 3.2-3.5 (m, 2H), 3.50 (t, 2H, J = 7.2Hz) , 4.74 (m, 2H).
13C-NMR (CDCl3, 60MHz):δ(ppm) 13.91 & 14.29, 21.12 & 21.34, 23.0, 25.38 & 25.46, 28.08 & 28.25, 30.11 & 30.23, 37.24 & 37.35, 37.4 & 37.49, 38.65, 42.08 & 42.39, 43.11 & 44.41, 44.88 & 44.98, 46.11 & 47.0, 58.95, 65.05 & 65.13, 72.60 & 72.66, 73.79 & 74.74, 111.15, 143.24.
MS [e/m (%)]: 308(M+, 1), 293 (2), 223 (23), 109 (10), 99 (72), 97 (10), 69 (100), 55 (10), 43 (11), 41 (36).
IR (フィルム, cm-1): 642w, 887m, 1078m, 1104s, 1144m, 1177m, 1251w, 1271w, 1374m, 1453m, 1466m, 1650w, 2869s, 2951s.
副ジアステレオ異性体、シス異性体:
1H-NMR (CDCl3, 200MHz), 選択されたデータ:δ(ppm) 0.48 (s, 3H) , 1.27 (s, 3H) , 3.49 (t, 2H, J = 7.2Hz).
13C-NMR (CDCl3, 60MHz), 選択されたデータ:δ(ppm) 111.36, 143.39.
MS [e/m (%) ]: 308(M+, 1), 293 (9), 223 (11), 222 (11), 221 (37), 112 (25), 109 (12), 99 (26), 97 (28), 95 (12), 69 (100), 55 (16), 43 (17), 41 (50).
IR (フィルム, cm-1): 642w, 887m, 1078m, 1104s, 1144m, 1177m, 1251w, 1271w, 1374m, 1453m, 1466m, 1650w, 2869s, 2951s.
【0049】
実施例5:実施例1で得られた(A)/(B)/(C)混合物を含有する芳香性組成物
基礎となる香料組成物は、以下の原料を用いて記載のとおり調製した。
【表1】

この基礎となるハニーサックルタイプの組成物に、実施例1で得られた(A)/(B)/(C)混合物を10質量部添加した。このようにして得られる新しい組成物はグリーン系ノートを演出し、淡いオレンジブラッサム系の香りを有するプチグレンエッセンスを連想させる。さらには、(A)/(B)/(C)混合物は組成物に爽やかさを与え、新しい香料組成物の興味深い一面はアルコール類のみならず、ボディーソープならびにクリーム基材において重宝される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のピラン誘導体。
【化1】

[式中、
・Yは、5、6、または7員環であって、好ましくは5員環であり、メチルもしくはエチルで一置換または多置換されていて、任意に不飽和あってもよく、かつ
・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、かつ
・Xは、存在するか、或いは存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であって、ここでZは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9は存在し、
・R5〜R12基が存在するとき、それら基は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)のピラン誘導体。
[式中、
・Yは、5員環であり、前記環は飽和であるか1つの二重結合を含み、前記環はメチルもしくはエチルで一置換または多置換されていてもよく、
・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Xは、存在するか、或いは存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9が存在し、
・R5〜R12基が存在するとき、それら基は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【請求項3】
請求項1または2に記載の一般式(I)のピラン誘導体。
[式中、
・Yは、(Y1)、(Y2)、(Y3)もしくは(Y4)のいずれか1つの基であり、
【化2】

・R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Xは、存在するか、或いは存在せず、
・Xが存在するとき、
R5、R6、R7、R8、R9はすべて存在し、かつXは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは、水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり、
・Xが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R7、R8、及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6、及びR7が存在し、かつR8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R7は、=C(R11)(R12)基であり、かつR5、R6、R8、R9は存在し、
・それらが存在するとき、R5〜R12基は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の一般式(I)のピラン誘導体。
[式中、
・Yは、請求項1〜3のいずれかに定義された意味を表し、
・R3またはR4の一方が水素原子であり、もう一方がメチル基であり、
・R7は、=CH2基であり、かつXは存在せず、または、
・R7はメチル基であり、かつXは存在するか、或いは存在せず;R7がメチル基であってXが存在するとき、Xは水素原子またはOZ基であり、ここで、Zは水素原子またはR10基またはC(O)R10基であり;R7がメチル基であってXが存在しないとき、4位の炭素原子を含む二重結合が存在し、かつ
R8及びR9が存在し、かつR5もしくはR6のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、または、
R5、R6が存在し、R8もしくはR9のいずれか一方の基は存在し、もう一方の基は存在せず、
・R1、R2、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・存在するとき、R5、R6、R8、R9は、それぞれ水素原子である。]
【請求項5】
前記誘導体が、4-メチレン-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペント-3-エニルメチル)-テトラヒドロピラン、4-メチル-6-(2,2,3-トリメチル-シクロペント-3-エニルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペント-3-エニルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピラン、4-メチレン-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピラン、4-メチル-6-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、4-メチル-4-(3-メチル-ブト-3-エニルオキシ)-2-(2,2,3-トリメチル-シクロペンチルメチル)-テトラヒドロピランを含む群から選択される、請求項1に記載の一般式(I)のピラン誘導体。
【請求項6】
一般式(A)の化合物
【化3】

[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であって、好ましくは5員環であり、メチルもしくはエチルで一置換または多置換されていて、任意に不飽和あってもよく、
・R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である]
を、酸存在下で、一般式(B)の化合物
【化4】

[式中、
R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキル基、または直鎖もしくは分岐した炭素数2〜5のアルケニル基である]
と反応させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)のピラン誘導体の調製方法。
【請求項7】
前記アルコール(B)と反応させる以前に、前記アルデヒド(A)を一般式(C)のアセタール体
【化5】

[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であって、好ましくは5員環、メチルもしくはエチルで一置換または多置換されていて、任意に不飽和あってもよく、
・R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Zは、R10であり、ここでR10は直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である]
に変換する工程をさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化合物(A)または化合物(C)を、酸存在下で、化合物(B)と反応させることによって、式(I)の化合物(式中、XはOZであり、Zは水素原子または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である)が合成される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
酸存在下で、化合物(A)と化合物(B)とを反応させ、式(I)においてXがOHである化合物を、式(I)においてXが存在しない化合物から分離した後、式(I)においてXがOC(O)R10である化合物を得るためにエステル化反応に供する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
酸存在下で、化合物(A)と化合物(B)とを反応させ、式(I)においてXがOHである化合物を、式(I)においてXが存在しない化合物から分離した後、式(I)においてXがOZである化合物(Zは、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である)を得るためにアルキル化反応に供する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
式(II)の化合物を少なくとも1種、及び/または一般式(III)の化合物を少なくとも1種、及び/または一般式(IV)の化合物を少なくとも1種、並びに任意に、(V)及び/または(VI)を含有する組成物。
【化6】

[式中、
・Yは、5、6、もしくは7員環であって、好ましくは5員環であり、メチルもしくはエチルで一置換または多置換されていて、任意に不飽和あってもよく、
・R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基であり、
・Zは、水素原子、または直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基、或いはC(O)R10基であり、ここで、R10は、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数2〜5のアルケニル基である。]
【請求項12】
香料を染み込ませた基材及び濃縮物、芳香剤、香水;トピック組成物;フェイス及びボディクリーム、クレンザー、顔用トリートメント、タルクパウダー、毛髪オイル、シャンプー、ヘアローション、バスオイル、バスソルト、シャワー及びバス用ジェル、石鹸、制汗剤、脱臭剤、プレシェイブ、シェイビング、ポストシェイブクリーム及びローション、クリーム類、歯磨き粉、マウスウォッシュ、ポマードを含む群から選択される化粧品組成物;柔軟剤、洗剤、防臭剤、及び家庭用クリーニング用品を含む群から選択されるクリーニング製品;を製造する際の香料としての、請求項1〜5のいずれか一項に記載のピラン誘導体または請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
飲料、日用品、アイスクリーム、スープ、ソース、ディップ、料理、肉製品、料理の付け合わせ、塩味のビスケットもしくはスナック類、及びビール、ワイン、タバコを含む群から選択される、香味組成物もしくは製品を調製する際の香味剤としての、請求項1〜5のいずれか一項に記載のピラン誘導体または請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項14】
臭い及び/または香味料のマスキング剤としての、特に医薬、化粧品、もしくは食品組成物における、請求項1〜5のいずれか一項に記載のピラン誘導体または請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項15】
他の香料もしくは香味料の原料、溶媒、添加剤、或いは固定剤と併用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のピラン誘導体または請求項11に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2010−511016(P2010−511016A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538720(P2009−538720)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063051
【国際公開番号】WO2008/065181
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(504160194)
【Fターム(参考)】