説明

ピラー

【課題】衝突時にピラーの車内側への折れ変形した場合の突出量を低減できるピラーを提供すること。
【解決手段】インナピラーパネル11とアウタピラーパネル10とから構成されるセンタピラー1内にアッパレインフォースメント14を設け、アッパレインフォースメント14とアウタピラーパネル10との間にスペースを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、センタピラーとほぼ等しい長さを有するレインフォースメントが、センタピラーのアウタピラーパネル内面に沿って上下に亘って伸びた状態で固着されているものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平09−175428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、レインフォースメントがアウタピラーパネルの内面沿って固着されているため、車両横方向からの衝突時に車体に加わる衝撃力は、ほぼレインフォースメントに直接伝達され、センタピラーが車内側に折れ変形した場合の突出量が大きく、乗員に大きな違和感を与える虞があるといった問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、衝突時にセンタピラー等のピラーが車内側へ折れ変形した場合の突出量を低減できるピラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明では、アウタピラーパネルとインナピラーパネルとから構成されるピラーパネル内にレインフォースメントを設けたピラーにおいて、アウタピラーパネルとレインフォースメントとの間にスペースを備えた。
【発明の効果】
【0006】
ピラーのアウタピラーパネルとレインフォースメントとの間にスペースを設けたので、側面衝突時にアウタピラーパネルが潰れて衝撃力を吸収するので、レインフォースメントに伝わる衝撃力を小さくでき、ピラーパネルの車内側突出量を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のピラーを実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
【0009】
図1は、車両側面から見たときの骨格メンバを示す。センタピラー1は、フロントピラー2と共に車体サイドの上下方向骨格メンバを構成し、センタピラー1とフロントピラー2とは、上部の前後方向骨格メンバであるルーフサイドレール3と、下部の前後方向骨格メンバであるサイドシル4とに跨って結合している。なお、センタピラー1は、本発明のピラー相当する。
【0010】
[センタピラーの構成]
図2はセンタピラー1を前方から見たときの図であり、図3はセンタピラー1の図2におけるA-A断面図、図4はセンタピラー1の図2におけるB-B断面図である。
【0011】
センタピラー1は、センタピラーパネルを構成するアウタピラーパネル10とインナピラーパネル11とによって、センタピラー1の外周をなすように中空断面状に形成される。アウタピラーパネル10は車両前方側から見ると、中央部付近から車外側へ膨らんだ形状に形成される。また、アウタピラーパネル10の断面は、前後の合わせフランジ10aを備えた略コの字形断面に形成される。インナピラーパネル11は、前後のあわせフランジ11aを備え、アウタピラーパネル10よりも浅い略コの字形断面に形成される。
【0012】
センタピラー1の内側上方にはアッパレインフォースメント14が設けられる。このアッパレインフォースメント14の上端は、センタピラー1の上端まで達するように設けられる。一方、アッパレインフォースメント14の下端は、センタピラー1の下端側途中、つまり下端に達しない位置まで設けられている。具体的には、アッパレインフォースメント14の下端は、ドアのストライカ13よりも下方であって、多くの車両のバンパーの高さである地上から約550mm程度より下に達するように設ける。なお、ストライカ13が位置が低い車両であれば、アッパレインフォースメント14の下端の位置は地上から約550mm程度より下であれば、ストライカ13より上方に設定しても良い。
【0013】
また、アッパレインフォースメント14下端から隙間を開けて、ロアレインフォースメント16が設けられる。
【0014】
このアッパレインフォースメント14は、アウタピラーパネル10やインナピラーパネル11よりも剛性の高い超ハイテン材により形成され、ロアレインフォースメント16はアウタピラーパネル10やインナピラーパネルと同等の剛性を有する一般部材で形成される。
【0015】
アッパレインフォースメント14は、前後の合わせフランジ14aを備え、アウタピラーパネル10よりも浅く、またインナピラーパネル11よりも深い略コの字形に形成される。すなわち、アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14とを接合された際に、アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間には、アッパレインフォースメント14の車外側車幅方向にスペースが設けられる。また、アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間には車幅方向にスペースを設けられるので、アッパレインフォースメント14とアウタピラーパネル10と車幅方向の形状に合わせる必要が無い。そのため、略コの字状に形成されるアッパレインフォースメント14の深さは一定に形成できる。
【0016】
ストライカ13が取付けられた部分のアウタピラーパネル10の裏側には、ドアの荷重を支える補強用としてストライカレインフォースメント15が固着される。このストライカレインフォースメント15は、前方の合わせフランジ15aを備え、略L字形に形成される。
【0017】
ロアレインフォースメント16は、前後の合わせフランジ16aを備え、アウタピラーパネル10の内面とほぼ同形の略コの字状に形成される。ロアレインフォースメント16は、アウタピラーパネル10の形状に沿って形成される。
【0018】
センタピラー1は、インナピラーパネル11の開口部を車外側に向け、車外側から上部にアッパレインフォースメント14が、下部にロアレインフォースメント16が開口部を車内側に向け溶接される。更に車外側から、ストライカ13部分にはストライカレインフォースメント15が固着されたアウタピラーパネル10が開口部を車内側に向けて溶接される。
【0019】
次に作用について説明する。
【0020】
[側面衝突時のセンタピラーの作用]
センタピラー1の上端から下端まで剛性の高いレインフォースメントによって補強がされた場合、強度的最弱部はアウタピラーパネル10が車外側へ膨らむように変形する中央部付近となる。また、ドアが係止されるストライカ13が設けられるセンタピラー1の中央部付近には、ドアに入力された衝撃力も入力される。そのため、側面衝突時にはセンタピラー1は中央部付近で折れ曲がり、局部的な車内方向への突出が生じ且つ突出量も大きくなる。この中央部付近は乗員の腹部付近にあたり、側面衝突時に乗員に大きな違和感を与える虞がある。
【0021】
そこで本実施例では、センタピラー1の上端からストライカ13の下部まではアッパレインフォースメント14を設け、アッパレインフォースメント14下端から隙間あけて、ロアレインフォースメント16を設けた。そのため、強度的最弱部はストライカ13の下部に設定されるので、センタピラー1はストライカ13の下部付近で折れ曲がる。
【0022】
また、形状的に強度が弱いアウタピラーパネル10が車外側へ膨らむように変形する中央部付近や、衝撃力が集中するストライカ13部分に、アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間にスペースを設けた。そのため側面衝突時には、アッパレインフォースメント14に衝撃力が伝達される前に、まずアウタピラーパネル10が潰されて衝撃力を吸収するので、アッパレインフォースメント14には、衝突時の衝撃力よりも低減された力が伝達される。
【0023】
また、本実施例では、レインフォースメントを図5(a)に示すようなフランジのついた略コの字状に形成している。フランジのついた略コの字状形状は、図5(b)に示すようなフランジ無しの略コの字状形状と比較して強度的には強くなるが、レインフォースメントの成型は困難である。本実施例では、アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間には車幅方向にスペースを設けられるので、アッパレインフォースメント14とアウタピラーパネル10と車幅方向の形状に合わせる必要が無い。そのため、略コの字状に形成されるアッパレインフォースメント14の深さは一定に形成でき、成型が容易にできると共に強度を高くできる。
【0024】
図6は、側面衝突時におけるセンタピラー1の変形の様子を示した図である。強度的最弱部はストライカ13の下部に設定されるので、ストライカ13の下部付近の高さHで局部的な突出を生じる。また、アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間に隙間を設けているので、例えば、ストライカ13付近のアウタピラーパネル10が潰れ、右側のアウタピラーパネル10とストライカ13の車外側端部との間の長さd1と比べて、左側の同位置の長さd2は小さくなっている。このアウタピラーパネル10の潰れによって衝撃力が吸収されるので、車内側へのセンタピラー1の突出量も小さくできる。
【0025】
上記の作用によって、側面衝突時に局部的な突出を生じる位置をセンタピラー1の中央部よりも下部に設け、また車内側へのセンタピラー1の突出量も小さくできるので、乗員への違和感を低減できる。
【0026】
次に本実施例の効果を説明する。
【0027】
(1)アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間であって、アッパレインフォースメント14の車外側車幅方向にスペースを設けた。よって、側面衝突時には、アッパレインフォースメント14に衝撃力が伝達される前に、まずアウタピラーパネル10が潰されて衝撃力を吸収するので、アッパレインフォースメント14には、衝突時の衝撃力よりも低減された力が伝達される。したがって、センタピラー1の車内側への突出量を低減できる。
【0028】
(2)センタピラー1の上端から下端側の途中までアッパレインフォースメント14を設けたので、強度的最弱部をアッパレインフォースメント14の下部に設定することができ、側面衝突時にセンタピラー1が折れ曲がる位置を予め設定できる。
【0029】
(3)センタピラー1の上端からストライカ13の下部までアッパレインフォースメント14を設けたので、強度的最弱部はストライカ13の下部に設定される。よって、側面衝突時にはセンタピラー1は、乗員に大きな違和感を与えるセンタピラー1の中央部より下の位置であるストライカ13の下部付近で折れ曲がるので、乗員への違和感を低減できる。
【0030】
(4)アウタピラーパネル10とアッパレインフォースメント14との間には車幅方向にスペースを設けられるので、アッパレインフォースメント14とアウタピラーパネル10と車幅方向の形状に合わせる必要が無い。そのため、略コの字状に形成されるアッパレインフォースメント14の深さは一定に形成できるので、成型が容易で強度を高くできる。
【0031】
以上、本発明のピラーを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。
【0032】
例えば、実施例1では、アウタピラーパネル10と、アッパレインフォースメント14との間にのみスペースを設けているが、アウタピラーパネル10とロアレインフォースメント16との間にもスペースを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】車両側面から見たときの骨格メンバを示す図である。
【図2】センタピラーを前方から見たときの図である。
【図3】センタピラーの断面図である。
【図4】センタピラーの断面図である。
【図5】レインフォースメントの断面図である。
【図6】側面衝突時のセンタピラーの変形を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 センタピラー
10 アウタピラーパネル
11 インナピラーパネル
13 ストライカ
14 アッパレインフォースメント
16 ロアレインフォースメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタピラーパネルとインナピラーパネルとによって中空断面状に構成されるピラーパネル内にレインフォースメントを設けたピラーにおいて、
前記アウタピラーパネルと前記レインフォースメントとの間であって、前記レインフォースメントの車外側車幅方向にスペースを備えたことを特徴とするピラー。
【請求項2】
請求項1に記載のピラーにおいて、
前記レインフォースメントは、前記ピラーの上端から下端側途中まで達する状態で設けたことを特徴とするピラー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のピラーにおいて、
前記ピラーはドアと嵌合するストライカを有し、
前記レインフォースメントの下端は、前記ストライカの下端より下まで達する状態で設けたことを特徴とするピラー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のピラーにおいて、
前記レインフォースメントは略コの字状に形成され、該レインフォースメントの凹部深さは一定に形成されることを特徴とするピラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−327280(P2006−327280A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150255(P2005−150255)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】