説明

ファイバ製造方法およびファイバ

【課題】 コート剤の物性確保とガラスファイバ外周表面への密着性を向上しつつ、ファイバの透過率低下やコート被覆ファイバの柔軟性・強靭性低下を発生することが防止されるファイバ製造方法およびファイバを提供する。
【解決手段】 ファイバ12を製造するファイバ製造方法は、母材12aを加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材12aを線引きしてファイバ母材12を形成する工程と、ファイバ母材12の外周表面をコート前処理する工程と、ファイバ母材12の外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、遮光コート剤を硬化炉で硬化させて遮光コート剤層14を形成する工程とを備えている。ファイバ母材12の外周表面をコート前処理する工程は、大気圧プラズマ装置24によりプラズマガスをファイバ母材12に吹き付ける前処理を行なう工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバの製造方法やその製造方法を用いたファイバに関し、例えば内視鏡分野に用いる多成分系硝材のイメージガイドにおける遮光コート剤を有するファイバの製造方法およびファイバ製造方法を用いて形成されるファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光を伝達する光ファイバーや画像を伝達するイメージガイドとしては、一般に、ガラスファイバが用いられている。ガラスファイバの母材は、耐熱性や透明性に優れる合成石英が使用されることが一般的である。そのファイバの外周被覆には、外部からの力や衝撃からファイバを保護し、かつ、ファイバが自由に湾曲可能となるように、高弾性率樹脂材と低弾性率樹脂材の2層コートが施されている。
【0003】
このようなコーティング剤には、熱硬化性樹脂材では硬化時間が長くかかるという欠点から、速硬化可能な紫外線硬化型コーティング剤が用いられているものが多い。例えば、特許文献1に開示された紫外線硬化樹脂被覆光ファイバでは、石英系光ファイバの1次被覆に低弾性率のウレタンアクリレート系を代表とする紫外線硬化樹脂材を被覆し、2次被覆には高弾性率の紫外線硬化樹脂を被覆するものである。また、特許文献2では、1次被覆に硬質シリコーン材を被覆し、2次被覆に軟質シリコーン樹脂材を被覆している。
【0004】
また、石英母材の場合は熱溶融温度も必然的に高温(1000℃以上)となるため、耐熱性の高い金属被覆コート剤を用いたり、特許文献3に開示されているように、光ファイバの初期伝送損失が高い金属被覆コート剤の欠点を対策したボロシロキサン系樹脂と二酸化ケイ素と無機顔料で構成されたコート剤が提供されている。
【特許文献1】特許第2660278号公報
【特許文献2】実公平4−40177号公報
【特許文献3】実用新案登録第2601718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多成分系硝材の場合には、石英系硝材のような高温を必要とせず、1000℃未満の加熱溶融温度で溶融することが可能である。しかしながら、多成分系では、様々な酸化化合物が含まれるため、紫外線硬化装置の照度が高いと着色され、透過率の低下を招いてしまう。また、2層コートでは紫外線の積算光量も倍になり、さらに着色による透過率低下は加速する。
【0006】
このような問題を回避するために、紫外線の照度を低く設定すると、例えば遮光コート剤とファイバ母材との界面付近への光到達比率が下がってしまい、コート剤の未硬化や、ファイバの外周の被覆力の低下が発生する可能性がある。
【0007】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、コート剤の物性確保とガラスファイバ外周表面への密着性を向上しつつ、ファイバの透過率低下やコート被覆ファイバの柔軟性・強靭性低下を発生することが防止されるファイバ製造方法およびファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係るファイバ製造方法は、母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成する工程と、前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理する工程と、前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させる工程とを備えている。そして、前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理する工程は、大気圧プラズマ装置によりプラズマガスを前記ファイバ母材に吹き付ける前処理を行なう工程を含むことを特徴とする。
【0009】
このとき、線引きされるファイバを中心とし、例えばアルゴンガスおよび酸素ガスの雰囲気下でプラズマガスを発生させ、大気中にプラズマガスを放出するプラズマ装置を設置してファイバ外周面の表面処理を行なう。または、例えば大気プラズマ装置を例えば互いに対向するように2台設置し、双方向からファイバ外周面の表面処理を行なう。または、1台のプラズマ装置と180度の位置のファイバを挟んだ向かい側位置に、例えば石英ガラスや金属材に例えばミラー蒸着したU字型等のガイド板を設けた構造とする。一方向からファイバ外周面にプラズマガスを照射し、通過したプラズマガスをガイドにより受け止めてファイバの外周裏面に跳ね返してファイバに対して全周的に表面処理を行なう。
【0010】
また、上記課題を解決するために、この発明に係るファイバ製造方法は、母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成する工程と、前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理する工程と、前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させる工程とを備えている。そして、前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させる工程は、1次硬化を行なう光エネルギー硬化工程と、2次硬化を行なう赤外線硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
このため、紫外線や可視光線により遮光コート剤の速硬化を図りながら、赤外線による熱硬化により、ファイバ母材と遮光コート剤層との間の密着力を向上させることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記遮光コート剤は、紫外線および可視光線の少なくとも一方による光エネルギー硬化性と、赤外線が照射されると硬化される赤外線硬化性とを備えていることを特徴とする。
【0013】
紫外線によるファイバ透過率低下を防止するために、遮光コート剤を光エネルギー硬化性と熱硬化性を付与したものとする。1次硬化工程を光エネルギーにより低照度硬化させることで紫外線による硝材の透過率低下(着色)を回避させ、2次硬化工程の熱硬化によりコート剤の硬化物性を発揮させる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、この発明に係るファイバは、母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成し、大気圧プラズマ装置によりプラズマガスを前記ファイバ母材の外周表面に吹き付けるコート前処理を行ない、前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布し、前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させて、遮光コート剤層を形成してなることを特徴とする。
【0015】
このため、ファイバ母材に対する遮光コート剤層の密着力を向上させることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために、この発明に係るファイバは、母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成し、前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理し、前記ファイバ母材の外周表面に、紫外線および可視光の少なくとも一方による光エネルギー硬化性と、赤外線による赤外線硬化性とを有する遮光コート剤を塗布し、前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させて、遮光コート剤層を形成してなることを特徴とする。
【0017】
このため、紫外線や可視光線により遮光コート剤の速硬化を図りながら、赤外線による熱硬化により、ファイバ母材と遮光コート剤層との間の密着力を向上させることができる。
【0018】
また、好ましくは、前記遮光コート剤層は、プラスチック硬度ショアA75以上、前記遮光コート剤の光エネルギー硬化および加熱硬化後の前記ファイバ母材に対する密着力が14MPa以上である。
【0019】
このため、ファイバの外部からの力や衝撃による傷防止および被覆ファイバの柔軟性・強靭性を確保することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために、この発明に係るファイバは、母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成し、前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理し、前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布し、光エネルギーを前記遮光コート剤に照射して前記遮光コート剤を1次硬化させ、赤外線を前記遮光コート剤に照射して前記遮光コート剤を2次硬化させて、遮光コート剤層を形成してなることを特徴とする。
【0021】
このため、光エネルギーによる遮光コート剤の速硬化を図りながら、赤外線による熱硬化により、ファイバ母材と遮光コート剤層との間の密着力を向上させることができる。
【0022】
また、好ましくは、前記光エネルギーは、紫外線および可視光線の少なくとも一方である。
【0023】
このため、紫外線や可視光線により遮光コート剤の速硬化を図りながら、赤外線による熱硬化により、ファイバ母材と遮光コート剤層との間の密着力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、コート剤の物性確保とガラスファイバ外周表面への密着性を向上しつつ、ファイバの透過率低下やコート被覆ファイバの柔軟性・強靭性低下を防止可能なファイバ製造方法およびファイバを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0026】
まず、第1の実施の形態について図1および図2を用いて説明する。
【0027】
図1に示すように、この実施の形態に係るガラスファイバ10は、ファイバ母材(マルチコアタイプのコンジット、あるいは、コア/クラッドで構成されたモノファイバ)12と、このファイバ母材12の外周をコートする遮光コート剤層14とを備えている。
【0028】
ファイバ10は、この実施の形態では、例えばプラスチック硬度ショアA95である。すなわち、遮光コート剤層14のプラスチック硬度ショアA95である。なお、プラスチック硬度ショアは、好ましくはA75以上、A100以下であり、特にA80以上A95以下であることが好適である。これは、上述した硬度ショアよりも硬度が低すぎると遮光コート剤層14が外部からの力や衝撃に耐えられず、すなわち、ガラスファイバ10が外部からの力や衝撃に耐えられないからである。一方、硬度が高すぎるとガラスファイバ10の柔軟性や強靭性が阻害されるおそれがあるからである。
【0029】
また、遮光コート剤層14は、ファイバ母材12との間の密着力が14MPaである。特に14MPa以上であることが好適である。この遮光コート剤層14の主成分は、例えばアクリル変形シリコーンや、ウレタン変形アクリレート系などである。
【0030】
図2に示すように、上述したガラスファイバ10を製造するためのファイバ製造システム20は、母材12aを溶融させる加熱炉(図示せず)と、ファイバ外径測定器22と、大気圧プラズマ装置24と、加圧ダイス26と、光硬化装置28と、赤外線加熱炉(図示せず)とを備えている。
【0031】
ファイバ外径測定器22は、母材12aから細長く線引きされて形成されたファイバ母材12の外径を測定する。
【0032】
大気圧プラズマ装置24は、ファイバ外径測定器22の下流側に配設されている。この大気圧プラズマ装置24は、ファイバ母材12の外周表面をコートする前に行なうコート前処理を行なうために配設されている。この大気圧プラズマ装置24は、アルゴンガスおよび酸素ガスの混合雰囲気中で発生させたプラズマガスを大気圧プラズマ装置24の出力口からファイバ母材12の外周面(外表面)に吹き付ける。なお、この際の出力口からファイバ母材12までの距離を5mm以内とすることが好適である。
【0033】
加圧ダイス26は、大気圧プラズマ装置24の下流側に配設されている。この加圧ダイス26は、遮光コート剤層14を形成するために、光硬化性および熱硬化性を付与したシリコーン系の遮光コート剤をファイバ母材12の外周面に加圧状態で均一厚さとなるように塗布する。
【0034】
光硬化装置28は、紫外線硬化装置であり、遮光コート剤を仮硬化(半硬化)させる。ここで、紫外線の最大照射強度(波長365nm)を1000mW/cm以下に抑え、積算光量を1500mJ/cmから3000mJ/cmとする。なお、この光硬化装置28は、紫外線を用いたものでなく、可視光線を用いた光硬化装置であることも好適である。
【0035】
光硬化装置28の下流には、任意の長さにカットした、遮光コート剤が被覆されたファイバ母材12のうち、遮光コート剤を赤外線により熱硬化させる赤外線加熱炉(図示せず)が配設されている。この赤外線加熱炉では、遮光コート剤が被覆されたファイバ母材12の遮光コート剤を赤外線により150℃で1時間で完全に硬化させ、徐冷した後に取り出す。
【0036】
したがって、このようなガラスファイバ10は、以下の工程により作製される。
【0037】
第1の工程として、図2に示すように、母材12aを加熱炉で加熱溶融して線引きしてファイバ母材12を形成する。
【0038】
第2の工程として、ファイバ母材12の外径を外径測定器22で測定する。ファイバ母材12が所望の外径に形成されていると判断された場合、ファイバ母材12は大気圧プラズマ装置24に向かって送られる。
【0039】
なお、ファイバ母材12が所望の外径に形成されていないと判断された場合、そのファイバ母材12を切り取って抜き取る。
【0040】
第3の工程として、外径測定器22によって所望の外径に形成されていると判断されたファイバ母材12は、大気圧プラズマ装置24でその外周表面をコート前処理する。このとき、大気圧プラズマ装置24は、アルゴンガスおよび酸素ガスの混合雰囲気中で発生させたプラズマガスを大気圧プラズマ装置24の出力口からファイバ母材12の外周面(外表面)に吹き付ける。このように大気圧プラズマ装置24によってプラズマガスが吹き付けられたファイバ母材12は、加圧ダイス26に向かって送られる。
【0041】
第4の工程として、プラズマガスが吹き付けられたファイバ母材12の外周面に対し、遮光コート剤層14を形成するために、加圧ダイス26によって加圧された遮光コート剤を均一厚さに塗布する。このように加圧ダイス26によって遮光コート剤が塗布されたファイバ母材12は、光硬化装置28に向かって送られる。
【0042】
第5の工程として、遮光コート剤が塗布されたファイバ母材12は、光硬化装置28によって、紫外線が照射される。ここで、紫外線の最大照射強度(波長365nm)は1000mW/cm以下であり、積算光量は1500mJ/cmから3000mJ/cmである。このような紫外線の照射によって、遮光コート剤が仮硬化される。このように、遮光コート剤が仮硬化されたファイバ母材12は、赤外線加熱炉に向かって送られる。
【0043】
第6の工程として、遮光コート剤が仮硬化された状態に被覆されたファイバ母材12を任意の長さにカットする。そして、このような遮光コート剤が被覆されたファイバ母材12を赤外線加熱炉に入れて、遮光コート剤を完全に硬化させる。このとき、遮光コート剤が被覆されたファイバ母材12を、150℃の加熱炉内に1時間配置し、遮光コート剤を完全に硬化させる。すなわち、ファイバ母材12の外周面に遮光コート剤層14が形成される。この後、赤外線加熱炉の内部を徐冷し、外周面に遮光コート剤層14が形成されたファイバ母材12を取り出す。
【0044】
このようにして、遮光コート剤層14が外周面に形成されたファイバ母材12、すなわちガラスファイバ10が作製される。このように作製したガラスファイバ10は、例えばプラスチック硬度ショアA95であり、遮光コート剤層14とファイバ母材12との間の密着力が例えば14MPaである。
【0045】
この実施の形態に係るファイバ製造システム20を用いて作製されたガラスファイバ10の作用について説明する。
【0046】
大気圧プラズマ装置24のプラズマガス出射によるファイバ母材12に対するコート前処理により、ファイバ母材12の外周表面に塗布される遮光コート剤の濡れ性が向上される。このため、遮光コート剤をファイバ母材12の外周面で硬化させたときの、ファイバ母材12と遮光コート剤層14との間の密着力が向上される。
【0047】
また、光硬化装置(光エネルギー硬化装置)28の紫外線の照射強度および照射量を低減させて、遮光コート剤を仮硬化させることに留めることで、他成分系材料の酸化による変色が抑制される。
【0048】
遮光コート剤の本硬化として赤外線加熱炉で遮光コート剤を熱硬化させることにより、光エネルギー硬化装置28による紫外線照射で硬化不足であった遮光コート剤の硬化反応を完了させる。このため、遮光コート剤層14の物性が所望の状態に確保されるとともに、ガラスファイバ10の要求特性が所望の状態に確保される。
【0049】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
【0050】
大気圧プラズマ装置24によるコート前処理によるファイバ母材12の表面処理が可能となり、ファイバ母材12に対する遮光コート剤層14の密着力を向上させることができる。
【0051】
また、遮光コート剤の硬化時に光エネルギー(紫外線)の影響を極力避けることにより、着色による光透過率の低下を防止することができる。したがって、遮光コート剤層14をファイバ母材12の外側に被覆しても、高透明性を確保することができる。
【0052】
また、遮光コート剤の硬化方法を光硬化装置28の紫外線や可視光線および赤外線加熱炉の赤外線を用いた2段階とすることで、光硬化装置28の紫外線や可視光線により遮光コート剤の速硬化を図りながら、赤外線加熱炉の赤外線による熱硬化により、ファイバ母材12と遮光コート剤層14との間の密着力を向上させることができる。
【0053】
さらに、遮光コート剤層14の物性を所望の状態に確保することができるので、遮光コート剤層14に対する傷の発生を防止することができる。したがって、上述した工程で作製したガラスファイバ10は、外力に対して傷の発生を防止することができるとともに、柔軟性・強靭性を得ることができる。
【0054】
次に、第2の実施の形態について図3を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態に係るファイバ製造システム20の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0055】
ここでは、図3に示すように、大気圧プラズマ装置24を使用する場合に、併せて反射板24aを用いる。大気圧プラズマ装置24の出力口に対して、ファイバ母材12を挟んだ位置には、出力口の開口幅に合わせて略U字型の反射板24aが設置されている。この反射板24aは、例えば石英ガラスや金属材に例えばミラー蒸着したU字型等のガイド板が設けられている。このため、ファイバ母材12の周辺に逃げたプラズマガスを集めて反射板24aで反射させて、ファイバ母材12の裏面に当て付けることができる。
【0056】
なお、反射板24aを用いる代わりに、同条件で大気圧プラズマ装置24を互いに対向するように設置してもよい。すなわち、2台の大気圧プラズマ装置24を使用しても良い。
【0057】
なお、ガラスファイバ10の製造工程および作用は第1の実施の形態で説明した製造工程および作用と同一であるので、説明を省略する。
【0058】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
【0059】
大気圧プラズマ装置24のプラズマガス出射口に対向する位置に反射板24aを用いる、または、互いにプラズマガス出射口が対向するように2台の大気圧プラズマ装置24を用いることにより、ファイバ母材12に対するコート前処理をファイバ母材12の全周にわたってより確実に行なうことができる。
【0060】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【0061】
上記説明によれば、下記の事項の発明が得られる。また、各項の組み合わせも可能である。
【0062】
[付記]
(付記項1) ファイバ母材を加熱炉で加熱溶融し線引きしてガラスファイバを形成する工程と、
ガラスファイバの外周表面をコート前処理する工程と、
ガラスファイバの外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、
遮光コート剤を硬化炉にて硬化する工程と
により製造する方法において、
前記ガラスファイバの外周表面をコート前処理する工程は、大気圧プラズマ装置により前処理を行なうことを特徴とするファイバ製造方法およびファイバ。
【0063】
(付記項2) ファイバ母材を加熱炉で加熱溶融し線引きしてガラスファイバを形成する工程と、
ガラスファイバの外周表面をコート前処理する工程と、
ガラスファイバの外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、
遮光コート剤を硬化炉にて硬化する工程
により製造する方法において、
前記遮光コート剤は、紫外線または可視光による光エネルギー硬化性と熱硬化性を付与した遮光コート剤であることを特徴とするファイバ製造方法およびファイバ。
【0064】
(付記項3) ファイバ母材を加熱炉で加熱溶融し線引きしてガラスファイバを形成する工程と、
ガラスファイバの外周表面をコート前処理する工程と、
ガラスファイバの外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、
遮光コート剤を硬化炉にて硬化する工程
により製造する方法において、
前記遮光コート剤を硬化炉にて硬化する工程は、1次硬化を光エネルギー硬化工程とし2次硬化を赤外線硬化工程とすることを特徴とするファイバ製造方法およびファイバ。
【0065】
(付記項4)付記項2に記載のコート剤硬化後の物性が、プラスチック硬度ショアA75以上、光エネルギー硬化および加熱硬化後の密着力が14MPa以上であるコーティング剤であることを特徴とするファイバ。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態に係るファイバの概略的な断面図。
【図2】第1の実施の形態に係るファイバ製造装置を示す概略図。
【図3】第2の実施の形態に係るファイバ製造装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0067】
10…ガラスファイバ、12…ファイバ母材、12a…母材、14…遮光コート剤層、20…ファイバ製造システム、22…ファイバ外径測定器、24…大気圧プラズマ装置、26…加圧ダイス、28…光硬化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成する工程と、
前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理する工程と、
前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、
前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させる工程と
を具備し、
前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理する工程は、大気圧プラズマ装置によりプラズマガスを前記ファイバ母材に吹き付ける前処理を行なう工程を含むことを特徴とするファイバ製造方法。
【請求項2】
母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成する工程と、
前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理する工程と、
前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布する工程と、
前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させる工程と
を具備し、
前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させる工程は、1次硬化を行なう光エネルギー硬化工程と、2次硬化を行なう赤外線硬化工程とを含むことを特徴とするファイバ製造方法。
【請求項3】
前記遮光コート剤は、紫外線および可視光線の少なくとも一方による光エネルギー硬化性と、赤外線が照射されると硬化される赤外線硬化性とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のファイバ製造方法。
【請求項4】
母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成し、
大気圧プラズマ装置によりプラズマガスを前記ファイバ母材の外周表面に吹き付けるコート前処理を行ない、
前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布し、
前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させて、遮光コート剤層を形成してなることを特徴とするファイバ。
【請求項5】
母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成し、
前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理し、
前記ファイバ母材の外周表面に、紫外線および可視光の少なくとも一方による光エネルギー硬化性と、赤外線による赤外線硬化性とを有する遮光コート剤を塗布し、
前記遮光コート剤を硬化炉で硬化させて、遮光コート剤層を形成してなることを特徴とするファイバ。
【請求項6】
前記遮光コート剤層は、プラスチック硬度ショアA75以上、前記遮光コート剤の光エネルギー硬化および加熱硬化後の前記ファイバ母材に対する密着力が14MPa以上であることを特徴とする請求項5に記載のファイバ。
【請求項7】
母材を加熱炉で加熱溶融した状態で前記母材を線引きしてファイバ母材を形成し、
前記ファイバ母材の外周表面をコート前処理し、
前記ファイバ母材の外周表面に遮光コート剤を塗布し、
光エネルギーを前記遮光コート剤に照射して前記遮光コート剤を1次硬化させ、
赤外線を前記遮光コート剤に照射して前記遮光コート剤を2次硬化させて、遮光コート剤層を形成してなることを特徴とするファイバ。
【請求項8】
前記光エネルギーは、紫外線および可視光線の少なくとも一方であることを特徴とする請求項7に記載のファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−225191(P2006−225191A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39562(P2005−39562)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】