説明

ファイル共有システム、ファイル共有方法およびプログラム

【課題】ファイル共有システム、ファイル共有方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】画像形成装置は、ファイル共有のためにデフォルトで使用するファイル転送プロトコルを登録し、デフォルトで使用するファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断する。さらに画像形成装置は、ファイル転送を開始する前にデフォルト設定されたファイル転送プロトコルが利用可能か確認し、プロトコルが利用不可であった場合にプロトコルを切換えることによって現在使用可能なファイル転送プロトコルの中からユーザが設定した優先順位に対応して最適なファイル転送プロトコルを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイル共有技術に関し、より詳細には、ネットワークに接続された画像形成装置を含むファイル共有技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ネットワーク技術の普及に伴い、複数のネットワーク接続可能な画像形成装置といった機器がイーサネット(登録商標)などの通信基盤を使用してローカルエリア・ネットワーク(LAN)で相互接続されるのが普通になっている。画像形成装置がネットワークに接続されている場合、画像形成装置がスキャンした画像を外部の共有フォルダに転送する技術は、既に知られている。従来画像形成装置が取得した画像をファイルとして転送するために利用されるプロトコルとしては、種々のものがあるが、代表的なプロトコルとしてFTP,SMB,NetWare(NCP)などを挙げることができる。ファイルを転送する場合、利用者は、画像形成装置がデフォルト設定するプロトコルをそのまま使用するか、または希望に応じて任意のプロトコルを選択してファイル転送を実行できる。
【0003】
しかし、従来の画像形成装置では、一度設定されたプロトコルが利用できなくなった場合でも設定が残り、利用者がプロトコルの設定を変更しない限り継続してファイル転送の機能を利用できなくなるという問題があった。特にプロトコルが何らかの事情である時から以後利用できなくなった場合は、ユーザが画像を転送したい場合にそのつどプロトコルを変更するのは、効率が悪く転送開始から終了まで、画像形成装置を占有する時間も長くなり、画像形成装置の利用性も低下する。
【0004】
これまで画像形成装置によるファイル転送に関してプロトコルを切り替える技術が知られている。例えば、特開2005−269487号公報(特許文献1)では、ユーザに転送プロトコルを意識させることなくデータ転送を行う目的で、利用可能なプロトコルを複数用意しておき、順番にプロトコルによる転送を試みて適切な応答があったプロトコルを用いてファイル転送を実行する技術が開示されている。また、特開2005−151259号公報(特許文献2)には、ユーザに転送プロトコルを意識させることなく各種のオブジェクトを対象としたデータ転送を行う目的で、プロトコルの優先順位を判定し、転送するオブジェクトの種類によって転送に利用できるプロトコルを取得する技術が開示されている。
【0005】
さらに特開2000−35930号公報(特許文献3)では、プロトコル設定のためにユーザを煩わすことなく、ネットワークを介して接続された装置間で自動的に適切なプロトコルを選択して通信を行うことができるマルチプロトコル環境のネットワークシステムを提供することを課題とし、使用可能なプロトコルA、B、C、・・、C、D、E、・・の各特性の優先順位を示すパラメータ情報を保持しており、通信の際、上位層の管理プロトコルXにより相手装置からパラメータ情報を取得して自装置のパラメータ情報と比較し、自装置が使用可能なプロトコルと一致しかつ自装置における優先順位のより高いプロトコルを自動選択して通信を行うネットワークシステムが記載されている。
【0006】
特許文献3に記載されたシステムは、相手側装置のプロトコルを判断することで自己の利用するプロトコルを決定するものであり、現在利用できるプロトコルを装置が判断するものではないし、自己の特定のプロトコルが現在使用できるか否かを判断してプロトコルを選択するものではない。
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載された技術でもプロトコルを選択してファイルの転送が可能となる。しかしながら、ファイルを転送する処理の度に毎回転送を試みてそのつどプロトコルを切り替えるのでは、ファイル転送の処理が非効率となることや、不要なプロトコルの試行を行うという無駄が発生するという問題は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ファイル転送プロトコルを設定後、ファイル転送プロトコルが利用できなくなった場合でもプロトコルの設定を自動的に切り替えることにより、ユーザがファイル転送を指令した場合に毎回転送プロトコルのトライアンドエラーによる決定を行うことなく、利用可能なファイル転送の機能を継続して利用することを可能とするファイル共有システム、ファイル共有方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するために、画像形成装置が現在使用可能なファイル転送プロトコルを事前に設定する。この目的のため、画像形成装置は、画像形成装置がファイル共有のためにデフォルトで使用するファイル転送プロトコルを登録し、デフォルトで使用する前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断する。また、画像形成装置は、複数の通信プロトコルから特定のプロトコルを選び出すための優先順位を設定しており、ファイル転送を開始する前にデフォルト設定されたファイル転送プロトコルが利用可能か確認してプロトコルが利用不可であった場合に優先順位を考慮してファイル転送のためのプロトコルを切換える。
【0010】
本発明では、ファイル転送プロトコルが利用できるか否かの判断は、ユーザがファイル転送指令を行ったことに同期または非同期に実行される。さらに、画像形成装置は、前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断するために、ファイル転送プロトコルが利用するポートのポートスキャンまたは使用可能なファイル転送プロトコルを使用して自機宛てにテストファイルを送付することができる。
【0011】
さらに画像形成装置は、デフォルト設定された前記ファイル転送プロトコルを切換える場合、ユーザに対してファイル転送プロトコルの切換を行うか否かを問い合わせるユーザインタフェースを表示させることで、ユーザがファイルが何処に転送されたかを前もって判断させることができる。また、画像形成装置は、ファイル転送プロトコルの優先順位を決定するためのユーザインタフェースを表示させ、優先順位の決定の際にユーザの権限認証を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のファイル共有システム100の実施形態。
【図2】本実施形態の例えばMFP101の機能ブロック図。
【図3】本実施形態で、ファイル転送プロトコルの優先順位を登録する優先順位リスト300の実施形態。
【図4】図3に示した優先順位リスト300を形成するために管理者ユーザがアクセスする転送プロトコル優先順位設定画面400の実施形態。
【図5】図4の画面を表示させるための管理者ユーザ認証処理のフローチャート。
【図6】本実施形態のファイル転送プロトコル最適化処理のフローチャート。
【図7】MFP101が、利用できる優先度の最も高いファイル転送プロトコルを自動的に指定することを可能とする第2の実施形態の処理のフローチャート。
【図8】ファイル転送プロトコルを変更する場合に、ユーザに対して確認を求める第3の実施形態のフローチャート。
【図9】図8のステップS804でMFP101に表示させるプロトコル変更をユーザが確認するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェースの実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明のファイル共有システム100の実施形態を示す。ファイル共有システム100は、LAN107に複数のMFP(Multi-Function Peripheral)101、102が接続されていて、LAN107に接続されたファイル共有サーバ103に対して例えばMFP101が取得した画像データをファイル共有サーバ103に転送し、ファイルの共有を可能としている。
【0014】
MFP102も同様に、スキャナやファクシミリなどとして受領した画像をファイル共有サーバ103に転送し、ファイルの共有を可能としている。MFP101、102は、スキャナや外部との通信で取得した画像ファイルを、PDF、TIFF、GIF、JPEGなどの適切なフォーマットに変換する画像処理機能を備え、ファイルが共有しやすいフォーマットとして、ファイル共有サーバ103にファイルを転送する。ファイルの転送に際しては、これまで知られたファイル共有方法でも使用することができ、例えばFTP(S)、HTTP(S)、SMB、CIFS(Common Internet File System)またはNetWare(登録商標)(NCP)などのプロトコルを使用して、ファイル共有を可能とする記憶領域にファイルを格納させることができる。
【0015】
また、LAN107には、複数のパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとして参照する。)104、105が接続されていて、MFP101、102をリモートスキャナ、リモートプリンタなどとして動作させ、ファイル共有を希望するファイルをファイル共有サーバ103に転送させている。さらにLAN107には、機器管理サーバ106も接続されていて、管理者などのアクセスによってMFP101、102、またはファイル共有サーバ103の設定または設定変更を可能としている。
【0016】
ファイル共有サーバ103および機器管理サーバ106は、ワークステーションやサーバ専用機から構成でき、Pentium(登録商標)、Pentium(登録商標)互換チップなど、CISCアーキテクチャのマイクロプロセッサ、または、POWERPC(登録商標)などのRISCアーキテクチャのマイクロプロセッサを、シングルコアまたはマルチコアの形態で実装することができる。また、各サーバは、Windows(登録商標)200X、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などのオペレーティング・システムにより制御されていて、C、C++、Java(登録商標)、PERL、RUBY、PYTHONなどのプログラミング言語を使用して実装される、サーバ・プログラムを実行し、PC104、105から送付されるファイルの共有を可能とし、またMFP101、102の管理を可能としている。
【0017】
PC104、105は、パーソナルコンピュータまたはワークステーションなどを使用して実装でき、例えばマイクロプロセッサ(MPU)として、これまで知られたいかなるシングルコア・プロセッサまたはマルチコア・プロセッサを含み、RAM、HDD、ネットワークインタフェースなどを含むことができる。また、PC104、105は、Windows(登録商標)、UNIX(登録商標)、Linux(登録商標)、Mac OSなど、これまで知られたいかなるオペレーティング・システムにより制御されてもよい。また、PC104、105は、各種サーバ(図示せず)にアクセスするため、Internet Explorer(登録商標)、Mozilla(登録商標)、Opera(登録商標)、FireFox(登録商標)などのブラウザ・ソフトウェアを実装することができる。
【0018】
なお、図1に示した実施形態では、例示する目的でMFP、PCとも2台記載しているが、ファイル共有システム100は、さらに多くのPCおよびMFPまたはプリンタなどを含んで構成することができる。
【0019】
図2は、本実施形態の例えばMFP101の機能ブロック図である。MFP101は、タッチパネルといった操作パネルまたはディスプレイ装置と、入力キーなどを備えたユーザIF202を備えている。ユーザI/F202は、ユーザ指令に応答して、画像形成装置に対してコピー、プリンタ、ファクシミリ、モノクロコピー、フルカラーコピーなどの機能をユーザに提供すると共に、LAN107を介した外部機器との間の相互通信の機能をユーザに提供する。
【0020】
さらに図2に示したMFP101は、上述した機能をユーザに提供するため、各種の機能を提供する機能的レイヤに複数のプログラムやハードウェアを含んで構成されている。例えば、アプリケーションレイヤ203は、プリンタ機能を提供するためのプリンタ・アプリケーションPA、コピー機能を提供するコピー・アプリケーションCA、ファクシミリ機能を提供するためのFA、セキュリティ機能を提供するSA、ネットワーク通信を可能とするNFA、などの複数の機能を提供するための各種アプリケーションを含む機能的レイヤとして参照することができる。
【0021】
また、MFP101は、さらに機能的レイヤとしてミドルウェアレイヤ205および汎用OSレイヤ207とを含んでいる。ミドルウェアレイヤ205は、各種アプリケーションからの要求を受領して、汎用OSレイヤ207のOSに対して割込に対応した機能を提供するようにハードウェア割込を生成し、各種のハードウェア装置を動作させ、MFP101の機能を提供させている。ミドルウェアレイヤ205は、上述した機能を達成するため、エンジン制御システムECS、メモリ制御システムMCS、オペレーション制御システムOCS、ファクシミリ制御システムFCS、ネットワーク制御システムNCS、サービス制御システムSCSなどを含んで構成されている。
【0022】
ミドルウェアレイヤ205は、汎用OSレイヤ207と通信して各種機能のエンジンおよびデバイスの入出力管理やエンジンおよび各デバイスを制御してMFP101の機能を提供する。ミドルウェアレイヤ205とアプリケーションレイヤ203との間には、アプリケーションプログラムインタフェース(API)レイヤ204が設けられていて、ミドルウェアレイヤ205とアプリケーションレイヤ203との間のデータ受け渡しを可能とさせている。
【0023】
図2に示したMFP101は、さらにモノクロプリンタエンジン208、カラープリンタエンジン209、ネットワークインタフェースカード(NIC)などのネットワーク・デバイス210、RAM206を備え、その他にもNVRAM、ROM、EEPROM、EPROM、ハードディスクなどの各種記憶装置211を備えている。各デバイスは、それぞれ対応するデバイスI/F212を介して画像処理装置の入出力を可能としている。ネットワーク・デバイス210には、固有の物理アドレス(MACアドレス)が付されていて、LAN内においてアクセスリンク単位の同報通信を受信することができる。この他、図2に示したMFP101は、DHCPサーバ(Dynamic Host Configuration Protocol Server)などによりIPアドレスが割当てられており、TCP/IP、UDP/IP、NETBEUI、NETBIOSなどのトランスポート層プロトコルを使用したトランザクション制御が可能とされている。
【0024】
図2に示した機能ブロックのうち、NFAは、ネットワークアプリケーションとして、本実施形態のプロトコル切換処理を実行する機能が追加されている。NFAは、MFP101がファイル共有のためにデフォルトで使用するファイル転送プロトコルを登録する優先順位リストを管理しており、当該デフォルトで使用するファイル転送プロトコルが利用可能であるか否かを判断する。また、NFAは、複数の通信プロトコルから特定のプロトコルを選び出すための優先順位を決定するために使用するグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を提供する手段および優先順位にしたがってファイル転送プロトコルを選択するための情報を登録する優先ランクテーブルとを含んで構成されている。
【0025】
さらにNFAは、ファイル転送を開始する前にデフォルト設定されたファイル転送プロトコルが利用可能か確認し、プロトコルが利用不可であった場合にプロトコルを切換える機能手段が追加されている。これらの機能手段は、MFP101のアプリケーションプログラムとして実装され、各手段は、MFP101のハードウェア資源をソフトウェアが利用してMFP101の機能手段として構成されている。
【0026】
NFAは、さらに、ファイル転送指令を受領した後またはファイル転送指令とは非同期的にファイル転送のために登録されているプロトコルに関連するポート、例えばFTPであれば、ポート番号=21、SMBであれば、NETBIOSの利用するTCPポート番号=139、HTTPであれば、ポート番号=80、その他、NetWareであれば、トランスポート層プロトコルのIPX/SPXなどを選択し、ポートスキャンなどを行って、当該ポートが利用可能か否かを判断するための機能手段を備えている。
【0027】
また、ポートスキャンがプロトコルの利用可能性を提供しない可能性がある場合には、NFAは、プロトコルのアクティビティを検査するためのテストファイルなどを、プロトコルのアクティビティを検査するためにMFP101が適切な領域に確保するファイル共有領域に宛てて送付し、ファイル転送の実効的な有効性をモニタすることにより、ファイル転送プロトコルのアクティビティを検査することもできる。
【0028】
図3は、本実施形態で、ファイル転送プロトコルの優先順位を登録する優先順位リスト300の実施形態を示す。ファイル転送プロトコルは、図3に示した実施形態では、FTP、HTTP、SMB、NCS、CIFSなどを例示的に示しているが、これらの他にも例えば、ファクシミリなどの通信プロトコルも含ませることができる。図3に示したプロトコルについては、例示的にNCSの優先順位が最も高く、順次NCS、FTP、HTTP、SMB、CIFSの順に低い優先順位が付されている。この他、本実施形態では、BonjourやAppleTalkなどのプロトコルスタックもプロトコル切換処理の候補とすることができる。
【0029】
これらの優先順位は、ファイル転送に使用するネットワーク基盤の質に対応してMFPなどの管理者ユーザが適宜設定することができる。また、図3に示した実施形態では、ファイル送信プロトコルのNCSが、例えばFTPアプリケーションプログラムがアンインストールされたなどの理由で使用できなくなっており、そのアクティビティフラグ=0(フラグ未設定:使用不能を意味する。)とされている。また、図3の実施形態では、その他のファイル転送プロトコルは、正常に機能している、アクティビティフラグ=1が設定されている。
【0030】
図4は、図3に示した優先順位リスト300を形成するために管理者ユーザがアクセスする転送プロトコル優先順位設定画面400の実施形態である。転送プロトコル優先順位設定画面400は、ウィンドウ401内に、優先順位を決定するための属性をリスト表示するリストウィンドウ402と、優先する属性を高い順に並べた優先属性ウィンドウ403とを含んで形成されている。例えば、管理者ユーザが、通信速度を優先させることを希望する場合、リストウィンドウ402において例えば通信速度を選択すると、背景フィールドの表示色が変わり、選択されたことが示される。その後、管理者ユーザが、「追加」ボタンをクリックすると、優先属性ウィンドウ403の属性「通信速度」が追加され、その順位が最上位に配置される。
【0031】
また、優先属性を削除する場合には、優先属性ウィンドウ403で削除したい属性を選択し、「削除」ボタンをクリックすることにより、優先するべき属性を削除することができる。なお、優先属性から優先順位を生成する際には、図4の優先ランクテーブル410からNCS、FTP、HTTP、SMB、CIFSなどについて割り当てられた属性スコアのうち、優先度の最も高い属性についてのスコアが最も大きなプロトコルであって、アクティビティフラグが設定されているプロトコルを自動的に決定する。このため、管理者ユーザが設定した条件に最も近い優先属性のファイル転送プロトコルが自動的に決定できる。決定に際して同一ランクのものがある場合、さらに下位に設定された優先属性のランクを使用し、算術平均などの統計手法を利用してそのスコアの最も高いものを選択することができる。
【0032】
図4に示した転送プロトコル優先順位設定画面400において管理者ユーザが優先順位を設定し終わると、「終了」ボタン406をクリックすることで、設定が登録される。また、優先順位を設定し直す場合や変更結果を廃棄したい場合「戻る」ボタン407をクリックする。
【0033】
図5は、図4の画面を表示させるための管理者ユーザ認証処理のフローチャートを示す。図5の処理は、ステップS500から開始し、ステップS501で、ユーザからのプロトコル優先度変更画面を表示させる指令を受領すると、MFP101は、ステップS502でユーザが管理者ユーザの権限を有しているか否かを認証するためのユーザ識別値の入力を要求する画面表示を表示させ、ユーザ識別値を取得し、ステップS503で、優先順位設定権限があるか否かを、例えばユーザIDおよびパスワードなどを照合して判断する。ステップS503の認証に失敗した場合(no)、処理をステップS502に戻し、再度入力を要求し、設定回数以上にわたってステップS502の処理を繰り返した場合、図5の処理を終了させる。
【0034】
一方、ステップS503の処理で認証に成功すると(yes)、ステップS504で図4の画面を表示させ優先順位の変更を許可し、ステップS505で処理を終了させる。図5の処理によって、ファイル転送プロトコルの優先順位を管理者が設定したポリシーに基づいて指定することが可能となる。
【0035】
図6は、本実施形態のファイル転送プロトコル最適化処理のフローチャートを示す。図6の処理は、ステップS600から開始し、ステップS601で、ユーザからファイル転送指示を受領し、ステップS602で、MFP101がプロトコル状態確認処理を実行する。プロトコル状態確認処理は、MFP101に登録されているファイル転送プロトコルが使用するトランスポート層プロトコルに対応するポートをポートスキャンすることによってポートのレスポンスを検査するか、または実際にテストファイルを検査しようとするプロトコルを使用して自分に宛てて送付し、ファイル転送の成功・不成功を使用して検査することができる。
【0036】
ステップS603では、デフォルト設定されているファイル転送プロトコルが利用可能であるか否かをステップS602のレスポンスを使用して判定し、例えば設定したRTT(Round Trip Time )を経過してもポートスキャンやファイル転送成功のリプライが得られなかった場合、デフォルト設定されているファイル転送プロトコルが利用できないものと判断する処理を使用することができる。ステップS603で、デフォルト設定のファイル転送プロトコルが利用可能であると判断された場合(yes)、処理をステップS606に分岐させ、デフォルト設定のファイル転送プロトコルを使用してファイル転送を開始する。
【0037】
一方、ステップS603で、デフォルト設定のファイル転送プロトコルが使用できないと判断された場合(no)、ステップS604でプロトコル優先順位の確認を行い、現在指定されている優先属性に適合するファイル転送プロトコルを決定し、ステップS605でプロトコル切換を実行する。なお、プロトコル切換処理は、アプリケーションレベルでは、ファイル転送のために呼び出すアプリケーションプログラムを、優先属性に応じて切換える処理で実行される。
【0038】
ステップS606では、ステップS605で呼び出したファイル転送プログラムに転送するべきファイルを設定し、切換後のプロトコルによるファイル転送を実行し、ステップS607で処理を終了する。図6の処理によれば、デフォルト設定されたファイル転送プロトコルが利用できない場合であっても、設定された優先属性に次善的に適合するファイル転送プロトコルが利用でき、ファイル転送処理の品質をユーザに負担をかけずに確保することができる。
【0039】
図7は、MFP101が、ファイル転送指令と非同期にファイル転送プロトコルのアクティビティを検査し、利用できる優先度の最も高いファイル転送プロトコルを自動的に指定することを可能とする第2の実施形態の処理のフローチャートである。図7の処理は、図6に示した処理とは異なり、ステップS701でMFP101がファイル転送指示を受領するタイミングとは異なるタイミングでファイル転送プロトコルの検査を実行する実施形態である。図7の処理は、ステップS701を除き、図6の処理を同等であるが、図7の処理によれば、ユーザがファイル転送を行う指示を行ってからファイル転送までの期間が、プロトコルの変更を行う場合であってもプロトコルの変更を行わない場合とまったく異ならず、さらに効率的なファイル転送プロトコルの最適化が可能となる。
【0040】
図8は、第3の実施形態のフローチャートであり、図8の処理は、ファイル転送プロトコルを変更する場合に、ユーザに対して確認を求める処理を含むものである。図8の実施形態は、具体的には、ファイル転送プロトコルによってファイルが転送される宛先が異なる場合に、ユーザに対してプロトコル変更を通知し、ユーザの混乱を避けることが可能となる。
【0041】
図8の処理は、ステップS800から開始し、ステップS801でプロトコル状態を検査して、現在利用可能なファイル転送プロトコルを決定する。ステップS802では、ユーザからのファイル転送指示を受領し、ステップS803で決定したファイル転送プロトコルが設定プロトコルと同一か否かを判断し、同一の場合(yes)処理をステップS807に分岐させてファイル転送を開始する。一方、設定プロトコルが利用できない場合(no)には、ステップS804でユーザに対してファイル転送プロトコルを再設定する通知を表示し、ステップS805でプロトコル切換を認めるか否かの判断をユーザに選択させる。
【0042】
ユーザがファイル転送プロトコルの切換を認める場合(yes)、ステップS806で異なるファイル転送プロトコルを有するアプリケーションプログラムを呼び出し、現在使用可能なファイル転送プロトコルを使用するアプリケーションプログラムにファイルを設定し、ステップS807でファイル転送を開始し、ファイル転送が完了した後、ステップS808で処理を終了する。また、ステップS805でユーザがファイル転送プロトコルの転送を拒否した場合(no)、処理をステップS808に分岐させ、ファイル転送処理を実行することなく処理を終了させる。
【0043】
図8に示す処理によれば、ファイル転送プロトコルで転送される先が異なるなどのためにユーザがファイル転送後に混乱する可能性を低減し、より効率的なファイル転送を可能とする。
【0044】
図9は、図8のステップS804でMFP101に表示させるプロトコル変更をユーザが確認するためのGUI900を示す。GUI900は、表示ウィンドウ901内にプロトコル変更を確認するための画面であることが示され、矩形枠902内に変更元と変更先のプロトコルとがユーザに示されていて、変更が良いかを問い合わせている。
【0045】
ユーザは、ファイル転送プロトコルを変更することを許容する場合には「変更」ボタン903をクリックし、図8のステップS807の処理を開始させる。また、ファイル転送プロトコルの変更を希望せず、オフラインでのファイル転送や他のMFPによるファイル転送を行うなどの判断をする場合、「終了」ボタン904をクリックして処理を終了する。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、特定のファイル転送プロトコルが利用できない場合であっても、優先順位に可能な限り適合するファイル転送プロトコルを動的に選択し、効率的なファイル転送処理を可能とする、ファイル共有システム、ファイル共有方法およびプログラムが提供できる。
【0047】
本実施形態の上記機能は、C++、Java(登録商標)、Java(登録商標)Script、Perl、Ruby、PYTHONなどのオブジェクト指向プログラミング言語や手続き型のレガシープログラミング言語およびこれらの組み合わせで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、プログラムは、ハードディスク装置、CD−ROM、MO、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0048】
これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
100 ファイル共有システム
101 MFP
102 MFP
103 ファイル共有サーバ
104 パーソナルコンピュータ
105 パーソナルコンピュータ
106 機器管理サーバ
107 ローカルエリア・ネットワーク(LAN)
130 マッシュアップ・サーバ
150 ウェブ・サーバ
202 ユーザI/F
203 アプリケーションレイヤ
204 アプリケーションプログラムインタフェース(API)レイヤ
205 ミドルウェアレイヤ
206 RAM
207 汎用OSレイヤ
208 モノクロプリンタエンジン
209 カラープリンタエンジン
210 ネットワーク・デバイス
211 記憶装置
212 デバイスI/F
300 優先順位リスト
400 転送プロトコル優先順位設定画面
401 ウィンドウ
402 リストウィンドウ
403 優先属性ウィンドウ
406 ボタン
407 ボタン
410 優先ランクテーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2005−269487号公報
【特許文献2】特開2005−151259号公報
【特許文献3】特開2000−35930号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された画像形成装置を使用するファイル共有システムであって、前記画像形成装置は、
前記画像形成装置がファイル共有のためにデフォルトで使用するファイル転送プロトコルを登録する手段と、
前記デフォルトで使用する前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断する手段と、
複数の通信プロトコルから特定のプロトコルを選び出すための優先順位を設定するための手段と、
ファイル転送を開始する前にデフォルト設定されたファイル転送プロトコルが利用可能か確認し、プロトコルが利用不可であった場合にプロトコルを切換える手段と
を含む、ファイル共有システム。
【請求項2】
前記ファイル転送プロトコルが利用可能であるか否かを判断する手段は、前記画像形成装置に対してユーザがファイル転送指令を行ったことに同期または非同期に前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断する、請求項1に記載のファイル共有システム。
【請求項3】
前記画像形成装置は、前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを当該ファイル転送プロトコルが利用するポートのポートスキャンまたは使用可能なファイル転送プロトコルを使用して自機宛てにテストファイルを送付することによって前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断する、請求項1または2に記載のファイル共有システム。
【請求項4】
前記画像形成装置は、デフォルト設定された前記ファイル転送プロトコルを切換える場合、ユーザに対してファイル転送プロトコルの切換を行うか否かを問い合わせるユーザインタフェースを表示させ、前記ユーザが設定切換を許容する場合にプロトコルを切り替える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のファイル共有システム。
【請求項5】
前記画像形成装置は、前記ファイル転送プロトコルの優先順位を決定するためのユーザインタフェースを表示させ、前記優先順位の決定の際にユーザの権限認証を実行する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のファイル共有システム。
【請求項6】
ネットワークに接続された画像形成装置を使用するファイル共有方法であって、前記画像形成装置が実行する方法であって、前記画像形成装置が、
ファイル共有のためにデフォルトで使用するファイル転送プロトコルを登録するステップと、
前記デフォルトで使用する前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断するステップと、
ファイル転送を開始する前にデフォルト設定された前記ファイル転送プロトコルが利用可能か確認し、複数の通信プロトコルから特定のプロトコルを選び出すための優先順位を参照してファイル転送プロトコルを決定するステップと、
決定された前記ファイル転送プロトコルを使用するアプリケーション手段を呼び出すステップと
を実行する、ファイル共有方法。
【請求項7】
前記ファイル転送プロトコルが利用可能であるか否かを判断するステップは、前記画像形成装置に対してユーザがファイル転送指令を行ったことに同期または非同期に前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断する、請求項6に記載のファイル共有方法。
【請求項8】
前記ファイル転送プロトコルが利用可能であるか否かを判断するステップは、当該ファイル転送プロトコルが利用するポートのポートスキャンまたは使用可能なファイル転送プロトコルを使用して自機宛てにテストファイルを送付することによって前記ファイル転送プロトコルが利用可能か否かを判断するステップを含む、請求項6または7に記載のファイル共有方法。
【請求項9】
画像形成装置を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の手段として機能させるための装置実行可能なプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−192578(P2012−192578A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57425(P2011−57425)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】