説明

ファインダ装置、カメラ

【課題】使用者の乱視を補正することができるファインダ装置及びカメラを提供する。
【解決手段】ファインダ装置(60)を、画像(C)を表示可能に設けられた表示部(61)と、前記表示部に対して観察方向手前側に配置され、直交する2軸方向で曲率半径が異なるレンズ(81)と、前記直交する2軸のそれぞれに直交して設けられた回転軸線周りに前記レンズを前記表示部に対して回転させる回転機構(90)とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインダ装置及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
目の検査装置としては、回転式の円柱レンズを用いて観察者の乱視の調べる乱視検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭60−49500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、乱視の撮影者がカメラを用いて撮影を行う場合、撮影者は、被写体観察用のファインダ装置によって被写体像を正確に観察することが困難である。このため、乱視の撮影者であっても被写体像を確実に観察することのできるファインダ装置の開発が望まれていた。
本発明の課題は、使用者の乱視を補正することができるファインダ装置及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、画像(C)を表示可能に設けられた表示部(61)と、前記表示部に対して観察方向手前側に配置され、直交する2軸方向で曲率半径が異なるレンズ(81)と、前記直交する2軸のそれぞれに直交して設けられた回転軸線周りに前記レンズを前記表示部に対して回転させる回転機構(90)とを備えるファインダ装置(60)である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のファインダ装置において、前記表示部(61)は、前記画像として乱視表(C)を表示可能であることを特徴とするファインダ装置(60)である。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のファインダ装置(60)と、撮影光学系(10)と、前記撮影光学系を通過した被写体光を電気信号に変換して出力する撮像部(20)とを備え、前記ファインダ装置は、前記表示部(61)に前記撮像部の出力に基づいて形成される被写体像を表示可能であることを特徴とするカメラ(1)である。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のファインダ装置(60)と、撮影光学系(10)と、前記ファインダ装置における前記レンズ(81)よりも前記表示部(162)側に設けられ、前記撮影光学系を通過した被写体像が結像されるファインダスクリーン(161)とを備え、前記表示部は、前記画像を表示した表示状態と前記画像を非表示にして光を透過可能にする透過状態との切り替えが可能なことを特徴とするカメラ(101)である。
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載のカメラにおいて、前記回転機構(90)は、前記レンズ(91)を前記回転軸線周りに回転させることが可能なアクチュエータ(94)を含み、該カメラは、該カメラにおける前記回転軸線周りの姿勢の変化を検出可能に設けられた姿勢検出部(50)と、前記姿勢検出部の出力に応じて前記アクチュエータを制御し、前記レンズを所定の角度回転させる制御部(70)とを備えることを特徴とするカメラ(1)である。
請求項6の発明は、請求項5に記載のカメラにおいて、手動操作によって前記制御部(70)に対して回転指示信号を発信可能な入力操作部(44)を備え、前記制御部は、前記回転指示信号に応じて前記アクチュエータ(94)を制御し、前記レンズ(81)を前記所定の角度回転させることを特徴とするカメラ(1)である。
請求項7の発明は、請求項3から請求項までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、前記回転機構(90)は、手動操作によって前記レンズ(91)を前記回転軸線周りに回転させることが可能な回転操作部(92)を含むことを特徴とするカメラ(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用者の乱視を補正することができるファインダ装置及びカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、図面等を参照して、本発明を適用したファインダ装置及びこのファインダ装置を備えたカメラの実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態のカメラの概略構成を示す図である。
この図1において、(a)は、光軸を含むカメラの断面図を示し、(b)は、カメラに備えられた操作部の構成を示している。
第1実施形態のカメラ1は、図1に示すように、撮影レンズ10、撮像素子20、電源30、操作部40、姿勢検出部50、EVF(Electronic View Finder)60、回路部70等を備えている。
【0009】
撮影レンズ10は、例えば、フォーカスレンズやズームレンズ等を含む複数のレンズ群によって形成されている。複数のレンズ群は、光軸A方向に沿って配列されている。撮影レンズ10の一部は、アクチュエータ等を含むレンズ駆動部11によって、光軸A方向に進退動作を行うようになっている。撮影レンズ10は、被写体像を撮像素子20に結像させる。
撮像素子20は、撮影レンズ10を通過した被写体光を電気信号に変換して出力する光−電気変換素子である。撮像素子20の結像面は、光軸A方向からみた正面視で略長方形に形成されている。以下、撮影レンズ10の光軸Aを水平にして横長の画像を撮影する際のカメラの姿勢を横位置と称して説明する。また、横位置のカメラ1を光軸A周りに90°回転させた状態のカメラ1の姿勢を縦位置と称して説明する。
【0010】
電源30は、カメラ1に備えられた各電気要素に電力を供給するものである。
操作部40は、撮影者等のカメラ1のユーザが操作する部材である。図1(b)に示すように、操作部40には、カメラ1の電源のオン、オフ操作を行う際に操作する電源ボタン41、カメラ1に撮影動作を行わせる際に操作するレリーズボタン42、後述する乱視補正の初期設定を行う際等に操作する設定ボタン43、後述する補正レンズ81を強制的に回転させる際に操作する強制回転ボタン44等の押しボタンスイッチが設けられている。
【0011】
姿勢検出部50は、カメラ1の光軸A周りの姿勢の変化を検出するものであり、後述する回路部70は、この姿勢検出部50の出力に基づいてカメラ1の姿勢が横位置であるか縦位置であるかを判定するようになっている。
また、カメラ1が光軸A周りに回転して、その姿勢が横位置から縦位置に変化する際、カメラ1の回転方向は、2方向(例えば、撮影者からみて時計回り方向及び反時計回り方向)が考えられるが、姿勢検出部50は、カメラ1がどちらの方向に回転して縦位置に変化したかも検出できるようになっている。姿勢検出部50の種類は、特に限定されないが、例えば、ジャイロセンサや加速度センサを含む公知の姿勢センサ等を使用することができる。
【0012】
EVF60は、撮影者が撮影構図を決定する際(フレーミング時)に被写体像を観察するために使用するものである。このEVF60の構成については、後に詳しく説明する。
回路部70は、カメラ1に備えられた各電気要素を統括的に制御する制御部であり、CPU等の演算装置を含んでいる。この回路部70には、撮像素子20の出力(電気信号)に基づいて画像データを生成する信号処理回路が備えられている。
【0013】
次に、カメラ1に備えられたEVF60の構成について説明する。
図2は、図1に示すカメラに備えられたEVFの概略構成を示す図である。
この図2において、(a)は、EVF60に備えられた主レンズ62の光軸Bを含む断面図であり、(b)は、EVF60の要部を示す斜視図である。
【0014】
EVF60は、図2(a)に示すように、表示部61、主レンズ62、及び、乱視補正ユニット80を備えている。
表示部61は、液晶パネル61aと、この液晶パネル61aの背面(表示面とは反対側の面)側に設けられたバックライト61bとを備えた公知のLCD(liquid crystal display)表示装置である。
表示部61は、液晶パネル61aに任意の画像を表示することができ、撮影者がフレーミングを行う際には、スルー画像を表示する。スルー画像とは、フレーミング時において、信号処理回路が撮像素子20の出力に基づいて略リアルタイムで生成する動画像を意味し、撮影者Pは、表示部61に表示されたスルー画像(被写体像)を観察しながらフレーミングを行う。
【0015】
主レンズ62は、表示部61に対して観察方向手前側に配置されたレンズであり、表示部61に表示される画像を拡大するようになっている。この主レンズの光軸Bは、撮影レンズ10の光軸Aと略平行になっている。なお、観察方向とは、観察者である撮影者Pから観察対象である表示部61へと向かう方向(図2の矢印O方向)を意味するものとする。
【0016】
乱視補正ユニット80は、撮影者Pが表示部61に表示される被写体像を観察する際に、この撮影者Pの乱視を光学的に補正するものである。乱視補正ユニット80は、表示部61に対して主レンズ62よりもさらに観察方向手前側に配置されている。
乱視補正ユニット80は、円柱レンズである補正レンズ81と(図2(b)参照)、この補正レンズ81を表示部61に対して光軸B周りに回転させる回転機構90(図3参照)とを備えている。円柱レンズとは、直交する2軸方向の曲率半径が異なるレンズの一種であり、一方の軸方向の曲率半径を無限大に設定したものである。円柱レンズは、その曲率中心が点ではなく線(中心線)になり、本実施形態の補正レンズ81における中心線は、光軸B上に配置されている。
なお、図2(b)に示す補正レンズ81は、円柱レンズであることを示すために光軸Bに直交する断面形状が略正方形状となっているが、補正レンズ81の光軸Bに直交する断面形状は略円形でもよい。
【0017】
次に、乱視補正ユニット80に備えられた回転機構90について説明する。
図3は、図2に示す乱視補正ユニットに備えられた回転機構の構成を示す図であり、(a)は、分解斜視図であり、(b)は、回転機構を電動モータの出力軸方向からみた側面図である。
図3の各図に示すように、回転機構90は、レンズ保持枠91、手動操作環92、駆動リング93、電動モータ94、回転角検出器95等を備えている。
【0018】
レンズ保持枠91は、円筒状に形成された枠体であり、その内径側に補正レンズ81を保持している。レンズ保持枠91は、その外周面から外径側に突き出して設けられた複数(本実施形態では3本)の支持軸91aが設けられている。これらの支持軸91aは、光軸B周りに略均等な間隔で設けられている。支持軸91aは、円環状に形成された回転コロ91bを回転自在に軸支している。
【0019】
手動操作環92は、レンズ保持枠91と同軸上に配置された円環状の部材であり、その内径側にレンズ保持枠91が配置されている。手動操作環92の外周面からは、レバー92aが外径側に突き出して設けられている。このレバー92aは、ファインダ装置60がカメラボディに収容された状態で、カメラボディから突き出しており、撮影者が手動で操作できるようになっている。
【0020】
駆動リング93は、レンズ保持枠91と同軸上に配置された円環状の部材であり、その内径側にレンズ保持枠91が配置されている。駆動リング93は、歯車状に形成されており、外周面に複数の歯が形成されている。
前述の手動操作環92は、回転コロ91bよりも表示部61側に配置され、駆動リング93は、回転コロ91bよりも撮影者P側に配置されている。
電動モータ94は、駆動リング93を回転駆動するアクチュエータであり、減速ギア94aを介して駆動リング93を光軸B周りに回転させるようになっている。
【0021】
上述した手動操作環92及び駆動リング93は、それぞれが回転コロ91bに接触している。そして、手動操作環92及び駆動リング93は、それぞれが加圧バネ96a、96bによって回転コロ91bを押圧する方向に付勢されている。
乱視補正ユニット80は、手動操作環92が回転操作されると、これに応じて回転コロ91bが回転する。加圧バネ96a、96bは、手動操作環92が回転したときには駆動リング93が回転しないように加圧力が設定されており、手動操作環92が回転した場合には、回転コロ91bが駆動リング93に対して回転する(駆動リング93上を走行する)ことによってレンズ保持枠91が光軸B周りに回転する。
これに対し、加圧バネ96a、96bは、電動モータ94によって駆動リング93を回転させるときには手動操作環92が回転しないように加圧力が設定されており、駆動リング93が回転する場合、回転コロ91bは、手動操作環92に対して回転する(手動操作環92上を走行する)。これによって、レンズ保持枠91が光軸B周りに回転する。
【0022】
回転角検出器95は、レンズ保持枠91が光軸B周りに回転した場合に、その回転角度を検出するものである。回転角検出器95は、レンズ保持枠91の外周面に形成された磁気パターン91cを読み取る磁気検出器を含んでいる。回転角検出器の構成は、これに限らず、例えば、光検出式のものであってもよい。
【0023】
次に、本実施形態のカメラ1を用いて撮影を行う際に回路部70が行う制御について、フローチャートを用いてステップごとに説明する。
図4は、図1に示すカメラを用いて撮影を行う際に回路部が行う制御を示すフローチャートであり、補正レンズの初期位置を決定する初期設定フェーズにおける処理を示している。
【0024】
<初期設定フェーズ>
(ステップS01:乱視補正チャート表示)
回路部70は、操作部40に備えられた設定ボタン43が操作されると、これに応じてファインダ装置60の表示部61に、図5に示すような乱視補正チャートCを表示させ、ステップS02に進む。
図5は、図2に示すファインダ装置に備えられた表示部に表示される乱視補正用のチャートを示す図である。
乱視補正チャートCは、乱視表等とも称される公知のチャートであり、放射状に延びる複数のラインによって形成されている。
撮影者Pは、この乱視補正チャートCを観察しながら、手動操作環92のレバー92aを操作して補正レンズ81を表示部61に対して回転させ、自己の乱視が補正された状態(乱視補正チャートCに設けられた複数のラインの全てをクリアに視認できる状態)とすることができる補正レンズ81の位置を決定する。
補正レンズ81の位置が決定した場合、撮影者は、再度設定ボタン43を操作し、回路部70に対して初期設定を終了する旨の信号を発信する。
【0025】
(ステップS02:設定ボタンの再操作判定)
回路部70は、設定ボタン43の再操作を検出しない場合には、待機状態となり、設定ボタンの再操作を検出した場合には、ステップS03に進む。
(ステップS03:姿勢情報を取得)
回路部70は、姿勢検出部50の出力に基づいて、この初期設定時のカメラ1の姿勢(横位置又は縦位置)を回路部70に備えられた図示しないメモリに記録して、ステップS04に進む。
(ステップS04:乱視補正チャート消灯)
回路部70は、ステップS01で表示部61に表示させた乱視補正チャートCを消灯し、初期設定フェーズにおける処理を終了する。
【0026】
次に、カメラ1を用いて撮影を行う撮影フェーズにおいて回路部70が行う制御について説明する。
図6は、図1に示すカメラを用いて撮影を行う際に回路部が行う制御を示すフローチャートであり、撮影時にカメラの姿勢が変化した際の乱視補正ユニットの制御フローを示している。
【0027】
<撮影フェーズ>
(ステップS11:強制回転フラグリセット)
回路部70は、電源ボタン41がオン操作されると、これに応じて本フローに示す撮影フェーズの処理を開始する。
回路部70は、まず、撮影者Pが強制回転ボタン44をオン(押圧)操作しているか、否かを示す強制回転フラグをリセット(強制回転フラグ=0)してステップS12に進む。強制回転フラグについては、後に詳しく説明する。
【0028】
(ステップS12:姿勢情報読み出し)
回路部70は、図5のステップS03でメモリに記録した姿勢情報(縦位置又は横位置)を読み出して、ステップS13に進む。
【0029】
(ステップS13:電源オフ検出)
回路部70は、操作部40に備えられた電源ボタン41がオフ操作(電源オンの状態で再度電源ボタン41が押圧操作)されたか否かを判定する。回路部70は、オフ操作を検出した場合には、カメラ1に備えられた各電気要素に対する電力の供給を中止し、撮影フェーズにおける処理を終了する。
これに対し、回路部70は、電源ボタン41のオフ操作を検出しない場合には、ステップS14に進む。
【0030】
(ステップS14:レリーズボタンオン検出)
回路部70は、レリーズボタン42がオン操作されたことを検出すると、これに応じてステップS15に進んで撮影動作を開始する。これに対して、回路部70は、レリーズボタン42のオン操作を検出しない場合には、ステップS16に進む。
【0031】
(ステップS15:撮影処理)
回路部70は、撮像素子20から出力される電気信号に基づいて画像データを生成し、これを図示しない記憶媒体に記録してステップS16に進む。
【0032】
(ステップS16:強制回転フラグ判定)
回路部70は、撮影処理を行った(ステップS14=Yes)か否か(ステップS14=No)に関わらず、強制回転フラグの判定を行う。すなわち、回路部70は、撮影フェーズにおいて、強制回転フラグを常時監視していることになる。強制回転フラグが1になっている場合(図7(a)参照)には、ステップS13に戻り以降の処理を繰り返す。また、強制回転フラグが0の場合には、ステップS17に進む。
【0033】
ここで、撮影中に撮影者Pが強制回転ボタン44を使用する場合を説明する。
例えば、カメラ1の姿勢を変化させずに撮影者Pが首を傾けた場合には、補正レンズ81が回転しないので、ファインダ装置60は、撮影者Pの乱視を補正できない。このため、カメラ1は、撮影者Pが補正レンズ81を強制的に回転できるようになっている。
【0034】
以下、強制回転ボタン44が操作された際に回路部70が行う制御について説明する。
図7は、図1に示すカメラに備えられた回路部が、強制回転ボタンが操作された際に行う制御を示すフローチャートである。
この図7において、(a)は、強制回転ボタンがオン(押圧)操作された場合を、(b)は、強制回転ボタンがオフ(押圧解除)操作された場合をそれぞれ示している。
回路部70は、図7(a)に示すように、強制回転ボタン44のオン操作を検出すると、これに応じて電動モータ94を制御して補正レンズを90°回転させる(ステップS101)。また、強制回転ボタン44の押圧操作に応じて、強制回転フラグが1となる(ステップS102)。
【0035】
また、回路部70は、強制回転ボタン44のオフ操作を検出すると、図7(b)に示すように、これに応じて補正レンズ81を−90°回転させる(ステップS201)。強制回転フラグは、これに応じて1から0に変化する(ステップS202)。
【0036】
補正レンズ81は、撮影者Pが強制回転ボタン44をオン操作(押圧)し続けている間は、90°回転した状態が維持され、この間、前述の強制回転フラグは1である。また、撮影者が強制回転ボタン44のオン操作(押圧)を解除すると(オフ操作)、補正レンズ81は、例えば、−90°回転して自動的に初期位置に戻るようになっている。また、これに併せて強制回転フラグが0に戻る。
【0037】
強制回転ボタン44が図6に示す撮影フェーズでオン操作、オフ操作された場合、回路部70は、図7(a)、(b)に示す処理を、図6に示すフローに対して割り込ませる。
例えば、フレーミング中に強制回転ボタン44がオン操作させると、強制回転フラグが1となる。この状態で撮影者Pの乱視は、補正された状態となるので、回路部70は、補正レンズ81を制御する必要がない。このため、回路部70は、ステップS16からステップS13に戻る制御を行う。
これに対し、強制回転ボタン44がオン操作されていない状態で、カメラ1の姿勢が変化した場合には、回路部70は、ステップ17以降の処理(カメラ1の姿勢変化に追従して補正レンズ81を回転させる制御)を行う。
【0038】
(ステップS17:姿勢情報取得)
回路部70は、姿勢検出部50の出力に基づいてカメラ1の現在の姿勢情報(縦位置又は横位置)を取得し、これ姿勢情報を図示しないメモリに一時的に記録してステップS18に進む。
【0039】
(ステップS18:姿勢情報の比較)
回路部70は、ステップS12で読み出した姿勢情報(初期設定フェーズ(図5参照)で取得した初期設定時のカメラ1の姿勢)、又は、後述するステップS20で書き換えたカメラ1の姿勢情報(2ループ目以降)と、ステップS17で取得した姿勢情報(現在の姿勢)とを比較する。
この結果、カメラ1の姿勢が変化していた場合には、ステップS19に進み、カメラ1の姿勢に変化がない場合には、ステップS13に戻って以下の処理を繰り返す。
【0040】
(ステップS19:補正レンズ回転)
回路部70は、乱視補正ユニット80に備えられた電動モータ94を制御して補正レンズ81を光軸B周りに、例えば、90°回転させ、ステップS20に進む。
(ステップS20:姿勢情報の書き換え)
回路部70は、図5のステップS03においてメモリに記録した姿勢情報を破棄し、新たにステップS17で一時的に記録した現在の姿勢情報をメモリに記録する。
【0041】
この後、回路部70はステップS13に戻り、以降の処理を繰り返す。
このように、本実施形態のカメラ1に備えられた回路部70は、フレーミングと撮影とが繰り返される撮影フェーズにおいて、ステップS13からステップS20の処理を繰り返し行うようになっいる。したがって、回路部70は、フレーミング中にカメラ1の姿勢が変化すると(ステップS18でYes判定)、これに追従して補正レンズ81を、例えば、光軸B周りに90°回転させる処理を行う。
【0042】
なお、撮影者Pが撮影を開始する際(電源ボタン41のオン操作を行う際)、カメラ1の姿勢が初期設定の姿勢と異なる場合とが想定される。
電源オン時のカメラ1の姿勢が初期設定時と異なれば、撮影者Pの乱視は、補正されないので、撮影者Pは、フレーミング中に強制回転ボタン44をオン操作して補正レンズ81を強制的に回転させる(強制回転フラグ=1)。これによって撮影者Pの乱視は、補正されるので、回路部70は、ステップS16からステップS13に戻り、以降の処理を繰り返す。
この後、撮影者Pがカメラ1を構え直した場合(初期設定時の姿勢に戻した場合)には、撮影者P自身が乱視が補正されないことに気が付くので、撮影者Pは、強制回転ボタン44のオン操作を解除(強制回転フラグ=0)する。補正レンズ81は、これに併せて回転する(図7(b)のステップS201参照)が、カメラ1の姿勢は、初期設定時と同じなので、回路部70は、ステップS19の処理(補正レンズ81の追従回転)を行わない。ただし、この後、さらにカメラ1の姿勢が変化した場合には、回路部70は、ステップS16からステップS17に進み(2ループ目)、補正レンズ81の追従制御を行う。
【0043】
以上説明した本実施形態のカメラ1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)カメラ1に備えられたファインダ装置60は、円柱レンズである補正レンズ81を表示部61に対して回転させることができるので、撮影者Pの乱視を補正することができる。しかも、カメラ1は、その姿勢が変化すると、これに追従して補正レンズ81が回転するので、撮影者Pは、カメラ1の姿勢に関わらず乱視が補正されたスルー画像(ファインダ像)を常時観察することができ、快適に撮影を行うことができる。
(2)EVF60の液晶パネル61aに乱視補正チャートCを表示できるので、撮影者Pは、初期設定において、容易かつ確実に乱視を補正できる補正レンズ81の位置を設定することができる。
(3)補正レンズ81を手動で回転させる手動操作環92を設けたので、補正レンズ81の回転角度を容易に微調整ができる。例えば、カメラの姿勢が横位置から、例えば、30°程度回転させた場合であっても、補正レンズ81の回転角度を微調整できるので、撮影者Pは、乱視の補正されたファインダ像を観察することができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明を適用したファインダ装置及びこのファインダ装置を備えたカメラの第2実施形態について説明する。この第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に統一した符号を付して、重複する説明や図面を適宜省略する。
【0045】
第1実施形態のカメラ1が表示部61にスルー画像を表示するEVF60(電子ファインダ装置)を備えていたのに対し、第2実施形態のカメラ101は、光学式のファインダ装置160を備える点が異なっている。以下、第2実施形態のカメラ101に備えられたファインダ装置160について説明する。
図8は、第2実施形態のカメラの概略構成を示す図である。
【0046】
この第2実施形態のファインダ装置160は、カメラ101に対して着脱可能となっている。そこで、乱視でない撮影者Pがカメラ101を使用する場合は、乱視補正ユニット80を含まないファインダ装置を装着すればよい。
ファインダ装置160は、焦点板161、液晶表示装置162、ペンタプリズム163、乱視補正ユニット80を備えている。
カメラ101は、被写体光の光路上であって、撮像素子20の結像面の手前に被写体光をファインダ装置160に反射するミラーMを備えている。このミラーMは、撮影時におけるレリーズボタン42の全押し操作に応じて光路上から退避する、公知のクイックリターンミラーである。
【0047】
焦点板161は、ファインダスクリーン等とも称されるものであり、ミラーMによって反射された被写体像が結像する。
液晶表示装置162は、回路部70の制御に基づいて乱視補正チャートCを表示する表示装置であり、焦点板161に重ねて設けられている。液晶表示装置162は、乱視補正チャートCを表示させた状態と、光の透過が可能な略透明な状態とを切り変えることができる。液晶表示装置162には、例えば、PN(Polymer Network)液晶等を使用することができる。
液晶表示装置162に乱視補正チャートCを表示させた場合、撮影者Pは、焦点板161に結像される被写体像の観察が制限される。これに対し、撮影者Pは、液晶表示装置162が透明な状態のときは焦点板161に結像される被写体像の観察を行うことができる。
ペンタプリズム163は、焦点板161に結像された被写体像を正立像にして乱視補正ユニット80に導くものである。
乱視補正ユニット80は、第1実施形態のカメラ1に備えられていたものと同じものである。また、乱視補正ユニット80とペンタプリズム163との間には、被写体像を拡大させる主レンズ62が配置されている。
【0048】
この第2実施形態のカメラ101では、乱視補正チャートC(図5参照)が液晶表示装置162に表示される点を除き、第1実施形態のカメラ1と略同じ制御が行われる。したがって、この第2実施形態のカメラ101も、第1実施形態のカメラ1と同様の効果を得ることができる。
また、第2実施形態のファインダ装置160は、被写体光を銀塩フィルムに露光することによって撮影を行うフィルムカメラにも適用することができる。
【0049】
[変形形態]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態において、ファインダ装置に備えられた乱視補正用のレンズは、円柱レンズであったが、レンズの直交する2軸方向の曲率半径が異なれば、乱視補正効果を得ることができるので、乱視補正用のレンズは円柱レンズに限られない。
(2)実施形態のカメラは、縦位置か横位置かを判定し、これに応じて補正レンズを、例えば、90°回転させたが、これに限らず、例えば、カメラの光軸A周りの回転角度を詳細(例えば、30°、45°等)に検出し、この回転角度に対応する角度だけ、補正レンズを回転させるようにしてもよい。
(3)本実施形態のファインダ装置は、カメラに備えられたが、これに限らず、例えば、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡等のその他の光学装置に備えさせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態のカメラの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すカメラに備えられたファインダ装置の構成を示す図である。
【図3】図2に示すファインダ装置に備えられた乱視補正ユニットの構成を示す図である。
【図4】図1に示すカメラを用いて初期設定を行う際に回路部が行う制御を示すフローチャートである。
【図5】図2に示すファインダ装置に備えられた表示部に表示される乱視補正用のチャートを示す図である。
【図6】図1に示すカメラを用いて撮影を行う際に回路部が行う制御を示すフローチャートである。
【図7】図1に示すカメラに備えられた回路部が、強制回転ボタンが操作された際に行う制御を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のカメラの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 カメラ : 60 ファインダ装置 : 61 表示部 : 81 補正レンズ : 90 回転機構 : C 乱視補正チャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能に設けられた表示部と、
前記表示部に対して観察方向手前側に配置され、直交する2軸方向で曲率半径が異なるレンズと、
前記直交する2軸のそれぞれに直交して設けられた回転軸線周りに前記レンズを前記表示部に対して回転させる回転機構と
を備えるファインダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファインダ装置において、
前記表示部は、前記画像として乱視表を表示可能であること
を特徴とするファインダ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のファインダ装置と、
撮影光学系と、
前記撮影光学系を通過した被写体光を電気信号に変換して出力する撮像部と
を備え、
前記ファインダ装置は、前記表示部に前記撮像部の出力に基づいて形成される被写体像を表示可能であること
を特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のファインダ装置と、
撮影光学系と、
前記ファインダ装置における前記レンズよりも前記表示部側に設けられ、前記撮影光学系を通過した被写体像が結像されるファインダスクリーンと
を備え、
前記表示部は、前記画像を表示した表示状態と前記画像を非表示にして光を透過可能にする透過状態との切り替えが可能なこと
を特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のカメラにおいて、
前記回転機構は、前記レンズを前記回転軸線周りに回転させることが可能なアクチュエータを含み、
該カメラは、該カメラにおける前記回転軸線周りの姿勢の変化を検出可能に設けられた姿勢検出部と、前記姿勢検出部の出力に応じて前記アクチュエータを制御し、前記レンズを所定の角度回転させる制御部とを備えること
を特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項5に記載のカメラにおいて、
手動操作によって前記制御部に対して回転指示信号を発信可能な入力操作部を備え、
前記制御部は、前記回転指示信号に応じて前記アクチュエータを制御し、前記レンズを前記所定の角度回転させること
を特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記回転機構は、手動操作によって前記レンズを前記回転軸線周りに回転させることが可能な回転操作部を含むこと
を特徴とするカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−103811(P2009−103811A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273881(P2007−273881)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】