説明

フィッシャー・トロプシュ反応用触媒体

【課題】スラリー反応生成物から容易に(したがって、安価に)分離でき、なおスラリーによって支持可能であり、したがって、固定されることなく、反応容器内でなお移動可能な触媒体を提供すること。
【解決手段】フィッシャー・トロプシュ触媒と、寸法が1〜50mmの多孔質体とを含む、内部間隙率が50〜95%の触媒体;及び三相反応器中に合成ガスを導入する工程、及び合成ガスを高温で非定常触媒と接触、転化させて、通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を得る工程であって、該触媒は、寸法が1〜50mmの複数の多孔質体上に配置され、こうして触媒体が形成されると共に、該触媒体は、前記反応器中の現場で5〜60%の外部間隙率と、触媒体内に50〜95%の気孔率とを有する該工程を含む、合成ガスからの前記炭化水素の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー反応器に使用される触媒体に関する。特に本発明は、フィッシャー・トロプシュ反応に使用される触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ法は、炭化水素質供給原料の液体及び/又は固体炭化水素への転化に使用できる。供給原料(例えば天然ガス、随伴ガス、及び/又は石炭床メタン、石炭)は、最初の工程で水素と一酸化炭素との混合物(この混合物は合成ガスと言うことが多い)に転化される。次いで、合成ガスは1つ以上の工程において好適な触媒上で、高温高圧下に、メタンから炭素原子数が200まで、或いは特定の環境下では更にそれ以上の高分子量分子までの範囲に亘るパラフィン系化合物に転化される。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ反応を行なうため、各種の反応器システムが開発されている。フィッシャー・トロプシュ反応器システムとしては、例えば固定床反応器、特に多管状固定床反応器;連行流動床反応器及び固定流動床反応器のような流動床反応器;及び三相スラリーバブル塔及び沸騰床反応器のようなスラリー床反応器が挙げられる。
【0004】
フィッシャー・トロプシュ反応は非常に発熱性で、かつ温度感受性であり、その結果、最適操作条件及び所望の炭化水素生成物選択率を維持するには慎重な温度管理を必要とする。フィッシャー・トロプシュ反応の特徴である非常に高熱の反応を考慮すると、反応器の熱伝達特性及び冷却機構は非常に重要である。
【0005】
三相スラリーバブル塔反応器は、熱交換性能において固定床設計よりも潜在的に有利である。この種の反応器では、通常、液体連続毋材中に触媒小粒子を取込んでいる。合成ガスをバブリングして、触媒小粒子の浮遊を維持すると共に、反応体を供給する。多管状反応器の場合、取入れる管の数は、一般に機械的パラメーターにより制限される。連続液体毋材の動きは、熱伝達を促進して高い工業的生産性を達成させる。触媒粒子は、液体連続相内で移動し、触媒粒子により発生した熱の冷却表面への効率的な熱伝達が生じる。反応器中に多量に液体が残留(inventory)すると、高い熱慣性を与え、熱の暴走を起こす可能性がある急激な温度上昇の防止に役立つ。
【0006】
反応生成物の少なくとも一部は、反応条件下で液相なので、ミクロン寸法の触媒粒子は、反応生成物から除去しなければならない。粒子の寸法が小さいため、この分離は困難であり、通常、高価な内部又は外部濾過システムを用いて行なわれる。浮遊触媒粒子の使用に関連する他の問題は、反応器中で触媒の不均一な分布(冷却に対する反跳効果による)及び触媒の摩耗である。
【0007】
米国特許5262131B1は、反応器中に特定の間隙比で配置した“構造的”フィッシャー・トロプシュ触媒を開示している。この配置は、一般に平頭型又は断片型のランダムな充填配列である。しかし、この構造的触媒は、未だ定常(即ち、大規模な移動がない)充填床に使用されている。
【0008】
米国特許6211255B1は、一体層式触媒を開示している。この一体層は、溝を有するが、フィッシャー・トロプシュ反応器において、一般に望まれるランダムで乱れた流れをなお阻止して、反応体の良好な混合を確保できる。
【特許文献1】日本出願4−145123
【特許文献2】EP−A−555053
【特許文献3】PCT/EP01/03498
【特許文献4】米国特許5262131B1
【特許文献5】米国特許6211255B1
【特許文献6】US 4409131
【特許文献7】US 5783607
【特許文献8】US 5502019
【特許文献9】WO 0176734
【特許文献10】CA 1166655
【特許文献11】US 5863856
【特許文献12】US 5783604
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、既知の反応器設備に使用される触媒に関連して、前述の利点の幾つかに対応するフィッシャー・トロプシュスラリー用の触媒体を提供することである。
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、
(i)合成ガスを三相反応器に導入する工程、及び
(ii)合成ガスを、寸法が1〜50mmの複数の多孔質体上に配置された非定常触媒と接触させ、合成ガスを高温高圧下に接触転化して、通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を得る工程、
を含む、三相反応器中で合成ガスから通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
多孔質体は、その上に配置される触媒の支持体として作用する。その上に触媒又は触媒前駆体が存在する多孔質体は、“触媒体”と言う。
好ましい実施態様では多孔質体の寸法は1〜30mmである。
【0012】
本発明方法に使用するのに好適な触媒体を製造する際、多孔質体の好ましくは95%を超え、更に好ましくは99%を超え、最も好ましくは100%が1〜50mm、好ましくは1〜30mmの寸法を有する多孔質体が使用される。
多孔質体は、規則的又は不規則的な形状又はそれらの混合形状であってよい。このような形状としては、円筒形、立方形、球形、卵形等の他、造形多角形が挙げられる。一般に“寸法”は、内部の真直ぐな最長長さとみなし得る。
【0013】
好ましい実施態様では多孔質体は、ガーゼ、ハネカム、単一体、メッシュ、ウエッビング、スポンジ、フォイル構造物及び織マット形、又はこれらの組合わせよりなる群から選ばれた形態又は形状を有する。
多孔質体は、前述のような形態の組合わせであってよいことは明らかである。例えば多孔質体は、ハネカム形材料で構成され、かつ外側が円形であってよい。他の例は、織マット製の円筒である。
【0014】
多孔質体は、耐火性酸化物、例えばチタニア(TiO)、シリカ(SiO)、アルミナ;金属、例えばステンレス鋼、鉄又は銅;或いは反応器内の条件に耐えられる同様な不活性材料から作製できる。
触媒体、即ち、その上に触媒が塗布された多孔質体、の外部間隙率は、反応器中の現場で5〜60%、好ましくは40容量%未満、更に好ましくは約20容量%である。
【0015】
触媒体内の気孔率、即ち、触媒体の内部間隙率は、50〜95%の範囲内、好ましくは60%を超え、更に好ましくは70%を超え、なお更に好ましくは80%を超え、最も好ましくは90%を超える(触媒体の周囲容量に対し)。多孔質体上に触媒を塗布する前では、多孔質体内の気効率は、98%までであってよい。
【0016】
触媒体内の開放容積は、反応体の効率的なスルーフローを容易にするのに充分でなければならず、同時に各触媒体の表面積は、反応体の触媒材料への暴露を増大させるため、できるだけ大きくなければならない。本発明触媒体の開放性能は、従来のミクロン寸法の触媒粒子と同じか、又は同様な触媒装填(loading)を達成でき、こうして、大きな触媒体の使用により触媒活性やSTYの低下がない。
【0017】
その上に触媒が塗布できる好適な多孔質体は、組織内で製造でき、或いは市販品として得られる。好適な多孔質体製品のメーカーの一例は、ドイツ、ドレスデンのFraunhofer−Institute for Manufacturing and Advanced Materialsである。Fraunhofer−Instituteは、例えば溶融抽出した金属繊維、及び円筒形又は球形に造形できる高度多孔質繊維構造を宣伝、販売している。
【0018】
触媒は、一般に触媒前駆体材料から形成される。更に好ましくは、各多孔質触媒体は、フィッシャー・トロプシュ触媒材料を含有する。
合成ガスの転化による通常ガス状、通常液体及び通常固体の炭化水素は、それぞれ室温、約1気圧でガス状、液体及び固体である。
【0019】
本発明は、従来の通常のスラリー反応器中の寸法が5〜150μmの小さい触媒粒子(したがって、スラリーから分離するのは困難である)から、反応器に装填することが困難で、触媒の不均一な分散、したがって、不均一な活性及びホットスポットを招く恐れがある米国特許6262131B1に記載のような非常に大きな不動態化した触媒構造までの範囲に亘って使用するのに適している。最小寸法が1mmで最大寸法が50mmまでの多孔質体を有する触媒体を使用すると、有利な中間のバランスが得られ、これにより、本触媒体は、スラリー反応生成物から極めて容易に分離される(したがって、安価である)が、触媒体はなおスラリーによって支持可能であり、したがって、固定されることなく、最も円滑な接触伝達及び熱伝達を求めるように、反応容器内でなお移動可能である。
【0020】
特に本発明は、固定床多管状反応器方法の欠点(例えば触媒粒子中で物質(mass)輸送制限による触媒の利用制限、触媒床中の輸送による熱の除去制限、この種の反応器及び大きな圧力降下による経費)及び現在のスラリー反応器方法の欠点、例えば不均一な軸上の触媒の渋滞、蝋生成物から小さい触媒粒子を分離するため高価な濾過手段を必要とすること、及び触媒同伴を防止する。
【0021】
したがって、本発明はまた、触媒又は触媒前駆体、好ましくはフィッシャー・トロプシュ触媒又は触媒前駆体と、寸法が1〜50mm、好ましくは1〜30mmの多孔質体とを含む触媒体を提供する。この多孔質体は、炭化水素合成反応器に使用される触媒又は触媒前駆体を担持することができる。触媒体は反応器内で固定されない。
【0022】
本発明の触媒体は、使用中、動いているので、合成ガス成分の物質輸送制限は無視できる。
触媒又は触媒材料、或いはその前駆体は、多孔質体に、通常、約1〜約300μ、好ましくは約5〜約200μの厚さの層として塗布することが好ましい。
触媒体の触媒分率は、約1容量%以上、好ましくは約4容量%を超え(触媒体の容量に対し)、好ましくは最大25容量%であることが好ましい。
【0023】
触媒及び触媒材料を製造すると共に、触媒混合物の形成する一般的な方法は、当該技術分野で公知である。例えばUS 4409131、US 5783607、US 5502019、WO 0176734、CA 1166655、US 5863856及びUS 5783604参照。これらの文献は、共沈及び浸漬による製造法を含む。また、これらの方法は、凍結、急激な温度変化等を含む可能性がある。固体溶液中の成分比の制御は、滞留時間、温度制御、各成分の濃度等のパラメーターにより行なえる。
【0024】
一般に触媒活性成分をベースとする触媒材料は、促進剤として1種以上の金属又は金属酸化物、更に特に1種以上のd−金属又はd−金属酸化物と共存してよい。
好適な金属酸化物促進剤は、元素の周期表第2〜7族、又はアクチニド及びランタニドから選んでよい。特にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、ウラン、バナジウム、クロム及びマンガン、の酸化物は特に好適な促進剤である。
【0025】
好適な金属促進剤は、元素の周期表第7〜10族から選んでよい。マンガン、鉄、レニウム及び第8〜10族貴金属が特に好適で、白金及びパラジウムが特に好ましい。触媒中に存在する促進剤の量は、担体100pbw(重量部)当たり、好適には0.01〜100pbw、好ましくは0.1〜40pbw、更に好ましくは1〜20pbwである。
【0026】
ここで用いた“族”及び周期表は、Handbook of Chemistry and Physics(CRC Press)第87版に記載されるような元素の周期表の新しいIUPACバージョンに関する。
【0027】
触媒材料は、1種以上の助触媒と一緒に存在できる。好適な助触媒としては、周期表第8〜10族の鉄、ニッケルのような1種以上の金属、又は1種以上の貴金属が挙げられる。好ましい貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウムである。水素化分解用に最も好ましい助触媒は、白金を含むものである。このような助触媒は、通常、少量存在する。
【0028】
好適な触媒は、触媒活性金属としてコバルト、及び促進剤としてジルコニウムを含有する。他の好適な触媒は、触媒活性金属としてコバルト、及び促進剤としてマンガン及び/又はバナジウムを含有する。
【0029】
触媒材料は、好ましくは多孔質無機耐火性酸化物、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア又はそれらの混合物のような支持体又は担体も含有する。最も好ましくは、担体材料はチタニアである。担体は、例えば含浸により触媒活性金属を添加する前に、本発明の多孔質体上に添加できる。或いは触媒活性金属と担体材料とを添加混合し、次いで本発明の多孔質体に添加できる。例えば粉末状の触媒材料をスラリー状とし、次いで多孔質体上にスプレー塗布できる。
【0030】
いずれの促進剤も多孔質担体100重量部当たり、通常、0.1〜60重量部の量で存在する。しかし、促進剤の最適量は、促進剤として作用するそれぞれの元素について変化できることは理解されよう。触媒が、触媒活性金属としてコバルト、及び促進剤としてマンガン及び/又はバナジウムを含有する場合、コバルト:(マンガン+バナジウム)原子比は5:1〜30:1であると有利である。
【0031】
本発明の一実施態様では触媒は、第8〜10族金属中に1〜10原子%、好ましくは3〜7原子%、更に好ましくは4〜6原子%の範囲の濃度を有する促進剤及び/又は助触媒を含有する。
合成ガスは、スラリー反応器中に0.4〜2.5、好ましくは1.0〜2.5の範囲のモル比で導入された水素及び一酸化炭素である。
【0032】
本発明は更に、(iii)工程(ii)で製造された高沸点範囲のパラフィン系炭化水素を接触的に水素化分解する工程を含む方法の他、ここで説明した方法により得られた炭化水素を提供する。
【0033】
また本発明は、前記定義した触媒体を、
(i)合成ガスを供給する工程、及び
(ii)合成ガスを触媒材料と接触させ、工程(i)の合成ガスを高温高圧下に接触転化して、通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を得る工程、
を含む、合成ガスから通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を製造する方法に使用する方法も提供する。
【0034】
本発明の触媒体は、例えばフィッシャー・トロプシュ型反応のようなスラリー反応用に好適である。好適なスラリー液は当業者に公知である。通常、スラリー液の少なくとも一部は、発熱反応の反応生成物である。反応混合物は、通常、合成ガス及び炭化水素供給原料及び液体炭化水素生成物を含有する。
【0035】
触媒材料は、例えば当業者に公知の重質パラフィン合成触媒であってよい。幾つかの好適な触媒材料を以下に例示する。触媒材料は、多孔質体に薄い層として塗布される。触媒層は、触媒層内で合成ガス成分の拡散的物質輸送制限(CO及び/又は水素の部分圧低下及び/又は触媒層内での不利な水素/一酸化炭素比の変化)を回避するため、薄くなければならない。触媒層の厚さは、物質輸送制限の開始まで増大できる。触媒体上の触媒層の厚さには、流体力学的理由から物質輸送制限及び基体の間隙率以外に上限はない。これは、スラリー触媒粒子の寸法/密度が寸法に対し上限を課する場合(高すぎる沈降速度は、大きすぎる上、反応器の高さに沿って、不均一な触媒保持の原因となる粒度から生じる)、スラリー反応器に比べて更に自由を与える。
【0036】
触媒体の幾何学については、プロセス側から気体-液体バブル塔又は三相気体/液体/浮遊触媒システムの冷却表面まで、高い熱伝達係数が保持されるか、或いは少なくとも近づくように、気体/液体/流体力学を有することが望ましい。液体混合は、触媒体の構造によって増進できる。
【0037】
反応器内の液体の移動及び混合は、本発明の重要な局面である。液体生成物蝋は、合成ガス成分を触媒表面に大量輸送する。液体相は、触媒から冷却手段までに発生したプロセス熱の主な担体である。液体相の混合及び冷却エレメントの壁に沿った液体の移動は、触媒体構造中の液体充満間隙を上昇するガス(蒸気相中の軽質炭化水素生成物の他、合成ガス)によって少なくとも部分的に発生できる。
【0038】
触媒体の幾何学については、気相から液相までの合成ガス中の水素及び一酸化炭素の伝達に対する高い物質移動係数が達成されるように、気体/液体流体力学を有することも望ましい。本発明の触媒体を含有する反応塔は、操作中、気体から液体又は液体から気体への著しい物質輸送制限がないように構成できる。ガス分布、気体−液体界面、物質移動係数及び液体混合の組合わせは、触媒体内のいずれの所でも確実に大量の(bulk)液体を合成ガスでほぼ飽和させなければならない。ガスは、液体の対流及び混合に主駆動者として作用し、冷却手段による効率的な熱の輸送、したがって均一な温度勾配を確保する。液体の対流は、触媒体の多孔性能の寸法規模内でなお最適化できる。
【0039】
本発明方法は、固体触媒の存在下で行なう反応が好ましい。通常、発熱反応の反応体の少なくとも一部はガス状である。発熱反応の例としては、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、アルカノール合成、一酸化炭素を使用しない芳香族ウレタンの製造、ケルベル−エンゲルハルト(Kolbel−Engelhardt)合成、ポリオレフィン合成及びフィッシャー・トロプシュ合成が挙げられる。本発明の好ましい実施態様では、発熱反応はフィッシャー・トロプシュ合成反応である。
【0040】
三相反応器中で、合成ガスから通常ガス状、通常液体、及び任意に通常固体の炭化水素を製造する一方法は、フィッシャー・トロプシュ反応である。
フィッシャー・トロプシュ合成は当業者に周知で、水素と一酸化炭素とのガス状混合物を反応条件下、フィッシャー・トロプシュ触媒と接触させる炭化水素の合成を含む。好適なスラリー液は、当業者に公知である。通常、スラリー液の少なくとも一部は、発熱反応の反応生成物である。スラリー液は、ほぼ完全な反応生成物(又は生成物)であることが好ましい。
【0041】
フィッシャー・トロプシュ合成生成物(低温Co基システムの場合)の例としては、メタンから重質炭化水素までの範囲であってよい。Co基触媒の場合、好ましくはメタンの製造は最小であり、製造された炭化水素のかなりの部分は、炭素原子数5以上の炭素鎖を有する。C+炭化水素の量は、生成した炭化水素質生成物の合計重量に対し、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、なお更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは85重量%以上である。
【0042】
フィッシャー・トロプシュ触媒は当該技術分野で公知で、通常、第8〜10族金属成分、好ましくはコバルト、鉄及び/又はルテニウム、更に好ましくはコバルトを含有する。多孔質触媒体は、通常、多孔質無機耐火性酸化物、好ましくはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア又はそれらの混合物のような担体材料を含有する。
【0043】
最も好適な触媒材料は、促進剤としてコバルト及びジルコニウムを含有する。他の最も好適な触媒は、促進剤としてコバルト及びマンガン及び/又はバナジウムを含有する。
フィッシャー・トロプシュ合成は、好ましくは125〜350℃、更に好ましくは175〜275℃、最も好ましくは180〜260℃の範囲の温度で行なわれる。圧力は、好ましくは5〜150バール絶対圧、更に好ましくは5〜80バール絶対圧の範囲である。
【0044】
ガスの時間当たり空間速度は広範囲に変化でき、通常、500〜20,000NI/l/h、好ましくは700〜10,000NI/l/h(多孔質触媒エレメント及びエレメント間の空隙に対して)の範囲である。
当業者ならば、特定の反応器の配置構成及び反応計画に対し最も適した条件を選択できることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ触媒又は触媒前駆体と、寸法が1〜50mm、好ましくは1〜30mmの多孔質体とを含む、内部間隙率が50〜95%の触媒体。
【請求項2】
多孔質体が、ガーゼ、ハネカム、単一体、メッシュ、ウエッビング、スポンジ、フォイル構造物、又は織マットの形態を有する請求項1に記載の触媒体。
【請求項3】
多孔質体が、耐火性酸化物、金属又はそれらの混合物よりなる群から選ばれた材料から形成される請求項1又は2に記載の触媒体。
【請求項4】
多孔質体が、チタニア、シリカ、ジルコニア、アルミナ及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた耐火性酸化物材料から形成される請求項3に記載の触媒体。
【請求項5】
多孔質体が、ステンレス鋼から形成される請求項3に記載の触媒体。
【請求項6】
触媒体内の開放容積が、60%を超え、好ましくは70%を超え、更に好ましくは80%を超える請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒体。
【請求項7】
触媒又は触媒前駆体が、多孔質体上に、平均厚さが約1〜300μ、好ましくは約5〜約200μの層として配置される請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒体。
【請求項8】
触媒体の触媒分率が、触媒体の容量に対し約1容量%以上、好ましくは約4容量%以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒体。
【請求項9】
(i)三相反応器中に合成ガスを導入する工程、及び
(ii)合成ガスを非定常触媒と接触させて、該合成ガスを高温で接触転化させ、これにより通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を得る工程であって、該触媒は、寸法が1〜50mm、好ましくは1〜30mmの複数の多孔質体上に配置され、こうして触媒体が形成されると共に、該触媒体は、前記反応器中の現場で5〜60%の外部間隙率と、触媒体内に50〜95%の気孔率とを有する該工程、
を含む、三相反応器中で合成ガスから通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を製造する方法。
【請求項10】
触媒体が、請求項1〜8のいずれか1項以上に記載の触媒体である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の触媒が、多孔質体上の層として複数の多孔質体上に配置される請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
多孔質体上の触媒層の平均厚さが、約1〜300μ、好ましくは約5〜約200μである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
触媒の活性成分が、コバルト、鉄、ルテニウム及びそれらの混合物よりなる群、好ましくはコバルト、から選ばれる請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)で更に促進剤が使用される請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
促進剤が、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、レニウム、白金及びパラジウム及びそれらの混合物、好ましくはマンガン、バナジウム及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
更に水素化分解及び/又は水素化処理工程を含む請求項9〜15のいずれか1項に記載の炭化水素の合成方法。
【請求項17】
請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法で製造された炭化水素。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に定義した触媒体を、
(i)合成ガスを供給する工程、及び
(ii)合成ガスを触媒材料と接触させ、工程(i)の合成ガスを高温高圧下に接触転化して、通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を得る工程、
を含む、合成ガスから通常ガス状、通常液体及び任意に通常固体の炭化水素を製造する方法に使用する方法。

【公表番号】特表2009−519124(P2009−519124A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545002(P2008−545002)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069695
【国際公開番号】WO2007/068732
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】