説明

フィッシュアイの判定方法、判定装置及び熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【課題】
熱可塑性樹脂フィルム製造中に発生するフィッシュアイ欠点を検出し、異物起因、原料カス、ゲル起因を確実に判別し、種類ごとに個数管理を行うフィッシュアイ検出判定方法を提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂フィルムに見られるフィシュアイの判定方法であって、入射光として光ファイバをライン状に配列したファイバ照明を用い、該ファイバ照明を熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側から照射し、その反対面側にカメラを配置して、入射光をカメラ方向に対して20°から40°の範囲で傾け、カメラ視野をファイバ照明端部にして、熱可塑性樹脂フィルムを透過した透過光によって撮像し、撮像画像を画像処理して、フィッシュアイ部分の明と暗の位置と面積を分析することによって、異物起因、原料カス、ゲル起因を確実に判別し、種類ごとに個数管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム(磁気記録媒体、感熱転写材、電気絶縁材料、離型材、包装材料等の用途に用いられるポリエステルフィルムを含む、以下記載の熱可塑性樹脂フィルムは同様とする)に見られるフィッシュアイの判定方法および判定装置に関し、さらに詳しくは熱可塑性樹脂フィルムの走行中、該熱可塑性樹脂フィルムに見られるフィッシュアイ欠陥の検出を行い、フィッシュアイの種類ごとに該フィッシュアイを分類することが可能な、熱可塑性樹脂フィルムにみられるフィッシュアイの判定方法、判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム中の異物、原料カス、ゲルのある箇所が、光学的歪みの原因となり、該フィルム製造におけるフィルム走行中に、前記箇所が魚の目のような形状を呈することがあり、従来、このような魚の目のような形状に見える異物、原料カス、ゲルのある箇所をフィッシュアイと呼んでいる。
【0003】
このフィシュアイの検査方法においては、高周波点灯蛍光灯、あるいは、光ファイバをライン状に配列した照明装置を使用し、検査対象とするフィルムの透過光をCCDラインセンサカメラで、検出し、得られた画像を画像処理装置で処理していた。
【0004】
しかしこれらの方法の場合、蛍光灯のような散乱光でフィッシュアイを照射すると、異物が核となったフィッシュアイは検出できるが、ゲルが核となったフィッシュアイは検出できなかった。つまり、フィッシュアイの種類によっては検出できないものがあった。
【0005】
また、光ファイバをライン状に配列したような平行光でフィッシュアイを照射すると、異物、ゲルが核となったフィッシュアイは、いずれも検出できるが、両者の判別は困難であった。
【0006】
このような中フィッシュアイの判別方法として、光軸をずらした透過光源を用いて撮像した画像を画像処理することにより、該フィッシュアイの形状を丸状または三日月状と判別することで、異物状フィッシュアイまたはゲル状フィッシュアイを区別する方法があるが、この場合、原料の溶けカス(以下、原料カス)による白色状フィッシュアイも異物フィッシュアイとなり区別することが出来ない(特許文献1、特許文献2)。
【0007】
また、拡散板を透過させて得た拡散光を照明光として撮像した画像データと拡散反射板を用いて反射した反射光を照明光として撮像された画像データの画像処理を行い、各画像データのレベル分けの組み合わせによって、欠陥種類を特定する方法があるが、該方法では撮像装置が2セット必要なため、設備費の増加に繋がる問題がある(特許文献3)。
【0008】
このように従来技術では、フィッシュアイの原因となる各種の核を区別することができず、重要な欠陥となってしまう問題があった。
【0009】
しかし核が原料カスの場合、小さなものであれば、いずれかの次工程において熱が加わる事で溶ける場合もあり、重要な欠陥にならないこともある。従って、問題となるフィッシュアイが、異物起因、原料カス起因、ゲル起因のいずれのフィッシュアイかを確実に区別し、個数管理することで、製膜設備の状況を正確に判断でき、除去することが好ましい重要なフィッシュアイを適宜処理することができる。
【特許文献1】特開平06−242022号公報
【特許文献2】特開平06−242023号公報
【特許文献3】特開2007−33339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来より、フィルムに見られるフィッシュアイの検出判定方法は種々あるが、異物起因、原料カス起因、ゲル起因のフィッシュアイを確実に区別判定し、個数管理をするフィッシュアイ検出判定方法が求められてきた。
【0011】
本発明は、これを成し遂げるもので、異物起因、原料カス起因、ゲル起因のフィッシュアイを確実に区別し、欠陥個数管理することができるフィッシュアイ検出方法とフィシュアイ検出判定装置を用いたフィルムの製造方法に関する物である。
【0012】
特に、異物およびゲルが核となった異物をいずれも検出でき、かつ両者の判定を行うフィシュアイの検出判定装置とフィッシュアイ検出判定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用するものである。すなわち本発明は、
(1)熱可塑性樹脂フィルムに見られるフィッシュアイの判定方法であって、入射光として光ファイバをライン状に配列したファイバ照明を用い、該ファイバ照明から光を熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側に照射し、熱可塑性樹脂フィルムの反対面側にカメラを配置して、入射光をカメラ方向に対して20°から40°の範囲で傾け、カメラ視野をファイバ照明端部にして、熱可塑性樹脂フィルムを透過した透過光によって撮像し、撮像画像を画像処理して、フィッシュアイ部分の明と暗の位置と面積を分析することを特徴とする、フィッシュアイの判定方法。
(2)ファイバ照明に用いる光源として、使用電力が300W/m以上700W/m以下のハロゲン電球を使用することを特徴とする、上記(1)に記載のフィッシュアイの判定方法。
(3)カメラの分解能を10μm以上50μm以下とすることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のフィッシュアイの判定方法。
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の方法を用いたことを特徴とする、フィッシュアイの判定装置。
(5)熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、該製造方法の工程中に、上記(1)から(3)のいずれかに記載の判定方法の工程を設けたことを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィッシュアイの判定方法又は判定装置によれば、例えば走行中の熱可塑性樹脂フィルムに見られるフィッシュアイについて、異物起因のフィッシュアイ、原料カス起因のフィッシュアイ、ゲル起因のフィッシュアイを精度良く区別判定し、さらに個数管理することが可能であり、そのため該判定方法若しくは該判定装置を熱可塑性樹脂フィルムの製膜工程中に導入することで、製膜中の各種フィッシュアイ発生状況を正確に判断でき、検出することで、重要なフィッシュアイを適宜処理した熱可塑性樹脂フィルムを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図を参照しながら説明する。図1に本発明の判定方法の実施形態の一例を模式図によって示す。
【0016】
図1は、熱可塑性樹脂フィルムの搬送工程中に、本発明の判定方法を設けた例であり、搬送ロール3にて、フィルム4を搬送する際に、フィルム4面を透過で撮像するように受光器1と投光器2を設置する。つまり、後述するファイバ照明を熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側に照射し、該熱可塑性樹脂フィルムの反対面側に後述するカメラを配置するため、受光器1と投光器2は、熱可塑性樹脂フィルムのフィルム面の異なる側に設置する。
【0017】
本発明に用いる受光器1としては、CCD素子で撮像するカメラを用いることが重要である。より好ましくは受光器1に用いるカメラとして、CCD素子が1列に並んだラインセンサカメラを用いる場合である。
【0018】
入射光の光源となる投光器2は、光の指向性が強い、光ファイバをライン状に配列したファイバ照明を設置することが重要である。
【0019】
そして入射光がカメラ方向に対して20°から40°の範囲で傾けるように、受光器1と投光器2を設置する。ここで、入射光をカメラ方向に対して20°から40°の範囲で傾けるとは、図1の角度θが20°≦θ≦40°、とすることを示す。つまりθは、受光器1の延長線方向と入射光のなす角である。
【0020】
θが20°未満の場合は光源からの光量が強くなり、フィッシュアイの分類判定が行いにくくなる。またθを40°よりも傾けると指向性のあるロッド照明では、拡散光が少なく光量不足でフィッシュアイの見逃しが起こることがある。
【0021】
さらに設置した受光器1の視野、つまりカメラ視野を、フィルム搬送工程の流れ方向においては、投光器2のフィルムから離れた端部、つまり一方のファイバ照明端部に合わせて、フィルム搬送工程の幅方向には投光器が幅方向に均一に照射する範囲である投光器の全長のセンタを基準として約80%の範囲に設置する。
【0022】
このようにθを設定し、カメラ視野とファイバ照明の一方の端部を合わせた理由について、入射光として用いた光ファイバ照明は指向性が強いため、欠点のないフィルム4に照射した場合では、カメラである受光器1において、少量の散乱光のみの受光となり一定の信号となる。それに対してフィルム4にフィシュアイ欠点がある場合、フィッシュアイ部分で光の屈折が起こるために、フィルムを透過した透過光の受光器1による受光量は、信号レベルが変化することになり、フィッシュアイ欠点の有無を判定する事ができる。
【0023】
つまり本発明では、熱可塑性樹脂フィルムを透過した透過光によって撮像し、撮像画像を画像処理して、フィッシュアイ部分の明と暗の位置と面積を分析することで、フィッシュアイの有無を判定することができ、さらに後述する理由でフィッシュアイの分類も可能となる。
【0024】
続いて、本発明の光学系で撮像されたフィシュアイについて、信号レベルの波形を図2に示す。
【0025】
異物起因のフィッシュアイの場合、フィッシュアイ内部に異物があり、その部分の光は遮光される。そのため、信号レベルの高い中に、正常状態よりも信号レベルの低い部分が存在する形状を撮像することになる。
【0026】
原料カス起因のフィシュアイの場合、フィッシュアイ内部に原料カスがあるもの、異物ほどの遮光はなく、原料カス部分は、正常状態の信号レベル程度しかない。そのため、信号レベルの高い中に、正常レベル程度の部分が存在する形状を撮像することになる。
【0027】
ゲル起因のフィッシュアイの場合、フィッシュアイ内部に残存物が見えずにフィルムが変形のみしているため、欠点範囲は信号レベルの違いはあるが、すべて高いレベルの信号になって形状を撮像することになる。
【0028】
ここで異物とは、原料の仕込み時やフィルム製造工程内で、混入したものがフィルム内に現れたものであり、透明フィルム内で黒く見える物である。原料カスとは上述したように原料の溶けカスであり、透明フィルム内では、薄白色に見えるものである。ゲルとは、フィルム製造工程内で架橋反応しやすくなりゲル状の欠陥(ゲル欠陥)になったものである。
【0029】
このような理由で、熱可塑性樹脂フィルムを透過した透過光によって撮像し、撮像画像を画像処理して、欠点部分の明と暗の位置と面積を分析することによって、異物起因、原料カス起因、ゲル起因の各フィッシュアイの種類を分類することができる。
【0030】
小さなフィッシュアイを検出するためには、分解能を小さくすることが求められるが、上記のようなフィッシュアイ種類の判定には、フィッシュアイの外部と内部の信号強度の違いを確認するために、フィッシュアイサイズの1/5の分解能を有することが重要である。
【0031】
しかし本発明では、ファイバ照明からの光を、直接はカメラ視野に入れないように設定配置しているため、光量が足りなくなるおそれがある。そのため、カメラの分解能は10μmを最小として検査を行うことが望ましい。その結果、本発明の方式で50μmの大きさまでのフィッシュアイならば高精度で分類できる。また、カメラ分解能を大きくしすぎると、微小フィッシュアイを見逃す可能性が高まるため、カメラの分解能は50μm以下にしておくことが望ましい。
【0032】
また、ファイバ照明を点灯させる光源として、ハロゲン、メタルハライド電源を使用することができるが、これらの光量としては、光ファイバ1mあたり、ハロゲンランプで300W以上700W以下あることが、フィルム面を照射後に、カメラで安定した光量を得ることができるので、好ましい。
【0033】
上述したように本発明の判定方法では、熱可塑性樹脂フィルムを透過した透過光によって撮像し、撮像画像を画像処理して、フィッシュアイ部分の明と暗の位置と面積を分析するが、撮像された画像を画像処理装置であるCPU5に入力し、CPU5内に記録されている上記記録の特徴を画像処理機構で強調処理された撮像画像と比較することで、フィッシュアイを異物起因、原料カス起因、ゲル起因に分類することができる。分類されたフィッシュアイの発生位置を記録しておき、分類されたフィッシュアイの種類ごとにマッピングすることにより、発生位置と発生起因が視覚的に確認でき、検査結果をより好ましい形で出力することができる。CPU5の画像処理機構は、信号をハード回路で処理しても、得られた信号を受けてソフトウェア処理をしてもよい。
【0034】
上述したフィッシュアイの判定装置の原理を取込んだフィッシュアイの判定装置は、例えば熱可塑性樹脂フィルムの製造工程や搬送工程に設けることで、好ましく用いられる。
【0035】
本発明において、熱可塑性樹脂とは、加熱すると塑性を示す樹脂であり、代表的な樹脂(ポリマー)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンα、β−ジカルボキシレート、モノマーにP−ヘキサヒドロ・キシリレンテレフタレートを使用して得られたポリマー、モノマーに1,4シクロヘキサンジメタノールを使用して得られたポリマー、ポリ−P−エチレンオキシベンゾエート、ポリアリレート、ポリカーボネートなど、及びそれらの共重合体で代表されるように、主鎖にエステル結合を有するポリエステル類、更にナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、などで代表されるように主鎖にアドミ結合を有するポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどで代表されるように主としてハイドロカーボンのみからなるポリオレフィン類、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリオキシメチレンなどで代表されるポリエーテル類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどで代表されるハロゲン化ポリマー類およびポリフェニレンスルフイド(PPS)、ポリスルフォンおよびそれらの共重合体や変性体などである。
【0036】
本発明の場合、熱可塑性樹脂としては、特に、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリエーテル類、ポリフェニレンスルフィドなどが好ましく、更にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類およびポリフェニレンスルフィドは特に本発明の効果が顕著であり、一層好ましい。もちろん上記した熱可塑性樹脂に、必要に応じて公知の添加剤、例えば安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等を添加してもよい。
【0037】
続いて、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について述べる。熱可塑性樹脂フィルムは通常、熱可塑性樹脂を溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸シートを得、それを一軸延伸し、必要ならば所望の塗液を塗布、乾燥し、その後一軸延伸方向と直行する方向に延伸配向し、そして熱固定することによって得られる。こうして得られた熱可塑性樹脂フィルムは巻き取り工程においてロール状に巻き取られる。
【0038】
溶融押出しは、単一種の熱可塑性樹脂を用いて行い単層のフィルムとしてもよく、異種の熱可塑性樹脂を用いて、矩形のフィードブロック等により共押出しをして、2層もしくは3層以上のフィルムとしてもよい。
【0039】
二軸延伸は、例えば逐次二軸延伸、同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸して機械的強度を高めた、いわゆる強力タイプとすることができる。
【0040】
また、上記熱可塑性樹脂フィルムの一方または両方の面に、塗液を塗布・乾燥し特定の表面形態を形成してもよい。これは、前述の通り一軸方向への延伸を終えた段階で所望の塗液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布する。塗布方法としては、ドクターブレード方式、グラビア方式、リバースロール方式、メタリングバー方式のいずれであってもよい。
【実施例】
【0041】
上記フィッシュアイの判定方法を用いて、熱可塑性樹脂フィルムを判定した結果を説明する。
(実施例)
平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子と平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を含有するエチレングリコールスラリーを調整し、このエチレングスラリーを190℃で1.5時間熱処理した後、テレフタル酸ジメチルとエステル交換反応後、重縮合し、架橋ポリエスチレン粒子を2重量%、炭酸カルシウム1重量%を含有するPETのチップを作った。常法により得られた実質的に粒子を含まない極限粘度0.65のチップ(ポリエステル原料)を製造し、フィルムの原料を得た。
【0042】
これを押出機でポリエステルを溶融し、290℃の温度で口金より、押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラム上に急冷固化せしめて、未延伸フィルムを作った。この時、口金幅は、最終のステンタでの幅方向延伸倍率が最終出口幅で4倍までとれる狭幅口金を使用した。また、押出機の吐出量を調節し、最終ポリエステルフィルムの厚みが38μmとなるように調整した。
【0043】
上記の未延伸フィルムは、112℃で3.5倍長手方向に延伸後、幅方向に110℃で3.8倍延伸した後、246℃で熱処理を施し、幅2.5mの熱可塑性樹脂フィルム(二軸延伸ポリエステルフィルム)を得て、巻取機で巻き取った。
【0044】
ここで、フィッシュアイ欠点が発生するように、製膜中に定期的に行う口金リップ掃除を行わず、かつフィルタを通さずに口金からポリマーの押し出しを行った。巻き取った後のフィルムを目視で確認し、フィッシュアイが確認された後のフィルムで判定試験を実施した。
【0045】
巻き取ったロールを巻き返し機にセットし、巻き返し機の搬送中に、投光器として、フィルム上部295mmの位置にニレコ製ラインセンサカメラ(8192bit、160MHz)を取り付け、図3に示すようにフィルム面から下部50mmの位置にカメラの視野である投光器端部を30℃傾けて設置した。投光器として、長さ500mmのファイバ照明150Wのハロゲンランプで点灯させた。その状態で、長さ方向に5m検査を実施した。
【0046】
検査した範囲のフィルム内のフィッシュアイを、本発明方式で分類し、そのフィシュアイを顕微鏡で確認して、分類結果が、顕微鏡での目視結果と合っているかを比較した。
【0047】
結果、5mの検査範囲内に5個のフィッシュアイを発見し、分類を行った。分類結果と顕微鏡での目視結果は、表1に示すように、すべてのフィッシュアイで分類が一致する結果となった。
(比較例1)
ロッド照明を傾けずにカメラに向かってまっすぐ設置(つまり、θ=0°)した以外は、実施例と同様の検査を同じフィルムで実施した。
【0048】
表1に示すように、フィッシュアイはすべて検出したものの、その分類分けは正しくない場合があった。
(比較例2)
ロッド照明を45°傾けて設置(つまり、θ=45°)した以外、実施例と同様の検査を同じフィルムで実施した。
【0049】
表1に示すように、いくつかのフィッシュアイを検出することができず、またフィッシュアイを検出した場合でも、その分類は正しくないことがあった。
【0050】
【表1】

【0051】
なお表1において、判定結果欄の○とはフィッシュアイ欠点の種類を正確に分類できた(フィッシュアイの種類が、顕微鏡による観察結果と同じだった)ことを示し、判定結果欄の×とはフィッシュアイ欠点の種類を分類できなかった(フィッシュアイの種類が顕微鏡による観察結果とは異なった、若しくはフィッシュアイ自体を検出できなかった)ことを示す。
【0052】
また欠点種類欄の「見逃し」とは、フィッシュアイ欠点自体を検出できず、実施例もしくは比較例の判定法が欠点を見逃したことを示し、欠点種類欄の例えば「異物」とは、フィッシュアイ欠点として「異物」と判定したことを示す。
【0053】
つまり、実施例1の欠点1欄の意味するところは、実施例1の検査方法は、欠点1を異物起因のフィッシュアイと判定し、この結果が顕微鏡による分類結果と一致したことを示す。
【0054】
比較例1の欠点3欄の意味するところは、比較例3の検査方法は、欠点3をゲル起因のフィッシュアイと判定し、この判定結果が顕微鏡による観察結果と一致しなかったことを示す。
【0055】
比較例2の欠点2欄の意味するところは、比較例2の検査方法は、欠点2を見逃したため、欠点2のフィッシュアイの種類を判定できなかったことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のフィッシュアイの検出判定方法の実施する際の装置概略図
【図2】本発明のフィッシュアイの検出判定方法の欠陥種類別の信号波形
【図3】実施例1の投受光器の位置図
【符号の説明】
【0057】
1.受光器
2.投光器
3.搬送ロール
4.フィルム
5.画像処理用CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムに見られるフィッシュアイの判定方法であって、入射光として光ファイバをライン状に配列したファイバ照明を用い、該ファイバ照明から光を熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側に照射し、該熱可塑性樹脂フィルムの反対面側にカメラを配置して、入射光をカメラ方向に対して20°から40°の範囲で傾け、カメラ視野をファイバ照明端部にして、熱可塑性樹脂フィルムを透過した透過光によって撮像し、撮像画像を画像処理して、フィッシュアイ部分の明と暗の位置と面積を分析することを特徴とする、フィッシュアイの判定方法。
【請求項2】
ファイバ照明に用いる光源として、使用電力が300W/m以上700W/m以下のハロゲン電球を使用することを特徴とする、請求項1に記載のフィッシュアイの判定方法。
【請求項3】
カメラの分解能を10μm以上50μm以下とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィッシュアイの判定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法を用いたことを特徴とする、フィッシュアイの判定装置。
【請求項5】
熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、該製造方法の工程中に、請求項1から3のいずれかに記載の判定方法の工程を設けたことを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−25270(P2009−25270A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191667(P2007−191667)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】