フィルタと、これを用いた導波管ジョイント、レーダー装置およびマグネトロン
【課題】スプリアス放射を除去するフィルタを備えたマグネトロン、レーダー装置を小型化する。
【解決手段】導電性を有する柱状の内導体1と、この全周を覆う導電性の外導体2を備え、内導体1は柱の中心軸に対して所定長に亘って略平行に形成された間隙部3を有している。間隙部3の長さは、通過帯域フィルタとして用いる場合は電波の主発振モードの周波数に対応する波長の略4分の1の長さ、スプリアス放射など不要成分を除去する場合は当該成分の周波数に対応する波長の略4分の1の長さを有している。中心軸にカソード、その周りの円周上にアノードベーンが配置されるアノードからなるマグネトロンの上記カソードの中心軸に合わせて上記フィルタが配置される。レーダー装置は、上記マグネトロンとアンテナの間で電波を導波する導波管の内部に上記フィルタが配置される構成を有する。
【解決手段】導電性を有する柱状の内導体1と、この全周を覆う導電性の外導体2を備え、内導体1は柱の中心軸に対して所定長に亘って略平行に形成された間隙部3を有している。間隙部3の長さは、通過帯域フィルタとして用いる場合は電波の主発振モードの周波数に対応する波長の略4分の1の長さ、スプリアス放射など不要成分を除去する場合は当該成分の周波数に対応する波長の略4分の1の長さを有している。中心軸にカソード、その周りの円周上にアノードベーンが配置されるアノードからなるマグネトロンの上記カソードの中心軸に合わせて上記フィルタが配置される。レーダー装置は、上記マグネトロンとアンテナの間で電波を導波する導波管の内部に上記フィルタが配置される構成を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタと、これを用いた導波管ジョイント、レーダー装置およびマグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を発振するマグネトロンは、船舶、航空機などに適用されるレーダー装置や電子レンジなどの家庭電化品など幅広く用いられている。近年、マイクロ波を放射する装置に対して、混信やノイズの発生防止等を目的として所定の中心周波数(波長)以外の周波数で放射されるスプリアス放射に対する規制が強化されている。
【0003】
マグネトロンは、通常?モードと呼ばれるモードを主発振モードとして発振させている。しかしながら、マグネトロンはこの?モード以外にもこれと異なる周波数で発振する共振モードを有している。
【0004】
例えば、ベーンストラップタイプのマグネトロンにおいては、マグネトロンが放射するスプリアス成分の中で最大のものは(?−1)モードと呼ばれる成分の不要輻射である。この(?−1)モードの不要輻射は、マグネトロンの共振回路に起因しており、?モードの発振周波数に対して1.1倍程度の周波数を有する。例えば?モードが9.4???帯で発振するベーンストラップタイプのマグネトロンでは、?−1モードが10.5???付近にあり、?モードよりも高い周波数帯となる。
【0005】
この(π−1)モードの不要輻射のπモードに対する電力レベルの比は、−30dBc〜−50dBc程度である。しかしながら、レーダー装置においてマイクロ波を放射した際に、上記のスプリアス成分は混信やノイズ源となるため、不要輻射を除去する必要がある。そこで、スプリアス放射は抑制するためには、πモードの周波数が通過帯域で、π−1モードの周波数が阻止帯域であるフィルタが用いられる。
【0006】
特許文献1開示のマグネトロンは、図29に示されるように、マグネトロンの主発振モード(πモード)を通過させ、π−1モードの周波数を阻止する周波数特性を有するフィルタを備えている。特に、特許文献1記載のマグネトロンは、マグネトロンと上記フィルタを伝送線路で直接結合させた構造で、マグネトロン、伝送線路、フィルタで構成される回路系の共振周波数が、π−1モードと略一致するように伝送線路の長さが設定される構成を備えている。また、伝送線路に共振周波数の調整機構が設置され、あるいはフィルタの負荷側の伝送線路に送信出力を調整する調整機構が設置された構造を備えている。
【0007】
マイクロ波のスプリアス成分を除去する小型のフィルタとしては、例えば、特許文献2に開示の構成が知られている。これは、図30に示されるような、所定の長さを有する太径部と細径部とを交互に組み合わせた中心導体部を有する同軸線路からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−331746
【特許文献2】特開平7−235803
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記に示した特許文献に開示のマグネトロンでは、スプリアス放射をある程度は除去できるものの、いずれもマグネトロンとは別にある程度大掛かりなフィルタを配置する必要がある。
【0010】
例えば、特許文献1では、図26に示されるようにマグネトロン1から発射された電波をいったん伝送線路となる導波管2に導波させ、伝送線路の途中に配置したスプリアス成分の周波数帯域を阻止するフィルタ3でスプリアス放射を除去する。従って、おのずとフィルタを含んだマグネトロン全体が大きくなってします。また、マグネトロンから発射された電波が長い距離を導波する分だけ電力レベルの低下も招いてしまう。
【0011】
特許文献2に開示される同軸型フィルタは、図29に示されるように、太径部、細径部の長さがともに電波の波長λ(ラムダ)の4分の1程度を必要として、これを直列に数段配置する必要があるため、小型化できないという問題がある。
【0012】
本発明は、特定の波長の電波を通過させ、または阻止するフィルタと、このフィルタを用いた導波管ジョイント、マグネトロンおよびレーダー装置に関する。特に、本発明は、マグネトロン等の装置の小型化を図ることができるフィルタ、および小型化と電波の電力レベルの低下を抑えることができる導波管ジョイント、マグネトロン、レーダー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフィルタは、導電性を有する柱状の内導体と、中空部を有しこの中空部に内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体と、内導体の一端から電波が入力される電波入力部とを備え、内導体は電波の進行方向に電波と電磁界結合を生じさせる電磁界結合部を備えている。
【0014】
電波は主発振モードを含み、電磁界結合部は、内導体の中心軸方向の長さが主発振モードの波長の略4分の1である。あるいは、電磁界結合部は、内導体の中心軸方向の長さが、主発振モードの波長以外の波長の略4分の1である。
【0015】
本発明のフィルタは、上記電界結合部として、内導体にその中心軸に対して略平行に間隙部を形成している。
【0016】
そして、電波が入力される電波入力部を備え、上記間隙部が内導体の中心軸方向に、電波の主発振モードの周波数に対応する波長の略4分の1の長さを有している。あるいは、間隙部を、中心軸方向に、主発振モードの周波数とは異なる周波数であって該主発振モードにおける電力レベルよりも小さく所定の値より大きい電力レベルを有する輻射電波の波長の略4分の1の長さとしている。
【0017】
内導体は柱状であっても中空部を有する中空体であってもよい。また、間隙部は、内導体に対して一の方向に切り込まれた第1の間隙と、中心軸に対して第1の間隙部とほぼ相対する位置にある第2の間隙とを含むように構成してもよい。
【0018】
さらに、上記フィルタは、中心軸に沿って直列に形成された複数の間隙部を含むように構成してもよい。また、間隙部は、略平行でなく、中心軸から外側に向けて傾斜するように形成されていてもよい。
【0019】
本発明のフィルタは、導電性を有する内導体と、この内導体の全周を覆う導電性の外導体とを備えており、内導体と外導体の間にあって内導体と電気的に接続され所定長に亘って内導体に対して略平行な平行部を有する共振部を備えている。この平行部は、内導体と電気的に接続される一端から先端に向かって内導体に垂直な方向の横幅が広がっている。
【0020】
本発明の導波管ジョイントは、導電性を有する柱状の内導体と、中空部を有しこの中空部に内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体とを有する同軸線路と、主発振モードを含む電波が入射される電波入射部と、電波を導波させる導波部とを有する導波管とを備えている。内導体は、その中心軸に対して所定長に亘って略平行に形成された間隙部を導波管の内部に有している。
【0021】
上記所定長は、主発振モードの周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さである。この輻射電波は主発振モードにおける電力レベルよりも小さく所定の値より大きい電力レベルを有する。導波管ジョイントは、レーダー装置において電波発生器で発生させた電波(マイクロ波)を導波管を介してアンテナに導波させる際にアンテナの回転に対応できるように、導波管に対して同軸線路を回転可動とする回転機構を備えるようにしてもよい。
【0022】
本発明のレーダー装置は、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、電波を発射させるアンテナと、上記導波管ジョイントを備えている。この導波管ジョイントは、電波発生器で発生した電波が電波入射部から入射され、電波を導波部と同軸線路を介してアンテナに導波する。
【0023】
また、本発明のレーダー装置は、主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、電波を発射させるアンテナと、電波によるエコー信号を受信する受信部と、上記ロータリジョイントと、電波発生器で発生した電波を電波入射部に導波するとともに、エコー信号を受信部に導波するサーキュレータとを備えている。この導波管ジョイントは、電波が電波入射部から入射され、電波を導波部と同軸線路を介してアンテナに導波する。
【0024】
本発明のマグネトロンは、内端部がそれぞれ円周上に配置された複数のアノードベーンを有するアノードと、円周の中心に中心軸が略一致する筒状のカソードとを有し、アノードとカソードの間に電波を発生させる電波発生部と、内導体中心軸が中心軸に一致するように配置されている。ここで、所定長は、主発振モードの周波数に対応する波長の略4分の1の長さである。
【0025】
本発明のレーダー装置は、この電波発生器と、電波発生器で発振した電波を発射するアンテナと、発射された電波によるエコー信号を受信する受信部とを備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフィルタの適用により、所定の周波数の電波を通過、または阻止する装置の小型化を図ることができる。また、本発明の電波発生器、レーダー装置によれば、スプリアス放射を低減させ、しかも電波発生器、レーダー装置の小型化を図ることができる。
【0027】
なお、電波発生器としては、代表的なものとしてマグネトロンがあげられるが、電波発生の原理には制約されず本発明のフィルタを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のフィルタ内部の基本構造(第1の実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図4】電磁界結合部の長さと通過損失との関係(通過/阻止周波数特性)を示す図である。
【図5】本発明のフィルタの第2の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図6】第2の実施の形態の縦断面図である。
【図7】第2の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図8】本発明のフィルタの第3の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図9】第3の実施の形態の縦断面図である。
【図10】第3の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図11】本発明のフィルタの第4の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図12】第4の実施の形態の縦断面図である。
【図13】第4の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図14】本発明のフィルタの第5の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図15】第5の実施の形態の縦断面図である。
【図16】本発明のフィルタの第6の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図17】第6の実施の形態の縦断面図である。
【図18】本発明のフィルタの第7の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図19】第7の実施の形態の縦断面図である。
【図20】本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第1の実施の形態の縦断面図である。
【図21】本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第2の実施の形態の縦断面図である。
【図22】本発明のレーダー装置の構成を示す図である。
【図23】本発明のマグネトロンの構造を示す縦断面図である。
【図24】第1の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図25】第3の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図26】第4の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図27】第7の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図28】本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の導波管に入力されるマイクロ波と同軸線路から出力されるマイクロ波の周波数特性をそれぞれ示す特性図である。
【図29】特許文献1に開示の従来のフィルタを示す図である。
【図30】特許文献2に開示の従来のフィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のフィルタを実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明のフィルタの第1の実施の形態の内部構造を示す図であり、図2はその縦断面図である。
【0031】
本発明のフィルタは、図1および図2に示されるように、柱状の内導体1とその外周を覆う外導体2によって構成されている。いずれも導電性の物質によって構成されている。内導体1と外導体2の間は完全に空洞であってもよいし、一部に何らかの絶縁物質を介在させ残部を空隙としてもよい。また、フィルタとなる間隙部近傍も含め全部に絶縁物質を介在させてもよい。
【0032】
ここで、内導体1は中実であって、中心軸に平行に、またはほぼ平行に形成された間隙部3を有している。この間隙部が形成されていることにより、内導体1には、内導体1の中心導体4と、内導体1の中心軸に平行な突起状導体部5が形成されることになる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態、および実施の形態では、電子レンジなどの家庭電化製品に使われるマグネトロンや、船舶その他のレーダー装置に用いられる電波発生器など広く用いられるマイクロ波を例に説明する。原理的には、電波の周波数によらずミリ波などにも適用可能である。また、以下の本発明の実施の形態における説明では、電波発生器として代表的なマグネトロンを例示して説明するが、他の原理によりマイクロ波等の電波を発生させるものでも本発明のフィルタは適用することができる。
【0034】
図1に示す上記構成のフィルタの一端からマイクロ波が入射されると、マイクロ波は外導体2の内部を進行する。このとき、間隙部3では切込みにより中心導体4と突起状導体部5が進行方向に対してほぼ平行に配置されているため、特定の周波数のマイクロ波に対しては電磁界結合が生じるように作用する。そして、この結合が生じる周波数のマイクロ波に対してはその後の進行を阻止するように働く。この原理を利用することにより、特定の周波数のマイクロ波を選択的に阻止することができる。
【0035】
間隙部3によって形成される中心導体4と突起状導体部5のそれぞれの形状と関係を調整することで電磁界結合を制御し、上記周波数特性を所望に設定することが可能である。阻止帯域が特定の周波数を除いて広くなるように設定し、帯域通過フィルタとすることもできる。原理的には、電磁界結合する長さ、すなわち間隙部3の中心軸方向の長さが主発振モードの電波の波長のほぼ4分の1程度であれば、理想的には当該周波数のマイクロ波の進行を阻止することができる。
【0036】
図3は、図2に示した本発明の第1の実施の形態の形状の等価回路を表したものである。同図の先端開放並列線路は、突起状導体部5に相当する。図4は、互いに平行に配置された2枚の平板に形成された金属箔による電磁界結合の作用によるマイクロ波の周波数特性を示したものである。図4において、横軸に突起状導体5の中心導体の長さを電気長で表したもので、縦軸は反射係数を計算した結果を示している。図2における中心導体4と突起状導体部5によって構成される電磁界結合の様子を表している。
【0037】
図4からわかるように、電気長4分の1波長において反射係数が最大となる。従って、電磁界結合部の長さをマイクロ波の特定波長の4分の1とすることにより、当該波長、すなわちそれに相当する周波数のマイクロ波の通過を阻止することができる。例えば、マグネトロンで発生させるマイクロ波のうち、主発振モードの周波数は通過させ、不要輻射となるスプリアス成分は阻止する。そのためには、その周波数に相当する波長の4分の1の長さに電磁界結合部の長さを設定すればよい。図3に示す構成では、間隙部3によって構成される突起状導体部5の長さを電波の波長の4分の1の長さにすればよい。
【0038】
なお、間隙部3は、あらかじめ内導体1の側面の一部に凹部を設けておき、絶縁物を介して電磁界結合部となる部分をはめ込むようにしてもよいし(図示省略)、上記実施の形態で説明したような切込みにより形成してもよい。この切込みには微細加工技術を要するが、例えば、ワイヤカット放電加工などを用いることで間隙の間隔、位置等について精度よく形成することができる。
【0039】
以上、第1の実施の形態を例にとって説明した通り、本発明のフィルタは、導電性を有する柱状の内導体1と、中空であって内部に前記内導体1が配置される導電性の外導体2とを備え、内導体1に電波の進行方向に電波と電磁界結合を生じさせる電磁界結合部を設けたことに特徴を有している。外導体2の内部に電磁界結合部を配置したことで、従来に比べ大幅に小型化することができる。また、マグネトロンなどとの物理的な結合も容易に行うことができる。
【0040】
続いて、本発明のフィルタの他の変形例(第2〜第7の各実施の形態)について、図面を参照して説明する。
【0041】
まず本発明のフィルタの第2の実施の形態について説明する。図5は、本発明のフィルタの第2の実施の形態の内部構造を示す図であり、図6はその縦断面図である。
【0042】
第1の実施の形態のフィルタの内導体が内部に空間を有しない柱状であったのに対して、第2の実施の形態のフィルタは、内導体1は内部に中空部8を有する筒状(管状)のものである。内導体1が中空部8を有し、この内導体1の側面の両側に形成された間隙部3によって互いに向き合う2つの突起状導体5を形成し、両突起状導体5の間で電磁界的に結合をさせることで広帯域な周波数帯域特性を有するフィルタを実現している。
【0043】
第2の実施の形態では、例えば、内導体1の側面から切込みを入れて間隙を形成する場合には、切込みが内導体1の中空部8に掛かる程度に深くする方が好ましい。これは、切込みにより形成される突起状導体と、中空部8を挟んで管状の内導体1の反対側側面部との間で電磁界結合を生じさせるからである。
【0044】
なお、内導体1は図5、図6に示すように、端面まで中空部を有する筒状であってもよいし、間隙部3が形成される領域とその近傍だけ中空部を有しその他の領域は柱状であってもよい。
【0045】
図7は、図5および図6に示した第2の実施の形態の等価回路を示している。図7は2つの突起状導体を並列接続したものの等価回路を表している。並列線路の間は電磁界結合されており、図6における突起状導体5と6の電磁界結合量に相当している。この場合、電磁界結合しない場合に比べてインピーダンスの変化を大きくすることができる。これにより、反射特性を広帯域化することができ、外乱による電磁界の乱れに対しても安定的な特性を得るようにすることができる。
【0046】
図8は、本発明のフィルタの第3の実施の形態の内部構造を示す図であり、図9はその縦断面図である。
【0047】
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、柱状の内導体1に側面からの切込みによって形成された間隙部3を備えている。本実施の形態では、この間隙部3(切込み)が相対する両側面にあり、中心軸に対して両側に突起状導体部5を備えている。また切込みの向きは互いに異なっている。
【0048】
図10は、第3の実施の形態の等価回路を示している。2つの先端開放並列線路は、軸方向において互いに異なる方向からの切込みによって形成された突起状導体5を表している。端子1,2間を直接接続する線路は、中心導体4の部分に相当する。図10の等価回路において、特に端子1、2間を結ぶ線路の長さを4分の1波長線路にすることで広帯域な周波数特性が実現でき、結果として安定した特性が得られるようになる。また、等価回路上では3つの4分の1波長線路が組み合わされた構成をしているが、突起状導体5を組み合わせることで全長が概ね4分の1波長で非常に小型な帯域阻止フィルタを実現することができる。
【0049】
図11は、本発明のフィルタの第4の実施の形態の内部構造を示す図であり、図12はその縦断面図である。第4の実施の形態も第3の実施の形態と同様に両側からの切込みによる間隙部3によって構成される二つの電磁界結合部を備えている。本実施の形態では内導体1が中空なので、第3の実施の形態と異なり、内導体1の中心導体4は側面部しかなく、電磁界結合は二つの突起状導体部5の間で生じる。二つの突起状導体部5は距離が離れており、また中心導体がない。
【0050】
図13は図10における2つの先端開放並列線路が電磁界結合した等価回路を表している。これにより、図3および図7に示した等価回路における関係と同様に、並列スタブのインピーダンスを低くすることができ、さらなる広帯域化、特性安定化が期待できる。
【0051】
図14は、本発明のフィルタの第5の実施の形態の内部構造を示す図であり、図15はその縦断面図である。第3の実施の形態のフィルタが中心軸に対して相対する二つの間隙部が中心軸方向に一段であるのに対して、第5の実施の形態は、これを二段備えている。従って、電磁界結合部を同じ構成とすることで、電磁界結合を重畳的に生じさせ特性を改善することができる。
【0052】
例えば、本発明のフィルタを阻止フィルタとして用いる場合には、所定の周波数における電力レベルをより低減させることで阻止特性を向上させることができる。なお、電磁界結合部を直列多段に配置する構成は、第5の実施の形態に示すような内導体1が稠密の構成に限らず、第2、第4や後述する第6のような内導体1が中空の構成にも適用できる。
【0053】
図16は、本発明のフィルタの第6の実施の形態の内部構造を示す図であり、図17はその縦断面図である。第6の実施の形態は、切込みが内導体1の中心軸に対して傾斜させている。図16に示される例では、間隙部3を形成する切込みは切込み口から先端に向かって内導体1の中心軸から離れるように形成されている。これにより、突起状導体部5の形状は根元から先端に向かって(切込みの先端とは逆の位置)広がるように形成されている。
【0054】
突起状導体部5の幅は、電気的にはインピーダンスと関係があって、線幅が広いほどインピーダンスが低く、線幅が狭いほどインピーダンスは高い。突起状導体が並列接続された構造においては、インピーダンスを低くすることで周波数帯域が広く、逆にインピーダンスを高くすることで帯域が狭くなる。
【0055】
このことから、突起状導体部5をこのような先端にいくに従って広げることにより突起状導体部5のインピーダンスが下がり、広帯域な特性が得られる。逆に、切込みを切込み口から先端に向かって中心軸に近づくようにすることで、突起状導体部5の形状は根元から先端に向かって狭くなるようにすることもできる。この場合には、特性は狭帯域になるものの、近傍周波数を通過させたい用途においては有効である。
【0056】
図18は、本発明のフィルタの第7の実施の形態の内部構造を示す図であり、図19はその縦断面図である。第1から第6までの本発明の実施の形態が内導体1に切込みを入れる等によりその内部に電磁界結合部が形成されているのに対して、第7の実施の形態では内導体1の側面の外部に電磁界結合部を形成している。具体的には、内導体1側面に突起部11を設け、この突起部11に内導体1と導通し、側面(あるいは中心軸)に平行な部分を有するように導電性の薄膜(例えば、金属箔)12を形成している。そして、この突起部11表面に形成された導電性薄膜12と内導体1の間で電磁界結合が生じるようにしている。このような構成でも同様の特性を得ることができる。
【0057】
以上説明したように、本発明のフィルタによれば、内導体そのものを加工することにより電磁界結合部を設け、通過するマイクロ波の通過/阻止帯域を設定することができる。これをフィルタとして用いることで小型のフィルタを実現することができる。このフィルタは、例えば、同軸型フィルタとしてマグネトロンやマイクロ波導波管などの装置に一体として組み込むことが容易になる。より具体的には、内導体に設けられる電磁界結合部(フィルタ機能を発揮する部分)を外導体2から延長し導波管そのものの内部に配置すればよい。あるいは、マグネトロンのカソードと物理的に一体化してもよい。
【0058】
次に、本発明のフィルタを導波管ジョイント、マグネトロン、レーダー装置にそれぞれ適用した構成について説明する。
【0059】
マグネトロンなどの電波発生装置や、電波をレーダーのアンテナなどに導波するために回転機構を備えたロータリジョイントに特定周波数の電波を選択的に通過させたり、阻止するためにフィルタを配置する場合がある。このような場合でも、本発明のフィルタは、導波管と同軸線路13の間を回転機構により回転可動とし、導波管の内部に内導体1の電磁界結合部が配置されるようにすることで全体を小型化することができる。
【0060】
図20は、本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第1の実施の形態の縦断面図である。ここに示す導波管ジョイントは、後述するように、例えばレーダー装置に用いることができる。レーダー装置では、電波発生器(マグネトロン:図示省略)で発生させた電波を導波管を介してアンテナ(図示省略)に導波させ、アンテナから所定の方向へ電波を発射させ、物標空のエコー信号をアンテナで受信して物標の距離や方位を検知する。
【0061】
図20において、マグネトロン(図示省略)で発生させた電波は、同図の左方の導波管の電波入力部(図示省略)から入射され、導波管を伝搬し同軸線路に導波される。電波はさらに同軸線路13を伝搬して導波管ジョイント(ロータリジョイント)27を経由してアンテナ28へと導波される。
【0062】
ここで、本発明の導波管ジョイント27では、同軸線路は、すでに説明した本発明のフィルタと同様、内導体とこれを覆う外導体を備えている。内導体14は、導波管16の側壁を越えて、内部にまで先端が延びている。そして、内導体14の導波管16内部にある先端部に、図1に示した本発明の第1の実施の形態のフィルタと同じ構成の帯域阻止フィルタ部18を備えている。
【0063】
帯域阻止フィルタ部18は、マグネトロンで発生した電波のうち不要輻射電波を除去するために、フィルタ部を構成する間隙部の中心軸方向の長さ(図における上下方向の長さ)は、発振周波数f0の2倍の周波数に相当する波長とほぼ同じ長さである。
【0064】
図21は、本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第2の実施の形態の縦断面図である。本実施の形態では、帯域阻止フィルタ部18として、間隙部が中心軸に沿って直列に二段配置されたフィルタが採用されている点で第1の実施の形態の構成と異なる。
【0065】
帯域阻止フィルタ部18の各間隙部の中心軸方向の長さは、第1の実施の形態と同様に、発振周波数f0の2倍の周波数に相当する波長とほぼ同じ長さである。本実施の形態では、フィルタが直列に多段配置されている分、反射特性が向上させることができる。
【0066】
なお、図20、図21両図で示した本発明の導波管ジョイントの実施の形態はいずれも電磁界結合部は、中空部を有しない稠密の内導体に形成された間隙部によるものであるが、本発明のフィルタの第2の実施の形態等中空の内導体からなるフィルタであってもよいし、内導体の側面に設けた突起状導体によっても構成することができる。また、上記フィルタ機能を有する内導体14は、同軸線路13の内導体14をそのまま延伸させてもよい。また、フィルタ部を別部品の構成とし導通接続してもよい。
【0067】
本発明の導波管ジョイントによれば、導波管を伝搬した電波を同軸線路13に伝搬する際に、内導体14のフィルタ部18で所定の周波数の電波を選択的に通過/阻止させることができる。レーダー装置などに適用する場合には、主発振モードの周波数以外の周波数の不要輻射電波(スプリアス成分)を極力除去しておくことが求められる。従って、フィルタ部がスプリアス成分の周波数帯域を阻止するフィルタとして機能するように、スプリアス成分を構成する電波の波長のおおむね4分の1の長さに上記間隙部あるいは平行部の長さを設定すればよい。
【0068】
ところで、船舶用などに適用されるレーダー装置では、360度全方位に対して物標検知を行う。これに対応するために、導波管14と同軸線路13の接合部に回転機構19を設け、回転できるようにすることも可能である。この場合でも、内導体14のフィルタ部18は導波管16内部で回転することができ、小型化への支障も生じない。
【0069】
図22は、本発明のレーダー装置の構成を示す図である。電波発生器20、サーキュレータ21、ロータリージョイント22、アンテナ23、および受信回路24を備えている。電波発生器20としては、典型的にはマグネトロンがあげられるが、これに限られない。
【0070】
マグネトロン20は、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる。マグネトロン20で発生させた電波は、同図の左方の導波管の電波入力部(図示省略)から入射されサーキュレータ21を経て導波管を伝搬し、同軸線路に導波される。電波はさらに同軸線路を伝搬して導波管ジョイント(ロータリジョイント)22を経由してアンテナ23へと導波される。アンテナ23から出射され、物標で反射した電波はアンテナ23で受信され、再びサーキュレータ21を経て受信回路24で信号処理される。
【0071】
ここで、導波管ジョイント22は、マグネトロン20で発生した電波が電波入射部から入射され導波管と同軸線路を介してアンテナ23に導波させる役割を果たす。このとき、本発明のレーダー装置では、マグネトロン20で発生させた電波を導波管で伝搬させ、同軸線路を介してアンテナ23に導波する際に導波管内部に配置されたフィルタで不要輻射電波を阻止する。この原理はすでに本発明の導波管ジョイントで説明した通りである。
【0072】
次に、本発明のマグネトロンについて説明する。
【0073】
本発明のマグネトロンは、マグネトロン自身から外部に漏れる電波を低減させる目的とマグネトロンで発生させた電波のうち、すでに説明したように、レーダー装置等に適用する場合に不要輻射電波となるスプリアス成分のみを選択的に除去する目的との双方に適用することができる。前者の目的の場合には、マグネトロンで発生させる電波の主発振モードの電波を阻止するフィルタを適用すればよい。後者の場合には、不要輻射電波を阻止するフィルタを適用すればよい。
【0074】
図23は、本発明のマグネトロンの構造を示す縦断面図である。図に示されるように、本発明のマグネトロンは、内端部がそれぞれ円周上に配置された複数のアノードベーン26を有するアノード25と、円周の中心に中心軸が略一致する筒状のカソード27とを備えている。このアノード25とカソード27の間に電圧を印加することで、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させている。
【0075】
本発明のマグネトロンでは、内導体中心軸がカソード27の中心軸に一致するように配置されたフィルタを備えている。マグネトロンで発生させた電波のうち主発信周波数の電波を通過させ不要輻射を除去する目的でフィルタを配置してもよい。また、本発明のマグネトロンにおいて、主発振周波数における電波そのものの外部への漏れを防止する目的で用いることもできる。前者は、すでに説明したように、不要輻射の除去が必要なレーダー装置に有用である。他方、後者は、電子レンジなどで有用である。
【0076】
なお、上記前者の目的を達成するのであれば、間隙部または平行部によって形成される電磁界結合部の長さを主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さとすればよい。これに対して、後者の目的を達成するのであれば、電磁界結合部の長さを不要輻射電波の波長の略4分の1の長さとすればよい。
【実施例1】
【0077】
次に、本発明のフィルタの実施例について説明する。
【0078】
最初に、本発明の第1の実施の形態のフィルタの実施例について説明する。なお、構造は実施の形態の説明において参照した図面と同様であるので図示は省略する。フィルタは、内導体の径がφ(ファイ)2.75mmで、外導体の径がφ4mmである。この内導体の側面に長さ7.4mmに亘って中心軸に沿って切込みが形成されている。
【0079】
このフィルタの周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフを図24に示す。横軸は入力される電波の周波数を、縦軸は散乱パラメータの反射係数S11、通過(伝送)係数S21の絶対値をデシベル表示したもので、フィルタの反射特性(S11)、および通過特性(S21)をそれぞれ示している。図からわかるように、9.4GHz近傍において反射率が高く、通過損が小さいことから、帯域阻止フィルタとして機能している。
【0080】
なお、この切込みによって構成される突起上導体部と外導体の距離を変える、例えば、近接させることで阻止帯域を調整することもできる。すなわち、切込みによって形成される突起上導体部の位置を調節することで、フィルタの中心帯域を微調整することも可能である。
【0081】
次に、本発明の第3および第4の実施の形態のフィルタの実施例について説明する。
【0082】
両実施例では、内導体の径はφ(ファイ)2.75mmで、外導体の径はφ4mm、切込みの長さは第1の実施例と同様、7.4mmである。本実施例では、切込みはワイヤカット放電加工を用いたが、第4の実施の形態では内導体は管(パイプ)状であり肉厚が薄いので、エッチング加工も適用できる。
【0083】
図25および図26は、第3の実施の形態と第4の実施の形態それぞれのフィルタの周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。内導体が中空でなく稠密である第3の実施の形態においては、反射係数S11が10dBを満足する比帯域幅が約12%であるのに対して、内導体を筒状にした第4の実施の形態の場合には、それより広い約20%の帯域を有する周波数特性が得られることがわかる。言い換えると、内導体を内部に中空部を有しない金属棒のような稠密体とすると、周波数は低下しているが、その帯域幅は狭めシャープな阻止特性を得ることができる。
【0084】
さらに、本発明の第7の実施の形態のフィルタの実施例について説明する。本実施例では、内導体の径はφ(ファイ)1mmで、外導体の径はφ4mmである。内導体の外周にはテフロン製リングが取り付けられている。テフロンリングは外径φ2.6mmであって、内導体の外周を覆っている。4分の1波長の長さとなるように、中心軸方向に3.75mmに亘って金属箔が貼付されており、テフロン内側で内導体と接触している。
【0085】
このフィルタの周波数特性のシミュレーション結果を図27に示す。同図では、横軸の周波数範囲は2〜16GHz、縦軸はS11およびS21となっている。グラフから8.2GHz近傍で帯域阻止フィルタとして機能しているのがわかる。
【0086】
最後に、本発明の導波管ジョイントを用いた場合の電波の周波数特性について説明する。図28は本発明の導波管ジョイントの導波管に入射されるマイクロ波と同軸線路13から出力されるマイクロ波の周波数特性をそれぞれ示すグラフである。入射される電波は中心周波数9.4GHzとその2倍周波数の18.8GHzで大きな出力を有するが、本発明のフィルタを18.8GHzのみで機能するように設計することで、装置が大型化することなく2倍周波数の出力のみを大幅に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のフィルタは、マイクロ波などの電波を発振する装置、例えばレーダー装置や電子レンジなどの家庭電化品なども含め幅広く利用可能である。また、本発明のマグネトロンは、船舶、航空機などに適用されるレーダー装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1: 内導体
2: 外導体
3: 間隙部
4: 中心導体
5: 突起状導体部
6: 第1の切込みによる間隙
7: 第2の切込みによる間隙
8: 中空部
9: 第3の切込みによる間隙
10: 第4の切込みによる間隙
11: 突起部
12: 導電性薄膜
13: 同軸線路
14: 内導体
15: 外導体
16: 導波管
17: 電波入力部
18: 帯域阻止フィルタ部
19: 回転機構
20: 電波発生器(マグネトロン)
21: サーキュレータ
22: 導波管ジョイント(ロータリジョイント)
23: アンテナ
24: 受信回路
25: アノード
26: アノードベーン
27: カソード
28: 帯域阻止フィルタ
29: 帯域通過フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタと、これを用いた導波管ジョイント、レーダー装置およびマグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を発振するマグネトロンは、船舶、航空機などに適用されるレーダー装置や電子レンジなどの家庭電化品など幅広く用いられている。近年、マイクロ波を放射する装置に対して、混信やノイズの発生防止等を目的として所定の中心周波数(波長)以外の周波数で放射されるスプリアス放射に対する規制が強化されている。
【0003】
マグネトロンは、通常?モードと呼ばれるモードを主発振モードとして発振させている。しかしながら、マグネトロンはこの?モード以外にもこれと異なる周波数で発振する共振モードを有している。
【0004】
例えば、ベーンストラップタイプのマグネトロンにおいては、マグネトロンが放射するスプリアス成分の中で最大のものは(?−1)モードと呼ばれる成分の不要輻射である。この(?−1)モードの不要輻射は、マグネトロンの共振回路に起因しており、?モードの発振周波数に対して1.1倍程度の周波数を有する。例えば?モードが9.4???帯で発振するベーンストラップタイプのマグネトロンでは、?−1モードが10.5???付近にあり、?モードよりも高い周波数帯となる。
【0005】
この(π−1)モードの不要輻射のπモードに対する電力レベルの比は、−30dBc〜−50dBc程度である。しかしながら、レーダー装置においてマイクロ波を放射した際に、上記のスプリアス成分は混信やノイズ源となるため、不要輻射を除去する必要がある。そこで、スプリアス放射は抑制するためには、πモードの周波数が通過帯域で、π−1モードの周波数が阻止帯域であるフィルタが用いられる。
【0006】
特許文献1開示のマグネトロンは、図29に示されるように、マグネトロンの主発振モード(πモード)を通過させ、π−1モードの周波数を阻止する周波数特性を有するフィルタを備えている。特に、特許文献1記載のマグネトロンは、マグネトロンと上記フィルタを伝送線路で直接結合させた構造で、マグネトロン、伝送線路、フィルタで構成される回路系の共振周波数が、π−1モードと略一致するように伝送線路の長さが設定される構成を備えている。また、伝送線路に共振周波数の調整機構が設置され、あるいはフィルタの負荷側の伝送線路に送信出力を調整する調整機構が設置された構造を備えている。
【0007】
マイクロ波のスプリアス成分を除去する小型のフィルタとしては、例えば、特許文献2に開示の構成が知られている。これは、図30に示されるような、所定の長さを有する太径部と細径部とを交互に組み合わせた中心導体部を有する同軸線路からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−331746
【特許文献2】特開平7−235803
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記に示した特許文献に開示のマグネトロンでは、スプリアス放射をある程度は除去できるものの、いずれもマグネトロンとは別にある程度大掛かりなフィルタを配置する必要がある。
【0010】
例えば、特許文献1では、図26に示されるようにマグネトロン1から発射された電波をいったん伝送線路となる導波管2に導波させ、伝送線路の途中に配置したスプリアス成分の周波数帯域を阻止するフィルタ3でスプリアス放射を除去する。従って、おのずとフィルタを含んだマグネトロン全体が大きくなってします。また、マグネトロンから発射された電波が長い距離を導波する分だけ電力レベルの低下も招いてしまう。
【0011】
特許文献2に開示される同軸型フィルタは、図29に示されるように、太径部、細径部の長さがともに電波の波長λ(ラムダ)の4分の1程度を必要として、これを直列に数段配置する必要があるため、小型化できないという問題がある。
【0012】
本発明は、特定の波長の電波を通過させ、または阻止するフィルタと、このフィルタを用いた導波管ジョイント、マグネトロンおよびレーダー装置に関する。特に、本発明は、マグネトロン等の装置の小型化を図ることができるフィルタ、および小型化と電波の電力レベルの低下を抑えることができる導波管ジョイント、マグネトロン、レーダー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフィルタは、導電性を有する柱状の内導体と、中空部を有しこの中空部に内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体と、内導体の一端から電波が入力される電波入力部とを備え、内導体は電波の進行方向に電波と電磁界結合を生じさせる電磁界結合部を備えている。
【0014】
電波は主発振モードを含み、電磁界結合部は、内導体の中心軸方向の長さが主発振モードの波長の略4分の1である。あるいは、電磁界結合部は、内導体の中心軸方向の長さが、主発振モードの波長以外の波長の略4分の1である。
【0015】
本発明のフィルタは、上記電界結合部として、内導体にその中心軸に対して略平行に間隙部を形成している。
【0016】
そして、電波が入力される電波入力部を備え、上記間隙部が内導体の中心軸方向に、電波の主発振モードの周波数に対応する波長の略4分の1の長さを有している。あるいは、間隙部を、中心軸方向に、主発振モードの周波数とは異なる周波数であって該主発振モードにおける電力レベルよりも小さく所定の値より大きい電力レベルを有する輻射電波の波長の略4分の1の長さとしている。
【0017】
内導体は柱状であっても中空部を有する中空体であってもよい。また、間隙部は、内導体に対して一の方向に切り込まれた第1の間隙と、中心軸に対して第1の間隙部とほぼ相対する位置にある第2の間隙とを含むように構成してもよい。
【0018】
さらに、上記フィルタは、中心軸に沿って直列に形成された複数の間隙部を含むように構成してもよい。また、間隙部は、略平行でなく、中心軸から外側に向けて傾斜するように形成されていてもよい。
【0019】
本発明のフィルタは、導電性を有する内導体と、この内導体の全周を覆う導電性の外導体とを備えており、内導体と外導体の間にあって内導体と電気的に接続され所定長に亘って内導体に対して略平行な平行部を有する共振部を備えている。この平行部は、内導体と電気的に接続される一端から先端に向かって内導体に垂直な方向の横幅が広がっている。
【0020】
本発明の導波管ジョイントは、導電性を有する柱状の内導体と、中空部を有しこの中空部に内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体とを有する同軸線路と、主発振モードを含む電波が入射される電波入射部と、電波を導波させる導波部とを有する導波管とを備えている。内導体は、その中心軸に対して所定長に亘って略平行に形成された間隙部を導波管の内部に有している。
【0021】
上記所定長は、主発振モードの周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さである。この輻射電波は主発振モードにおける電力レベルよりも小さく所定の値より大きい電力レベルを有する。導波管ジョイントは、レーダー装置において電波発生器で発生させた電波(マイクロ波)を導波管を介してアンテナに導波させる際にアンテナの回転に対応できるように、導波管に対して同軸線路を回転可動とする回転機構を備えるようにしてもよい。
【0022】
本発明のレーダー装置は、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、電波を発射させるアンテナと、上記導波管ジョイントを備えている。この導波管ジョイントは、電波発生器で発生した電波が電波入射部から入射され、電波を導波部と同軸線路を介してアンテナに導波する。
【0023】
また、本発明のレーダー装置は、主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、電波を発射させるアンテナと、電波によるエコー信号を受信する受信部と、上記ロータリジョイントと、電波発生器で発生した電波を電波入射部に導波するとともに、エコー信号を受信部に導波するサーキュレータとを備えている。この導波管ジョイントは、電波が電波入射部から入射され、電波を導波部と同軸線路を介してアンテナに導波する。
【0024】
本発明のマグネトロンは、内端部がそれぞれ円周上に配置された複数のアノードベーンを有するアノードと、円周の中心に中心軸が略一致する筒状のカソードとを有し、アノードとカソードの間に電波を発生させる電波発生部と、内導体中心軸が中心軸に一致するように配置されている。ここで、所定長は、主発振モードの周波数に対応する波長の略4分の1の長さである。
【0025】
本発明のレーダー装置は、この電波発生器と、電波発生器で発振した電波を発射するアンテナと、発射された電波によるエコー信号を受信する受信部とを備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフィルタの適用により、所定の周波数の電波を通過、または阻止する装置の小型化を図ることができる。また、本発明の電波発生器、レーダー装置によれば、スプリアス放射を低減させ、しかも電波発生器、レーダー装置の小型化を図ることができる。
【0027】
なお、電波発生器としては、代表的なものとしてマグネトロンがあげられるが、電波発生の原理には制約されず本発明のフィルタを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のフィルタ内部の基本構造(第1の実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図4】電磁界結合部の長さと通過損失との関係(通過/阻止周波数特性)を示す図である。
【図5】本発明のフィルタの第2の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図6】第2の実施の形態の縦断面図である。
【図7】第2の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図8】本発明のフィルタの第3の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図9】第3の実施の形態の縦断面図である。
【図10】第3の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図11】本発明のフィルタの第4の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図12】第4の実施の形態の縦断面図である。
【図13】第4の実施の形態の等価回路を示す図である。
【図14】本発明のフィルタの第5の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図15】第5の実施の形態の縦断面図である。
【図16】本発明のフィルタの第6の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図17】第6の実施の形態の縦断面図である。
【図18】本発明のフィルタの第7の実施の形態の内部構造を示す斜視図である。
【図19】第7の実施の形態の縦断面図である。
【図20】本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第1の実施の形態の縦断面図である。
【図21】本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第2の実施の形態の縦断面図である。
【図22】本発明のレーダー装置の構成を示す図である。
【図23】本発明のマグネトロンの構造を示す縦断面図である。
【図24】第1の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図25】第3の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図26】第4の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図27】第7の実施の形態の周波数特性を示す図である。
【図28】本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の導波管に入力されるマイクロ波と同軸線路から出力されるマイクロ波の周波数特性をそれぞれ示す特性図である。
【図29】特許文献1に開示の従来のフィルタを示す図である。
【図30】特許文献2に開示の従来のフィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のフィルタを実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明のフィルタの第1の実施の形態の内部構造を示す図であり、図2はその縦断面図である。
【0031】
本発明のフィルタは、図1および図2に示されるように、柱状の内導体1とその外周を覆う外導体2によって構成されている。いずれも導電性の物質によって構成されている。内導体1と外導体2の間は完全に空洞であってもよいし、一部に何らかの絶縁物質を介在させ残部を空隙としてもよい。また、フィルタとなる間隙部近傍も含め全部に絶縁物質を介在させてもよい。
【0032】
ここで、内導体1は中実であって、中心軸に平行に、またはほぼ平行に形成された間隙部3を有している。この間隙部が形成されていることにより、内導体1には、内導体1の中心導体4と、内導体1の中心軸に平行な突起状導体部5が形成されることになる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態、および実施の形態では、電子レンジなどの家庭電化製品に使われるマグネトロンや、船舶その他のレーダー装置に用いられる電波発生器など広く用いられるマイクロ波を例に説明する。原理的には、電波の周波数によらずミリ波などにも適用可能である。また、以下の本発明の実施の形態における説明では、電波発生器として代表的なマグネトロンを例示して説明するが、他の原理によりマイクロ波等の電波を発生させるものでも本発明のフィルタは適用することができる。
【0034】
図1に示す上記構成のフィルタの一端からマイクロ波が入射されると、マイクロ波は外導体2の内部を進行する。このとき、間隙部3では切込みにより中心導体4と突起状導体部5が進行方向に対してほぼ平行に配置されているため、特定の周波数のマイクロ波に対しては電磁界結合が生じるように作用する。そして、この結合が生じる周波数のマイクロ波に対してはその後の進行を阻止するように働く。この原理を利用することにより、特定の周波数のマイクロ波を選択的に阻止することができる。
【0035】
間隙部3によって形成される中心導体4と突起状導体部5のそれぞれの形状と関係を調整することで電磁界結合を制御し、上記周波数特性を所望に設定することが可能である。阻止帯域が特定の周波数を除いて広くなるように設定し、帯域通過フィルタとすることもできる。原理的には、電磁界結合する長さ、すなわち間隙部3の中心軸方向の長さが主発振モードの電波の波長のほぼ4分の1程度であれば、理想的には当該周波数のマイクロ波の進行を阻止することができる。
【0036】
図3は、図2に示した本発明の第1の実施の形態の形状の等価回路を表したものである。同図の先端開放並列線路は、突起状導体部5に相当する。図4は、互いに平行に配置された2枚の平板に形成された金属箔による電磁界結合の作用によるマイクロ波の周波数特性を示したものである。図4において、横軸に突起状導体5の中心導体の長さを電気長で表したもので、縦軸は反射係数を計算した結果を示している。図2における中心導体4と突起状導体部5によって構成される電磁界結合の様子を表している。
【0037】
図4からわかるように、電気長4分の1波長において反射係数が最大となる。従って、電磁界結合部の長さをマイクロ波の特定波長の4分の1とすることにより、当該波長、すなわちそれに相当する周波数のマイクロ波の通過を阻止することができる。例えば、マグネトロンで発生させるマイクロ波のうち、主発振モードの周波数は通過させ、不要輻射となるスプリアス成分は阻止する。そのためには、その周波数に相当する波長の4分の1の長さに電磁界結合部の長さを設定すればよい。図3に示す構成では、間隙部3によって構成される突起状導体部5の長さを電波の波長の4分の1の長さにすればよい。
【0038】
なお、間隙部3は、あらかじめ内導体1の側面の一部に凹部を設けておき、絶縁物を介して電磁界結合部となる部分をはめ込むようにしてもよいし(図示省略)、上記実施の形態で説明したような切込みにより形成してもよい。この切込みには微細加工技術を要するが、例えば、ワイヤカット放電加工などを用いることで間隙の間隔、位置等について精度よく形成することができる。
【0039】
以上、第1の実施の形態を例にとって説明した通り、本発明のフィルタは、導電性を有する柱状の内導体1と、中空であって内部に前記内導体1が配置される導電性の外導体2とを備え、内導体1に電波の進行方向に電波と電磁界結合を生じさせる電磁界結合部を設けたことに特徴を有している。外導体2の内部に電磁界結合部を配置したことで、従来に比べ大幅に小型化することができる。また、マグネトロンなどとの物理的な結合も容易に行うことができる。
【0040】
続いて、本発明のフィルタの他の変形例(第2〜第7の各実施の形態)について、図面を参照して説明する。
【0041】
まず本発明のフィルタの第2の実施の形態について説明する。図5は、本発明のフィルタの第2の実施の形態の内部構造を示す図であり、図6はその縦断面図である。
【0042】
第1の実施の形態のフィルタの内導体が内部に空間を有しない柱状であったのに対して、第2の実施の形態のフィルタは、内導体1は内部に中空部8を有する筒状(管状)のものである。内導体1が中空部8を有し、この内導体1の側面の両側に形成された間隙部3によって互いに向き合う2つの突起状導体5を形成し、両突起状導体5の間で電磁界的に結合をさせることで広帯域な周波数帯域特性を有するフィルタを実現している。
【0043】
第2の実施の形態では、例えば、内導体1の側面から切込みを入れて間隙を形成する場合には、切込みが内導体1の中空部8に掛かる程度に深くする方が好ましい。これは、切込みにより形成される突起状導体と、中空部8を挟んで管状の内導体1の反対側側面部との間で電磁界結合を生じさせるからである。
【0044】
なお、内導体1は図5、図6に示すように、端面まで中空部を有する筒状であってもよいし、間隙部3が形成される領域とその近傍だけ中空部を有しその他の領域は柱状であってもよい。
【0045】
図7は、図5および図6に示した第2の実施の形態の等価回路を示している。図7は2つの突起状導体を並列接続したものの等価回路を表している。並列線路の間は電磁界結合されており、図6における突起状導体5と6の電磁界結合量に相当している。この場合、電磁界結合しない場合に比べてインピーダンスの変化を大きくすることができる。これにより、反射特性を広帯域化することができ、外乱による電磁界の乱れに対しても安定的な特性を得るようにすることができる。
【0046】
図8は、本発明のフィルタの第3の実施の形態の内部構造を示す図であり、図9はその縦断面図である。
【0047】
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、柱状の内導体1に側面からの切込みによって形成された間隙部3を備えている。本実施の形態では、この間隙部3(切込み)が相対する両側面にあり、中心軸に対して両側に突起状導体部5を備えている。また切込みの向きは互いに異なっている。
【0048】
図10は、第3の実施の形態の等価回路を示している。2つの先端開放並列線路は、軸方向において互いに異なる方向からの切込みによって形成された突起状導体5を表している。端子1,2間を直接接続する線路は、中心導体4の部分に相当する。図10の等価回路において、特に端子1、2間を結ぶ線路の長さを4分の1波長線路にすることで広帯域な周波数特性が実現でき、結果として安定した特性が得られるようになる。また、等価回路上では3つの4分の1波長線路が組み合わされた構成をしているが、突起状導体5を組み合わせることで全長が概ね4分の1波長で非常に小型な帯域阻止フィルタを実現することができる。
【0049】
図11は、本発明のフィルタの第4の実施の形態の内部構造を示す図であり、図12はその縦断面図である。第4の実施の形態も第3の実施の形態と同様に両側からの切込みによる間隙部3によって構成される二つの電磁界結合部を備えている。本実施の形態では内導体1が中空なので、第3の実施の形態と異なり、内導体1の中心導体4は側面部しかなく、電磁界結合は二つの突起状導体部5の間で生じる。二つの突起状導体部5は距離が離れており、また中心導体がない。
【0050】
図13は図10における2つの先端開放並列線路が電磁界結合した等価回路を表している。これにより、図3および図7に示した等価回路における関係と同様に、並列スタブのインピーダンスを低くすることができ、さらなる広帯域化、特性安定化が期待できる。
【0051】
図14は、本発明のフィルタの第5の実施の形態の内部構造を示す図であり、図15はその縦断面図である。第3の実施の形態のフィルタが中心軸に対して相対する二つの間隙部が中心軸方向に一段であるのに対して、第5の実施の形態は、これを二段備えている。従って、電磁界結合部を同じ構成とすることで、電磁界結合を重畳的に生じさせ特性を改善することができる。
【0052】
例えば、本発明のフィルタを阻止フィルタとして用いる場合には、所定の周波数における電力レベルをより低減させることで阻止特性を向上させることができる。なお、電磁界結合部を直列多段に配置する構成は、第5の実施の形態に示すような内導体1が稠密の構成に限らず、第2、第4や後述する第6のような内導体1が中空の構成にも適用できる。
【0053】
図16は、本発明のフィルタの第6の実施の形態の内部構造を示す図であり、図17はその縦断面図である。第6の実施の形態は、切込みが内導体1の中心軸に対して傾斜させている。図16に示される例では、間隙部3を形成する切込みは切込み口から先端に向かって内導体1の中心軸から離れるように形成されている。これにより、突起状導体部5の形状は根元から先端に向かって(切込みの先端とは逆の位置)広がるように形成されている。
【0054】
突起状導体部5の幅は、電気的にはインピーダンスと関係があって、線幅が広いほどインピーダンスが低く、線幅が狭いほどインピーダンスは高い。突起状導体が並列接続された構造においては、インピーダンスを低くすることで周波数帯域が広く、逆にインピーダンスを高くすることで帯域が狭くなる。
【0055】
このことから、突起状導体部5をこのような先端にいくに従って広げることにより突起状導体部5のインピーダンスが下がり、広帯域な特性が得られる。逆に、切込みを切込み口から先端に向かって中心軸に近づくようにすることで、突起状導体部5の形状は根元から先端に向かって狭くなるようにすることもできる。この場合には、特性は狭帯域になるものの、近傍周波数を通過させたい用途においては有効である。
【0056】
図18は、本発明のフィルタの第7の実施の形態の内部構造を示す図であり、図19はその縦断面図である。第1から第6までの本発明の実施の形態が内導体1に切込みを入れる等によりその内部に電磁界結合部が形成されているのに対して、第7の実施の形態では内導体1の側面の外部に電磁界結合部を形成している。具体的には、内導体1側面に突起部11を設け、この突起部11に内導体1と導通し、側面(あるいは中心軸)に平行な部分を有するように導電性の薄膜(例えば、金属箔)12を形成している。そして、この突起部11表面に形成された導電性薄膜12と内導体1の間で電磁界結合が生じるようにしている。このような構成でも同様の特性を得ることができる。
【0057】
以上説明したように、本発明のフィルタによれば、内導体そのものを加工することにより電磁界結合部を設け、通過するマイクロ波の通過/阻止帯域を設定することができる。これをフィルタとして用いることで小型のフィルタを実現することができる。このフィルタは、例えば、同軸型フィルタとしてマグネトロンやマイクロ波導波管などの装置に一体として組み込むことが容易になる。より具体的には、内導体に設けられる電磁界結合部(フィルタ機能を発揮する部分)を外導体2から延長し導波管そのものの内部に配置すればよい。あるいは、マグネトロンのカソードと物理的に一体化してもよい。
【0058】
次に、本発明のフィルタを導波管ジョイント、マグネトロン、レーダー装置にそれぞれ適用した構成について説明する。
【0059】
マグネトロンなどの電波発生装置や、電波をレーダーのアンテナなどに導波するために回転機構を備えたロータリジョイントに特定周波数の電波を選択的に通過させたり、阻止するためにフィルタを配置する場合がある。このような場合でも、本発明のフィルタは、導波管と同軸線路13の間を回転機構により回転可動とし、導波管の内部に内導体1の電磁界結合部が配置されるようにすることで全体を小型化することができる。
【0060】
図20は、本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第1の実施の形態の縦断面図である。ここに示す導波管ジョイントは、後述するように、例えばレーダー装置に用いることができる。レーダー装置では、電波発生器(マグネトロン:図示省略)で発生させた電波を導波管を介してアンテナ(図示省略)に導波させ、アンテナから所定の方向へ電波を発射させ、物標空のエコー信号をアンテナで受信して物標の距離や方位を検知する。
【0061】
図20において、マグネトロン(図示省略)で発生させた電波は、同図の左方の導波管の電波入力部(図示省略)から入射され、導波管を伝搬し同軸線路に導波される。電波はさらに同軸線路13を伝搬して導波管ジョイント(ロータリジョイント)27を経由してアンテナ28へと導波される。
【0062】
ここで、本発明の導波管ジョイント27では、同軸線路は、すでに説明した本発明のフィルタと同様、内導体とこれを覆う外導体を備えている。内導体14は、導波管16の側壁を越えて、内部にまで先端が延びている。そして、内導体14の導波管16内部にある先端部に、図1に示した本発明の第1の実施の形態のフィルタと同じ構成の帯域阻止フィルタ部18を備えている。
【0063】
帯域阻止フィルタ部18は、マグネトロンで発生した電波のうち不要輻射電波を除去するために、フィルタ部を構成する間隙部の中心軸方向の長さ(図における上下方向の長さ)は、発振周波数f0の2倍の周波数に相当する波長とほぼ同じ長さである。
【0064】
図21は、本発明の導波管ジョイント(ロータリジョイント)の第2の実施の形態の縦断面図である。本実施の形態では、帯域阻止フィルタ部18として、間隙部が中心軸に沿って直列に二段配置されたフィルタが採用されている点で第1の実施の形態の構成と異なる。
【0065】
帯域阻止フィルタ部18の各間隙部の中心軸方向の長さは、第1の実施の形態と同様に、発振周波数f0の2倍の周波数に相当する波長とほぼ同じ長さである。本実施の形態では、フィルタが直列に多段配置されている分、反射特性が向上させることができる。
【0066】
なお、図20、図21両図で示した本発明の導波管ジョイントの実施の形態はいずれも電磁界結合部は、中空部を有しない稠密の内導体に形成された間隙部によるものであるが、本発明のフィルタの第2の実施の形態等中空の内導体からなるフィルタであってもよいし、内導体の側面に設けた突起状導体によっても構成することができる。また、上記フィルタ機能を有する内導体14は、同軸線路13の内導体14をそのまま延伸させてもよい。また、フィルタ部を別部品の構成とし導通接続してもよい。
【0067】
本発明の導波管ジョイントによれば、導波管を伝搬した電波を同軸線路13に伝搬する際に、内導体14のフィルタ部18で所定の周波数の電波を選択的に通過/阻止させることができる。レーダー装置などに適用する場合には、主発振モードの周波数以外の周波数の不要輻射電波(スプリアス成分)を極力除去しておくことが求められる。従って、フィルタ部がスプリアス成分の周波数帯域を阻止するフィルタとして機能するように、スプリアス成分を構成する電波の波長のおおむね4分の1の長さに上記間隙部あるいは平行部の長さを設定すればよい。
【0068】
ところで、船舶用などに適用されるレーダー装置では、360度全方位に対して物標検知を行う。これに対応するために、導波管14と同軸線路13の接合部に回転機構19を設け、回転できるようにすることも可能である。この場合でも、内導体14のフィルタ部18は導波管16内部で回転することができ、小型化への支障も生じない。
【0069】
図22は、本発明のレーダー装置の構成を示す図である。電波発生器20、サーキュレータ21、ロータリージョイント22、アンテナ23、および受信回路24を備えている。電波発生器20としては、典型的にはマグネトロンがあげられるが、これに限られない。
【0070】
マグネトロン20は、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる。マグネトロン20で発生させた電波は、同図の左方の導波管の電波入力部(図示省略)から入射されサーキュレータ21を経て導波管を伝搬し、同軸線路に導波される。電波はさらに同軸線路を伝搬して導波管ジョイント(ロータリジョイント)22を経由してアンテナ23へと導波される。アンテナ23から出射され、物標で反射した電波はアンテナ23で受信され、再びサーキュレータ21を経て受信回路24で信号処理される。
【0071】
ここで、導波管ジョイント22は、マグネトロン20で発生した電波が電波入射部から入射され導波管と同軸線路を介してアンテナ23に導波させる役割を果たす。このとき、本発明のレーダー装置では、マグネトロン20で発生させた電波を導波管で伝搬させ、同軸線路を介してアンテナ23に導波する際に導波管内部に配置されたフィルタで不要輻射電波を阻止する。この原理はすでに本発明の導波管ジョイントで説明した通りである。
【0072】
次に、本発明のマグネトロンについて説明する。
【0073】
本発明のマグネトロンは、マグネトロン自身から外部に漏れる電波を低減させる目的とマグネトロンで発生させた電波のうち、すでに説明したように、レーダー装置等に適用する場合に不要輻射電波となるスプリアス成分のみを選択的に除去する目的との双方に適用することができる。前者の目的の場合には、マグネトロンで発生させる電波の主発振モードの電波を阻止するフィルタを適用すればよい。後者の場合には、不要輻射電波を阻止するフィルタを適用すればよい。
【0074】
図23は、本発明のマグネトロンの構造を示す縦断面図である。図に示されるように、本発明のマグネトロンは、内端部がそれぞれ円周上に配置された複数のアノードベーン26を有するアノード25と、円周の中心に中心軸が略一致する筒状のカソード27とを備えている。このアノード25とカソード27の間に電圧を印加することで、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させている。
【0075】
本発明のマグネトロンでは、内導体中心軸がカソード27の中心軸に一致するように配置されたフィルタを備えている。マグネトロンで発生させた電波のうち主発信周波数の電波を通過させ不要輻射を除去する目的でフィルタを配置してもよい。また、本発明のマグネトロンにおいて、主発振周波数における電波そのものの外部への漏れを防止する目的で用いることもできる。前者は、すでに説明したように、不要輻射の除去が必要なレーダー装置に有用である。他方、後者は、電子レンジなどで有用である。
【0076】
なお、上記前者の目的を達成するのであれば、間隙部または平行部によって形成される電磁界結合部の長さを主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さとすればよい。これに対して、後者の目的を達成するのであれば、電磁界結合部の長さを不要輻射電波の波長の略4分の1の長さとすればよい。
【実施例1】
【0077】
次に、本発明のフィルタの実施例について説明する。
【0078】
最初に、本発明の第1の実施の形態のフィルタの実施例について説明する。なお、構造は実施の形態の説明において参照した図面と同様であるので図示は省略する。フィルタは、内導体の径がφ(ファイ)2.75mmで、外導体の径がφ4mmである。この内導体の側面に長さ7.4mmに亘って中心軸に沿って切込みが形成されている。
【0079】
このフィルタの周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフを図24に示す。横軸は入力される電波の周波数を、縦軸は散乱パラメータの反射係数S11、通過(伝送)係数S21の絶対値をデシベル表示したもので、フィルタの反射特性(S11)、および通過特性(S21)をそれぞれ示している。図からわかるように、9.4GHz近傍において反射率が高く、通過損が小さいことから、帯域阻止フィルタとして機能している。
【0080】
なお、この切込みによって構成される突起上導体部と外導体の距離を変える、例えば、近接させることで阻止帯域を調整することもできる。すなわち、切込みによって形成される突起上導体部の位置を調節することで、フィルタの中心帯域を微調整することも可能である。
【0081】
次に、本発明の第3および第4の実施の形態のフィルタの実施例について説明する。
【0082】
両実施例では、内導体の径はφ(ファイ)2.75mmで、外導体の径はφ4mm、切込みの長さは第1の実施例と同様、7.4mmである。本実施例では、切込みはワイヤカット放電加工を用いたが、第4の実施の形態では内導体は管(パイプ)状であり肉厚が薄いので、エッチング加工も適用できる。
【0083】
図25および図26は、第3の実施の形態と第4の実施の形態それぞれのフィルタの周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。内導体が中空でなく稠密である第3の実施の形態においては、反射係数S11が10dBを満足する比帯域幅が約12%であるのに対して、内導体を筒状にした第4の実施の形態の場合には、それより広い約20%の帯域を有する周波数特性が得られることがわかる。言い換えると、内導体を内部に中空部を有しない金属棒のような稠密体とすると、周波数は低下しているが、その帯域幅は狭めシャープな阻止特性を得ることができる。
【0084】
さらに、本発明の第7の実施の形態のフィルタの実施例について説明する。本実施例では、内導体の径はφ(ファイ)1mmで、外導体の径はφ4mmである。内導体の外周にはテフロン製リングが取り付けられている。テフロンリングは外径φ2.6mmであって、内導体の外周を覆っている。4分の1波長の長さとなるように、中心軸方向に3.75mmに亘って金属箔が貼付されており、テフロン内側で内導体と接触している。
【0085】
このフィルタの周波数特性のシミュレーション結果を図27に示す。同図では、横軸の周波数範囲は2〜16GHz、縦軸はS11およびS21となっている。グラフから8.2GHz近傍で帯域阻止フィルタとして機能しているのがわかる。
【0086】
最後に、本発明の導波管ジョイントを用いた場合の電波の周波数特性について説明する。図28は本発明の導波管ジョイントの導波管に入射されるマイクロ波と同軸線路13から出力されるマイクロ波の周波数特性をそれぞれ示すグラフである。入射される電波は中心周波数9.4GHzとその2倍周波数の18.8GHzで大きな出力を有するが、本発明のフィルタを18.8GHzのみで機能するように設計することで、装置が大型化することなく2倍周波数の出力のみを大幅に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のフィルタは、マイクロ波などの電波を発振する装置、例えばレーダー装置や電子レンジなどの家庭電化品なども含め幅広く利用可能である。また、本発明のマグネトロンは、船舶、航空機などに適用されるレーダー装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1: 内導体
2: 外導体
3: 間隙部
4: 中心導体
5: 突起状導体部
6: 第1の切込みによる間隙
7: 第2の切込みによる間隙
8: 中空部
9: 第3の切込みによる間隙
10: 第4の切込みによる間隙
11: 突起部
12: 導電性薄膜
13: 同軸線路
14: 内導体
15: 外導体
16: 導波管
17: 電波入力部
18: 帯域阻止フィルタ部
19: 回転機構
20: 電波発生器(マグネトロン)
21: サーキュレータ
22: 導波管ジョイント(ロータリジョイント)
23: アンテナ
24: 受信回路
25: アノード
26: アノードベーン
27: カソード
28: 帯域阻止フィルタ
29: 帯域通過フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される、導電性の外導体と、
前記内導体の一端から電波が入力される電波入力部と、
を備えたフィルタであって、
前記内導体は、前記電波の進行方向に該電波と電磁界結合を生じさせる電磁界結合部を備えていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記電波は主発振モードを含み、
前記電磁界結合部は、前記内導体の中心軸方向の長さが、前記主発振モードの波長の略4分の1である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記電波は主発振モードを含み、
前記電磁界結合部は、前記内導体の中心軸方向の長さが、前記主発振モードの波長以外の波長の略4分の1である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項4】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される、導電性の外導体と、
を備えたフィルタであって、
前記内導体は、該内導体の中心軸に対して略平行に形成された間隙部を有している
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項5】
請求項4記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さを有することを特徴とするフィルタ。
【請求項6】
請求項5記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数を有する輻射電波の波長の略4分の1の長さを有することを特徴とするフィルタ。
【請求項7】
前記内導体は少なくとも一部に内導体中空部を有し、
前記間隙部は前記内導体中空部と繋がるように形成されている
ことを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記間隙部は、
前記内導体に対して一の方向に切り込まれた第1の間隙と、
前記中心軸に対して第1の間隙部とほぼ相対する位置で切り込まれた第2の間隙と
を含んでいることを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれかの請求項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記内導体は、前記中心軸に沿って直列に形成された複数の間隙部を含む
ことを特徴とする請求項4から請求項8までのいずれかの請求項に記載のフィルタ。
【請求項10】
請求項4から請求項9までのいずれかの請求項に記載のフィルタであって、
前記間隙部は、「略平行」に代えて、前記中心軸から外側に向けて傾斜するように形成されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項11】
導電性を有する内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される、導電性の外導体と、
を備えたフィルタであって、
前記内導体と前記外導体の間にあって、前記内導体と電気的に接続され前記中心軸に対して略平行な平行部
を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項12】
前記平行部は、前記内導体と電気的に接続される一端から先端に向かって前記内導体に垂直な方向の横幅が広がっていることを特徴とする請求項11記載のフィルタ。
【請求項13】
請求項11または請求項12記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さであることを特徴とするフィルタ。
【請求項14】
請求項11または請求項12記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数輻射電波の波長の略4分の1の長さを有することを特徴とするフィルタ。
【請求項15】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体と、を有する同軸線路と、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入射される電波入射部と、前記電波を前記同軸線路に導波する導波管と、を備えたロータリジョイントであって、
前記内導体は、該内導体の中心軸に対して略平行に形成された間隙部を前記導波管の内部に有している
ことを特徴とする導波管ジョイント。
【請求項16】
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項15記載の導波管ジョイント。
【請求項17】
前記内導体は少なくとも一部に内導体中空部を有し、
前記間隙部は前記内導体中空部と繋がるように形成されている
ことを特徴とする請求項15または請求項16記載の導波管ジョイント。
【請求項18】
前記間隙部は、
前記内導体に対して一の方向から切り込まれた第1の間隙と、
前記中心軸に対して第1の間隙部とほぼ相対する位置で切り込まれた第2の間隙と
を含んでいることを特徴とする請求項15から請求項17までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイント。
【請求項19】
前記内導体は、前記中心軸に沿って直列に形成された複数の前記間隙部を含んでいる
ことを特徴とする請求項15〜請求項18までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイント。
【請求項20】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体と、を有する同軸線路と、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入射される電波入射部と、前記電波を前記同軸線路に導波する導波管と、を備えたロータリジョイントであって、
前記内導体は、前記内導体と前記外導体の間にあって、前記内導体と電気的に接続され前記中心軸に対して略平行な平行部を前記導波管の内部に有している
ことを特徴とする導波管ジョイント。
【請求項21】
前記平行部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項20記載の導波管ジョイント。
【請求項22】
請求項19から請求項21までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイントであって、
前記導波管に対して前記同軸線路を回転可動とする回転機構
を備えていることを特徴とする導波管ジョイント。
【請求項23】
所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、
電波を発射させるアンテナと、
請求項15から請求項22までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイントであって、前記電波発生器で発生した電波が前記電波入射部から入射され、前記導波部と前記同軸線路を介して前記アンテナに導波する導波管ジョイントと
を備えていることを特徴とするレーダー装置。
【請求項24】
所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、
電波を発射させるアンテナと、
前記アンテナから発射された電波によるエコー信号を受信する受信部と、
請求項15から請求項23までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイントであって、前記電波発生器で発生した電波が前記電波入射部から入射され、前記導波部と前記同軸線路を介して前記アンテナに導波する導波管ジョイントと
前記電波発生器で発生した電波を前記電波入射部に導波するとともに、前記エコー信号を前記受信部に導波するサーキュレータと、
を備えていることを特徴とするレーダー装置。
【請求項25】
内端部がそれぞれ円周上に配置された複数のアノードベーンを有するアノードと、前記円周の中心に中心軸が略一致する筒状のカソードとを有し、前記アノードと前記カソードの間に、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生部と、
前記内導体中心軸が前記中心軸に一致するように配置された、請求項4から請求項14までのいずれかの請求項に記載のフィルタと、
を備えていることを特徴とするマグネトロン。
【請求項26】
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項25記載のマグネトロン。
【請求項27】
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項25記載のマグネトロン。
【請求項28】
請求項24または請求項26記載のマグネトロンと、
電波を発射させるアンテナと、
前記アンテナから発射された電波によるエコー信号を受信する受信部と、
前記電波発生器で発生した電波を前記電波入射部に導波するとともに、前記エコー信号を前記受信部に導波するサーキュレータと、
を備えていることを特徴とするレーダー装置。
【請求項1】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される、導電性の外導体と、
前記内導体の一端から電波が入力される電波入力部と、
を備えたフィルタであって、
前記内導体は、前記電波の進行方向に該電波と電磁界結合を生じさせる電磁界結合部を備えていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記電波は主発振モードを含み、
前記電磁界結合部は、前記内導体の中心軸方向の長さが、前記主発振モードの波長の略4分の1である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記電波は主発振モードを含み、
前記電磁界結合部は、前記内導体の中心軸方向の長さが、前記主発振モードの波長以外の波長の略4分の1である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項4】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される、導電性の外導体と、
を備えたフィルタであって、
前記内導体は、該内導体の中心軸に対して略平行に形成された間隙部を有している
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項5】
請求項4記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さを有することを特徴とするフィルタ。
【請求項6】
請求項5記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数を有する輻射電波の波長の略4分の1の長さを有することを特徴とするフィルタ。
【請求項7】
前記内導体は少なくとも一部に内導体中空部を有し、
前記間隙部は前記内導体中空部と繋がるように形成されている
ことを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記間隙部は、
前記内導体に対して一の方向に切り込まれた第1の間隙と、
前記中心軸に対して第1の間隙部とほぼ相対する位置で切り込まれた第2の間隙と
を含んでいることを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれかの請求項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記内導体は、前記中心軸に沿って直列に形成された複数の間隙部を含む
ことを特徴とする請求項4から請求項8までのいずれかの請求項に記載のフィルタ。
【請求項10】
請求項4から請求項9までのいずれかの請求項に記載のフィルタであって、
前記間隙部は、「略平行」に代えて、前記中心軸から外側に向けて傾斜するように形成されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項11】
導電性を有する内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される、導電性の外導体と、
を備えたフィルタであって、
前記内導体と前記外導体の間にあって、前記内導体と電気的に接続され前記中心軸に対して略平行な平行部
を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項12】
前記平行部は、前記内導体と電気的に接続される一端から先端に向かって前記内導体に垂直な方向の横幅が広がっていることを特徴とする請求項11記載のフィルタ。
【請求項13】
請求項11または請求項12記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さであることを特徴とするフィルタ。
【請求項14】
請求項11または請求項12記載のフィルタであって、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入力される電波入力部を備え、
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数輻射電波の波長の略4分の1の長さを有することを特徴とするフィルタ。
【請求項15】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体と、を有する同軸線路と、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入射される電波入射部と、前記電波を前記同軸線路に導波する導波管と、を備えたロータリジョイントであって、
前記内導体は、該内導体の中心軸に対して略平行に形成された間隙部を前記導波管の内部に有している
ことを特徴とする導波管ジョイント。
【請求項16】
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項15記載の導波管ジョイント。
【請求項17】
前記内導体は少なくとも一部に内導体中空部を有し、
前記間隙部は前記内導体中空部と繋がるように形成されている
ことを特徴とする請求項15または請求項16記載の導波管ジョイント。
【請求項18】
前記間隙部は、
前記内導体に対して一の方向から切り込まれた第1の間隙と、
前記中心軸に対して第1の間隙部とほぼ相対する位置で切り込まれた第2の間隙と
を含んでいることを特徴とする請求項15から請求項17までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイント。
【請求項19】
前記内導体は、前記中心軸に沿って直列に形成された複数の前記間隙部を含んでいる
ことを特徴とする請求項15〜請求項18までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイント。
【請求項20】
導電性を有する柱状の内導体と、
中空部を有し該中空部に前記内導体の少なくとも一部が配置される導電性の外導体と、を有する同軸線路と、
所定周波数の主発振モードを含む電波が入射される電波入射部と、前記電波を前記同軸線路に導波する導波管と、を備えたロータリジョイントであって、
前記内導体は、前記内導体と前記外導体の間にあって、前記内導体と電気的に接続され前記中心軸に対して略平行な平行部を前記導波管の内部に有している
ことを特徴とする導波管ジョイント。
【請求項21】
前記平行部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項20記載の導波管ジョイント。
【請求項22】
請求項19から請求項21までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイントであって、
前記導波管に対して前記同軸線路を回転可動とする回転機構
を備えていることを特徴とする導波管ジョイント。
【請求項23】
所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、
電波を発射させるアンテナと、
請求項15から請求項22までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイントであって、前記電波発生器で発生した電波が前記電波入射部から入射され、前記導波部と前記同軸線路を介して前記アンテナに導波する導波管ジョイントと
を備えていることを特徴とするレーダー装置。
【請求項24】
所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生器と、
電波を発射させるアンテナと、
前記アンテナから発射された電波によるエコー信号を受信する受信部と、
請求項15から請求項23までのいずれかの請求項に記載の導波管ジョイントであって、前記電波発生器で発生した電波が前記電波入射部から入射され、前記導波部と前記同軸線路を介して前記アンテナに導波する導波管ジョイントと
前記電波発生器で発生した電波を前記電波入射部に導波するとともに、前記エコー信号を前記受信部に導波するサーキュレータと、
を備えていることを特徴とするレーダー装置。
【請求項25】
内端部がそれぞれ円周上に配置された複数のアノードベーンを有するアノードと、前記円周の中心に中心軸が略一致する筒状のカソードとを有し、前記アノードと前記カソードの間に、所定周波数の主発振モードを含む電波を発生させる電波発生部と、
前記内導体中心軸が前記中心軸に一致するように配置された、請求項4から請求項14までのいずれかの請求項に記載のフィルタと、
を備えていることを特徴とするマグネトロン。
【請求項26】
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記主発振モードの電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項25記載のマグネトロン。
【請求項27】
前記間隙部は、前記中心軸方向に、前記所定周波数とは異なる周波数の輻射電波の波長の略4分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項25記載のマグネトロン。
【請求項28】
請求項24または請求項26記載のマグネトロンと、
電波を発射させるアンテナと、
前記アンテナから発射された電波によるエコー信号を受信する受信部と、
前記電波発生器で発生した電波を前記電波入射部に導波するとともに、前記エコー信号を前記受信部に導波するサーキュレータと、
を備えていることを特徴とするレーダー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−49941(P2012−49941A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191781(P2010−191781)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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