説明

フィルター付じょうご

【課題】 濾液に混在する固形物を効率よく除去することができるフィルターを設けたフィルター付じょうごを提供する。
【解決手段】 フィルター付じょうご1は、濾液を保持する濾液保持部1aと、この濾液保持部1aの開口よりも小径な排出口1bを底部に形成した排出口1bに筒部1cが設けられている。そして、排出口1bには、フィルター部2が設けられ、このフィルター部2は、濾液保持部1a側に隆起する略半球状に形成されている。使用済みてんぷら油等の濾液に混入されている揚げ粕等の固形物がフィルター部によって濾過されるとき、固形物6が略半球状のフィルター部2の周囲に溜まり、フィルター部2の頂部近傍が開放状態に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのてんぷら油等の濾液に混在する固形物を除去するフィルターを設けたフィルター付じょうごに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源として活用可能な廃棄物を回収してリサイクルすることにより、資源の有効活用を図ることや、焼却ゴミを減少させることにより、二酸化炭素の排出量を削減させる活動が各地で展開されている。ところが、一般家庭において、てんぷら等に使用した油については、固形材等を加えて固形化し、これを可燃ゴミとして廃棄していることが多々見受けられ、これが可燃ゴミや二酸化炭素の排出量の削減、及び、リサイクル可能な資源の回収が進まない要因となっていた。特に、使用済みてんぷら油を回収するための容器としては、ペットボトルが多用されている。ところが、使用済みてんぷら油には、揚げ粕等の固形物が混入していることから、ペットボトル等への移液は容易ではない。このため、使用済みてんぷら油をペットボトルへ移液するには、じょうごを使用している。
【0003】
しかし、使用済みてんぷら油を資源としてリサイクルとして利用するためには、混入されている揚げ粕等の固形物を除去する必要がある。こうした固形物を除去するための濾過手段を設けたじょうごが多々提案されている。例えば、特開平10−225385号公報(特許文献1)においては、じょうご内にろ紙を置いて、油をろ過することが提案されている。また、実用新案登録第3142212号公報(特許文献2)においては、漏斗上部の広口部に、固形物を分離するためのフイルターを備えることが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−225385号公報
【特許文献2】実用新案登録第3142212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示された濾過手段は、一般市販のろ紙を用いて揚げ粕等の固形物を除去するようにしているが、使用済みてんぷら油をじょうごに注ぐときに、特にろ紙の開口側上部が離脱することがあり、この結果、てんぷら油がじょうご内面とろ紙の外面との間から流出することから、一部の固形物が濾過できない問題がある。また、特許文献2に示された濾過手段は、漏斗上部の広口部にフィルターを備えていることから、多量のてんぷら油を注いだ場合には、漏斗の上部外周から流出することがあり、実用的ではない問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、濾液に混在する固形物を効率よく除去することができるフィルターを設けたフィルター付じょうごを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の請求項1に関わるフィルター付じょうごは、濾液を保持する濾液保持部と、この濾液保持部の開口よりも小径な排出口を底部に形成した排出口に筒部を設けたじょうごであって、上記排出口には、上記濾液保持部側に隆起する略半球状のフィルター部を設けている。
【0007】
また、請求項2に関わるフィルター付じょうごは、請求項1において、略半球状のフィルター部は網目状に形成され、フィルター部の上記濾液保持部側の周囲には上記フィルター部を通過しない固形物を保持する保持部を設けている。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に関わるフィルター付じょうごは、請求項1において、濾液保持部の開口にざる状に形成されたプリフィルターが装着され、このプリフィルターの網目を上記フィルター部の網目よりも大きく形成している。
【0009】
さらにまた、本発明の請求項4に関わるフィルター付じょうごは、請求項1乃至3のいずれかにおいて、フィルター部、濾液保持部及び筒部は合成樹脂によって一体にモールド成型されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、じょうごの排出口に、濾液保持部側に隆起する略半球状のフィルター部を設けているので、使用済みてんぷら油に混入されている揚げ粕等の固形物がフィルター部によって濾過されることはもとより、小さな固形物が略半球状のフィルターの周囲に溜まり易くなり、フィルターの頂部近傍は開放状態に保たれるので、効率よく濾過することが可能となる。
【0011】
また、網目状に形成された略半球状のフィルター部の周囲に固形物を保持するための保持部を設けることにより、フィルター部を通過しない固形物を保持部に保持させることから、一層効率良く濾過することが可能となる。
【0012】
さらに、フィルター付じょうごの濾液保持部の開口に、ざる状に形成されたプリフィルターを装着し、このプリフィルターの網目をフィルター部の網目よりも大きく形成しているので、比較的大きな固形物を予め除去することができ、さらに効率よく濾過することが可能となる。
【0013】
さらにまた、フィルター部、濾液保持部及び筒部は合成樹脂によって一体にモールド成型することができるので、フィルター付じょうごを安価に製造することができ、多くの一般家庭で使用することが可能となり、この結果、可燃ゴミや二酸化炭素の排出量の削減、及び、リサイクル可能な資源の回収が促進され、地球環境の向上に寄与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
フィルター付じょうごは、濾液を保持する濾液保持部と、この濾液保持部の開口よりも小径な排出口を底部に形成した排出口に筒部が設けられている。そして、排出口には、フィルター部が設けられ、このフィルター部は、上記濾液保持部側に隆起する略半球状に形成されている。また、略半球状のフィルター部は網目状に形成されていて、フィルター部の濾液保持部側の周囲には、フィルター部を通過しない固形物を保持するための保持部を設けることが望ましい。さらに、体積が大きい固形物が混入された濾液を濾過する場合には、濾液保持部の開口にざる状に形成されたプリフィルターを装着することが望ましい。このプリフィルターの網目は、体積が大きい固形物を予め除去するために、上記フィルター部の網目よりも大きく形成することが望ましい。さらには、フィルター付じょうごは、フィルター部、濾液保持部及び筒部は合成樹脂によって一体にモールド成型することが望ましい。
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図1および図2は、本発明に関わるフィルター付じょうごを示している。この実施例において、じょうご1の材質は、ポリプロピレン樹脂が採用されている。なお、採用する樹脂としては、ポリエチレン樹脂や、シリコン樹脂、テフロン樹脂等の合成樹脂であれば良く、これらの樹脂としては、特に植物油に対する耐油性を有し、やや高温の使用済みてんぷら油を注いでも変形しない耐熱性と、寒冷地でも使用可能な耐寒性を有し、さらに難燃性を有することが望ましい。
【0016】
じょうご1は、上方側には、濾液を保持するために略朝顔形の濾液保持部1aが形成され、この濾液保持部1aの下方中央の底部には、濾液保持部1a開口よりも小径な排出口1bが形成され、この排出口1bには筒状の筒部1cが一体に設けられている。また、上記排出口1bの近傍であって、筒部1cの外周には、後述するペットボトル7の注入口7aに嵌合する複数条のリブ1dが一体に突出形成されている。そして、上記排出口1bには、濾液保持部1a側に隆起させた略半球状のフィルター部2が設けられている。
【0017】
略半球状のフィルター部2は、図3に示すように、透孔を四角形とした網目状に形成されている。そして、この網目によって、濾液保持部1aと筒部1cとが連通するようにしている。また、この網目は、使用済みてんぷら油の混入した比較的小さな固形物を除去するために、約10〜15メッシュに形成することが望ましい。なお、フィルター部2の網目の形状は、三角形や円形等にしても良い。さらに、フィルター部2の濾液保持部1a側の周囲には、フィルター部2を通過しない固形物を保持するための保持部3が設けられている。
【0018】
そして、上述したじょうご1のフィルター部2、濾液保持部1a及び筒部1cは、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂によって一体に射出成型等のモールド成型している。
【0019】
一方、じょうご1には、濾液保持部1aにプリフィルター4を装着することができる。このプリフィルター4は、図2に示すように、底面を平坦に形成した略ざる状に形成され、上端近傍から底面の全体が網目状に形成されている。この網目は、使用済みてんぷら油の混入した比較的大きな固形物を除去するために、上記フィルター部2よりも大きい透孔となるように、約8〜12メッシュに形成することが望ましい。また、プリフィルター4の上端の外周には、濾液保持部1aに嵌合する複数条のリブ4aが一体に突出形成されている。なお、上記フィルター部2及びプリフィルター4の網目のメッシュは、上述した大きさに限らす、除去したい固形物の大きさによって最適な大きさに変更可能である。また、プリフィルター4は、濾液に混入された固形物の大きさや量によって適宜に使用され、じょうご1のフィルター部2のみで濾過可能な場合には使用しなくても良い。
【0020】
次に、本発明に関わるフィルター付じょうごの使用方法について説明する。
まず、比較的固形物5が大きく、しかも量が多い使用済みてんぷら油等の濾液を濾過する場合には、図4に示すように、じょうご1の濾液保持部1aにプリフィルター4を装着する。このとき、複数条のリブ4aが濾液保持部1aの内面に当接するので、プリフィルター4の外面と濾液保持部1aの内面との間には、濾液を流通させるための隙間が形成される。
【0021】
この状態からプリフィルター4の上方から使用済みてんぷら油等の濾液を投入すると、図4に示すように、プリフィルター4によって比較的大きな固形物5が除去されて底面に残留し、プリフィルター4からは、網目を通過可能な小さな固形物6と濾液が通過する。その後、この濾液は、フィルター部2に到達して、比較的小さな固形物6が除去され、濾過された濾液はフィルター部2の網目を通過して筒部1cに流出する。このとき、小さな固形物6は、略半球状のフィルター部2が濾液保持部1a側に隆起しているので、濾液の流れによって周囲に押し流され、保持部3に蓄積される。この保持部3に蓄積された小さな固形物6は、濾液の流れによって若干は濾液保持部1aの内面に沿って移動することがあるが、フィルター部2が略半球状に形成されているために、やがて保持部3に戻って、再び蓄積される。この結果、フィルター部2の頂部の網目は常に開放されているので、効率良く濾過することが可能となる。
【0022】
フィルター部2の網目を通過して筒部1cに流出した濾液は、図4において二点鎖線で示すペットボトル7に注入される。このように、注入する濾液の量が多くなるに従って、内部の空気が加圧される。前述したように、筒部1cの外周には、複数条のリブ1dが一体に突出形成されているので、筒部1cの外周とペットボトル7の注入口7aの内面との間に隙間が形成され、ペットボトル7内の空気が流出し、濾液の注入が許容されて、効率良く濾液を注入することが可能となる。
【0023】
図5は、本発明に関わるフィルター付じょうごの第2の実施例を示している。上述した実施例と相違する点は、フィルター部を別体として、着脱自在に構成したことである。すなわち、フィルター部10は、上方側の網目部分が略半球状に形成され、その外周には、じょうご1の筒部1cの内径よりも大きい外径の平坦な鍔部11が形成されている、この鍔部11は、前述した実施例における保持部3と同様の機能を有している。さらに、鍔部11の下方からは脚部12が一体に突出形成されている。この脚部12の外径は、じょうご1の筒部1cの内径よりも若干小さく設定されていて、筒部1cには軽圧入的に嵌合するようにしている。このフィルター部10は、前述した実施例と同じ合成樹脂でモールド成型することが望ましい。
【0024】
このような構成からなるフィルター部10は、脚部12を筒部1cに嵌合することにより、図5において二点鎖線で示すように装着される。そして、前述した実施例と同様に、使用済みてんぷら油等の濾液を投入すると、フィルター部10によって固形物が除去されることにより濾過される。このとき、このとき、上方側の網目部分の外周に形成した鍔部11の上面が保持部となって固形物を保持するので、頂部の網目は常に開放され、効率良く濾過することが可能となることは、前述した実施例と同様である。
【0025】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。前述した実施例においては、濾液をペットボトルに注入する例について説明したが、濾液を注入する容器としては、金属缶やガラス瓶であっても良い。また、濾液を注入する容器からじょうごを離脱させないような固定手段を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、使用済みてんぷら油等の固形物が混入された濾液を濾過するためのじょうごに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 本発明に関わるフィルター付じょうごの実施例を示す斜視図である。
【図2】 本発明に関わるフィルター付じょうごとプリフィルターを示す側面図である。
【図3】 図1に示したフィルター付じょうごのフィルター部を示す平面図である。
【図4】 フィルター付じょうごによる濾過状態を示す説明図である。
【図5】 本発明に関わるフィルター付じょうごの第2実施例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 じょうご
1a 濾液保持部
1b 排出口
1c 筒部
1d リブ
2 フィルター部
3 保持部
4 プリフィルター
5、6 固形物
7 ペットボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾液を保持する濾液保持部と、この濾液保持部の開口よりも小径な排出口を底部に形成した排出口に筒部を設けたじょうごであって、
上記排出口には、上記濾液保持部側に隆起する略半球状のフィルター部を設けたことを特徴とするフィルター付じょうご。
【請求項2】
略半球状のフィルター部は網目状に形成され、フィルター部の上記濾液保持部側の周囲には上記フィルター部を通過しない固形物を保持する保持部を設けた請求項1に記載のフィルター付じょうご。
【請求項3】
濾液保持部の開口にざる状に形成されたプリフィルターが装着され、このプリフィルターの網目を上記フィルター部の網目よりも大きく形成した請求項1に記載のフィルター付じょうご。
【請求項4】
フィルター部、濾液保持部及び筒部は合成樹脂によって一体にモールド成型された請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルター付じょうご。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−11200(P2011−11200A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175818(P2009−175818)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(309024594)久松精工有限会社 (1)
【Fターム(参考)】