説明

フィルタ洗浄用ノズル及びこのフィルタ洗浄用ノズルを備えた懸濁物質濾過装置

【課題】植物プランクトンを含む懸濁水を濾過する濾過フィルタの懸濁物質付着面を効果的に洗浄することができるフィルタ洗浄用ノズルを提供する。
【解決手段】本発明のフィルタ洗浄用ノズル30は、濾過フィルタの懸濁物質付着面に沿って配置され、洗浄液が導入される、先端が閉塞した筒状体31と、筒状体31に設けられている、洗浄液を濾過フィルタの懸濁物質付着面とは異なる方向に噴射する噴射口32,33と、筒状体31を囲むように湾曲しかつ濾過フィルタの懸濁物質付着面に近づくにつれて筒状体31の表面から離れる方向に伸びる反射面34a,35aを備えている反射板34,35とを備えている。反射板34,35により、噴射口32,33から噴射された洗浄液が濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に放射状に拡散するため、一度で広い面積の懸濁物質付着面の洗浄が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物プランクトンを含む懸濁物質を収集するために使用される濾過フィルタを洗浄するためのフィルタ洗浄用ノズル、及びこのフィルタ洗浄用ノズルを備えた懸濁物質濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
池、湖沼、貯水池、ダムの入り江、堀、或いは海域等で植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している閉鎖性水域或いは微流動水域、例えばアオコ発生水域、赤潮発生水域、から上記懸濁物質を採集して上記水域を浄化するために、上記水域の表層の懸濁水を採集する取水手段と、該取水手段からの懸濁水に含まれる懸濁物質を除去する濾過手段と、上記濾過手段により処理された処理水(濾液)を上記水域に放出する放水手段と、取水から放水に至るまでの水の流れを生起させるポンプとを備えた浄化装置が従来から知られている(例えば、特開2002−1371号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
上記濾過手段は、懸濁水を蓄えるための貯留槽と、貯留槽内に設置された懸濁水濾過用の濾過フィルタとを備えており、貯留槽内の懸濁水は濾過フィルタを通過する間に濾過され、植物プランクトンを含む懸濁物質が濾過フィルタの濾過面に付着し、濾過フィルタを通過した濾液が上記放水手段により上記水域に戻される。
【0004】
ところで、このような浄化装置を用いて懸濁水の濾過を継続する間に、植物プランクトンを含む懸濁物質によりしばしば濾過フィルタの目詰まりが生じる。目詰まりが生じた場合には、一般に、フィルタ洗浄用ノズルから噴射した噴流により濾過フィルタを洗浄或いは逆洗(洗浄用流体を下流側から流すこと)する方法、又は、濾過フィルタの濾過面の懸濁物質をブラシやスクレーパ等により物理的に掻き取る方法等の措置が行われる。
【0005】
実開平7−25906号公報(特許文献2)は、植物プランクトンを含む懸濁物質の濾過フィルタに関するものではないが、ノズル噴流をフィルタの裏側から当てることによって、濾過フィルタの濾過面に付着しているゴミを浮かせて移動させ、目詰まりを防止する逆洗の技術を開示している。
【0006】
また、特開平7−171310号公報(特許文献3)は、やはり植物プランクトンを含む懸濁物質の濾過フィルタに関するものではないが、フィルタープレスにおける濾布の洗浄装置を開示しており、この洗浄装置では、濾布の洗浄のために、噴射ノズルとその外周に沿うはね返し板とはね返し板の上下両側に設けられた濾布の汚れをこすり落すためのブラシとが設けられた噴射管を用いており、噴射ノズルから洗浄水を濾布に垂直に噴射し、濾布表面をブラシでこすりながら汚れを落している。濾布からはね返った洗浄水は、はね返し板により再び濾布の方に向けられる。
【0007】
さらに、出願人は、本発明の出願時には未公開である特願2005−294557号明細書において、水中に取水口を配置してアオコを含んだ混濁水を吸水する取水部と、上記取水部から吸水した混濁水を濾過槽内で濾過すると共に、濾過槽内に高濃度のアオコ混入水を蓄える濾過部と、上記濾過槽内のアオコ混入水を移送して、アオコ混入水からアオコを回収するアオコ回収部と、と備えたことを特徴とするアオコ回収装置を開示しており、濾過部或いはアオコ回収部において混濁水或いはアオコ混入水を濾過するために使用される中空の濾過フィルタの濾過面に付着したアオコを採集する方法のひとつとして、アオコをヘラ状の掻き取り具を用いて掻き取る方法を記載している。
【0008】
【特許文献1】特開2002−1371号公報
【特許文献2】実開平7−25906号公報
【特許文献3】特開平7−171310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特願2005−294557号明細書に示すような中空の濾過フィルタは、植物プランクトンを含む懸濁物質の濾過面(懸濁物質付着面)の面積を大きくすることができるため好ましいが、濾過フィルタの目詰まりが生じた際には、濾過フィルタの構造上、特許文献2に示されているような洗浄効率の高い逆洗の方法を採用することができない。
【0010】
そこで、このような中空の濾過フィルタの目詰まり解消法として、特願2005−294557号明細書に示すように物理的に掻き取る方法が考えられるが、植物プランクトンを含む懸濁物質は極めて柔らかいため、掻き取り具により懸濁物質が濾過フィルタの内部に練り込まれてしまい、目詰まりの度合いがむしろ進行してしまうことがある。
【0011】
また、特許文献3に示されているような水等の洗浄液の噴流を濾過フィルタの懸濁物質付着面に垂直に噴射する方法では、噴流が懸濁物質付着面の比較的小さい面積部分にしか衝突しないため、懸濁物質付着面の全体を洗浄するためには時間がかかる。また、せっかく濾過した懸濁物質が再び洗浄液中に低濃度で分散してしまわないように、洗浄液を少量に抑えることができる効率的な洗浄方法が望ましい。
【0012】
そこで、本発明の目的は、植物プランクトンを含む懸濁物質の収集に用いられる濾過フィルタ、特に中空の濾過フィルタ、の懸濁物質付着面を効果的に洗浄することができるフィルタ洗浄用ノズルを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、上述のフィルタ洗浄用ノズルを用いることにより、迅速に濾過フィルタの目詰まりを解消することが可能であり、効率良く懸濁物質を濾過することができる、懸濁物質濾過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明のフィルタ洗浄用ノズルは、植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している水域から採集した懸濁水を濾過する濾過フィルタの懸濁物質付着面を洗浄するフィルタ洗浄用ノズルであって、上記濾過フィルタの懸濁物質付着面に沿って配置され、洗浄液が導入される、先端が閉塞した筒状体と、上記筒状体に設けられている、上記洗浄液を上記濾過フィルタの懸濁物質付着面とは異なる方向に噴射する噴射口と、上記筒状体の表面から突出して設けられている、上記筒状体を囲むように湾曲しておりかつ上記濾過フィルタの懸濁物質付着面に近づくにつれて上記筒状体の表面から離れる方向に伸びている反射面を備えており、上記噴射口から噴射された洗浄液を上記反射面に反射させて上記濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散させる反射板と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明において、植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している水域から採集した懸濁水は、上記水域から採集した未処理の懸濁水であっても良く、未処理の懸濁水に所望の前処理を施した懸濁水であっても良い。前処理としては、未処理の懸濁水を所定時間放置して植物プランクトンを沈降させ、高濃度の植物プランクトンを含む部分を採集する処理、未処理の懸濁水に凝集剤を添加して植物プランクトンを凝集させる処理等が挙げられる。
【0016】
本発明のフィルタ洗浄用ノズルでは、上記筒状体を囲むように湾曲しかつ上記濾過フィルタの懸濁物質付着面に近づくにつれて上記筒状体の表面から離れる方向に伸びる反射面を備えた反射板の作用により、上記噴射口から噴射された洗浄液(一般には水)が反射板に反射して放射状に拡散し、拡散した洗浄液が濾過フィルタの懸濁物質付着面の広い範囲に衝突して懸濁物質を吹き飛ばす。従って、比較的少量の洗浄液により、広い面積の懸濁物質付着面を効果的に洗浄することができる。
【0017】
上記フィルタ洗浄用ノズルの筒状体は、一般には直線状の筒体、例えば円筒体である。上記噴射口はスリット状でも良いが、噴射口から噴射される洗浄液の圧力を高めるためには、複数個の分離した噴射口、例えば円形又は楕円形の穿孔、が上記筒状体の長軸方向に並んで設けられているのが好ましい。懸濁物質付着面を直線的に一度に洗浄することができる上に、各々の噴射口から噴射される洗浄液の圧力を高めることができるため、反射板に衝突して拡散した洗浄液が濾過フィルタの懸濁物質付着面に高圧の状態で衝突して懸濁物質を吹き飛ばし、より効果的な洗浄が可能になる。
【0018】
上記反射板は、複数個の噴射口の各々に対応して1枚ずつ設けられていてもよいが、上記複数個の噴射口から噴射された洗浄液が、1枚の板体で構成された上記反射板により、上記濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散されるようになっているのが好ましい。反射板を1枚の板体で構成することにより、フィルタ洗浄用ノズルを簡単かつ安価に製造することができる。
【0019】
また、フィルタ洗浄用ノズルを、対向する懸濁物質付着面を有する2個の濾過フィルタの間に挿入して2個の濾過フィルタの懸濁物質付着面を同時に洗浄するようにすると、より効率的な洗浄を行うことができる。このような場合に使用されるフィルタ洗浄用ノズルでは、上記複数個の噴射口が、上記筒状体の長軸方向に2列に向かい合って設けられ、一方の列の噴射口から噴射された洗浄液が、1枚の板体で構成された上記反射板により、一方の濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散され、他方の列の噴射口から噴射された洗浄液が、別の1枚の板体で構成された上記反射板により、他方の濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散されるようになっている。すなわち、一方の列の噴射口から噴射される洗浄液と他方の列の噴射口から洗浄液とが反対の方向に噴射され、次いで、それぞれの噴射口の列に対応してそれぞれ1枚ずつ設けられた反射板により、反対の方向に拡散される。
【0020】
本発明はまた、本発明のフィルタ洗浄用ノズルを使用し、効率的に懸濁物質を濾過することができる懸濁物質濾過装置に関する。すなわち、本発明は、植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している水域から採集した懸濁水を濾過する濾過フィルタを備えた懸濁物質濾過装置であって、上記懸濁水を蓄える貯留槽と、上記貯留槽内に設置された、懸濁物質を付着させる濾過面と濾液を導く中空部とを有する濾過フィルタと、上記濾過フィルタの中空部に導かれた濾液を上記貯留槽の外部に排出する排水パイプと、上記濾過フィルタの濾過面を洗浄するための本発明のフィルタ洗浄用ノズルと、を備えていることを特徴とする懸濁物質濾過装置に関する。
【0021】
中空の濾過フィルタは濾過面積を大きくすることができるため、懸濁物質の濾過効率が高く、また本発明のフィルタ洗浄用ノズルによりフィルタの目詰まりが迅速に解消されるため、懸濁物質の濾過効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の懸濁物質濾過装置は、懸濁物質が付着する濾過面が互いに隣接するように配置された複数個の濾過フィルタと、全ての濾過フィルタの濾過面に沿って配置された、直線状の筒状体と該筒状体の長軸方向に並んで設けられた複数個の噴射口とを有するフィルタ洗浄用ノズルと、を備えていると、懸濁物質のより迅速な濾過と、複数個の噴射口から噴射される高圧の洗浄液による全ての濾過フィルタの濾過面(懸濁物質付着面)の迅速な洗浄が可能になるため好ましい。特に、隣接する濾過フィルタの濾過面の間に、上述の2個の濾過フィルタの同時洗浄が可能なフィルタ洗浄用ノズルが配置されていると、より迅速な洗浄が可能になる。
【0023】
貯留槽の形状及び中空の濾過フィルタの形状には特に制限がないが、貯留槽が直方体形状である場合には、貯留槽の縦(又は横)と高さよりわずかに短い長辺と短辺を有する矩形の平板状濾過フィルタを使用し、濾過フィルタの矩形状の濾過面を貯留槽の底面と垂直に配置すると、濾過フィルタを貯留槽内に密に配置できる上に、濾過を通して濾過フィルタの中空部に導かれた濾液を重力を利用して排出することができるため好ましい。
【0024】
この場合には、フィルタ洗浄用ノズルは、筒状体が貯留槽の底面と垂直に伸びるように配置される。そして、使用されるフィルタ洗浄用ノズルが、濾過フィルタの矩形状の濾過面の上端と下端との間隔より長い長さを有する筒状体を有しており、複数の噴射口のうちの上端に配置された噴射口が濾過フィルタの濾過面の上端近傍の位置に、下端に配置された噴射口が濾過フィルタの濾過面の下端近傍の位置に、それぞれ設けられていると、濾過フィルタの濾過面の上端と下端を結ぶ直線上を全体的に同時に洗浄できるためが好ましい。
【0025】
そして、上記複数個の濾過フィルタを支持する支持枠或いは上記貯留槽に取り付けられた、上記濾過フィルタの濾過面と平行な方向に移動可能な1個の取付板に、全てのフィルタ洗浄用ノズルが取り付け、上記取付板の移動に伴って全てのフィルタ洗浄用ノズルを同時に移動させると、全ての濾過フィルタの濾過面を同時に効率的に洗浄することができるため好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフィルタ洗浄用ノズルによると、洗浄液が拡散して濾過フィルタの懸濁物質付着面に衝突するため、広い面積の懸濁物質付着面を比較的少量の洗浄液により効果的に洗浄することができ、やわらかい植物プランクトンを含む懸濁水の濾過により発生した濾過フィルタの目詰まりを迅速に解消することができる。
【0027】
また、本発明のフィルタ洗浄用ノズルと中空の濾過フィルタを備えた本発明の懸濁物質濾過装置によると、中空の濾過フィルタにより濾過面積を大きくすることができる上に、フィルタ洗浄用ノズルにより濾過フィルタの目詰まりが迅速に解消されるため、懸濁物質の濾過効率、引いては懸濁物質の収集効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態の懸濁物質濾過装置1の正面図を示している。本実施の形態の懸濁物質濾過装置1は、直方体形状を有する貯留槽2と、懸濁水を濾過するために使用されるフィルタ装置3とを、主要な構成要素として備えている。尚、図1では、フィルタ装置3の構造の理解のために、貯留槽2の前側の壁面が省略されている。
【0030】
貯留槽2は、ステンレス等のさびにくい材料で形成されており、上方が開放されており、植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している水域から採集した懸濁水を吸水ポンプ等により貯留槽2内に導入できるようになっている。
【0031】
貯留槽2の内部には、懸濁水を濾過するために使用されるフィルタ装置3が配設されている。フィルタ装置3は、ステンレス等のさびにくい材料で形成された支持枠4に支持された、複数個の矩形の平板状濾過フィルタ5を有している。それぞれの濾過フィルタ5は、懸濁物質が付着する矩形状の濾過面5aを互いに隣接させて立設しており、それぞれの濾過フィルタ5の濾過面5aは、貯留槽2の底面2aと垂直な方向に伸びている。
【0032】
図2は、1個の濾過フィルタ5の概略図を示しており、(a)は正面図を、(b)はA−A´線に沿った断面図を、それぞれ示している。濾過フィルタ5は、ステンレス等のさびにくい材質で形成された矩形状に組まれた枠体6の外周に、多孔質高分子層を有する平膜濾材7を貼付することにより形成され、枠体6により濾過フィルタ5の形状が維持されている。濾過フィルタ5の外周は、下辺部に設けられている複数の孔5bを除いて閉じており、内部に中空部5cが形成されている。孔5bに排水パイプ8の分岐部8aが結合され、排水パイプ8には吸引ポンプ9が接続され、濾過により中空部5cに導かれた濾液が排出されるようになっている。
【0033】
平膜濾材7の多孔質高分子層は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂で構成され、多孔質空間の核となる大型気泡と少なくとも2個の上記大型気泡を連通させる連続微細気泡を有している。連続微細気泡は、濾過効率が低下しない通水量を確保でき、かつ微細な懸濁物質を捕捉する平均空孔径を有する連続気泡である。また、大型気泡は、多孔質高分子層の多孔質空間の大部分を占め、多孔質高分子層の構造を維持する核となる気泡である。大型気泡は連続微細気泡より大きな平均空孔径を有し、懸濁物質を捕捉する能力はほとんどないが、大型気泡を連続微細気泡により連通させることにより、機械的強度が高い濾過フィルタを得る目的で多孔質高分子層を厚くしても、懸濁物質を捕捉する能力を有する連続微細気泡の長さを長くする必要がないため、機械的強度が強い上に目詰まりしにくくかつ洗浄しやすい濾過フィルタが得られる。このような平膜濾材は市販されている(例えば、中村建設株式会社製の商品名「高分子マイクロフィルター」)。
【0034】
本実施の形態では、支持枠4の上方に存在する、濾過フィルタ5の濾過面と平行な方向に伸びる枠部4aに、この枠部4aの伸長方向に移動可能な取付板10が設けられており、濾過フィルタ5の列を挟む位置及び2個の濾過フィルタの間の位置に配設された、ステンレス等のさびにくい材料で構成されたフィルタ洗浄用ノズル20,30が、この取付板10に固定されている。従って、取付板10を移動させることにより、全てのフィルタ洗浄用ノズル20,30を濾過フィルタ5の濾過面5aに沿って移動させることができ、全ての濾過フィルタ5の濾過面5aを同時に洗浄することができるようになっている。なお、取付板10及びフィルタ洗浄用ノズル20,30は、濾過フィルタの洗浄時のみ枠部4aに取り付けるようにしても良い。
【0035】
図3は、両端の濾過フィルタ5の他の濾過フィルタの濾過面と対向していない側の濾過面に沿って配置されるフィルタ洗浄用ノズル20の概略図を示しており、(a)は正面図を、(b)は側面図を、(c)はB−B´線に沿った断面図を、それぞれ示している。
【0036】
フィルタ洗浄用ノズル20は、洗浄液が導入される先端が閉塞した筒状体21と、筒状体21の長軸方向に一列に並んで設けられた複数個の噴射口22と、全ての噴射口22と対向するように設けられた1枚の反射板23とを備えている。
【0037】
フィルタ洗浄用ノズル20の筒状体21は、本実施の形態では円筒体で構成され、筒状体21の先端は閉塞しており、閉塞した先端部が下方に向けて配置されている。筒状体21の基端側には、洗浄水導入管24が取り付けられており、洗浄水導入管24には、洗浄水供給源に接続している洗浄水移送用のゴム管11(図1参照)が接続される。筒状体21の長さは、洗浄する濾過フィルタ5の濾過面5aの上端と下端との間隔に応じて、上端と下端との間隔より長く設定されている。
【0038】
筒状体21の周面21aには、複数個の円形の開口を有する噴射口22が、筒状体21の全長に亘って一列に並んで設けられている。一列に並んで設けられた噴射口22のうちの上端の噴射口は、濾過フィルタ5の濾過面5aの上端近傍の位置に、下端の噴射口は、濾過フィルタ5の濾過面5aの下端近傍の位置に、それぞれ設けられており、その他の噴射口22は均等に離れて配置されている。噴射口22の数、隣接する噴射口22の間の間隔、噴射口22の円形の開口の直径は、洗浄する濾過フィルタ5の濾過面5aの上端と下端との間隔、噴射口22と反射板23との距離、噴射口22と濾過フィルタ5の濾過面5aとの距離等に応じて、後述する反射板23の作用により拡散された洗浄液が、濾過フィルタ5の濾過面5aの上端と下端を結ぶ直線の全体に亘って衝突し、濾過面5aの付着物を吹き飛ばすことができるように設定される。
【0039】
筒状体21の周面21aには、反射板23が外方に突出して取り付けられている。反射板23は、筒状体21よりわずかに短い長さの長辺を有する1枚の矩形状の板体を使用して、その短辺が円弧状に湾曲するように湾曲させることにより形成されており、反射板23が筒状体21の周面21aを囲むように、そして、反射板23の凹面(反射面)23aが噴射口22の列と対向するように配置されている。反射板23の一方の長辺部23bは、筒状体21の周面21aに接合されており、他方の長辺部23cは、この長辺部23cに近づくにつれ、反射板23の凹面23aと筒状体21の周面21aの間隔が長くなるように配置されている。この構成により、一列の噴射口22から噴射された洗浄液が、反射板23の反射面23aに衝突し、反射板23の開放端側の長辺部23cの方向に偏向するときに、反射面23aに衝突した洗浄液が、反射板23の上下方向に拡散される他、筒状体21の長軸に垂直な方向にも拡散される(図3の矢印参照)。
【0040】
図4は、全ての隣接する濾過フィルタ5の濾過面5aの間に挿入されるフィルタ洗浄用ノズル30の概略図を示しており、(a)は正面図を、(b)は側面図を、(c)はC−C´線に沿った断面図を、それぞれ示している。
【0041】
フィルタ洗浄用ノズル30は、洗浄液が導入される、先端が閉塞した筒状体31と、筒状体31の長軸方向に二列に向かい合って並んで設けられた複数個の噴射口32,33と、それぞれの噴射口32,33の列に対応して1枚ずつ設けられた2枚の反射板34,35とを備えている。
【0042】
フィルタ洗浄用ノズル30の筒状体31は、フィルタ洗浄用ノズル20の筒状体21とほぼ同様の構造を有しており、洗浄水導入管36は、フィルタ洗浄用ノズル20の洗浄水導入管24と略同様の構造を有しており、フィルタ洗浄用ノズル30の噴射口32,33は、筒状体31の全長に亘って、二列に向かい合って設けられている点を除いてフィルタ洗浄用ノズル20の噴射口22と同様の構造を有しているため、これ以上の説明を省略する。
【0043】
フィルタ洗浄用ノズル30の筒状体31には、フィルタ洗浄用ノズル20の反射板23と同様の形状の反射板34,35が、各々の噴射口32,33の列に対応して1枚ずつ設けられている。但し、反射板34,35は、筒状体31の周面31aに、それぞれの凹面(反射面)34a,35aに対向する噴射口32,33の列から噴射された洗浄液が反対の方向に偏向するように接合されている。噴射口32の列から噴射された洗浄液が、反射板34の反射面34aに衝突して反射板34の開放端側の長辺部34cの方向に偏向するときに、反射面34aに衝突した洗浄液が、反射板34の上下方向に向かって拡散される他、筒状体31の長軸に垂直な方向にも拡散される。また、噴射口33の列から噴射された洗浄液が、反射板35の反射面35aに衝突して反射板35の開放端側の長辺部35cの方向に偏向するときに、反射面35aに衝突した洗浄液が、反射板35の上下方向に拡散される他、筒状体31の長軸に垂直な方向にも拡散される(図4の矢印参照)。
【0044】
フィルタ洗浄用ノズル20,30を取付板10に取り付ける際には、フィルタ洗浄用ノズル20の噴射口22、フィルタ洗浄用ノズル30の噴射口32,33から噴射した洗浄液が、濾過フィルタ5の濾過面5aと略平行な方向に噴射されるように配置する。噴射口22,32,33から噴射した洗浄液が、反射板23,34,35の反射面23a,34a,35aに反射して、濾過フィルタ5の濾過面5aの方向に拡散される。
【0045】
以下、本実施の形態の懸濁物質濾過装置1を使用した植物プランクトンを含む懸濁水の濾過方法、及び、濾過フィルタ5の濾過面(懸濁物質付着面)5aの洗浄方法を説明する。
【0046】
貯留槽2に、植物プランクトンを含む懸濁水を、濾過フィルタ5の全体が没するまで導入した後、濾過により濾過フィルタ5の中空部5cに導かれた濾液を、排水パイプ8を介して吸引ポンプ9で吸引しながら濾過する。懸濁水が半分程度に減少したら再び懸濁水を濾過フィルタ5全体が没するまで導入し、濾過を継続する。この過程で、濾過フィルタ5表面の濾過面5aに、柔らかい植物プランクトンを含む懸濁物質が付着し、濾過フィルタ5の目詰まりを発生させる。目詰まりの進行は、排水パイプ8を介して排出される濾液の量をモニターすることにより知ることができる。この目詰まりは物理的な掻き取り具では解消されない。
【0047】
排水パイプ8を介して排出される濾液の量が、懸濁水の迅速な濾過を達成するために許容される下限値に達したら、吸引ポンプ9を一端停止し、洗浄水供給源からゴム管11を介して移送される洗浄水を、フィルタ洗浄用ノズル20,30の洗浄水導入管24,36を介して筒状体21,31に導入する。このとき、洗浄水の水圧を、濾過フィルタ5の濾過面5aに付着した懸濁物質を吹き飛ばす水圧を有する洗浄水が濾過面5aに衝突するように設定すると、上述した反射板23,34,35の反射面23a,34a,35aの特殊な形状により、反射面23a,34a,35aに衝突した洗浄液が、反射板23,34,35の上下方向に向けて拡散される他、筒状体21,31の長軸に垂直な方向にも拡散され、放射状に広がった洗浄液が濾過面5aの広い範囲に衝突する。この放射状に広がった洗浄液が、濾過フィルタ5の濾過面5aに付着した懸濁物質を吹き飛ばし、濾過フィルタ5の目詰まりが迅速に解消される。目詰まりの解消後は、上述の懸濁水のろ過を再開する。この懸濁物質濾過装置1は、懸濁水中の懸濁物質の高濃度化、或いは濾過面に付着した懸濁物質の回収のために使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0049】
実施例1
図1〜4に示すような懸濁物質濾過装置及びフィルタ洗浄用ノズルを使用して、アオコを含む懸濁水を濾過した。但し、使用した懸濁物質濾過装置のフィルタ装置は、縦が約1000mm、横が約3000mm、厚さが約30mmの中空の濾過フィルタ(濾材;中村建設株式会社製の商品名「高分子マイクロフィルター」)を13枚含んでおり、隣接する濾過フィルタの濾過面の間隔は約50mmであった。また、フィルタ洗浄用ノズルの筒状体の長さは1200mm、内周の径は8mmとした。両端に配置されるフィルタ洗浄用ノズルには、径1.5mmの円形の噴射口を13個一列に並べて設け、2個の濾過フィルタの間に挿入されるフィルタ洗浄用ノズルには、径1.5mmの円形の噴射口を13個(合計26個)ずつ、2列に向かい合って設けた。隣接する噴射口の間の距離は75mmとし、反射板の湾曲度は約R13.5とした。
【0050】
貯留槽にアオコを含む懸濁水を濾過フィルタ全体が没するまで導入した後、濾過により濾過フィルタの中空部に導かれた濾液を、排水パイプを介して吸引ポンプで吸引しながら、懸濁水を濾過した。アオコを含む懸濁水が半分程度に減少したら、再びアオコを含む懸濁水を濾過フィルタ全体が没するまで導入し、濾過を継続した。濾過の開始当初は、吸引ポンプの排水量が約10m3/hであったが、濾過を継続するにつれ、徐々に排水量が低下した。
【0051】
排水量が約1m3/hになったところで、フィルタ洗浄用ノズルにより、筒状体に導入される洗浄水の水圧が2.8Mpの条件下で、濾過フィルタの濾過面の全面を洗浄した。取付板を操作することにより、全てのフィルタ洗浄用ノズルを同時に移動させ、10分間洗浄を行ったところ、排水量が約10m3/hに回復していた。従って、フィルタ目詰まりの迅速な解消が確認された。
【0052】
比較例1
実施例1において使用したフィルタ洗浄用ノズルの代わりに、反射板を備えておらず、噴射口が筒状体の全周に亘って多数設けられており、筒状体から洗浄水が放射状に噴出するフィルタ洗浄用ノズルを使用し、濾過面に付着したアオコの除去の程度を観察した。フィルタ洗浄用ノズルの噴射口から濾過面に付着したアオコを吹き飛ばす水圧を有する洗浄水を噴射することができず、十分な洗浄効果が得られなかった。
【0053】
比較例2
実施例1において使用したフィルタ洗浄用ノズルの代わりに、断面がL字状で平坦な反射面を有する反射板を供えたフィルタ洗浄用ノズルを使用し、濾過面に付着したアオコの除去の程度を観察した。洗浄水の反射面衝突後の拡散の程度が十分でなく、実施例1のような十分な洗浄効果は得られなかった。
【0054】
従って、特殊な反射面形状を有する反射板を供えた本発明のフィルタ洗浄用ノズルにより、フィルタ目詰まりが迅速に解消されることがわかった。
【0055】
本発明は、上述の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能である。例えば、筒状体の長軸方向に並んで設けられた複数個の噴射口の円形の開口の直径が、全ての噴射口において同一である必要はなく、筒状体の先端に向かうにつれて直径が大きくなっていても良い。このことにより、筒状体の全長に亘って均一な水圧の洗浄液が噴射される。また噴射口の形状は円形である必要はなく、例えば楕円形であってもよい。また、濾過フィルタは多孔質高分子層を有している必要はなく、濾材の材質及び濾過フィルタの形状は、使用目的及び貯留槽の形状等に応じて適宜変更される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態の懸濁物質濾過装置の正面図である。
【図2】濾過フィルタの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A´線に沿った断面図である。
【図3】濾過フィルタの列の両端に配置される本実施の形態のフィルタ洗浄用ノズルの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はB−B´線に沿った断面図である。
【図4】2個の濾過フィルタの間に配置される本実施の形態のフィルタ洗浄用ノズルの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はC−C´線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 懸濁物質濾過装置
2 貯留槽
5 濾過フィルタ
5a 濾過面(懸濁物質付着面)
5c 中空部
8 排水パイプ
10 取付板
20 フィルタ洗浄用ノズル
21 筒状体
22 噴射口
23 反射板
23a 反射面
30 フィルタ洗浄用ノズル
31 筒状体
32,33 噴射口
34,35 反射板
34a,35a 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している水域から採集した懸濁水を濾過する濾過フィルタの懸濁物質付着面を洗浄するフィルタ洗浄用ノズルであって、
前記濾過フィルタの懸濁物質付着面に沿って配置され、洗浄液が導入される、先端が閉塞した筒状体と、
前記筒状体に設けられている、前記洗浄液を前記濾過フィルタの懸濁物質付着面とは異なる方向に噴射する噴射口と、
前記筒状体の表面から突出して設けられている、前記筒状体を囲むように湾曲しておりかつ前記濾過フィルタの懸濁物質付着面に近づくにつれて前記筒状体の表面から離れる方向に伸びている反射面を備えており、前記噴射口から噴射された洗浄液を前記反射面に反射させて前記濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散させる反射板と、
を備えていることを特徴とするフィルタ洗浄用ノズル。
【請求項2】
前記筒状体が直線状に伸びており、複数個の前記噴射口が前記筒状体の長軸方向に並んで設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ洗浄用ノズル。
【請求項3】
前記複数個の噴射口から噴射された洗浄液が、1枚の板体で構成された前記反射板により、前記濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散されることを特徴とする、請求項2に記載のフィルタ洗浄用ノズル。
【請求項4】
対向する懸濁物質付着面を有する2個の濾過フィルタの間に挿入され、
前記複数個の噴射口が、前記筒状体の長軸方向に2列に向かい合って設けられ、
一方の列の噴射口から噴射された洗浄液が、1枚の板体で構成された前記反射板により、一方の濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散され、
他方の列の噴射口から噴射された洗浄液が、別の1枚の板体で構成された前記反射板により、他方の濾過フィルタの懸濁物質付着面の方向に拡散され、
2個の濾過フィルタの懸濁物質付着面が同時に洗浄されることを特徴とする、請求項2に記載のフィルタ洗浄用ノズル。
【請求項5】
植物プランクトンを含む懸濁物質が滞留している水域から採集した懸濁水を濾過する濾過フィルタを備えた懸濁物質濾過装置であって、
前記懸濁水を蓄える貯留槽と、
前記貯留槽内に設置された、懸濁物質を付着させる濾過面と、濾液を導く中空部と、を有する濾過フィルタと、
前記濾過フィルタの中空部に導かれた濾液を前記貯留槽の外部に排出する排水パイプと、
前記濾過フィルタの濾過面を洗浄するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ洗浄用ノズルと、
を備えていることを特徴とする懸濁物質濾過装置。
【請求項6】
複数個の前記濾過フィルタが、懸濁物質が付着する濾過面を互いに隣接させて配置されており、全ての濾過フィルタの濾過面に沿って請求項2〜4のいずれか1項に記載の前記フィルタ洗浄用ノズルが配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の懸濁物質濾過装置。
【請求項7】
前記複数個の濾過フィルタにおける隣接する濾過面の間に、請求項4に記載のフィルタ洗浄用ノズルが配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の懸濁物質濾過装置。
【請求項8】
前記貯留槽が直方体形状を有しており、
前記複数個の濾過フィルタが、矩形の平板状濾過フィルタであり、各々の前記濾過フィルタにおける矩形状の濾過面が貯留槽の底面と垂直に配置されており、
前記フィルタ洗浄用ノズルは、前記筒状体が貯留槽の底面と垂直に伸びるように配置されており、前記複数の噴射口のうちの上端に配置された噴射口が前記濾過フィルタの濾過面の上端近傍の位置に、下端に配置された噴射口が前記濾過フィルタの濾過面の下端近傍の位置に、それぞれ設けられており、
前記複数個の濾過フィルタを支持する支持枠或いは前記貯留槽に取り付けられた、前記濾過フィルタの濾過面と平行な方向に移動可能な1個の取付板に、全てのフィルタ洗浄用ノズルが取り付けられており、
前記取付板の移動に伴って全てのフィルタ洗浄用ノズルが同時に移動することを特徴とする、請求項7に記載の懸濁物質濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−279389(P2008−279389A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126885(P2007−126885)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(594127330)中国高圧コンクリート工業株式会社 (37)
【出願人】(592217576)中村建設株式会社 (19)
【出願人】(593069897)モリリン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】