説明

フィルタ濾材

【課題】ダストふき落とし性にすぐれた長寿命フィルタ濾材を提供する。
【解決手段】ダスト負荷方向に対し、最上流側に0.05〜1μmの平均繊維径を有する細繊維層を配し、該細繊維層と基材層が積層された構造を有したフィルタ濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長寿命フィルタ濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中のダストを取り除く目的で使用されているフィルタ濾材において、ナノレベルの繊維径を有するシートを使用することで、低目付量で高清浄効率を有したフィルタ濾材を提供できることは従来から知られている。しかしながら、このようなシートを使用するとダスト負荷により目詰まりし易くなり、したがって一定終圧までに達する時間が短くなるので寿命が短くなり、フィルタ交換頻度を高くしなければならなくなるという問題があった。寿命向上対策として上流側にダストが保持されても圧損上昇が緩やかになるように嵩高いシートを積層したりする方法が開示されているが、シート厚みが厚くなりがちで、プリーツユニットにした場合に、構造圧損が大きくなり、したがってユニット全体の圧損も大きくなってしまい、結局、効果としては充分とは言えないものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、濾材剛性を高めることで、濾材単独、及びプリーツ形状のユニットとして使用しても、除塵性能、圧損を安定化する手法が開示されている。しかしながら、寿命面で満足のいく方法については開示されていない(例えば、特許文献2参照)。寿命向上の考え方として、上流側にダストに対して目詰まりし易い繊維層を配置することで、ダスト堆積後も、たたき落としやふき落としにより容易にダストが除かれ、その結果、再使用可能となり、長期間に渡る使用が可能となるという使い方も種々分野で展開されている。しかしながら繰り返し使用した場合、ダスト除去後の圧損は低減しにくくなり、つまり使用寿命の点では、充分満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―170224号公報
【特許文献2】特開2008―221073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ダストふき落とし性にすぐれた長寿命フィルタ濾材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のとおりである。
1.ダスト負荷方向に対し、最上流側に0.05〜1μmの平均繊維径を有する細繊維層を配し、該細繊維層と基材層が積層された構造を有したフィルタ濾材。
2.基材層が厚み方向に充填密度勾配を有した上記1に記載のフィルタ濾材。
3.基材層が厚み方向に細繊維層側から漸増するように充填密度勾配を有した上記1に記載のフィルタ濾材。
4.基材層と細繊維層の接触面が接着固定されている上記1〜3のいずれかに記載のフィルタ濾材。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ダスト負荷後も、ふき落とし等の作用によりダストふき落とし性に優れ、繰り返し使用可能なフィルタ濾材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】荷電紡糸装置の模式的な断面図である。
【図2】VDI3926準拠 クリーナブルフィルタ濾材・濾過性能評価装置の簡単な模式図である。
【図3】濾材構成の一例である。
【図4】図2に示した装置で測定した測定データ(実施例1、2、及び比較例1)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で細繊維層を構成する繊維は、ナノレベルの繊維径を有する方法であれば特に限定されないが、例えば、溶液紡糸法、溶融紡糸法による方法が挙げられる。溶液紡糸法には、荷電紡糸法、溶融紡糸には、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。素材としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−4メチル−1ペンテン、ポリ−3メチル−1ブテン、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルI−テルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、全芳香族ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体やそれらの混合物を用いることができる。その中でも荷電紡糸法が好ましい。以下荷電紡糸法により製造する方法について詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いる荷電紡糸法とは、溶液紡糸の一種であり、一般的には、ポリマー溶液にプラスの高電圧を与え、それがアースやマイナスに帯電した表面にスプレーされる過程で繊維化を起こさせる手法である。荷電紡糸装置の一例を図1に示す。図において、荷電紡糸装置1には、繊維の原料となるポリマーを吐出する紡糸ノズル2と紡糸ノズル2に対向して、対向電極5とが配置されている。この対向電極5はアースされている。高電圧をかけ荷電したポリマー溶液は、紡糸ノズル2から対極電極5に向けて飛び出す。その際、繊維化される。ポリマーを有機溶媒に溶解した溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を対向電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板に累積することによって不織布を得ることができる。ここでいう不織布とは既に溶液の溶媒が留去され、不織布となっている状態のみならず、溶液の溶媒を含んでいる状態も示している。
【0011】
溶媒を含んだ不織布の場合、荷電紡糸後に、溶剤除去を行う。溶剤を除去する方法としては、例えば、貧溶媒中に浸漬させ、溶剤を抽出する方法や熱処理により残存溶剤を蒸発させる方法などが挙げられる。
【0012】
溶液槽3としては、材質は使用する有機溶剤に対し耐性のあるものあれば特に限定されない。また、溶液槽3中の溶液は、機械的に押し出される方式やポンプなどにより吸い出される方式などによって、電場内に吐出することができる。
【0013】
紡糸ノズル2としては、内径0.1〜3mm程度のものが望ましい。ノズル材質としては、金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズルが金属製であればノズルを一方の電極として使用することができ、ノズル2が非金属製である場合には、ノズルの内部に電極を設置することにより、押し出した溶解液に電界を作用させることができる。生産効率を考慮し、ノズルを複数本使用することも可能である。また、一般的には、ノズル形状としては、円形断面のものを使用するが、ポリマー種や使用用途に応じて、異型断面のノズル形状を用いることも可能である。
【0014】
対向電極5としては、図1に示すロール状の電極や平板状、ベルト状の金属製電極など用途に応じて、種々の形状の電極を使用することができる。
【0015】
また、これまでの説明は、電極が繊維を捕集する基板を兼ねる場合であるが、電極間に捕集する基板となる物を設置することで、そこに繊維を捕集してもよい。この場合、例えばベルト状の基板を電極間に設置することで、連続的な生産も可能となる。
【0016】
また、一対の電極で形成されているのが一般的ではあるが、さらに異なる電極を導入することも可能である。一対の電極で紡糸を行い、さらに導入した電位の異なる電極によって、電場状態を制御し、紡糸状態を制御することも可能である。
【0017】
電圧印加装置4は特に限定されるものではないが、直流高電圧発生装置を使用できるほかヴァン・デ・グラフ起電機を用いることもできる。また、印加電圧は特に限定するものではないが、一般に3〜100kV、好ましくは5〜50kV、より好ましくは5〜30kVである。なお、印加電圧の極性はプラスとマイナスのいずれであっても良い。
【0018】
電極間の距離は、荷電量、ノズル寸法、紡糸液流量、紡糸液濃度等に依存するが、5〜120kVのときには5〜20cmの距離が好ましい範囲である。
【0019】
ポリマーの溶媒には、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸などの揮発性の高い溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、メチルホルマート、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、メチルプロピオネート、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホランなどの揮発性が相対的に低い溶媒が挙げられる。または、上記溶剤を2種以上混合させて用いることも可能である。
【0020】
紡糸をする雰囲気として、一般的には空気中で行うが、二酸化炭素などの空気よりも放電開始電圧の高い気体中で荷電紡糸を行うことで、低電圧での紡糸が可能となり、コロナ放電などの異常放電を防ぐこともできる。また、水がポリマーの貧溶媒である場合、紡糸ノズル近傍でのポリマー析出が起こる場合がある。そのため、空気中の水分を低下させるために、乾燥ユニットを通過させた空気中で行うことが好ましい。
【0021】
次に捕集基板に累積される細繊維層を得る段階について説明する。本発明においては、該溶液を捕集基板に向けて曳糸する間に、条件に応じて溶媒が蒸発して繊維状物質が形成される。通常の室温であれば捕集基板上に捕集されるまでの間に溶媒は完全に蒸発するが、もし溶媒蒸発が不十分な場合は減圧条件下で曳糸しても良い。この捕集基板上に捕集された時点で遅くとも本発明の繊維が形成されている。また、曳糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度に依存するが、通常は、0〜50℃である。
【0022】
本発明によって得られる細繊維層は、取扱性や用途に応じて、他の部材と組み合わせて使用される。例えば、捕集基板として基材層となりうる布帛(不織布、織物、編物)やフィルム、ドラム、ネット、平板、ベルト形状を有する、金属やカーボンなどからなる導電性材料、有機高分子などからなる非導電性材料を使用することができるが、廃棄性等も考慮すると、有機高分子系が好ましい。その上に細繊維層を形成することで、基材層と細繊維層を組み合わせた部材を作製することが出来る。
【0023】
本発明の細繊維層を構成する繊維には、紡糸によって得られる種々の特性を改善するものとして、無機もしくは有機フィラー等の添加剤を配合することもできる。
【0024】
本発明の細繊維層は平均繊維径が0.05〜1μmである繊維より形成される。繊維径が細く、繊維間距離も小さいため、極めて高いダスト清浄効率を期待できる。また、ダストがほとんど通過しなく、主に該繊維層上或いは繊維層内に溜まる。したがって使用後にダストをふき落とす、たたき落とす等の操作でダストを容易に取り除くことができ再生可能となる。平均繊維径が0.05μmより小さいと、自己支持性が乏しいため除塵性能、圧損の安定化という観点から好ましくない。また平均繊維径が1μmより大きいと、より多くのダストが下流側の基材シートへ通過してしまうためダスト負荷後のふき落とし性が悪くなり、したがって繰り返しの使用性、つまり再生性が悪くなるため、使用寿命が短くなってしまう。細繊維層を構成する繊維同士は、耐久性の観点からその接点を何らかの方法で接着されていることが好ましい。繊維同士の接着方法は、特に限定されないが繊維の溶融による接着、バインダー付与による接着等が挙げられる。
【0025】
細繊維層を構成する繊維自体は、当然ながら細繊維であるため剛性に乏しく、ダストを保持した後も、通風や、振動の影響により繊維の再飛散を起こしたり、繰り返し試験により繊維の損傷が発生しやすい。したがって、ダストが基材層まで抜けてくることもある。その場合に、急激な圧損上昇を抑制しつつ、基材層の最下流からのダスト抜けを防ぐ必要がある。このような背景から、基材層は、シート厚み方向で見た場合、細繊維層側表面の充填密度が低く、反対面が高い方が好ましい。より好ましくは細繊維層側からみて粗から密へ漸増するように充填密度勾配を持たせるのが好ましい。こうすることにより基材層での圧損上昇を抑制することができる。
【0026】
本発明の細繊維層の目付量は使用用途に応じて決められるものであり、特に限定されるものではないが、0.05〜10g/mであるのが好ましい。0.05g/m未満であると、フィルタ捕集効率が低く、10g/mを越えると、フィルタ通気抵抗が高くなりすぎるので好ましくない。
【0027】
本発明の細繊維層の厚みも使用用途に応じて決められるものであり、特に限定されるものではないが、1〜100μmであるのが好ましい。厚すぎると、プリーツユニットにした場合に、構造圧損が高くなり好ましくない。ここでいう厚みはマイクロメータで測定したものである。
【0028】
本発明の細繊維層は必要であれば、後処理を実施することができる。例えば、緻密化または厚み精度を整えるためのカレンダー処理や、更に、ダストふき落とし性を向上させるために、親水、親油性の高いダストが負荷されること想定される場合には、撥水、撥油剤を予め加工する等である。
【0029】
次に、細繊維層と積層する基材層について述べる。製法は問わないが、細繊維層との少なくとも接触面は、接着されていることが好ましい。機械的交絡等のみによる表面状態では、ふき落としの際に、細繊維層の繊維分も毛羽立ち易くなり、結果として繰り返し試験に充分耐えれるものではなくなってくる。例えば、細繊維層や基材層を構成する繊維に熱融着繊維を使用した場合はこれらの溶融固化による接着、あるいは新たに付与したバインダー成分による接着等の方法がある。
【0030】
基材層の製法としては、経済的観点から不織布が最も好適に使用可能である。不織布製法は、特に限定されないが、例えば、サーマルボンド法、エアレイド法、湿式抄紙法、スパンボンド法、メルトブローン法不織布などが挙げられる。特に、サーマルボンド法不織布、スパンボンド法不織布、湿式抄紙不織布を使用することが好ましい態様である。
【0031】
基材層を構成する繊維としては、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等の高分子からなる短繊維、長繊維を広く使用することができ、芯鞘型複合繊維、異種の繊維混合体としても使用することができる。
【0032】
本発明に用いる基材層の、細繊維層と接触している側の表面近傍の繊維の平均繊維径は、1〜50μmであり、好ましくは、10〜45μmであり、より好ましくは、15〜40μmである。1μm未満であると圧損が高くなり、50μmを越えると荷電紡糸時に細繊維が基材層の繊維間に入り込んでしまうので、細繊維層が凹凸状となり均一にならないばかりか、空隙ができるので捕集効率が低下する。なお、基材層は厚み方向で見た場合に前述したとおり、細繊維層側表面の充填密度が低く、反対面が高い方が好ましい。より好ましくは細繊維層側からみて粗から密への漸増するように充填密度勾配を持たせるようにするのが好ましい。ここで言う密度の高い面とは、シート表面付近で見た場合に単位体積あたりの繊維本数の多い、あるいは、バインダー成分等種々固形成分を含めた含有体積の大きい方であり、密度の粗い面とは逆に少ない側のことである。例えば、メルトブロー、スパンボンド法によるシート製造法であれば、紡糸時に捕集ネット面に接触している側が、反対面と比較し、毛羽も少なく、捕集ネットの跡が見られるようになるが、このような面も、ここで言う密度の高い面の範囲となる。湿式抄紙による製造法であれば、接触式ドライヤーで乾燥を施した場合に、例えば、シート片側のみドライヤーに直接接触させ乾燥させる方法であれば、ドライヤー接触面が、繊維、バインダー溶融が促進されるが、これも密度の高い面の範囲となる。また、前述したようにバインダー等の充填材をシート厚み方向に分布させることにより密度の粗い面、高い面を形成することも可能である。
【0033】
また、基材層の細繊維層側の平均繊維径は、細繊維層を構成する繊維の平均繊維径の1000倍以下がよく、より好ましくは700倍以下、さらに好ましくは500倍以下の繊維径である。繊維径が1000倍を越えると、紡糸時に極細繊維が補強用不織布の繊維間内に入り込み、均一な極細繊維を得るのが困難になる場合があり、ダスト負荷−ふき落とし性を繰り返した場合に、細繊維層の損傷が激しくなり、結果として再生性に劣るようになる。
【0034】
基材層の目付量は、30g/m以上であることが好ましく、より好ましくは60〜200g/mである。目付量が30g/m未満であると、濾材状態、或いはプリーツ品の腰強度が低下し、フィルタ形状としてしっかりとしたものができなくなることや、ダスト負荷−ふき落としを繰り返した場合に、フィルタ再生性に問題が生じる。
【0035】
基材層の厚みは、使用用途に応じて決められるものであり、特に限定されるものではないが、100〜6000μmであるのが好ましい。100μm未満であると、補強材としての強度が不十分となり、6000μmを越えるとプリーツ加工時の構造的な圧損が高くなり、好ましくない。
【0036】
基材層のガーレ法による剛軟度は、150mg以上であり、より好ましくは300〜20000mgである。150mg未満であるとプリーツ加工後にプリーツ形状が維持できず好ましくないのと同時に、プリーツユニットにおけるダスト負荷−ふき落としを繰り返した場合に、フィルタ変形が大きくなるため結果として早期の圧損上昇を招く。20000mgを超えると、プリーツ加工自体が難しくなり、強固な力を加えプリーツ加工を実施すれば、濾材自体にかかる負荷が大きくなり、繊維損傷等生じ好ましくない。本発明におけるガーレ法剛軟度とは、JIS L−1096:1999 8.19.1 A法(ガーレ法)に準拠して、測定したものをいう。
【0037】
本発明によって得られるフィルタ濾材の用途は、濾材単板あるいはプリーツ形状に加工することによって、空気清浄機用フィルタ、精密機器用フィルタ、自動車、列車等のキャビンフィルタ、エンジンフィルタ、およびビル空調用フィルタなど、各種エアフィルタ用途に用いることが出来る。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また以下の各実験例における評価項目は、以下のとおりの手法にて実施した。
【0039】
[平均繊維径]
SEM画像に映し出された多数の繊維からランダムに20本の繊維を選び、繊維径を測定した。測定した繊維径の平均値を算出し、平均繊維径とした。
【0040】
[剛軟度]
JIS L−1096:1999 8.19.1 A法(ガーレ法)に準拠して、測定した。
【0041】
[ダスト負荷−ふき落とし性能]
ドイツ規格、VDI3926準拠 クリーナブルフィルタ濾材・濾過性能評価装置(図2)を利用して実施した。
【0042】
サンプルサイズ、評価条件等は以下の通り。サンプルサイズ:140mmφ、ろ過速度:9cm/s、ダスト濃度:3.7g/m、ダスト種類:Pural NF、温度:30℃、ダスト払い落とし:1000Pa、エージング間隔:5s、パルス圧:0.2Mpa、バルブ開時間:60msec
(手順)
(1)サンプルを装着した段階で、ダストのない状態で、サンプルの持つ初期圧損Paを測定する。
(2)圧損が1000Paに達したときにダスト払い落としを行う。この操作を10回〜30回繰り返す。その時の、払い落とし直後の残留圧損Paを測定する。
【0043】
再生性に優れ、かつ安定しダスト負荷−払い落とし特性をもつ濾材とは、以下の(a)(b)(c)のような特性を有しているものである。
(a)ダスト負荷による圧損上昇が緩やかで、またパルスエア−によるダスト払い落とし後の圧損が、初期圧損に近い濾材。
(b)同回数(複数回)の試験で比較した場合、測定時間が長い濾材。
(c)サイクルタイム(測定回数毎の測定時間)の変化が小さい濾材
なお、結果は表1、図4にまとめた。
【0044】
また、基材層はSEMによる表裏表面観察を実施し、表面付近の表面密度差異を定性的ではあるが調査した。
【0045】
[実施例1]
図1に示すような荷電紡糸装置を使用して、基材層上に紡糸した。ポリマー溶液としては、ポリアミドイミドをN、N―ジメチルアセトアミドに溶解させた溶液を使用して繊維状物質捕集電極5にポリエステルサーマルボンド不織布(基材層)を貼り付け、吐出した。該サーマルボンド不織布は、ウェッブ形成後の熱処理温度を上下流に差異をつけることで表裏表面付近の繊維融着状態を変えたものであり、物性は、目付量100g/m、厚み0.2mm、剛軟度1540mg、及び荷電紡糸機によるポリマー塗布側の表面付近の平均繊維径は25μm(A面)、反対側の表面付近の平均繊維径は30μm(B面)である。また、表面付近のSEM観察によりB面の方が、A面より充填密度が低いことは定性的に観察できた。該B面表面にポリマーを吐出し、基材層に細繊維層を形成させた。得られた不織布の細繊維層の平均繊維径は0.13μm、目付量0.5g/mであった。更に、この不織布を図2に概要を示したVDI3926準拠のクリーナブルフィルタ濾材・濾過性能評価装置を使用してダスト負荷、及びパルスエアーによるふき落とし評価を実施した。
【0046】
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂をメルトブロー法により溶融紡糸させ、目付20g/m、平均繊維径4.0μm、厚み0.25mmのメルトブロー不織布を製造した。実施例1で使用したサーマルボンド不織布のB面側に、常温で粘着性のある繊維状樹脂3g/mを介して前記メルトブロー不織布を重ねた後、軽く押さえ、積層一体化した。これを実施例1同様にVDI3926準拠のクリーナブルフィルタ濾材・濾過性能評価装置を使用してダスト負荷、及びパルスエアーによるふき落とし評価を実施した。
【0047】
[実施例2]
図1に示すような荷電紡糸装置を使用して、基材層上に紡糸した。ポリマー溶液としては、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルが重量比7:3をジメチルホルムアミド/テトラヒドロフラン(体積比5:5)に溶解させ、ポリマー溶液を作製した。繊維状物質捕集電極5に目付量100g/m、片側の表面付近平均繊維径25μm(C面)、反対面の表面付近平均繊維径30μm(D面)、厚み0.4mm、剛軟度920mgのポリエステルスパンボンド不織布(基材層)をD面に荷電紡糸によるポリマーが塗布できるように貼り付けた。また、表面付近のSEM観察によりD面の方が、D面より充填密度が低いことは定性的に観察できた。荷電紡糸により得られた不織布の細繊維層の平均繊維径は0.28μm、目付量0.54g/mであった。更に、この不織布を図2に概要を示したVDI3926準拠のクリーナブルフィルタ濾材・濾過性能評価装置を使用してダスト負荷、及びパルスエアーによるふき落とし評価を実施した。
【0048】
[実施例3]
図1に示すような荷電紡糸装置を使用して、基材層上に紡糸した。ポリマー溶液としては、ナイロン樹脂を蟻酸に溶解し作製した。基材層は、セルロース繊維、及びポリビニルアルコール繊維を水に混合分散させ、除水し、円筒状ドライヤーで接触乾燥させ(抄紙法)、目付116g/m、片側表面付近平均繊維径30μm(E面)、反対面の表面付近平均繊維径20μm(F面)、厚み0.3mm、剛軟度2530mgのシートを作製した。また、SEMによる基材層表面観察によりE面の方がF面より低充填密度であることが定性的に確認された。E面に、前述のポリマー溶液を用いて荷電紡糸実施し、細繊維層を形成させた。得られた不織布の細繊維層の平均繊維径は0.18μm、目付量0.40g/mであった。更に、この不織布を図2に概要を示したVDI3926準拠のクリーナブルフィルタ濾材・濾過性能評価装置を使用してダスト負荷、及びパルスエアーによるふき落とし評価を実施した。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ダストふき落とし性にすぐれた長寿命フィルタ濾材を提供しようとするものであり、工業的、環境的価値の大きいものである。
【符号の説明】
【0051】
1 荷電紡糸装置
2 紡糸ノズル
3 溶液槽
4 高電圧電源
5 対向電極(捕集基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダスト負荷方向に対し、最上流側に0.05〜1μmの平均繊維径を有する細繊維層を配し、該細繊維層と基材層が積層された構造を有したフィルタ濾材。
【請求項2】
基材層が厚み方向に充填密度勾配を有した請求項1に記載のフィルタ濾材。
【請求項3】
基材層が厚み方向に細繊維層側から漸増するように充填密度勾配を有した請求項1に記載のフィルタ濾材。
【請求項4】
基材層と細繊維層の接触面が接着固定されている上記1〜3のいずれかに記載のフィルタ濾材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274144(P2010−274144A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126144(P2009−126144)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】