説明

フィルタ

【課題】低損失でかつ小型化の可能なフィルタを提供すること。
【解決手段】本発明は、複数の弾性波フィルタ12および14が縦続接続され、複数の弾性波フィルタのうち入力段が第1多重モードフィルタ12である第1弾性波フィルタ10と、複数の弾性波フィルタ22および14が縦続接続され、入力段が第1多重モードフィルタ12とは異なる開口長を有する第2多重モードフィルタ22であり、第1弾性波フィルタ12と同じ不平衡信号が入力し第1弾性波フィルタ10とは通過帯域が重ならない第2弾性波フィルタ20と、を具備するフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタに関し、特に並列接続された弾性表面波フィルタを有するフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。例えば、携帯電話端末においては、800MHz〜1.0GHz帯および1.5GHz〜2.0GHz帯といった高周波帯が使用されている。このような分野においては、弾性表面波フィルタ等の弾性波フィルタが用いられている。弾性波フィルタにおいて広帯域なフィルタが求められている。例えば、携帯電話端末において2つ以上の通信システムの通信帯域をカバーするマルチバンド用弾性波フィルタにおいては、広帯域なフィルタが求められる。
【0003】
しかしながら、2つ以上の帯域をカバーしかつ低損失なフィルタを実現することは難しい。そこで、複数の弾性波フィルタを並列に接続し、それぞれの弾性波フィルタが各通信システムの帯域をカバーするフィルタが用いられている。
【0004】
特許文献1には、2つの弾性波フィルタを用いた1入力2不平衡出力のフィルタが開示されている。また、特許文献2には、2つの弾性波フィルタを用いた1入力2平衡出力のフィルタが開示されている。1つの入力に対し並列に接続された2つの弾性波フィルタにおいて、それぞれの弾性波フィルタがそれぞれの通過帯域の信号を通過させ、通過帯域外の信号を遮断するためには、一方の弾性波フィルタが通過帯域となる帯域では他方の弾性波フィルタは高インピーダンスとなることが求められる。
【0005】
そこで、特許文献1および特許文献2においては、弾性波フィルタと入力(共通端子)との間に直列共振器を挿入することにより、一方の弾性波フィルタの通過帯域において他方の弾性波フィルタは高インピーダンスとなるようにインピーダンスを調整する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−68512号公報
【特許文献2】特許3480445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、直列共振器を挿入すると、直列共振器による挿入損失が生じる。また、小型化の妨げになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、低損失でかつ小型化の可能なフィルタを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の弾性波フィルタが縦続接続され、前記複数の弾性波フィルタのうち入力段が第1多重モードフィルタである第1弾性波フィルタと、複数の弾性波フィルタが縦続接続され、入力段が前記第1多重モードフィルタとは異なる開口長を有する第2多重モードフィルタであり、前記第1弾性波フィルタと同じ不平衡信号が入力し前記第1弾性波フィルタとは通過帯域が重ならない第2弾性波フィルタと、を具備することを特徴とするフィルタである。本発明によれば、2つの多重モードフィルタの開口長を調整することにより、簡単にインピーダンスをマッチングさせることができる。さらに、直列共振子が不要となり低損失、小型化が可能となる。
【0009】
上記構成において、前記第1弾性波フィルタおよび前記第2弾性波フィルタの少なくとも一方は平衡出力である構成とすることができる。また、上記構成において、前記平衡出力の2つの出力信号は位相が180°異なる構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1弾性波フィルタの入力と前記第2弾性波フィルタの入力とが接続されたノードを具備する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記ノードと前記不平衡信号が入力する共通端子との間に整合回路を具備する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記整合回路は前記ノードとグランドとの間に接続されたインダクタである構成とすることができる。この構成によれば、簡単に整合回路を構成することができる。
【0013】
上記構成において、前記第1弾性波フィルタと前記第2弾性波フィルタとを実装するパッケージを具備し、前記第1弾性波フィルタの入力と前記第2弾性波フィルタの入力とを接続する配線は、前記パッケージに形成されている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1弾性波フィルタと前記第2弾性波フィルタとは同一圧電基板上に形成されている構成とすることができる。この構成によれば、実装面積を削減することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1弾性波フィルタと前記第2弾性波フィルタとを実装するパッケージを具備し、前記第1弾性波フィルタおよび前記第2弾性波フィルタの少なくとも一方が形成された圧電基板は、前記パッケージにフリップチップ実装されている構成とすることができる。この構成によれば、実装面積を削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2つの多重モードフィルタの開口長を調整することにより、簡単にインピーダンスをマッチングさせることができる。さらに、直列共振子が不要となり低損失、小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1の平面模式図である。なお、図1においては、各IDTおよび反射器の電極指の数を省略して少なく示している。以下の図面においても同様である。図1を参照に、実施例1に係るフィルタは、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20を有している。第1弾性波フィルタ10は、不平衡入力端子In(共通端子)に入力した信号を平衡出力端子Out11およびOut12に出力する。また、第2弾性波フィルタ20は、第1弾性波フィルタ10と共通の入力端子Inに入力した信号を平衡出力端子Out21およびOut22に出力する。
【0019】
第1弾性波フィルタ10は、入力段の第1多重モードフィルタ12と出力段の多重モードフィルタ14とが縦続接続されている。第1多重モードフィルタ12は、入力IDT(Interdigital Transducer)17の両側に2つの出力IDT16、出力IDT16の両側にそれぞれ反射器R12が配置されている。入力IDT17には入力端子Inから入力信号が入力し、出力IDT16から多重モードフィルタ14に信号が出力される。多重モードフィルタ14は、出力IDT19の両側に2つの入力IDT18および18a、入力IDT18および18aの外側にそれぞれ反射器R14が配置されている。第1多重モードフィルタ12の2つの出力はそれぞれ多重モードフィルタ14の2つの入力IDT18およびIDT18aに入力する。多重モードフィルタ14の入力IDT18とIDT18aとは電極指の配置が異なる。これにより、出力IDT19からは180°位相の異なる2つの平衡出力信号が、出力端子Out11およびOut12に出力される。
【0020】
第2弾性波フィルタ20は入力段の第2多重モードフィルタ22および出力段の多重モードフィルタ24が縦続接続されている。2つの多重モードフィルタ22および24の構成はそれぞれ多重モードフィルタ12および14と同様であり説明を省略する。第1多重モードフィルタ12の開口長L1と第2多重モードフィルタ22の開口長L2とは異なっている。開口長とは、IDT内の上下の電極指が重なる長さである。
【0021】
第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20は同一の圧電基板50上に設けられており、各IDT16からIDT29並びに反射器R12からR24は圧電基板50上に形成された金属膜からなる。
【0022】
実施例1に係るフィルタにおける第1多重モードフィルタ12の開口長L1と第2多重モードフィルタ22の開口長L2との関係について説明する。図2は実施例1に係るフィルタの入力端子Inを共通とする前のブロック図である。すなわち、第1弾性波フィルタ10は不平衡入力端子In1と平衡出力端子Out11およびOut12とを有している。同様に、第2弾性波フィルタ20は不平衡入力端子In2と平衡出力端子Out21およびOut22とを有している。
【0023】
図3は、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の入力側インピーダンスのスミスチャートである。F1およびF2はそれぞれ第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の入力側信号を示している。入力側信号F1のうち第2弾性波フィルタ20の通過帯域をBW2、入力側信号F2のうち第1弾性波フィルタ10の通過帯域をBW1で示している。通過帯域BW1の周波数と通過帯域BW2の周波数とは重なっていない。このため、仮に第1弾性波フィルタ10と第2弾性波フィルタ20との入力インピーダンス(特にリアクタンス成分)がほぼ同じであれば、信号F1のうち帯域BW2の位相と信号F2のうち帯域BW1の位相とは異なってしまう。実施例1によれば、第1弾性波フィルタ10と第2弾性波フィルタ20との第1多重モードフィルタ12の開口長L1と第2多重モードフィルタ22の開口長L2とを調整することにより、入力側信号F1のうち帯域BW2の位相と入力側信号F2のうち帯域BW1の位相とがほぼ重なっている。すなわち、開口長L1とL2とが異なることにより、第1弾性波フィルタ10と第2弾性波フィルタ20とのリアクタンス成分(特に容量成分)を異ならせる。これにより、信号F1とF2との位相を調整することができる。
【0024】
図4を参照に、フィルタ100は、第1弾性波フィルタ10の入力端子In1と第2弾性波フィルタ20の入力端子In2とが接続されたノードN1を有する。ノードN1は共通の入力端子Inに接続されている。さらに、フィルタ100は、入力端子Inと並列に接続された整合回路であるインダクタL0を有する。これにより、フィルタ100において、入力端子Inに入力した1つの入力信号のうち第1弾性波フィルタ10の通過帯域BW1の信号を出力端子Out11およびOut12に出力し、第2弾性波フィルタ20の通過帯域BW2の信号を出力端子Out21およびOut22に出力することができる。
【0025】
図5(a)および図5(b)は、フィルタ100の入力端子Inにそれぞれ帯域BW1および帯域BW2の信号が入力したときの等価回路である。図5(a)を参照に、第1弾性波フィルタ10の通過帯域BW1の信号に対し、第2弾性波フィルタ20の等価回路は並列に接続された容量C2である。図5(b)を参照に、第2弾性波フィルタ20の通過帯域BW2の信号に対し、第1弾性波フィルタ10の等価回路は並列に接続された容量C1である。
【0026】
図6はフィルタ100の入力端子Inから見た第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の入力側インピーダンスを示すスミスチャートである。入力端子Inに並列に接続されたインダクタL0により、容量C1またはC2による容量成分を打ち消し、信号F1の帯域BW2と信号F2の帯域BW1との位相をほぼ0°とすることができる。図3において、信号F1の帯域BW2および信号F2の帯域BW1の位相は重なっているため、図6において、信号F1の帯域BW2および信号F2の帯域BW1の位相は重なった状態でともに位相をほぼ0°にすることができる。
【0027】
図7はフィルタ100の入力端子Inに第1弾性波フィルタ10の通過帯域BW1の信号を入力した場合の模式図である。図8(a)および図8(b)は、図5(a)および図5(b)の回路において、入力端子Inから見たそれぞれ第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の入力側インピーダンスのスミスチャートである。図8(a)を参照に、信号F1の帯域BW1の信号はスミスチャートの中心近傍にある。すなわち、第1弾性波フィルタ10の反射係数はほぼ0でありインピーダンスマッチングされた状態である。図8(b)を参照に、信号F2の帯域BW1の信号は位相がほぼ0°であり、スミスチャートの周辺に位置している。つまり、第2弾性波フィルタ20は高インピーダンス状態である。このため、図7のように、帯域BW1の信号は、第1弾性波フィルタ10を通過し、第2弾性波フィルタ20では遮断される。これにより、帯域BW1の信号は第2弾性波フィルタ20から漏洩しないため、第1弾性波フィルタ10の挿入損失を向上させることができる。
【0028】
図9はフィルタ100の入力端子Inに第2弾性波フィルタ20の通過帯域BW2の信号を入力した場合の模式図である。図10(a)および図10(b)は、図5(a)および図5(b)の回路において、入力端子Inから見たそれぞれ第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の入力側インピーダンスのスミスチャートである。図10(a)および図10(b)を参照に、帯域BW2では、第1弾性波フィルタ10は高インピーダンス状態であり、第2弾性波フィルタ20はインピーダンスマッチングされた状態である。よって、図9のように、帯域BW2の信号は、第2弾性波フィルタ20を通過し、第1弾性波フィルタ10では遮断される。
【0029】
実施例1によれば、図1のように、同じ不平衡信号が入力し、通過帯域が重ならない第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20において、それぞれ初段の第1多重モードフィルタ12の開口長L1と第2多重モードフィルタ22の開口長L2とが異なっている。これにより、開口長L1とL2とを調整することにより、図3のように、信号F1の帯域BW2の位相と信号F2の帯域BW1の位相とを重ねることができる。よって、図6のように、整合回路としてインダクタL0を接続した際に、信号F1の帯域BW2と信号F2の帯域BW1との位相をともにほぼ同じ位相のまま簡単にインピーダンスをマッチングさせることができる。さらに、特許文献1および特許文献2のように、直列共振子が不要なため低損失、小型化が可能となる。
【0030】
図11は、フィルタ100において、第1弾性波フィルタ10の入力側信号F1の帯域BW2の位相に対する第2弾性波フィルタ20の挿入損失の計算値を示す図である。図11を参照に、信号F1の帯域BW2の位相は0°であるとき挿入損失は最も小さい。つまり、第1弾性波フィルタ10の通過帯域BW1の信号は、第2弾性波フィルタ20から最も漏洩しない。信号F1の帯域BW2の位相が0°から離れると、挿入損失は大きくなる。信号F1の帯域BW2の位相が0°の挿入損失に対し挿入損失の劣化を−0.2dB以下に抑えるためには、信号F1の帯域BW2の位相は−120°以上120°以下が好ましい。さらに、挿入損失の劣化を−0.1dB以下に抑えるためには、信号F1の帯域BW2の位相は−100°以上100°以下がより好ましい。信号F2の帯域BW1の位相についても同様である。
【0031】
図12はフィルタ100において、第1弾性波フィルタ10の入力側信号F1の帯域BW2の反射係数Γに対する第2弾性波フィルタ20の挿入損失の計算値を示す図である。反射係数Γが大きいと挿入損失は小さくなる。反射係数は0.75以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。信号F2の帯域BW1の反射係数についても同様である。
【0032】
図6のように、インダクタL0を接続した際に、信号F1の帯域BW2と信号F2の帯域BW1との位相をともにほぼ同じ位相のまま簡単にインピーダンスをマッチングさせるためには、信号F1の帯域BW2の位相と信号F2の帯域BW1の位相とは少なくとも一部が重なっていればよい。また、信号F1の帯域BW2と信号F2の帯域BW1との一方の位相は他方の位相と全て重なっていることがより好ましい。
【0033】
図13のように、第1弾性波フィルタ10の入力端子In1と第2弾性波フィルタ20の入力端子In2とが接続されたノードN1と入力端子In(共通端子)との間に整合回路31を有していることが好ましい。整合回路31としては、図3から図6のように、帯域BW1および帯域BW2の位相を変換する機能を有していればよい。しかしながら、図5(a)および図5(b)のように、入力端子Inとグランドとの間に等価的に接続される容量C1およびC2の成分を打ち消すためには、整合回路31はインダクタンス成分であることが好ましい。よって、図4のように、整合回路31はノードN1とグランドとの間に接続されたインダクタL0であることが好ましい。
【0034】
第1弾性波フィルタ10と第2弾性波フィルタ20とは別の圧電基板上に設けられていてもよいが、図1のように、第1弾性波フィルタ10と第2弾性波フィルタ20とは同一圧電基板50上に形成されていることが好ましい。これにより、実装面積を削減することができる。圧電基板50としては、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムを用いることができる。
【0035】
図14は実施例1に係るフィルタ100の断面模式図、図15はフィルタ100の模式図である。図14を参照に、フィルタ100は、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20が形成された圧電基板50、パッケージ51からなる。パッケージ51はパッケージ基板52と外装部54とからなる。圧電基板50はバンプ58を用いパッケージ基板52にフリップチップ実装されている。圧電基板50は外装部54により覆われている。このように、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20はパッケージ51に実装されている。
【0036】
図15を参照に、圧電基板50に形成された第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20のそれぞれの入力端子In1およびIn2はパッケージ51に接続される。パッケージ51内では入力端子In1とIn2とが入力端子Inに配線59で接続されている。図14を参照に、入力端子In1およびIn2とパッケージ51とはバンプ58を介し接続される。入力端子In1およびIn2と入力端子Inとを接続する配線59は、パッケージ基板52上に金属膜で形成される。
【0037】
第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20はパッケージにフェースアップで実装されていてもよいが、図14のように、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の少なくとも一方はパッケージ51にフリップチップ実装されていることが好ましい。さらに、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の両方がパッケージ51にフリップチップ実装されていることが一層好ましい。これにより実装面積を削減することができる。
【0038】
実施例1においては、図15のように、第1弾性波フィルタ10の入力端子In1と第2弾性波フィルタ20の入力端子In2とを接続する配線59は、パッケージ51に形成されている。また、入力端子In、出力端子Out11からOut22はパッケージ51に設けられたフットパッド、入力端子In1およびIn2は圧電基板50に設けられたパッドである。しかしながら、入力端子Inおよび出力端子Out11からOut22は圧電基板50上に設けられたパッドであってもよい。つまり、入力端子In1およびIn2と入力端子Inとを接続する配線は圧電基板50に形成されていてもよい。
【実施例2】
【0039】
図16は実施例2に係るフィルタの平面模式図である。実施例1の図1と比較し、第1弾性波フィルタ10bにおいて、第1多重モードフィルタ12bの出力IDT16とIDT16aの電極指の配置が異なる。一方、多重モードフィルタ14bの2つの入力IDT18の電極指の配置は同じである。第2弾性波フィルタ20bにおいても同様である。実施例2においても、出力端子Out11およびOut12には平衡出力信号が出力される。
【実施例3】
【0040】
実施例1および実施例2においては、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の両方が平衡出力する場合を例に説明した。図17(a)のように、第1弾性波フィルタ10は出力端子Out11およびOut12に平衡出力し、第2弾性波フィルタ20aは出力端子Out2に不平衡出力してもよい。また、図17(b)のように、第1弾性波フィルタ10aは出力端子Out2に不平衡出力し、第2弾性波フィルタ20は出力端子Out21およびOut21に平衡出力してもよい。さらに、図17(c)のように、第1弾性波フィルタ10aおよび第2弾性波フィルタ20aはそれぞれ出力端子Out1およびOut2に不平衡出力してもよい。
【0041】
図18から図20は、平衡出力する第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の例である。
【0042】
図18を参照に、弾性波フィルタ10cは、5つのIDTを有する多重モードフィルタ12cと5つのIDTを有する多重モードフィルタ14cとが縦列接続されている。多重モードフィルタ12cは2つの入力IDT31と3つの出力IDT30および32とを有している。多重モードフィルタ14cは3つの入力IDT33、33aおよび35と2つの出力IDT34とを有している。多重モードフィルタ12cの入力IDT31には入力端子In1が接続されている。多重モードフィルタ12cの3つの出力IDT30および32と多重モードフィルタ14cの3つの入力IDT33、33aおよび35とがそれぞれ接続されている。多重モードフィルタ14cの2つの出力IDT34はそれぞれ平衡出力端子Out11およびOut12に接続されている。
【0043】
図19を参照に、弾性波フィルタ10dは、3つのIDTを有する多重モードフィルタ12dと5つのIDTを有する多重モードフィルタ14dとが縦列接続されている。多重モードフィルタ12dは実施例2の図16の多重モードフィルタ12bと同じであり説明を省略する。多重モードフィルタ14dは2つの入力IDT37と3つの出力IDT36および38とを有している。多重モードフィルタ12dの入力IDT17には入力端子In1が接続されている。多重モードフィルタ12dの2つの出力IDT16と多重モードフィルタ14dの2つの入力IDT37とがそれぞれ接続されている。多重モードフィルタ14dの出力IDT36および38はそれぞれ平衡出力端子Out11およびOut12に接続されている。
【0044】
図20を参照に、弾性波フィルタ10fは、2つの弾性波フィルタ10eが入力端子In1に並列に接続されている。各弾性波フィルタ10eは、3つのIDTを有する多重モードフィルタ12eまたは12fと3つのIDTを有する多重モードフィルタ14eとが縦列接続されている。多重モードフィルタ12eおよび12fはそれぞれ1つの入力IDT42および42aと2つの出力IDT41とを有する。多重モードフィルタ14eは2つの入力IDT43と1つの出力IDT44とを有している。多重モードフィルタ12eの入力IDT42および42aには入力端子In1が接続されている。多重モードフィルタ12eの2つの出力IDT41と多重モードフィルタ14eの2つの入力IDT43とがそれぞれ接続されている。多重モードフィルタ14eのそれぞれの出力IDT44はそれぞれ平衡出力端子Out11およびOut12に接続されている。
【0045】
図21から図24は、不平衡出力する第1弾性波フィルタ10aおよび第2弾性波フィルタ20aの例である。
【0046】
図21を参照に、弾性波フィルタ10gは、3つのIDTを有する多重モードフィルタ12gと3つのIDTを有する多重モードフィルタ14gとが縦列接続されている。多重モードフィルタ12gおよび多重モードフィルタ14gは図20に図示したそれぞれ多重モードフィルタ12eおよび多重モードフィルタ14eと同じ構成であり説明を省略する。多重モードフィルタ12gの入力IDT42は不平衡入力端子In1に接続され、多重モードフィルタ14gの出力IDT44は不平衡出力端子Out1に接続されている。
【0047】
図22を参照に、弾性波フィルタ10hは、5つのIDTを有する多重モードフィルタ12hと5つのIDTを有する多重モードフィルタ14hとが縦列接続されている。多重モードフィルタ12hは図18に図示した多重モードフィルタ12cと同じ構成であり説明を省略する。多重モードフィルタ14hは3つの入力IDT33および35aと2つの出力IDT34とを有している。多重モードフィルタ12hの入力IDT31は不平衡入力端子In1に接続されている。多重モードフィルタ12hの3つの出力IDT30および32はそれぞれ多重モードフィルタ14hの3つの入力IDT33および35aに接続されている。多重モードフィルタ14hの出力IDT34は不平衡出力端子Out1に接続されている。
【0048】
図23を参照に、弾性波フィルタ10iは、3つのIDTを有する多重モードフィルタ12iと5つのIDTを有する多重モードフィルタ14iとが縦列接続されている。多重モードフィルタ12iは実施例1の図1に図示した第1多重モードフィルタと同じ構成であり説明を省略する。多重モードフィルタ14iは図22に図示した多重モードフィルタ14hと同じ構成であり説明を省略する。多重モードフィルタ12iの1つの入力IDT17は不平衡入力端子In1に接続されている。多重モードフィルタ12iの2つの出力IDT16は共通に接続され多重モードフィルタ14iの3つの入力IDT33および35aに接続されている。多重モードフィルタ14iの出力IDT34は不平衡出力端子Out1に接続されている。
【0049】
図24を参照に、弾性波フィルタ10kは、2つの多重モードフィルタ10jが並列に接続されている。各多重モードフィルタ10jは、3つのIDTを有する多重モードフィルタ12jと3つのIDTを有する多重モードフィルタ14jとが縦列接続されている。各多重モードフィルタ12jは1つの入力IDT42と2つの出力IDT41とを有する。各多重モードフィルタ14jは2つの入力IDT43と1つの出力IDT44とを有する。各多重モードフィルタ12jの入力IDT42は不平衡入力端子In1に接続されている。各多重モードフィルタ12iの2つの出力IDT41はそれぞれ各多重モードフィルタ14jの2つの入力IDT43に接続されている。各多重モードフィルタ14jの出力IDT44は不平衡出力端子Out1に接続されている。
【0050】
図18から図20に示したフィルタは図2、図17(a)および図17(b)の平衡出力する第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20に用いることができる。このように、第1弾性波フィルタ10および前記第2弾性波フィルタ20の少なくとも一方は平衡出力である構成とすることができる。2つの平衡出力の出力信号は位相が180°異なっている。また、図21から図24に示したフィルタは図17(a)から図17(c)の不平衡出力する第1弾性波フィルタ10aおよび第2弾性波フィルタ20aに用いることができる。このように、第1弾性波フィルタ10aおよび前記第2弾性波フィルタ20aの少なくとも一方は不平衡出力である構成とすることができる。
【0051】
出力が不平衡出力の場合も平衡出力の場合も、第1弾性波フィルタ10の初段の第1多重モードフィルタ12の開口長L1と第2弾性波フィルタ20の初段の第2多重モードフィルタ14の開口長L2とを異ならせることにより、図3のように、信号F1の帯域BW2の位相と信号F2の帯域BW1の位相とを重ねることができる。
【0052】
第1弾性波フィルタ10、10aおよび第2弾性波フィルタ20、20aはそれぞれ図20および図24のように複数の弾性波フィルタが並列接続されていてもよい。また、第1弾性波フィルタ10、10aおよび第2弾性波フィルタ20、20aは、複数の弾性波フィルタが縦続接続され、複数の弾性波フィルタのうち入力段が多重モードフィルタであればよい。
【0053】
さらに、第1弾性波フィルタ10および第2弾性波フィルタ20の2つの弾性波フィルタが並列に接続する例であったが、3以上の複数の弾性波フィルタが並列に接続されていてもよい。3以上の複数の弾性波フィルタが並列接続された場合は、複数の弾性波フィルタのうち少なくとも2つの弾性波フィルタの初段の多重モードフィルタの開口長が異なっていればよい。弾性波フィルタとしては、弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタを用いることができる。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は実施例1に係るフィルタの平面模式図である。
【図2】図2は実施例1に係るフィルタの入力端子を共通とする前のブロック図である。
【図3】図3は、第1弾性波フィルタおよび第2弾性波フィルタの入力側インピーダンスのスミスチャートである。
【図4】図4は実施例1に係るフィルタのブロック図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は実施例1に係るフィルタの等価回路である。
【図6】図6は実施例1に係るフィルタを入力端子からみたとき第1弾性波フィルタおよび第2弾性波フィルタのS11のスミスチャートである。
【図7】図7は第1弾性波フィルタを通過する周波数帯域の信号が入力した場合を示す図である。
【図8】図8(a)および図8(b)は入力端子からみたときのそれぞれ第1弾性波フィルタおよび第2弾性波フィルタのS11のスミスチャートである。
【図9】図9は第2弾性波フィルタを通過する周波数帯域の信号が入力した場合を示す図である。
【図10】図10(a)および図10(b)は入力端子からみたときのそれぞれ第1弾性波フィルタおよび第2弾性波フィルタのS11のスミスチャートである。
【図11】図11は第2弾性波フィルタの通過帯域の位相に対する第2弾性波フィルタの挿入損失を示す図である。
【図12】図12は第2弾性波フィルタの通過帯域の反射係数に対する第2弾性波フィルタの挿入損失を示す図である。
【図13】図13は整合回路を有する例のブロック図である。
【図14】図14は実施例1に係るフィルタの断面模式図である。
【図15】図15はフィルタの模式図である。
【図16】図16は実施例2に係るフィルタの平面模式図である。
【図17】図17(a)から図17(c)はフィルタが不平衡出力を有する例である。
【図18】図18は平衡出力する弾性波フィルタの例(その1)である。
【図19】図19は平衡出力する弾性波フィルタの例(その2)である。
【図20】図20は平衡出力する弾性波フィルタの例(その3)である。
【図21】図21は不平衡出力する弾性波フィルタの例(その1)である。
【図22】図22は不平衡出力する弾性波フィルタの例(その2)である。
【図23】図23は不平衡出力する弾性波フィルタの例(その3)である。
【図24】図24は不平衡出力する弾性波フィルタの例(その4)である。
【符号の説明】
【0056】
10、10a 第1弾性波フィルタ
12 第1多重モードフィルタ
14 多重モードフィルタ
20、20a 第2弾性波フィルタ
22 第2多重モードフィルタ
24 多重モードフィルタ
32 整合回路
40 パッケージ
49 配線
In 入力端子
Out11、Out12 出力端子
Out21、Out22 出力端子
L0 インダクタ
N1 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の弾性波フィルタが縦続接続され、前記複数の弾性波フィルタのうち入力段が第1多重モードフィルタである第1弾性波フィルタと、
複数の弾性波フィルタが縦続接続され、入力段が前記第1多重モードフィルタとは異なる開口長を有する第2多重モードフィルタであり、前記第1弾性波フィルタと同じ不平衡信号が入力し前記第1弾性波フィルタとは通過帯域が重ならない第2弾性波フィルタと、を具備することを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記第1弾性波フィルタおよび前記第2弾性波フィルタの少なくとも一方は平衡出力であることを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記平衡出力の2つの出力信号は位相が180°異なることを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第1弾性波フィルタの入力と前記第2弾性波フィルタの入力とが接続されたノードを具備することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のフィルタ。
【請求項5】
前記ノードと前記不平衡信号が入力する共通端子との間に整合回路を具備する請求項4記載のフィルタ。
【請求項6】
前記整合回路は前記ノードとグランドとの間に接続されたインダクタであることを特徴とする請求項5記載のフィルタ。
【請求項7】
前記第1弾性波フィルタと前記第2弾性波フィルタとを実装するパッケージを具備し、
前記第1弾性波フィルタの入力と前記第2弾性波フィルタの入力とを接続する配線は、前記パッケージに形成されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載のフィルタ。
【請求項8】
前記第1弾性波フィルタと前記第2弾性波フィルタとは同一圧電基板上に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1弾性波フィルタと前記第2弾性波フィルタとを実装するパッケージを具備し、
前記第1弾性波フィルタおよび前記第2弾性波フィルタの少なくとも一方が形成された圧電基板は、前記パッケージにフリップチップ実装されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−172543(P2008−172543A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3930(P2007−3930)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【Fターム(参考)】