説明

フィルムコンデンサ

【課題】フィルムコンデンサにおいて、半田付けによる損失係数の増大を抑制する。
【解決手段】両面に金属がそれぞれ蒸着された第1及び第2金属化フィルム21,22を巻回し、巻回状態の第1及び第2金属化フィルム21,22の両側端面に、第1及び第2メタリコン電極11,12をそれぞれ設ける。第1金属化フィルム21は、第2金属化フィルム22よりもフィルムの融点を高くする。そして、第1金属化フィルム21には、第1メタリコン電極11に埋設されて一方の金属面を該第1メタリコン電極11に導通させる第1接続部21dを一方の側縁側に設け、第2メタリコン電極12に埋設されてもう一方の金属面を該第2メタリコン電極12に導通させる第2接続部21eをもう一方の側縁側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面に金属膜を有した金属化フィルムを巻回したフィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置では、インバータ回路などに供給する直流電圧を平滑する平滑コンデンサが用いられることが多い。この平滑化コンデンサには、電解コンデンサが用いられることが多かったが、近年では、電解コンデンサからフィルムコンデンサへの置き換えが急速に進んでいる。これは、電解コンデンサは、高温で寿命が大きく低下するので、インバータ回路では交換対象部品であるのに対し、フィルムコンデンサにはこのような寿命低下がなく、平滑コンデンサとしてフィルムコンデンサを用いるとメンテナンスが容易になると考えられるからである。
【0003】
一般的に、フィルムコンデンサのフィルム(誘電体材料)には、ポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられることがほとんどである。しかしながら、これら誘電体材料は誘電率が3程度で、電解コンデンサと同容量のコンデンサを構成するには、体積が10倍から100倍になってしまう可能性がある。そのため、高誘電率の誘電体材料を用いたフィルムコンデンサ用材料(金属化フィルム)のニーズが高まっている。ところが、高誘電率のフィルムの片面に金属を蒸着し、これを巻回してフィルムコンデンサを構成すると、フィルムの表面が平滑でないと、電極間に空気層ができて、せっかく高誘電率のフィルムを用いても所望の容量を得るのが難しい場合がある。
【0004】
これに対しては、フィルムの両面に金属を蒸着した両面金属化フィルムを用いると、空気層の影響をなくすことが可能になる。両面金属化フィルムを用いたコンデンサとしては、一例として特許文献1や特許文献2に記載のものが挙げられる。これらの例では、両面金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサでは、巻回状態のフィルムの両側端面にメタリコン電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−367853号公報
【特許文献2】特開平2−28915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルムコンデンサのなかには、メタリコン電極にリード線を半田付けすると、半田付け前と比べ、損失係数が増大する場合があることを本願発明者は見出した。本願発明者が検証したところ、これは、半田付けの熱によって、フィルムの金属面とメタリコン電極との接触状態が悪化(接触抵抗が増大)するためと考えられる。特に、前記高誘電率のフィルムは、一般的なPP などよりも融点が低い傾向があり、高誘電率のフィルムを用いたフィルムコンデンサでは損失係数がより大きくなる傾向がある。
【0007】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、フィルムコンデンサにおいて、半田付けによる損失係数の増大を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
両面に金属が蒸着された第1金属化フィルム(21)と、
両面に金属が蒸着され、前記第1金属化フィルム(21)と重ね合わせられて、該第1金属化フィルム(21)とともに巻回された第2金属化フィルム(22)と、
巻回状態の前記第1及び第2金属化フィルム(21,22)の両側端面にそれぞれ設けられた第1及び第2メタリコン電極(11,12)と、
を備え、
前記第1金属化フィルム(21)は、前記第2金属化フィルム(22)よりもフィルムの融点が高く、前記第1メタリコン電極(11)に埋設されて一方の金属面を該第1メタリコン電極(11)に導通させる第1接続部(21d)が一方の側縁側に設けられるとともに、前記第2メタリコン電極(12)に埋設されてもう一方の金属面を該第2メタリコン電極(12)に導通させる第2接続部(21e)がもう一方の側縁側に設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、第1及び第2メタリコン電極(11,12)とコンデンサの電極(フィルムの金属面)との接続は、第1金属化フィルム(21)側の金属面が担うことになる。そして、第1金属化フィルム(21)は、前記第2金属化フィルム(22)よりもフィルムの融点が高いので、例えばメタリコン電極(11,12)にリード線などが半田付けされて、フィルムコンデンサに熱が加わっても、その熱による収縮量は、第2金属化フィルム(22)に比べ、第1金属化フィルム(21)の方が小さい。
【0010】
また、第2の発明は、
第1の発明のフィルムコンデンサにおいて、
前記第2金属化フィルム(22)は、金属面と前記第1及び第2メタリコン電極(11,12)との接続部を有していないことを特徴とする。
【0011】
この構成では、第2金属化フィルム(22)は、金属面と前記第1及び第2メタリコン電極(11,12)との接続部を有していないので、第1及び第2メタリコン電極(11,12)に熱が加わったとしても、その熱の伝導量は、第1金属化フィルム(21)と比べ、きわめて小さく、第2フィルム体(22a)の熱収縮量は従来のフィルムコンデンサと比べ小さい。しかも、第1金属化フィルム(21)の金属面が各メタリコン電極(11,12)と電気的に接続されているので、第2金属化フィルム(22)の金属膜(22b,22c)がメタリコン電極(11,12)と直接的に接触していなくても差支えがない。すなわち、半田付けなどの、メタリコン電極(11,12)からの熱による第2金属化フィルム(22)の収縮は、許容され得る。
【0012】
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明のフィルムコンデンサにおいて、
前記第1及び第2メタリコン電極(11,12)には、リード線(15)がそれぞれ半田付けされ、
前記第1金属化フィルム(21)の融点は、前記半田付けの際の温度よりも高いことを特徴とする。
【0013】
この構成では、第1金属化フィルム(21)の融点は、前記半田付けの際の温度よりも高いので、リード線(15)をそれぞれのメタリコン電極(11,12)に半田付けしても、第1金属化フィルム(21)が熱収縮することがほとんどない。
【0014】
また、第4の発明は、
第1から第3の発明のうちの何れか1つにおいて、
前記第2金属化フィルム(22)は、高誘電材料で形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成では、第2金属化フィルム(22)が高誘電材料で形成されているので、単位体積あたりの容量を高めることが可能、すなわちフィルムコンデンサの小型化が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、コンデンサの電極(フィルムの金属面)とメタリコン電極(11,12)との接続を担う第1金属化フィルム(21)の熱による収縮量が、第2金属化フィルム(22)に比べて小さいので、金属面とメタリコン電極(11,12)との接続を確実に担保することが可能になる。そのため、第2金属化フィルム(22)側には、比較的低融点の金属化フィルムを使用しても、メタリコン電極(11,12)からの熱による損失係数の増大を抑制することが可能になる。すなわち、本発明ではフィルムコンデンサにおいて、メタリコン電極(11,12)への半田付けによる損失係数の増大を抑制することが可能になる。特に、耐熱温度(融点)が低い傾向がある高誘電率フィルムを用いたフィルムコンデンサでは、より大きな効果を得ることが可能になる。
【0017】
また、第2の発明によれば、熱による第2金属化フィルム(22)の収縮は、許容され得るので、より確実に損失係数の増大を抑制することが可能になる。また、第2フィルム体(22a)の材料をより柔軟に選択することが可能になる。
【0018】
また、第3の発明によれば、半田付けの熱による第1金属化フィルム(21)の熱収縮がほとんどないので、損失係数の増大をよる確実に抑制することが可能になる。
【0019】
また、第4の発明によれば、低損失化と小型化の両立を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせる直前の状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図4】図4は、従来のフィルムコンデンサの損失係数を示すグラフである。
【図5】図5は、本実施形態のフィルムコンデンサの損失係数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
《全体構成》
図1は、本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサ(10)の概略構成を示す縦断面図である。このフィルムコンデンサ(10)は、例えばインバータ回路に供給する直流電圧を平滑する平滑コンデンサ等に用いられる。詳しくは、このフィルムコンデンサ(10)は、図1に示すように、第1及び第2メタリコン電極(11,12)、絶縁カバー(13)、封止樹脂(14)、リード線(15,15)、及びコンデンサ本体(20)を備えている。コンデンサ本体(20)は、後述するように、2枚の金属化フィルムを重ね合わせて略円柱状に構成されている。
【0023】
《コンデンサ本体(20)の構成》
コンデンサ本体(20)は、第1及び第2金属化フィルム(21,22)、及び巻芯(23)を備えている。コンデンサ本体(20)は、第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とが厚み方向に重ね合わされて巻芯(23)の外周に巻回されて、略円柱状に形成されている。図2は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせて巻回している状態を示す斜視図である。また、図3は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【0024】
この第1金属化フィルム(21)は、第1フィルム体(21a)の両面に金属膜(21b,21c)を蒸着して形成してある。蒸着させる金属としては、例えばアルミニウムや亜鉛などが挙げられる。また、第1フィルム体(21a)は、後述の第2フィルム体(22a)よりも高い融点の誘電体フィルムである。この例では、半田付けの際の温度(後述)よりも高い融点を有した誘電体材料を用いて形成してある。具体的には、第1フィルム体(21a)には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の帯状フィルムを採用できる。なお、本実施形態では、第1フィルム体(21a)は、5〜6μmの厚さを有している。
【0025】
この第1金属化フィルム(21)には、図2や図3に示すように、それぞれの面には、一方の側縁部に、該側縁部から所定の幅で金属膜(21b,21c)が設けられていない帯状部分(以下、サイドマージン部と呼ぶ)がある。それぞれのサイドマージン部は、互いに逆側の側縁に設けられている。
【0026】
第2金属化フィルム(22)は、第2フィルム体(22a)の両面に金属膜(22b,22c)を蒸着して形成してある。蒸着させる金属としては、例えばアルミニウムや亜鉛などが挙げられる。また、第2フィルム体(22a)には、高誘電率材料を用いている。より具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:例えばNEOFLON(登録商標))を採用している。このPVDFは、第1フィルム体(21a)に採用したPPやPETよりも融点が低く、概ね130〜140℃である。なお、本実施形態では、第2フィルム体(22a)は、5〜6μmの厚さを有している。
【0027】
また、この第2金属化フィルム(22)でも、図2や図3に示すように、それぞれの面にサイドマージン部が設けられている。第2金属化フィルム(22)でも、それぞれのサイドマージン部は、互いに逆側に設けられている。そして、図3に示すように、第2金属化フィルム(22)は、第1金属化フィルム(21)よりも幅が狭く形成されている。この幅の設定については後述する。
【0028】
巻芯(23)は、樹脂によって、図1に示すように円筒状に形成されている。巻芯(23)の軸方向長さは、概ね第1金属化フィルム(21)の幅と同じである。
【0029】
第1金属化フィルム(21)と第2金属化フィルム(22)とを重ねると、図3に示すように、第1金属化フィルム(21)の金属膜(21c)と、第2金属化フィルム(22)の金属膜(22b)とが接触して、電気的に接続される。すなわち、このフィルムコンデンサ(10)では、2枚のフィルム間に、空気層が存在したとしても、その空気層は誘電体として作用せず、該空気層がフィルムコンデンサ(10)の容量に影響を及ぼすことがない。
【0030】
《その他の構成要素》
第1及び第2メタリコン電極(11,12)は、コンデンサ本体(20)の両端部にそれぞれ設けられた電極である。これらのメタリコン電極(11,12)は、コンデンサ本体(20)の両方の軸方向端部(側端面)に、金属をそれぞれ溶射することによって形成され、コンデンサ本体(20)の両側端面において、第1金属化フィルム(21)の金属膜(21b,21c)と電気的に導通している。
【0031】
より詳しくは、図3に示すように、第1メタリコン電極(11)には、第1金属化フィルム(21)の一方の側縁部が所定幅(例えば1mm程度)埋設されている。この例では、第1金属化フィルム(21)の第1メタリコン電極(11)への埋設部分は、上面側(図3における上側の面。以下同様)には金属膜(21b)が存在し、下面側(図3における下側の面。以下同様)にはサイドマージン部が存在する。したがって、上面側の金属膜(21b)と第1メタリコン電極(11)とは電気的に導通し、第1金属化フィルム(21)の下面側の金属膜(21c)と第1メタリコン電極(11)とは電気的に絶縁されている。なお、以下では、第1メタリコン電極(11)と導通した金属膜(21b)の部位を、第1接続部(21d)と呼ぶ。
【0032】
同様に、第2メタリコン電極(12)は、第1金属化フィルム(21)のもう一方の側縁部が所定幅(例えば1mm程度)埋設されている。そして、第2メタリコン電極(12)への埋設部分は、第1金属化フィルム(21)の下面側では、金属膜(21c)と第2メタリコン電極(12)とが電気的に導通し、上面側では、金属膜(21b)と第2メタリコン電極(12)とが電気的に絶縁されている。以下では、第1金属化フィルム(21)において第2メタリコン電極(12)と導通した金属膜(21c)の部位を、第2接続部(21e)と呼ぶ。
【0033】
一方、第2金属化フィルム(22)は、金属面(金属膜(22b,22c))と第1及び第2メタリコン電極(11,12)との接続部を有していない。図3の例では、その上面側では右側の側縁部がサイドマージン部、下面側では左側の側縁部がサイドマージン部となっている。そして、第2金属化フィルム(22)は、2つのメタリコン電極(11,12)の間隔と同程度の幅に形成されている。これにより、第2金属化フィルム(22)は、側縁部が何れのメタリコン電極(11,12)にも埋設されないことになる。この例では、第2金属化フィルム(22)のそれぞれの金属膜(22b,22c)は、メタリコン電極(11,12)と直接的に電気的接続を担うのではなく、第2金属化フィルム(22)の金属膜(22b,22c)は、第1金属化フィルム(21)の金属膜(21b,21c)と電気的に繋がることで、2枚のフィルム間の空気層がフィルムコンデンサ(10)の容量に影響を及ぼさせないようにする機能を主に担っている。
【0034】
リード線(15,15)は、図1に示すように、その基端部がコンデンサ本体(20)の軸心付近からコンデンサ本体(20)の径方向外方に向かって延び、その先端部が封止樹脂(14)から外方に突出している。各リード線(15,15)は、コンデンサ本体(20)の軸心付近で、第1及び第2メタリコン電極(11,12)と電気的に接続されている。本実施形態では、それぞれのリード線(15,15)は、メタリコン電極(11,12)に半田付けされている。この半田には、例えば、いわゆる鉛フリー半田を使用することができる。
【0035】
本実施形態では、第1金属化フィルム(21)には、この半田付けの際の温度よりも高い融点の第1フィルム体(21a)を採用している。ここで、「半田付けの際の温度」とは、溶けた半田の温度や半田ごての温度ではなく、半田付けの際における第1金属化フィルム(21)の実際の温度を意味している。前記鉛フリー半田は、融点が二百数十度のものがあり、半田ごての温度はさらに高温(例えば350℃)になる。この半田ごてや溶融した半田からの熱がメタリコン電極(11,12)を介して第1金属化フィルム(21)に伝わることになる。しかしながら、実際に第1金属化フィルム(21)における温度は、半田ごてや溶けた半田よりも低くなる傾向があるので、第1金属化フィルム(21)における実際の温度を勘案して、第1フィルム体(21a)の材料を選択するのである。
【0036】
絶縁カバー(13)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状のコンデンサ本体(20)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(13)は、コンデンサ本体(20)の外周面全体を覆うように設けられている。なお、この絶縁カバー(13)は必須ではなく、例えば、該コンデンサ本体(20)を封止樹脂(14)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0037】
また、封止樹脂(14)は、絶縁カバー(13)の外周側、第1及び第2メタリコン電極(11,12)及びリード線(15,15)の基端部を封止するように設けられている。すなわち、この封止樹脂(14)は、リード線(15,15)の先端側を除いて、フィルムコンデンサ(10)の構成部品全体を覆うように設けられている。
【0038】
《本実施形態における効果》
本願発明者は、本実施形態の効果を確認するため、本実施形態のフィルムコンデンサ(10)と、該フィルムコンデンサ(10)と同構造で第1フィルム体(21a)と第2フィルム体(22a)の両方にPVDFを用いたコンデンサ(以下、説明の便宜上のため従来のフィルムコンデンサとよぶ)とについて、損失係数(いわゆるtanδと呼ばれる指標)を比較した。具体的には、それぞれのコンデンサについて、リード線(15,15)の半田付け前後それぞれの損失係数を比較した。
【0039】
図4は、従来のフィルムコンデンサの損失係数を示すグラフであり、縦軸が損失係数、横軸が印加する交流の周波数である。同図では、実線がリード線(15,15)を半田付けする前の損失係数、破線が半田付けの後の損失係数である。このように、従来のフィルムコンデンサでは、半田付けの後は、ある周波数で損失係数にピークを持つ特性になっている。これは、両方の金属化フィルムの材料にPVDFを用いているので、PVDFフィルムが半田付けの熱によって収縮して、フィルム上の金属膜とメタリコン電極との接触状態が悪化(接触抵抗が増大)したためと考えられる。
【0040】
一方、図5は、本実施形態のフィルムコンデンサ(10)の損失係数を示すグラフである。このグラフでは、表記した曲線が1本の実線のみであるが、この実線が半田付けの前及び後の損失係数を表している。フィルムコンデンサ(10)では、半田付けの有無にかかわらず、損失係数に違いが現れなかったので、このようなグラフになっているのである。これは、第1金属化フィルム(21)に、半田付けの際の温度よりも融点が高いフィルムを用いたので、半田付けを行っても第1フィルム体(21a)が収縮することがなく、その結果、第1及び第2接続部(21d,21e)における、金属膜(21b,21c)とメタリコン電極(11,12)との接触状態に何の影響も現れなかったためと考えられる。すなわち、本実施形態では、金属面(金属膜(21b,21c))とメタリコン電極(11,12)との接続を確実に担保することが可能になる。
【0041】
また、本実施形態では、第2金属化フィルム(22)は、側縁部がメタリコン電極(11,12)に近接はしているものの、半田付けの熱の伝導量は、第1金属化フィルム(21)と比べきわめて小さい。そのため、第2フィルム体(22a)の熱収縮量は従来のフィルムコンデンサのフィルムと比べ小さい。そして、第1金属化フィルム(21)の金属膜(21b,21c)が各メタリコン電極(11,12)と電気的に接続されているので、第2金属化フィルム(22)の金属膜(22b,22c)がメタリコン電極(11,12)と直接的に接触していなくても差支えがない。すなわち、半田付けの熱による第2金属化フィルム(22)の収縮は、許容され得るのである。このように、本実施形態によれば、第2金属化フィルム(22)側には、比較的低融点の金属化フィルムを使用しても、半田付けによる損失係数の増大を抑制することが可能になる。したがって、耐熱温度(融点)が低い高誘電率フィルム(例えばPVDF)を用いたフィルムコンデンサにおいて、半田付けによる損失係数の増大を抑制することが可能になる。つまり、本実施形態では、高誘電率フィルムを容易に用いることが可能になり、フィルムコンデンサの単位体積あたりの容量を高めることが可能になる。そして、フィルムコンデンサの単位体積あたりの容量を高められると、フィルムコンデンサの小型化が可能になり、インバータ回路用の平滑コンデンサ根の応用が容易になるのである。
【0042】
しかも、耐熱性の高い材料を第1金属化フィルム(21)に採用しても静電容量を犠牲にすることがないので、融点が従来の半田よりも高い鉛フリー半田を容易に採用できる。それゆえ、本実施形態では、環境に配慮したフィルムコンデンサを製造することが可能になる。
【0043】
《その他の実施形態》
なお、前記実施形態として説明した各フィルム体の材料や蒸着する金属は一例であり、例示以外のものの採用も可能である。例えば、第1金属化フィルム(21)の融点は、半田付けの際の温度よりも高いのが理想であるが、フィルムコンデンサの性能劣化(損失係数の増大)が許容できる範囲内に収まるのであれば、融点が半田付けの際の温度よりも低いフィルムを第1フィルム体(21a)に採用してもよい。
【0044】
また、第2金属化フィルム(22)は、その両側縁がメタリコン電極(11,12)から完全に離れるように幅を設定してもよい。また、半田付けの際の第2金属化フィルム(22)の熱収縮が、第1金属化フィルム(21)とメタリコン電極(11,12)との電気的な接続に与える影響が許容できる範囲に収まるのであれば、第2金属化フィルム(22)の両側縁がメタリコン電極(11,12)に埋設されていてもよい。
【0045】
また、リード線(15,15)の接続は、前記の半田付けの他に、例えば溶接なども採用できる。なお、半田付けによる取り付けは、比較的大きな電力を扱う用途に適している。
【0046】
また、巻芯(23)は必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、両面に金属膜を有した金属化フィルムを巻回したフィルムコンデンサとして有用である。
【符号の説明】
【0048】
10 フィルムコンデンサ
11 第1メタリコン電極
12 第2メタリコン電極
21 第1金属化フィルム
21d 第1接続部
21e 第2接続部
22 第2金属化フィルム
23 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に金属が蒸着された第1金属化フィルム(21)と、
両面に金属が蒸着され、前記第1金属化フィルム(21)と重ね合わせられて、該第1金属化フィルム(21)とともに巻回された第2金属化フィルム(22)と、
巻回状態の前記第1及び第2金属化フィルム(21,22)の両側端面にそれぞれ設けられた第1及び第2メタリコン電極(11,12)と、
を備え、
前記第1金属化フィルム(21)は、前記第2金属化フィルム(22)よりもフィルムの融点が高く、前記第1メタリコン電極(11)に埋設されて一方の金属面を該第1メタリコン電極(11)に導通させる第1接続部(21d)が一方の側縁側に設けられるとともに、前記第2メタリコン電極(12)に埋設されてもう一方の金属面を該第2メタリコン電極(12)に導通させる第2接続部(21e)がもう一方の側縁側に設けられていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1のフィルムコンデンサにおいて、
前記第2金属化フィルム(22)は、金属面と前記第1及び第2メタリコン電極(11,12)との接続部を有していないことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のフィルムコンデンサにおいて、
前記第1及び第2メタリコン電極(11,12)には、リード線(15)がそれぞれ半田付けされ、
前記第1金属化フィルム(21)の融点は、前記半田付けの際の温度よりも高いことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか1つにおいて、
前記第2金属化フィルム(22)は、高誘電材料で形成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−9654(P2012−9654A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144749(P2010−144749)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】