説明

フィルム用多層芯管およびその製造方法

【課題】フィルムの捲取時の段差発生およびしわの発生を効果的に防止可能であり、且つ効率的な製造が可能なフィルム用多層芯管を提供する。
【解決手段】100%伸長時の引張応力が0.5〜10MPa、密度が0.85〜0.91g/ccであり、更に0.1〜20重量%の滑り性改質剤を配合した熱可塑性エラストマー(a)からなる外管と、引張降伏応力が20MPa以上、密度が0.88〜0.95g/ccである硬質樹脂(b)からなる中空内管との共押出積層体からなることを特徴とする、フィルム用多層芯管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック等のフィルム(本明細書においては、厚さが約250μmを超え、シートと称されることがむしろ通常であるものも含めて、厚さに比べて相当に大なる面積を有するフィルムないしシートを、包括的に「フィルム」と称する)をロール状に巻き取るためのフィルム用多層芯管に関し、特に巻き出し後のフィルムの平坦性の改善およびロール状態でのフィルムのたるみの低減の防止に有効なフィルム用多層芯管およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム用芯管としては、紙管、塩化ビニル樹脂管などが用いられてきた。
【0003】
一般にフィルムロールは、このような芯管への巻き始めにフィルム先端をテープや接着剤で芯管に貼り付け、芯管を回転させて巻き重ねてロールとする。しかし、比較的厚いフィルムにおいては、このフィルムの巻き始めに生じるフィルムの厚さ分の段差が、次に巻き重ねられたフィルムを変形させ(段差跡を生じさせ)、それが次々と転写される。従って平面性を重要とするフィルムにおいては、このために巻き始めから100m以上にわたって段差跡によりフィルムが使用できず大きなロスとなっていた。また、比較的薄いフィルムにおいては、フィルムの偏肉の薄い部分がたるみとなり、巻き重ねるごとにそのたるみが顕著となり、それによりフィルムに皺が寄り、フィルムの変形(皺)の原因となっていた。
【0004】
このような芯管へのフィルムの巻取りにおける厚み段差の発生あるいは、しわの発生の低減のために、硬質芯管の回りに弾性体を貼り付けた多層芯管が提案されている(特許文献1および2)。より具体的には、硬質芯管としての金属製芯管の回りにプラスチック発泡体あるいは軟質ゴムを貼り付けた多層芯管(特許文献1)、ならびに硬質芯管としての金属、樹脂含浸紙製芯管の回りにポリオレフィン発泡体を貼り付けた多層芯管(特許文献 )が開示されている。しかしながら、硬質芯管への発泡プラスチック、軟質ゴム等の弾性体層の貼り付けは極めて繁雑な作業を要し、効率的な生産は不可能である。
【0005】
またフィルムの両縁部にテープを貼り付けて巻き取りに際しての応力を両縁部に集中させ、中央部における厚み段差の発生を防止する方法(特許文献3)も提案されているが、テープ貼り付け等の繁雑な操作が必要となり、効率的なロールフィルムの生産方法とは云い難い。
【0006】
他方、産業用フィルム等の長尺フィルムを巻付けた例えばポリ塩化ビニル製硬質芯管をまとめて切断する際のカッターの刃の折れやかけを防止するために、硬質素材からなる内管と軟質素材からなる外管との複合管からなることを特徴とするフィルム用多層芯管も提案されている(特許文献4)。硬質素材としては、硬質ポリ塩化ビニル、硬質ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンが、また軟質素材として、軟質ポリエチレン、ゴム、軟質エラストマーが挙げられているが、具体的には、実施例において、ポリ塩化ビニル製内管と軟質ポリエチレン製外管との接着剤による複合管および硬質ポリエチレン製内管と軟質ポリエチレン製外管との共押出成形による複合管のみが示されている。しかしながら、本発明者らの研究によれば、軟質(高圧法)ポリエチレンによる被覆は、硬質樹脂内管の直接切断によるカッター刃の折れやかけの防止には有効であるとしても、特許文献1あるいは2の目的とするような硬質芯管へのフィルム直接巻き付けによる厚み段差あるいはしわの発生の低減の効果は不充分である。
【特許文献1】特開昭58−74442号公報
【特許文献2】特開2004−338818号公報
【特許文献3】特開2001−63876号公報
【特許文献4】特開2004−175467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の主要な目的は、フィルムの捲取時の段差発生およびしわの発生を効果的に防止可能であり、且つ効率的な製造の可能なフィルム用多層芯管およびその効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記特許文献1および2に示されるように、フィルムの捲取時の段差発生およびしわの発生を効果的に防止可能なフィルム用多層芯管を形成するためには、内管と外管とにおいて、相当な要求物性の差異があり、これが共押出成形という合理的な製造方法を妨げていた理由と解されるが、本発明者らの更なる研究によれば、外管および内管材料ならびに共押出成形条件の適切な設計により、フィルムの捲取時の段差発生およびしわの発生を効果的に防止可能としつつ、共押出成形の可能なフィルム用多層芯管が得られることが判明した。
【0009】
本発明のフィルム用多層芯管は、このような知見に基づくものであり、より詳しくは、100%伸長時の引張応力が0.5〜10MPa、密度が0.85〜0.91g/ccであり、さらに0.1〜20重量%の滑り性改質剤を配合した熱可塑性エラストマー(a)からなる外管と、引張降伏応力が20MPa以上、密度が0.88〜0.95g/ccである硬質樹脂(b)からなる中空内管との共押出積層体からなることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のフィルム用多層芯管の製造方法は、それぞれ押出機から溶融押出された、100%伸長時の引張応力が0.5〜10MPa、密度が0.85〜0.91g/ccであり、さらに0.1〜20重量%の滑り性改質剤を配合した熱可塑性エラストマー(a)と、引張降伏応力が20MPa以上、密度が0.88〜0.95g/ccである硬質樹脂(b)とを、熱可塑性エラストマー(a)が外側、硬質樹脂(b)が内側となるように多層ダイを用いてダイ内融着積層して得られた中空円筒状樹脂積層体を、外側より冷却および減圧を作用させながら外径規制部材により所定の寸法に冷却固化させることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のフィルム用多層芯管およびその製造方法を、好ましい態様について、より具体的に説明する。
【0012】
本発明のフィルム用多層芯管は、代表的な層構成として図1に長さ方向に直交する断面図を示すような外管1と内管2の積層構成を有するが、外管1および内管2の構成材料として下記するような熱可塑性エラストマー(a)および硬質樹脂(b)を用いる点を除いて、構造自体は従来のものと特に異なるものではない。
【0013】
(熱可塑性エラストマー(a))
本発明のフィルム用多層芯管の外管は、フィルム段差とフィルムの偏肉ムラを吸収して、段差跡およびしわの発生等の平面性不良を防止するために、100%伸長時の引張応力が0.5〜10MPa、密度が0.85〜0.91g/ccである熱可塑性エラストマー(a)に、更に0.1〜20重量%の滑り性改質剤を配合した外管材料からなる。
【0014】
熱可塑性エラストマー(a)の100%伸長時の引張応力が0.5MPa未満では、外管がやわらかすぎて、その上に巻きつけるフィルムが却って皺になりやすい。10MPaを超えると、平面性不良の低減効果が得難くなる傾向にある。100%伸長時の引張応力は、好ましくは1〜8MPa、更に好ましくは1〜6MPaである。
【0015】
密度が0.85g/cc未満では、すべり性を含む共押し出し成形性に悪影響があり、0.91g/ccを超えると、平面性不良の低減効果が得難くなる傾向にある。密度は、好ましくは0.87〜0.90g/ccである。
【0016】
熱可塑性エラストマー(a)としては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマーなどがあるが、なかでは、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーが好ましく、特にポリオレフィン系エラストマーが、後記する好ましい硬質樹脂(b)との組合せにおいて、共押出性が優れるために特に好ましい。ポリスチレン系エラストマーは、外径規制部材との摩擦低減のために滑り性改質剤を配合した際に、配合した滑り性改質剤が外管表面に滲出する傾向にあるため、好ましくない。
【0017】
特に、好ましい硬質樹脂(b)との共押出性を考慮したときには、ポリオレフィン系エラストマーのなかでも、ポリプロピレンと、エチレンプロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体(EPDM)との混合物が好ましく、この場合にはポリプロピレンマトリクス中に、EPDMが分散した状態となり、主としてマトリクスを構成するポリプロピレンが、硬質樹脂(b)との共押出ならびに接着性に寄与し、分散質のEPDMが弾性および柔軟性に寄与することになる。
【0018】
なお、弾性体として、特許文献1あるいは2に開示されるようなプラスチック発泡体は、外側からの冷却且つ外径規制部材によるサイジング(寸法規制)を行う本発明の共押出成形法において、内管硬質樹脂(b)の冷却による硬化を妨げるので不適当である。
【0019】
熱可塑性エラストマー(a)は、一般に優れた柔軟性を有するが、滑りが悪いという欠点があり、外径規制部材によるサイジングに際して、ノッキングを発生させ、厚さ変動が起りがちであるという難点がある。このような不都合を回避するために、滑り性改質剤を、熱可塑性エラストマー(a)に対して、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、更に好ましくは1〜10重量%添加して、外管構成材料とする。0.1重量%未満では滑り性改質効果が乏しく、20重量%を超えて添加すると、有機系の滑り性改質剤においては、その一部が表面に析出しべたつきの原因になり、また無機系の滑り性改質剤においては外管の柔軟性が損なわれがちである。滑り性改質剤としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機滑り剤、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等の有機滑り剤、グラフト化滑り剤等の耐擦傷剤が用いられ、なかでも得られる外管の表面硬度への影響が少なく、すべり性改善効果が得られる耐擦傷剤が好ましく用いられる。
【0020】
(硬質樹脂(b))
本発明のフィルム用多層芯管の内管は、芯管に作用する外力に抗する剛性を付与するために、引張降伏応力が20MPa以上、密度が0.88〜0.95g/ccである硬質樹脂(b)からなる。
【0021】
引張降伏応力が20MPa未満であると、剛性の付与に必要な圧縮強度が不足し、変形し易くなる傾向にあり、また密度が0.88g/cc未満であると、強度が不足し、変形し易くなる。他方密度が0.95g/ccを超えると、内管が硬くなりすぎ、脆くなる傾向にあるためである。更に引張弾性率を1000MPa以上とし、芯管の変形を防止するための強度を確保することが好ましい。
【0022】
硬質樹脂(b)の具体例としては、硬質ポリエチレン、ポリプロピレンなどの硬質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられ、なかでも価格、押出加工特性などの観点でポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にエチレン含有量が5〜10重量%のポリプロピレン系ブロック共重合体(プロピレン−エチレンブロック共重合体)が、遊星カッターによる切断性、耐衝撃性にも優れて、特に好ましい。
【0023】
外管を構成する熱可塑性エラストマー(a)と内管を構成する硬質樹脂(b)の間には、必要に応じて、少量のマレイン酸などの酸性モノマーにより変性したポリオレフィン系樹脂などの接着性樹脂(c)を介して共押出することもできるが、この場合にはそのための押出機が一台多く必要になるので、熱可塑性エラストマー(a)と硬質樹脂(b)とが相互に接着性の良好なものであることが好ましい。そのためには両者が同種の樹脂(すなわち両者を構成するポリマーの主要なモノマー成分が共通である樹脂)の組合せからなるものが好ましい。この意味でも熱可塑性エラストマー(a)として、ポリプロピレン−EPDM混合物、硬質樹脂(b)として少量のエチレン単位を含むポリプロピレン系ブロック共重合体の組合せは最適である。
【0024】
熱可塑性エラストマー(a)は、プラスチック発泡体よりは熱伝導性に優れるとはいえ、ポリオレフィン等の通常の熱可塑性樹脂に比べると熱伝導性は劣る。従って、外径規制部材および外部冷却を用いる本発明の多層芯管の製造方法において、内管を構成する硬質樹脂(b)の冷却・硬化による剛性発現を妨げ、共押出中に内管の変形が起るおそれがある。このため、硬質樹脂(b)中には、剛性向上、補強等の目的で、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、などの無機系添加剤を添加することが好ましい。特にシリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機系フィラーは、硬質樹脂(b)の結晶化による硬化促進作用も有し、多層芯管製造速度の向上のためにも好ましい。これら無機系添加剤は、硬質樹脂(b)に対して、0.1〜35重量%、好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは0.5〜30重量%の割合で添加される。0.1重量%未満では添加効果が乏しく、35重量%を超えて添加すると、形成された円筒状中空体の切断による多層芯管の形成時にバリが発生し易くなるとともに、内管が脆くなりがちである。
【0025】
熱可塑性エラストマー(a)および/または硬質樹脂(b)には、必要に応じて顔料、または染料を加えて、着色することができる。
【0026】
本発明の多層芯管は、好ましくは本発明の製造方法により製造される。すなわち、上述した滑り性改質剤を配合した熱可塑性エラストマー(a)と硬質樹脂(b)とを、それぞれの押出機を通して、溶融押出し、熱可塑性エラストマー(a)が外側、硬質樹脂(b)が内側となるように多層ダイを用いてダイ内融着積層し、得られた中空円筒状樹脂積層体を、外側より冷却および減圧を作用させながら外径規制部材により所定の寸法に冷却固化させる。
【0027】
溶融押出温度は、使用する熱可塑性エラストマー(a)および硬質樹脂(b)により異なるが、熱可塑性エラストマー(a)がポリオレフィン系エラストマーの場合には、180〜210℃程度、硬質樹脂(b)がポリプロピレン系樹脂の場合には、200〜240℃程度が好ましい。また冷却には、例えば絶対圧5〜30kPa程度の減圧とした冷却水槽を用い、冷却水温度は5〜25℃程度と比較的低温として冷却効果を上げることが好ましい。外径規制部材としては、スリーブ、プレートあるいはリング形状のものを用いることができ、熱可塑性エラストマー(a)は比較的滑り性が良くないので、リング形状のものが好ましい。また、熱可塑性エラストマー(a)と接触する外径規制部材内面にテフロンコーティングなどのフッ素処理、あるいはクロムメッキ処理などによる滑り性改善処理を行うことが好ましい。
【0028】
上記のようにして形成される本発明の多層芯管の代表的寸法としては、例えば、外径が84〜110mm、好ましくは92〜107mmであり、主としてフィルム巻取り装置のシャフト径、芯管の固定方法により決定される。外管を構成する熱可塑性エラストマー(a)層の厚さは0.5〜5mm、好ましくは1〜4mmである。0.5mm未満では、捲取フィルムの平面性改善効果が乏しくなり、5mmを超えると、巻取フィルム編肉などの影響により、たるみ、しわなどが入りやすくなり、巻取フィルムの平面性に却って悪影響を及ぼす傾向になる。
【0029】
内管を構成する硬質樹脂(b)層の厚さは4〜10mm程度が好ましい。4mm未満では、得られる芯管の強度が不足する傾向にあり、10mmを超えると過剰強度となり、芯管が不必要に重くなり、経済性も悪くなる。
【0030】
熱可塑性エラストマー(a)層/硬質樹脂(b)層の厚さ比は、1/7〜3/7程度が適当であり、形成される芯管の内径(空筒径)は、種々の規格があるが、一例として76〜77mm程度である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。本明細書に記載の物性値は、以下の方法による測定値に基づく。
【0032】
<100%伸長時の引張応力、引張弾性率および引張降伏応力>
JIS K7161−1994に準じて、引張試験機(東洋精機社製「テンシロンRTM−100型」を用い、23℃、50%RHの環境条件にて測定。
【0033】
<密度>
JIS K7112−1980に準じて、B法(ピクノメーター法)により、23℃で原料ペレットについて測定。
【0034】
(実施例1)
熱可塑性エラストマー(a)として、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体との混合物(DSM社製「Sarlink6170」;100%伸長時引張応力:約3MPa、密度:0.88g/cc、ショアA硬度:70を用い、その100重量部に対して、滑り性改質剤として滑り剤成分を配合したポリプロピレン系耐擦傷剤(日本油脂(株)製「ノアフロイKA632」)5重量部を添加・混合して外管材料とした。他方、硬質樹脂(b)としてエチレン含有量が7.5重量%のプロピレン−エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー製「B701WB」;引張降伏応力:30MPa、引張弾性率:1250MPa、密度:0.91g/cc、メルトフロー値:0.5g/10分(230℃))を用いて内管材料とした。
【0035】
概略構成を図2に示す装置を用い、上記外管材料と内管材料を、それぞれの押出機より温度200℃、および240℃で溶融押出し、220℃に保持した2層ダイスを通して、管状樹脂積層体を形成し、絶対圧13kPa(100mmHg)、16℃の減圧冷却水層に導入し、且つリング状外径規制部材でサイジングしながら冷却固化させることにより、外径が95mm、外層厚さ2mm、内層厚さ7mm(内径77mm)の2層構成多層円筒状中空体を形成し、遊星カッターにより長さ約500mmに切断して多層芯管を得た。
【0036】
得られた多層芯管は外層、内層とも均一な厚みで形成され芯管潰れも認められなかった。
【0037】
(実施例2)
熱可塑性エラストマー(a)に対し、その100重量部に対し、滑り性改質剤としてアミド系の有機滑り剤を添加した樹脂マスターバッチ(東京インキ(株)製「PPM−SLT−03」)6重量部を添加混合した外管材料を用いる以外は実施例1と同様な2層構造多層芯管を得た。
【0038】
得られた多層芯管は外層、内層とも均一な厚みで形成され芯管潰れも認められなかった。
【0039】
(実施例3)
硬質樹脂(b)の100重量部に対し、無機質フィラーとしてタルク(カルプ工業(株)製)を30重量部添加混合した内管材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、2層構成の多層芯管を得た。これにより、プロセス速度を実施例1の1.5倍まで増大しても、得られた多層芯管は外層、内層とも均一な厚みで形成され芯管潰れも認められなかった。
【0040】
(比較例1)
実施例1の硬質樹脂(b)のみを単独で用い、単層ダイスを用いる以外は、実施例1と同様にして、外径77mm、厚さ9mmの単層芯管を得た。この芯管の樹脂層の厚さは均一で芯管潰れも認められなかった。
【0041】
(比較例2)
外管材料として、滑り性改質剤を配合しない熱可塑性エラストマー(a)を用いる以外は、実施例1と同様に2層構造多層芯管の作成を試みたが、共押出中の外径規制部材との摩擦抵抗が大きく、ノッキングが発生し、中空成形体の内表面がふし状に凹凸し、均一な厚さの2層構成芯管は得られなかった。また外表面も、内表面ほど明確ではないが、うねり(波状変形)が認められた。
【0042】
<フィルム巻取試験>
上記実施例1〜3で得られた多層芯管および比較例1で得られた単層芯管の各々を用い、巾400mm、厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを巻取り張力を15kg/m、巻取り速度を20m/分として50m巻取り、室温で24時間放置した。その後フィルムを引き出して蛍光灯で照らしながらフィルム表面の段差あるいは皺による凹凸を肉眼で検査した。
【0043】
その結果、実施例1〜3のいずれの芯管においても、巻芯部から3〜8mのフィルム部分において平面性不良が認められなかったが、比較例1の芯管においては、巻芯部から約30m以上のフィルム部分においても平面性不良が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述したように本発明によれば、フィルムの捲取時の段差発生およびしわの発生を効果的に防止可能であり、且つ共押出成形により効率的な製造が可能なフィルム用多層芯管およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のフィルム用多層芯管の断面構造例を示す長さ方向に直交する断面図。
【図2】実施例で用いた外径規制部材を使用する2層構成の芯管製造装置の模式側面図。
【符号の説明】
【0046】
1 外管
2 内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100%伸長時の引張応力が0.5〜10MPa、密度が0.85〜0.91g/ccであり、更に0.1〜20重量%の滑り性改質剤を配合した熱可塑性エラストマー(a)からなる外管と、引張降伏応力が20MPa以上、密度が0.88〜0.95g/ccである硬質樹脂(b)からなる中空内管との共押出積層体からなることを特徴とする、フィルム用多層芯管。
【請求項2】
熱可塑性エラストマー(a)がポリオレフィン系エラストマーである請求項1に記載の多層芯管。
【請求項3】
熱可塑性エラストマー(a)が、ポリプロピレンと、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体との混合物である請求項2に記載の多層芯管。
【請求項4】
硬質樹脂(b)がポリオレフィンからなる請求項1〜3のいずれかに記載の多層芯管。
【請求項5】
前記ポリオレフィンが、エチレン含有量が5〜10重量%のプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる請求項4に記載の多層芯管。
【請求項6】
内管を構成する硬質樹脂(b)に0.1〜35重量%の無機系添加剤を配合してなる請求項1〜5のいずれかに記載の多層芯管。
【請求項7】
それぞれ押出機から溶融押出された、100%伸長時の引張応力が0.5〜10MPa、密度が0.85〜0.91g/ccであり、さらに0.1〜20重量%の滑り性改質剤を配合した熱可塑性エラストマー(a)と、引張降伏応力が20MPa以上、密度が0.88〜0.95g/ccである硬質樹脂(b)とを、熱可塑性エラストマー(a)が外側、硬質樹脂(b)が内側となるように多層ダイを用いてダイ内融着積層して得られた中空円筒状樹脂積層体を、外側より冷却および減圧を作用させながら外径規制部材により所定の寸法に冷却固化させることを特徴とする、フィルム用多層芯管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−265952(P2008−265952A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111236(P2007−111236)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502053591)クレハエクステック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】