説明

フェナジン化合物、ならびに自己免疫疾患および炎症性疾患におけるフェナジン化合物の使用

本発明は、自己免疫疾患および炎症性疾患を予防および/または治療するのに有用な化合物、組成物および方法を開示する。この方法および組成物は、水溶性フェナジン化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を用いる。これらの分子は、単独で、あるいは関節炎および関節リウマチによって引き起こされる疾患などの自己免疫疾患および炎症性疾患を治療または予防する薬剤と組み合わせて送達することができる。本発明は、自己免疫疾患、炎症、炎症疾患、代謝症候群、異脂肪血症、心血管疾患、末梢神経系および中枢神経系の障害、血液病、癌、呼吸器疾患、胃腸疾患、糖尿病、ならびに非アルコール性脂肪肝疾患の発症を治療または予防するための組成物および方法を提供する。本発明の分子および組成物は、単独で、またはさらなる薬剤と組み合わせて送達することができ、自己免疫疾患、炎症疾患、および心血管疾患の治療または予防に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明者)
Josefino B. Tunac.
(関連出願への相互参照)
本出願は、2007年1月16日に出願された、米国仮特許出願第60/885,164号の利益および上記仮特許出願からの利益を主張し、上記仮特許出願はその全体を本明細書中で参考として参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規な水溶性フェナジン化合物、ならびに自己免疫疾患および炎症性疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
関節炎(ギリシア語の関節から)は、免疫系が攻撃し、体の関節を悪化させ始める場合に引き起こされる慢性多因子疾患である。関節リウマチ(RA)は滑膜の慢性炎症によって特徴付けられ、石灰化関節周囲炎、腸疾患に基づく関節炎、慢性、痛風性および手骨関節炎、臀部および膝骨関節炎、親指、ジャクー、若年性骨関節炎、少関節炎、多発性関節炎、ならびに末梢、乾癬性、リウマチ様および敗血症性関節炎を含めた多くの形態として現れる。RAは、ヒト白血球抗原(HLA)クラスII分子に結合した疾患誘発ペプチドの複合体による、CD4陽性T細胞上のT細胞受容体の分子認識によって生じる免疫応答によって引き起こされる。
【0004】
関節リウマチ単独で世界の人口の1%に影響を与えていると推定され、女性は男性の2倍の有病率がある。先進国の高齢化は、関節炎治療の市場の拡大をもたらしている。アメリカ合衆国において、関節炎および他のリウマチ状態は、人口の約15%に影響を与えている。
【0005】
関節リウマチは、特定のHLAクラスII分子の発現と関連する。所与のクラスII分子、ペプチドリガンド、およびT細胞受容体の間の相互作用の遮断は、in vitroおよびin vivoの両方で特定のT細胞応答を阻害することが知られている。炎症促進サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)は、関節炎を含めた多数の炎症性事象と関連があることが見出されており、抗TNFα療法には、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト)、Humira(登録商標)(アダリムマブ)、およびRemicade(登録商標)(インフリキシマブ)が挙げられる。
【0006】
全身リンパ組織放射線照射、胸管ドレナージ、シクロスポリンA、抗CD4モノクローナル抗体、およびT細胞決定因子を対象とする他のモノクローナル抗体などのT細胞を対象とする他の治療方針は、一部の例では関節リウマチの臨床的改善をもたらすが、これらの治療はまた副作用を伴う。例えば、従来の一般の免疫抑制剤は日和見感染および癌の危険性を増加させる。
【0007】
現在のところ関節炎またはRAの治療法はない。現在の治療は、Enbrel(登録商標)などの薬物を使用して疾患の症状を軽減し、その進行を止めることが目的である。メトトレキサート、シクロホスファミドおよびシクロスポリンなどの化学療法剤もまた、症状を軽減するために使用されてきた。上記の治療の全ては、副作用を免れず、再発率および疾患の増悪を防止する能力について限定的な作用を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要旨)
したがって、単独または他の薬物と組み合わせて使用し、関節炎、特に、RAの進行および症状を抑制することができる新規な薬物に対する必要性が存在する。特定の新規なフェナジン化合物は自己免疫疾患を患っている対象において回復を促進することが今や見出された。したがって、新規なフェナジン化合物は、関節炎、RA、および他の自己免疫疾患の治療および予防に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自己免疫疾患、炎症、炎症疾患、代謝症候群、異脂肪血症、心血管疾患、末梢神経系および中枢神経系の障害、血液病、癌、呼吸器疾患、胃腸疾患、糖尿病、ならびに非アルコール性脂肪肝疾患の発症を治療または予防するための組成物および方法を提供する。本発明の分子および組成物は、単独で、またはさらなる薬剤と組み合わせて送達することができ、自己免疫疾患、炎症疾患、および心血管疾患の治療または予防に使用される。
【0010】
したがって一態様によれば、本発明は、それを必要としている対象において自己免疫疾患を治療または予防する方法を対象とする。この方法は、対象に医薬有効量の式I、II、III、またはIVの化合物を投与するステップを含み、
【0011】
【化1】

式中、XおよびXは、独立に、OまたはSであるように選択され、XおよびXは、独立に、O、S、NH、NRまたはCHR(Rは低級アルキルである場合がある)であるように選択され、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールからなる群から選択され、R、RおよびRは、独立に、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、シアノ、エーテル、ハロ、ヒドロキシ、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、またはスルホンアミドであるように選択され、Mは、ナトリウム、リチウム、およびカリウムなどのアルカリ金属イオン;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属イオン;または薬学的に許容される塩を形成する任意の他の正に帯電している化学種の場合があり、
【0012】
【化2】

式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールの場合があり、Mは、Na、K、または薬学的に許容される塩を形成する任意の他の正に帯電している化学種である。
【0013】
【化3】

したがって、本発明は、それを必要としている哺乳動物対象において自己免疫疾患を治療する方法を提供し、この方法は、医薬有効量の式I、II、III、またはIVの化合物を投与するステップを含む。他の態様では、本発明は、式II
【0014】
【化4】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり、Mは、Na、Kである)を含む化合物を提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、式IIの化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。賦形剤は、経口投与のために適切である場合がある。したがって、組成物は、錠剤、カプセル剤、またはソフトゲルカプセル剤の形態である場合がある。
【0016】
代わりに、賦形剤は、静脈内、筋内、または皮下投与に適した液体の場合がある。代わりに、賦形剤は、経皮的投与、または口腔投与に適している場合がある。
【0017】
本発明の他の態様では、式II
【0018】
【化5】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり、Mは、NaまたはKである)の化合物の調製方法を提供し、この方法は、寒天培地(ACM)中、好適なpHおよび温度下でLysobacter antibioticusを増殖させるステップと、産生培地(CPM)にLysobacter antibioticusを播種し、好適なpHおよび温度下で連続撹拌および通気しながら培養するステップと、有機溶媒を使用することによって化合物をCPMから抽出するステップと、有機溶媒を蒸発させて粗中間体を得るステップと、水性NaOHを粗中間体の有機溶液に加えるステップと、遠心分離によって化合物を回収するステップとを含む。
【0019】
本発明のこれらおよび他の態様は、下記の詳細な説明を参照すれば明らかとなるであろう。さらに、様々な参考文献が本明細書において記載されており、それらは特定の手順または組成物をより詳細に説明し、したがってそれらは内容全体が参照により組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスにおける関与する足の数に基づいた疾患の進行を例示する。
【図2】CIAモデルにおいてマウスに割り当てられた全体的な関節炎スコアを例示する。
【図3】CIAマウスにおける抗II型コラーゲン抗体レベルを例示する。
【図4】CIAマウスにおける総血清免疫グロブリンレベルを例示する。
【図5】CIAマウスにおける分裂促進因子であるコンカナバリンAおよびLPSに対するリンパ節細胞の応答、ならびにII型コラーゲンに対する抗原反応を例示する。
【図6】CIAマウスにおける分裂促進因子であるコンカナバリンAおよびLPSに対する脾臓細胞の応答、ならびにII型コラーゲンに対する抗原反応を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
I 定義
特に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲を含めて本出願において使用される下記の用語は、下記に提示する定義を有する。明細書および添付の特許請求において使用されているように、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに他の場合を指示しない限り複数の指示対象を含むことに留意しなくてはならない。標準的化学用語の定義は、CareyおよびSundberg(1992年)「Advanced Organic Chemistry第3版」、第AおよびB巻、Plenum Press、New Yorkを含めた参照文献に見出すことができる。本発明の実施において、別段の指示がない限り、当分野の技術の範囲内の質量分析、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を用いる。
【0022】
「アゴニスト」という用語は、他の分子の活性または受容体部位の活性を増強する化合物、薬物、酵素活性化剤またはホルモンなどの分子を意味する。
【0023】
「アンタゴニスト」という用語は、他の分子の作用または受容体部位の活性を減少または妨げる化合物、薬物、酵素阻害剤、またはホルモンなどの分子を意味する。
【0024】
「アルキル」は、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、飽和または不飽和の、分岐状、直鎖状または環状の一価の炭化水素基を意味する。典型的なアルキル基には、それだけに限らないが、メチル;エタニル、エテニル、エチニルなどのエチル;プロパン−1−イル、プロパン−2イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、シクロプロパ−1−エン−1イル、シクロプロパ−2−エン−1イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなどのプロピル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1、3−ジエン−1−イル、ブタ−1、3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどのブチルなどが挙げられる。
【0025】
「アルキル」という用語は、任意の程度またはレベルの飽和を有する基、すなわち、炭素−炭素単結合のみを有する基、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有する基、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を有する基、ならびに炭素−炭素単結合、二重結合および三重結合の混合を有する基を含むことを特に意図している。特定のレベルの飽和が意図される場合、「アルカニル」、「アルケニル」および「アルキニル」という表現が使用される。好ましくは、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、より好ましくは、1〜10個の炭素原子を含む。
【0026】
「アルカニル」は、親アルカンの単一の炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、飽和した分岐状、直鎖状または環状のアルキル基を意味する。典型的なアルカニル基には、それだけに限らないが、メタニル;エタニル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなどのプロパニル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなどのブタニルなどが挙げられる。
【0027】
「アルケニル」は、親アルケンの単一の炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、不飽和の分岐状、直鎖状または環状のアルキル基を意味する。この基は、二重結合(複数可)の周りでシスまたはトランス立体配座の場合がある。典型的なアルケニル基には、それだけに限らないが、エテニル;プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル、シクロプロパ−2−エン−1−イルなどのプロペニル;ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチ−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン1−イルなどなどのブテニルなどが挙げられる。
【0028】
「アルキニル」は、親アルキンの単一の炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、不飽和の分岐状、直鎖状または環状のアルキル基を意味する。典型的なアルキニル基には、それだけに限らないが、エチニル;プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなどプロピニル;ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどのブチニルなどが挙げられる。
【0029】
「アシル」は、−C(O)R基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているような水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。その代表例には、それだけに限らないが、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどが挙げられる。
【0030】
「アルキルアミノ」は、−NHR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、またはシクロアルキル基を表す。その代表例には、それだけに限らないが、メチルアミノ、エチルアミノ、1−メチルエチルアミノ、シクロヘキシルアミノなどが挙げられる。
【0031】
「アルコキシ」は、−OR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、またはシクロアルキル基を表す。その代表例には、それだけに限らないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0032】
「アルキルスルホニル」は、−S(O)R基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、またはシクロアルキル基である。その代表例には、それだけに限らないが、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニルなどが挙げられる。
【0033】
「アルキルスルフィニル」は、−S(O)R基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、またはシクロアルキル基である。その代表例には、それだけに限らないが、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニルなどが挙げられる。
【0034】
「アルキルチオ」は、−SR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキルまたはシクロアルキル基である。その代表例には、それだけに限らないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどが挙げられる。
【0035】
「アミドまたはアシルアミノ」は、−NR’C(O)R’’基を意味し、R’およびR’’は、各々独立に、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているような水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。その代表例には、それだけに限らないが、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノなどが挙げられる。
【0036】
「アミノ」は、−NH基を意味する。
【0037】
「アリール」は、親芳香環系の単一の炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、一価の芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基には、それだけに限らないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フッ素、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどに由来する基が挙げられる。好ましくは、アリール基は、6〜20個の炭素原子、より好ましくは、6〜12個の炭素原子を含む。
【0038】
「カルボキシ」は、−C(O)OH基を意味する。
【0039】
「シアノ」は、−CN基を意味する。
【0040】
「シクロアルキル」は、置換または非置換の環状アルキル基を意味する。特定のレベルの飽和が意図されている場合、「シクロアルカニル」または「シクロアルケニル」という命名法が使用される。典型的なシクロアルキル基には、それだけに限らないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどに由来する基が挙げられる。好ましい実施形態では、シクロアルキル基は、(C〜C10)シクロアルキル、さらに好ましくは(C〜C)シクロアルキルである。
【0041】
「シクロヘテロアルキル」は、飽和または不飽和の環状アルキル基を意味し、1つまたは複数の炭素原子(および任意の関連する水素原子)が、独立に、同一または異なるヘテロ原子で置換されている。炭素原子(複数可)を置換する典型的なヘテロ原子には、それだけに限らないが、N、P、O、S、Siなどが挙げられる。特定のレベルの飽和が意図されている場合、「シクロヘテロアルカニル」または「シクロヘテロアルケニル」という命名法が使用される。典型的なシクロヘテロアルキル基には、それだけに限らないが、エポキシド、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジンなどに由来する基が挙げられる。
【0042】
「薬物」は、有効量で患者または哺乳動物に投与される場合、治療的および/または予防的および/または診断的有用性を示す化合物を意味する。
【0043】
「エステル」は、−C(O)OR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキルである。その代表例には、それだけに限らないが、メチルエステル(−C(O)OCH)、シクロヘキシルエステル(−C(O)OC11)、フェニルエステル(−C(O)OC)、ベンジルエステル(−C(O)OCH)などが挙げられる。
【0044】
「エーテル」は、−OR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0045】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
【0046】
「ヘテロアリール」は、親ヘテロ芳香環系の単一の原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、一価のヘテロ芳香族基を意味する。典型的なヘテロアリール基には、それだけに限らないが、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどに由来する基が挙げられる。好ましくは、ヘテロアリール基は、5〜20員のヘテロアリールであり、5〜10員のヘテロアリールが特に好ましい。好ましいヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンに由来するものである。
【0047】
「ヒドロキシ」は、−OH基を意味する。
【0048】
「オキソ」は、二価の基=Oを意味する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「患者」または「対象」という用語は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には、それだけに限らないが、哺乳動物類の任意のメンバー:ヒト、チンパンジーなどのヒトでない霊長類、ならびに他の類人猿およびサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの家畜;ラット、マウスおよびモルモットなどのげっ歯類を含めた実験動物などが挙げられる。非哺乳動物の例には、それだけに限らないが、鳥、魚などが挙げられる。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。
【0050】
「薬学的に許容される」は、連邦政府もしくは州政府の監督官庁によって承認され、または承認されることができ、あるいは動物、より詳細には、ヒトにおける使用についてアメリカ合衆国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方において収載されていることを意味する。それは生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない物質の場合がある。すなわち、この物質は、いかなる望ましくない生物学的作用をもたらすことなく、またはそれが含有されている組成物の成分のいずれかと有害性があるように相互作用することなく、個体に投与することができる。
【0051】
化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩には、例えば、下記が挙げられる
(1)無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)と形成される酸付加塩;あるいは有機酸(酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級のブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸など)と形成される酸付加塩。
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置換されているか;または有機塩基と配位結合した場合に形成される塩。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどが挙げられる。許容される無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。薬学的に許容される塩への参照には、溶媒付加形態またはその結晶形、特に溶媒和物または多形体が挙げられることを理解すべきである。溶媒和物は、化学量論量または非化学量論量の溶媒を含有し、結晶化の過程で形成される場合が多い。水和物は、溶媒が水である場合に形成され、またはアルコラートは溶媒がアルコールである場合に形成される。多形体は、化合物の同一の元素組成の異なる結晶充填配置を含む。多形体は、異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的および電気的性質、安定性、ならびに溶解度を通常有する。再結晶溶媒、結晶速度、および保存温度などの様々な要因によって、単結晶形の優勢をもたらす場合がある。
【0052】
「薬学的に許容されるビヒクル」は、それと共に本発明の化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤または担体を意味する。「有効量」または「医薬有効量」という用語は、無毒性であるが所望の生物学的結果をもたらすのに十分な量の薬剤を意味する。その結果は、徴候、症状もしくは疾患の原因の減少および/または軽減、あるいは生体系の任意の他の所望の変化である場合がある。例えば、治療用途のための「有効量」は、関節炎もしくは関節リウマチ、または炎症性疾患に起因するものなどの自己免疫疾患において臨床的に有意な減少をもたらすのに必要な、本明細書において開示されている1種または複数のフェナジン化合物を含む組成物の量である。任意の個々の場合において、適切な「有効」量は、通常の実験を使用して当業者によって決定される場合がある。
【0053】
「生理的pH」または「生理学的に許容できる範囲のpH」とは、約7.2〜8.0(7.2および8.0を含む)の範囲の、より典型的には約7.2〜7.6(7.2および7.6を含む)の範囲のpHを意味する。
【0054】
「予防する」または「予防」は、疾患または障害を得る危険性の減少(すなわち、疾患の臨床症状の少なくとも1つが、疾患にさらされている、または疾患にかかりやすい可能性があるが、疾患の症状をまだ経験または示していない患者において発症しないことをもたらすこと)を意味する。
【0055】
「プロドラッグ」は、活性薬剤を放出するために体内での変質を必要とする薬物分子の誘導体を意味する。プロドラッグは、親薬剤に変換されるまで薬理学的に(必ずしもではないが)不活性である場合が多い。
【0056】
「保護基」は、分子マスク中の反応性基に結合した場合、その反応性を減少または防止する原子の基を意味する。保護基の例は、Greenら、「Protective Groups in Organic Chemistry」、(Wiley、第2版、1991年)およびHarrisonら、「Compendium of Synthetic Organic Methods」、第1〜8巻(John Wiley and Sons、1971年〜1996年)に見出すことができる。代表的アミノ保護基には、それだけに限らないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「SES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられる。代表的ヒドロキシル保護基には、それだけに限らないが、ベンジル、およびトリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルなどの、ヒドロキシル基がアシル化またはアルキル化されているものが挙げられる。
【0057】
「置換された」は、1つまたは複数の水素原子が、各々独立に、同一または異なる置換基(複数可)で置換されている基を意味する。典型的な置換基には、それだけに限らないが、−X、−R54、−O、=O、−OR54、−SR54、−S、=S、−NR5455、=NR54、−CX、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)OH、−S(O)OR54、−OS(O)31、−OS(O)54、−P(O)(O−)、−P(O)(OR14)(O31)、−OP(O)(OR54)(OR55)、−C(O)R54、−C(S)R54、−C(O)OR54、−C(O)NR5455、−C(O)O、−C(S)OR54、−NR56C(O)NR5455、−NR56C(S)NR5455、−NR57C(NR56)NR5455、および−C(NR56)NR5455が挙げられ、式中各Xは、独立に、ハロゲンであり、各R54、R55、R56およびR57は、独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、−NR5859、−C(O)R58または−S(O)58であり、あるいは任意選択でR58およびR59は、それら両方が結合している原子と一緒になって、シクロヘテロアルキルまたは置換シクロヘテロアルキル環を形成し、R58およびR59は、独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキルである。
【0058】
「スルフェート」は、−OS(O)(O)OR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているような水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0059】
「スルホンアミド」は、−S(O)(O)NR’R’’基を意味し、R’およびR’’は、独立に、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているような水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、あるいは任意選択でR’およびR’’は、それら両方が結合している原子と一緒になって、シクロヘテロアルキルまたは置換シクロヘテロアルキル環を形成する。代表例には、これらだけに限らないが、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、4−(NR’’’)−ピペラジニルまたはイミダゾリル基が挙げられ、前記基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある。R’’’は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているような水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0060】
「スルホネート」は、−S(O)(O)OR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているような水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0061】
「チオ」は、−SH基を意味する。
【0062】
「チオエーテル」は、−SR基を意味し、Rは、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で任意選択で置換されている場合がある本明細書に記載されているようなアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0063】
本明細書で使用する場合、「治療する」または「治療」という用語は、互換的に使用され、関節炎、関節リウマチもしくは炎症性疾患の発症の延期、および/または発症するもしくは発症すると思われるこのような症状の重症度の減少を示すことを意味する。この用語は、関節炎または関節リウマチのすでにある症状を寛解させ、さらなる症状を予防し、および症状の潜在的な代謝的原因を寛解または予防することをさらに含む。
【0064】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には、それだけに限らないが、哺乳動物類の任意のメンバー:ヒト、チンパンジーなどのヒトでない霊長類、ならびに他の類人猿およびサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの家畜;ラット、マウスおよびモルモットなどのげっ歯類を含めた実験動物などが挙げられる。非哺乳動物の例には、それだけに限らないが、鳥、魚などが挙げられる。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。
【0065】
「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、その後記載した事象もしくは状況が起こる場合があり、または起こらない場合があり、記載は、事象もしくは状況が起こる場合の例およびそれが起こらない場合の例を含むことを意味する。例えば、「任意選択で他の薬物」という語句は、患者が、本発明のフェナジン化合物以外の薬物を与えられる場合があり、または与えられない場合があることを意味する。「他の薬物」とは、本明細書で使用する場合、所望の局所または全身作用をもたらす、哺乳動物、好ましくはヒトへの投与に適した任意の化学物質または化合物を意味する。
【0066】
II 本発明の化合物
本発明の化合物は、式Iの構造を有する化合物を含み、
【0067】
【化6】

式中、XおよびXは、独立に、OまたはSであるように選択され、
およびXは、独立に、O、S、NH、NRまたはCHR(Rは、低級アルキルである場合がある)であるように選択され、
は、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
、RおよびRは、独立に、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、シアノ、エーテル、ハロ、ヒドロキシ、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、またはスルホンアミドであるように選択され、ならびに
は、アルカリ金属イオン(ナトリウム、リチウム、およびカリウムなど)、アルカリ土類金属イオン(カルシウムおよびマグネシウムなど)、または薬学的に許容される塩を形成する任意の他の正に帯電している化学種である。
【0068】
他の態様では、本発明の化合物は、式IIの構造を有する化合物を含み、
【0069】
【化7】

式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり;ならびに
は、Na、K、または薬学的に許容される塩を形成する任意の他の正に帯電している化学種である。好ましくは、Rは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであり、さらに好ましくは、メチルである。したがって、フェナジン化合物は、好ましくは式IIIまたはIVの構造である。
【0070】
【化8】

本発明のフェナジン化合物は、下記の構造によって例示される化合物を含まない。
【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

本発明の他の態様では、上記で同定した式II、IIIおよびIVの化合物、ならびに公知のリガンドまたは類似体の分子形状の構造研究に基づく合理的なドラッグデザインを使用して、その三次元構造が式II、IIIおよびIVの化合物の三次元構造に対して相補的であり、したがって同じ活性を有する場合がある化合物を同定することができる。これらのさらなる化合物は、分子力学計算、分子動力学計算、束縛分子動力学計算(束縛はNMR分光法によって決定される)、ディスタンスジオメトリー法(距離行列はNMR分光法によって部分的に決定される)、X線回折、また中性子回折技術を含めた種々の技術によって決定することができる。
【0073】
合理的なドラッグデザインにおいて使用するためのコンピュータプログラムには、それだけに限らないが、AMBER(カリフォルニア大学サンフランシスコ校から入手可能)、CHARMM(Chemistry at HARvard Molecular Mechanics、ハーバード大学から入手可能)、MM2、SYBYL(Trypos Inc.)、CHEMX(Chemical Design)、MACROMODEL、GRID(Molecular Discovery Ltd)、およびInsight II(Accelry)が挙げられる。このようなプログラムは、単離したもしくは水分子などの溶媒分子に囲まれた2つの分子間の化学的相互作用を決定するために有用であることが意図され、または相互作用分子を溶媒和させる効果を概算する計算を使用する。2つの相対的配向は、外観検査によって手作業で、または多数の可能性のある配向をもたらす他のコンピュータプログラムを使用することによって決定することができる。コンピュータプログラムの例には、それだけに限らないが、DOCKおよびAutoDOCKが挙げられる。各配向は、その相補性の程度についてコンピュータプログラムを使用して試験することができる。したがって、式I〜IVによって表すことができる新規な化合物を設計することができる。
【0074】
式I〜IVの化合物を同定するための他の方法は、UV/VIS分光法、旋光分析、CDまたはORD分光法、IRまたはラマン分光法、NMR分光法、蛍光分光法、HPLC、ゲル電気泳動、キャピラリーゲル電気泳動、透析、屈折率測定法、導電率測定法、原子間力顕微鏡法、ポーラログラフ法、誘電測定法、熱量測定法、溶解度、EPR、表面プラズモン共鳴、または質量分析法などの技術の使用を伴う。
【0075】
したがって、同定または設計された式I〜IVの化合物は、それらの自己免疫疾患または炎症性疾患を治療および/または予防する能力について続いて試験することができる。一態様によれば、上記で議論したコンピュータに基づく方法が使用される。他の方法では、自己免疫疾患または炎症性疾患を治療および/または予防する能力について化合物を試験する。これらの選別の間に同定されるリード化合物は、より活性な類似体合成の基礎としての役割を果たすことができる。リード化合物および/またはそこから得られた活性類似体は、自己免疫疾患または炎症性疾患を治療および/または予防するのに有効な医薬組成物に製剤することができる。
【0076】
III フェナジン化合物の合成
一般に、フェナジン化合物は、カビ、藻類、およびバクテリアなどの種々の生物を使用して生合成することができる。生物中で、フェナジン化合物の生合成は、コリスミ酸の後でシキミ酸経路から分岐する。コリスミ酸由来の中間体の2つの分子は、対角線上に対称的な態様で一緒になり、塩基性フェナジン足場を形成する。次いで、連続して起こる修飾によって異なる生物活性を有する種々のフェナジンがもたらされる。したがって、本発明の一態様では、生物を選択するか、または生物が塩基性フェナジン足場を対象の特定化合物に修飾することができるように、公知の生物工学の方法およびプロトコルを使用して作製する。
【0077】
したがって、生物または一度同定された下位分離物を発酵条件下で増殖させて、所望の化合物を合成することができる。発酵培地は、炭素、窒素、鉱物源、および増殖因子からなる。適切な炭素源の例には、グリセロールおよび様々な単糖(グルコース、マンノース、フルクトース、キシロース、リボースなど)、ならびに他の炭水化物含有材料(デキストリン、デンプン、コーンミール、およびホエイなど)、ならびに紙および新聞紙を含めたセルロース含有培地が挙げられる。通常、発酵培地中の炭素源材料の量は、約0.1〜約10重量パーセントで変化する。発酵培地中の適切な窒素源は、有機、無機、および混合無機−有機窒素含有材料を含む。このような材料の例は、綿実かす、大豆かす、トウモロコシ胚芽粉、コーンスティープリカー、蒸留乾燥可溶性物、落花生かす、ペプトン化乳、カゼインおよび様々なアンモニウム塩である。鉱物および増殖因子の添加もまた、本発明の生理活性化合物の生成に役に立つ場合がある。適切な鉱物および増殖因子の例には、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム、塩化第一コバルト、硫酸亜鉛、および様々な酵母および乳製品が挙げられる。生成物は、有機溶媒を使用して水層から単離することができ、ここで有機溶媒は、ベンゼン、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、他の有機溶媒および抽出緩衝液でよい。
【0078】
本発明の他の態様では、本発明の生理活性化合物は、微生物の固体発酵によって生成することができる。本発明の他の態様では、本発明のフェナジン化合物、および上記の方法のいずれかによって同定される異なる置換基を有する他の関連する化合物は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY、第4版、(Wiley、1992年);CareyおよびSundberg、ADVANCED ORGANIC CHEMISTY、第3版、第AおよびB巻(Plenum、1992年)、およびGreenおよびWuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS、第2版、(Wiley、1991年)において記載されているような当業者に公知の技術および材料を使用して化学的に合成することができる。本発明の化合物のための出発物質は、標準的な技術および市販の前駆体材料(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wis.)、Sigma Chemical Co.(St.Louis、Mo.)、Lancaster Synthesis(Windham、N.H.)、Apin Chemicals,Ltd.(New Brunswick、N.J.)、Ryan Scientific(Columbia、S.C)、Maybridge(Cornwall、England)およびTrans World Chemicals(Rockville、Md.)から入手可能であるものなど)を使用して得ることができる。
【0079】
本発明の化合物を合成するための本明細書に記載する手順は、保護および脱保護(例えば、アセタール基の形成および除去)の1つまたは複数のステップを含む場合がある。さらに、下記で開示している合成手順は、カラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)、再結晶、蒸留、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)など様々な精製を含むことができる。また、化学反応生成物の同定および定量化のための化学技術において周知の様々な技術(プロトンおよび炭素−13核磁気共鳴(Hおよび13C NMR)、赤外および紫外線分光法(IRおよびUV)、X線結晶構造解析、元素分析(EA)、HPLCおよび質量分析法(MS)など)も同様に使用することができる。保護および脱保護、精製および同定および定量化の方法は、化学技術において周知である。
【0080】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物もまた、本明細書において企図されている。プロドラッグについての議論は、T.HiguchiおよびV.Stella、Prodrugs as Novel Delivery Systems(1987年)A.C.S.Symposium Seriesの14、およびBioreversible Carriers in Drug Design、(1987年)Edward B.Roche(編)、American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Pressに提供されている。化合物(例えば、薬物前駆体)がin vivoで変換されて式I〜IVの化合物がもたらされることは、例えば、血液中の加水分解によるなど様々な機構(例えば、代謝または化学過程)によって起こることができる。例えば、式I〜IVの化合物、または化合物の薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含有する場合、プロドラッグは、酸基の水素原子の、例えば、(C〜C10)アルキル、低級アルカノイルオキシメチル、(C〜C10)1−(アルカノイルオキシ)エチル、(C〜C10)1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、(C〜C10)アルコキシカルボニルオキシメチル、(C〜C)1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、(C〜C10)1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチルなどの基による置換によって形成されるエステルを含むことができる。
【0081】
他の態様では、本発明は、治療有効量の少なくとも1種の式I〜IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、エステル、もしくは互変異性体と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象とする。
【0082】
さらに別の態様では、本発明は、患者において、代謝症候群、異脂肪血症、心血管疾患、末梢神経系および中枢神経系の障害、血液病、癌、炎症、呼吸器疾患、胃腸疾患、糖尿病、ならびに非アルコール性脂肪肝疾患などの疾患または障害を治療する方法を対象とする。この方法は、患者に少なくとも1種の有効量の式I〜IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、エステル、もしくは互変異性体を投与するステップを含む。この方法によって治療することができる好ましい疾患には、炎症性または免疫疾患、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、急性呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、または多発性硬化症が挙げられる。この方法によって治療することができるさらなる好ましい疾患には、糖尿病、冠動脈心疾患を含めた高脂血症、癌または増殖性疾患が挙げられる。
【0083】
IV 医薬製剤および投与方法
本明細書に記載の方法は、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル、および任意選択で他の治療的および/または予防的成分と共に、上記の分子(分子は、好ましくは上記で詳細を説明した式I、II、II、またはIVである)を含む医薬組成物を使用する。このような賦形剤には、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどの液体が挙げられる。非液体配合物のための適切な賦形剤はまた、当業者に公知である。薬学的に許容される塩を、本発明の組成物において使用することができ、例えば、鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など)、および有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩など)が挙げられる。薬学的に許容される賦形剤および塩の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Easton、Pennsylvania:Mack Publishing Company、1990年)において入手可能である。
【0084】
さらに、湿潤剤または乳化剤、生理的緩衝物質、界面活性剤などの補助物質は、このようなビヒクル中に存在することができる。生理的緩衝液は、薬理学的に許容され、所望のpH、すなわち、生理学的に許容できる範囲のpHで製剤を提供する任意の溶液でよい。緩衝液の例には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、ハンクス緩衝生理食塩水などが挙げられる。
【0085】
意図する投与方法によって、医薬組成物は、固形、半固形または液体剤形(例えば、錠剤、坐薬、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏、ローション剤または同種のものなど)の形態、好ましくは正確な投与量の単回投与に適した単位剤形である場合がある。組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、有効量の選択された薬物を含み、さらに、他の医薬品、補助剤、希釈剤、緩衝液などを含む場合がある。
【0086】
本発明は、1種または複数の薬学的に許容される担体、ならびに任意選択で他の治療的および/または予防的成分と共に、異性体、異性体のラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含めた本発明の化合物を含む医薬組成物を含む。
【0087】
一般に、本発明の化合物は、許容される投与方法のいずれかによって治療有効量で投与される。適切な用量範囲は、治療を受ける疾患の重篤度、対象の年齢および相対的な健康、使用する化合物の効力、投与の経路および形態、投与の対象とする徴候、ならびに関与する医師の選択および経験などの数多くの要因によって決まる。このような疾患を治療する当業者であれば、過度の実験をすることなしに、個人の認識および本出願の開示によって、所与の疾患のための治療有効量の本発明の化合物を確認することができるであろう。
【0088】
したがって、本発明の化合物は、経口(口腔および舌下を含めた)、直腸、経鼻、局所、肺、膣、または非経口(筋内、動脈内、くも膜下腔内、皮下および静脈内を含めた)投与に適したもの、あるいは吸入もしくは通気による投与に適した形態のものを含めた、医薬製剤として投与することができる。好ましい投与方法は、病気の程度によって調節することができる便利な毎日の投与計画を使用する静脈内または経口である。
【0089】
固体組成物について、従来の無毒性の固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載するような活性化合物と、賦形剤(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなど)中の任意選択の医薬補助剤とを溶解、分散させるなどによって調製し、それによって溶剤または懸濁剤を形成することができる。所望であれば、投与される医薬組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなどの少量の無毒性補助物質を含有する場合がある。このような剤形を調製する実際の方法は公知であり、または当業者には明らかであろう。例えば、上記で参照したRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【0090】
経口投与のために、組成物は一般に、錠剤、カプセル剤、ソフトゲルカプセル剤の形態をとり、または水溶液もしくは非水溶液、懸濁剤またはシロップ剤の場合がある。錠剤およびカプセル剤が、好ましい経口投与形態である。経口使用のための錠剤およびカプセル剤は、ラクトースおよびコーンスターチなどの1種または複数の通常使用される担体を含む場合がある。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、典型的に加えられる。典型的には、本発明の化合物は、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどの経口で無毒性の薬学的に許容される不活性な担体と合わせることができる。さらに、所望または必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤もまた混合物中に組み込むことができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖(グルコースまたはβラクトースなど)、コーン甘味料、天然および合成のガム(アカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形において使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤には、これらだけに限らないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0091】
したがって、例えば、カプセル剤は、投与単位が100mgの本発明の化合物、100mgのセルロースおよび10mgのステアリン酸マグネシウムであるように、従来の手順によって調製することができる。多数のユニットのカプセル剤もまた、標準的な2つの部分から成る硬質ゼラチンカプセル各々に、100mgの粉末活性成分、150mgのラクトース、50mgのセルロース、および10mgのステアリン酸マグネシウムを充填することによって調製することができる。あるいは、錠剤は、投与単位が100mgの本発明の化合物、150mgのラクトース、50mgのセルロースおよび10mgのステアリン酸マグネシウムであるように、従来の手順によって調製することができる。多数の錠剤もまた、投与単位が100mgの本発明の化合物であり、他の成分は0.2mgのコロイド状二酸化ケイ素、5mgのステアリン酸マグネシウム、250mgの微結晶性セルロース、10mgのデンプンおよび100mgのラクトースの場合があるように、従来の手順によって調製することができる。適切なコーティングを塗布し、嗜好性を増し、または吸収を遅らせることができる。
【0092】
液体懸濁剤が使用される場合、活性剤は、任意の経口で無毒性の薬学的に許容される不活性担体(エタノール、グリセロール、水など)、ならびに乳化剤および懸濁化剤と合わせることができる。所望であれば、香味剤、着色剤および/または甘味剤もまた加えることができる。本明細書における経口製剤に組み込むための他の任意選択の成分には、それだけに限らないが、保存剤、懸濁化剤、増粘剤などが挙げられる。
【0093】
非経口製剤は、液体の溶液剤もしくは懸濁剤、注射の前に液体中で可溶化または懸濁するのに適した固形、または乳剤として従来の形態に調製することができる。好ましくは、無菌の注射用懸濁剤は、適切な担体、分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して当技術分野で公知の技術によって製剤する。無菌の注射用製剤はまた、無毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射剤または懸濁剤の場合がある。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中に、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の、不揮発性油、脂肪エステルまたはポリオールは、溶媒または懸濁媒として従来法で用いられる。さらに、非経口投与は、一定のレベルの投与量が維持されるような遅効性放出または持続放出システムの使用を伴う場合がある。
【0094】
非経口投与には、関節内、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、および皮下経路が挙げられ、水性および非水性の等張性滅菌注射液を含み、それは抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、および製剤を意図したレシピエントの血液と等張性にする溶質、ならびに水性および非水性の無菌懸濁剤(懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含む場合がある)を含有する場合がある。特定の非経口経路を介した投与は、本発明の製剤を、無菌の注射器または持続注入システムなどのいくつかの他の機械的装置によって推進する針またはカテーテルを通して患者の体に導入されることを伴う場合がある。本発明によって提供される製剤は、シリンジ、注射器、ポンプ、または非経口投与のために当技術分野で認識されている任意の他の装置を使用して投与することができる。
【0095】
好ましくは、無菌の注射用懸濁剤は、適切な担体、分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して当技術分野で公知の技術によって製剤する。無菌の注射用製剤はまた、無毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射剤または懸濁剤の場合がある。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中に、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の、不揮発性油、脂肪エステルまたはポリオールは、溶媒または懸濁媒として従来法で用いられる。さらに、非経口投与は、一定のレベルの投与量が維持されるような遅効性放出または持続放出システムの使用を伴う場合がある。
【0096】
非経口投与のための本発明による調製品には、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁剤、または乳剤が挙げられる。非水溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油およびトウモロコシ油など)、ゼラチン、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。このような剤形はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含有することができる。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、滅菌剤を組成物に組み込むことによって、組成物を照射することによって、または組成物を加熱することによって殺菌することができる。それらはまた、滅菌水、またはいくつかの他の無菌の注射用媒体を使用して、使用の直前に製造することができる。
【0097】
製剤は、等張剤を任意選択で含有する場合がある。製剤は、好ましくは等張剤を含有し、グリセリンが最も好ましい等張剤である。グリセリンの濃度は、それが使用される場合、当技術分野において公知の範囲、例えば、約1mg/ml〜約20mg/mlである。
【0098】
非経口製剤のpHは、ホスフェート、アセテート、TRISまたはL−アルギニンなどの緩衝剤によって制御することができる。緩衝剤の濃度は、好ましくは保存の間のpHの緩衝を実現し、pHを標的pH±0.2pHユニットに維持するのに適切である。好ましいpHは、室温で測定する場合約7〜約8である。
【0099】
Tween20(登録商標)(ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン)、Tween40(登録商標)(ポリオキシエチレン(20)モノパルミチン酸ソルビタン)、Tween80(登録商標)(ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸ソルビタン)、プルロニックF68(登録商標)(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、およびPEG(ポリエチレングリコール)などの薬学的に許容される可溶化剤などの他の添加剤を、製剤に任意選択で加えることができ、製剤がプラスチック材料と接触する場合有用である場合がある。さらに、非経口製剤は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを含有する場合がある。
【0100】
無菌注射剤は、適切な溶媒中に、必要に応じて上記で列挙した他の成分の様々なものと共に、本発明の化合物の1種または複数を必要とされる量で組み込むことによって、次いで濾過滅菌によって調製される。一般に、分散物は、様々な殺菌した活性成分を、塩基性分散媒および上記で列挙したものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。無菌の注射剤の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それによって活性成分および予め無菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。したがって、例えば、注射による投与に適した非経口組成物は、10容量%のプロピレングリコールおよび水中の1.5重量%の活性成分を撹拌することによって調製する。溶液剤は、塩化ナトリウムで等張性にされ、殺菌される。
【0101】
代わりに、本発明の医薬組成物は、直腸投与のために坐薬の形態で投与することができる。これらは、薬剤を、室温で固体であるが直腸の温度で液体であり、したがって直腸内で溶解し薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製することができる。このような材料には、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0102】
本発明の医薬組成物はまた、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することができる。このような組成物は、医薬製剤の当技術分野において周知の技術によって調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンもしくは窒素などの噴射剤、および/または他の従来の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液剤として調製することができる。
【0103】
局所の薬物送達のための好ましい製剤は、軟膏およびクリーム剤である。軟膏は、典型的にはペトロラタムまたは他の石油誘導体をベースする半固形調製品である。選択された活性剤を含有するクリーム剤は、当技術分野において公知であるように、粘稠液体または水中油型もしくは油中水型の半固形乳剤である。クリーム基剤は、水洗性であり、油相、乳化剤および水相を含有する。「内部」相とも称される場合がある油相は一般に、ペトロラタムおよび脂肪アルコール(セチルアルコールまたはステアリルアルコールなど)からなる。水相は通常、必ずしもそうではないが、容量で油相を超え、一般に保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、一般に非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤である。使用される特定の軟膏またはクリーム基剤は、当業者には理解されるであるように、最適な薬物送達を実現する。他の担体またはビヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性で安定的な非刺激性および非感作性であるべきである。
【0104】
口腔投与のための製剤には、錠剤、ロゼンジ、ゲル剤などが挙げられる。代わりに、口腔投与は、当業者には公知であるような経粘膜的送達システムを使用して達成することができる。本発明の化合物はまた、従来の経皮的薬物送達システム、すなわち、体の表面に貼られる薬物送達装置としての役割を果たす積層状構造内に薬剤が典型的には含有されている経皮的「パッチ」を使用して、皮膚または粘膜組織を通して送達することができる。このような構造中で、薬物組成物は、上側の支持層の下にある層、または「レザバー」中に典型的には含有される。積層状装置は、単一のレザバーを含有する場合があり、または多数のレザバーを含有する場合があり。一実施形態では、レザバーは、薬物送達の間にシステムを皮膚に貼りつける役割を果たす、薬学的に許容されるコンタクト接着性材料のポリマーマトリックスを含む。適切な皮膚コンタクト接着性材料の例には、それだけに限らないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどが挙げられる。代わりに、薬物含有レザバーおよび皮膚へのコンタクト接着剤は、分離した別個の層として存在し、接着剤がレザバーの下にあり、レザバーはこの場合、上記のようなポリマーマトリックスの場合があり、または液体もしくはゲルレザバーの場合があり、またはいくつかの他の形態をとる場合がある。装置の上面の役割を果たすこれらの積層材中の支持層は、積層状構造の主要な構造要素として機能し、装置にその可撓性の大半を与える。支持層のために選択した材料は、活性剤および存在する任意の他の材料に対して実質的に不透過性であるべきである。
【0105】
本発明の化合物は、特に気道へのエアロゾル投与のために製剤することができ、鼻腔内投与が含まれる。化合物は一般に、例えば5ミクロン以下程度の小粒径を有する。このような粒径は、当技術分野において公知の手段、例えば、微粉化によって得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、またはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な噴射剤と共に加圧パック中で提供される。エアロゾルはまた、好都合なことにはレシチンなどの界面活性剤を含有する場合がある。薬物の用量は、定量バルブによって制御することができる。代わりに、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリジン(PVP)など)などの適切な粉末基剤中の化合物の混合粉体で提供することができる。粉末担体は、鼻腔中でゲルを形成する。例えば、粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセル剤もしくはカートリッジ、または吸入器によってそこから散剤が投与される場合があるブリスターパック中の単位用量形態中に提供される場合がある。
【0106】
医薬有効量または治療有効量の組成物が対象に送達される。正確な有効量は、対象によって異なり、種、年齢、対象のサイズおよび健康、治療される状態の性質および程度、治療を行う医師の勧め、ならびに投与のために選択される療法または療法の組合せによるであろう。したがって、所与の状況についての有効量は、通常の実験によって決定することができる。本発明の目的のために、一般に治療量は、少なくとも1回用量で、約0.01mg/kg〜約40mg/kg体重、さらに好ましくは約0.1mg/kg〜約10mg/kgの範囲であろう。より大きな哺乳動物では、指示される1日投与量は、1日当たり1回または複数回で約1mg〜300mg、さらに好ましくは約10mg〜200mgの範囲である場合がある。対象は、問題の障害の徴候、症状もしくは原因の減少および/または軽減に必要とされる、あるいは生体系の任意の他の所望の変化をもたらすのに必要とされるだけの用量で投与を受けることができる。
【0107】
所望である場合、製剤は、活性成分の持続または制御放出投与のために適応される腸溶性コーティングと共に調製することができる。
【0108】
医薬調製品は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、調製品は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に再分割される。単位剤形は、包装された調製品の場合があり、包装は、小分けされた錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤などの分離量の調製品を含有する。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ自体の場合があり、または適切な数の包装された形態のこれらのいずれかである場合がある。
【0109】
V 他の薬剤
式I〜IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、もしくはエステルはまた、他の治療剤と組み合わせて投与することができる。例えば、式I〜IVの1種または複数の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、もしくはエステルは、HMG CoAレダクターゼ阻害剤化合物、HMG CoAシンテターゼ阻害剤、スクアレン合成阻害剤、スクアレンエポキシダーゼ阻害剤、ステロール生合成阻害剤、ニコチン酸誘導体、胆汁酸捕捉剤、アシルCoA:コレステロールO−アシルトランスフェラーゼ阻害剤、コレステリルエステル転送タンパク質阻害剤、オメガ3脂肪酸を含有する魚油、植物スタノールおよび/または植物スタノールの脂肪酸エステル、抗酸化剤、PPARアゴニスト、FXR受容体モジュレーター、LXR受容体アゴニスト、リポタンパク質合成阻害剤、レニンアンギオテンシン阻害剤、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質阻害剤、胆汁酸再吸収阻害剤、トリグリセリド合成阻害剤、スクアレンエポキシダーゼ阻害剤、低密度リポタンパク質受容体誘導剤または活性化剤、血小板凝集阻害剤、5−LOまたはFLAP阻害剤、ナイアシンまたはナイアシン受容体アゴニスト、5HT輸送体阻害剤、NE輸送体阻害剤、NPY1アンタゴニスト、NPY5アンタゴニスト、NPY2アゴニスト、NPY4アゴニスト、レプチン、レプチンアゴニスト/モジュレーター、レプチン誘導体、オピオイドアンタゴニスト、CNTF、CNTF誘導体、CNTFアゴニスト/モジュレーター、セロトニン再取込み阻害剤、GLP−1アゴニスト、PDE阻害剤、UCP活性化剤、リパーゼ阻害剤、脂肪酸輸送体阻害剤、ジカルボン酸輸送体阻害剤、グルコース輸送体阻害剤、リン酸輸送体阻害剤、抗糖尿病薬、降圧剤、抗異脂肪血症剤、アポリポタンパク質−B分泌/ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(apo−B/MTP)阻害剤、ドーパミンアゴニスト、アポA1ミラノコレステロール逆輸送阻害剤、脂肪酸結合タンパク質阻害剤(FABP)、および脂肪酸輸送体タンパク質阻害剤(FATP)などからなる群から選択される1種または複数のさらなる活性成分と共に投与することができる。他の態様では、さらなる活性剤には、これらだけに限定されないが、エストロゲン、IGF、オステオプロテグリン(OPG)、カルシトニン、ビスホスホネート、ビタミンD3もしくはその類似体、スタチン、アドロゲン、フッ化塩、ビタミン、ミネラル補給剤、栄養補給剤、およびこれらの組合せの場合がある。さらなる薬剤はまた、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、バンコマイシン、および/またはその他などの抗生物質である場合がある。このさらなる活性剤は、対象に、本発明の式I〜IVの化合物の投与の前、同時または後に投与することができる。それだけに限らないが、非ステロイド性抗炎症薬および副腎皮質ステロイド、ならびに抗ウイルス薬(それだけに限らないが、リビビリン、ビダラビン、アシクロビルおよびガンシクロビルが挙げられる)が挙げられる抗炎症薬もまた、本発明の組成物中に合わせることができる。
【0110】
自己免疫疾患、炎症、炎症性疾患、および他のこのようなサイトカイン介在障害の場合、さらなる薬剤(複数可)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(ジクロフェナク、ジフルニサル、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(セレコキシブ、ロフェコキシブなど)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン、メチルプレドニゾンなど)または他の免疫抑制剤(メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、アザチオプリンなど)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(注射用金剤、ペニシリアミン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジンなど)、TNF−α阻害剤(エタネルセプト、インフリキシマブなど)、他のサイトカイン阻害剤(可溶性サイトカイン受容体、抗サイトカイン抗体など)、他の免疫修飾剤(シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシンなど)および麻酔剤(ヒドロコドン、モルフィン、コデイン、トラマドールなど)からなる群から選択することができる。
【0111】
高脂血症、糖尿病、インスリン抵抗性、および肥満症を含めた関連する状態または合併症の場合、このようなさらなる薬剤(複数可)は、インスリンまたはインスリン模倣物質、スルホニル尿素(アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、トルブタミドなど)または他のインスリン分泌促進剤(ナテグリニド、レパグリニドなど)、チアゾリジンジオン(ピオグリタゾン、ロシグリタゾンなど)または他のペルオキシソーム増殖薬活性化受容体(PPAR)アゴニスト、フィブラート(ベザフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロゾルなど)、ビグアニド(メトホルミンなど)、スタチン(フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンなど)または他のヒドロキシメチルグルタリル(HMG)CoAレダクターゼ阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ミグリトール、ボグリボースなど)、胆汁酸結合樹脂(コレスチラミン、セレスチポールなど)、高密度リポタンパク質(HDL)低下剤(アポリポタンパク質A−I(アポAI)、ナイアシンなど)、プロブコールおよびニコチン酸からなる群から選択することができる。好ましいさらなる薬剤には、例えば、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、フィブラートまたはスタチンが挙げられる。
【0112】
本発明の式I〜IVの化合物との組合せにおいて有用なHMG CoAレダクターゼ阻害剤化合物の非限定的例は、ロバスタチン(例えば、Merck & Co.から入手可能なMEVACOR(登録商標))、シンバスタチン(例えば、Merck & Co.から入手可能なZOCOR(登録商標))、プラバスタチン(例えば、Bristol Meyers Squibbから入手可能なプラバコール(登録商標))、アトルバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、CI−981、リバスタチン(ナトリウム7−(4−フルオロフェニル)−2,6−ジイソプロピル−5−メトキシメチルピリジン−3−イル)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプタノエート)、ロスバスタチンカルシウム(AstraZeneca PharmaceuticalsからのCRESTOR(登録商標))、ピタバスタチン(日本のNegma KowaのNK−104など)などである。
【0113】
本発明の式I〜IVの化合物との組合せにおいて有用なHMG CoAシンテターゼ阻害剤の非限定的例は、例えば、L−659,699((EE)−11−[3’R−(ヒドロキシ−メチル)−4’−オキソ−2’R−オキセタニル]−3,5,7R−トリメチル−2,4−ウンデカジエン酸)などである。
【実施例】
【0114】
下記は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、例示の目的のためのみに示すものであり、決して本発明の範囲の限定を意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するために努力をしたが、いくらかの実験誤差および偏差は当然ながら許容されるべきである。
【0115】
(実施例1)
フェナジン誘導体合成のための微生物
本発明の化合物を、微生物、特にLysobacter antibioticus ATCC(r)9311(29479)からの下位分離物、および指定されたMC−4を使用して合成した。SD−38寒天プレート(表1)(0.3%カゼイン;0.25%醸造用酵母;0.13%CaCl2)発酵培地中で、Lysobacter antibioticus ATCC(r)9311(29479)を24時間振盪しながら増殖させることによってMC−4を単離した。
【0116】
【表1−1】

MC−4を同じ培地組成の寒天斜面に移し、28℃でインキュベートした。培養の24時間後、10mlの発酵ブロスを5mlの塩化メチレンと混合し、相へと落ち着かせた。混合物を室温で3日間インキュベートした(作業台)。上層の水相は、顕著な増殖を示し、SD−38寒天プレート上に引き続いて表面塗抹し、28Cで7日間インキュベートした。MC−4(黒い点が中央にある茶色のコロニー;コロニーは、暗い濃厚色素を生じる)を含めたいくつかのコロニーを単離した。
【0117】
式IIIまたはIVの化合物を、制御条件下にてMC−4下位分離物の好気性発酵を使用して生成した。
【0118】
生理活性化合物の発酵生成
式IIIまたはIVの化合物を、制御条件下にてMC−4下位分離物の好気性発酵を使用して生成した。
【0119】
MC−4下位分離物の好気性発酵のための一方法は、液内培養発酵法を用いた。発酵培地は、水中に成分を溶解また懸濁させ、続いてこのように得られた培地を高圧蒸気殺菌または蒸気加熱によって殺菌することによって調製した。殺菌した培地を16℃〜45℃の温度に冷却し、微生物で播種し、その後振盪フラスコまたは据え置き型のタンク発酵槽を使用した通気と撹拌とを行いながら発酵が行われた。振盪フラスコ中では、フラスコを撹拌し、播種された培地と空気との均質混合をもたらすことによって通気が行われる。据え置き型のタンク発酵槽中では、ディスクタービン、羽根車、またはオープンタービンまたはプロペラの形態をとる場合があるインペラーによって、撹拌が行われる。通気は、空気または酸素を撹拌された混合物中に散布することによって行われる。10〜48時間の期間発酵を進めた。
【0120】
振盪フラスコ発酵
寒天斜面(上記)からの微生物増殖の一部を使用して、5mlの種培地SCM(表2)を含有する18mm×150mmの種子管を播種した。
【0121】
【表2−1】

【0122】
【表2−2】

播種した種子を、28℃で16〜24時間振盪した。種子管からの微生物増殖の1ml部分を、100mlの産生培地(PCM、表3)を含有する300mlのTunair Ful−Bafフラスコに移した。
【0123】
【表3】

播種したフラスコを振盪しながら28℃で16〜24時間インキュベートした(180rpmの旋回シェーカー、5cm行程)。式IIIまたはIVの化合物への前駆体の生成が初めてこのブロス中で観察された。
【0124】
発酵ブロスの生物活性を、Saccharomyces cerevisiae(RSY)およびAspergillus terreus(MEVS)を伴う寒天拡散アッセイによってアッセイした。
【0125】
25ガロンの撹拌ジャー発酵
培養物の懸濁剤約1mlを含有する低温バイアルを使用して、300mlのTunair Ful−Baf振盪フラスコ中の100mlの種培地(SCM)を播種した。播種したフラスコを、16〜24時間振盪しながら28℃で約16〜24時間インキュベートした(180rpm旋回シェーカー、5cm行程)。
【0126】
十分な増殖が得られた後、10ml分量の微生物増殖物を、500mlのSCMを含有する2LのErlenmeyer種フラスコ4つに無菌的に移した。播種した培地を、振盪しながら28℃で16〜24時間インキュベートした(180rpm旋回シェーカー、5cm行程)。
【0127】
これらの4つのフラスコからの微生物増殖をプールし、25ガロンのAirmentorを播種するために使用した。産生発酵槽は、20ガロン(80リットル)の産生培地(CPM)を含有し、それを121℃で40分間「蒸気殺菌」した。播種前に培地を28℃に冷却した。発酵を約20時間行い、155rpmで撹拌し、1CFMの空気を散布した。シリコーンをベースとする消泡剤を使用して、発泡を必要に応じ制御した。
化合物の化学的単離
上記のように調製した発酵ブロス(80リットル)を、30Lの塩化メチレンを含有する貯蔵タンクに移し、断続的に撹拌した。化合物の抽出を一晩行った。混合物を分離させた後、下層の有機層を除去した。塩化メチレン抽出物をスラリーに濃縮し、次いで濾過助剤を加えた。
【0128】
風乾させた粗試料を風乾し、次いでシリカゲルカラム(1部の試料および10部のシリカゲル(200〜300メッシュ、Natland、NC))に充填した。シリカゲルカラムを試料で充填した後、カラムを塩化メチレンで溶出させた。カラムはチェリーピンク色、オレンジ色、黄褐色、ピンク色、黄色、および茶色のバンドを含めた様々なバンドに分解された。ピンク色のバンドを含有するリッチカット溶出液を回収し、真空中で乾燥し、1.5gの化合物を得た。
【0129】
このようにして得た1グラムの化合物を50mlのアセトンに溶解し、(最小限の水中でスラリーにした)1グラムのNaOHを溶液に加えた。混合物を約1時間撹拌し、沈殿物を遠心分離によって回収し、沈殿物をアセトンで3度、またはアセトン洗浄液が透明となるまで洗浄した。このようにして得られた濃緑色の沈殿物を風乾し、約1.5グラムの式IIIの化合物を得た。式IVの化合物は、KOHを使用して調製することができる。
【0130】
(実施例2)
抗関節炎作用:コラーゲン誘導関節炎マウスモデル
マウスにおけるII型コラーゲン誘導関節炎(CIA)は、関節リウマチと共通のいくつかの病理的、免疫的および遺伝的特徴を有する関節炎の一般に認められている実験モデルである。この疾患は、マウスの感受性系統を関節軟骨の主要な成分であるII型コラーゲンで免疫化することによって誘導される。免疫化した動物の大部分で進行性の炎症性関節炎が発症し、臨床的に紅斑および浮腫(冒された足の幅が典型的には100%増大する)によって特徴付けられる。関節のゆがみおよび脊椎炎への疾患の悪化について評価するために、臨床上のスコアリングインデックスが開発されてきた。冒された関節の組織変化は、滑膜炎、パンヌス形成、ならびに軟骨および骨のびらんを示し、これもまたインデックスによって表すことができる。免疫学の実験室の知見には、II型コラーゲンに対する高い抗体レベルおよび高γグロブリン血症が含まれる。
【0131】
この研究は、CIAモデルを使用して処置による免疫パラメーターの変化を観察することによって、式IIIの化合物の抗炎症および抗関節炎作用を評価するために設計した。動物に、経口および非経口両方の送達を使用して、経口副腎皮質ステロイド、Enbrel、注射用TNF阻害剤、および式IIIの化合物を投与した。75匹のDBA/1 LacJマウス(8〜10週間齢)をジャクソン研究所から入手し、実験の前10日間本発明者らの施設で隔離した。実験の開始時には全てのマウスは、16グラムを超える重量であった。マウスを後眼窩穿刺によって前採血し、フロイント完全アジュバント(FCA)中の100μgのウシII型コラーゲンを尾の付け根の皮内に注射した。マウスを、疾患の発症について毎日の検査によってモニターした。免疫化後20日〜42日にCIAを発症したマウスを、5つの投与群の1つに輪番に割り当て(発症日を標準化するため)、10匹のマウスを各群に割り当てた。投与のために、式IIIの化合物を無菌の生理食塩水中で可溶化した。経口投与によって送達される薬物を促進するために、カルボキシメチルセルロースを全ての胃管栄養用溶液中で4%の最終濃度まで加えた。化合物を下記のスケジュールによって投与した。
1群、100μlの無菌の生理食塩水ビヒクル、腹腔内(i.p.)注入を週3回。
2群、式IIIの化合物を含有する100μlの無菌の生理食塩水、40mg/kgの腹腔内注入を週3回。
3群、100μgのEnbrelを含有する100μlの無菌の生理食塩水、腹腔内注入を週3回。
4群、式IIIの化合物を含有する100μlの無菌の生理食塩水、40mg/kgの胃管栄養法を週5回。
5群、プレドニゾロンを含有する100μlの無菌の生理食塩水、10mg/kgの胃管栄養法を週5回。
【0132】
マウスを毎週秤量し、全体的な健康状態を記録した。関節炎の最初の発症後7週間まで、1週間に5回外観検査し、1週間に3回行うカリパス測定による足腫脹を定量化することによって、関節炎の動物を臨床的に評価した。全ての動物を、疾患発症の時から個々に評価し、適切な知見を臨床報告フォームに記入した。
【0133】
免疫学的評価
試験の開始前、引き続いて関節炎の発症時および試験の完了時に全てのマウスを前採血した。血清を分離し、−80℃で保存した。ELISAアッセイを行って、抗II型コラーゲン抗体レベルおよび総免疫グロブリンレベルを決定した。
抗コラーゲン抗体レベル
ELISAプレート(Nunc−Immuno plates、Denmark)を、5μgのII型コラーゲンを含有する100μlのコーティング緩衝液(0.4Mのリン酸緩衝液、ph7.6)で4℃にて一晩コーティングした。0.05%Tween20(Sigma、St.Louis、MO)を含有するPBSでプレートを3度洗浄し、非特異的結合を、5%脱脂乳を含有するPBSによって4℃で一晩ブロックした。5%の乳/PBS中で1/100に希釈したマウス血清を各ウェルに加え、4℃で一晩インキュベートした。引き続いて、0.05%Tween−20を含有するPBS中でプレートを6度洗浄し、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIg(Southern Biotechnology Associates、Birmingham、AL)と共に37℃で1時間インキュベートした。プレートを再び6度洗浄し、クロマトゲン基質としてリン酸p−ニトロフェニル(Sigma、St.Louis、MO)を使用して40分間暗闇で増殖させた。このように得られた光学濃度を、UV max分光光度計(Molecular Devices、CA)を使用することによって405nmで測定した。陰性の前採血対照血清および標準的なマウス抗CII抗血清を各プレート上で滴定し、アッセイの均一性を確保した。抗体結合を、OD405ユニット−ブランクとして表した。
【0134】
免疫グロブリンレベル
ELISAアッセイを使用して血清Igレベルを評価した。Dynatech Immulon I96ウェルELISAプレートを、PBS中の1/250希釈度のウサギ抗マウスIgG(Axell)で一晩4℃にてコーティングした。0.05%Tweenを含有するPBSでプレートを3度洗浄し、PBS中のさらなる5%BSAでブロックした。PBS/BSA中で1/400に希釈した血清試料を3連で分注し、1/500〜1/256,000のマウスIg参照血清(Miles)の倍加希釈倍率によって参照曲線を作成した。プレートを室温で一晩インキュベートし、PBS/Tweenで3度洗浄した。アルカリホスファターゼが結合したヤギ抗IgG100μl(Fisher−Biotek)(乳/PBS/Tween中1:500希釈)を加え、37℃で1時間インキュベーションを続けた。PBS/Tweenで3度洗浄した後、ジエチロールアミン緩衝液中の100μlのリン酸p−ニトロフェニル溶液(PNPP錠剤、Sigma)を各ウェルに加え、20分間暗闇で反応を続けさせた。光分光計(Molecular Devices)を使用して405nmでプレートを読み取り、SOFTmax分析ソフトウェアパッケージを使用してデータを分析した。参照血清に由来する検量線を使用して、回帰分析によって試験試料中のIgレベルを計算した。
【0135】
血清サイトカインレベルの測定
終末血清サイトカインを、市販のキット(R&D Systems、MN)を使用してアッセイした。手短に言えば、ELISAプレートをモノクローナル抗IL−1、抗IL−6、または抗TNF□でコーティングした。プレートを、0.05%Tween20(Sigma、St.Louis、MO)を含有するPBSで3度洗浄した。次いで、PBS中の血清希釈物1:200(50μl)を加え、4℃で一晩インキュベートした。引き続いて、0.05%Tween−20を含有するPBS中でプレートを6度洗浄し、ビオチン化二次抗体と共に37℃で1時間インキュベートした。プレートを6度洗浄し、ストレプトアビジン−APKを加え、室温で40分間インキュベートした。次いで、プレートを6度洗浄し、クロマトゲン基質としてリン酸p−ニトロフェニル(Sigma、St.Louis、MO)を使用して暗闇で40分間増殖させた。UV max分光光度計(Molecular Devices、CA)を使用することによって、このように得られた光学濃度を405nmで測定した。メーカーによって提供された検量線に対する回帰分析によってサイトカインレベルを決定した。
【0136】
細胞の免疫応答
屠殺して脾臓およびリンパ節を取り出し、Con AおよびLPSに対するマイトジェン応答、およびII型コラーゲンに対する抗原増殖反応を、標準的な技術を使用して決定した。リンパ節および脾臓を回収し、1mlの細胞懸濁液(2.5×10/ml)を、12ウェル組織培養プレート(Costar、Corning、NY)中にて完全RPMI−1640培地中で様々な刺激剤と共に培養した。細胞を、マイトジェンまたは抗原の存在下5%CO雰囲気中37℃にて3日間インキュベートした。20□lのMTT(ミトコンドリア内酵素基質)溶液(5mg/ml;Sigma、St Louis、MO)を、ウェル毎に加えた。6時間後、培養上清を廃棄し、200□lの10%SDS溶液を各ウェルに加えた。37℃での一晩のインキュベーション後、マイクロプレート光分光計(Molecular Devices、CA)を使用して590nmでの光学濃度を読み取った。各細胞試料について抗原刺激に関して、細胞増殖の基準を提供する平均値およびOD値を記録した。抗原特異的応答は、(OD590[刺激された培養物]−OD590[自発的増殖培養物])/OD590[自発的増殖培養物]として表した。
コラーゲン誘導関節炎の臨床的知見
関与する足の数(図1)および全体の関節炎スコア(図2)に基づく疾患の進行についてマウスを評価した。この試験において、対照(生理食塩水処置)動物と比較した場合、大部分の化合物について有意な作用が観察された。
【0137】
関節炎発症後16日目に開始した群の間で、関与する足の数における有意差が観察された。プレドニゾロンを投与されたマウスは、対照マウスより有意に低い数の関節炎の足となり(p<0.002)、この差異は研究中続いた。Enbrelを投与されたマウスは、研究の25日目から28日目まで有意により低い数の関節炎の足となった(p<0.05)。式IIIの化合物は、投与経路に関わりなくこの研究において関与する足の数に有意に影響しなかった。
【0138】
足の数に対する影響と対照的に、式IIIの化合物は、この研究において関節炎スコアに対して著しい作用を及ぼすことが観察された(図2)。予想どおりに、確立した抗関節炎化合物であるプレドニゾロンおよびEnbrelの両方は、生理食塩水の対照処置マウスにおいて観察される疾患のレベル未満に関節炎スコアを有意に減少させた。
【0139】
プレドニゾロンによる処置によって、治療の開始後12日目から関節炎スコアにおける有意な減少(p<0.02)が達成され、17日目に非常に有意な作用(p<0.001)に達し、それは引き続き試験の残りを通して維持された。Enbrelによる処置によって、治療の開始後12日目から関節炎スコアにおける有意な減少(p<0.02)が達成されたが、有意な作用は治療の23日目まで維持されなかった。腹腔内投与を介した式IIIの化合物による処置によって、治療の開始後23日目から関節炎スコアにおいて有意な減少(p<0.02)が達成され、この作用は、24日目に非常に有意であった(p<0.007)。関節炎スコアにおける有意な減少は、23日目から試験の最後まで維持された。経口胃管栄養法による式IIIの化合物の投与は、この実験において関節炎スコアに統計的に有意な作用を及ぼさなかった。これらの知見は、本発明の化合物は有意な抗関節炎作用を有し、未関与の四肢への疾患の転移を抑制することによって作用を生じさせるのではなく、確立した関節炎を有する足における疾患の重症度を減少させるように作用することを示唆する。この作用機序は、対照化合物の両方、プレドニゾロンおよびEnbrelと異なるようである。
【0140】
抗II型コラーゲン抗体レベル
実験の前、疾患の発症時(投与の開始)、および研究の終わりにおける、マウスにおける抗CII抗体レベルのレベルを図3に示す。どのマウスも、II型コラーゲンの注射の前は検出可能なレベルの抗CII抗体を示さず、全てのマウスは、免疫化後に強い抗体応答を起こした。薬物療法の開始時に、5つの群全ての間の抗体価に有意差はなく、抗CII応答における同等性を示した。
【0141】
従前の知見と一致して、生理食塩水で処置されたマウスは、疾患発症において見られたレベルと比較した場合、上昇した終末抗CIIレベルを示した。処置の7週間後、2種の化合物は、抗CII価の増加に対して抑制性作用を及ぼした。プレドニゾロンは、疾患発症時にアッセイした力価と比較して抗CIIレベルの僅かな増加をもたらし、腹腔内を介して投与された式IIIの化合物は、発症におけるレベルと同様の力価の維持をもたらした。これらの結果は、対照マウスにおける終末抗CIIレベルと比較した場合、有意な減少(p<0.01)を生じさせた。これらの結果は、本発明の化合物が抗コラーゲン抗体応答の抑制によって活性を及ぼしていることを示唆する。
【0142】
総免疫グロブリンレベル
前採血、発症および終末血液試料においてアッセイした総血清Igレベルを図4に示す。予想どおりに、コラーゲン関節炎の誘導は、総血清Igレベルの著しい上昇を伴った。生理食塩水処置マウスにおいて、血清Igは上昇し続け、試験の終わりに非常に高いレベルでアッセイされた。しかし、これらの力価は、実験において個々のマウスの間で非常に可変性であった。
【0143】
終末採血においてプレドニゾロンおよび式IIIの化合物(腹腔内)の両方は、総血清Igレベルを減少させたが、疾患発症または試験の終わりの時点で、この減少は対照マウスにおいて観察されるレベルから有意差があるとはいえなかった。同様に、研究の終わりに全ての群において観察された総Igレベルの減少(または増加)は、疾患発症時にアッセイしたレベルから有意差があるとはいえなかった。したがって、データは、式IIIの化合物について全身性免疫抑制効果を支持しないが、さらなる研究によって免疫グロブリン産生に対する作用を明白にする必要があるであろう。
【0144】
血清サイトカインレベル
終末採血血清中のIL−1β、IL−6、およびTNF□のレベルは、全般的に低レベルとなり、治療に起因する変動は示さなかった。アッセイした全てのサイトカインについての標準は、一貫した感受性の曲線を生じ、これはアッセイが正確であったことを示す。しかし、従前のデータは、炎症性サイトカインは、これらのレベルが変化する場合があるが、コラーゲン関節炎において典型的には上昇することを示してきた。さらなる研究によって、式IIIの化合物が特異的炎症性サイトカインの調節によって抗関節炎作用を及ぼしているかを確立する必要があるであろう。
【0145】
細胞免疫応答
分裂促進因子であるコンカナバリンAおよびLPSに対するリンパ節細胞の応答、ならびにII型コラーゲンに対する抗原反応を図5に示す。
【0146】
投与群間でCon AまたはII型コラーゲンに対する応答において有意な変動が観察されなかった。式IIIの化合物で処置(腹腔内)されたマウスから回収されたリンパ球において、リンパ節細胞におけるLPSへの応答の有意な減少(p<0.05)が観察された。
【0147】
分裂促進因子であるコンカナバリンAおよびLPSに対する脾臓細胞の応答、ならびにII型コラーゲンに対する抗原反応を図6に示す。投与した化合物のいずれかで、脾臓細胞におけるマイトジェンまたは抗原反応について有意な作用は観察されなかった。
【0148】
(実施例3)
式IIIの化合物の抗高脂血活性
85匹の約8〜10週齢の雄性Syrian Goldenハムスター(FiB系統、BioBreeders、Fitchburg MA)を、実験処置の開始前に、敷きわらを有する個々のつり下げたポリスチレンケージに1週間順応させ、次いで25重量%のカゼイン、20重量%の水添ヤシ油、2重量%のサフラワー油、および0.15重量%のコレステロールを含有する半精製した高コレステロール食(HCD)を2週間与えた(表1)。次いで、一晩の絶食(16時間)の後にハムスターを採血し(0週)、総コレステロール、HDL−C、非HDL−C、およびトリグリセリドの血漿濃度を決定し、同様の開始時血漿HDL−Cレベルを有する17群(n=5/群)に分け、14日間1日1回式IIの化合物またはビヒクルを投与した。
【0149】
次いで、8日目(その日の胃管栄養摂取の前)および15日目(最後の胃管栄養摂取の24時間後)に、一晩の絶食(16時間)後、血漿総コレステロール、HCL−C、非HDL−C、およびトリグリセリドを測定した。マサチューセッツ大学−ローウェル研究所の動物管理委員会のガイドラインおよび米国学術研究会議、実験動物資源協会の実験動物の管理と使用に関する委員会によって作成されたガイドライン(DHEW出版番号85−23、1985年改正)に従って、ハムスターを管理した。ハムスターを、交互の12時間明/暗サイクルの環境を制御した室に収容し、実験プロトコルのために飼料が回収されること以外は自由に飼料および水を与えた。
【0150】
【表1−2】

半精製した飼料は、Research Diets、Inc.、New Brunswick、NJ.によって供給された。
【0151】
AIN−76Aげっ歯類飼料のためにS10001=ミネラルミックス(32)。
【0152】
AIN−76Aげっ歯類飼料のためにV10001=ビタミンミックス(32)。
血漿リポタンパク質コレステロールおよびトリグリセリド測定
0日目、8日目、および15日目に16時間絶食させたハムスターからヘパリン添加管に後眼窩洞を介して血液を回収した。1500×gで室温にて10分間遠心分離後血漿を回収し、血漿総コレステロールおよびトリグリセリド濃度を酵素的に測定した。血漿LDLコレステロール(超低密度、中密度、および低密度リポタンパク質コレステロールの組合せ)を、タングストリン酸試薬で沈殿させ、HDLコレステロールを上清中で測定した。LDLコレステロールの濃度を、血漿TCおよびHDLコレステロールの差異として計算した。疾病対策センターおよび国立心臓/血液/肺研究所(Atlanta、GA)の脂質標準化プログラムに参加することによって、血漿TCおよびHDLコレステロールの測定のために使用される手順の正確性および明確性を維持した。使用した全ての試薬は、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から供給された。各試料(Roche Pharmaceuticals、Basel、Switzerland)のために10μlの血漿を使用して、Cobas Mira Plus(登録商標)(Cobas Mira Plus(登録商標)は、Roche Diagnostic Systems、Inc.の登録商標である)臨床化学自動分析装置を使用して全てのアッセイを行った。
式IIIの化合物の抗高脂血症プロファイル
0日目に、類似の血漿非HDLコレステロールおよび総コレステロール濃度および体重に基づいて、全ての群を分別した。処置の8日目に、0.9mg/kg、1.8mg/kg、および3.6mg/kgの濃度で投与された式IIIの化合物は、ビヒクル対照と比較して各々−27%、−17%、および−21%の血漿総コレステロールの変化、ビヒクル対照と比較して各々−36%、−24%、および−26%の血漿非HDL−Cの変化、ビヒクル対照と比較して各々−2%、7%、および−4%の血漿HDL−Cの変化、ならびにビヒクル対照と比較して各々−37%、−14%、および−20%の血漿トリグリセリドの変化をもたらした。したがって、本発明の化合物は、患者の脂質プロファイルの減少に有用である。
【0153】
(実施例5)
錠剤の調製
式IIIの化合物(10.0g)をラクトース(85.5g)、ヒドロキシプロピルセルロースHPC−SL(2.0g)、ヒドロキシプロピルセルロースL−HPC、LH−22(2.0g)および精製水(9.0g)と混合し、このように得られた混合物を造粒、乾燥および粒度配合にかけ、このようにして得られた顆粒をステアリン酸マグネシウム(0.5g)と混合し、錠剤作製を行い、それによって錠剤毎に10mgの式IIIの化合物を含有する錠剤を得る。
【0154】
(実施例6)
対象への投与
実施例5において調製した錠剤を、対象に0時に提供する。1週間に亘り24時間毎に1つの錠剤を提供する。3回目の錠剤投与の後に、対象を神経変性事象にさらす。処置された対象は、処置されていない対象と比較してより重篤でない神経障害の症状を示す。
【0155】
本出願において参照された全ての印刷された特許および公開資料は、この参照によってその内容全体が本明細書に組み込まれている。
【0156】
本発明の好ましい実施形態を例示し説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更をそこで行うことができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II
【化11】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり、
は、NaまたはKである)を含む化合物。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がNaである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
対象を治療するための、請求項1に記載の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項5】
対象に有効量の式II
【化12】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり、
は、NaまたはKである)を含む化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を投与するステップを含む、自己免疫疾患について対象を治療または予防する方法。
【請求項6】
自己免疫疾患が関節炎である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
関節炎が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が毎日投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
式II
【化13】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり、Mは、NaまたはKである)を含み、Lysobacter antibioticusによって作製される化合物。
【請求項11】
がメチルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
がNaである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
Lysobacter antibioticusが、ATCC(r)アクセッション番号9311(29479)を有するMC−4である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
式II
【化14】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する低級アルキル、ハロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり、
は、NaまたはKである)の化合物の調製方法であって、
寒天培地(ACM)中、好適なpHおよび温度下でLysobacter antibioticusを増殖させるステップと、
産生培地(CPM)にLysobacter antibioticusを播種し、好適なpHおよび温度下で連続撹拌および通気しながら培養して、中間化合物を生成するステップと、
有機溶媒を使用することによって前記中間化合物をCPMから抽出するステップと、
前記有機溶媒を蒸発させて粗中間体を得るステップと、
水性MHOを粗中間体の有機溶液に加えるステップと、
遠心分離によって前記化合物を回収するステップとを含む方法。
【請求項15】
ACMが、0.3%のカゼイン(v/v)、0.25%の醸造用酵母(v/v)、0.13%のCaCl2(v/v)、および1.5%の寒天(v/v)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細菌が15〜37℃の温度範囲で増殖する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記細菌が4〜9のpH範囲で増殖する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
培養時間が約24〜200時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記有機溶媒が、ベンゼン、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、およびジクロロメタンからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−516690(P2010−516690A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546499(P2009−546499)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/051226
【国際公開番号】WO2008/089283
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(506151855)ジェイ ジェイ ファーマ,インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】JJ PHARMA,INC.
【Fターム(参考)】