説明

フェノール誘導体及びそれらを有効成分とする医薬

【課題】 優れたS1P3アンタゴニスト活性を有する医薬として有用なフェノール誘導体を提供する。
【解決手段】 一般式(1)
【化1】


[式中、Rは水素原子又はPO(OH)を示す]
で表されるフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なフェノール誘導体、その塩及び水和物並びにそれらを有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3リセプターアンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、スフィンゴシン代謝における中間代謝物にすぎないとみなされていたが、細胞増殖促進作用や細胞運動機能の制御作用を有することが報告されるに至り、アポトーシス作用、細胞形態調節作用、血管収縮などの多彩な生理作用を発揮する新しい脂質メディエーターであることが明らかとなってきている(非特許文献1、非特許文献2)。この脂質は細胞内セカンドメッセンジャーとしての作用と、細胞間メディエーターとしての二つの作用を併せ持つが、特に細胞間メディエーターとしての作用に関する研究が活発に行なわれており、細胞膜表面上に存在する複数のG蛋白質共役型受容体(Endothelial Differentiation Gene, EDG)を介して情報伝達がなされていることが報告されている(非特許文献1、非特許文献3)。現在S1P受容体にはEdg-1、Edg-3、Edg-5、Edg-6及びEdg-8の5つのサブタイプが知られており、各々S1P1、S1P3、S1P2、S1P4、S1P5とも呼ばれている。
これらS1P受容体に対する様々な研究から、この受容体へのアゴニスト活性あるいはアンタゴニスト活性を示す、いわゆるS1P受容体調節剤が多岐にわたる疾患に対し有効性を発揮する報告がなされるようになった。このようなS1P受容体調節剤としては、例えば特許文献1記載の例がある。
【0003】
【特許文献1】WO04074297号パンフレット
【非特許文献1】Y.Takuma et al., Mol. Cell. Endocrinol., 177, 3(2001).
【非特許文献2】Y. Igarashi, Ann, N.Y. Acad. Sci., 845, 19(1998).
【非特許文献3】H. Okazaki et al., Biochem. Biophs. Res. Commun., 190, 1104(1993).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、優れたS1P3アンタゴニスト活性を有するフェノール誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、S1P3アンタゴニストについて鋭意研究を重ねた結果、新規なフェノール誘導体が優れたS1P3アンタゴニスト作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は
1)一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、Rは水素原子又はPO(OH)を示す]
で表されるフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物、
2)R1が、PO(OH)である1)記載のフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物、
3)前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルホスホン酸モノエステル、
(R)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルホスホン酸モノエステル、
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール塩酸塩
(R)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール塩酸塩である請求項1記載のフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物。
4)1)〜3)の何れかに記載の化合物、薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3リセプターアンタゴニスト作用に基づく医薬、
5)気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症または敗血症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療薬である4)記載の医薬、
6)動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の治療薬である4)記載の医薬、
7)1)記載の化合物、薬学的に許容される塩またはそれらの水和物及び薬学的に許容されうる担体を含有する医薬組成物、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により優れたS1P3アンタゴニスト作用を有し、かつ、S1P1アンタゴニスト作用が軽減されたフェノール誘導体の提供が可能となった。したがって、本発明化合物は、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症・インフルエンザウイルス・RSウイルス感染に基づくサイトカインストーム(過剰産生)、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症、黄班変性症の予防または治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における薬学的に許容される塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩又は酒石酸塩のような酸付加塩とナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などのアルカリ付加塩が挙げられる。
【0011】
本発明によれば、一般式(1)で表される化合物は、例えば以下に示すような経路Aにより製造することができる。
<合成経路A>
【0012】
【化2】

【0013】
合成経路Aで一般式(4)
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、Proはメチル基、ベンジル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチルジメチルシリル基、アセチル基又はt−ブトキシカルボニル基などのフェノールの一般的な保護基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示す]
で表される化合物は、一般式(3)
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、Rは前述の通り]
で表される化合物と一般式(2)
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、Aはハロゲン原子を示し、Proは前述の通り]
で表される化合物を塩基の存在下に作用させることによって製造することができる(工程A−1)。
【0020】
反応は、1,4−ジオキサン、THF、エーテルなどを反応溶媒として用い、n−ブリルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドなどの塩基、好ましくはn−ブリルリチウムを用い、−78℃にて一般式(3)で表される化合物を処理した後、一般式(2)で表される化合物を−78℃にて作用させ徐々に常温までゆるやかに昇温させながら反応させることができる。
【0021】
この反応において一般式(4−a)
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、Pro及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(3−a)
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、Rは前述の通り]
で表される光学活性な化合物と一般式(2)で表される化合物を塩基の存在下に作用させることによって不斉合成することができる。
【0026】
また、一般式(4−b)
【0027】
【化8】

【0028】
[式中、Pro及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(3−b)
【0029】
【化9】

【0030】
[式中、Rは前述の通り]
で表される光学活性な化合物と一般式(2)で表される化合物を塩基の存在下に作用させることによって不斉合成することができる。
【0031】
合成経路Aで一般式(5)
【0032】
【化10】

【0033】
[式中、Bocはt−ブトキシカルボニル基を示し、Pro及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(4)で表される化合物を酸分解した後に、t−ブトキシカルボニル基(Boc基)にて窒素原子を保護することによって製造することができる(工程A−2)。
【0034】
反応は、塩酸を溶解させたメタノール、エタノール、THF、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、好ましくは塩酸含有1,4−ジオキサンを用いて加熱還流下に反応させた後、塩基で中和しアミノエステル体を得た後に酢酸エチル、THF、DMF、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどを溶媒として用い、Boc2Oと0℃〜常温下に作用させることが好ましい。
合成経路Aで一般式(6)
【0035】
【化11】

【0036】
[式中、Proは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(5)で表される化合物を還元することによって製造することができる(工程A−3)。
【0037】
反応は、ボランや9−BBNのようなアルキルボラン誘導体、又は(iBu)2AlH、NaBH4、LiBH4、LiAlH4などの金属水素錯化合物、好ましくはLiBH4を用い、反応夜溶媒としてはTHF、1,4−ジオキサンやエタノール、メタノールなどを用い、0℃〜加熱還流下、好ましくは常温下にて行うことができる。
合成経路Aで一般式(7)
【0038】
【化12】

【0039】
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基又はベンジル基を示し、Proは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(6)で表される化合物を一般式(8)
P(OR) (8)
[式中、Rは前述の通り]
で表される化合物を反応させることによって製造することができる(工程A−4)。
【0040】
反応は、四臭化炭素及びピリジンの存在下、無溶媒もしくは塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、THF、エーテルなどを溶媒として少量用い、0℃〜常温下にて行うことができる。
【0041】
合成経路Aで一般式(1a)
【0042】
【化13】

【0043】
で表される化合物は一般式(7)で表される化合物を酸分解もしくはトリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージドなどの求核試薬で処理することによって製造することができる(工程A−5)。
【0044】
酸分解反応の場合、塩酸、臭化水素酸などの無機酸中、あるいはメタノール、エタノールなどの有機溶媒と無機酸との混合溶液中、加熱還流下に行うことができる。また好ましくはアセトニトリル、塩化メチレンなどを反応溶媒として用い、0℃〜常温下にトリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージドを用いるか、トルメチルシリルクロリドと臭化ナトリウム、又はヨウ化ナトリウムを作用させる。
合成経路Aで一般式(1b)
【0045】
【化14】

【0046】
で表せる化合物は、一般式(6)で表される化合物を酸分解するか、又は加水分解することによって製造することができる(工程A−6)。
【0047】
反応は、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの無機酸や有機酸中で常温下〜加熱還流下に行うか、あるいは塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの無機酸や有機酸にメタノール、エタノール、THF、1,4−ジオキサンなどの有機溶媒を加えて常温下〜加熱還流下に行うことができる。また、メタノール、エタノール、THF、1,4−ジオキサン、DMSO、DMFなどを反応溶媒として用い、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などの塩基の存在下、0℃〜加熱還流下、好ましくは80℃〜100℃にて行うことができる。
【0048】
なお、一般式(2)で表される化合物の合成法については、WO03029184号、WO03029205号、WO04026817号、WO04074297号、WO050444780号の各パンフレットに記載された方法によって製造することができる。
【0049】
本発明の医薬は、S1P3アンタゴニスト作用に基づく医薬である。S1P3アンタゴニストに関する研究として特許文献A〜Iや非特許文献A〜Hなどの報告がなされている。
特許文献E、非特許文献F〜Hは、S1P3アンタゴニストが気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症または敗血症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療または予防薬として有効であることが報告する。また、特許文献F〜Iは、S1P3アンタゴニストが動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症、黄班変性症などにも有効であることを示している。
【0050】
【特許文献A】WO02064616号パンフレット
【特許文献B】WO04010949号パンフレット
【特許文献C】WO04031118号パンフレット
【特許文献D】特開2003−137894号公報
【特許文献E】WO03020313号パンフレット
【特許文献F】特開2005−247691号公報
【特許文献G】WO07043568号パンフレット
【特許文献H】WO06063033号パンフレット
【特許文献I】WO08014338号パンフレット
【非特許文献A】Y. Koide et al., J. Med. Chem., 45, 4629(2002).
【非特許文献B】M. D. Davis et al., J. Biol. Chem., 280, 9833(2005).
【非特許文献C】Y. Koide et al., J. Med. Chem., 50, 442(2007).
【非特許文献D】R. Zhu et al., J. Med. Chem., 50, 6428(2007).
【非特許文献E】F. W. Foss et al., Bioorg. Med., Chem., 15, 663(2007).
【非特許文献F】Y.Gon et.al., Proc Natl Acad Sci U S A. 102(26),9270(2005).
【非特許文献G】F.Nissen et al.,Nature,452,654(2008)
【非特許文献H】D.Christina et al.,Am.J.Pathol.,170(1),281(2007)
【0051】
本発明の医薬は、経口又は直腸内、皮下、静脈内、筋肉内、経皮等の非経口投与することができる。
【0052】
本発明の化合物、薬学的に許容される塩またはそれらの水和物を医薬として用いるためには、固体組成物、液体組成物、及びその他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。本発明の医薬は、本発明の化合物に薬学的に許容される担体を配合して製造することができる。具体的には、常用の賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤、又は水性若しくは非水性溶媒などを添加し、常用の製剤技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、などに調製することができる。
【0053】
本発明化合物又は薬学的に許容されるその塩の投与量は、疾患、症状、体重、年齢、性別、投与経路等により異なるが、成人に対し、経口投与の場合、好ましくは約0.01〜約1000mg/kg体重/日であり、より好ましくは約0.5〜約200mg/kg体重/日であり、これを1日1回又は数回に分けて投与することができる。
(実施例)
【0054】
次に本発明を具体例によって説明するが、これらの例によって本発明が限定されるものではない。
<実施例1>
(2R,5S)−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン
【0055】
【化15】

【0056】
アルゴン雰囲気下、−78℃にて(5S)−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン (333 mg) の テトラヒドロフラン (6.3 mL) 溶液にn-ブチルリチウム−ヘキサン溶液(1.60 mol / L, 1.16 mL)を加え、−78℃にて30分間攪拌した。さらにWO03029205号パンフレット中の参考例57の化合物 (969 mg) のテトラヒドロフラン (2.1 mL) 溶液を加えて−78℃にて30分間、0℃にて1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 50 : 1)にて精製し、目的物(480 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.70 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.07 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.35 (3H, s), 1.75-1.86 (1H, m), 2.09 (1H, ddd, J = 12.8, 11.9, 4.9 Hz), 2.21-2.31 (1H, m), 2.36 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.48 (1H, ddd, J = 12.8, 11.9, 4.9 Hz), 3.67 (3H, s), 3.68 (3H, s), 3.99 (1H, d, J = 3.7 Hz), 5.00 (2H, s), 6.84 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 6.87-6.92 (2H, m), 7.06 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.12 (1H, dd, J = 7.9, 1.8Hz), 7.20 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.28-7.40 (6H, m).
ESIMS (+) : 551 [M+H] +.
【0057】
<実施例2>
(2S,5R)−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン
【0058】
【化16】

【0059】
(5R)−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジンを用い、実施例1と同様の方法で目的物を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.71 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.09 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.36 (3H, s), 1.86 (1H, ddd, J = 12.8, 11.6, 4.9 Hz), 2.10 (1H, ddd, J = 12.8, 11.6, 4.9 Hz), 2.21-2.31 (1H, m), 2.38 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 4.9 Hz), 2.49 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 4.9 Hz), 3.68 (3H, s), 3.69 (3H, s), 4.00 (1H, d, J = 3.7 Hz), 5.01 (2H, s), 6.86 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 6.88-6.93 (2H, m), 7.07 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.13 (1H, dd, J = 7.9, 1.8Hz), 7.21 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.29-7.40 (6H, m).
ESIMS (+) : 551 [M+H] +.
【0060】
<実施例3>
(S)−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−クロロフェニル]−2−メチル酪酸メチル
【0061】
【化17】

【0062】
実施例1の化合物 (430 mg)のジオキサン(16 mL)溶液に0.5 mol/L 塩酸水溶液(8 mL)を加え、常温で1時間攪拌後、常温で一晩放置した。濃縮後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。抽出液を濃縮後、残渣をアセトニトリル(16 mL)に溶解し、ジ−tert−ブトキシジカルボネート(426 mg)を加えた。常温で1時間攪拌し、常温で一晩放置した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 20 : 1)にて精製し、目的物 (257 mg) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.45 (9H, s), 1.58 (3H, s), 2.11 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2 5.5 Hz), 2.40 (1H, br s), 2.52 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.67 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 3.74 (3H, s), 5.02 (2H, s), 5.42 (1H, br s), 6.87 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 6.90-6.95 (2H, m), 7.09 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.13 (1H, dd, J = 7.9, 1.8Hz), 7.22 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.29-7.41 (6H, m).
ESIMS (+) : 556 [M+H] +.
【0063】
<実施例4>
(R)−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−クロロフェニル]−2−メチル酪酸メチル
【0064】
【化18】

【0065】
実施例2の化合物を実施例3と同様に反応させ目的物を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.45 (9H, s), 1.58 (3H, s), 2.11 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2 5.5 Hz), 2.39 (1H, br s), 2.52 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.67 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 3.74 (3H, s), 5.02 (2H, s), 5.42 (1H, br s), 6.87 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 6.90-6.95 (2H, m), 7.09 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.13 (1H, dd, J = 7.9, 1.8Hz), 7.22 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.29-7.40 (6H, m).
ESIMS (+) : 556 [M+H] +.
【0066】
<実施例5>
(S)−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)2−クロロフェニル]−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルブタン−1−オール
【0067】
【化19】

【0068】
実施例3の化合物 (287 mg)のテトラヒドロフラン(5 mL)溶液に氷冷下にて水素化ホウ素リチウム(50 mg)を加え、次いでエタノール(0.5 mL)を滴下し、氷冷下にて2時間攪拌した。反応液に10 % クエン酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物 (244 mg) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.25 (3H, s), 1.44 (9H, s), 1.82 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.06 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.63-2.80 (2H, m), 3.67 (1H, dd, J = 11.6, 4.9 Hz), 3.72 (1H, dd, J = 11.6, 7.3 Hz), 4.68 (1H, s), 5.02 (2H, s), 6.87 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 6.90-6.95 (2H, m), 7.15 (2H, s), 7.23 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.30-7.39 (6H, m).
ESIMS (+) : 528 [M+H] +.
【0069】
<実施例6>
(R)−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)2−クロロフェニル]−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルブタン−1−オール
【0070】
【化20】

【0071】
実施例4の化合物を実施例5と同様に反応させ目的物を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.25 (3H, s), 1.44 (9H, s), 1.82 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.06 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.63-2.81 (2H, m), 3.64-3.75 (2H, m), 4.68 (1H, s), 5.02 (2H, s), 6.87 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 6.90-6.95 (2H, m), 7.15 (2H, s), 7.23 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.32-7.39 (6H, m).
ESIMS (+) : 528 [M+H] +.
【0072】
<実施例7>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[4−(3−t−ブトキシカルボニルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブタン−1−オール
【0073】
【化21】

【0074】
アルゴン雰囲気下、実施例5の化合物 (100 mg) のアセトニトリル(2 mL)溶液にトリメチルシラン(108μL)を加え、常温にて18時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、抽出層を水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。抽出液を濃縮後、残渣をアセトニトリル(2 mL)に溶解し、トリエチルアミン(53μL)およびジ−tert−ブトキシジカルボネート (103 mg) を加え、常温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物 (77 mg) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.26 (3H, s), 1.45 (9H, s), 1.55 (9H, s), 1.82 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 4.9 Hz), 2.07 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 4.9 Hz), 2.64-2.84 (2H, m), 3.63-3.76 (2H, m), 4.08 (1H, br s), 4.68 (1H, s), 7.07 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 7.10 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.14 (1H, dt, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.19 (2H, s), 7.30 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.37 (1H, t, J = 1.2 Hz).
ESIMS (+) : 538 [M+H] +.
【0075】
<実施例8>
(R)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[4−(3−t−ブトキシカルボニルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブタン−1−オール
【0076】
【化22】

【0077】
実施例6の化合物を実施例7と同様に反応させ目的物を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.27 (3H, s), 1.46 (9H, s), 1.56 (9H, s), 1.83 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 4.9 Hz), 2.08 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 4.9 Hz), 2.66-2.84 (2H, m), 3.65-3.77 (2H, m), 4.09 (1H, br s), 4.69 (1H, s), 7.08 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 7.12 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.15 (1H, dt, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.21 (2H, s), 7.31 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.38 (1H, t, J = 1.2 Hz).
ESIMS (+) : 538 [M+H] +.
【0078】
<実施例9>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[4−(3−t−ブトキシカルボニルオキシフェニルチオ)2−クロロフェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルブタン
【0079】
【化23】

【0080】
実施例7の化合物 (32 mg) のピリジン(0.15 mL)溶液に氷冷下にて四臭化炭素(39.5 mg)と亜リン酸トリメチル(14.0μL)を加え、氷冷下にて1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 1)にて精製し、目的物 (40 mg) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.36 (3H, s), 1.45 (9H, s), 1.52 (9H, s), 1.78 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 5.5 Hz), 2.10 (1H, br s), 2.72 (2H, ddd, J = 13.4, 11.6, 5.5 Hz), 3.79 (3H, dd, J = 11.0 Hz), 3.80 (3H, d, J = 11.0 Hz), 4.03 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.24 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.63 (1H, s), 7.07 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 7.10-7.25 (4H, m), 7.30 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.36 (1H, d, J = 1.2 Hz).
ESIMS (+) : 646 [M+H] +.
【0081】
<実施例10>
(R)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[4−(3−t−ブトキシカルボニルオキシフェニルチオ)2−クロロフェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルブタン
【0082】
【化24】

【0083】
実施例8の化合物を実施例9と同様に反応させ目的物を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.37 (3H, s), 1.45 (9H, s), 1.53 (9H, s), 1.78 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 5.5 Hz), 2.12 (1H, br s), 2.72 (2H, ddd, J = 13.4, 11.6, 5.5 Hz), 3.79 (3H, dd, J = 11.0 Hz), 3.80 (3H, d, J = 11.0 Hz), 4.04 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.24 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.63 (1H, s), 7.06 (1H, ddd, J = 7.9, 2.4, 1.2 Hz), 7.08-7.27 (4H, m), 7.30 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.36 (1H, d, J = 1.2 Hz).
ESIMS (+) : 646 [M+H] +.
【0084】
<実施例11>
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルホスホン酸モノエステル
【0085】
【化25】

【0086】
実施例9の化合物 (40 mg) の塩化メチレン (0.6 mL) 溶液にアルゴン雰囲気下、氷冷下にてヨードトリメチルシラン(44 μL)を滴下し、氷冷下にて5時間攪拌した。反応液に水(10 mL)を加え、さらに氷冷下にて30分間攪拌した後、析出晶をろ取した。得られた結晶を水、酢酸エチルでよく洗浄し乾燥後、目的物(20 mg)を白色粉末として得た。
融点;144−147℃.
旋光度:[α]D27 −9.04 (c 0.50, DMSO).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.29 (3H, s), 1.70-1.88 (2H, m), 2.70 (2H, t, J = 7.9 Hz), 3.86 (1H, dd, J = 11.0, 5.5 Hz), 3.93 (1H, dd, J = 11.0, 5.5 Hz), 6.73 (2H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 6.77 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.19 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.23 (1H, td, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.30 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.34 (1H,d, J = 7.9 Hz).
HRESIMS (+) : 418.06402 (C17H22ClNO5PSとして計算値 418.06448).
元素分析 : 実測値 C 45.16%, H 5.17%, N 2.90%, C17H21ClNO5PS. 2 H2Oとして計算値 C 44.99%, H 5.55%, N 3.09%.
【0087】
<実施例12>
(R)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルホスホン酸モノエステル
【0088】
【化26】

【0089】
実施例10の化合物を実施例11と同様に反応させ目的物を白色粉末として得た。
融点;144−147℃.
旋光度:[α]D27 +10.24 (c 0.50, DMSO).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.29 (3H, s), 1.71-1.90 (2H, m), 2.71 (2H, t, J = 7.9 Hz), 3.87 (1H, dd, J = 11.0, 5.5 Hz), 3.94 (1H, dd, J = 11.0, 5.5 Hz), 6.73 (2H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 6.79 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.20 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.24 (1H, td, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.31 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.35 (1H,d, J = 7.9 Hz).
HRESIMS (+) : 418.06402 (C17H22ClNO5PSとして計算値 418.06448).
元素分析 : 実測値 C 45.77%, H 5.07%, N 2.88%, C17H21ClNO5PS. 1.5 H2Oとして計算値 C 45.90%, H 5.44%, N 3.15%.
【0090】
<実施例13>
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール塩酸塩
【0091】
【化27】

【0092】
実施例7の化合物(34 mg)に10 w/w%塩酸メタノール溶液(5 mL)を加え、常温で1時間攪拌後、常温で一晩放置した。溶媒を減圧留去し、目的物 (15 mg) を白色粉末として得た。
融点;133−135℃.
旋光度:[α]D27 2.93 (c 0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ1.36 (3H, s), 1.78-1.97 (2H, m), 2.77 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.55 (1H, d, J = 11.6 Hz), 3.64 (1H, d, J = 11.6 Hz), 6.73 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 6.75 (1H, t, J = 1.8 Hz), 6.81 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.14 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.17 (1H, dt, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.25 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.27 (1H, d, J 7.9 Hz).
HRESIMS (+) : 338.09867 (C17H21ClNO2Sとして計算値 338.09815).
元素分析 : 実測値 C 54.31%, H 5.57%, N 3.40%, C17H20ClNO2S. HCl として計算値 C 54.55%, H 5.65%, N 3.40%.
【0093】
<実施例14>
(R)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール塩酸塩
【0094】
【化28】

【0095】
実施例8の化合物を実施例13と同様に反応させ目的物を白色粉末として得た。
融点;133−135℃.
旋光度:[α]D27 +3.36 (c 0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ1.36 (3H, s), 1.77-1.99 (2H, m), 2.77 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.56 (1H, d, J = 11.6 Hz), 3.64 (1H, d, J = 11.6 Hz), 6.73 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 6.76 (1H, t, J = 1.8 Hz), 6.81 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.14 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.17 (1H, dt, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.25 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.27 (1H, d, J 7.9 Hz).
HRESIMS (+) : 338.09802 (C17H21ClNO2Sとして計算値 338.09815).
元素分析 : 実測値 C 54.74%, H 5.60%, N 3.39%, C17H20ClNO2S. HCl として計算値 C 54.55%, H 5.65%, N 3.40%.
【0096】
次に本発明化合物について、有用性を裏付ける成績を実験例によって示す。
<実験例> S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)によるヒトS1P3受容体発現細胞の細胞内カルシウム動員に対する被験化合物の抑制作用
10%のウシ胎児血清、および300 μg/mLのGeneticinを含むHam's F-12培地でヒトS1P3受容体発現CHO細胞を継代培養した。このヒトS1P3受容体発現CHO細胞を0.25 % トリプシン処理後、ディッシュより回収し、10% ウシ胎児血清および300 μg/mLのGeneticinを含むHam's F-12培地に浮遊した後、7 x 104 /100 μL/wellとなるように96 穴黒色クリアボトムプレート(BD Falcon Biocoat)に播種し、37 ℃、5 % CO2下で一晩培養した。翌日、100 μL 0.1 % 脂肪酸不含ウシ血清アルブミン (BSA)含有PBSにてwellを3回洗浄した。0.1 % BSA含有Ham's F-12培地に交換後、37 ℃ CO2インキュベータで6時間血清飢餓処理を行った。Fluo3-AM (Dojindo)とpluronic F-127 (20% DMSO溶液、invitrogen) を等量混合した後、Hanks-HEPES バッファー(20 mM HEPES (pH7.4), 0.1% BSA (Fatty acid Free), 2.5 mM probenecid含有ハンクス平衡塩溶液)に加え、Fluo3-AMの終濃度を4μMとしたものを、Fluo3 loading bufferとした。
6時間後に培地を捨て、上記のFluo3 loading bufferを50 μL/well加え、さらに1時間培養した。1時間のインキュベートの後、100 μL のHanks-HEPES バッファーで3回洗った。被験化合物 (125 nM、1.25 μM、12.5 μM)またはDMSOを溶解した同バッファーを100 μL加え、マイクロプレート蛍光分光光度計 (FLEX Station (Molecular Device社))中で37 ℃、30分インキュベートした。その後、同装置を用いて、段階希釈法にて終濃度の5倍濃度で作製したS1P (終濃度0.1 nM、1 nM、10 nM、100 nM、1 μM)を25 μL加え、カルシウム動員に基づくFluo3による蛍光を、励起波長485nm、検出波長525nmで検出、測定した。測定データより最大蛍光強度から最小蛍光強度を引いた値 (蛍光増加量)を算出した。測定した蛍光増加量を使用し、PRISM 4ソフトウェア (GraphPad)を用いて、S1Pの濃度と蛍光増加量の関係を曲線近似した。その結果より、化合物未処理時および各濃度の化合物処理時におけるEC50値を各々算出した。これら数値をもとにSchild Plot解析を行い、解離定数Kd値を求めた。
実験例11、実施例12の化合物のKd値は各々、25 nM及び63 nMであった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明により優れたS1P3アンタゴニスト活性をするフェノール誘導体の提供が可能となり、本発明化合物は、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストーム、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症、黄班変性症の予防又は治療薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、R1は水素原子又はPO(OH)を示す]
で表されるフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物。
【請求項2】
1が、PO(OH)である請求項1記載のフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される化合物が、
1)(R)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルホスホン酸モノエステル、
2)(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルホスホン酸モノエステル、
3)(R)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール塩酸塩
4)(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール塩酸塩である請求項1記載のフェノール誘導体、薬理学的に許容しうるその塩又はその水和物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のフェノール誘導体、薬理学的に許容される塩またはそれらの水和物を有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3リセプターアンタゴニスト作用に基づく医薬。
【請求項5】
気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症または敗血症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療薬である請求項4記載の医薬。
【請求項6】
動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の治療薬である請求項4記載の医薬。
【請求項7】
請求項1記載の化合物、薬理学的に許容される塩またはそれらの水和物および薬学的に許容されうる担体を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2010−77053(P2010−77053A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245739(P2008−245739)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】