説明

フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物及びその製造方法と用途

本発明はフェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物及びその製造方法と用途を提供するものである。フェルラ酸とマトリン類化合物からなる薬物組成物を用いて、フェルラ酸の薬剤学的効果を増加すると共に、マトリン類化合物の薬剤学的効果を増加する。両方には相乗効果を明らかに示し、且つフェルラ酸とマトリン類化合物の水溶性及び脂溶性を明らかに増加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物及びその薬物組成物製造方法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルラ酸の化学的名称は、4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸であり、植物中に普通に存在するフェノール酸であり、アンゼリカ、白朮、フェルラなど漢方薬の有効成分の一つであり、多種の植物の中に広く存在している。抽出又は合成の方法により得られ、例えば、抗炎症、抗菌、抗酸化、免疫の増強、抗腫瘍、抗心血管の疾患、抗繊維化、抗老年性認知症など広い薬理的効果を有している。苦参(sophora root)というのは常用漢方薬の一つであり、それは多種のアルカロイドを含有しており、マトリン(matrine)やオキシマトリン(oxymatrine)を主として、その他にソホカルピン(sophocarpine)、ソホリジン(sophoridine)、 N-オキシソホカルピン(N-oxysophocarpine)及びイソマトリンなどを含有する。それによって開発された薬物は、マトリン、マリン(marine)又はソホカルピンなどは、抗ウイルス、抗肝臓繊維化、免疫調節の効果及び抗炎症、抗変態反応の効果などを有し、臨床上で主に慢性肝炎の治療、抗ウイルス、抗腫瘍の治療及び心血管の疾患の治療に用いられる。われわれの研究によって、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物は、マトリン類化合物又はフェルラ酸の効果を明らかに増加させ、両方が体内で相乗効果を示し、且つマトリン類化合物の毒性を低減し、両方の水溶性及び脂溶性を増加させることが発見された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、フェルラ酸又はマトリン類化合物の薬剤学的効果を明らかに増加させるようなフェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物を提供することを目的とする。
【0004】
上記の技術問題を解決するために、本発明は以下の技術方案を用いて実現できる。
【0005】
本発明の薬物組成物は、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物である。更に、前記フェルラ酸は下記のものにおける一種又は多種を含むこと、即ち、
正フェルラ酸、イソフェルラ酸、正フェルラ酸異性体、イソフェルラ酸異性体、又はそれらの無機塩類化合物であり、その中、正フェルラ酸の基本構造は、
【化1】


であり、イソフェルラ酸の基本構造は、
【化2】


である。
【0006】
また更に、マトリン類化合物の基本構造は、下式に示すキノリジジンを有すること、即ち、
【化3】


であり、当該マトリン類化合物は主に下記のものにおける一種又は多種を含むこと、即ち、マトリン、マリン、ソホカルピン、オキシソホカルピン、ソホラノール(sophoranol)、スパーテイン(sparteine)、ソホリジン、イソマトリン、又は上記それらの化合物の異性体、又はそれらの無機塩類である。
【0007】
好ましくは、前記マトリン類化合物は、マトリン、マリン又はソホカルピンの中の一種又は数種である。
【0008】
また更に、前記マトリン類化合物は、マリン又はマトリンの中の一種又は二種である。
本発明のもう一つの目的は、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物の製造方法を提供することである。その中、前記薬物は、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物であり、モル比を1:0.1〜10とするフェルラ酸とマトリン類化合物であり、且つ薬物用補助剤を加え、薬剤学的方法で所定形状の製剤を製造する。
【0009】
注射剤を作製する場合、前記薬物用補助剤は注射用水を用いてもよく、前記薬物組成物に前記注射用水を加え、且つ溶解するまで攪拌した後、注射剤が作られる。
【0010】
経口投与剤を作製する場合、前記薬物用補助剤は澱粉、10%の澱粉スラリー、乾澱粉及びステアリン酸マグネシウムを用いてもよく、まず前記薬物組成物を前記澱粉と均一に混合させ、10%の澱粉スラリーを加えて軟材が作られ、乾燥した後に乾澱粉及びステアリン酸マグネシウムを加えて混合させ、経口投与剤が作られる。
【0011】
皮膚粘膜用製剤を作製する場合、前記薬物用補助剤はカルボマー、プロパンジオール、メチルパラベン及び純水を用いてよく、前記カルボマーを純水で分散させ、プロパンジオールで溶解されたメチルパラベンを分散されたカルボマーに加え、純水を加えて膨張させ、前記薬物組成物を純水で溶解させ、且つ上記のカルボマー溶液に混合し、純水を加えて均一に混合させ、皮膚粘膜用製剤が作られる。
【0012】
前記フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物は、抗繊維化の治療、血流変学の変更、抗ウイルス、抗炎症、コリンエステラーゼ阻害、鎮痛と掻痒止め、抗老年性認知症、抗血栓、抗菌、抗腫瘍、抗酸化及び血中脂の低減、抗動脈硬化、リウマチゴの緩和、免疫の増強、抗高血圧、精子の活力と運動性の向上の薬物の製造に用いる。
【0013】
従来技術と比較すると、本発明の利点及び積極的な効果は以下の通りである。本発明に係るフェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物は、相乗効果を明らかに示し、フェルラ酸の薬剤学的効果を増加させると共に、マトリン類化合物の薬剤学的効果を増加させる。且つフェルラ酸とマトリン類化合物の水溶性及び脂溶性を明らかに増加することができる。前記薬物組成物は薬剤学的方法で経口投与剤、注射剤又は皮膚粘膜用製剤として作られ、腫瘍、動脈硬化、心脳血管疾患、骨関節疾患、風邪、老年性認知症、皮膚炎症、湿疹、座瘡、斑丘疹性発疹、じんましん、乾癬、胃腸の活性低下、肝炎と腎炎など臓器の炎症及び臓器繊維化、及び全身又は臓器で発生した急性と慢性の炎症を予防及び治療することに役に立つ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次は実施例を併せて本発明の実施形態について詳細に説明をする。
【0015】
本発明に係る薬物組成物は、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物である。その中、フェルラ酸とマトリン類化合物とのモル比は1:0.1〜10であり、好ましくはモル比が1:1〜5である。
【0016】
本発明では、前記のフェルラ酸が正フェルラ酸、イソフェルラ酸、正フェルラ酸異性体、イソフェルラ酸異性体、又はそれらの無機塩類化合物などであってもよく、上記の何れかのニ種又は多種物質の組み合せにしてもよい。その中、正フェルラ酸の基本構造は、
【化4】


であり、正フェルラ酸の基本構造は、
【化5】


である。前記マトリン類化合物の基本構造は、下式に示すキノリジジンを有すること、
即ち、
【化6】


であり、当該マトリン類化合物は主に下記のものを含むこと、即ち、マトリン、マリン、ソホカルピン、オキシソホカルピン、ソホラノール、スパーテイン、ソホリジン、イソマトリンなど、又は上記それらの化合物の異性体、又はそれらの無機塩類であり、当然上記の何れかのニ種又は多種物質の組み合わせにしてもよい。
【0017】
好ましい技術案としては、前記マトリン類化合物はマトリン、マリン又はソホカルピンの中の一種又は多種を用いるのが好ましく、且つフェルラ酸と前記マトリン類化合物とのモル比を1:0.1〜10とし、好ましくはモル比が1:1〜3である。
【0018】
もう一つの好ましい技術案としては、前記マトリン類化合物はマリン又はマトリンの中の一種又は多種を用いるのが好ましく、且つフェルラ酸と前記マトリン類化合物とのモル比を1:0.1〜10とし、好ましくはモル比が1:1〜2である。
【0019】
上記の薬物組成物を用いて、薬物用補助剤を適当に加え、且つ通常の薬剤学的方法を用いて異なるタイプの製剤を作ることができる。例えば、注射剤、経口投与剤又は皮膚粘膜用製剤などである。次にいくつかの実施例によっていくつかの異なる製剤の具体的な製造方法について詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
フェルラ酸ナトリウムとマリンとの複合凍結乾燥粉末の注射剤の製造方法を提供する
まず、フェルラ酸ナトリウム30.87g、マリン69.13g、注射用水1000mLを用意する。
【0021】
その製造方法は以下の通りである。無菌作業室の中でフェルラ酸ナトリウム30.87g、マリン69.13g(フェルラ酸ナトリウムとマリンとのモル比が1:2である)を計量し、無菌容器に置いておき、無菌注射用水約100mLを加え、攪拌しながら溶解させ、水素ナトリウムでPH値を6.5〜7.5の範囲に調整し、無菌注射用水を1000mLまで追加し、均一に攪拌し、そして0.02体積%の活性炭を加え、5〜10分間攪拌し、無菌濾過漏斗に殺菌濾紙を二層敷いて濾過を行い、さらに殺菌されたG6の垂直溶解のガラス製漏斗で精密濾過を行い、濾過液を検査して合格した後、2mLのアンプル瓶の中にそれぞれ入れ、低温凍結乾燥を約24〜26時間行った後、無菌で溶接封入する。各瓶に薬物を100mg含有している。
【実施例2】
【0022】
フェルラ酸とソホカルピンの錠剤の製造方法を提供する
まず、フェルラ酸182g(その中に60%の正フェルラ酸と40%のイソフェルラ酸を含むことができる)、ソホカルピン18g(フェルラ酸とソホカルピンとのモル比が10:1である)、澱粉40g、10%の澱粉スラリー24g、乾澱粉23g及びステアリン酸マグネシウム3gを用意する。
【0023】
その製造方法は以下の通りである。フェルラ酸とソホカルピンを80メッシューで篩い、澱粉と均一に混合させ、10%の澱粉スラリーで軟材に作られ、14メッシューで造粒し、70〜80℃で乾燥した後に12メッシューで粒径を均一し、乾澱粉及びステアリン酸マグネシウムを加えて混合させ、錠剤に成形し、1000錠が作られ、各錠に薬物を200mg含有している。
【実施例3】
【0024】
フェルラ酸ナトリウムとマリンのゲル剤の製造方法を提供する
まず、フェルラ酸ナトリウム6.17g、マリン13.83g(フェルラ酸ナトリウムとマリンとのモル比が1:2である)、カルボマー10g、プロパンジオール167mL、メチルパラベン0.15g、純水1000mLを用意する。
【0025】
その製造方法は以下の通りである。20mLの水でカルボマーを分散させ、プロパンジオールでメチルパラベンを溶解させた後、分散されたカルボマーに加え、約500mLの純水を加えて12〜24時間膨張させる。約100mLの純水でフェルラ酸ナトリウムとマリンを溶解させ、上記のカルボマー溶液に加えて混合させ、純水を1000mLまで加え、均一に混合させ、アンモニア水でPH値を6.5〜7.5に調整し、20gのポリエチレンアルミニウム複合管の中にそれぞれ入れ、品質を検査して合格した後、そのゲル剤が得られた。
【実施例4】
【0026】
フェルラ酸とトタールマトリン(Total Matrines)のカプセルの製造方法を提供する
まず、フェルラ酸50g、トタールマトリンの抽出物450g(トタールマトリンの含有量は60〜80%であり、その中にマリン20〜30%、マトリン30〜60%、ソホカルピン10〜20%、その他のマトリン類アルカロイド約1〜3%である)、澱粉40g、10%の澱粉スラリー24g及びステアリン酸マグネシウム3gを用意する。
【0027】
その製造方法は以下の通りである。フェルラ酸とトタールマトリンの抽出物を80メッシューで篩い、澱粉と均一に混合させ、10%の澱粉スラリーで軟材に作られ、14メッシューで造粒し、70〜80℃で乾燥した後に12メッシューで粒径を均一し、乾澱粉及びステアリン酸マグネシウムを加えて混合させ、3号硬質カプセル殻を用いて充填し、カプセルキャップで嵌合させ、1000錠が作られ、各錠にフェルラ酸を50mg、トタールマトリンを450mg含有している。
【実施例5】
【0028】
本実施例は多数の実験データによっていくつかの薬物組成物について鎮痛、抗炎症、コリンエステラーゼ阻害などの面でマトリン及びフェルラ酸の効果とを比較する。
【0029】
【表1】

【0030】
健康なハツカネズミを組毎に10匹用意し、20mg/kgで胃内投与を行う。それを三日連続して行い、最終回投与した30分後、腹腔に10mL/kgで0.6%の酢酸を注射し、15分間内のハツカネズミのライジング反応の回数を記録し、薬物の鎮痛パーセンテージを計算する。
薬物の鎮痛パーセンテージ(%)=(対照組のライジング反応の回数−治療組のライジング反応の回数)/対照組のライジング反応の回数×100%
【0031】
【表2】

【0032】
次はいくつかの化合物の抗炎症効果、及びマリンとフェルラ酸との効果の比較である。
用量及び薬物組成物の配合は表1に示す。健康なハツカネズミを用意し、組毎に10匹にし、体重計量した後、ハツカネズミの右耳にキシレンを含浸した綿棒で5秒接触させ、左耳を比較として、炎症が行った10分後、それぞれ炎症が行った耳甲介に薬物濃度が1%である試験用薬物を塗り付け、空白対照組に生理塩水を塗り付け、30分後にハツカネズミを頸脱臼で殺し、直径が6mmであるパンチで等面積の左耳(自身比較)、右耳(キシレン処理)を取り出して計量し、耳の腫脹率を計算する。
耳の腫脹率(%)=(右耳の重量-左耳の重量)/左耳の重量×100%
その結果は表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
次はいくつかの化合物が肝臓の肝星細胞の増加と分泌I型コラーゲンタンパク質に対する効果である。
【0035】
材料と試薬:バンディクートI型コラーゲンタンパク質ELISA試薬キット、トリプシン、ウシ胎仔血清など。
【0036】
方法:バンディクートの肝臓の肝星細胞(hepatic stellate cell, HSC)が蘇生してから100mLのプラスチックの培養瓶に接種し、5%のCO2で、95%の湿度のCO2の培養箱の中で培養する。培養瓶中の細胞が単層に成長された後、培養液を取り除き、0.25%のトリプシンの消化液を加え、消化液を収集し、2200rpmで遠心を7分間行い、上清を取り除き、DMEM培養液を用いて遠心洗浄を一回行い、20%のウシ胎仔血清を含有するDMEM培養液で細胞集合体を懸濁させて計数し、DMEMを含有する培養液で細胞の懸濁液を希釈し、96孔の培養板に接種し、孔毎に100μlにし、48時間後に培養液を吸い取り、さらに10%のウシ胎仔血清を含有するDMEM培養液を用いて細胞を同期化し、細胞を休止期に同期化する。各組培養液中の濃度がそれぞれ50μmol/Lであるように実験組(生理塩水)に薬物を加え、各組の6孔に三回重複培養させ、48時間経過した後、培養を終了させ、各孔に5mg/Lのチアゾリルブルー(MTT)をそれぞれ20μL 加え、さらに4時間培養し、DMSOを加えた後に10分間振動させ、マイクロプレートリーダー(波長570nm)にてHSC吸光度を測定する。薬物が作用された細胞は、上記の方法によって培養した後、上清を吸い取り、試薬キットの説明書に基づき型コラーゲンタンパク質の含有量を測定する。その結果は表5に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
以下はいくつかの化合物のコリンエステラーゼ阻害に対する効果の比較である。
健康なバンディクートから5mLを採血し、抗凝固剤を加えたキュベットに入れ、生理塩水で10倍希釈して使用待機する。
【0039】
薬物を生理塩水でそれぞれ0、5、10、20、40、80、160、320、640mg/Lである測定待機の溶液に希釈させる。0.05mLの異なる測定待機の溶液を取り出し、0.5mL希釈した全血中に加え、十分に均一に混合した後、37℃の雰囲気で前培養を1時間行う。そして、コリンエステラーゼ試薬キットの説明書に基づき全血コリンエステラーゼの活性を測定し、半数抑制濃度(IC50)を計算する。その結果は表6に示す。表6から見ると、薬物組成物〜Vとも全血コリンエステラーゼを抑制する効果を有し、その中、薬物組成物IIIの抑制効果は最も強い。
【0040】
【表6】

【0041】
次はいくつかの化合物がハツカネズミの腸の活性に対する効果の比較である。
【0042】
薬品と試薬:マリン注射液(中国山東省新華制薬株式会社製造、ロット:0306003)、メチル硫酸ネオスチグミン注射液(中国山東省天福製薬会社製造、ロット:0404131)、硫酸アトロピン注射液(中国山東省天福製薬会社製造、ロット:0409271)、硫酸モルヒネ放出制御錠剤(中国北京萌蒂製薬株式会社製造、ロット:04082312)。
【0043】
動物及び飼育環境:健康な中国昆明のハツカネズミであり、SPF級であり、雌雄が半々であり、体重18〜22gであり、中国山東省緑葉製薬株式会社の動物実験センターより提供される。合格証番号:SYXK(魯)20030020である。各駕籠に動物を10匹放置する。飼料は中国山東省実験動物センターより提供される。遮蔽システムで飼育し、濾過送風で、室内温度が18〜22℃、湿度が50〜60%であり、12時間光照射を行う。
【0044】
実験方法:ハツカネズミに胃内投与で相応の薬物又は生理塩水を投与し、3日連続して行い、最終回前に16時間断水せずに断食を行い、投薬30分後、各ハツカネズミに胃内投与で5%の活性炭懸濁混合液を0.2mL投与し、20分後にハツカネズミを頸脱臼で殺し、腹腔を開いて腸間膜を分離し、幽門口から回盲部までの腸管を切り取り、トレーに載せてそっと小腸を直線に引っ張り、腸管の総長さとして腸管の長さを測定し、幽門口から炭粉末の最前方までの距離を炭粉末が腸内で推進距離とする。以下の式で炭粉末推進率を計算する。
炭粉末推進率(%)=炭粉末が腸内で推進距離/小腸の総長さ×100%。
【0045】
【表7】

【0046】
以下はいくつかの薬物組成物の急性毒性における実験データである。
【0047】
実験方法:ハツカネズミを用意し、各組10匹にし、胃内投与で一回投薬し、72時間観察し、死亡状況を記録し、結果は表8に示す。
【0048】
【表8】

【0049】
次はフェルラ酸とマリンとの組成物が抗動脈硬化の面での観察である。
【0050】
薬物の作製:フェルラ酸とマリンを1:1の分子モル比で混合させた後に溶液に調合する。
【0051】
文献の方法に基づき行う(劉占濤、劉賽、王守藍、張健、仲偉珍。海洋貝殻類総合抽出物は実験性動脈硬化に対する治療効果。中国動脈硬化雑誌2005年第13巻第3期、305〜308頁)。
【0052】
試験方法:オスの鶉を140羽用意し、ランダムに7組に分け、即ち、正常対照組、モデル組、陽性対照組(ロバスタチン10mg/kg)、フェルラ酸の経口投与対照組(40mg/kg)及び薬物組成物の高、中、低用量組(それぞれ10、20、40mg/kgを投薬する)である。正常対照組に基礎飼料を投与する以外、他の6組は文献の方法に基づき高脂肪餌食の動脈硬化モデルを作る。
【0053】
各投薬組は胃内投与で毎日一回投薬し、連続して4週投薬する。それぞれ投薬してから第4週末に、各組10羽の動物を選んで、その血清脂質を測定する。実験が終了する際、生存する鶉に病理学的検査を行う。
【0054】
血清脂質の含有量の測定:各組が投薬してから第4週末に、12時間断食した後に頸静脈から2mL採血し、血清を分離し、酵素の方法で血清のコレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)の水準を測定する。
【0055】
結果:フェルラ酸とマリンとの組成物は動脈硬化モデル鶉の血清のTC、TG水準を明らかに低減し、その効果はフェルラ酸より明確に増強する。表9を参照する。モデル組は多数の主動脈に明確な病変を発生し、多数の動脈の粥腫性硬化(scleratheroma)の病変程度は軽く、殆ど1〜2級以下である。 表10を参照する。多数の動脈内膜が完全な状態であることを顕微鏡で見られ、一部分は脂質浸潤が軽く発生し、その中に分散された泡沫細胞を含む。
【0056】
【表9】

【0057】
【表10】

【0058】
次はフェルラ酸とマトリンとのゲル剤が急性リウマチ性関節炎に対する影響である。
薬物作製:フェルラ酸とマトリンを1:1の分子モル比で混合させた後、薬剤学的方法に基づきクリーム製剤を作製する。
【0059】
リウマチ性関節炎の患者を30ペアにし、その中30例は対照組であり、30例は試験組である。対照組では単独にナプロキセンを経口投与し、治療組では患部にフェルラ酸とマトリンとのクリーム製剤を塗り付け、毎日1回、5日連続して投薬する。
治療効果の観察:腫脹及び疼痛が殆ど消失したのは、顕著な効果である;軽く腫脹で、疼痛が殆ど消失したのは、有効である。腫脹及び疼痛とも好転の兆しが見られないのは、無効である。
【0060】
結果:試験組には顕著な効果であるのは21例であり、有効であるのは8例であり、総有効率は96.7%である。対照組には顕著な効果であるのは12例であり、有効であるのは11例であり、総有効率は76.7%である。
【0061】
以下はいくつかの化合物は皮疹に対する治療効果である。
【0062】
症例の選択:年齢18〜25歳、体の両側に皮疹があり、性別は限らずに、各薬物を10例実験する。皮疹上に1%の薬物を局部に塗り付け、自身半盲対照で、左側の身体に薬物に、右側の身体に生理塩水に塗り付け、塗り付けた後10分間で結果の評価を行う。
【0063】
結果の評価:腫脹減退且つ痒み止めの効果に対し評価を行う。顕著な効果:皮疹は明確に減退し、痒み止めの効果は明確である。有効:ある程度の痒み止めの効果があり、丘疹はある程度に減退した。無効:明確な効果が見られない。
【0064】
【表11】

【0065】
次は薬物組成物II、III、Vはバンディクートの老年性認知症に対する治療効果である。
【0066】
1.薬品及び試薬:マリン、マトリン、ソホカルピンは中国寧夏博尓泰力薬物株式会社に製造される。フペルジンA錠剤( Huperzine A Tablets)は中国上海紅旗製薬会社製造する。D-ガラクトースは中国上海第二試薬会社製造し、イボテン酸(IBO)はSigma会社から購入し、すべて純粋に分析用試薬である。全血及び脳組織のトータルコリンエステラーゼ(TchE)の検出試薬キットは中国南京建成生物工程研究所より提供される。
【0067】
2.動物の組分け、モデル作製及び投薬:15ヶ月の年取ったばかりのWistarバンディクートを57匹用意し、体重は300〜450gであり、すべて中国青島市薬物検査研究所の動物センターより提供された。通常籠分けで飼育し、自然照明で、随時に飲用水や餌食が取られる。ランダムに6組に分け、その中に正常対照組(正常組を略称)では、腹腔に生理塩水を6週間注射し、及び脳内のマイネルト(Meynert)核に生理塩水を注射する。ADモデル組(モデル組を略称)では、腹腔にガラクトース(48mg/kg/d)を6週間注射し、及び脳内の両側のマイネルト(Meynert)核にIBOを注射する。フペルジンA対照組(フペルジンA組を略称)と試験された動物観察組とのモデル作製ともモデル組と同様にする。モデル作製した後、フペルジンA組では胃内投与でフペルジンAを50μg/kg投与し、薬物組成物II、III、V組はそれぞれ胃内投与で薬物を50mg/kg投与する。正常組、モデル組では同等体積の生理塩水を投与する。7日連続的に投薬し、最終回の投薬した1時間後、学習能力の検出を行い、そして、バンディクートにペントバルビタール麻酔を行い、氷台上で腹主動脈から5mLを採血し、解剖して速やかに大脳皮質を取り出し、生理塩水をホモジネート媒体として10%(W/V)の大脳皮質組織のホモジネートを作製する。試薬キットの説明に基づき脳組織と全血コリンエステラーゼの活性を測定する。
【0068】
3.検出指標:動物記憶行為の測定:ステップダウン型受動的回避の試験であり、バンディクートを反応箱に3分間放置して環境に適応させ、そして50Vの交流電を通ずる。バンディクートが感電した後、逃避反応は傷害性刺激を回避するようにステップに飛び上げる。学習成績として5分間内で感電された回数(間違い回数)を記録することで学習能力を反映する。24時間経過した後、直接にバンディクートをステップに放置する。反応記憶能力と5分間内の間違い回数として第1回飛び降りる潜伏期を記録し、潜伏期が5分を超えると5分にする。
データ処理は組との間の比較tを用いて検査し、P<0.05を統計の顕著性指標とする。
【0069】
4.結果:3種の薬物組成物とも全血と脳組織のコリンエステラーゼの水準を低減することができ、バンディクートの学習記憶成績を向上した。表12、13を参照する。
【0070】
【表12】

【0071】
モデル組と比較すると、*P<0.05、**P<0.01。その中、Pは統計学の差異値を示す。*P<0.05とは明確な統計学の差異を有することを示す。**P<0.01とは極めて顕著な統計学の差異を有することを示す。
【0072】
【表13】

【0073】
モデル組と比較すると、*P<0.05とは明確な統計学の差異を有することを示す。
勿論、上述は本発明の一種の好適な実施形態だけであり、指摘すべきであるのは、本技術分野の一般技術者にとって、本発明の原理を逸脱しない前提の下で、若干の改善や修正してもよく、それらの改善や修正も本発明の保護範囲に属するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物であり、
前記薬物組成物は、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物である。
【請求項2】
前記フェルラ酸は下記のものにおける一種又は多種を含むこと、即ち、
正フェルラ酸、イソフェルラ酸、正フェルラ酸異性体、イソフェルラ酸異性体、又はそれらの無機塩類化合物であり、その中、正フェルラ酸の基本構造は、
【化1】

であり、イソフェルラ酸の基本構造は、
【化2】

であることを特徴とする請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項3】
マトリン類化合物の基本構造は、下式に示すキノリジジンを有すること、即ち、
【化3】

であり、当該マトリン類化合物は主に下記のものにおける一種又は多種を含むこと、即ち、マトリン、マリン、ソホカルピン、オキシソホカルピン、ソホラノール、スパーテイン、ソホリジン、イソマトリン、又は上記それらの化合物の異性体、又はそれらの無機塩類であることを特徴とする請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項4】
前記マトリン類化合物は、マトリン、マリン又はソホカルピンの中の一種又は数種であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の薬物組成物。
【請求項5】
前記マトリン類化合物は、マリン又はマトリンの中の一種又は二種であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の薬物組成物。
【請求項6】
フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物の製造方法であり、
前記薬物は、フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物であり、モル比を1:0.1〜10とするフェルラ酸とマトリン類化合物であり、且つ薬物用補助剤を加え、薬剤学的方法で所定形状の製剤を製造することを特徴とする薬物の製造方法。
【請求項7】
前記薬物用補助剤は注射用水であり、前記薬物組成物に前記注射用水を加え、且つ溶解するまで攪拌した後、注射剤が作られることを特徴とする請求項6に記載の薬物の製造方法。
【請求項8】
前記薬物用補助剤は澱粉、10%の澱粉スラリー、乾澱粉及びステアリン酸マグネシウムであり、まず前記薬物組成物を前記澱粉と均一に混合させ、10%の澱粉を加えて軟材が作られ、乾燥した後に乾澱粉及びステアリン酸マグネシウムを混合させ、経口投与剤が作られることを特徴とする請求項6に記載の薬物の製造方法。
【請求項9】
前記薬物用補助剤はカルボマー、プロパンジオール、メチルパラベン及び純水であり、前記カルボマーを純水で分散させ、プロパンジオールで溶解されたメチルパラベンを分散されたカルボマーに加え、純水を加えて膨張させ、前記薬物組成物を純水で溶解させ、且つ上記のカルボマー溶液に混合し、純水を加えて均一に混合させ、皮膚粘膜用製剤が作られることを特徴とする請求項6に記載の薬物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3の何れの一項に記載のフェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物の用途であり、
前記フェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物は、抗繊維化の治療、血流変学の変更、抗ウイルス、抗炎症、コリンエステラーゼ阻害、鎮痛と掻痒止め、抗老年性認知症、抗血栓、抗菌、抗腫瘍、抗酸化及び血中脂の低減、抗動脈硬化、リウマチゴの緩和、免疫の増強、抗高血圧、精子の活力と運動性の薬物の製造に用いることを特徴とするフェルラ酸とマトリン類化合物を含有する薬物組成物の用途。

【公表番号】特表2011−529860(P2011−529860A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520315(P2011−520315)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073837
【国際公開番号】WO2010/028596
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511028526)青▲島▼▲啓▼元生物技▲術▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】