説明

フェンスの支持具及び取付構造

【課題】フェンスを壁面に取付ける際に、施工誤差による位置ずれを吸収する機構を有し、かつ、取付けられたフェンスが位置ずれし難いフェンスの支持具及び取付構造を提供する。
【解決手段】壁面Wに所定の間隔で突設される突設部材2と、突設部材2の先端に締付ボルト6により取付けられる押さえ部材3とを備え、突設部材2に形成された受け面52と押さえ部材に形成された押さえ面31との間にフェンス1の線材11を挟み、締付ボルト6を締付けて壁面Wに固定することができるフェンスの支持具Pであって、前記押さえ部材3より突設部材2に至る係合片33を突出し、フェンス1の線材11を締付ボルト6と係合片33との間に位置させることによって、フェンス1を壁面Wに対して無理なく取付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンスを壁面などに固定するためのフェンスの支持具及び取付構造に関するものであり、特に、建築構造物の壁面を緑化させる際に植物を支持させるためのフェンスの支持具及びフェンスの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築構造物の壁面を緑化するために、地面にかずら等のつる性植物類を植えて外壁を植物で覆う方法は昔から行われているが、この方法では、植物が壁面全体を覆うには比較的長期間かかり、又、植物の生長方向が一様でなく、植物に覆われていない箇所が生じやすいという問題点があった。そこで、壁面と所定の間隔を開けて線状体を取付け、その線材に沿って植物を生長させて壁面を緑化させる際に、前記線状体を壁面に取付けるための支持具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この支持具は、壁面に所定の間隔で突設された支柱と、この支柱の端部に連結固定された筒状であり筒壁に線状体を受け止める受溝を有するクランプと、このクランプに取付けられ線状体を挟持固定するロックねじとを含み、格子状に配置された線状体を壁面に取付ける際に、線状体の交差部が該クランプに固定されるようになされた支持具であり、比較的簡単な操作で線状体を壁面に取付けることができ、又、線状体を任意の配置パターンで壁面に張り渡すことができる。
【特許文献1】特開2004−346984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の支持具には次のような問題点があった。すなわち前記支持具において、線状体はクランプに形成された筒壁の溝部のみで受け止められているため、線状体の長さ方向に位置ずれを起こすおそれがあった。又、施工誤差による前記支持具に取付位置のずれが生じた場合、線状体の取付位置を調整することが難しく、特に線状体の交差部を予め接合した格子状のフェンスを取付ける際は、支持具や線状体に無理な力がかかって施工性が低下するおそれがあり、これらに問題点があった。
【0005】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、フェンスを壁面に取付ける際に、施工誤差による位置ずれを吸収する機構を有し、かつ、取付けられたフェンスが位置ずれし難いフェンスの支持具及び取付構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係るフェンスの支持具は、壁面に所定の間隔で突設される突設部材と、突設部材の先端に締付ボルトにより取付けられる押さえ部材とを備え、突設部材に形成された受け面と押さえ部材に形成された押さえ面との間にフェンスの被挟着部を挟み、締付ボルトを締付けて壁面に固定することができるフェンスの支持具であって、前記押さえ部材より突設部材に至る係合片を突出し、フェンスの被挟着部を締付ボルトと係合片との間に位置させたことを特徴とするものである。
【0007】
又本発明に係るフェンスの取付構造は、本発明に係るフェンスの支持具によってフェンスが壁面に取付けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、壁面にフェンスを取付ける際、施工誤差や壁面の不陸等により、本発明に係る支持具が当初の取付位置からずれて壁面に取付けられても、フェンスは突設部材の受け面と押さえ部材の押さえ面との間に位置していれば挟着することができるので、前記フェンスは壁面に対して無理なく取付けられる。
【0009】
本発明に係るフェンスの支持具において、突設部材の先端に押さえ部材を取付ける締付ボルトの取付位置は、突設部材及び押さえ部材の軸心から偏位しているようになされれば、締付ボルトの取付位置が中心部にある場合に比べて、フェンスの被挟着部を挟着した後に、その位置調整の範囲を広くとれるため、フェンス取付け時の、位置調整が更に容易となる。
【0010】
又、本発明に係るフェンスの支持具において、締付ボルトを中心に押さえ部材は突設部材に対して回動可能であり、且つ係合片の先端部において内方に突設された係合突起が突設部材の側面に形成されたガイド部を通って係止壁に係止されるようになされれば、フェンスの被挟着部を締付ボルトと係止片との間に位置させて挟着することによって、フェンスの被挟着部は容易には外れなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0012】
すなわち、図1は本発明に係るフェンスの支持具において実施の一形態を示す斜視図、図2は図1の断面図、図3は図1の主要部の一部拡大斜視図、図4は図3の押さえ部材の裏面図である。
【0013】
図面において、1は植物を支持するためのフェンス、2は突設部材、3は突設部材2の先端に取付けられた押さえ部材であり、本形態に係るフェンスの支持具Pは、突設部材2、及び押さえ部材3から主に構成され、壁面Wに取付けられると共に、フェンス1を壁面Wに固定するためのものである。
【0014】
まず、フェンス1は、植物を巻きつかせて生長させる支持材料であれば、特に限定されるものではなく、例えば、縦横の線材を格子状に組み合わせたもの、サインカーブ状あるいは鋸歯状等の波形に形成された線材を格子状に組み合わせたもの、線材が縦方向のみに並行に配置されたもの、あるいはこれらを組み合わせたもの、線材が右斜め及び左斜めに配置されて菱形状の網目が形成されたもの、線材の代わりに合成繊維や紐等を用いたもの、金属板に並行かつ千鳥状に配列された切れ目を多数形成させて切れ目を網目状に拡げてなるエキスパンドメタルでもよい。又、線材や紐等の交点は、溶接や止め金具等による接合、互いに組み合わせた接合、互いに結び合わせた接合等により接合されてもよく、交点で接合されない形態でもよい。
【0015】
本形態に係るフェンス1は、いずれも亜鉛めっきが施された多数本の鉄製の線材11を格子状に組合せ、その格子の各交点は電気溶接により接合され、更に表面全体を樹脂で被覆されたものであり、生産性や防錆性能等を考慮すると本形態がより好ましい。このフェンス1は支持具Pを介して壁面Wに間隔を開けて取付けられると共に、つる性植物等を支持して生長させ、壁面Wを緑化させるための植物支持材料である。対象壁面が建築構造物の場合は、地面から上向きに植物を生長させてもよいし、屋上から下向きに植物を生長させてもよい。
【0016】
又、本形態に係るフェンス1の格子の大きさは、特に限定されるものではないが、10cm角程度とすると、植物がフェンスの格子を伝って生長する際に、横方向より垂直方向に生長しやすい傾向を示すため、比較的短期間でフェンス全面の緑化がなされる。そして、地面に近い壁面Wにフェンスを取付ける際は、格子の横間隔を5cm程度にすると、格子に靴や人の足が入りにくくなり、人が容易にはよじ登れなくなる。又、壁面Wとフェンスとの間隔を10cm程度とすると、同様な効果によって、植物は壁面Wの方に向かっては生長しにくく、フェンスの格子を伝って生長しやすくなる。
【0017】
続いて、図1に示されたフェンスの支持具Pは、壁面Wに突設される突設部材2と、突設部材2の先端に取付けられた押さえ部材3とからなり、突設部材2は、壁面Wに固着された基部4と基部4の先端に取付けられた受け部材5とからなり、基部4と受け部材5との外径は同程度になされている。そして、受け部材5の先端に受け面52が形成されると共に、この受け面52に相対向して押さえ部材3に押さえ面31が形成され、そしてこの受け面52と押さえ面31とでフェンス1の線材11を挟着することにより、所定の間隔を開けて、フェンス1が壁面Wに取付けられるようになされている。
【0018】
受け部材5は、一端には雄ねじ部51が形成され、基部4の雌ねじ部41と螺合されると共に、他端には受け面52が形成され、更に押さえ部材3が取付けられた断面略円形の形態である。又、雄ねじ部51には固定ナット53が螺合され、雄ねじ部51の先端の残余箇所で基部4の雌ねじ部41と螺合されている。これによって、受け部材5を回動させれば基部4に対して進退するため、壁面Wに不陸が生じている場合は、その不陸に対して受け部材5の位置調整が容易となり、位置調整後に固定ナット53を基部4側に回動させて基部4の端面を締付けることによって、受け部材5はその位置からは不用意には動かないようになされる。
【0019】
押さえ部材3は、一面に押さえ面31が形成された断面円形状でその外径は突設部材2と同程度となされ、締付ボルト6によって受け部材5に取付けられ、受け部材5の受け面52に押さえ面31が相対向して配置されるようになされている。そして、締付ボルト6は、突設部材及び押さえ部材の軸心から偏位した位置で取付けられている。これによって、フェンス1の線材11を押さえ面31と受け面52とで挟着する際、締付ボルト6に対する軸心側の挟着可能域が締付ボルト6を中心に配置した場合に比べて広くなり、施工誤差等による位置ずれが生じていても、この領域でこの施工誤差等を吸収しやすくなり、フェンス1を無理なく且つ容易に取付けることができる。
【0020】
締付ボルト6は、受け部材5に形成された雌ねじ部54に螺合されているが、押さえ部材3に形成された挿通孔32の内壁面は平坦に形成されているため、螺合していない状態で取付けら、この挿通孔32は、押さえ部材3の突端側に締付ボルト6の頭部が挿入されるように段部がされている。これによって、押さえ部材3は、締付ボルト6の長さの範囲で移動可能であり、かつ締付ボルト6を軸として回動可能となされる。
【0021】
又、押さえ部材3には、受け部材5に向かって係合片33が突出しており、受け部材5の側面に形成されたガイド部55に係合される。具体的には、係合片33の先端部には内側に突設された係合突起34を有し、この係合突起34はガイド部55を通ってガイド部55の端部の係止壁56に係止されるようになされる。ガイド部55の押さえ部材5側の側壁面には抜け止め突起57が形成されている。この構造によって、押さえ部材3の係止片33の係止突起34を、ガイド部55に沿って係止壁まで移動させることによって、押さえ部材3と受け部材5と係合させ、抜け止め突起57により係止突起34は戻りにくくなり、この係合が外れにくいようになされる。
【0022】
又、締付ボルト6には、円筒状の弾性材61が挿通され、係止突起34をガイド部55に通した際に、弾性材61が押さえ面31と受け面52とに挟まれて、収縮することによって弾性力が生じるようになされている。係止突起34をガイド部55の係止壁56まで移動させると、この弾性力によって、係止突起34の内側面とガイド部55の押さえ部材5側の側壁面とが圧接され、係止突起34がガイド部55からより抜け出しにくくなされる。
【0023】
突設部材2及び押さえ部材3は、本形態では鋼材あるいは亜鉛材から形成されたものであるが、必要に応じて、めっき等による耐食性や耐久性を向上させる処理を施してもよく、その他の金属であるアルミニウム材やステンレス鋼等の比較的耐食性の優れた金属材料を用いてもよく、壁面Wやフェンス1の色彩や景観性を考慮して、更に表面に塗装を施してもよいし、フィルムやシートを貼着させてもよい。
【0024】
本形態に係る支持具Pを用いてフェンス1を壁面Wに取付ける取付方法を説明する。まず、所定の間隔をおいて壁面Wに設けられたアンカーボルト7に、突設部材2の基部4を螺合させる。アンカーボルト7には、金属や硬質の合成樹脂よりなる本体12の両端面に弾性部材13、14が取付けられた円盤状のベース材15が挿通されており、支持具Pは、ベース材15を介して壁面Wに取付けられる。これによって、突設部材2を壁面Wに取付ける際、突設部材2に必要以上に力がかかってアンカーボルト7に螺合されても、その力は弾性部材で吸収されて壁面Wが破損する恐れが少なくなり、又、突設部材2とベース材15との間、及びベース材15と壁面Wとの間からは雨水等が浸入しにくくなる。更に、基部4は、その端面に弾性部材14が圧着された状態となるため、外部からの振動等が基部4に加わっても、アンカーボルト7に対して不用意に回動しにくくなされる。尚、基部4の側面にはアンカーボルト7に螺合させる際に、締付工具を嵌め合わせるための平坦面42が相対向して形成されている。
【0025】
続いて、図2の(a)に示されるように、締付ボルト6を用いて押さえ部材3を受け部材5に取付ける。この際、受け面52と押さえ面31との間隔は、フェンス1の線材11の幅より充分広い状態にする。そして、フェンス1の横線材11が前記締付ボルト6に載置されるように取付ける。こうすれば、フェンス1は支持具Pによって支えらた状態となり、フェンス1から手を離しても落下することはない。この状態で、壁面Wの不陸や施工誤差に対して、受け部材5の雄ねじ部51を回動させて支持具Pの位置調整を行うことができる。本形態では、フェンス1の横線材11の位置調整範囲をなるべく広く確保するために、締付ボルト6が下方に位置するようになされている。
【0026】
そして、図2の(b)に示されるように、押さえ部材3の係止片33を受け部材5に係合させる。すなわち、係止片33の係合突起34を受け部材5のガイド部55を通して係止壁56に係止させる。これによって、横線材11は、押さえ面31と受け面52とによって規制されると共に、下方は締付ボルト6によって規制され、上方は係止片34によって規制されるので、支持具Pから容易には外れないようになされる。更に、締付ボルト6を締付けることによって、横線材11は押さえ面31と受け面52とによって挟まれ、上下方向には用意に位置ずれしないようになされる。
【0027】
尚、フェンス1の線材11が押さえ面31と受け面52とで挟着される際、挟着される箇所は、線材11の任意の箇所でよく、交差部16でもよいし、交差部16以外の箇所でもよい。もっともフェンス1が本形態の如く横線材11と縦線材11とからなる場合は、縦線材11を挟着すれば左右の動きが締付ボルト6及び係止片33によって阻止されるものの、挟着力が弱い場合は下方向に位置ずれするおそれがある。横線材11を挟着すれば、挟着力が弱い場合にも、フェンス1自体の自重を締付ボルト6によって支えることができるので、横線材11を挟着する方がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、壁面を植物により緑化する場合、植物の支持材料となるフェンスを壁面に取付ける際に、施工誤差による位置ずれを吸収し、取付けられたフェンスが位置ずれしにくくなるため、例えば、既存の建築構造物の壁面や道路の法面の緑化に好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るフェンスの支持具において実施の一形態を示すである。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1の一部拡大斜視図である。
【図4】図3の押さえ部材の裏面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 フェンス
2 突設部材
3 押さえ部材
4 基部
5 受け部材
6 締付ボルト
11 (鉄製、縦、横)線材
31 押さえ面
33 係合片
34 係合突起
52 受け面
55 ガイド部
P フェンスの支持具
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に所定の間隔で突設される突設部材と、突設部材の先端に締付ボルトにより取付けられる押さえ部材とを備え、突設部材に形成された受け面と押さえ部材に形成された押さえ面との間にフェンスの被挟着部を挟み、締付ボルトを締付けて壁面に固定することができるフェンスの支持具であって、前記押さえ部材より突設部材に至る係合片を突出し、フェンスの被挟着部を締付ボルトと係合片との間に位置させたことを特徴とするフェンスの支持具。
【請求項2】
突設部材の先端に押さえ部材を取付ける締付ボルトの取付位置は、突設部材及び押さえ部材の軸心から偏位していることを特徴とする請求項1に記載のフェンスの支持具。
【請求項3】
締付ボルトを中心に押さえ部材は突設部材に対して回動可能であり、且つ係合片の先端部において内方に突設された係合突起が突設部材の側面に形成されたガイド部を通って係止壁に係止されるようになされたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェンスの支持具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェンスの支持具によってフェンスが壁面に取付けられたことを特徴とするフェンスの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−225070(P2007−225070A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49424(P2006−49424)
【出願日】平成18年2月25日(2006.2.25)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】