説明

フェーズドアレイアンテナ及び位相制御方法

【課題】 フェーズドアレイアンテナの運用時に湾曲・変形の状態が変化した場合であっても、送受信ビームの特性の劣化を回避することが可能なフェーズドアレイアンテナを提供する。
【解決手段】 フェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ部、送受信制御部、結合量算出部、位相量設定部及び位相制御部を具備する。アンテナ部は、アンテナ素子、送信モジュール、受信モジュール及び検出経路を備える。送受信制御部は、複数のアンテナ部のいずれかへ所定の強度の送信信号を供給し、送信信号の供給先のアンテナ部を順次切り替える。結合量算出部は、供給先が順次切り替えられるそれぞれの送信信号に対して複数の検出経路を介して返信される検出信号に基づき、アンテナ素子間の伝搬量を算出する。位相量設定部は、伝搬量に基づき送信モジュール及び受信モジュールの位相量を設定する。位相制御部は、設定された位相量で送信モジュール及び受信モジュールに位相制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のアンテナ素子を備えるフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナで用いられる位相制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フェーズドアレイアンテナが湾曲・変形した場合には、フェーズドアレイアンテナとしての性能が劣化する。これは、各アンテナ素子から送信される送信信号の位相及び各アンテナ素子で受信される受信信号の位相が不適切となり、形成される送信ビーム及び受信ビームの特性が劣化するためである。
【0003】
このような送信ビーム及び受信ビームの特性の劣化を補償するためには、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態を検出し、適切な位相設定量を算出する等を行う必要がある。しかしながら、従来のフェーズドアレイアンテナでは、運用時に湾曲・変形の状態が連続的に変化した場合、この変化を検出することができず、送信ビーム及び受信ビームの特性の劣化を回避することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−214238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来のフェーズドアレイアンテナでは、運用時に湾曲・変形の状態が変化した場合、この変化を検出することができず、送信ビーム及び受信ビームの特性の劣化を回避することができなかった。
【0006】
そこで、目的は、フェーズドアレイアンテナの運用時に湾曲・変形の状態が変化した場合であっても、送信ビーム及び受信ビームの特性の劣化を回避することが可能なフェーズドアレイアンテナ及び位相制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、フェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ部、送受信制御部、結合量算出部、位相量設定部及び位相制御部を具備する。アンテナ部は、送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュール、及び、特性が既知であり、前記位相制御された送信信号又は前記アンテナ素子で受信される受信信号を検出信号として導通させる検出経路を備える。送受信制御部は、前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の送信信号を供給し、前記送信信号の供給先のアンテナ部を順次切り替える。結合量算出部は、前記供給先が順次切り替えられるそれぞれの送信信号に対して、前記複数のアンテナ部の検出経路を介して返信される複数の検出信号に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出する。位相量設定部は、前記伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定する。位相制御部は、前記設定された位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の切替部の形態の例を示す図である。
【図3】図1の信号処理部が条件1を採用して位相量を設定する際の処理を示すフローチャートである。
【図4】図1の信号処理部が条件2を採用して位相量を設定する際の処理を示すフローチャートである。
【図5】図1のフェーズドアレイアンテナの湾曲・変形例を示す図である。
【図6】第2の実施形態にフェーズドアレイアンテナの機能構成を示すブロック図である。
【図7】図6の切替部の形態の例を示す図である。
【図8】図6の信号処理部が条件3を採用して位相量を設定する際の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナの機能構成を示すブロック図である。図1に示すフェーズドアレイアンテナは、アンテナ部10−1〜10−n、分配/合成部20、送信部30、受信部40、検出信号生成部50、信号処理部60、メモリ70及び位相制御部80を具備する。また、アンテナ部10−1〜10−nの構成はそれぞれ同様であるため、以下ではアンテナ部10−1について説明する。
【0011】
アンテナ部10−1は、アンテナ素子11−1、切替部12−1、送信モジュール13−1、受信モジュール14−1及び検出経路15−1を備える。
【0012】
アンテナ素子11−1は、切替部12−1を介して、送信モジュール13−1、受信モジュール14−1及び検出経路15−1と接続する。アンテナ素子11−1は、送信モジュール13−1から出力される送信出力信号AT1を送信する。また、アンテナ素子11−1は、検出経路15−1から供給される第1の検出出力信号ACR1を送信する。また、アンテナ素子11−1は、受信した信号を、受信入力信号AR1として受信モジュール14−1へ出力する。また、アンテナ素子11−1は、受信した信号を、第2の検出入力信号ACT1として検出経路15−1へ供給する。
【0013】
図2は、切替部12−1の形態の例を示す模式図である。切替部12−1は、サーキュレータ121及びカプラ122を備える。サーキュレータ121は、送信モジュール13−1からの送信出力信号AT1をアンテナ素子11−1へ出力し、アンテナ素子11−1からの受信入力信号AR1を受信モジュール14−1へ出力する。カプラ122は、サーキュレータ121とアンテナ素子11−1の端子との間の線路に位置し、検出経路15−1と接続する。
【0014】
送信モジュール13−1は、移相器131−1及び送信増幅器132−1を備える。移相器131−1は、分配/合成部20から供給される送信入力信号BT1の位相を、位相制御部80からの指示に従い、所定量だけ変化させる。移相器131−1は、位相制御した信号を送信増幅器132−1へ出力する。
【0015】
送信増幅器132−1は、移相器131−1からの信号を増幅し、送信出力信号AT1として切替部12−1へ出力する。
【0016】
受信モジュール14−1は、移相器141−1及び受信増幅器142−1を備える。
【0017】
受信増幅器142−1は、切替部12−1から供給される受信入力信号AR1を低雑音増幅し、移相器141−1へ出力する。
【0018】
移相器141−1は、受信増幅器142−1で低雑音増幅された信号の位相を、位相制御部80からの指示に従い、所定量だけ変化させる。移相器141−1は、位相制御した信号を受信出力信号BR1として分配/合成部20へ出力する。
【0019】
検出経路15−1は、インピーダンス151−1を備える。インピーダンス151−1は、分配/合成部20から供給される第1の検出入力信号BCR1に付加を与え、第1の検出出力信号ACR1として切替部12−1へ出力する。また、インピーダンス151−1は、切替部12−1から供給される第2の検出入力信号ACT1に付加を与え、第2の検出出力信号BCT1として分配/合成部20へ出力する。
【0020】
分配/合成部20は、送信部30から供給される送信信号を分配し、送信入力信号BT1〜BTnとしてアンテナ部10−1〜10−nへ出力する。また、分配/合成部20は、アンテナ部10−1〜10−nから出力される受信出力信号BR1〜BRnを受信部40へ出力する。
【0021】
また、分配/合成部20は、検出信号生成部50から供給される検出信号を分配し、第1の検出入力信号BCR1〜BCRnとしてアンテナ部10−1〜10−nへ出力する。また、分配/合成部20は、アンテナ部10−1〜10−nから出力される第2の検出出力信号BCT1〜BCTnを受信部40へ出力する。
【0022】
送信部30は、送受信制御部61により指示されたタイミング及び変調方式に従って送信信号を生成する。送信部30は、生成した送信信号に対して、デジタル−アナログ変換、周波数変換及び電力増幅等の送信処理を施し、送信処理を施した送信信号を分配/合成部20へ出力する。
【0023】
受信部40は、分配/合成部20からの受信出力信号BR1〜BRn及び第2の検出出力信号BCT1〜BCTnに対して、ベースバンド帯への周波数変換、電力増幅及びアナログ−デジタル変換等の受信処理を施し、受信処理を施した受信出力信号BR1〜BRn及び第2の検出出力信号BCT1〜BCTnを信号処理部60へ出力する。
【0024】
信号処理部60は、例えばマイクロプロセッサからなるCPU(Central Processing Unit)を備えたもので、送受信制御部61、結合量算出部62及び位相量設定部63の機能を有する。
【0025】
送受信制御部61は、送信部30に対して、送信信号の生成タイミング及び変調方式等を指示する。また、送受信制御部61は、検出信号生成部50に対して、検出信号の生成タイミング及び変調方式等を指示する。また、送受信制御部61は、分配/合成部20に対して、送信入力信号Bを出力する送信モジュール、受信出力信号Bの供給元となる受信モジュール、第1の検出入力信号BCRを出力する検出経路、及び、第2の検出出力信号BCTの供給元となる検出経路を指示する。
【0026】
具体的には、送受信制御部61は、以下のような処理を行う。ここで、アンテナ部10−1〜10−n内で伝搬される送信入力信号[B]、送信出力信号[A]、受信入力信号[A]、受信出力信号[B]、第1の検出入力信号[BCR]、第1の検出出力信号[ACR]、第2の検出入力信号[ACT]及び第2の検出出力信号[BCT]は、次式で表される。
【数1】

【0027】
また、送信モジュール13−1〜13−nの特性を示す送信系個体係数[R]、受信モジュール14−1〜14−nの特性を示す受信系個体係数[R]、及び、検出経路15−1〜15−nの特性を示す検出系個体係数[R]は、次式で示される。
【数2】

【0028】
また、アンテナ素子11−1〜11−n間の高周波信号の伝搬量(以下、結合量と称する)である結合係数[T]は、次式で示される。
【数3】

【0029】
また、上記式は、下記の関係性を有する。
【数4】

【0030】
送受信制御部61は、下記の条件1に従い、「1」の送信入力信号Bがアンテナ部10−1〜10−nのうちいずれかのアンテナ部10−p(pは1〜nの自然数)へ順次出力され、その他のアンテナ部へは送信入力信号Bが供給されないように、送信部30及び分配/合成部20を制御する。このとき、送受信制御部61は、第1の検出入力信号BCRがアンテナ部10−1〜10−nへ供給されないように、検出信号生成部50を制御する。
【数5】

【0031】
また、送受信制御部61は、下記条件2を満たすように分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を制御しても良い。
【数6】

【0032】
すなわち、送受信制御部61は、上記の条件2に従い、「1」の第1の検出入力信号BCRがアンテナ部10−1〜10−nのうちいずれかのアンテナ部10−q(qは1〜nの自然数)へ順次出力され、その他のアンテナ部へは第1の検出入力信号BCRが供給されないように、検出信号生成部50及び分配/合成部20を制御する。このとき、送受信制御部61は、送信入力信号Bがアンテナ部10−1〜10−nへ供給されないように、送信部30を制御する。
【0033】
送受信制御部61が分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を、式(15)に示す条件1に従って制御する場合、結合量算出部62は、受信部40からの第2の検出出力信号BCT1〜BCTnを測定する。
【0034】
具体的には、p=1である場合、アンテナ部10−1は、送信出力信号AT1をアンテナ素子11−1から送信する。送信された信号は反射され、アンテナ素子11−1で受信される。結合量算出部62は、受信した信号をカプラ122−1及び検出経路15−1を介して受信し、第2の検出出力信号BCT1として測定する。また、結合量算出部62は、アンテナ素子11−1から送信された送信出力信号AT1が、アンテナ素子11−2〜11−nで受信され、検出経路15−2〜15−nを経て変換された第2の検出出力信号BCT2〜BCTnを測定する。このとき測定される信号を第2の検出出力信号[BCT1]とする。
【0035】
条件1は、送受信制御部61によりp=1〜nまで行われる。結合量算出部62は、p=1〜nまで上記の測定を行い、第2の検出出力信号[BCT1]〜[BCTn]を取得する。
【0036】
ここで、結合量[T]における所定の成分間の関係は、式(13)を参照して、第2の検出出力信号[BCT1]〜[BCTn]及び検出系個体係数[R]のみの関数として表すことができる。すなわち、結合量[T]における所定の成分間の関係は、検出系個体係数[R]を固定値とすることにより、第2の検出出力信号[BCT1]〜[BCTn]に基づいて算出されることとなる。
【0037】
また、送受信制御部61が分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を、式(16)に示す条件2を満たすように制御する場合、結合量算出部62は、受信部40からの受信出力信号BR1〜BRnを測定する。
【0038】
具体的には、q=1である場合、アンテナ部10−1は、第1の検出出力信号ACR1をアンテナ素子11−1から送信する。送信された信号は反射され、アンテナ素子11−1で受信される。結合量算出部62は、受信した信号を受信モジュール14−1を介して受信し、受信出力信号BR1として測定する。また、結合量算出部62は、アンテナ素子11−1から送信された第1の検出出力信号ACR1が、アンテナ素子11−2〜11−nで受信され、受信モジュール14−2〜14−nを経て変換された受信出力信号BR2〜BRnを測定する。このとき測定される信号を受信出力信号[BR1]とする。
【0039】
条件2は、送受信制御部61によりq=1〜nまで行われる。結合量算出部62は、q=1〜nまで上記の測定を行い、受信出力信号[BR1]〜[BRn]を取得する。
【0040】
ここで、結合量[T]における所定の成分間の関係は、式(14)を参照して、受信出力信号[BR1]〜[BRn]及び検出系個体係数[R]のみの関数として表すことができる。すなわち、結合量[T]における所定の成分間の関係は、検出系個体係数[R]を固定値とすることにより、受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて算出されることとなる。以下では、第2の検出出力信号[BCT1]〜[BCTn]又は受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて算出された、結合量[T]における所定の成分間の関係を、結合量算出値と称する。
【0041】
位相量設定部63は、結合量算出部62で結合量算出値が算出されると、算出された結合量算出値と、メモリ70に予め記憶されるテーブルとを対応させる。なお、メモリ70には、結合量算出値と、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態との関係を示すテーブルが予め記憶されている。位相量設定部63は、結合量算出値とテーブルとを対応させることで、湾曲・変形の状態を特定する。このとき、テーブルに記載される参照元の結合量算出値が離散値であり、算出した結合量算出値が連続値である場合、位相量設定部63は、参照元の結合量算出値のうち、算出した結合量算出値に最も近似した値を選択し、その値に対応する湾曲・変形の状態を特定する。なお、位相量設定部63は、参照元の結合量算出値のうち、算出した結合量算出値に近似する複数の値を用いて補間計算し、この補間計算により得られた値に対応する湾曲・変形の状態を特定しても良い。
【0042】
位相量設定部63は、特定した湾曲・変形の状態に基づいて、移相器131−1〜131−n及び移相器141−1〜141−nの適切な位相量を設定する。
【0043】
送受信制御部61、結合量算出部62及び位相量設定部63は、上記の処理を予め設定された周期、又は、外部からの指示に応じて実施する。
【0044】
位相制御部80は、位相量設定部63で設定された位相量で位相を変化させるように、移相器131−1〜131−n及び移相器141−1〜141−nへ指示を出す。
【0045】
次に、以上のように構成されたフェーズドアレイアンテナによる位相制御方法を、信号処理部60の処理手順に従い説明する。図3は、送受信制御部61が条件1を満たすように、分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を制御する場合の信号処理部60の処理を示すフローチャートである。なお、図3の説明では、アンテナ部10が2個、つまりn=2の場合を例に説明する。
【0046】
まず、送受信制御部61は、条件1のp=1として、「1」の送信入力信号BT1がアンテナ部10−1へ出力され、その他のアンテナ部10−2へは送信入力信号BT2が供給されないように、送信部30及び分配/合成部20を制御する。また、送受信制御部61は、第1の検出入力信号BCR1,BCR2がアンテナ部10−1,10−2へ供給されないように、検出信号生成部50を制御する(ステップS31)。
【0047】
結合量算出部62は、アンテナ部10−1から供給される第2の検出出力信号BCT1と、アンテナ部10−2から供給される第2の検出出力信号BCT2とを測定し、第2の検出出力信号[BCT1]を取得する(ステップS32)。
【0048】
続いて、送受信制御部61は、p=nか否かを判断する(ステップS33)。pがn未満である場合(ステップS33のNo)、送受信制御部61は、pを1だけインクリメントし、条件1を満たすように分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を制御する(ステップS34)。また、p=nである場合(ステップS33のYes)、送受信制御部61は、取得したデータに基づいて結合量算出値を算出する(ステップS35)。
【0049】
送受信制御部61は、結合量算出部62で第2の検出出力信号[BCT1]が取得されると、条件1のp=2として、「1」の送信入力信号BT2がアンテナ部10−2へ出力され、その他のアンテナ部10−1へは送信入力信号BT1が供給されないように、送信部30及び分配/合成部20を制御する。また、送受信制御部61は、第1の検出入力信号BCR1,BCR2がアンテナ部10−1,10−2へ供給されないように、検出信号生成部50を制御する(ステップS34)。
【0050】
結合量算出部62は、アンテナ部10−1から供給される第2の検出出力信号BCT1と、アンテナ部10−2から供給される第2の検出出力信号BCT2とを測定し、第2の検出出力信号[BCT2]を取得する(ステップS32)。
【0051】
結合量算出部62は、第2の検出出力信号[BCT1],[BCT2]を取得すると、下記の計算を行い、式(17),(18)で示すように結合量算出値を算出する(ステップS35)。
【数7】

【0052】
位相量設定部63は、結合量算出部62で結合量算出値が算出されると、算出された結合量算出値と、メモリ70に予め記憶されるテーブルとを対応させ、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態を特定する(ステップS36)。位相量設定部63は、特定した湾曲・変形の状態に基づいて、移相器131−1〜131−2及び移相器141−1〜141−2の適切な位相量を設定する(ステップS37)。
【0053】
図4は、送受信制御部61が条件2を満たすように、分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を制御する場合の信号処理部60の処理を示すフローチャートである。
【0054】
まず、送受信制御部61は、条件2のq=1として、「1」の第1の検出入力信号BCR1がアンテナ部10−1へ出力され、その他のアンテナ部10−2〜10−nへは第1の検出入力信号BCR2〜BCRnが供給されないように、送信部30及び分配/合成部20を制御する。また、送受信制御部61は、送信入力信号BT1〜BTnがアンテナ部10−1〜10−nへ供給されないように、検出信号生成部50を制御する(ステップS41)。
【0055】
結合量算出部62は、アンテナ部10−1〜10−nから供給される受信出力信号BR1〜BRnを測定し、受信出力信号[BR1]を取得する(ステップS42)。
【0056】
続いて、送受信制御部61は、q=nか否かを判断する(ステップS43)。qがn未満である場合(ステップS43のNo)、送受信制御部61は、qを1だけインクリメントし、条件2を満たすように分配/合成部20、送信部30及び検出信号生成部50を制御する(ステップS44)。これにより、q=nまでステップS42,S44が繰り返され、結合量算出部62は、受信出力信号[BR1]〜[BRn]を取得する。
【0057】
また、q=nである場合(ステップS43のYes)、送受信制御部61は、取得した受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて結合量算出値を算出する(ステップS45)。
【0058】
以上のように、上記第1の実施形態では、送受信制御部61は、条件1を満たすように、「1」の送信入力信号Bをアンテナ部10−1〜10−nのうちいずれかのアンテナ部へ出力し、出力対象となるアンテナ部を順次切り替える。結合量算出部62は、出力した送信入力信号Bに対して返信される第2の検出出力信号BCT1〜BCTnから第2の検出出力信号[BCT1]〜[BCTn]を取得する。結合量算出部62は、第2の検出出力信号[BCT1]〜[BCTn]に基づいて結合量算出値を算出する。そして、位相量設定部63は、算出した結合量算出値に基づいてフェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態を特定し、移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定する。
【0059】
また、送受信制御部61は、条件2を満たすように、「1」の第1の検出入力信号BCRをアンテナ部10−1〜10−nのうちいずれかのアンテナ部へ出力し、出力対象となるアンテナ部を順次切り替える。結合量算出部62は、出力した第1の検出入力信号BCRに対して返信される受信出力信号BR1〜BRnから受信出力信号[BR1]〜[BRn]を取得する。結合量算出部62は、受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて結合量算出値を算出する。そして、位相量設定部63は、算出した結合量算出値に基づいてフェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態を特定し、移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定する。
【0060】
これにより、フェーズドアレイアンテナは、例えば図5に示すような湾曲・変形が運用時に生じた場合でも、その状態を把握することが可能となり、この湾曲・変形の状態に応じて移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定することが可能となる。
【0061】
したがって、第1の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナによれば、フェーズドアレイアンテナの運用時に湾曲・変形の状態が変化する場合であっても、送信ビーム及び受信ビームの特性の劣化を回避することができる。
【0062】
また、第1の実施形態では、送受信制御部61、結合量算出部62及び位相量設定部63は、上記の処理を予め設定された周期、又は、外部からの指示に応じて処理を実行するようにしている。これにより、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態が連続的に変化した場合であっても、その変化に応じて移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定することが可能となる。
【0063】
なお、上記第1の実施形態では、検出経路15がインピーダンス151を備える場合を例に説明した。しかしながら、これに限定される訳ではない。例えば、分配/合成部20が検出信号を高周波分配する場合、検出経路15は、スイッチ152を備えるようにしても良い。
【0064】
このとき、送受信制御部61は、条件2を満たすように検出信号生成部50を制御すると共に、「1」の第1の検出入力信号BCRが供給されるアンテナ部のスイッチ152をオンとし、それ以外のアンテナ部のスイッチ152をオフとするように指示を出す。
【0065】
また、分配/合成部20がアンテナ部10−1〜10−nからの第2の検出出力信号BCT1〜BCTnを高周波合成する場合、検出経路15は、スイッチ152を備えるようにしても良い。このとき、送受信制御部61は、条件1を満たすように送信部30及び検出信号生成部50を制御すると共に、スイッチ152−1〜152−nが1つずつオンとなるように、スイッチ152−1〜152−nを制御する。これにより、第2の検出出力信号BCTが検出経路15−1〜15−nから1つずつ結合量算出部62へ供給される。
【0066】
また、上記第1の実施形態では、条件1を式(15)のように設定したが、条件1はこれに限定される訳ではない。例えば、送受信制御部61は、アンテナ部10−pへの送信入力信号BTpと、その他のアンテナ部への送信入力信号Bとが判別可能なように、送信入力信号Bの強度を既知の値に設定するようにしても構わない。また、送受信制御部61は、結合量算出部62で第1の検出入力信号BCRの影響を除去可能であれば、必ずしも第1の検出入力信号BCRを0とするように、検出信号生成部50を制御する必要はない。
【0067】
また、上記第1の実施形態では、条件2を式(16)のように設定したが、条件2はこれに限定される訳ではない。例えば、送受信制御部61は、アンテナ部10−qへの第1の検出入力信号BCRqと、その他のアンテナ部への第1の検出入力信号BCRとが判別可能なように、第1の検出入力信号BCRの強度を既知の値に設定するようにしても構わない。また、送受信制御部61は、結合量算出部62で送信入力信号Bの影響を除去可能であれば、必ずしも送信入力信号Bを0とするように、送信部30を制御する必要はない。
【0068】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態にフェーズドアレイアンテナの機能構成を示すブロック図である。なお、第2の実施形態では、受信モジュール14−1〜14−nの受信増幅器142−1〜142−nの特性が安定している場合を例に説明する。
【0069】
図6に示すフェーズドアレイアンテナは、アンテナ部90−1〜90−n、分配/合成部20、送信部30、受信部40、信号処理部100、メモリ70及び位相制御部80を具備する。なお、アンテナ部90−1〜90−nの構成はそれぞれ同様であるため、以下ではアンテナ部90−1について説明する。
【0070】
アンテナ部90−1は、アンテナ素子11−1、切替部91−1、送信モジュール13−1及び受信モジュール14−1を備える。
【0071】
図7は、切替部91−1の形態の例を示す模式図である。切替部91−1は、サーキュレータ911を備える。サーキュレータ911は、送信モジュール13−1からの送信出力信号AT1をアンテナ素子11−1へ出力し、アンテナ素子11−1からの受信入力信号AR1を受信モジュール14−1へ出力する。
【0072】
信号処理部100は、例えばマイクロプロセッサからなるCPUを備えたもので、送受信制御部101、結合量算出部102及び位相量設定部63の機能を有する。
【0073】
送受信制御部101は、送信部30に対して、送信信号の生成タイミング及び変調方式等を指示する。また、送受信制御部101は、分配/合成部20に対して、送信入力信号Bを出力する送信モジュール、及び、受信出力信号Bの供給元となる受信モジュールを指示する。
【0074】
具体的には、送受信制御部101は、下記の条件3に従い、「1」の送信入力信号Bがアンテナ部10−1〜10−nのうちいずれかのアンテナ部10−r(rは1〜nの自然数)へ順次出力され、その他のアンテナ部へは送信入力信号Bが供給されないように、送信部30及び分配/合成部20を制御する。
【数8】

【0075】
結合量算出部102は、受信部40から供給される受信出力信号BR1〜BRnを測定する。具体的には、r=1である場合、アンテナ部90−1は、送信出力信号AT1をアンテナ素子11−1から送信する。送信された信号は反射され、アンテナ素子11−1で受信される。結合量算出部102は、受信した信号を受信モジュール14−1を介して受信し、受信出力信号BR1として測定する。また、結合量算出部102は、アンテナ素子11−1から送信された送信出力信号AT1が、アンテナ素子11−2〜11−nで受信され、受信モジュール14−2〜14−nを経て変換された受信出力信号BR2〜BRnを測定する。このとき測定される信号を受信出力信号[BR1]とする。
【0076】
式(19)に示す条件3は、送受信制御部101によりr=1〜nまで行われる。結合量算出部102は、r=1〜nまで上記の測定を行い、受信出力信号[BR1]〜[BRn]を取得する。
【0077】
ここで、結合量[T]における所定の成分間の関係は、下記の式(20)を参照して、受信出力信号[BR1]〜[BRn]及び受信系個体係数[R]のみの関数として表すことができる。
【数9】

【0078】
受信モジュール14−1〜14−nの受信増幅器142−1〜142−nの特性は安定しているため、受信系個体係数[R]は既知である。そのため、結合量[T]における所定の成分間の関係は、受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて算出されることとなる。以下では、受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて算出された、結合量[T]における所定の成分間の関係を、結合量算出値と称する。
【0079】
送受信制御部101、結合量算出部102及び位相量設定部63は、上記の処理を予め設定された周期、又は、外部からの指示に応じて実施する。
【0080】
次に、以上のように構成されたフェーズドアレイアンテナによる位相制御方法を、信号処理部100の処理手順に従い説明する。図8は、送受信制御部101が条件3を満たすように、分配/合成部20及び送信部30を制御する場合の信号処理部100の処理を示すフローチャートである。
【0081】
まず、送受信制御部101は、条件3のr=1として、「1」の送信入力信号BT1がアンテナ部90−1へ出力され、その他のアンテナ部90−2へは送信入力信号BT2が供給されないように、送信部30及び分配/合成部20を制御する(ステップS81)。
【0082】
結合量算出部102は、アンテナ部90−1〜90−nから供給される受信出力信号BR1〜BRnを測定し、受信出力信号[BR1]を取得する(ステップS82)。
【0083】
続いて、送受信制御部101は、r=nか否かを判断する(ステップS83)。rがn未満である場合(ステップS83のNo)、送受信制御部101は、rを1だけインクリメントし、条件3を満たすように分配/合成部20及び送信部30を制御する(ステップS84)。これにより、r=nまでステップS82,S84が繰り返され、結合量算出部102は、受信出力信号[BR1]〜[BRn]を取得する。
【0084】
また、r=nである場合(ステップS83のYes)、送受信制御部101は、取得した受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて結合量算出値を算出する(ステップS85)。
【0085】
以上のように、上記第2の実施形態では、送受信制御部101は、条件3を満たすように、「1」の送信入力信号Bをアンテナ部10−1〜10−nのうちいずれかのアンテナ部へ出力し、出力対象となるアンテナ部を順次切り替える。結合量算出部102は、出力した送信入力信号Bに対して返信される受信出力信号BR1〜BRnから受信出力信号[BR1]〜[BRn]を取得する。結合量算出部102は、受信系個体係数[R]が既知であることを利用し、受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて結合量算出値を算出する。そして、位相量設定部63は、算出した結合量算出値に基づいてフェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態を特定し、移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定する。このように、受信モジュール14−1〜14−nの受信増幅器142−1〜142−nの特性が安定している場合、結合量算出部102は、第1の実施形態で示す検出経路15がなくても受信出力信号[BR1]〜[BRn]に基づいて結合量算出値を算出することが可能となる。
【0086】
これにより、フェーズドアレイアンテナは、運用時に湾曲・変形があった場合でも、その状態を把握することが可能となり、この湾曲・変形の状態に応じて移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定することが可能となる。
【0087】
したがって、第2の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナによれば、フェーズドアレイアンテナの運用時に湾曲・変形の状態が変化した場合であっても、送信ビーム及び受信ビームの特性の劣化を回避することができる。
【0088】
また、第2の実施形態では、送受信制御部101、結合量算出部102及び位相量設定部63は、上記の処理を予め設定された周期、又は、外部からの指示に応じて処理を実行するようにしている。これにより、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態が連続的に変化した場合であっても、その変化に応じて移相器131−1〜131−n,141−1〜141−nの位相量を設定することが可能となる。
【0089】
なお、上記第2の実施形態では、条件3を式(19)のように設定したが、条件3はこれに限定される訳ではない。例えば、送受信制御部101は、アンテナ部10−rへの送信入力信号BTrと、その他のアンテナ部への送信入力信号Bとが判別可能なように、送信入力信号Bの強度を既知の値に設定するようにしても構わない。
【0090】
また、上記各実施形態では、メモリ70に、結合量算出値と、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態との関係を示すテーブルが予め記憶されている場合を例に示した。しかしながら、これに限定される訳ではない。例えば、メモリ70に、結合量算出値及び送受信のビーム条件(ビーム指向角及びビーム形状等)と、移相器131−1〜131−n及び移相器141−1〜141−nの適切な位相量との関係を示すテーブルが予め記憶されていても構わない。この場合、メモリ70に記憶されるデータ容量は増加するが、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態に基づいて移相器の位相量を算出する必要がないため、処理速度が向上する。
【0091】
また、上記各実施形態では、条件1又は3に従って所望のアンテナ部へ送信入力信号Bを出力する場合、送受信制御部61,101は、分配/合成部20を制御する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定される訳ではない。例えば、分配/合成部20が送信信号を高周波分配する場合、送受信制御部61,101は、送信モジュール13−1〜13−nの送信増幅器132−1〜132−nを制御するようにしても良い。
【0092】
このとき、送受信制御部61,101は、条件3を満たすように送信部30を制御すると共に、「1」の送信入力信号Bが供給されるアンテナ部の送信増幅器132をオンとし、それ以外のアンテナ部の送信増幅器132をオフとするように指示を出す。
【0093】
また、分配/合成部20がアンテナ部90−1〜90−nからの受信出力信号BR1〜BRnを高周波合成する場合、送受信制御部61,101は、受信モジュール14−1〜14−nの受信増幅器142−1〜142−nを制御するようにしても良い。このとき、送受信制御部61,101は、条件3を満たすように送信部30を制御すると共に、受信増幅器142−1〜142−nが1つずつオンとなるように、受信増幅器142−1〜142−nを制御する。これにより、送信入力信号Bが受信モジュール14−1〜14−nから1つずつ結合量算出部62へ供給される。
【0094】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
10,90…アンテナ部、11…アンテナ素子、12,91…切替部、121,911…サーキュレータ、122…カプラ、13…送信モジュール、131…移相器、132…送信増幅器、14…受信モジュール、141…移相器、142…受信増幅器、15…検出経路、151…インピーダンス、152…スイッチ、20…分配/合成部、30…送信部、40…受信部、50…検出信号生成部、60,100…信号処理部、61,101…送受信制御部、62,102…結合量算出部、63…位相設定部、70…メモリ、80…位相制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュール、及び、特性が既知であり、前記位相制御された送信信号又は前記アンテナ素子で受信される受信信号を検出信号として導通させる検出経路を備える複数のアンテナ部と、
前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の送信信号を供給し、前記送信信号の供給先のアンテナ部を順次切り替える送受信制御部と、
前記供給先が順次切り替えられるそれぞれの送信信号に対して、前記複数のアンテナ部の検出経路を介して返信される複数の検出信号に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出する結合量算出部と、
前記伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定する位相量設定部と、
前記設定された位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出す位相制御部と
を具備することを特徴とするフェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュール、及び、特性が既知であり、供給される検出信号を前記受信モジュール及び前記アンテナ素子へ導通させる検出経路を備える複数のアンテナ部と、
前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の検出信号を供給し、前記検出信号の供給先のアンテナ部を順次切り替える送受信制御部と、
前記供給先が順次切り替えられるそれぞれの検出信号に対して、前記複数のアンテナ部の受信モジュールを介して返信される複数の受信信号に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出する結合量算出部と、
前記伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定する位相量設定部と、
前記設定された位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出す位相制御部と
を具備することを特徴とするフェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、及び、前記位相制御後の送信信号に基づく信号又は前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュールを備える複数のアンテナ部と、
前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の送信信号を供給し、前記送信信号の供給先のアンテナ部を順次切り替える送受信制御部と、
前記供給先が順次切り替えられるそれぞれ送信信号に対して、前記複数のアンテナ部の受信モジュールを介して返信される複数の受信信号に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出する結合量算出部と、
前記伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定する位相量設定部と、
前記設定された位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出す位相制御部と
を具備することを特徴とするフェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
前記伝搬量と、フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態との関係を示すテーブルを予め記憶するメモリをさらに具備し、
前記位相設定部は、前記算出された伝搬量を前記テーブルに対応させて、前記フェーズドアレイアンテナの湾曲・変形の状態を特定し、前記特定した湾曲・変形の状態に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項5】
前記伝搬量、前記送信モジュールのビーム条件及び前記受信モジュールのビーム条件と、前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量との関係を示すテーブルを予め記憶するメモリをさらに具備し、
前記位相量設定部は、前記算出された伝搬量、前記送信モジュールのビーム条件及び前記受信モジュールのビーム条件を前記テーブルに対応させて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項6】
前記送受信制御部、結合量算出部及び位相量設定部は、予め設定された周期で処理を実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項7】
前記送受信制御部、結合量算出部及び位相量設定部は、外部からの指示に応じて処理を実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項8】
送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュール、及び、特性が既知であり、前記位相制御された送信信号又は前記アンテナ素子で受信される受信信号を検出信号として導通させる検出経路を備える複数のアンテナ部を具備するフェーズドアレイアンテナで用いられる位相制御方法であって、
前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の送信信号を供給し、
前記供給した送信信号に対して、前記複数のアンテナ部の検出経路を介して返信される複数の検出信号を測定し、
前記送信信号の供給先のアンテナ部を順次切り替え、前記複数のアンテナ部の全てへ前記送信信号を供給した場合、前記検出信号の測定結果に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出し、
前記算出した伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定し、
前記設定した位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出すことを特徴とする位相制御方法。
【請求項9】
送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュール、及び、特性が既知であり、供給される検出信号を前記受信モジュール及び前記アンテナ素子へ導通させる検出経路を備える複数のアンテナ部を具備するフェーズドアレイアンテナで用いられる位相制御方法であって、
前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の検出信号を供給し、
前記供給した検出信号に対して、前記複数のアンテナ部の受信モジュールを介して返信される複数の受信信号を測定し、
前記検出信号の供給先のアンテナ部を順次切り替え、前記複数のアンテナ部の全てへ前記検出信号を供給した場合、前記受信信号の測定結果に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出し、
前記算出した伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定し、
前記設定した位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出すことを特徴とする位相制御方法。
【請求項10】
送信信号の位相を制御する送信モジュール、前記位相制御された送信信号を送信するアンテナ素子、及び、前記位相制御後の送信信号に基づく信号又は前記アンテナ素子で受信される受信信号の位相を制御する受信モジュールを備える複数のアンテナ部を具備するフェーズドアレイアンテナで用いられる位相制御方法であって、
前記複数のアンテナ部のいずれかへ予め設定した強度の送信信号を供給し、
前記供給した送信信号に対して、前記複数のアンテナ部の受信モジュールを介して返信される複数の受信信号を測定し、
前記送信信号の供給先のアンテナ部を順次切り替え、前記複数のアンテナ部の全てへ前記送信信号を供給した場合、前記受信信号の測定結果に基づき、前記複数のアンテナ素子間の高周波信号の伝搬量を算出し、
前記算出した伝搬量に基づいて前記送信モジュール及び前記受信モジュールの位相量を設定し、
前記設定された位相量で前記位相制御を行うように、前記送信モジュール及び前記受信モジュールに対して指示を出すことを特徴とする位相制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−9247(P2013−9247A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141765(P2011−141765)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】