説明

フェーズ合成による核酸配列決定システム及び方法

伸びている核酸ストランドの3’末端に導入された蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を検出することによる核酸配列決定システム及び方法が提供される。一方法は、(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複数の複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログの各タイプは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤を3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を可逆的に終結させ;(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログの独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給することによってポリメラーゼ伸長反応の終結を逆転させて、蛍光タグ又はブロッキング剤を切断し;(f)工程(b)から(e)を繰り返す、工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒトDNAの30億塩基全ての配列を明らかにした2003年の「ヒトゲノム」プロジェクトの完了は、医療診断、予後診断、治療等における非常に多くの利用を可能にした。これらの多くは個人のゲノムの一部又は全てを再配列決定することに依存し、信頼性があり速く経済的に入手可能な配列決定技術の必要性を生じせしる。
【0002】
この必要性に対処しようとして、幾つかの異なった技術がここ数年で開発されており、新世代の配列決定システムが出現した。これら新システムは全て「ヒトゲノム」プロジェクト(1990−2003)まで並びに該プロジェクトで使用されていた第一世代の技術とそれを区別するために次世代配列決定という表題下で分類されている。
【0003】
これらの次世代配列決定アプローチ法の最も進歩したものはシークエンシング反応のために固体表面(例えばチップ、ビーズ、ナノポア等)を用いている。かかる表面は、より少ない試薬体積、より高次の多重化、より高い精度及び再現性並びにより単純なプロトコルを可能にし、これら全てが次世代シークエンシングのより厳しい条件に合致するために重要である。
【0004】
次世代シークエンシングのための改良されたシステムに対して切迫した必要性が尚も存在している。理想的なシステムは増加した感度をもたらし、洗浄工程を排除又は減少させ、マイクロ流体技術との統合を単純化しうる。本発明はこの必要性を満たし、関連した利点をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
一般に、一態様では、核酸の配列決定のためのスキャニングセンサーシステムが提供される。該システムは、複数の実質的に平行な励起導波路と複数の実質的に平行な収集導波路を有する基板であって、励起導波路と収集導波路が交差して、励起導波路と収集導波路が交差する交差領域の二次元アレイを形成し、各交差部に交差領域との光学的連通をもたらす基板(例えば図1に示すもの)と;交差領域と光学的に連通されて配設された複数の光検出部位と;基板の励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、スキャニング光源入力部と光開裂光源入力部を有する一又は複数の切替可能な光源と;基板の収集導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、素子のアレイを有する光分散モジュールと;光分散モジュールに連結されて光学的に連通せしめられた検出器とを具備する。
【0006】
一実施態様では、スキャニング光源は、基板の第一の側の励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられた第一の切替可能な光源に連結され、光開裂光源は、基板の第二の側の励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられた第二の切替可能な光源に連結される。
【0007】
一般に、更なる態様では、核酸の配列決定のためのスキャニングセンサーシステムは、 複数の実質的に平行な励起導波路と複数の実質的に平行な収集導波路を有する基板であって、励起導波路と収集導波路が交差して、励起導波路と収集導波路が交差する交差領域の二次元アレイを形成し、各交差部に交差領域との光学的連通をもたらす基板と;交差領域と光学的に連通されて配設された複数の光検出部位と;励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、スキャニング光源入力部を有する切替可能な抗原と;基板の外部に配設された光開裂光源入力部及び光移送システムと;基板の収集導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、素子のアレイを有する光分散モジュールと;光分散モジュールに連結されて光学的に連通せしめられた検出器とを具備する。
【0008】
光移送システムは光開裂光源入力部を有しうる。
分散モジュールは、収集導波路の一又は複数から検出器中の複数の素子に光を分散させるように構成されうる。一実施態様では、分散モジュールは、所定の収集導波路から検出器中の4つ以上の素子に光を分散させるように構成される。特定の実施態様では、検出器中の4つの素子に光を分散させる。異なった実施態様では、分散モジュールは検出器中の5つ以上の素子に光を分散させる。
【0009】
分散モジュールから分散される光は複数の光の波長を含みうる。一実施態様では、複数の波長が4以上の光波長を含む。他の実施態様では、複数の波長は5以上の光波長を含む。
【0010】
光開裂光源は、400nmから2000nmの範囲の波長を有する光を放射しうる。光開裂光源入力部は紫外線光源に連結されうる。一実施態様では、紫外線光源が100nmから400nmの範囲の波長を有する光を放射する。
【0011】
一般に、一態様では、伸びている核酸ストランドの3’末端に導入された蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を検出することによる核酸配列決定方法が提供される。該方法は、(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複数の複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログの各タイプは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤を3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を可逆的に終結させ;(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログの独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給することによってポリメラーゼ伸長反応の終結を逆転させて、蛍光タグ又はブロッキング剤を切断し;(f)工程(b)から(e)を繰り返すことを含む。
【0012】
一実施態様におけるプライマーは、複数の複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される。特定の実施態様では、プライマーは光検出部位に共有的に固定される。他の実施態様では、プライマーは光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定される。
一実施態様におけるポリメラーゼは、複数の複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される。特定の実施態様では、ポリメラーゼは複数の複合体の固定の前に光検出部位に共有的に固定される。
方法の一実施態様では、工程(b)は、工程(b)及び(c)の間に洗浄工程を伴わないで工程(c)の前に実施される。方法の他の実施態様では、工程(f)は、工程(e)及び(b)の間に洗浄工程を伴わないで工程(b)を繰り返す前に工程(e)を実施することを更に含む。
配列決定される核酸はDNAでありうる。
【0013】
一実施態様では、プライマーは、光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定され、ポリメラーゼは複数の複合体の形成及び固定の前に光検出部位に共有的に固定される。関連した実施態様では、工程(b)の前に、固定されたプライマー及び鋳型二本鎖が形成され、光開裂光パルスが光開裂性リンカーを切断し、二本鎖を切り離すために供給され、ここで、切り離された二本鎖が続いて固定ポリメラーゼに結合して固定された複数の複合体を形成する。
【0014】
蛍光ヌクレオチドアナログは4つの異なったdNTPsを含み得、ここで、各dNTPが異なった蛍光タグで標識される。特定の実施態様では、蛍光タグは光開裂性化学結合によってdNTPsに結合される。
【0015】
一般に、他の態様では、蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を、該ヌクレオチドアナログが伸びている核酸ストランドに導入された後に検出することによる単一核酸分子の配列決定方法が提供される。該方法は、(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤をヌクレオチドアナログの3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を終結させ;(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログに結合した独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給して、蛍光タグ及び/又はブロッキング剤を切断し;(f)工程(b)から(e)を繰り返す工程を含む。
【0016】
プライマーは、複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定されうる。特定の実施態様では、プライマーは光検出部位に共有的に固定される。他の実施態様では、プライマーは光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定される。
ポリメラーゼは、複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定されうる。一実施態様では、ポリメラーゼは複合体の固定の前に光検出部位に共有的に固定される。
【0017】
方法の一実施態様では、工程(b)は、工程(b)及び(c)の間に洗浄工程を伴わないで工程(c)の前に実施される。方法の他の実施態様では、工程(f)は、工程(e)及び(b)の間に洗浄工程を伴わないで工程(b)を繰り返す前に工程(e)を実施することを更に含む。
配列決定される核酸はDNAでありうる。
【0018】
方法の特定の実施態様では、プライマーは光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定され、ポリメラーゼは複合体の形成及び固定の前に光検出部位に共有的に固定される。一実施態様では、工程(b)の前に、固定されたプライマー及び鋳型二本鎖が形成され、光開裂光パルスが光開裂性リンカーを切断し、二本鎖を切り離すために供給され、ここで、切り離された二本鎖が続いて固定ポリメラーゼに結合して固定された複合体を形成する。
【0019】
蛍光ヌクレオチドアナログは4つの異なったdNTPsを含み得、各dNTPが異なった蛍光タグで標識されている。一実施態様では、蛍光タグは光開裂性化学結合によってdNTPsに結合される。
【0020】
出典明示による援用
この明細書に記載した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各刊行物、特許、又は特許出願が特にかつ個々に出典明示により援用されるべきことが示されているのと同じ度合いでここに出典明示により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の新規な特徴を添付の特許請求の範囲に入念に記載する。本発明の特徴及び効果の更なる理解は、発明の原理が利用されている例示的な実施態様を示す次の詳細な説明と以下の添付の図面を参照して得られるであろう。
【0022】
【図1】図1は、切替可能な光源、基板、光検出部位、分散モジュール及び検出器アレイを含む本発明の一実施態様に係るスキャニングセンシングシステムの概略図である。
【図2A】図2Aは、切替可能な光源、基板、光検出部位、分散モジュール及び検出器アレイを含み、切替可能な光源が光スイッチ、スキャニング光源入力部及び光開裂光源入力部を含む本発明の他の実施態様に係るスキャニングセンシングシステムの概略図である。
【図2B】図2Bは、切替可能な光源、基板、光検出部位、分散モジュール及び検出器アレイを含み、切替可能な光源が光スイッチ、スキャニング光源入力部及び光開裂光源入力部を含み、他の切替可能な光源が光スイッチ及び光開裂光源入力を含む本発明の他の実施態様に係るスキャニングセンシングシステムの概略図である。
【図2C】図2Cは、切替可能な光源、基板、光検出部位、分散モジュール、検出器アレイ、光開裂光源入力及び光開裂光移送システムを含み、切替可能な光源が光スイッチ及びスキャニング光源入力部を含む本発明の一実施態様に係るスキャニングセンシングシステムの概略図である。
【図3A】図3Aは、光検出部位及び障壁部との関連で励起及び収集光導波路を含む他の実施態様に係る本発明の基板の概略図である。
【図3B】図3Bは、光検出部位との関連で励起及び収集光導波路を含む図3Aに示した本発明の実施態様に係る基板の斜視図である。
【図3C】図3A及び3Bに示した基板の二つの概略断面図(AA及びBB)である。
【図3D】図3Dは熱移動部材との関連での本発明の一実施態様の基板の概略側面図である。
【図3E】図3Eは、ヒータ及びサーミスタを含む光検出部位の詳細を示す本発明の基板の一実施態様の概略図である。
【図3F】図3Fは、光検出部位との関連でリザーバ及びマイクロチャンネルを含む本発明の基板の一実施態様の概略図である。
【図4A】図4Aは、光検出部位、障壁及びファネルとの関連で励起及び収集光導波路を含む本発明の基板の一実施態様の概略図である。
【図4B】図4Bは、一実施態様に係る基板の特徴部を拡大した概略図である。
【図4C】図4Cは、一実施態様に係る基板の概略断面図である。
【図5A】図5Aは、光検出部位、障壁及び分岐部との関連で励起及び収集光導波路を含む本発明の基板の一実施態様の概略図である。
【図5B】図5Bは、図5Aに示した一実施態様に係る基板の特徴部を拡大した概略図である。
【図5C】図5Cは、一実施態様に係る基板の面(AA)における概略断面図である。
【図5D】図5Dは、一実施態様に係る基板の面(BB)における概略断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明のものを代表する典型的な層及び導波路を含む一般的な基体の概略図である。
【図6B】図6Bは、本発明のもの及びシリカ層を表す導波路の顕微鏡写真画像である。
【図6C】図6Cは導波路及び付随する基板層の斜視図である。
【図7A】図7Aは、入力部及び出力部を含む本発明の切替可能な光源の概略図である。
【図7B】図7Bは、本発明の切替可能な光源の入力部と出力部の間の分岐構造の概略図である。
【図7C】図7Cは、光発生器及び導波路を含む本発明の切替可能な光源の他の実施態様の概略図である。
【図8A】図8Aは、導波路のセンシング部位に固定化されたプライマー、DNA二本鎖及びDNA二本鎖+ポリメラーゼ複合体と共に基板を含む本発明の一実施態様に係るフェーズド合成による核酸配列決定の例証である。
【図8B】図8Bは、導波路のセンシング部位に固定化されたポリメラーゼ、DNA二本鎖及びポリメラーゼ+DNA二本鎖複合体と共に基板を含む本発明の他の実施態様に係るフェーズド合成による核酸配列決定の例証である。
【図8C】図8Cは、固定化されたプライマーの光開裂後の固定されたポリメラーゼ及び導波路のセンシング部位に固定化されたプライマー、DNA二本鎖及びポリメラーゼ+DNA二本鎖複合体と共に基板を含む本発明の他の実施態様に係るフェーズド合成による核酸配列決定の例証である。
【図9】図9は本発明のフェーズド合成法による配列決定の一実施態様を例証するフローチャートである。
【図10A】図10Aは本発明の基板及び導波路のための代表的な製造方法を示す概略図である。
【図10B】図10Bは本発明の基板及び導波路のための代表的な製造方法を示す概略図である。
【図10C】図10Cは本発明の基板及び導波路のための代表的な製造方法を示す概略図である。
【図10D】図10Dは本発明の基板及び導波路のための代表的な製造方法を示す概略図である。
【図11】図11は基板の代表的な製造方法を示すフローチャートである。
【図12】図12は本発明のスキャニングセンシングシステムを用いて使用される装置と連通される論理デバイスの代表例を示すブロック図である。
【図13】図13はキットの代表例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、固相シークエンシング反応が、光を反応部位へ向け反応部位から受けることができる埋込み導波路を含んでいるマイクロアレイチップの表面上で実施される核酸(DNA、RNA等)の配列決定のための新規なアプローチを提供する。導波路ベースのセンシングの一つの利点は、技術に固有の表面選択性である。バルクを避けながら導波路の境界から何十ナノメートルかの範囲内で生じる反応のみの検出は検出ノイズを有意に減少させ、洗浄工程を少なくするか不要のものとする。本発明はまたインタロゲーションシステムを妨害することなくチップの上面を使用することができるマイクロ流体移送技術との集積化を簡単にする。
【0024】
核酸は、一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーでありうる。特に限定されない限り、該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に生じるヌクレオチドと同様な形で代謝される天然ヌクレオチドの既知のアナログを含む核酸を包含する。特に他の形で限定されない限り、該用語はまたPNA(ペプチド核酸)、アンチセンス技術で使用されるDNAのアナログ(ホスホロチオエート、ホスホロアミデート等)を含むオリゴヌクレオチドアナログを意味する。他の定義が示されない限り、特定の核酸配列は、黙示的にその保存的に修飾された変異体(限定しないが縮重コドン置換)及び相補的配列並びに明示的に示された配列をまた包含する。特に、縮重コドン置換は、一又は複数の選択された(又は全ての)コドンの第三の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成させることによって達成されうる(Batzer等, Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka等, J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);及びRossolini等, Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0025】
ここでは、多型性は集団中における二以上の遺伝学的に決定された別の配列又は対立遺伝子の発生である。多型マーカー又は部位は分岐が生じる座位である。好ましいマーカーは、それぞれが選択された集団の1%より多く、より好ましくは10%又は20%より多い頻度で生じる少なくとも二つの対立遺伝子を有する。多型性は、一又は複数の塩基変化、挿入、反復、又は欠失を含みうる。多型座位は一つの塩基対ほど小さくてもよい。多型性マーカーは、制限酵素断片多型性、可変数のタンデムリピート(VNTR's)、高頻度可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、単純配列反復、及び挿入エレメント、例えばAluを含む。第一の同定された対立遺伝子型が、参照型として任意に指定され、他の対立遺伝子型が別の又は変異体対立遺伝子として指定される。選択された集団における最も頻繁に生じる対立遺伝子型はしばしば野生型と称される。二倍体生物は、対立遺伝子型に対してホモ接合性又はヘテロ接合性でありうる。二対立遺伝子多型性は二つの形態を有している。三対立遺伝子多型性は三つの形態を有している。
【0026】
一塩基多型性(SNP)は、対立遺伝子配列間の変異の部位である一塩基によって占有された多型部位で生じる。その部位には通常は対立遺伝子(例えば集団の1/100又は1/1000メンバー内で変動する配列)の高度に保存された配列が先と後に続く。
一塩基多型性は、通常、多型性部位における他のものへの一ヌクレオチドの置換により生じる。トランジションは一プリンの他のプリンによる置換又は他のピリミジンによる一ピリミジンの置換である。トランスバージョンはピリミジンによるプリンの置換又はその逆である。一塩基多型性はまた参照対立遺伝子に対するヌクレオチドの欠失又はヌクレオチドの挿入から生じうる。
ここでは、個人はヒトには限定されないが、また他の生物、例えば哺乳類、植物、細菌又は細胞で上記の何れかから誘導されたものを含みうる。
【0027】
本発明の態様は、次の有利な特徴の一又は複数を含みうる。光学的操作エレメントの密で精確な集積化を平面光波回路技術を使用して達成することができる。核酸配列解析の応用に有用なここに記載された平面光波回路への応用は、限定されないが、疾患研究、バイオマーカーの発見、SNP関連研究、例えば毒性学及び疾患感受性、及び病気の素因のある患者の同定及び特定の薬剤感受性を持つ患者の同定を含む診断を含む。
【0028】
光学的スキャニングシステム
ここに開示される光学的スキャニングセンシングシステムは、2007年3月8日出願の米国特許出願第11/683808号(弁護士ドケット番号第34646−701.201号)及び2007年9月12日出願の第60/971878号(弁護士ドケット番号第34646−703.101号)に記載のものに関する。光学的スキャニングシステムのブロック図を図1に示す。
【0029】
一実施態様では、図1に示すように、切替可能な光源102が、基板104の第一縁部において励起導波路108の一又は複数に連結され、光学的に連通せしめられている。また、分散モジュール105及び検出器アレイ106が、基板104の第二縁部において収集導波路110の一又は複数に連結され、光学的に連通せしめられている。基板の一縁部に単一の検出器が示されているが、基板の様々な縁部において一又は複数の収集導波路に連結され、光学的に連通せしめられた構成も考えられる(図示せず)。例えば、切替可能な光源が基板の第一縁部に連結されている一実施態様では、第一検出器が、隣接の縁部に連結され、収集導波路の第一端部に光学的に連通せしめられる一方、第二検出器が他の隣接縁部に連結され、収集導波路の第二端部に光学的に連通せしめられる(図示せず)。第三検出器を、切替可能な光源に連結されたものと反対の縁部に連結し、励起導波路の第二端部に光学的に連通せしめることができる(図示せず)。
【0030】
基板104は、収集導波路110と励起導波路108がクロス又は交差する交差領域114を有しうる。
図1に示されるように、一実施態様では、システム100は実質的に平面的なものとできる。例えば、切替可能な光源102は平面チップとできる。これは、第二チップである平面状基板104に連結でき、これが更に第三チップである平面分散モジュール105に連結され、更に同チップの一部又は第四チップである検出器アレイ106に連結される。特定の実施態様では、図1に示されるように、システム100は4つの結合チップを含む平面光波回路である。一実施態様では、二つのチップが単一チップに集積されている(例えば光スイッチチップ及び基板チップ)。かかる構成は、基板チップが再利用でき、長期間効率的に使用できる場合には有用であろう。また、単一基板上に二つのチップを集積させると、二つのチップ(例えば切替可能な光源チップ及び基板チップ)の相対的配置を維持する問題を解消する。
【0031】
図1の実施態様では、励起導波路と収集導波路のクロッシング又は交差は、例えば励起導波路と収集導波路が単一層又は複数層で基板内に埋め込まれる場合には直接の物理的クロッシング又は交差でありうることが考えられる。あるいは、クロッシング又は交差は、例えば励起導波路と収集導波路が別個の層で基板内に埋め込まれる場合、励起導波路と収集導波路との間に物理的空間又は距離を置くことが考えられる。図1に示されるように、システム100の光検出部位112は典型的には交差領域114に関連する。典型的には、一つの光検出部位112が各交差領域114に関連する。示されているように、一実施態様では、交差領域114及び光検出部位112の数が100の交差領域114及び100の光検出部位112の配置である。基板チップ上の交差領域及び光検出領域の数は、10より多く、100より多く、1000より多く、10000より多く、100000より多いか又は1000000より多くできると考えられる。交差領域の密度はcm当たり10より大きく、cm当たり100より大きく、cm当たり1000より大きく、cm当たり10000より大きく、cm当たり100000より大きく、又はcm当たり1000000より大きくできると更に考えられる。一実施態様では、交差領域の密度はcm当たり2000より大きい。
【0032】
図1に更に示されるように、励起導波路108及び収集導波路110のクロッシング又は交差は、例えば90°の角度で実質的に直交しうる。あるいは、ある実施態様では、クロッシング又は交差は90°より少ないか又は大きい角度でありうる。
【0033】
図1の実施態様では、励起導波路中の切替可能な光源によって発生させられる第一の光波は、収集導波路中に第二の光波を生じる光信号を変換するようにセンサを誘導し、第二の光波は検出器により検出可能であるとまた考えられる。
【0034】
図1に示されるように、有利な一実施態様では、システム100は平面二次元スキャニングシステムである。この実施態様における該システム100は、平面状の切替可能な光源102、例えば平面光スイッチ又は切替可能なレーザのアレイを含む。更に、切替可能な光源102は、個々の励起導波路108に関して選択的でプログラムされた励起のための動的光源を提供し得、その励起導波路108に沿った光検出部位112の全てに励起をもたらす。動的光源は、限定しないが、調節可能な波長及び/又は調節可能な帯域幅光源を含む。また、この実施態様のシステム100は、光収集が励起導波路108中に生成された光の方向に実質的に直交するように、特に基板104の面内で、収集導波路110中の全ての励起された検出部位112から発せられた光の平面収集をもたらす。
【0035】
図1に示されるように、分散モジュール105は、例えば収集導波路110を含む基板104と光学的に連通して配されうる。分散モジュール105は、収集導波路110を出る光に存在する異なった波長を分離するように機能し、所定の励起導波路110からの各波長を1D又は2D検出器アレイ106中の別個の検知素子116に向けるように構成されうる。多波長が分散モジュールを通して導かれる場合(例えば4以上の光の色)、モジュールは、検出器アレイに垂直に提供されるように配置することができると考えられる。この場合、検出器アレイは、直交して分散された光を受光するように配置された複数の素子を含む二次元検出器アレイでありうる。他の実施態様では、分散素子は、分散モジュールからの分散光を受光するように水平に配置された一連の検出器アレイ素子に水平に分散された多波長の光をもたらすように配置されうる。この場合、検出器アレイは一次元検出器アレイでありうる。分散モジュール105は図1には別体モジュールとして示されているが、特定の実施態様では、分散モジュール105を検出器アレイ106と共に単一のモジュールに組み込むことができることが予想される。非限定的な例を挙げると、分散モジュール105は、限定しないが、ホログラフィー、機械的に目盛りが付けられ、コンピュータで生成され、又はUVで書かれた格子を含む任意の種類の分散格子、並びにプリズム、スリット及び当該分野で知られている任意の他の種類の分散構造を含みうる。
【0036】
散モジュールは、収集導波路を出る光を複数の異なった波長に分けるように構成されうることが考えられる。一つの例示的な実施態様では、光は、例えば4色核酸シークエンシングに有用な4つの異なった波長に分離される。他の実施態様では、4を越える異なった波長を分離することができる。例えば5以上の波長を分離することができる。4色シークエンシング用途では、更なる分離波長(4を越える)が、例えばキャリブレーション及び正規化を助けるのに有用でありうる。
【0037】
図1に示されるような検出器アレイ106は、素子116のアレイを含みうる。任意の数の素子を、所望の波長の光を受光するために分散モジュール105と光学的に整列させうることが考えられる。一実施態様では、図1に示されるように、4つの素子の集合を、(例えば4つの異なった蛍光染料からの)光の4つの異なった波長を、光検出部位112におけるシークエンシング関連染料活性から生じる所定の収集導波路110から検出することができるように分散モジュール105と整列させることができる。分散モジュール105について検討されたように、5以上の光の波長を用いることができ、しかして収集導波路110につき5以上の素子116が考えられる。しかして、検出器アレイ106の素子116は、様々な有用な構成、例えば4×10、5×10、又は6×10で配置されうる。一連の10の素子116が示されているが、限定しないが10以上、20以上、100以上又は更に1000以上を含む任意の数の素子が有用でありうると考えられる。
【0038】
分散モジュールは一次元検出器アレイの異なった検出器素子にそれらを水平にマッピングする単一の収集導波路から出てくる異なった波長を分散させることができる(図示せず)とまた考えられる。
光学的スキャニングシステムの他の実施態様は、2007年3月8日出願の米国特許出願第11/683808号(弁護士ドケット番号第34646−701.201号)及び2007年9月12日出願の第60/971878号(弁護士ドケット番号第34646−703.101号)に開示される。
【0039】
本発明の光学的システムの第二の部分は光学的又は光開裂システムである。光開裂システムは、放たれた光を光検出部位の一又は複数へ移相するための光源及び光学的手段を含む。
特定の一実施態様では、光開裂システムの光源は、UV(紫外線)スペクトル範囲の波長の光を放出する。特定の非限定的な実施態様では、光源は100nmから400nmの間の波長を有するUV光を放出する。更に他の実施態様では、放たれた波長は400nm及び2000nmの間の可視又は赤外線スペクトル範囲にある。
光開裂光源からの光を検出部位212に移送するための多くの可能な実施態様が考えられる。
【0040】
図2Aは、本発明のスキャニングセンシングシステムの特定の実施態様を示す。この実施態様では、光開裂光源からの光は、光学的スキャニングシステム200の切替可能な光源202に使用されたものと同じ光スイッチ203を使用して移送される。一実施態様では、光スイッチ203は2つの入力部及びNの出力部を含む。二以上の入力部を光スイッチ203に含めることができることが考えられる。光スイッチ203は入力部の何れかを出力部の何れかに切り替えるように構成されうる。光学的スキャニングのための第一の光源207が第一入力部として連結できる一方、光開裂光源入力209は光スイッチ203の第二入力部に連結されうる。光スイッチ203は何れかの光源入力(207又は209)からの光を、光検出部位212へ光を移送する励起導波路208の一部又は全てと結合させるように機能しうる。
【0041】
図2Bは、本発明のスキャニングセンシングシステムの他の実施態様を示す。この実施態様では、光開裂光源入力209は、基板204の第二縁部、例えば基板204の反対部位に結合された第二光スイッチ203に連結されている。第二光スイッチ203が第一光スイッチ203とは反対に配設される場合、両方の光スイッチが、光学的に連通される検出部位212に光を移送する一又は複数の励起導波路208に個々に光を結合させることができる。
【0042】
図2Cは本発明の更なる実施態様を示す。この実施態様では、光開裂光移送システム211を使用して、光開裂光源からの光が、基板204の上及び/又は下から基板204及び検出部位212に照射される。光開裂光移送システムは、レンズ、鏡及び基板全体に溢れさせることにより直ぐに個々の光検出部位又は光検出部位の全てに光を向ける機械的手段(図示せず)を含みうることが予想される。
【0043】
光開裂光移送システムが基板上へ下から光を照らす場合、基板は、光が光検出部位上をまた照らすことを可能にする光学的に透明な材料(例えばガラス又はプラスチック)から作製されうる(図示せず)。特定の実施態様では、基板はUV透明なプラスチックから作製されうる。
【0044】
図3Aは、基板内で迷光をブロックし,基板の異なった部素子のクロストークを低減することが意図された障壁318を更に含む本発明のシステムの例示的な基板304を例証する。障壁318は、光吸収性又は光反射性でありうる。障壁318は、所望の光学的効果を達成するために、様々なサイズにされ、形状とされ、収集導波路310及び/又は励起導波路308の間に多数の配向の何れかで位置させられうる。図3Aに示されるように、障壁318は、2つの隣接する収集導波路の間で光検出部位312及び交差領域314に近接した列に配置することができる。
【0045】
図3Bに示されるように(この図では上部のクラッド層は示されていない)、一実施態様では、基板304は、複数層の基板304の表面の下に埋め込まれた励起導波路308及び収集導波路310を含みうる。図示の如く、励起導波路308はクロスし、物理的に交差し、交差領域314で収集導波路310と光学的に連通している。図3Bに示された実施態様では、光検出部位312は交差領域314の上に位置させられ、励起導波路308と光学的に連通させられている。図3Bに更に示されるように、基板304はシリコン層320及びシリカ(SiO)層322を含む複数層を含み、ここで、収集導波路310はシリカ(SiO)層322内に埋め込まれている。
【0046】
図3Cに示されるように、他の実施態様では、基板は、単一層の基板304の表面の下に埋め込まれた励起導波路308及び収集導波路310を含みうる。図示の如く、励起導波路308はクロスし、物理的に交差し、収集導波路310と光学的に連通している。図3Bに示された実施態様とは異なり、ここでは、励起導波路308及び収集導波路310間の交差は収集導波路310に対して内部に生じる。図3Cに更に示されるように、基板304はシリコン層320、シリカ(SiO)層322、及びクラッド層324を含む複数層を含む。図示の如く、励起導波路308及び収集導波路310はシリカ(SiO)層322内に埋め込まれうる。また、光検出部位312はクラッド層324及びシリカ(SiO)層322の双方内に埋め込まれうる。場合によっては、光検出部位はクラッド層内に単独で埋め込まれうる(図示せず)。
【0047】
励起導波路及び収集導波路は、単一モード又はマルチモード導波路でありうると考えられる。一実施態様では、励起導波路は単一モードであり、収集導波路はマルチモードである。導波路の構造は、導波路内に垂直又は横方向の何れかで単一又はマルチモード構成を含みうると考えられる。例えば、特定の一つの非限定的な実施態様では、励起導波路308は垂直次元で単一モードを、側方次元でマルチモードをサポートしうる。場合によっては、図3Aに示されるように、励起導波路308及び収集導波路310は一縁から他の縁まで基板全体にわたりうる。
【0048】
図3Cに更に示されるように、基板304コンポーネント及び光検出部位312は、寸法を含みうる。図3Cは基板304の二つの断面図を示す。AA視は図3A及び図3Bに示されているように平面Aにおける断面図である。BB視は図3A及び図3Bに示されているように平面Bにおける断面図である。図3Cに示されるように、励起導波路の上のクラッド層324の厚みは約0.1μmから20μmでありうる。一実施態様では、クラッド層324の厚みは約1−2μmである。非限定的な例では、図3Cに示されるように、光検出部位312の開口部は次の寸法を含みうる:約20μm×2μm。収集導波路310間の距離は約1μmから1000μmの範囲とできる。例えば、図3Cに示されるように、収集導波路310間の距離は約100μmでありうる。収集導波路310及びシリコン層320の間の距離は約1μmから100μmでありうる。例えば、図3Cに示されるように、収集導波路310及びシリコン層320の間の距離は約1−20μmでありうる。
【0049】
図3B及び3Cに示されるように、励起導波路308及び収集導波路310は溝状導波路でありうる。図3B及び3Cに示される実施態様における導波路寸法の例示的範囲は、約0.1から100μm厚及び約1から100μm幅を含む。ほんの非限定的な例を挙げると、励起導波路208は約0.1μm×2μmの断面寸法を含み得、収集導波路210は約0.1μm×20μmの断面寸法を含みうる。
【0050】
側面図の図3Dは、熱移動部材303、例えば熱電冷却器(TEC)との関連で本発明の基板304の他の実施態様を示す。熱移動部材303は、例えば基板304のようなチップを加熱又は冷却するのに有用な温度制御システムである。熱移動部材はここでは冷却部材と称されるが、熱移動部材がチップの温度を増加及び減少させるように構成される場合、該部品は電流の誘導方向に応じて本質的に加熱及び冷却部材として機能することが理解されなければならない。熱移動部材は所定範囲の有用な温度をもたらしうる。例えば、熱移動部材は、所望に応じて約−40℃から約120℃の範囲の温度をもたらすように構成されうる。熱移動部材は本発明の基板が収容されるように適合化されうる。熱移動部材は本発明の基板の表面の一部又は全部に接触するように適合化されうる。
【0051】
本発明の基板に関連して熱移動部材を設けることは、例えばポリメラーゼを使用するシークエンシング反応に有用である。あるいは、それは、ここに記載されるようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のようなプロセスを通じての試験される試料分子の増幅に有用である。使用時には、図3Dに記載した実施態様は、基板304全体の温度が熱移動部材303を使用してサイクル化され又は一定に保たれうるように基板全体の温度を制御する能力を提供する。よって、任意の光検出部位の試料を、核酸ポリメラーゼ酵素又は他の伸長法によって伸長させることができ、及び/又はPCR又は他の核酸増幅法によって同時に増幅させることができる。
【0052】
図3Eは、光検出部位312がヒータ305及びサーミスタ307を含む本発明の基板304の他の実施態様を示す。この実施態様では、基板304の光検出部位312は、各検出部位312の付近にヒーター305、例えば薄膜ヒータを含みうる。ヒーター305は各検出部位312に対して個々の温度制御を可能にするように適合化されうる。ヒータ305に加えて、サーミスタ307を、各検出部位312又はその近くに位置させることができ、局所温度の測定をもたらす。使用時には、この実施態様は、それぞれの及びあらゆる検出部位に対して同じ又は任意の所望される異なった数のサイクル及び同じ又は任意の所望される異なった数の温度プロファイルをもたらす。
【0053】
有利には、図3D及び3Eに記載された実施態様は、リアルタイム核酸シークエンシング及び/又はPCR又は他の核酸増幅法をサポートしうる。ここに記載されるように、光学的検出は基板内からなされるので、これらの実施態様における信号検出(図3D及び3Eを参照)は、試料がシークエンシング及び/又は増幅のプロセスにある間になされ得、よってプロセスのリアルタイム解析が可能になる。
【0054】
図3Fは、基板304が光検出部位312(見やすくするためにこの図では導波路を示していないことに留意)に関連してリザーバ311及びマイクロチャネル309を更に含む本発明の基板304の更に他の実施態様を示す。しかして、この実施態様では、マイクロフルイディクスが基板に導入されている。マイクロフルイディクスは、基板を横切る毛細管効果を使用して液体(この場合は試験試料)を駆動するように適合化されうる。図3Fに示されるように、これは、試料を一又は複数のリザーバ311から、試料を収容するためにエッチングされたウェルを含みうる光検出部位312に強制的に移送する、場合によっては変動幅のマイクロチャネル309の配置によって達成されうる。マイクロチャネルはチップ自体の面上にエッチングするか又は検出チップの表面上に外部構造として加えることができる。
【0055】
使用時には、試験される試料は基板の一端のリザーバ中にピペットで移送されうる。ついで、試料はマイクロ流体システムを使用して光検出部位及び検出ウェルに分散させることができ、そこで、試料は前もってスポット化されたプローブに結合され、続いてスキャンされ解析されうる。幾つかのリザーバを使用して幾つかの併行試験を実施するために異なった試料/患者に分離させてもよい。
【0056】
一又は複数のプライマーオリゴヌクレオチド又は核酸ポリメラーゼ酵素を、プリントヘッドを使用して光検出部位に適用しうると考えられる。更に、システムの光検出部位への試料の移送は、アッセイヘッド又は基板304に付設したフローセルを使用して試料を移送することを含むと考えられる。一つの可能なプリントヘッド技術は、2005年9月30日出願の米国特許出願第11/241060号、及び2005年7月6日出願の米国特許出願第11/632086号に記載されている。
【0057】
上面図の図4Aは、収集導波路410が光を収集するためのファネル417(図4Bに詳細に示す)を有している本発明の例示的基板404を例証する。
【0058】
図4Aの実施例に示されるように、基板404は、10の励起導波路408(例えば5μm幅×2μm深さ)、10の収集導波路410(例えば30μm幅×10μm深さ)、100の光検出部位412(例えば30μm長×5μm幅×10μm深さのウェル)、光検出部位412からの光を集めるための100のファネル417及び光検出部位412間のクロストークを減少させる障壁418(例えば光吸収チャネル)からなる10×10のアレイを含みうる。図4Aに示される例は、励起導波路408及び収集導波路410の10×10のアレイを含むが、基板は10より多く、100より多く又は1000より多い励起導波路408及び収集導波路410を含みうることが考えられる。
【0059】
図4Aに示される実施態様では、励起光は、例えばチップ対チップ突き合わせ結合により基板404の左手側の一又は複数の励起導波路408中に連結されうる。励起光は励起導波路408に沿って進み、エバネセント場テイルを通じて光検出部位(例えばウェル)中に結合する。また、切替可能な光源は、一又は複数の導波路を有し得、基板の一又は複数の切替可能な光源導波路及び一又は複数の励起導波路の近接配置を通して基板にエバネセント的に連結されうる。光検出部位412において発生された励起蛍光は、光検出部位412の長いファセットに沿ってファネル417中に集められうる。ファネル417は光を収集導波路410中に向けうる。収集導波路410中の光は基板404の「底部」で結合し、検出器アレイ(図示せず)中に取り出されうる。光検出部位412の外部に散乱した光は一連の障壁418(例えば光吸収体)によって遮蔽され、平行な収集導波路410間のクロストークを防止できる。
【0060】
一実施態様では、図4Aに示される基板は二つの導波路層を含む。図4Cの断面図に示されるように、第一の2μm厚の底部層は励起導波路408を含みうる。底部層は光検出部位におけるエバネセント場テイルの存在を増大させるために高い屈折率を有しうる。上方の10μm厚の層は、光検出部位及び光収集構造(ファネル及び導波路)を含みうる。上部層は、基板からの光を検出器に結合させる場合の光損失を最小にするために底部層よりも低い屈折率を有しうる。
【0061】
上記の特定の実施態様では、励起及び収集導波路の双方がマルチモードである。更に、切替可能な光源(例えば光スイッチ又は導波路アレイに結合された光発生器アレイ)は、基板に突き合わせ結合され得、又はエバネセント的に結合されうる単一モード導波路を含みうる。
【0062】
図4Cの断面図に示されるように、収集導波路410から励起導波路408への光結合による導波路交差ポイントにおける光損失を最小にするために、励起導波路408は収集導波路410よりも薄くすることができる。例えば、図4B及び4Cに示されるように、励起導波路408は、5μmの幅(図4B参照)及び2μmの高さ(図4C参照)を有しうる。更に示されるように、収集導波路410は30μmの幅(図4A及び4Bを参照)及び10μmの高さ(図4C参照)を有しうる。
【0063】
励起導波路と収集導波路間の導波路交差ポイントで結合した光は光検出部位中を直接照らし得、よって消失されるというよりもむしろ光励起を増大させると考えられる。
【0064】
図4Bに示されるように、光検出部位は、狭く(1μm)かつ長く(30μm)、光が長いファセットに沿って収集可能なウェルでありうる。かかる構成は光収集の効率を増加させる。また、光励起のウェル中への結合は長い結合長のために増加しうる。ウェル寸法(5×30×10μm)は1.5ピコリットルの体積を生じる。より大きなウェルがまた約0.1ピコリットルから100マイクロリットルの範囲の体積を生じる様々なサイズで考えられる。
【0065】
ファネルは、収集導波路中への光の収集、閉じ込め及び結合のための半径を有しうる。半径の適切な範囲は、約100μmから約1000μmを含みうる。
図4A及び4Bに示されたような障壁418は、光吸収材(例えば金のような金属)が充填されたトレンチでありうる。障壁418がトレンチである場合、トレンチは交差ポイントでの損失を避けるために励起導波路408の上に開口部を有しうる(図示せず)。
図4Aに示された基板の全体の寸法は1.2×1.2mmでありうる。全体の寸法を所望されたように調節するために場合によっては基板の周りに縁部を含めることができる。
【0066】
図5Aは、励起導波路508が、励起導波路から光を分岐させ検出ウェル中にそれを結合させるための複数の分岐路521(図5Bに詳細に示す)を有する本発明のシステムの例示的基板504を示す。
図5Aに示される実施態様では、基板504は数層の導波路層(例えば3つの導波路層)から構成されうる。かかる構造は、例えば損失とクロストークを最小にしながら励起及び蛍光収集を最適化するのに有用であり得る。図5C及び5Dは、それぞれ図5Bに示された(AA)及び(BB)面を通した基板504の概略断面図である。
【0067】
一実施態様では、基板は、1.7のコア屈折率及び1.4のクラッド屈折率を有する3つの導波路層からなる。有用なコア屈折率値は約1.45から2.2の範囲であり、有用なクラッド屈折率は約1.4から2の範囲である。
図5C及び5Dに示されるように、基板504が3つの導波路層を含む一実施態様では、第一の底部層は約10μm厚であり得、収集導波路510を含む。図5Aに示された実施態様では、収集導波路510は30μm幅、マルチモードで、基板510を実質的に端から端まで横断しうる。第二の中央導波路層は0.1μmから1μm厚で、結合導波路分岐部521(図5A及び5Bを参照)を含みうる。分岐部521は、励起された光を、ウェルでありうる光検出部位中に結合させうる。第三の上部層は2μm厚で、単一モード励起導波路508を含み、基板を実質的に端から端まで横断しうる。
【0068】
ここに記載された様々な特徴に対する寸法の範囲は:導波路厚−20nmから50μm;導波路幅−1μmから500μm;導波路長−1mmから100mm;光検出部位長−1μmから100mm;光検出部位幅−1μmから500μm;光検出部位深さ−0から20μm;導波路ピッチ−10μmから10mm;基板厚−100μmから5mm;上方クラッド厚−0から20μm;及び下方クラッド厚−0.1μmから20μmを含む。
【0069】
スキャニングセンシングシステムの基板は、平面光波回路での使用に適した多くのよく知られた材料の何れかから構成されうる。例えば、有用な基板材料は、限定しないが、シリコン、シリカ(SiO)、ガラス、エポキシ、ニオブ酸リチウム及びリン化インジウム並びにその組合せを含む。ここに開示される導波路は、シリコン、シリカ(SiO)及びその誘導体、シリコン酸窒化物(SiO)及びその誘導体、窒化ケイ素(Si)及びその誘導体、ポリマー、ニオブ酸リチウム及びリン化インジウム並びにその組合せから構成されうる。一実施態様では、UV光を使用し、蒸着後に導波路材料の屈折率を変化させる。
【0070】
図6Aは基板604の例示的なシリコン層620を示す。例えば、シリコン層620は、約0.1mmから2mmの厚みを持つシリコンウェハーから構成されうる。他の例では、シリコンウェハーは約0.3から1mmの厚みを有しうる。図6Aに示される特定の例では、シリコンウェハーは0.65mmの厚みを有する。図6Aに示されるように、一実施態様では、シリカ(SiO)層622は、シリコンを高温の炉内において酸素リッチ環境下に置くことによりつくられた14μmのシリカ(SiO)の熱酸化物層である。上部シリコン層は経時的に(数時間)酸化しSiO層を生じる。また、図6Aに示されるように、一実施態様では、クラッド層624は15μm厚で、導波路608を生じるエッチング後にPECVD(プラズマ化学気相成長法)プロセスによって蒸着される。
【0071】
基板の様々な層は異なった屈折率特性を含みうると考えられる。例えば、導波路層(例えばSi)はそこに蒸着されたシリカのクラッド層よりも高い屈折率を有している。
図6Bに示されるように(クラッド層蒸着前の顕微鏡写真で図示)、ある実施態様では、基板604は、シリカ(SiO)層622上での光波結合のために配置された二つの導波路608を含みうる。あるいは、図6Cに示されるように、2つの導波路608を、シリカ(SiO)層622上に非結合導波路を案内するために配置でき、クラッド層624で上からクラッドできる。
【0072】
図7Aは、光発生器へ結合させるための第一の光源として一又は複数の入力部701を含む本発明のシステムの例示的な切替可能な光源702を示す。光発生器は、一又は複数の離散型スペクトル線又は連続スペクトルを放射する任意の電磁放射線源でありうる(図示せず)。一実施態様では、光発生器は、一又は複数の十分に定まった波長で放射するレーザ源である。第二の実施態様では、光発生器は、予め定まった範囲内の一波長で光を放射するように調整できる調節可能なレーザである。示されているように、切替可能な光源702は、N−出力部として図7Aに示されている複数の出力部703を更に含む。切替可能な光源702に含められる出力部703の数は意図された用途に基づいて変動しうる。例えば、ある用途では、出力部703の数は10出力部よりも多いものとできる。一実施態様では、出力部703の数は100出力部よりも多いものとできる。更なる実施態様では、出力部703の数は1000出力部よりも多いものとできる。他の実施態様では、出力部703の数は約50から500の範囲である。
【0073】
切替可能な光源は、Nが例えば1から1000の間のパッシブな1×Nスプリッターでありうる。Nは1000より多くでき、10000より多くでき又は100000より多くできることが更に考えられる。そのような配置は、ここに記載された導波路において同時の(例えば平行な)励起を可能にする点で有利である。
【0074】
特定の実施態様では、出力部703の数は約128である。図7Aに示されるように、一実施態様では、切替可能な光源は、入力部701から扇形に広がり、入力部701における光を全ての出力部703に向けて等しく分裂させる出力部703を含む。図7Bに示されるように、一実施態様では、入力部701から出力部703に向けて幹状に延びる分岐構造を使用することができる。ただ一つの入力部が図7A及び7Bに示されているが、複数の入力部701を使用することができることが考えられる。
【0075】
図7Cは、複数の出力部を有する本発明のシステムの他の例示的な切替可能な光源702を示している。この実施態様では、切替可能な光源702は、複数の導波路709、スキャニング光発生器707、光開裂光発生器708及び電子リード線705を有する。図7Cに示されるように、非限定的な例では、導波路709は基板711にわたって平行に配設されうる。他の実施態様では、導波路は非平行形態で配置される(図示せず)。導波路709はここに記載されるように出力部703で終端しうる。
【0076】
図7Cに示されるように、複数のスキャニング光発生器707及び光開裂光発生器708は、光学的結合器710によって導波路709に結合させることができる。図7Cに更に示されるように、光発生器707及び708は電子リード線705と電気的に連通されうる。電子リード線はついで限定しないが電源又は電子駆動回路(図示せず)を含む多くの装置の何れかに電気的に連通されうる。
【0077】
切替可能な光源は、一又は複数の個々の出力部を通じて一次光波の選択的及びプログラムされた発生を可能にする動的光源でありうると考えられる。一実施態様では、切替可能な光源は光スイッチ、例えば平面光スイッチである。切替可能な光源は、所定の入力部から任意の所定の出力部へ光を切り替えるための光操作装置でありうる。更に、切替可能な光源は、入力光を幾つかの出力部へ全て同時にマルチキャストしうる。一実施態様では、切替可能な光源は一又は複数の光ファーバーを介して光発生器に結合された光スイッチである(図示せず)。特定の実施態様では、光発生器は切替可能な光源の入力部の一又は複数に結合される。非限定的な例を挙げると、光発生器は、可変波長の光を供給しうる。一実施態様では、光発生器はブロードバンド源である。他の実施態様では、光発生器は調節可能な光源である。
【0078】
切替可能な光源はK(=1,2,3・・)の入力部及びNの出力部を有しうる。
ある実施態様では、出力部の数は、システムの検出基板中の励起導波路の数に等しいであろう。特定の実施態様では、光発生源と切替可能な光源入力部の間のインターフェースは光ファイバーを含む。切替可能な光源と出力部間のインターフェースは、ピッチの点で、検出基板中の励起導波路に一致させるべきであり、これらの二つの素子を突き合わせ結合させ、切替可能な光源からの光を検出基板の励起導波路へと移送することが可能になる。
一実施態様では、光スイッチはマッハツェンダ干渉計に基づく個々の切替え素子を有する。
【0079】
切替可能な光源入力は光発素子のアレイを含みうる。一実施形態では、光発生素子は発光ダイオード(LED)である。他の実施形態では、光発生素子はレーザチップである。各個々の光発生素子は別個に制御され、所望に応じてオンオフされうる。一実施形態では、切替可能な光源入力は10以上の光発生素子を有する。他の実施形態では、切替可能な光源入力は100以上の光発生素子を有する。更に他の実施形態では、切替可能な光源入力は1000以上の光発生素子を有する。特定の実施形態では、切替可能な光源入力は10から100の光発生素子を有する。
【0080】
検出器アレイは検出素子のアレイを含みうる。一実施形態では、検出素子はPINダイオードである。他の実施形態では、検出素子はアバランシェ・フォトダイオード(APD)である。各個々の検出素子は別個に制御され、読み取られる。一実施形態では、検出器アレイは10以上の検出素子を有する。他の実施形態では、検出器アレイは100以上の検出素子を有する。更に他の実施形態では、検出器アレイは1000以上の検出素子を有する。特定の実施形態では、検出器アレイは10から100の検出素子を有する。
【0081】
切替可能な光源及び検出器アレイは、光操作素子、例えば分散素子、フィルタ、スイッチ、変調器、スプリッタ、結合器、ミラー及びサーキュレータを含みうる。
切替可能な光源及び検出器アレイの制御は、光発生素子、検出素子及び導波路と同じチップ上に統合されうるか又はチップに外付けされうる。切替可能な光源入力及び検出器アレイは、外部ドライバー回路又は外部制御器に対する電気的インターフェースを有しうるか又は外部制御システムに対する論理インターフェースを有しうる。切替可能な光源及び検出器アレイの制御は、各光発生素子及び検出器アレイの別個の駆動を可能にする。それは、切替可能な光源及び検出器アレイ上に存在する他の機能、例えば変調器及びスイッチの制御を更に可能にする。
【0082】
切替可能な光源及び検出器アレイは幾つかの異なった方法で基板にカップリングされうる。一実施形態では、カップリングは、二つのチップ(切替可能な光源及び基板)上の導波路の端部を近接させ、一導波路から他方へ直接光を結合させることによりなされる。他の実施形態では、両方のチップ上の導波路の一部が互いに重ねられ、平行で、近接させられて配列され、よって、エバネセント電磁場を通じて一導波路から他のものへ光を結合させる。
【0083】
限定するものではないが、分散素子、カップラ、フィルタ、ミラー、サーキュレータ、スプリッタ、変調器、スイッチ及びトレンチを含む平面光波回路に有用な更なる部材がここに記載のシステムの一部として考えられる(図示せず)。基板又は切替可能な光源及び検出器アレイに組み込まれる場合、このような部材は、結合される導波路への入ってくる第一の光波又は分離される導波路における出て行く第二の光波を操作するように機能しうる。
【0084】
非限定的な一例では、検出器は、400から1000nmのスペクトル範囲、>0.3の感光性(A/W)、0.005mmの素子当たりの活性面積、128の素子、及び<0.1mmのピッチを有する検出器アレイである。
一実施態様では、検出器はシリコン光ダイオード(PN、PIN又はAPD)アレイである。適切な検出器アレイの一例は浜松S8550 4X8シリコンAPDアレイである。
【0085】
一般に、一態様では、核酸の配列決定のためのスキャニングセンサーシステムが提供される。該システムは、複数の実質的に平行な励起導波路と複数の実質的に平行な収集導波路を有し、励起導波路及び収集導波路が交差して、励起導波路と収集導波路が交差する交差領域の二次元アレイを形成し、各交差において交差領域との光学的連通をもたらす基板(例えば図1に示すようなもの);交差領域に光学的に連通して配設された複数の光検出部位;基板の励起導波路に光学的に連通されて結合され、スキャニング光源入力部及び光開裂光源入力部を含む一又は複数の切替可能な光源;基板の収集導波路に光学的に連通して結合され、素子アレイを含む光分散モジュール;光分散モジュールに光学的に連通して結合された検出器を有する。
【0086】
一実施態様では、スキャニング光源は基板の第一の側において励起導波路に光学的に連通して結合された第一の切替可能な光源に結合させられ、光開裂光源は、基板の第二の側において励起導波路に光学的に連通して結合された第二の切替可能な光源に結合させられている。
【0087】
一般に、更なる態様では、核酸の配列決定のためのスキャニングセンサーシステムは、複数の実質的に平行な励起導波路と複数の実質的に平行な収集導波路を有し、励起導波路及び収集導波路が交差して、励起導波路と収集導波路が交差する交差領域の二次元アレイを形成し、各交差において交差領域との光学的連通をもたらす基板;交差領域に光学的に連通して配設された複数の光検出部位;励起導波路に光学的に連通され、スキャニング光源入力部を含む切替可能な光源;基板の外部に配設された光開裂光源及び光移送システム(例えば図2Cに示されるようなもの);基板の収集導波路に光学的に連通して結合され、素子アレイを含む光分散モジュール;光分散モジュールに光学的に連通して結合された検出器を有する。
【0088】
光移送システムは光開裂光源入力部を含みうる。
分散モジュールは、収集導波路の一又は複数からの光を検出器中の複数の素子に分散させるように構成されうる。一実施態様では、分散モジュールは、所定の収集導波路からの光を検出器中の4以上の素子に分散させるように構成されている。特定の実施態様では、分散モジュールは光を検出器中の4つの素子に分散させる。異なった実施態様では、分散モジュールは検出器中の5以上の素子に光を分散させる。
【0089】
分散モジュールから分散された光は複数の光波長を含みうる。一実施態様では、複数の波長は4以上の光波長を含む。他の実施態様では、複数の波長は5以上の波長を含む。
光開裂光源は、400nmと2000nmの間の範囲の波長を有する光を放射できる。光開裂光源入力部は紫外線光源に結合されうる。一実施態様では、紫外線光源が100nmと400nmの間の範囲の波長を有する光を放射する。
【0090】
制御システム
スキャニングセンシングシステムを操作する異なった工程を管理するための制御システムが想定される。
該制御システムは、切替可能な光源における光の切替、検出器アレイの読み取り及び検出された結果のレポートに加えて、光源、分散モジュール、及び検出器アレイ、及び検出基板のアラインメント等の工程を管理することができる。論理デバイスを含みうる制御システムはまたここに記載のスキャニングセンシングシステムに関連して使用される試料移送システム及び他の流体又は機械的機能を管理し制御しうる。
【0091】
フェーズド合成によるシークエンシング
ここに記載された光学的スキャニングセンシングシステムを使用して、核酸の配列決定法が可能になる。
例えば図1に示されるようなスキャニングセンシングシステムの基板の製造後に、核酸、鋳型、プライマー、シークエンシングアダプター、及び/又はポリメラーゼの何れかが基板の光検出部位に固定されうる。
【0092】
図8Aに示された一実施態様では、DNAプライマー821が、限定しないが、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GOPTS)、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、又は(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランを使用することを含む共有結合での固定化法により基板804の検出部位812の一又は複数にその5’末端を介して固定化される。一例として、基板804を先ずGOPTSで被覆することができ、デオキシオリゴヌクレオチドをデオキシオリゴヌクレオチドの5’末端に位置する第1級アミノ基を介してGOPTSエポキシ基に共有的に結合される。特定の実施態様では、アミノ基はスペーサーアームを使用して上記デオキシオリゴヌクレオチドの5’ホスフェート基から0.5ないしは5nm離される。シークエンシングプロセスの前に、固定化されたDNAプライマー827の一又は複数に相補的な一又は複数の核酸標的823(RNA又はDNAの何れか)が、ポリメラーゼ酵素825、例えば逆転写酵素又はDNAポリメラーゼと共に基板804に加えられる。標的及びプライマーがハイブリダイズすることが許容され、シークエンシングプロセスに先だって又はその丁度前に二本鎖829をつくり出す。ポリメラーゼ825は標的核酸と同時に又はシークエンシングの直前に加えることができる。複数の標的を、独特の標的特異的プライマー配列を二以上の異なった検出部位の各一に固定化することにより、単一の基板上でシークエンシングすることができる。一又は複数の検出部位812への独特で異なった標的特異的プライマーの固定は、マイクロフルイディクス及びピン−スポッティングのような技術に基づく高分解能スポッティング装置の使用を介して又はスポット上でのプライマーの合成によって達成することができる。
【0093】
ニュートラアビジン又はストレプトアビジンを、ある実施態様では、GOPTS被覆検出部位に、例えば物理吸着、共有的カップリングにより、又はビオチン−スペーサー−アミン(例えばPierceのEZ−結合アミン−PEO−ビオチン又はペンチルアミン−ビオチン)での非共有的カップリングによって固定化されうる。ついで、プライマーは上で検討された同じ種類のスペーサーアームを介して5’ビオチン化されうる。
他の実施態様では、図8Bに模式的に示されるように、ポリメラーゼ酵素822は基板804の検出部位812に固定される。固定化はシークエンシングプロセスに先だって又はその丁度前にアレンジされうる。DNAプライマー821及び標的核酸は、基板804に添加される前にDNA二本鎖824としてハイブリダイズされうるか、又はそれらは基板804に別個に加えることができ、基板804の表面(例えば検出部位812)でハイブリダイズされる。ついで、DNA二本鎖824は一又は複数の検出部位12でポリメラーゼ及びDNA二本鎖複合体830として固定ポリメラーゼ822と複合体形成をしうる。
【0094】
図8Cに示された更に他の実施態様では、複数の標的を、二以上の異なった検出部位812の各一における独特の標的特異的プライマー827により単一基板804上でシークエンシングできる。固定プライマー827は、光開裂性リンカーを介して検出部位812に結合されうる。一又は複数の検出部位812への独特で異なった標的特異的プライマーの固定は、マイクロフルイディクス及びピン−スポッティングのような技術に基づく高分解能スポッティング装置を使用して又はスポット上でそれらを合成することによって達成することができる。ついで、ポリメラーゼ酵素822は、標的特異的に固定されたプライマー827に近位の一又は複数の検出部位812に固定されうる。ついで、標的核酸823を基板804の表面に加え、異なった固定プライマー827でハイブリダイズさせ、核酸二本鎖829をつくることができる。シークエンシングの直前に、光開裂源からの光パルスを全ての検出部位に移送し、基板からDNA二本鎖を切り離し、それらを一又は複数の検出部位の(図示せず)固定されたポリメラーゼに結合せしめる。
【0095】
Olejnik等の米国特許第7145019号は、図8Cに示された合成ヌクレオチドに導入されうる光開裂性リンカーのファミリーを開示している。Olejnik等に開示されるように、本方法に対して有用なリンカー(光反応性基)は、電磁放射線で開裂されうる一又は複数の共有結合を基板と形成可能な化学基(例えばビオチン又はアミノ基)を含みうる。これらの結合は、基板上に化学基、例えばアミン、フェノール、イミダゾール、アルデヒド、カルボン酸又はチオールで形成されうる。光反応性剤は、少なくとも一の多原子基と場合によっては一又は複数の単原子基を含む置換芳香環でありうる。芳香環は、一実施態様では、5又は6員環である。置換基は多原子及び任意の単原子基を含む。多原子基は化学構造内においてある位置に電子を引き付け又は反発させる電子チャンネリング特性を付与し、選択的に開裂可能な共有結合をつくり出す条件をつくり出し又は樹立する。ハロゲン化物のようなある種の単原子基は、開裂を誘導する電磁放射線の周波数又は波長を調節しうる。しかして、単原子基は開裂事象を微調整し、放射線の予め定まった周波数又は強度にコンジュゲートを敏感にさせる。
【0096】
次のシークエンシング法は単一の標的/プライマーハイブリッドに対して記載するが、単一の検出部位又は複数の検出部位に結合し配列決定される任意の数の同一又は別個の核酸ストランドに適用される。検出部位当たりの標的/プライマーハイブリッドの数は1と>10の間の任意の数でありうる。適切なポリメラーゼは、核酸増幅に関してここに記載したもの(例えばDNAポリメラーゼ及び逆転写酵素)を含む。
【0097】
シークエンシング法における次の工程は、検出部位812に固定されたDNA二本鎖829の核酸プライマーをポリメラーゼ酵素が伸長させるために必要とされる全ての試薬を含む「マスターミックス」を移送することを含む。該移送は、上述の試料移送システムの一つを使用してなされうる。この「マスターミックス」は、異なった波長で光を放出する異なった蛍光タグで各タイプが標識された予め定まった濃度の4つのヌクレオチド(dNTP)を含む。全ての蛍光タグは、それぞれの新しい加えられた塩基が同定された(「呼ばれた」)後にタグが切り離されうるように、光開裂性化学結合を介して対応するヌクレオチドに結合させられ、シークエンシング中の検出部位における多色タグの蓄積が防止される。
シークエンシング反応はまた光開裂事象を使用して同期されうる。
【0098】
一実施態様では、蛍光タグは、ひとたびポリメラーゼ酵素によって核酸プライマーに加えられたならば更なる伸長を阻害するのに十分に大きく設計されている。他の実施態様では、蛍光タグは、ポリメラーゼを阻害するには小さすぎる標準的な蛍光染料であるが、蛍光的に標識されたdNTPsの各々の3’OH基はここで「保護(ブロッキング)基」とも称される光開裂性ケージでブロックされる。ケージドヌクレオチドはその3’OH基にケージ構造を有している。ケージ構造は、3’OH基がヌクレオチド付加反応に関与することを防止する除去可能な保護基である。ケージドヌクレオチドはここに記載のシークエンシング反応に使用されるプライマー及びプローブに有用である。多くのケージ構造が知られている。ケージ構造の例は、光への暴露によってその除去が可能になる光解離性構造である。3’OH基を可逆的にブロックするために有用な特定のケージ構造は、米国特許第6632609号;Metzker等, Nucleic Acids Res. 22:4259-4267 (1994);Burgess及びJacutin, Am. Chem. Soc. Abstracts volume 221, abstract 281 (1996);Zehavi等, J. Organic Chem. 37:2281-2288 (1972);Kaplan等, Biochecm. 17:1929-1035 (1978);McCray等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:7237-7241 (1980);及びPillai, Synthesis 1-26 (1980)に記載されている。光開裂性ケージ構造の有用な例は、2’−デオキシ−3’−O−(2−ニトロベンジル)誘導体、2’デオキシ−3’−O−(2−アミノベンジル)誘導体、2’デオキシ−3’−O−(4−ニトロベンジル)誘導体を含む(Metzker等, Nucleic Acids Res. 22:4259-4267 (1994))。
【0099】
有用なケージ構造はニトロフェニル基の使用に基づくものを含む。有用なケージとできる幾つかの異なったニトロフェニル誘導体がGee等の米国特許第5872243号に記載されている。例えば、Gee等は式:

[上式中、RはH、CH、又はCOの一つであり、ここで、RはH、3−6の炭素を有するα−アシルオキシアルキルエステル、t−ブチル基又はアルカリ金属である。RはH又はNOの一つである。R及びRは独立してH、1−6の炭素を有するアルコキシ、−O(CHCO10(ここで、n=1−18及びR10はH又は1−6の炭素を有するアルキルである)であるか、又はRは、Rと組み合わせてメチレンジオキシ(−O−CH−O−)である)を有するo−ニトロアリールメチンの誘導体であるケージング基を記載している。α−カルボキシニトロアリールメチン類であるケージング部分(RがCOである化合物)は過去にHaugland等の米国特許第5635608号(1997)に記載されている。Gee等は別にRがCHであり、RがHであることを更に開示している。また、R及びRはそれぞれメトキシでありうる。
【0100】
Gee等は、また光解離性ケージング基が、式:

を有する2−メトキシ−5−ニトロフェニルとできることを開示している。
また、Gee等は、光解離性ケージング基が、式:

を有するデシルの誘導体とできることを開示している。
【0101】
芳香環A及びBは、場合によっては、ハロゲン、−NO、−OR11、及び−NR1213(ここで、R11、R12及びR13は独立して1−6の炭素を有するアルキルである)によって一又は複数回、独立して置換される。好ましくは、環A及びBの各々の上には2つ以下の非水素置換基が存在する。Gee等によって記載されたケージ構造の任意の一又は複数をここに記載したシステム及び方法に関連して使用できると考えられる。
【0102】
第一のプライマー伸長事象の同期化は、プライマー/標的二本鎖、二本鎖/ポリメラーゼ複合体、及び蛍光標識dNTP/ポリメラーゼ複合体を含む幾つかの異なった分子複合体の独立した形成を含むので、おそらくは最も重要である一方、これらの最後のもののみが続く伸長事象の同期化に必要とされる。一実施態様では、第一の伸長事象からの信号は、それが複数の検出部位において定常状態に達するまでモニターされ、その時に光開裂源からの光パルスが全ての検出部位に移送されて第二の伸長事象が開始される。他の実施態様では、第一の開始事象は上述の複合体の「融解温度」を越えるように温度を急上昇させることによって同期され、その後直ぐに40−65℃への「即座の(snap)冷却」が続く。温度の急上昇と即座の冷却のタイミングを制御して、プライマー、標的、ポリメラーゼ、及び蛍光標識dNTPsの拡散を所定の検出部位内に制限することができる。これは検出部位間のクロストークを制限すると共に、上述の複合体が急速に再形成することをまた担保する。前の実施態様におけるように、第一の伸長事象からの信号は、それが複数の検出部位において定常状態に達するまでモニターされ、その時に光開裂源からの光パルスが全ての検出部位に移送されて第二の伸長事象が開始される。
【0103】
他の実施態様では、ここに記載された全てのフェーズドシークエンシング方策は一般的なプライマーの代わりにアダプターを使用して実施される(Hutchison, Nucleic Acids Res. 35:6227-6237 (2007))。ここで、標的核酸はヌクレアーゼを使用して小片に断片化される。次に、断片の5’末端にアダプター分子がライゲートされる。アダプター分子は基板上の検出部位における相補的捕獲プローブによって認識される一又は複数の配列を有しており、よって断片の捕獲が可能になる。ついで、捕獲された断片は、フェーズドシークエンシングのために十分な同一の標的断片を付与するために検出部位で増幅される。非限定的な例では、増幅方法はブリッジ増幅によるものとできる。ついで、標的断片がここに記載の方策の何れかによりフェーズドシークエンシングによって配列決定される。
【0104】
シークエンシングプロセスを図9のフローチャートにまとめる。示されているように、アルゴリズム900は、核酸配列を得るための循環プロセスを表す。工程901では、ポリメラーゼ酵素が、配列決定される核酸ストランドの配列に従って一塩基だけ基板上の光検出部位に局在化された核酸プライマーを伸展させる。工程903に示されるように、核酸プライマーの更なる伸展は、伸長されている核酸ストランドの3’末端において、塩基に結合された(例えば光開裂性アミノアリル結合を介して(米国特許第7057031号)蛍光タグ(例えば複数の蛍光タグを有する大きなビーズ又は嵩があるかもしくは大きい分子、例えばBODIPY (登録商標)フルオロフォア (米国特許第5614386号及び米国特許第5728529号))によって、あるいは光開裂性ブロッキング剤によって、阻害される。ついで、工程905に示されるように、基板は光学的スキャニングシステムを使用して光学的にスキャンされる工程907では、スキャニング結果が検出器アレイから記録され、解釈され、保存される。工程909では、光開裂光源からの光パルスが光検出部位に移送される。次に、工程911では、光検出部位に存在する核酸プライマーの3’末端の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤が開裂される。示されているように、次にプロセスは工程901に戻り循環できる。該プロセスは、核酸ストランドの所望のシークエンシングを完了させるために必要に応じて反復して周期的に繰り返すことができる。それぞれの各ラウンドにおいて、核酸プライマーは一塩基だけ伸長されうる。
【0105】
一実施態様では、一又は複数の検出部位は同じ核酸プライマーの複数コピーを含む。よって、各コピーが同じラウンドで同じヌクレオチドに加わる。スキャニングセンシングシステムは、各検出部位における読み込みの色によって新たに加わった塩基を明らかにする。それぞれが異なったdNTPに対応する4つの異なった染料色が、1D又は2D(例えば4×N)検出器アレイ中へ分散モジュール及びNの収集導波路によってマッピングされうる。核酸プライマーに染料標識dNTPsを加える速度(K)は、ポリメラーゼ酵素の結合速度及び蛍光タグ及び/又は保護基、例えば3’ケージドOH基の光開裂速度に主に依存し1秒につき千以上のヌクレオチドに達しうる。非限定的な例では、Kは1秒につき1以上、5以上、10以上、20以上、50以上、75以上、10以上、200以上、250以上、500以上、更には1000以上のヌクレオチドでありうる。
【0106】
Lの検出部位の各々に異なった核酸プライマーを結合させることによって、全体でK*Lのヌクレオチドを1チップ当たり1秒で配列決定できる。シークエンシングプロセスは、「十分に大きな数」の配列決定された核酸複合体が互いに相に残る限り、進行しうる。この「十分に大きな数」は所定の検出部位における核酸複合体の全数の約25%でありうると考えられる。
【0107】
他の実施態様では、単一の核酸プライマーが所定の検出部位に固定される。システムの単一分子検出能を使用し、所定の検出部位からの信号を検出し、その部位の合成された核酸の配列を推測するために4色のdNTPコーディングを使用することができるであろう。1以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、200以上、300以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、及び更には1kb以上の塩基の読み取り長が考えられる。
【0108】
相シークエンシングを達成するための多くのポリメラーゼブロッキング方策が考えられる。米国特許出願第10/491557号(2005年10月13日に米国特許出願公開第2005/0227231号として公開)においてTcherkassovは、シークエンシング反応中においてポリメラーゼを失速させるためにタグと立体的ブロッキング基の双方としてdNTPに(塩基を介して)結合させた蛍光染料を使用することを開示している。本発明の幾つかの実施態様のシステム及び方法は場合によってはポリメラーゼを失速させるために蛍光染料を使用する同じアプローチに従う。従って、蛍光染料自体を、ここに記載された光開裂性結合を介してヌクレオチド塩基に結合させることができる。
【0109】
別法では、光開裂性結合を介してヌクレオチド塩基に結合された複数の蛍光染料を含むデンドリマーを、ポリメラーゼを失速させるために使用することができる。他の実施態様では、光開裂性結合を介してヌクレオチド塩基に結合された複数のフルオロフォアを含むビーズを使用することができる。更なる実施態様では、量子ドットを、光開裂性結合を介してヌクレオチド塩基に結合させることができる。
【0110】
試料移送システム
配列決定されるべき核酸ストランドと全ての他の必要とされる試薬を含む試料のシークエンシングプラットホームへの移送は多くの異なった方法で達成することができる。一実施態様では、フローセルを基板に上から付設することができる。フローセルはそれに連結された入口及び出口管を有し得、場合によっては外部ポンプを使用して、フローセルに及び基板を横切って試料又は試薬を移送することができる(図示せず)。
他の実施態様では、例えば2007年9月12日出願の米国特許出願第60/971878豪(弁護士ドケット第34646−703.101号)に記載されたように、マイクロ流体システムが基板中に組み込まれ、又は基板の上部に外部から付設される。
【0111】
更に他の有利な実施態様では、開口したガスケットを基板の上部に取り付けることができ、試料及び試薬をガスケット中に注入することができる(図示せず)。適切なガスケット材料は、限定しないが、ネオプレン、ニトリル、及びシリコーンゴムを含む。更なる実施態様は、基板と化学的に不活性な耐水性材料、例えば限定しないが黒アルマイトアルミニウム、熱可塑性樹脂(例えばポリスチレン、ポリカーボネート等)、ガラス等との間に挟まれたガスケットによって形成された防水反応チャンバである。
【0112】
一般に、一態様では、伸びている核酸ストランドの3’端部に導入された蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を検出することによる核酸分子の配列決定方法が提供される。該方法は、(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複数の複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤をヌクレオチドアナログの3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を可逆的に終結させ;(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログの独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給して、蛍光タグ又はブロッキング剤を切断することにより、ポリメラーゼ伸長反応の終結を逆転させ;及び(f)工程(b)から(e)を繰り返す、ことを含む。
【0113】
プライマーは、一実施態様では、複数の複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される。特定の実施態様では、プライマーは光検出部位に共有的に固定される。他の実施態様では、プライマーは光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定される。
ポリメラーゼは、一実施態様では、複数の複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される。特定の実施態様では、ポリメラーゼは複数の複合体の固定の前に光検出部位に共有的に固定される。
方法の一実施態様では、工程(b)が、工程(b)及び(c)の間に洗浄工程を伴わないで工程(c)の前に実施される。方法の他の実施態様では、工程(f)が、工程(e)及び(b)の間に洗浄工程を伴わないで工程(b)を繰り返す前に工程(e)を実施することを更に含む。
配列決定される核酸はDNAでありうる。
【0114】
一実施態様では、プライマーは、光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定され、ポリメラーゼは複数の複合体の形成及び固定の前に光検出部位に共有的に固定される。関連した実施態様では、工程(b)の前に、固定されたプライマー及び鋳型二本鎖が形成され、光開裂光パルスが光開裂性リンカーを切断し、二本鎖を切り離すために供給され、ここで、切り離された二本鎖が続いて固定ポリメラーゼに結合して固定された複数の複合体を形成する。
【0115】
蛍光ヌクレオチドアナログは4つの異なったdNTPsを含み得、ここで、各dNTPが異なった蛍光タグで標識される。特定の実施態様では、蛍光タグは光開裂性化学結合によってdNTPsに結合される。
【0116】
一般に、他の態様では、蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を、該ヌクレオチドアナログが伸びている核酸ストランドに導入された後に検出することによる単一核酸分子の配列決定方法が提供される。該方法は、(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤をヌクレオチドアナログの3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を終結させ;(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログに結合した独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給して、蛍光タグ及び/又はブロッキング剤を切断し;(f)工程(b)から(e)を繰り返す工程を含む。
【0117】
プライマーは、複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定されうる。特定の実施態様では、プライマーは光検出部位に共有的に固定される。他の実施態様では、プライマーは光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定される。
ポリメラーゼは、複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定されうる。一実施態様では、ポリメラーゼは複合体の固定の前に光検出部位に共有的に固定される。
【0118】
方法の一実施態様では、工程(b)は、工程(b)及び(c)の間に洗浄工程を伴わないで工程(c)の前に実施される。方法の他の実施態様では、工程(f)は、工程(e)及び(b)の間に洗浄工程を伴わないで工程(b)を繰り返す前に工程(e)を実施することを更に含む。
配列決定される核酸はDNAでありうる。
【0119】
方法の特定の実施態様では、プライマーは光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定され、ポリメラーゼは複合体の形成及び固定の前に光検出部位に共有的に固定される。一実施態様では、工程(b)の前に、固定されたプライマー及び鋳型二本鎖が形成され、光開裂光パルスが光開裂性リンカーを切断し、二本鎖を切り離すために供給され、ここで、切り離された二本鎖が続いて固定ポリメラーゼに結合して固定された複合体を形成する。
【0120】
蛍光ヌクレオチドアナログは4つの異なったdNTPsを含み得、各dNTPが異なった蛍光タグで標識されている。一実施態様では、蛍光タグは光開裂性化学結合によってdNTPsに結合される。
【0121】
本発明の方法の実施においては、分子生物学における多くの一般的な技術が場合によっては利用される。これらの技術は良く知られており、例えばその全てが出典明示によりここに援用される、Ausubel等(編) Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II,及びIII, (1997)、Ausubel等(編), Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 5版, John Wiley & Sons, Inc. (2002), Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2000)、及びInnis等(編) PCR Protocols: A Guide to Methods及びApplications, Elsevier Science & Technology Books (1990)に説明されている。
【0122】
ここに記載されたシステム及び方法で使用するのに適した試料調製は、生物学的及び/又は環境試料の収集及び解析のための多くの良く知られた方法の何れかを含みうる。生物学的試料の場合には、試料は、関心のある標的に対して所望される純度レベルまで、例えば操作され、処理され、又は抽出されうる。
試料は標的核酸を含むことが疑われる体液でありうる。一般的に用いられる体液は、限定しないが、血液、血清、唾液、尿、胃及び消化液、涙、便、精液、膣液、腫瘍性組織から取り出される間質液、及び脳脊髄液を含む。
【0123】
ここに記載されたシステムは、非常に多様な試料から例えば核酸鋳型をスクリーニングするために使用することができることが見込まれる。調査対象が生き物である場合、試料は検討したように体液から由来しうる。試料を得る方法は、限定しないが、口腔粘膜検体採取、鼻スワブ、直腸綿棒、皮膚脂肪抽出又は生物学的もしくは化学的物質を得るための他の収集方策を含む。試験される対象が非生存又は環境体である場合、試料は固相、液相又は気相の任意の物質から由来しうる。試料は収集し検出基板上に配することができ、又は検出基板を調査試料源(例えば水槽、自由大気)に直接暴露させ、それと相互作用させることができる。
【0124】
ある実施態様では、体液がそこに存在する核酸源として使用される。所望される場合、体液は、主題のスキャニングセンシング装置を用いた分析を実施する前に前もって処理されうる。前処理の選択は、使用される体液のタイプ及び/又は調査下の核酸の性質に依存するであろう。例えば、標的核酸が体液の試料中に低レベルで存在する場合、試料は、標的核酸をリッチにするために任意の常套的手段を介して濃縮させることができる。標的核酸を濃縮する方法は、限定しないが、乾燥、蒸発、遠心分離、沈降、沈殿、磁気ビーズでの濃縮、及び増幅を含む。標的核酸はまたSambrook等("Molecular Cloning: A Laboratory Manual")に記載された手順に従って様々な分解酵素又は化学溶液を使用して、あるいは製造者によって提供された添付の指示書に従って核酸結合樹脂を使用して、抽出することができる。
【0125】
ある実施態様では、前処理は、試料を希釈し及び/又は混合し、試料を濾過して血液試料から例えば赤血球を除去することを含みうる。
一実施態様では、標的はDNA、例えばcDNAである核酸である。関連した実施態様では、DNA標的は増幅反応を介して、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、生産される。
【0126】
標的核酸は、一本鎖、二本鎖、又はより高次の鎖であり得、直鎖状又は環状でありうる。例示的な一本鎖標的核酸は、mRNA、rRNA、tRNA、hnRNA、miRNA、ssRNA又はssDNAウイルスゲノムを含むが、但しこれら核酸は相補的配列及び有意な二次構造を内部に含みうる。例示的な二本鎖標的核酸は、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、dsRNA又はdsDNAウイルスゲノム、プラスミド、ファージ、及びウイロイドを含む。標的核酸は合成的に調製され又は生物学的供給源から精製されうる。標的核酸を精製して、試料の一又は複数の望まれない成分を除去又は減少させ、又は標的核酸を濃縮することができる。逆に、標的核酸が特定のアッセイでは濃縮され過ぎている場合、標的核酸を希釈することができる。
【0127】
試料収集と任意の核酸抽出に続いて、標的核酸を含む試料の核酸部分に一又は複数の調製用反応を施すことができる。これらの調製用反応は、インビトロ転写(IVT)、標識、断片化、増幅及び他の反応、例えばmiRNAの増幅及び検出のための増幅前の前処理工程(例えばAmbionのmir VanaTM miRNA単離キットの使用)を含みうる。mRNAは、検出及び/又は増幅の前に最初に逆転写酵素及びプライマーで処理してcDNAを作製することができる;これは精製されたmRNAを用いてインビトロで、又はインサイツ、例えばスライドに固定した細胞又は組織において行うことができる。核酸増幅は、標的核酸のような対象の配列のコピー数を増加させる。ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自家持続配列複製法(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、Qβレプリカーゼの使用、逆転写、ニックトランスレーション等を含む様々な増幅方法が使用に適している。
【0128】
標的核酸が一本鎖である場合、増幅の最初のサイクルは標的核酸に相補的なプライマー伸長産物を形成する。標的核酸が一本鎖RNAである場合、逆転写酵素活性を持つポリメラーゼが、RNAをDNAに逆転写させるために最初の増幅において使用され、更なる増幅サイクルがプライマー伸長産物を複製するために実施されうる。PCRのためのプライマーは、もちろん、増幅可能なセグメントをつくり出すその対応鋳型中の領域にハイブリダイズするように設計されなければならない。
【0129】
標的核酸は、標的核酸一又は複数のストランドを、適切な活性を有するポリメラーゼ及びプライマーに接触させて、プライマーを伸長させ、標的核酸を複製して、完全長の相補核酸又はそのより小さい部分をつくり出すことにより増幅されうる。DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、一を越えるタイプのポリメラーゼ活性を有する酵素を含む、標的核酸を複製できるポリメラーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができ、該酵素は熱不安定性又は熱安定性であり得る。酵素の混合物もまた使用されうる。例示的酵素は、DNAポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼI(「Pol I」)、Pol Iのクレノウ断片、T4、T7、シーケナーゼ(登録商標)T7、シーケナーゼ(登録商標)バージョン2.0 T7、Tub、Tag、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tli及びパイロコッカスsp GB D DNAポリメラーゼ;RNAポリメラーゼ、例えば大腸菌、SP6、T3及びT7 RNAポリメラーゼ;及び逆転写酵素、例えばAMV、M MuLV、MMLV、RNAse H’ MMLV(スーパースクリプト(登録商標))、スーパースクリプト(登録商標)II、サーモスクリプト(登録商標)、HIV1、及びRAV2逆転写酵素を含む。これらの酵素の全てが市販されている。多重特異性を有する例示的なポリメラーゼはRAV2及びTli(エキソ)ポリメラーゼを含む。例示的な熱安定性ポリメラーゼは、Tub、Taq、Tth、Pfx、Pfu、Tsp、Tfl、Tli及びパイロコッカスsp.GB D DNAポリメラーゼを含む。
【0130】
pH、バッファー、イオン強度、一又は複数の塩の存在及び濃度、反応物及び補因子、例えばヌクレオチド及びマグネシウム及び/又は他の金属イオン(例えばマンガン)の存在及び濃度、任意の共溶媒、温度、ポリメラーゼ連鎖反応を含む増幅スキームに対する熱サイクルプロファイルを含む適切な反応条件が、標的核酸の増幅を可能にするために選択され、部分的には使用されるポリメラーゼ並びに試料の性質に依存しうる。共溶媒は、ホルムアミド(典型的には約2から約10%)、グリセロール(典型的には約5から約10%)、及びDMSO(典型的には約0.9から約10%)を含む。増幅中に製造される擬陽性又はアーチファクトの生産を最小にするための技術を増幅スキームにおいて使用することができる。これらは、「タッチダウン」PCR、ホットスタート技術、ネステッドプライマーの使用、又はプライマー二量体が形成される場合にはそれらがステムループ構造を形成し、よって増幅されないようなPCRプライマーの設計を含む。例えば、試料内で大なる対流を可能にし、試料の急速加熱及び冷却のための赤外線加熱工程を含む遠心PCRのような、PCRを加速させる技術を使用することができる。一又は複数の増幅サイクルを実施することができる。過剰の一プライマーを使用してPCR中に過剰の一プライマー伸長産物を生産することができる;好ましくは、過剰に生産されるプライマー伸長産物は検出される増幅産物である。複数の異なったプライマーを使用して、試料内における異なった標的核酸又は特定の標的核酸の異なった領域を増幅させることができる。
【0131】
増幅された標的核酸に、増幅後処理を施してもよい。例えば、ある場合には、より簡単にアクセスできるセグメントを提供するためにハイブリダイゼーションの前に標的核酸を断片化することが望ましい場合がある。核酸の断片化は、実施されるアッセイにおいて有用なサイズの断片を生じる任意の方法によって実施されうる;適切な物理的、化学的及び酵素的方法が当該分野で知られている。
【0132】
主題のアッセイ(例えばシークエンシング)を実施するために用いることができる非常に多様な標識が当該分野で利用できる。ある実施態様では、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的手段によって検出可能である。例えば、有用な核酸標識は、蛍光染料、酵素、ビオチン、ジオキシゲニン、又はハプテン及び抗血清又はモノクローナル抗体が利用できるタンパク質を含む。生物学的成分を標識するために適している広範囲の標識が科学文献及び特許文献の双方に広く報告されており、生物学的成分の標識化に対して本発明に一般に適用できる。適切な標識は、酵素、基質、補助因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、又は生物発光標識を含む。標識化剤は場合によっては例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、タンパク質、又は他のポリマー、例えばアフィニティマトリックス、炭水化物又は脂質を含む。検出はここに記載された方法に任意のもの、例えば光学的導波路中の光信号を検出することによって進められる。検出可能な部分は、検出可能な物理的又は化学的性質を有する任意の物質でありうる。かかる検出可能な標識は、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー、固形基質、分光学的技術等の分野で十分に開発されており、一般に、かかる方法に有用な標識は本発明に利用できる。好ましい標識は光信号を生じる標識を含む。よって、標識は、限定しないが、分光学的、光化学的、生化学的,免疫化学的、電気的、光学的、熱的、又は化学的手段によって検出可能な任意の組成物を含む。
【0133】
ある実施態様では、標識は、当該分野で良く知られている方法に従って、生成物、基質、又は酵素のような検出されるべき分子に直接的に又は間接的に結合させられる。上に示したように、非常に様々な標識が使用され、標識の選択は、必要とされる感度、化合物のコンジュゲーションの容易さ、安定性の要件、利用可能な機器、及び廃棄の条件に依存する。非放射性標識はしばしば間接的な手段によって付着される。一般に、リガンド分子はポリマーに共有的に結合される。ついで、リガンドは、本来的に検出可能であるか又は検出可能な酵素、蛍光化合物、又は化学発光性化合物のようなシグナル系に共有的に結合している抗リガンド分子に結合する。多くのリガンド及び抗リガンドを使用することができる。リガンドが天然の抗リガンド、例えばビオチン、チロキシン、及びコルチゾールを有している場合、それは標識された抗リガンドとの関連で使用されうる。別法では、任意のハプテン又は抗原性化合物を抗体と組み合わせて使用することができる。
【0134】
ある実施態様では、標識は、例えば酵素又はフルオロフォアとのコンジュゲーションによって、シグナル発生化合物に直接コンジュゲートさせることもできる。標識として興味深い酵素は主としてヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼ及びグリコシダーゼ、又はオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼであろう。蛍光化合物は、フルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシル、及びウンベリフェロンを含む。化学発光性化合物はルシフェリン、及び2,3−ジヒドロフタラジンジオン類、例えばルミノールを含む。
【0135】
標識を検出する方法は当業者に良く知られている。よって、例えば標識が蛍光標識である場合、それは、蛍光色素を適切な光の波長で励起させ、生じた蛍光を、例えばここに記載したスキャニングセンサシステムによって検出することによって検出されうる。同様に、酵素標識は、酵素に対する適切な基質を提供し、得られた反応産物(例えば検出可能な光シグナルを生じうる反応産物)を検出することにより検出される。
【0136】
ある実施態様では、検出可能なシグナルはルミネセンス源によって提供されうる。ルミネセンスはその温度の上昇以外の何らかの理由による物質からの光の放出である。一般に、原子又は分子は、それらが励起された又はより高いエネルギー状態から低いエネルギー状態(通常は基底状態)に移動するとき、電磁エネルギーの光子(例えば光)を放出する;このプロセスはしばしば放射性崩壊と称される。多くの励起の原因がある。励起の原因が光子であれば、ルミネセンスプロセスは光ルミネセンスと称される。励起原因が電子であれば、ルミネセンスプロセスはエレクトロルミネセンスと称される。より特定的には、エレクトロルミネセンスは、電子正孔対を形成する電子の直接の注入及び除去と、光子を放出する電子正孔対の続く再結合から生じる。ケミルミネセンスは化学反応から生じるルミネセンスである。バイオルミネセンスは生きている生物によってつくられるルミネセンスである。蛍光は、スピン許容遷移(例えば一重項遷移、三重項-三重項遷移)の結果である光ルミネセンスである。典型的には、蛍光放出は、かかるスピン許容遷移を通して急速に緩和する短命の励起状態の結果として励起原因が取り除かれた後には持続しない。リン光は、スピン禁制遷移(例えば三重項-一重項遷移)の結果である光ルミネセンスである。典型的には、リン光放出は、かかるスピン禁制遷移を通してのみ緩和しうる長寿命の励起状態の結果として励起原因が取り除かれた後も長く持続する。発光標識は上述の性質の何れか一つを有しうる。
【0137】
適切なケミルミネセンス源は、化学反応によって電子的に励起されるようになり、ついで、検出可能なシグナルとなるか又は蛍光アクセプターにエネルギーを供与する光を放出しうる化合物を含む。多数の化合物ファミリーが様々な条件下でケミルミネセンスをもたらすことが見出されている。化合物の一ファミリーは、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンである。頻繁に使用される化合物は、5−アミノ化合物であるルミノールである。ファミリーの他のメンバーは、5−アミノ−6,7,8−トリメトキシ−及びジメチルアミノ[ca]ベンズアナログを含む。これらの化合物はアルカリ性過酸化水素又は次亜塩素酸カルシウム及び塩基を用いて発光するようになされうる。他のファミリーの化合物は、2,4,5−トリフェニルイミダゾール類であり、ロフィンが親生成物の一般的名称である。化学発光アナログは、パラ−ジメチルアミノ及び−,エトキシ置換基を含む。ケミルミネセンスはまた塩基性条件下で、シュウ酸エステル、通常はオキサリル活性エステル、例えばp−ニトロフェニル及び過酸化物、例えば過酸化水素を用いて得られうる。また知られている他の有用な化学発光化合物は、−N−アルキルアクリジニウムエステル及びジオキセタンを含む。あるいは、ルシフェリンをルシフェラーゼ又はルシゲニンとの関連で使用してバイオルミネセンスをもたらすことができる。
【0138】
一実施態様では、全ての内部結合導波路は第一の光波を備え、各外部結合導波路での第二の光波の同時の検出が、光検出器アレイである検出器を使用して達成される。
導波路間の光の切替えによって、各導波路は第一の光波で個々にアドレス指定されうる。導波路のアドレス指定の順序は、シーケンシャル、交互、ランダム又は任意の所望の順序でありうる。光検出部位のアレイ全体の迅速なスキャニングは、各外部結合導波路に関連する任意の第二の光波が同時に検出されうるので、光検出器アレイの助けで達成できる。
【0139】
他の実施態様では、単一励起導波路は第一の光波を備え、各収集導波路での第二の光波の同時の検出が、光検出器アレイである検出器を使用して達成される。励起導波路間の光の切替えによって、各個々の励起導波路は第一の光波で個々にアドレス指定されうる。励起導波路のアドレス指定の順序は、シーケンシャル、交互、ランダム又は任意の所望の順序でありうる。光検出部位の二次元アレイ全体の迅速なスキャニングは、各収集導波路に関連する任意の第二の光波が同時に検出されうるので、光検出器アレイの助けで達成できる。例えば、二次元アレイが128の励起導波路及び128の収集導波路のアレイとして構成される場合、第一励起導波路に単一の第一光波を提供した後、(あるとすれば)128の光センサから発生された第二の光波を同時に検出することができるであろう。よって、128の光検出部位は標的の存在又は不存在について同時にインターロゲートされうる。次に、第二の励起導波路が励起され得、128の光検出部位の第二のセットのインタロゲーションをトリガーする。該プロセスは、あらゆる励起導波路が励起され、光検出部位のアレイ全体がインターロゲートされるまで迅速に繰り返すことができる。
【0140】
様々な実施態様では、スキャニングセンシングシステムを使用する方法は、限定されないが核酸配列を含む物質の検出を含む。特定の実施態様では、一塩基がシークエンシングプロセスで同定されうる。他の実施態様では、一塩基多型性(SNP)が標的核酸中に検出される。一実施態様では、遺伝子の発現が標的核酸の検出時に検出される。
【0141】
蛍光イメージングは、速度、感度、ノイズ及び分解能に感受性であり、それぞれ本発明での使用に対して最適化され得、例えば速度を減少させてアッセイ時間を増大させうる。塩基伸展は、CCDカメラ、ストリークカメラ、蛍光分光計、蛍光スキャナー、又は一般的には4つの素子、励起源、フルオロフォア、放出及び励起光子を分離するためのフィルター、及び放出光子を検知し記録可能な出力、典型的には電気的又は写真出力をつくりだす検出器を具備する他の既知の蛍光検出装置を使用して検出されうる。
【0142】
本発明において有用なポリメラーゼ酵素は当該分野で知られており、限定しないが、熱安定性ポリメラーゼ、例えばpfu、Taq、Bst、Tfl、Tgo及びTthポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び/又はT4 DNAポリメラーゼを含む。ポリメラーゼは、使用される鋳型、プライマー及びNTPに応じて、DNA依存性DNAポリメラーゼ、DNA依存性RNAポリメラーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼ又はその混合物でありうる。ポリメラーゼはプルーフリーディンウ活性(3’エキソヌクレアーゼ活性)及び/又は5’エキソヌクレアーゼ活性を有していても有していなくともよい。
【0143】
本発明の捕獲分子及び/又は核酸分子は、限定しないが、DNA及び/又はRNA及び当該分野で知られているそれらに対する修飾を含む任意の核酸であり得、5’−O−(1−チオ)ヌクレオシドアナログトリホスフェート、α−チオトリホスフェート、7−デアザ−α−チオトリホスフェート、N6−Me−α−チオトリホスフェート、2’−O−メチル−トリホスフェート、モルホリノ、PNA、アミノアルキルアナログ、及び/又はホスホロチオエートを含みうる。
【0144】
生物学的又は環境試料調製、ハンドリング及び分析に関連する様々な機器をここに記載したシステム及び方法との関連で使用することができると考えられる。かかる機器の例は、限定しないが、セルソーター、DNA増幅サーマルサイクラー、又はクロマトグラフィー機器(例えばGC又はHPLC)を含む。かかる機器は当業者によく知られている。本発明のスキャニングセンシングシステムと、生物学的又は環境試料調製、ハンドリング及び分析に関連する様々な機器との間ではロボットインターフェースを使用できると考えられる。
【0145】
製造
一般に、他の態様では、フェーズド合成によるシークエンシングのためのスキャニングセンシングシステムを製造する方法が提供される。一実施態様では、システムは平面光波回路(PLC)である。
PLC装置を製造するための出発材料又は基板は通常はシリコン(Si)又はシリカ(SiO)製のウェハーである。使用される最も一般的なウェハー直径は、4”、6”及び8”である。PLC装置に対する製造方法は二つの基礎的なプロセス、すなわち蒸着及びエッチングを含む。それらの各々の短い説明を以下に与える。
ある実施態様では、ここに記載されたシステムの製造方法は、限定しないが、レーザ書き込み、UV書き込み及びフォトニックバンドギャップ導波路法を含みうる。ある実施態様では、製造方法は、蒸着、マスキング及びエッチングの一又は複数の工程を含む。
【0146】
蒸着:
蒸着工程では、十分に制御された厚みを有する十分に定まった材料の層がウェハー船体にわたって蒸着される。導波路層の蒸着に使用される最も一般的な材料はガラスとしても知られているシリカ(SiO)である。シリカの光学的性質(主にその屈折率)は、蒸着中に導入されるドーピング(Ge、P、及びB等)の量によって制御される。他の材料、例えばシリコン、窒化ケイ素(Si)、ガラス、エポキシ、ニオブ酸リチウム、リン化インジウム及びSiO(シリコン酸窒化物)及びその誘導体がまた使用される。クラッド層に対しては、材料は、限定しないが、シリコン、シリカ(SiO)、ガラス、エポキシ、ニオブ酸リチウム及びリン化インジウムを含みうる。
【0147】
蒸着工程は、幾つかの技術、例えばPECVD(プラズマ化学気相成長法)、LPCVD(低圧CVD)、APCVD(大気圧CVD)、FHD(火炎加水分解蒸着)及び当該分野で知られている他のものを使用してなされる。
図10Aは、ウェハーでありうるシリコン1020層の上へのクラッド1021層及びコア1023層の二回の連続蒸着工程後につくられた概略構造として例示的な基板1004を示す。上述のように、これらの2層は、異なったレベルのドーピングを使用することによって達成される屈折率が異なる。異なった層に対する典型的な厚みは、クラッドが約20μmまで、コアが6μmまでである。シリコン1020ウェハーの厚みは約0.5mmから1mmの範囲とできる。
【0148】
マスキング:
蒸着工程後でエッチング工程の前に、PLCデバイスの所望の2次元構造が、エッチングされない領域をマスキングすることによって蒸着ウェハーに移される。マスキングは、ウェハーを感光性材料で覆い、リソグラフマスクを通してそれを光に暴露し、暴露された材料を除いてマスクをその場に残すことを含む幾つかの工程でなされる。かかる工程の結果を、マスク1025が基板1004のコア1023層の上面に示されている図10Bに示す。
【0149】
エッチング:
エッチング工程では、マスクされていない領域の材料が基板の上部コア1023層から除去される(図10C参照)。エッチング速度は既知のパラメータであり、よってエッチング深さは時間によって制御できる。エッチングの二つの最も一般的な技術はウェットエッチングと反応性イオンエッチング(RIO)である。図10Cは導波路1027を生じるエッチング工程の結果を示している。
エッチング工程の後に、オーバークラッド又は上部クラッド1029層が、上述のものと同様な蒸着工程を使用してつくり出される。結果を図10Dに示す。図10Dに示されるように、得られた導波路1027は、シリコン1020層の上の上部クラッド1029及びクラッド1021によって囲まれうる。
【0150】
上記工程は上下に重なった幾つかの導波路層をつくり出すために繰り返されうる。この場合、平坦化工程が、一つの導波路層と他のものの間で必要とされうる。これは、ケミカルメカニカル平坦化(CMP)として知られている技術を使用してなされる。
ウェハー加工が完了すると、それを個々のチップにダイシングしうる。製造方法の例示的な単純化されたフローチャートは図11に示す。
【0151】
ビジネス方法
ここに記載されたシステム及び方法は、生物医学及び遺伝子研究並びに臨床診断を含む様々な応用分野で使用することができる。核酸のようなポリマーのアレイを配列情報についてスクリーニングすることができる。
他の応用分野は、米国特許第6228575号に記載されたようなチップベースのジェノタイピング、種鑑別法及び表現型キャラクタリゼーションを含む。癌性症状の診断又はウイルス、細菌、及び他の病理学的又は非病理学的感染の診断を含む更に他の応用分野が、米国特許第5800992号に記載されている。更なる応用分野は、米国特許第6361947号に記載されたようなチップベースの一塩基多型性(SNP)検出を含む。
【0152】
ここに記載された作動システムは、またより大きな生物学的分析システム内のサブシステムでありうる。生物学的分析システムは、光学的スキャニング前の試料調製、光学的スキャニング段階で収集したデータの後処理及び最後にこれらの結果に基づく意思決定の全ての側面を含みうる。試料調製は、試験された対象(ヒト、動物、植物環境等)からの試料の抽出;調査下の分子のより高い濃度及び純度を達成するための試料の様々な部分の分離;試料増幅(例えばPCRによる);試料の様々な部分への蛍光タグ又はマーカーの付着;及びセンシングチップ中への試料のスポッティングのような工程を含みうる。収集されたデータの後処理は、正規化;バックグラウンド及びノイズ低減;及び反復試験に対する平均化又は異なった試験間の相関のような統計解析を含みうる。意思決定は、予め定まったルールセットに対する試験及び外部データベースに保存された情報との比較を含みうる。
【0153】
ここに記載されたスキャニングセンシングシステムの応用と使用は、例えば患者のような個体の疾患状態を診断するのに有用な一又は複数の結果を生じせしめうる。一実施態様では、疾患の診断方法は、試料中の核酸配列の存在に関連するデータをレビュー又は解析することを含む。データのレビュー又は解析に基づいた結論は患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケアマネージャーに提供されうる。一実施態様では、結論は疾患診断に関するデータのレビュー又は解析に基づく。他の実施態様では、患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケアマネージャーへの結論の提供はネットワークを介したデータの送信を含むと考えられる。
従って、ここに記載されたスキャニングセンシングシステム及び方法を使用するビジネスシステム及び方法が提供される。
【0154】
本発明の一態様は、核酸配列の存在又は不存在について患者の試験試料をスクリーニングして核酸配列に関するデータをつくり、核酸配列データを収集し、疾患診断に関するデータのレビュー又は解析に基づいて結論を出すために核酸配列データを患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケアマネージャーに提供することを含むビジネス方法である。一実施態様では、結論は患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケアマネージャーに提供され、ネットワークを介したデータの送信を含む。
【0155】
従って、図12は、本発明に関するデータのレビュー又は解析が達成されうる代表的な例の論理装置を示すブロック図である。かかるデータは個体における疾患、障害又は症状に関しうる。図12は、例えば結果を生じせしめるためにスキャニングセンシングシステム1224と共に使用される装置1220に連結されたコンピュータシステム(又はデジタル装置)1200を示す。コンピュータシステム1200は、固定媒体1212を有するサーバ1209に場合によっては接続されうる媒体1211及び/又はネットワークポート1205からの命令を読み取りうる論理装置として理解されうる。図12に示されるシステムは、CPU1201、ディスクドライブ1203、任意の入力装置、例えばキーボード1215及び/又はマウス1216及び任意のモニター1207を有する。データ通信は、ローカル又はリモートロケーションのサーバ1209に対して示された通信媒体を介して達成されうる。通信媒体はデータを送信し及び/又は受信する任意の手段を含みうる。例えば、通信媒体は、ネットワーク接続、ワイヤレス接続又はインターネット接続でありうる。このような接続はワールドワイドウェブに対する通信を提供しうる。本発明に関するデータは、このようなネットワーク又は接続を通して相手1222に受信され及び/又はレビューされるために伝送されうると考えられる。受信相手1222は、限定されないが、患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケアマネージャーでありうる。
【0156】
一実施態様では、コンピュータ可読媒体は、環境又は生物学的試料の分析の結果の通信に適切な媒体を含む。該媒体は、患者の疾患症状又は状態に関する結果を含み得、かかる結果はここに記載の方法を使用して取り出される。
【0157】
キット
ここに記載の方法を実施するのに有用な試薬を含むキットもまた提供される。ある実施態様では、キットは、ここに記載のスキャニングセンシングシステム及び試料中の標的を検出するための試薬を具備する。該キットは、場合によっては次のものの一又は複数を含みうる:プライマー、蛍光的に標識された及び/又は3’−OHブロックされたd−NTPs、及びDNAポリメラーゼ。場合によっては、キットは、核酸抽出及び/又は処理のための試薬を含みうる。
【0158】
キットの成分はハウジングによって保持されうる。記載された方法を実施するためにキットを使用するための指示書はハウジングに提供され得、また任意の固定媒体で提供されうる。指示書はハウジング内又はハウジング外に位置させ得、指示書を判読可能にするハウジングを形成する任意の表面の内側又は外側に印刷されうる。キットは一又は複数の異なった核酸の配列決定のための多重形態でありうる。
【0159】
ここに記載され、図13の例示的な実施例に示すように、ある実施態様では、キット1303は、様々な成分を収容するためのハウジング又は容器1302を有しうる。図13に示され、ここに記載されるように、キット1303は場合によっては指示書1301及び試薬1305、例えばDNA配列決定試薬を含みうる。成分がここに記載の様々な付加的な特徴を含むキット1303の他の実施態様が考えられる。
【0160】
一実施態様では、フェーズド合成による配列決定のためのキットは、切替可能な光源、検出器、及び基板を含むスキャニングセンサシステムを含む。基板はここに記載された複数の励起導波路及び複数の収集導波路を含みうる。基板の励起導波路及び収集導波路はクロス又は交差し交差領域及び二次元アレイを形成する。該システムは更に複数の光検出部位を含む。光検出部位は一又は複数の励起導波路及び一又は複数の収集導波路と光学的に連通する。光開裂源はまたここに記載されたようにして提供される。キットはシステムの使用のためのパッケージング及び指示書を更に含む。
他の実施態様では、キットは、励起導波路及び収集導波路の交差部が実質的に直交する基板を含む。
一実施態様では、キットは、平面光波回路(PLC)であるスキャニングセンサシステムを含む。
【0161】
理論的実施例
標的DNA増幅反応からのDNA鋳型のフェーズド合成による配列決定は、ここに記載され図2Aに示されたスキャニングセンシングシステムを使用して達成される。
システムの基板の光検出部位を最初にGOPTSで被覆する。DNA鋳型に相補的であるように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを、スキャニングセンシングシステムの基板の上部に外部に付設されたマイクロ流体システムにより移送し、プライマーの5’末端に位置させられた第1級アミノ基を介してGOPTSエポキシ基に共有的に結合させる。平均で約4×10のプライマー分子を各光検出部位に固定する。
ついで、二本鎖DNA鋳型を選択された光検出部位に所定範囲の濃度(1pMから1000pM)で流体で移送する。システムの熱移動部材を使用し、標的DNAを加熱工程(95℃で2分)で変性させて一本鎖標的DNAを得る。該一本鎖標的DNAとプライマーとの間でのアニーリングを通したDNA二本鎖の形成を、光検出部位(48℃で10分)の温度を低下させることによって促進させ、DNA二本鎖を形成する。ついで、未結合DNAストランドが洗浄される。
DNAポリメラーゼをチップに加え、48℃の温度で10分間、プライマー/標的二本鎖に結合させる。
【0162】
フェーズドシークエンシングアプローチによるシークエンシングのためのマスターミックスを調製し、試料移送システムを使用して再び光検出部位まで移送する。該ミックスは、緩衝溶液中に4種の蛍光ヌクレオチドアナログ(dATP、dTTP、dCTP及びcGTPに基づく)を含む。各蛍光ヌクレオチドアナログは、異なった波長で放射する異なった蛍光タグで標識する。全ての蛍光タグを、光開裂性アミノアリル結合からなる光開裂性化学結合を介して対応するヌクレオチドに結合させる。更に、蛍光ヌクレオチドアナログの各々の3’OH基をニトロベンジル基、つまり光開裂性ケージでブロックする。
温度が48℃に維持される間、相補的ヌクレオチドアナログをプライマーの3’−OHに導入すると、ポリメラーゼによるDNA二本鎖の第一伸長が生じる。蛍光ヌクレオチドアナログは3’−OHブロッキング基を含むので、導入後は更なる重合は阻害される。
【0163】
スキャニングセンシングシステムのスキャニング光源は、スキャニング形式で光検出部位の各一に基板の励起導波路を通して全ての異なった蛍光タグを励起するのに必要とされる一又は複数の異なった波長を含む励起光をもたらす。特定の光検出部位に向けられた励起光は、収集され基板の収集導波路により分散モジュールまで送信される蛍光光出力を生じる。
分散モジュールは、波長に応じて検出器アレイの4種の波長専用素子の一つに各収集導波路からの蛍光光出力を迂回させる。使用される検出器アレイは、蛍光シグナルを検出するための素子の4×10のアレイを含む浜松S8550 4X8 シリコンAPDアレイの改変型である。光検出部位からの検出蛍光シグナルは、検出部位の各一及びあらゆるものにおける第一の伸長において加えられた塩基を同定するために制御システムによって記録され解析される。
【0164】
ついで、光開裂光源からの光パルスを全ての検出部位に移送して第二の伸長事象を開始させる。光開裂光源は、システムの光開裂光源入力部に連結されたStockerYale Lasiris PureBeamレーザである。光開裂光源は380nmの波長の10mWattsの光を発生させ、変調されて短(マイクロ秒)パルスを生じさせうる。光検出部位に移送される光開裂光パルスは、第一の伸長事象中に導入された蛍光ヌクレオチドアナログの蛍光タグ及びブロッキング基の双方を光開裂させる機能を果たす。
光開裂後に、放出された蛍光タグ及びブロッキング基は、マスターミックスの循環を維持しシークエンシングサイクルへの新鮮な試薬の一定の流れをもたらす試料移送システムによって洗い流される。
第二の伸長事象が開始され、上述のプロセスが、DNA鋳型の100の塩基シークエンシングの読み取りを達成するために導入、検出、光開裂及び洗浄の100サイクルが繰り返される。
【0165】
本発明の好ましい実施態様をここに示し記載したが、かかる実施態様は例示のために提供されるに過ぎないことは当業者には明らかであろう。発明から逸脱しないで無数の変形、変化、及び置換ができることは当業者には分かるであろう。ここに記載された発明の実施態様に対する様々な代替態様を、発明の実施において用いることができることが理解されなければならない。次の特許請求の範囲は本発明の範囲を定め、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにその均等物がそれによってカバーされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の配列決定のためのスキャニングセンサーシステムにおいて、
複数の実質的に平行な励起導波路と複数の実質的に平行な収集導波路を有する基板であって、励起導波路と収集導波路が交差して、励起導波路と収集導波路が交差する交差領域の二次元アレイを形成し、各交差部に交差領域との光学的連通をもたらす基板と;
交差領域と光学的に連通されて配設された複数の光検出部位と;
基板の励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、スキャニング光源入力部と光開裂光源入力部を有する一又は複数の切替可能な光源と;
基板の収集導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、素子のアレイを有する光分散モジュールと;
光分散モジュールに連結されて光学的に連通せしめられた検出器と
を具備するシステム。
【請求項2】
スキャニング光源が、基板の第一の側の励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられた第一の切替可能な光源に連結され、光開裂光源が、基板の第二の側の励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられた第二の切替可能な光源に連結された請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
核酸の配列決定のためのスキャニングセンサーシステムにおいて、
複数の実質的に平行な励起導波路と複数の実質的に平行な収集導波路を有する基板であって、励起導波路と収集導波路が交差して、励起導波路と収集導波路が交差する交差領域の二次元アレイを形成し、各交差部に交差領域との光学的連通をもたらす基板と;
交差領域と光学的に連通されて配設された複数の光検出部位と;
励起導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、スキャニング光源入力部を有する切替可能な抗原と;
基板の外部に配設された光開裂光源入力部及び光移送システムと;
基板の収集導波路に連結されて光学的に連通せしめられると共に、素子のアレイを有する光分散モジュールと;
光分散モジュールに連結されて光学的に連通せしめられた検出器と
を具備するシステム。
【請求項4】
光移送システムが光開裂光源入力部を有する請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
分散モジュールが、収集導波路の一又は複数から検出器中の複数の素子に光を分散させるように構成された請求項1から4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
分散モジュールが、所定の収集導波路から検出器中の4つ以上の素子に光を分散させるように構成された請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
分散モジュールから分散された光が複数の光波長を有する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
複数の波長が4以上の光波長を含む請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
光開裂光源が、400nmから2000nmの範囲の波長を有する光を放射する請求項1から8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
光開裂光源入力が紫外線光源に連結されている請求項1から9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
紫外線光源が100nmから400nmの範囲の波長を有する光を放射する請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
伸びている核酸ストランドの3’末端に導入された蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を検出することによる核酸配列決定方法において、
(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複数の複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;
(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログの各タイプは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤を3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を可逆的に終結させ;
(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログの独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;
(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;
(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給することによってポリメラーゼ伸長反応の終結を逆転させて、蛍光タグ又はブロッキング剤を切断し;
(f)工程(b)から(e)を繰り返す
ことを含む方法。
【請求項13】
プライマーが、複数の複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プライマーが光検出部位に共有的に固定される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プライマーが光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ポリメラーゼが、複数の複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ポリメラーゼが複数の複合体の固定の前に光検出部位に共有的に固定される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
プライマーが光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定され、ポリメラーゼが複数の複合体の形成及び固定の前に光検出部位に共有的に固定される請求項12に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)の前に、固定されたプライマー及び鋳型二本鎖が形成され、光開裂光パルスが光開裂性リンカーを切断し、二本鎖を切り離すために供給され、ここで、切り離された二本鎖が続いて固定ポリメラーゼに結合して固定された複数の複合体を形成する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(b)が、工程(b)及び(c)の間に洗浄工程を伴わないで工程(c)の前に実施される請求項12から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(f)が、工程(e)及び(b)の間に洗浄工程を伴わないで工程(b)を繰り返す前に工程(e)を実施することを更に含む請求項12から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
核酸がDNAである請求項12から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
蛍光ヌクレオチドアナログが4つの異なったdNTPsを含み、各dNTPが異なった蛍光タグで標識されている請求項12から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
蛍光タグが光開裂性化学結合によってdNTPsに結合される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
蛍光ヌクレオチドアナログの同一性を、該ヌクレオチドアナログが伸びている核酸ストランドに導入された後に検出することによる単一核酸分子の配列決定方法において、
(a)鋳型核酸、該鋳型にハイブリダイズするように構成されたプライマー及びポリメラーゼを含有する複合体を、基板の複数の光検出部位に固定し、ここで、基板は導波路ベース光学的スキャニングシステムの一部であり;
(b)ポリメラーゼ伸長反応を使用してポリメラーゼ及び一又は複数の蛍光ヌクレオチドアナログを用いてプライマーを単一ヌクレオチドだけ伸長させ、ここで、各蛍光ヌクレオチドアナログは更なるプライマー伸長を阻害するように構成されていてもよい独特の蛍光タグ及び/又はブロッキング剤をヌクレオチドアナログの3’末端に含み、蛍光ヌクレオチドアナログの導入はポリメラーゼ伸長反応を終結させ;
(c)光学的スキャニングシステムを使用して基板を光学的にスキャンすることにより蛍光ヌクレオチドアナログに結合した独特のタグを検出して、ポリメラーゼ反応により導入された蛍光ヌクレオチドアナログを同定し;
(d)基板の光学的スキャニングの結果を記録し;
(e)光開裂光パルスを基板の光検出部位の一又は複数に供給して、蛍光タグ及び/又はブロッキング剤を切断し;
(f)工程(b)から(e)を繰り返す
ことを含む方法。
【請求項26】
プライマーが、複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
プライマーが光検出部位に共有的に固定される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
プライマーが光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定される請求項26に記載の方法。
【請求項29】
ポリメラーゼが、複合体の形成及び固定の前に複数の光検出部位に固定される請求項25に記載の方法。
【請求項30】
ポリメラーゼが複合体の固定の前に光検出部位に共有的に固定される請求項25に記載の方法。
【請求項31】
プライマーが光開裂性リンカーを使用して光検出部位に固定され、ポリメラーゼが複合体の形成及び固定の前に光検出部位に共有的に固定される請求項31に記載の方法。
【請求項32】
工程(b)の前に、固定されたプライマー及び鋳型二本鎖が形成され、光開裂光パルスが光開裂性リンカーを切断し、二本鎖を切り離すために供給され、ここで、切り離された二本鎖が続いて固定ポリメラーゼに結合して固定された複合体を形成する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(b)が、工程(b)及び(c)の間に洗浄工程を伴わないで工程(c)の前に実施される請求項25から32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程(f)が、工程(e)及び(b)の間に洗浄工程を伴わないで工程(b)を繰り返す前に工程(e)を実施することを更に含む請求項25から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
核酸がDNAである請求項25から34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
蛍光ヌクレオチドアナログが4つの異なったdNTPsを含み、各dNTPが異なった蛍光タグで標識されている請求項25から35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
蛍光タグが光開裂性化学結合によってdNTPsに結合される請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−525111(P2011−525111A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514703(P2011−514703)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/046843
【国際公開番号】WO2009/155181
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510331397)ピーエルシー ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】