説明

フォトニック結晶の製造方法

本発明は、以下の工程:
(a)空の間隙性の格子サイトが並んだ表面に、互いに接続された空気孔を有するポリマー構造体の準備
(b)ポリマー構造体表面上に均質で等方性の薄い被覆材料を適用
(c)高屈折率材料を導入
(d)ポリマーあるいは工程(b)によって適用された被覆材料に入口を開孔
(e)工程(b)で適用した層を除去
(f)ポリマー構造体を除去
を含む、高屈折率を有する材料からなるフォトニック結晶の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高屈折率材料からなる3次元フォトニック結晶の製造方法に関する。
【0002】
フォトニック結晶は、E. Yablonovitch,Phys.Rev.Lett.,Volume 58,page 2059−2062,1987,およびS.John,ibid.,page 2486−2489,1987まで遡り、これは半導体結晶の光学的類似物を構成する周期構造の誘電体材料であり、従って集積フォトニック回路の製造を可能にする。
【0003】
面心立方構造のために、K.−M.Ho, C.T.Chan,およびC.M.Soukoulis,Phys.Rev.Lett.,Volume65,page 3152−3155,1990によれば、使用された高屈折率材料がシリコンである場合、フォトニック結晶は理論上、中心周波数に対して25%までを有することができる。
【0004】
K.−M.Ho, C.T.Chan, C.M.Soukoulis, R.Biswas,およびM.Sigalas,Solid State Comm.,Volume 89,page 413−416,1994、およびE.Oezbay et al, Phys.Rev.B, Volume 50,page 1945−1948,1994によれば、特に層構造は、マイクロ製造工程によって得ることができる。最近、S.Y.Lin et al.Nature, Volume 394, page 251−253, 1998、 S.Noda et al., Science, Volume 289, page 604−606,2000、およびK.Aoki et al.,Nature Materials、Volume 2, page 117−121,2003は、精巧に配列した個々の層のための平面の半導体マイクロ構造化工程と、前記層からの3次元フォトニック結晶を形作るための積層化工程とを組み合わせることにより、赤外周波数のためのフォトニック結晶を製造している。
【0005】
これは個々の層における制御された変更によって機能素子の組み込みを可能にする。しかしながら、積層は今までのところ数層しか成功しておらず、これはフォトニック結晶中の導波モードと周辺材料中の欠陥モードとの高い相互作用を引き起こし、その結果として機能素子の特性が制限される。
【0006】
従って、M. Campbell et al.,Nature, Volueme 404, page 53−56, 2000、およびY.V. Miklyaev et al., Appl. Phys. Lett., Volume 82, page 1284−1286,2003は、ホログラフィックリソグラフィーを用いた、フォトレジスト層内での高品質な拡張3次元フォトニック結晶の製造に移行した。ここで、フォトニック結晶の厚さは原則としてフォトレジスト層の厚さおよびその吸着によってのみ制限される。ホログラフィックリソグラフィーは数mmに広がる数10個の単位格子の厚さを有する欠陥のない層の準備を可能にし、この工程は単位格子の中身については大きな柔軟性を有している。しかしながら、この多光束干渉工程は、厳密な周期構造の製造のみが可能である。
【0007】
拡張3次元フォトニック結晶製造のためのさらなる方法は、位相マスクリソグラフィーである。ここでもまた、この方法は厳密な周期構造に制限される。
【0008】
従って、第二の相補的な方法は、機能素子、例えば導波管あるいはマイクロキャビティ構造をホログラフィックリソグラフィーで製造されたフォトニック結晶の内部に書き込むことを必要とする。この目的に特に適しているのは、感光性材料内の多光子重合によるいわゆるレーザー直接描画(DLW)であり、S. Kawata, H.−B. Sun、T. TanakaおよびK. Takada, Nature, Volume 412, page 697−698,2001から公知である。
【0009】
この方法において、フォトレジストはレーザーによって露光され、その周波数は、フォトレジストの単一光子重合の閾値よりも下である。このレーザーがフォトレジスト内側上に集光されたとき、焦点での小体積内の光強度は多光子重合の閾値を超えることができる。これらいわゆるボクセルのサイズと形状は、等光面、即ち等照線、使用した顕微鏡のレンズおよび感光性材料における多光子重合の閾値照度による。この方法を使用して、S. Kawataらは今までのところ、780nmの照度の120nmまで小サイズ化されたボクセルの製造を可能にしている。
【0010】
ホログラフィックリソグラフィーと関連して、レーザー直接描画はフォトニック結晶内の機能素子を提供する素早く正確な手法を提供する。しかしながら、それによって高屈折率材料の前記構造体への導入は多くの場合可能ではなく、なぜなら、成膜のための高温、および公知の成膜方法、例えば化学気相成長(CVD)のための前駆体物質の高い化学反応性が、存在している構造体を破壊するからである。例えば、100℃での原子層成長(ALD)法による、ポリマーのフォトニック結晶のTiO2での溶浸および直接反転が
(Infiltration and Inversion of Holographically Defined Polymer Photonic Crystal Templates by Atomic Layer Deposition Adv. Mat., DOI:10.1002/adma.200502287)によって記載されている。
【0011】
Gregory M. Gratson et al. Advanced Materials, 18, pages 461−465, 2006はポリマーフォトニック結晶のSiO2での被覆について開示している。そのあと、Siが熱的に安定なSiO2殻の上に堆積される前に、ポリマーが完全に除去される。この方法は溶浸法ではなく、なぜならSiは中空のSiO2管の外部および内部表面上の両方に成長するからである。この方法は反転構造体をもたらさない。同様に、本構造体を完全に溶浸するのは不可能であり、なぜなら、そうでなければ最終結果が脆いSiO2の中空の骨組みが中に埋め込まれた固体材料のSi層になるからである。
【0012】
N. Tetreault et al.,Advanced materials,18,pages 457−460,2006はポリマー構造体を完全にSiO2構造体に最初に反転することによるポリマーフォトニック結晶の溶浸の問題の回避を開示している。このために、前記のフォトニック結晶を最初にSiO2で完全に溶浸し、そしてその後、ポリマーを除去する。しかしながら、高屈折率での反転構造体の製造は、この方法によって可能ではない。代わりに、ポリマーフォトニック結晶の直接のコピーのみが製造される。
【0013】
US2003/0106487号A1は球状の空間を有するポリマー構造体から開始し、それらを第二の材料で完全に溶浸することを開示している。この工程の後、ポリマー構造体の除去、菲薄化あるいは修正が続く。例えば、ポリマー構造体がナノポーラスを形成する。その後、第三の材料を存在するボイドに導入できる。最後に、第二の材料を除去し、そのようにして元のポリマー構造体を第三の材料で複製することができる。しかしながら、これらの方法の工程は高屈折率材料のポリマー構造体の反転の結果を実現するのに適していない。言い換えれば、US2003/0106487号A1による方法は反転構造体を達成することができない。
【0014】
WO2004/063432号A1はコロイド状の結晶から開始する方法を記載している。コロイド表面を酸化物で覆う。その後、前記コロイドを除去し、そのようにして酸化物の殻がコロイド結晶の反転の転写として保持される。続いて、高屈折率材料を反転転写の内側上に堆積する。最後に、酸化物殻を除去する。しかしながら、この方法は相当な時間投資を意味するために不充分である。
【0015】
さらなる方法が、US2004/0062790号A1およびWO2004/099835号A1から公知である。しかしながら、特に反転の問題に関する限り、これらも充分には機能しない。特に、ポリマーからなるフォトニック結晶を高屈折率のフォトニック結晶へ反転するには問題が多い。
【0016】
前記の問題は、高屈折率材料堆積のための通常の方法(例えば気相成長 CVD)がポリマーの出発材料と非両立的である温度を必要とする事実に起因する。ポリマーがそのガラス転移点より上に昇温され、従って溶解、蒸発あるいは燃焼さえもする。
【0017】
これに由来して、本発明の課題は、述べた欠点および制限のない、高屈折率材料からなるフォトニック結晶の製造方法を提案することである。
【0018】
この課題は、高屈折率材料あるいは金属からなるフォトニック結晶の製造方法、以下の工程段階:
a)表面に空の間隙を有し、互いに接続された空気孔を有するポリマー構造体を提供し、
b)ポリマー構造体表面に均質で等方性の薄い被覆材料を適用し、
c)高屈折率材料を導入し、
d)ポリマーあるいは工程b)で適用された被覆材料に経路を開け、
e)工程b)で適用した層を除去し、
f)ポリマー構造体を除去すること
によって実現される。
工程の順番e)およびf)は入れ替えることができる。
【0019】
本発明は光学および半導体技術領域のナノテクノロジー分野に位置している。最初に、通常の方法、例えば化学気相成長(CVD)、原子層成長(ALD)および反応性イオンエッチング(RIE)は半導体技術で用いられている。第二に、ポリマーフォトニック結晶を製造するために、光学で知られているレーザー直接描画が使用される。
【0020】
本発明による方法は一回の反転工程を構成し、そこにおいて元のポリマーフォトニック結晶への補助層の適用は、一般に高い成膜温度を必要とする、この覆われた高屈折率のポリマーの溶浸を可能にする。適した方法でのポリマーおよび補助層の除去の後、得られる最終生成物は高屈折率の3次元フォトニック結晶である。これはそのとき、覆われた出発ポリマーの反転構造を有している。
【0021】
本発明によれば、高屈折率材料のために、形状を与えるポリマーを堅い外殻、例えばSiO2で被覆し、高屈折率材料での溶浸と適合可能にする。ポリマーを前もって除去する必要はない。これはポリマーフォトニック結晶を高屈折率材料からなるフォトニック結晶に変換する工程を著しく短縮する。部分的な溶浸のために、N. Tetreault et al.,Advanced Materials, 18, pages 457−460,2006による方法よりも少ないSiO2を必要とする。従って、本方法は先行技術と比較して時間を節約する。さらには、均質で等方性の薄い被覆材料、例えばSiO2での部分的な溶浸工程の後に反応性イオンエッチングを必要としない。
【0022】
ポリマーフォトニック結晶を高屈折率材料からなるフォトニック結晶に変換するための本発明の方法は従って、時間及び材料の節約の利点を有する。さらには、本方法は形状を与えるポリマー構造体の反転構造体が高屈折率材料で複製される利点を有する。これは、より大きいフォトニックバンドギャップの達成を可能にする。N. Tetreault et al.,Advanced Materials, 18, p. 457−460(2006)の方法と比較して、この方法は追加的にさらなる基板の交換が不要であるという利点を有する。試料はテンプレートから高屈折率材料からなる構造体の反転まで、一枚の基板上で処理される。
【0023】
本発明による方法の出発点は工程の段階a)で提供され、ポリマーからなる3次元フォトニック結晶である。このために、公知の先行技術によれば、ポリマーあるいは重合可能なモノマーが好ましくはガラス、シリコンあるいはポリマーから構成される第一の基板にスピンコートすることによって適用される。他の基板および/またはポリマーあるいは重合体のモノマーの、前記の基板ではあるが密着促進剤あるいは例えば薄い耐HF材料(前記の反転に現在使用されている)で被覆されている基板への適用もまた、原則的に可能である。従って、例えばガラス基板はHFを使用する場合に腐食されない。
【0024】
続いて、所望の結晶構造を有するポリマーフォトニック結晶を、好ましくはホログラフィックリソグラフィー、位相マスクリソグラフィーあるいはレーザー直接描画、あるいは前記の2つの方法の組み合わせによって、ポリマーから製造する。前記のフォトニック結晶は、空の間隙の格子が規定された表面を有する。孔のサイズは好ましくは5nmから10μmである。
【0025】
ポリマーフォトニック結晶が最初に等方性薄い被覆と共に提供される。これは続く溶浸に対して熱的に安定および/または化学耐性がある材料からなる。被覆の完成において、ポリマーは完全に等方性の薄い被覆によって囲まれる。得られる構造体は完全に網目化された空気孔をまだ有しているので、部分的にだけ溶浸されている。適用された被覆は、そうでなければ適合しないポリマー構造体を、次の溶浸工程に適合させる。不適合性は例えば、熱的な不安定性、化学耐性の不足およびポリマー表面上の成長不足によってもたらされ得る。同時に、最初の被膜はポリマーと適合性がある。
【0026】
本発明によれば、等方性薄膜には、酸化物、例えばAl23、MgO、TiO2、ZrO2、HfO2およびSiO2が使用できる。さらには、使用されるこの種の層は、窒化物、例えばBN、TiN、Si34mC4、AlN、カーバイド、および金属および酸化物から構成される化学量論組成比から外れた化合物、例えばZnO0.99、WO3-x、TiO2-x、および金属、例えばNi、Co、Mo、Cr、Wを含んでもよい。
【0027】
好ましい実施態様において、二酸化ケイ素(SiO2)をポリマーフォトニック結晶に適用する。これは例えば、ポリマー表面を水(H2O)で濡らし、その後薄い水の層を四塩化ケイ素(SiCl4)と反応させ、副生成物の気体の塩酸(HCl)を放出してアモルファスSiO2を得ることによって実現できる。
【0028】
この工程段階の完了で、ポリマーフォトニック結晶が、述べられた材料の固い殻、好ましくはアモルファスSiO2の固い殻と共に提供される。この層は高屈折率材料、好ましくはシリコンからなる材料での、構造体の溶浸のための化学気相成長(CVD)工程と適合する。適合性の根拠は:
1.熱安定性、即ちCVD工程の間、SiO2のガラス転移温度を上回らない。前記の固い殻は従って寸法的に安定なままであり、さらには囲まれたポリマーの変形を阻止する。
2.化学的適合性、即ちシリコンは全ての基板上で均一に成長しない。それは表面上で前駆体材料を吸着および脱着できなければならない。本発明による好ましい変形物において、均質で等方性の水素化アモルファスSi(a−Si:H)がアモルファスSiO2表面上で生じる。
ことである。
【0029】
好ましくはSiO2で覆われた3次元ポリマーフォトニック結晶を、高屈折率材料で溶浸する。この目的のために有用な材料は当業者に公知の全ての高屈折率材料であり、例えば金属を含む。例えば、金属フォトニック結晶は適した特性を有している。使用される高屈折率材料は好ましくは、様々なn型あるいはp型ドーパントをドープされたものも含む、半導体シリコン、ゲルマニウムあるいはSixGe1-x合金である。シリコンそれ自体はアモルファス、ナノ結晶、多結晶あるいは単結晶であってよく、水素化シリコンナノ結晶(nc−Si:H)が特に好ましい材料である。さらには、n型あるいはp型ドープされたそれらの変形物も含む、II−V族、II−VI族、I−VII族、IV−VI族半導体あるいは高屈折率金属、例えば銀(Ag)、金(Au)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)あるいはタンタル(Ta)が同様に適している。
【0030】
好ましくは本発明によれば、使用される溶浸工程は気相からの成長(CVD=化学気相成長)である。使用する気体の出発材料は前駆体物質であってよい。Siの成長の場合は、例えばSiH4あるいはSi26が適した前駆体である。この目的のためにフォトニック結晶を加熱する。この目的のために、前記結晶をコールドウォール型の反応器内の耐熱性の加熱エレメントに置いてもよい。
【0031】
使用する加熱エレメントをゆっくりと加熱する。好ましいものは100℃〜800℃の温度に加熱され、好ましくは200℃〜800℃である。作業圧力は0.001mbarから数100mbarまでであり、好ましくは1〜50mbarである。
【0032】
3次元に網目化された孔のおかげで、前駆体はフォトニック結晶の全ての自由表面に堆積でき、そしてシリコンが成長できる。例えば一分当たり約5〜7nmの堆積速度(470℃、5mbar、1sccmのSi26にて)で、フォトニック結晶が完全に溶浸されるまでCVD装置を稼働できる。出入りのチャネルの直径が空間的にばらついているために、小さなボイドが残ることがある。なぜなら、それらは"完全溶浸"のときにさらに前駆体ガスの流入によって遮断されるからである。
【0033】
最大屈折率コントラストを達成するために、ポリマー出発材料および補助材料、例えばSiO2を構造体から除去しなければならない。しかしながら、本発明によって好まれる方法で、それら2つの材料はSiで完全に覆われているために、化学的あるいは熱的な除去は不可能である。従って、特にSiの完全溶浸の場合には、均質で等方的な薄い層に、あるいは形状を与えるポリマーにまで、好ましくは反応性イオンエッチング(RIE)によって経路を開ける。使用されるエッチングガスは、例えば塩化物、フッ化物およびO2の添加物であってもよい。化学薬品によるウェットエッチングおよび等方性プラズマエッチングも選択肢である。
【0034】
アモルファスSiO2での被覆の場合、この被覆を好ましくは化学薬品によるウェットエッチング、例えば1%のフッ酸水溶液によって構造体から除去できる。これはポリマーあるいはSiを腐食しない。フッ酸以外には、酸化物に例えば強アルカリ、例えば濃縮したKOH水溶液を用いることも可能である。窒化物および金属の場合には、例えば硝酸がそれらを除去するのに適した酸である。SiO2の代わりに他の酸化物、例えばAl23、MgO、TiO2、ZrO2、HfO2を使用するときは、例えば塩酸を使用することが可能である。
【0035】
前記の酸は約数秒から数時間まで作用する。アモルファスSiO2での被覆の場合には、作用時間は約1〜30分である。
【0036】
作用時間満了の後、水洗が続く。この目的には二段蒸留水が好ましくは使用される。この後、短い乾燥工程および他のエッチング段階が続く。さらなるエッチング段階の継続時間は1〜30分である。
【0037】
SiO2を使用する場合、エッチング時間は同様に1〜30分である。
【0038】
続いて、形状を与えるポリマーを、得られたポリマー複合構造体、好ましくはポリマー/Si複合構造体から除去する。ここで与えるのに好ましいのは、熱分解の実施である。言い換えれば、例えば、前記のポリマー/複合物構造体を200℃〜800℃、好ましくは350℃〜600℃に加熱したオーブン内に導入し、ポリマーを除去する。試料を好ましくは数時間、より好ましくは10秒間加熱する。
【0039】
熱分解の他には、形状を与えるポリマーを除去するための他の適した方法もまた有用である。例えば、プラズマプロセス(例えば空気あるいは酸素プラズマ)が使用できる。化学薬品によるウェットプロセスも同様に適している。
【0040】
形成される最終生成物は、高屈折率材料(好ましくはSi)、即ち、好ましくは屈折率n>2.3の材料で構成される3次元フォトニック結晶である。これは覆われた3次元ポリマーフォトニック結晶の反転構造を有する。形状を与えるポリマーの除去は従って高屈折率材料で構成される所望の3次元フォトニック結晶の形成をもたらし、その構造体は工程b)の後で補助層に覆われたポリマーの反転である。従って得られるフォトニック結晶の結晶格子は、例えば面心立方構造(fcc)、単純立方構造(sc)、傾斜孔構造、ダイヤモンド構造あるいは正方スパイラル構造を有し得る。
【0041】
本発明による方法は誘電率のコントラストが高い3次元フォトニック結晶の製造を可能にする。それはホログラフィックリソグラフィー、位相マスクリソグラフィー、レーザー直接描画あるいは前記の2つの方法の組み合わせによって製造され得る全ての構造および位相を有してよい。これはさらなる工程段階なしで3次元フォトニック結晶において機能性構造体を製造するのを可能にする。本発明によって提供される方法は、適した構造の場合は完全フォトニックバンドギャップを形成できる3次元フォトニック結晶の製造を可能にする。
【0042】
本発明を実施例および図を用いて以下に説明する。図は以下を示す:
図1:
SiO2で覆われたポリマーフォトニック結晶を集束イオンビーム(FIB)で加工した断面を示す。試料をSiでの溶浸に使用するのと同じ条件の下で加熱した。室温から470℃までの昇温は3時間以内で実行した。この温度を2時間維持し、2時間以内で室温に戻した。ポリマーが固いSiO2殻の中に囲まれたままであり、且つ形状が保存されていることがわかる。
【0043】
図2:
一回反転されたSiのフォトニック結晶のFIB機を用いた断面を示す。図1に示す形状の反転構造が得られている。
【0044】
図3および4:
ここで、記載された方法によって一回反転されているシリコンのウッドパイル構造のフォトニック結晶の光学測定を示す。格子定数はC=√2×800nmである。本測定はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)で行った。記載された方法を以下に実際に詳細に説明し、それぞれの場合において記載された工程は:
(i)出発材料はSU−8(これはMicroChem社のネガ型フォトレジストの製品名である。このレジストはSU−8エポキシ樹脂から成り、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)中に溶解しており、且つプロピレンカーボネート内にてトリアリルスルホニウム塩で構成される光酸発生剤と混合されている)で構成されたポリマーのウッドパイルである。
(ii)1サイクルのALDの後の、SiO2で覆われたSU−8ウッドパイル。
(iii)2サイクルのALDの後の、SiO2で覆われたSU−8ウッドパイル。
(iv)Si溶浸した構造体、即ち、SU−8、SiO2およびSiで構成される複合構造。
(v)アモルファス二酸化シリコンおよびSU−8ポリマー除去後の一回反転されたSiのウッドパイル。
波長約2.3μmで完全バンドギャップが得られる。
【0045】
図5:
ALDのメカニズムの図を示す。SiCl4ガスがSU−8ポリマーに吸着した水と反応する。これが塩酸の放出によってアモルファス二酸化シリコンを形成する。
【0046】
図6:
Siで溶浸されたウッドパイルからポリマーおよび二酸化シリコンを除去するのを可能にするために、SiO2および形状を与えるポリマーに最初に経路を造る。これは発明の実施例において反応性イオンエッチングによって行われる。
【0047】
図7:
図7は一回反転されたSiのウッドパイルのシミュレーションを示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】SiO2で覆われたポリマーフォトニック結晶をFIBで加工した透過断面を示す図である。
【図2】一回反転されたSiのフォトニック結晶のFIBを用いた透過断面を示す図である。
【図3】一回反転されているSiのウッドパイル構造のフォトニック結晶の光学測定を示す図である。
【図4】一回反転されているSiのウッドパイル構造のフォトニック結晶の光学測定を示す図である。
【図5】ALDのメカニズムの図を示す図である。
【図6】SiO2および形状を与えるポリマーに最初に経路を造ることを説明する図である。
【図7】一回反転されたSiのウッドパイルのシミュレーションを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折率材料あるいは金属からなるフォトニック結晶の製造方法において、以下の工程段階
a)表面が空の間隙を有し、互いに接続された空気孔を有するポリマー構造体を提供し、
b)ポリマー構造体表面に均質で等方性の薄い被覆材料を適用し、
c)高屈折率材料を導入し、
d)ポリマーあるいは工程b)で適用された被覆材料に経路を開け、
e)工程b)で適用した層を除去し、
f)ポリマー構造体を除去する
を含む方法。
【請求項2】
工程f)が工程e)の前に実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
等方性の薄い被覆材料が熱的に安定および/または化学耐性があることを特徴とする、請求項1あるいは2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
工程b)において、金属、酸化物、窒化物、カーバイド、あるいは金属および酸化物から構成され、化学量論組成比から外れた化合物を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)において、酸化物としてAl23、MgO、TiO2、ZrO2、HfO2あるいはSiO2を被覆材料として使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用される金属がNi、Co、CrあるいはWであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
使用される窒化物がBN、TiN、Si34、C34あるいはAlNであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用される金属および酸化物で構成される化合物が、ZnO0.99、WO3-x、TiO2-xであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー構造体の表面が水で濡らされ、その後、ポリマー構造体のアモルファスSiO2での被覆が生じる量で四塩化ケイ素を適用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)で適用する高屈折率材料が、Si、GeあるいはSixGe1-x合金であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
被覆のためにジシラン(Si26)あるいはシラン(SiH4)を使用することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Siを200〜800℃の温度で適用することを特徴とする、請求項10あるいは11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
被覆を0.001mbarから数100mbarまでの圧力で実施することを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程c)のあとに反応性イオンエッチングあるいはプラズマエッチングを行うことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程b)で適用される層を化学薬品によるウェットエッチングで除去することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程b)で適用される層をフッ酸によって除去することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリマーを、熱分解によって、プラズマを使用して、あるいは化学薬品によるウェットプロセスによって除去することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
被覆されたポリマー構造体を200〜800℃に加熱することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
高屈折率材料として、水素化シリコンナノ結晶(nc−Si:H)を用いる、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−539124(P2009−539124A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512535(P2009−512535)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054766
【国際公開番号】WO2007/137944
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(591004618)フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 5, D−76133 Karlsruhe,Germany
【出願人】(502227343)ウニヴェルジテート カールスルーエ (1)
【Fターム(参考)】