説明

フォトマスク、フォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び光学素子

【課題】切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との位置関係を容易且つ正確に制御すると共に、係る位置関係を容易且つ正確に検査する。
【解決手段】透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされることによる所定の遮光パターンを備えたフォトマスクであって、基板の主面上であって遮光パターン領域外に、遮光パターンと同時に形成されたアライメントマークであって、遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を、認識可能に示す部分を含むアライメントマークが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク、フォトマスクの製造方法、パターン転写方法、及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示デバイス(FPD)の製造工程の一工程として、フォトマスクを介して表示デバイス用基板上に露光を行い、表示デバイス用基板上に所定のパターンを転写する工程が実施されている。前記フォトマスクは、透光性基板の主面上に形成された遮光膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記遮光膜の露出部分(前記レジストパターンに覆われていない部分)をエッチングして遮光パターンを形成し、その後、前記レジストパターンを除去することにより製造される。
【0003】
なお、前記フォトリソグラフィを用いた液晶表示装置の製造において、液晶表示用干渉パネルをマザー基板から多面取りする際に、マザー基板の各々にマークを形成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−193950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報には、ITO膜付マザー基板から、サイズなどの異なる干渉パネルを多面取りする際に、フォトリソグラフィ法によってマークを形成することが記載されている。しかしながら、このマークは、フォトリソグラフィ法における被転写体のマークであり、フォトマスクの切断等に用いられるマークではない。
【0006】
一方、フォトマスク等の光学素子の大きさや形状、向きを整えるために、フォトマスク基板を切断する必要が生じる場合があることを発明者らは見出した。例えば、大型の基板にフォトマスクパターンを形成したのちに所望の寸法のフォトマスクとする場合、又は、所定の基板にパターンを形成したのちにフォトマスク基板の端辺とパターンとの相対位置や角度を変更する場合などには、フォトマスク基板を切断する必要が生じる。
【0007】
特に、フォトマスクにパターンを形成するためにフォトマスク基板を描画機に載置するときのフォトマスク基板の向きや位置と、フォトマスクを用いてパターンを転写するために露光機に載置するときのフォトマスク基板の向きや位置と、が異なる場合には、フォトマスクへのパターン形成後に、フォトマスク基板の端辺を切断するなどして、新たな端辺を改めて形成することが有用である。この場合、以下の考慮が必要である。
【0008】
すなわち、表示デバイス用基板上へのパターンの転写を正確に行うには、露光光源や表示デバイス用基板に対する遮光パターンの位置を正確に制御する必要がある。遮光パターンの位置を正確に制御するには、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との位置関係が正確に制御されていることが好ましい。例えば、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との距離が所定の距離となっており、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁とのなす角が所定の角度となっていることが好ましい。
【0009】
ここで、切断ラインの位置決定をマザー基板上の外寸を元に算定すると、切断後の基板
の端辺と遮光パターンの外縁との位置関係が不正確になってしまう場合があった。つまり、マザー基板上における遮光パターンの描画位置にずれ等があると、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との位置関係にずれが生じてしまう場合があった。
【0010】
なお、マザー基板上における遮光パターンの位置を実際に測定し、係る測定結果に基づいて切断ラインの位置決定を決定することとすれば、切断ラインの位置を正確に制御することは可能である。例えば、マザー基板上における遮光パターンの位置を測定し、遮光パターンの外縁からの距離が所定の距離となる点を複数測定してプロットすれば、切断ラインの位置を正確に決定することができる。しかしながら、係る方法では、切断ラインの決定に要する工数が増大してしまうと共に、測定ミスにより切断ラインが不正確となってしまう場合があった。特に、基板のサイズが大きい場合には、困難であった。
【0011】
また、上述の方法で切断ラインを決定した場合、切断精度を検査するには、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との距離を複数地点で実際に測定し、これらの距離が所定の距離であるかをそれぞれ確認する必要があった。しかしながら、係る方法では、検査に要する工数が増大してしまうと共に、測定ミスによる誤認が発生してしまう場合があった。尚、上記課題は、フォトマスクのみに限らず、所定の遮光パターンを備えた光学素子においても、遮光パターンとそれを担持する基板の端辺との相対位置関係が、精緻に制御されなくてはならない場合には、上述の課題と同様の課題が生じ、不都合であった。
【0012】
本発明は、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との位置関係を容易且つ正確に制御可能であると共に、係る位置関係を容易且つ正確に検査可能なフォトマスク、及び該フォトマスクの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、表示デバイス用基板上へのパターンの転写をより正確に行うことが可能な表示デバイスの製造方法を提供することを目的とする。更に、精密な光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされることによる所定の遮光パターンを備えたフォトマスクであって、前記基板の主面上であって前記遮光パターン領域外に、前記遮光パターンと同時に形成されたアライメントマークであって、前記遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を、認識可能に示す部分を含むアライメントマークが形成されているフォトマスクである。
【0014】
本発明の第2の態様は、前記基板の端辺は、前記アライメントマークにおける、前記複数の位置を結ぶラインに沿って形成されている第1の態様に記載のフォトマスクである。
【0015】
本発明の第3の態様は、前記アライメントマークは、前記遮光パターン領域の外縁からの距離を段階的に示す第1又は第2の態様に記載のフォトマスクである。
【0016】
本発明の第4の態様は、透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされてなる遮光パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、前記基板の主面上に前記遮光膜とレジスト膜とが順次積層されたマスクブランクを準備する工程と、前記レジスト膜に前記遮光パターンを描画露光するとともに、遮光パターンの領域外に、前記遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を認識可能に示すアライメントマークのパターンを描画露光し、前記遮光パターンと前記アライメントマークに対応するレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングし、前記基板の主面上に前記遮光パターン及びアライメントマークを形成する工程と、前記アライメントマークが示す前記複数の位置を参照して前記基板を切断する工程と、を有するフォトマスクの製造方法である。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記切断が、前記アライメントマークが示す前記複数の位置を結んだラインに沿って行われる第4の態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0018】
本発明の第6の態様は、前記アライメントマークは、前記遮光パターン領域の外縁からの距離を段階的に示すマスク部分を含む第4又は5の態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0019】
本発明の第7の態様は、前記アライメントマークが、前記遮光パターン領域の外縁に沿って少なくとも一対形成される第4乃至6のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0020】
本発明の第8の態様は、前記一対のアライメントマークのそれぞれの所定部分を結んだラインと前記切断後の基板の端辺との相対距離及び侠角を測定して、前記基板の切断精度を検査する工程を有する第7の態様に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0021】
本発明の第9の態様は、第1乃至第3のいずれかの態様に記載のフォトマスク、又は第4乃至第8のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法により製造されたフォトマスクを介して、露光光源からの光を表示デバイス用基板上に形成されたレジスト膜に照射し、前記レジスト膜に遮光パターンを転写するパターン転写製造方法である。
【0022】
本発明の第10の態様は、透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされることによる所定の遮光パターンを備えた光学素子であって、前記基板の主面上であって前記遮光パターン領域外に、前記遮光パターンと同時に形成されたアライメントマークであって、前記遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を、認識可能に示す部分を含むアライメントマークが形成されている光学素子である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、切断後の基板の端辺と遮光パターンの外縁との位置関係を容易且つ正確に制御可能であると共に、係る位置関係を容易且つ正確に検査可能なフォトマスク(または光学素子)、及び該フォトマスクの製造方法を提供できる。また、本発明によれば、表示デバイス用基板上へのパターンの転写をより正確に行うことが可能な転写方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るフォトマスク100の平面図である。図2(a)は図1の符号Aの領域に形成されたアライメントマーク151bの平面拡大図であり、図2(b)は図1の符号Bの領域に形成されたアライメントマーク151bの平面拡大図である。図3は、本発明の一実施形態に係るフォトマスク100の製造に用いられる切断前のマザー基板110mの平面図である。図4(a)は、図3の符号Aの領域に形成されたアライメントマーク151bの平面拡大図であり、図4(b)は、図4の符号Bの領域に形成されたアライメントマーク151bの平面拡大図である。図5は、本発明の一実施形態に係るマザー基板110mの主面110a上に遮光パターン151a及びアライメントマーク151bが形成される様子を示す概略図である。
【0026】
(1)フォトマスクの構成
以下に、本実施形態に係るフォトマスク100の構成について、図1、図2を参照しながら説明する。
【0027】
本実施形態に係るフォトマスク100は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイス(FPD)の製造工程等に用いられる露光用マスクとして構成されている。フォトマスク100は、透光性を有する基板110と、基板110の主面110a上に設けられた遮光パターン151aと、基板110の主面110a上であって遮光パターン151aの外周に形成された一対のアライメントマーク151bと、を備えている。一対のアライメントマーク151bは、遮光パターン151aの各端辺に対してそれぞれ形成されている(本実施形態では4組形成されている)。各アライメントマーク151bは、遮光パターン151aの端辺の両端付近にそれぞれ形成されている。
【0028】
基板110は、例えば石英(SiO)ガラスや、SiO,Al,B,RO,RO等を含む低膨張ガラス等からなる透光性を有する平板として構成されている。基板110は、後述するように基板110より大きな外形を有するマザー基板から切り出されることにより形成される。基板110の一方の主面110aは、研磨されるなどして平坦且つ平滑に構成されている。基板110の大きさは例えば500mm四方であり、基板110の厚さは例えば5mm〜20mmである。
【0029】
遮光パターン151a及び一対のアライメントマーク151bは、共に遮光膜151から構成されている。遮光膜151は、母体がCr(クロム)であり、下層側から上層側になるにつれて窒化クロム(CrN)、酸化クロム(CrO)、炭化クロム(CrC)のうち少なくともいずれか1の含有比率が高くなるように組成が制御された反射抑制膜として構成されている。遮光膜151の上面は、後述するレジストパターン形成工程において遮光膜151の上面に照射される光の反射を抑制するように構成されている。なお、本発明に係る遮光膜151は、本実施形態のように1枚の反射抑制膜により構成されている場合に限定されず、2以上の積層された膜から構成されていてもよい。係る場合、積層された膜のうち少なくとも最上面の膜は、上述の反射抑制膜として構成することが好ましい。
【0030】
遮光パターン151aの平面形状は、表示デバイス用基板上に形成する回路パターンに応じて種々の形状に構成される。なお、本実施形態における遮光パターン151aは、ラインアンドパターンや格子パターンなど、如何なる形状とすることもでき、制約はない。
【0031】
一対のアライメントマーク151bは、遮光パターン151aの外縁からの距離をそれぞれ示している。具体的には、一対のアライメントマーク151bは、遮光パターンの外縁からの距離をそれぞれ段階的に示す複数のマークからなる。各アライメントマーク151bは、遮光パターン151aの外縁からの所望距離の地点に設けられた基準マーク151c(図中「0μm」と記された6角形マーク)と、基準マーク151cから遮光パターン151aの外縁に向けて所定の距離間隔で順次配列されたマーク群150d(図中「−5μm」,「−10μm」,「−15μm」と記された3つの6角形マーク)と、基準マーク151cから基板110の端辺に向けて所定の距離間隔で順次配列されたマーク群150e(図中「+5μm」,「+10μm」,「+15μm」と記された3つの6角形マーク)と、を備えた複数のマークの集合体として構成されている。ここでは6角形の対向する2つの角が、遮光パターンの外縁との距離の指標となっている。もちろん6角形以外の多角形でもよく、またその他の形状でもよい。
【0032】
なお、基板110の端辺は、後述する「基板を切断する工程」において、一対のアライメントマーク151b間を結ぶラインに沿うように上述のマザー基板が切断されることで形成される。その結果、一対のアライメントマーク151bの一部は、基板110から切断(除去)されることとなる。そして、基板110の主面110a上に形成(残留)している一対のアライメントマーク151bは、上述の複数のマークのうち一部のみとなる。
【0033】
(2)フォトマスクの製造方法
続いて、上述のフォトマスク100の製造方法について、図3〜図5を参照しながら説明する。
【0034】
(マスクブランク準備工程)
図5(a)に示すように、マザー基板110mの一方の主面110a上に、遮光膜151とレジスト膜152とが順に積層されたマスクブランク100bを準備する。遮光膜151及びレジスト膜152は、マザー基板110mの主面110aの全面に渡り、均一な厚さになるようにそれぞれ構成されている。
【0035】
マザー基板110mは、石英ガラスや低膨張ガラス等からなる平板として構成されている。マザー基板110mの主面110a及び図示しない他方の主面は、研磨されるなどして平坦且つ平滑に構成されている。なお、マザー基板110mは、上述の基板110の外形よりも大きな外形を有しており、例えば800mm×920mmに構成されている。
【0036】
遮光膜151は、Crを主成分とするものが好ましい。また、遮光膜151の上面は、窒化クロム(CrN)、酸化クロム(CrO)、炭化クロム(CrC)が積層され、反射率が低くなるように構成されていてもよい。遮光膜151は、例えばスパッタリング等の手法により形成することが出来る。遮光膜151の組成は連続的に変化させてもよく、段階的に変化させてもよい。
【0037】
レジスト膜152は、ポジ型フォトレジスト材料或いはネガ型フォトレジスト材料により構成されている。レジスト膜152は、例えばスピン塗布等の手法を用いて形成することが出来る。以下、レジスト膜152をポジ型フォトレジスト材料より形成した場合について説明している。
【0038】
なお、遮光膜151の厚さは例えば10nm〜150nmであり、レジスト膜152の厚さは例えば300nm〜1500nmである。
【0039】
(レジストパターン形成工程)
次に、図5(b),図5(c)に示すように、レジスト膜152の一部に光を照射して感光させ、遮光パターン151aの形成予定領域と、一対のアライメントマーク151bの形成予定領域と、をそれぞれ覆うレジストパターン152pを形成する。具体的には、レジスト膜152における遮光パターン151aの形成予定領域と、レジスト膜152における一対のアライメントマーク151bの形成予定領域と、にそれぞれ光を照射(露光)し、有機溶媒等からなる現像液をスプレー方式等の手法によりレジスト膜152に供給して現像し、上述のレジストパターン152pを形成する。レジスト膜152への光の照射(露光)は、レーザー描画機やマスクを介した水銀灯等を用いて行うことが可能である。このように、遮光パターン151aの形成予定領域と一対のアライメントマーク151bの形成予定領域とは、同時に描画される。その結果、遮光パターン151aと一対のアライメントマーク151bとの相対的な位置関係は、正確に制御されることとなる。
【0040】
なお、上述したように、遮光膜151の上面は反射率が低くなるように構成されている。その結果、レーザー描画機や水銀灯からの照射光(露光光)が、遮光膜151の上面で反射されてしまうことが抑制される。そして、レジスト膜152が二重に感光されてしまうことを抑制でき、レジストパターン152pの寸法制御・形状制御を正確に行うことが可能となる。
【0041】
(遮光パターン及びアライメントマークの形成工程)
次に、図5(d)に示すように、形成したレジストパターン152pをマスクとして遮光膜151の一部をエッチングし、基板110の主面110aを部分的に露出させて遮光
パターン151a及び一対のアライメントマーク151bをそれぞれ形成する。係るエッチングは、例えば、硝酸第2セリウムアンモニウム((NHCe(NO)及び過塩素酸(HClO)を含む純水からなるクロム用エッチング液等を、スプレー方式等の手法により遮光膜151に供給することで行うことが可能である。
【0042】
次に、図5(e)に示すように、レジストパターン152pを剥離して、遮光膜151の残留部分(遮光パターン151a及び一対のアライメントマーク151b)の上面を露出させる。レジストパターン152pの除去は、レジストパターン152pに剥離液を塗布して剥離させること等で行うことが可能である。
【0043】
その結果、マザー基板110m上に、遮光パターン151a及び一対のアライメントマーク151bがそれぞれ形成された状態となる。上述したように、一対のアライメントマーク151bは、遮光パターン151aの外縁からの距離をそれぞれ示している。具体的には、図4に示すように、一対のアライメントマーク151bは、遮光パターンの外縁からの距離をそれぞれ段階的に示す複数のマークとして構成されている。一対のアライメントマーク151bは、遮光パターン151aの外縁からの距離が50μmの地点に設けられた基準マーク151c(図中「0μm」と記された6角形マーク)と、基準マーク151cから遮光パターン151aの外縁に向けて所定の距離間隔で順次配列されたマーク群150d(図中「−5μm」,「−10μm」,「−15μm」と記された3つの6角形マーク)と、基準マーク151cから基板110の端辺に向けて所定の距離間隔で順次配列されたマーク群150e(図中「+5μm」,「+10μm」,「+15μm」と記された3つの6角形マーク)と、を備えた複数のマークの集合体として構成されている。
【0044】
(基板を切断する工程)
次に、一対のアライメントマーク151b間を結び、目標とする切断ラインを決定する。例えば、一対の基準マーク151cの中心を結ぶことにより、遮光パターン151aの外縁からの距離が予め設定した既知の値であって、遮光パターン151aの端辺に平行なライン180(目標とする切断ライン)を決定する。このように、本実施形態では、マザー基板110m上における遮光パターン151aの位置を実際に測定することなく、また、遮光パターン151aの外縁からの距離が所定の距離となる複数の点を実際に測定することなく、一対のアライメントマーク151b間を結ぶことのみによりライン180(目標とする切断ライン)を容易に決定できる。また、本実施形態では、遮光パターン151aと一対のアライメントマーク151bとの相対的な位置関係はすでに描画データにより正確に制御されているため、目標とするライン180(目標とする切断ライン)を正確に決定できる。
【0045】
次に、一対のアライメントマーク151bを結んだライン180(目標とする切断ライン)に沿うように、マザー基板110mを切断する。係る切断は、カッター等を用いて上述のライン180に沿う刻線(溝線)を形成した後、形成した刻線(溝線)に沿うように圧力を加えてマザー基板110mを割ることで行ってもよいし、ホイールカッター等を用いてマザー基板110mを一気に分断することで行ってもよい。
【0046】
その結果、図1,図2に示す上述のフォトマスク100が製造される。なお、マザー基板110mが切断されることにより、基板110の主面110a上には、上述の一対のアライメントマーク151bのうち一部のみが残留することとなる。すなわち、図2に示すように、基板110の主面には、一対のアライメントマーク151bのうち、分割後の基板110の端辺(実際の分割ライン)よりも内側のマークのみが残留することになる。
【0047】
(切断精度を検査する工程)
次に、基板110に残留した一対のアライメントマーク151bを結んだライン180
と、分割後の基板110の端辺(実際の分割ライン)との相対距離及び侠角を測定して、基板110の切断精度を検査する。
【0048】
具体的には、基板110に残留した一対のアライメントマーク151bを観察し、ライン180(目標とする切断ライン)と分割後の基板110の端辺(実際の分割ライン)との間の距離(ズレ)を測定し、遮光パターン151aの外縁から基板110の端辺までの距離が所定範囲内であるか否かを検査する。
【0049】
また、基板110に残留した一対のアライメントマーク151bを観察し、分割後の基板110の端辺と遮光パターン151aの外縁との間の侠角θ(μrad)を算出し、基板110上に形成された遮光パターン151aのローテーション量が所定範囲内であるか否かを検査する。
【0050】
なお、侠角θ(μrad)は、一対のアライメントマーク151bの間の距離がL(mm)であり、一対のアライメントマーク151bのうち一方を観察した際のライン180と分割後の基板110の端辺との間の距離(ズレ)がD1(μm)であり、一対のアライメントマーク151bのうち他方を観察した際のライン180と分割後の基板110の端辺との間の距離(ズレ)がD2(μm)であったとき、以下の計算式に基づいて算出できる。
【0051】
θ=10×arctan((D1−D2)×10−3/L)(μrad)
【0052】
例えば、L1が500(mm)、D1が10(μm)、D2が−10(μm)であったとき、θ[μrad]=10×arctan((10−(−10))×10−3/500)=40.0(μrad)となる。
【0053】
このように、本実施形態では、分割後の基板110上における遮光パターン151aの位置を直接に測定することなく、ズレ量やローテーション量を容易に把握できるため、基板110の切断精度を容易に検査することが可能となる。また、本実施形態では、遮光パターン151aと一対のアライメントマーク151bとの相対的な位置関係が正確に制御されているため、ズレ量やローテーション量を正確に把握することができ、基板110の切断精度を正確に検査することができる。
【0054】
以上の工程を経て、本実施形態に係るフォトマスク100の製造が完了する。
【0055】
その後、製造したフォトマスク100を用いて露光を行い、表示デバイス用基板上に形成されたレジスト層にフォトマスク100の遮光パターン151aを転写する。具体的には、フォトマスク100を介して、露光光源からの光を表示デバイス用基板上に形成されたレジスト層に照射し、前記レジスト層に遮光パターン151aを転写する。その後、この転写されたパターンに基づく画素構造を表示デバイス用基板の表面に形成して、表示デバイス用基板の製造を完了する。露光に際しては、露光機にフォトマスク100を載置する際に、フォトマスク基板端辺を位置決め基準、または精緻な位置決め前の仮決め基準とすることができる。
【0056】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す効果のうち1つ又は複数の効果を奏する。
【0057】
(a)本実施形態によれば、マザー基板110m上における遮光パターン151aの位置を実際に測定することなく、また、遮光パターン151aの外縁からの距離が所定の距離となる複数の点を実際に測定することなく、一対のアライメントマーク151b間を結ぶ
ことのみによりライン180(目標とする切断ライン)を容易に決定できる。すなわち、切断後の基板110の端辺と遮光パターン151aの外縁との位置関係を容易に制御できる。
【0058】
(b)本実施形態によれば、遮光パターン151aの形成予定領域と一対のアライメントマーク151bの形成予定領域とは同時に描画されており、遮光パターン151aと一対のアライメントマーク151bとの相対的な位置関係は、描画データにより正確に制御されている。そのため、一対のアライメントマーク151b間を結ぶことにより、ライン180(目標とする切断ライン)を正確に決定できる。すなわち、断後の基板110の端辺と遮光パターン151aの外縁との位置関係を正確に制御できる。したがって、フォトマスクを用いるときに、露光機に対する位置決めが容易である。基板の端辺を位置決めすれば、遮光パターンが位置決めされたこととなる。
【0059】
(c)本実施形態によれば、切断後の基板110上における遮光パターン151aの位置を直接に測定することなく、ズレ量やローテーション量を容易に把握できる。すなわち、基板110に残留した一対のアライメントマーク151bを観察することで、ライン180(目標とする切断ライン)と分割後の基板110の端辺(実際の分割ライン)との間の距離(ズレ)や、分割後の基板110の端辺と遮光パターン151aの外縁との間の侠角θ(μrad)を容易に把握できる。すなわち、基板110の切断精度を容易に検査することが可能となる。フォトマスクを用いて露光する段階で、把握したズレや侠角を用いて、フォトマスクの位置や姿勢を調整してもよい。
【0060】
(d)本実施形態によれば、遮光パターン151aの形成予定領域と一対のアライメントマーク151bの形成予定領域とは同時に描画されており、遮光パターン151aと一対のアライメントマーク151bとの相対的な位置関係は、正確に制御されている。そのため、ズレ量やローテーション量を正確に把握できる。すなわち、基板110に残留した一対のアライメントマーク151bを観察することで、ライン180(目標とする切断ライン)と分割後の基板110の端辺(実際の分割ライン)との間の距離(ズレ)や、分割後の基板110の端辺と遮光パターン151aの外縁との間の侠角θ(μrad)を正確に把握できる。すなわち、基板110の切断精度を正確に検査することが可能となる。
【0061】
<本発明の他の実施形態>
本発明はフォトマスク以外の光学素子においても有効である。特に遮光パターンに含まれるパターン形状が、最終的な光学素子の端辺と並行でなく垂直でないラインを含む場合に本発明が有利である。光学素子の製造過程で、描画の際には、該ラインをマザー基板の端辺と垂直、または平行に配置して描画し、最終工程でマザー基板を、所望形状に切断することが可能である。このような場合に、本発明は極めて有利である。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォトマスクの平面図である。
【図2】(a)は図1の符号Aの領域に形成されたアライメントマークの平面拡大図であり、(b)は図1の符号Bの領域に形成されたアライメントマークの平面拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフォトマスクの製造に用いられる切断前のマザー基板の平面図である。
【図4】(a)は図3の符号Aの領域に形成されたアライメントマークの平面拡大図であり、(b)は図4の符号Bの領域に形成されたアライメントマークの平面拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るマザー基板の主面上に遮光パターン及びアライメントマークが形成される様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
100 フォトマスク
100b マスクブランク
110 基板
110a 基板の主面
151 遮光膜
151a 遮光パターン
151b アライメントマーク
152 レジスト膜
152p レジストパターン
180 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされることによる所定の遮光パターンを備えたフォトマスクであって、
前記基板の主面上であって前記遮光パターン領域外に、前記遮光パターンと同時に形成されたアライメントマークであって、前記遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を、認識可能に示す部分を含むアライメントマークが形成されている
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記基板の端辺は、前記アライメントマークにおける、前記複数の位置を結ぶラインに沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記アライメントマークは、前記遮光パターン領域の外縁からの距離をそれぞれ段階的に示す複数のマーク部分を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされてなる遮光パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、
前記基板の主面上に前記遮光膜とレジスト膜とが順次積層されたマスクブランクを準備する工程と、
前記レジスト膜に前記遮光パターンを描画露光するとともに、遮光パターンの領域外に、前記遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を認識可能に示すアライメントマークのパターンを描画露光し、前記遮光パターンと前記アライメントマークに対応するレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングし、前記基板の主面上に前記遮光パターンおよびアライメントマークを形成する工程と、
前記アライメントマークが示す前記複数の位置を参照して前記基板を切断する工程と、を有する
ことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記切断は、前記アライメントマークが示す前記複数の位置を結んだラインに沿って行われる
ことを特徴とする請求項4に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記アライメントマークは、前記遮光パターン領域の外縁からの距離をそれぞれ段階的に示す複数のマーク部分を含む
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
前記アライメントマークは、前記遮光パターン領域の外縁に沿って少なくとも一対形成される
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
前記一対のアライメントマークのそれぞれの所定部分を結んだラインと前記切断後の基板の端辺との相対距離又は侠角を測定して、前記基板の切断精度を検査する工程を有することを特徴とする請求項7に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトマスク、又は請求項4乃至8のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法により製造されたフォトマスクを介して、露光光源からの光を表示デバイス用基板上に形成されたレジスト膜に照射し、前記レジスト膜に前記遮光パ
ターンを転写する
ことを特徴とするパターン転写方法。
【請求項10】
透光性を有する基板の主面上に形成された遮光膜がパターニングされることによる所定の遮光パターンを備えた光学素子であって、
前記基板の主面上であって前記遮光パターン領域外に、前記遮光パターンと同時に形成されたアライメントマークであって、前記遮光パターン領域の外縁から等しい距離にある複数の位置を、認識可能に示す部分を含むアライメントマークが形成されている
ことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−75727(P2011−75727A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225565(P2009−225565)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】