説明

フォトマスク製造方法

【課題】フォトマスクの設計・製造コストを低減する。
【解決手段】フォトマスク製造設計装置が表示手段と処理指令入力手段と、前記処理指令入力手段が制御する、改善マスクパターン作成手段と、ウェハ転写シミュレーション手段と、ウェハ転写形状差異判定手段と、EB描画図形数判定手段を有し、前記ウェハ転写形状差異判定手段が、ウェハ転写シミュレーションの結果のパターンとターゲットパターンとの差異をあらわす、ターゲットパターンの幅の最小寸法データ(CD)と、ターゲットとするパターン間のスペースの最小寸法データ(Space)と、CDの光強度の傾きデータ(CD_NILS)と、Spaceの光強度の傾きデータ(Space_NILS)と、焦点深度データ(DOF)と、マスク誤差拡大率データ(MEEF)とから成るパターン形状差異データを作成し前記表示手段に表示することによりフォトマスクを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスク製造コストを低減するために、レイアウト設計装置から送信された初期マスク設計データに対して、フォトマスク製造設計装置が、光近接効果を組み込んだウェハ転写シミュレーションにより、フォトマスクの設計・製造コストが考慮され、コストが低減された改善マスクパターンをレイアウト設計装置に返信するフォトマスク製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの電子回路の設計製造プロセスは、大きく分けて2つの段階、例えばレイアウト前設計段階とレイアウト後設計段階とに分けることができる。半導体デバイスのレイアウト前設計段階では、レイアウト設計装置が、回路デザインを物理的レイアウトデータへと変換する。ここで作られる物理的レイアウトデータは、電子回路の設計に使用される、電子回路上の回路素子の物理的な位置の詳細を含む初期マスク設計データである。その後、レイアウト後設計段階では、この初期マスク設計データを電子回路の製造に使用される幾何学的レイアウトデザインデータへと変換する。この幾何学的レイアウトデザインデータは多数のデータフォーマットファイルに作成保存される。
【0003】
レイアウト後設計段階では、大きな幾何学的レイアウトデザインデータが処理される。特に、レイアウト設計装置から初期マスク設計データを受信したフォトマスク製造設計装置が、レイアウト後EDAアプリケーションを用いて、幾何学的レイアウトデザインデータを処理する。フォトマスク製造設計装置は、幾何学的レイアウトデザインデータを処理するために、複数のコンポーネントを含むレイアウト後EDAアプリケーションを用いる。フォトマスク製造設計装置は、データフォーマットファイルとターゲットアプリケーション利用に基づいて、レイアウト後EDAアプリケーションの各コンポーネントごとに新しいコードを書くことより、カスタム設計することができる。すなわち、フォトマスク製造設計装置は、既存のレイアウト後EDAアプリケーションの1以上のコンポーネントを使用して開発することができる。これにより、安定度およびパフォーマンスを改善したフォトマスク製造設計装置の開発が可能となる。
【0004】
フォトマスク製造設計装置が用いるアプリケーションのうちで、OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)とSRAF(Sub−Resolution Assist Feature:準解像力補助形状)が形成するマスク描画図形が複雑であり、それにより、マスクの描画時間・検査時間を増大させ、欠陥による洗浄・修正工程の増大といったマスク製造負荷に大きな影響を及ぼし、マスクの製造にかかわるコストを増大させる問題がある。OPCとSRACが必要とされる背景は、以下の事情による。すなわち、近年のLSl微細化に伴い、設計通りにウェハ上にパターンが転写できなくなる現象、即ち光近接効果(Optical Proximity
Effects:OPE)が顕在化してきており、補正を加えたマスクパターンを用いることで転写後形状を所望の設計パターン通りに仕上げる技術であるOPC(光近接効果補正)が必要となってきている。OPCにより、より微細なパターンまでウェハ上に設計通り忠実に仕上げられるようになってきている。しかし、逆にウェハ上での所望パターン形状(ターゲットパターン)に対し、実際にマスクパターンとして必要な形伏は大きく異なって来ている。
【0005】
そのため、そのOPCとSRACが導出するマスクパターンを描画する、マスクの設計・製造のコストが増加する問題がある。それを改善するため、特許文献1等で、マスク製造難易度を製造前に把握し、レイアウト設計装置へマスク製造難易度に関する情報を提供することでレイアウト設計装置が難易度の低いレイアウトに修正して製造負荷を低減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−86639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、マスクの製造難易度を指数に置き換えてレイアウト設計装置へこの指数のデータを提供するだけであり、難易度が低減されたパターンのデータの作成はレイアウト設計装置が行うため、パターンのデータの作成に多大な時間を要し、大きな設計コストが必要である問題があった。そのため、本発明の課題は、OPCとSRAFによるマスクの設計・製造にかかわるコストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、レイアウト設計装置から通信ネットワークを介して初期マスク設計データを受信し、描画データを作成し通信ネットワークを介してフォトマスク描画装置に送信するフォトマスク製造設計装置を備え、前記フォトマスク製造設計装置が表示手段と処理指令入力手段と、前記処理指令入力手段が制御する、改善マスクパターン作成手段と、ウェハ転写シミュレーション手段と、ウェハ転写形状差異判定手段と、EB描画図形数判定手段を有し、前記ウェハ転写形状差異判定手段が、ウェハ転写シミュレーションの結果のパターンとターゲットパターンとの差異をあらわす、ターゲットパターンの幅の最小寸法データ(CD)と、ターゲットとするパターン間のスペースの最小寸法データ(Space)と、CDの光強度の傾きデータ(CD_NILS)と、Spaceの光強度の傾きデータ(Space_NILS)と、焦点深度データ(DOF)と、マスク誤差拡大率データ(MEEF)とから成るパターン形状差異データを作成し前記表示手段に表示することを特徴とするフォトマスク製造方法である。
【0009】
また、本発明は、前記フォトマスク製造設計装置が、前記レイアウト設計装置および前記フォトマスク製造設計装置の間で取り扱うデータ形式は、GDSフォーマット、OASISフォーマット、MEBESフォーマット、JEOLフォーマット、VSBフォーマット、からなる群から選ばれたいずれかのデータ形式であることを特徴とする上記のフォトマスク製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、フォトマスク製造設計装置が、マスクのパターンを露光する際に光近接効果によりウェハ上に変形して形成される露光パターンをウェハ転写シミュレーションによって算出し、その露光パターンで形成されるレジストパターンとターゲットパターンとの誤差を少なく維持しつつ、マスクの描画図形数が少ない改善された描画データを作成し、その描画データにより得られる改善マスクパターンを算出する。その改善マスクパターンをレイアウト設計装置へ返信することで、フォトマスク製造設計装置が、マスクの製造にかかる工数を低減できコスト低減が図れる効果がある。また、レイアウト設計装置のパターン設計工数も低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフォトマスク製造設計装置のブロック図である。
【図2】本発明のフォトマスク製造設計装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明のフォトマスク製造設計装置の表示手段が表示する処理指令画面を示す図である。
【図4】本発明のフォトマスク製造設計装置の表示手段が表示するパターン形状差異データを示す図である。
【図5】本発明のフォトマスク製造設計装置の表示手段が表示するEB描画図形数データを示す図である。
【図6】本発明により、描画パターンのパターン段差部のY座標を同じにして描画図形数を削減する例のパターンを示す図である。
【図7】本発明により、描画パターンの斜めパターンを矩形パターンに変更し描画時間を低減する例のパターンを示す図である。
【図8】本発明により、描画パターンの微小な間隙を広げることで製造欠陥発生可能性を低減する例のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図1から図8を参照して説明する。図1は、本発明のフォトマスク製造設計装置10のブロック図を示す。本発明のフォトマスク製造設計装置10は、レイアウト設計装置1から通信ネットワーク2を経由して初期マスク設計データを受信し、また、改善マスクパターンデータをレイアウト設計装置1に返信する。そして、通信ネットワーク2を介してフォトマスク描画装置3にマスクパターンの描画データを送信し、フォトマスク描画装置3にフォトマスクを製造させる。本発明のフォトマスク製造設計装置10は、記憶手段11と、表示手段50と処理指令入力手段15と、その処理指令入力手段15が制御する、OPC補正時間判定手段12とパターン検査時間判定手段13と製造欠陥可能性判定手段14と、改善マスクパターン作成手段20とウェハ転写シミュレーション手段30と、ウェハ転写形状差異判定手段41と、EB描画図形数判定手段42とから成る。そのうち、改善マスクパターン作成手段20は、段差検出手段21と補正テーブル23を用いて描画パターンの補正量を計算する補正量算出手段22と描画データ修正手段24から成る。
【0013】
以下で、本発明の実施形態の、フォトマスク製造設計装置10の動作を、図1のブロック図と、図2のフローチャートと、図3の処理指令画面と、図4のパターン形状差異データの表示画面と、図5のEB描画図形数データの表示画面を示す図を用いて説明する。
(ステップS1)初期マスク設計データ受信工程
まず、レイアウト設計装置1が、OPCやSRAFのアプリケーションを用いるウェハ転写シミュレーションを行い、初期マスク設計データを作成し、そのデータを通信ネットワーク2を介してフォトマスク製造設計装置10へ送信する。そして、フォトマスク製造設計装置10は、受信した初期マスク設計データを記憶手段11に記憶する。
【0014】
レイアウト設計装置1とフォトマスク製造設計装置10との間で取り扱う初期マスク設計データのデータ形式は、GDSII(登録商標)(Graphic Data System-II)データフォーマットファイル、OASIS(Open Artwork System Interchange Standard)フォーマット、OASIS−VSB(登録商標)フォーマット、MEBES(登録商標)フォーマット、JEOL(登録商標)フォーマット、VSB−11/12(登録商標)フォーマット、からなる群から選ばれたいずれかのデータ形式を用いることができる。
【0015】
(ステップS2)OPC補正時間判定工程
フォトマスク製造設計装置10は、OPC補正時間判定手段12が、レイアウト設計装置1から受信した初期マスク設計データ(初期マスクパターン)に対して、ウェハ上に形成するターゲットパターンに対してラフな補正を行い、ある程度補正形状を追い込んだラフ形状マスクパターンデータを作成する。そして、そのラフ形状マスクパターンデータと初期マスク設計データ(初期マスクパターン)とのマスクパターンの差を判定する。その結果、そのマスクパターンの差が大きい場合は、OPCで高精度な補正を行うために多大な時間がかかると判定し、判定結果を記録した検証結果記録データを記憶手段11に記憶
させる。
【0016】
(処理指令入力手段)
そして、フォトマスク製造設計装置10の処理指令入力手段15が、表示手段50を動作させてディスプレイに図3の様な画面の処理指令画面を表示し、図3のように画面に表示されたソフトウェアスイッチを操作者に、マウス操作あるいはキーボード操作で選択させることで、選択されたフトウェアスイッチに応じた動作指令データを作成する。そして、その動作指令データに応じてフォトマスク製造設計装置10に所定の動作を行わせる。図3の画面で選択するスイッチは、改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51と、ウェハ転写シミュレーション処理指令スイッチ52と、EB図形数計算処理指令スイッチ53と、改善マスクパターンデータ返信処理指令スイッチ54と、マスク製造処理指令スイッチ55を用いる。
【0017】
初期マスク設計データに問題がある場合に操作者が処理指令入力手段15により改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51を選択すると、処理指令入力手段15が改善マスクパターン作成処理指令データを作成し、フォトマスク製造設計装置10の動作を、改善マスクパターン作成工程(ステップS5)へ進ませる。初期マスク設計データに問題箇所が無い場合は、次のステップS3へ進む。ここで、OPCで高精度な補正を行う場合は厳密な形状予測モデルを使用するため処理時間が増大してしまうが、OPC補正時間判定手段12はラフな補正のみを行うので、短時間で処理を終えることができる。
【0018】
(ステップS3)パターン検査時間判定工程
次に、パターン検査時間判定手段13が、初期マスクパターンの形状から、その検査時間に非常に負荷がかかるか否かを検証処理する。非常に負荷がかかる場合は、判定結果を記録した検証結果記録データを記憶手段11に記憶させる。そして、処理指令入力手段15が操作者に改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51を選択させることで、改善マスクパターン作成処理指令データを作成し改善マスクパターン作成工程(ステップS5)へ進む。初期マスク設計データに問題箇所が無い場合は、次のステップS4へ進む。
(ステップS4)
次に、製造欠陥発生可能性判定手段14が、初期マスクパターンの形状に対して、製造欠陥の発生可能性を検証する。製造欠陥の発生可能性がある場合は、判定結果を記録した検証結果記録データを記憶手段11に記憶させる。そして、処理指令入力手段15が、操作者に改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51を選択させることで、改善マスクパターン作成処理指令データを作成し改善マスクパターン作成工程(ステップS5)へ進む。初期マスク設計データに問題箇所が無い場合は、処理指令入力手段15が操作者にマスク製造処理処理指令スイッチ55を選択させることで、マスク製造処理指令データを作成しマスク製造工程(ステップS10)へ進む。
【0019】
(ステップS5)改善マスクパターン作成工程
処理指令入力手段15が、図3の処理指令画面において操作者にマウス操作により改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51を選択させることで、改善マスクパターン作成処理指令データを作成し、改善マスクパターン作成手段20を動作させる。それにより、ステップS5に移行して、改善マスクパターン作成手段20が、マスク製造工程の負荷を低減するようにパターンを改善する処理を行い、改善マスクパターンデータを作成する。改善マスクパターン作成手段20は、段差検出手段21が、初期マスク設計データからマスクパターンの段差を抽出し、補正量算出手段22が、補正テーブル23のデータに従って、初期マスクパターンの段差を補正する、初期マスク設計データのパラメータの補正量を算出する。そして、描画データ修正手段24が、その補正量で初期マスク設計データを補正し改善マスクパターンデータを作成する。
【0020】
(ステップS6)ウェハ転写シミュレーション工程
次に、処理指令入力手段15が、図3の処理指令画面において操作者にマウス操作によりウェハ転写シミュレーション処理指令スイッチ52を選択させることで、ウェハ転写シミュレーション処理指令データを作成し、それにより、ウェハ転写シミュレーション手段30を動作させて、改善マスクパターンデータに対しウェハ転写シミュレーション処理を実施させる。
(ステップS7)ウェハ転写形状差異判定工程
次に、ウェハ転写形状差異判定手段41が、操作者にウェハ転写シミュレーションの結果のパターンとターゲットパターンとの形状の差異の大きさを判定させるために、パターン形状差異データを計算し、表示手段50のディスプレイに図4(a)の様な画面によりパターン形状差異データを表示する。
【0021】
(パターン形状差異データ)
パターン形状差異データは、図4(a)に示すデータ群から成る。すなわち、パターン形状差異データは、CD(Critical Dimension)と、Spaceと、CD_NILSと、Space_NILSと、DOF(Depth of Focus:焦点深度)と、MEEF(Mask Error Enhancement Factor:マスク誤差拡大率)と、Intensityとから構成する。各データ欄において、CDは、ウェハ上でターゲットとするパターンの幅の最小寸法である。Spaceは、ウェハ上でターゲットとするパターン間のスペースの最小寸法である。CD_NILSは、シミュレーション結果から得られたCDの光強度の傾きである。NILS(Normalize Image Log Slope)は、規格化像強度対数勾配である。Space_NILSは、シミュレーション結果から得られたSpaceの光強度の傾きである。DOF(焦点深度)は、フォーカスマージンであり、シミュレーション結果から得られたCDとSpaceが、指定の範囲に収まる焦点の位置の許容範囲の値のデータである。MEEF(マスク誤差拡大率)は、マスク誤差によって生じるウェハ上のパターンのCDの変化の、そのマスク誤差の大きさに対する比率を表す値のデータである。Intensityは、CDとSpaceの値を求めた時のしきい値をあらわすデータである。
【0022】
ウェハ転写形状差異判定手段41は、パターン形状差異データを計算し、そのデータを表示手段50のディスプレイに図4(a)の様な画面で表示することで、フォトマスク製造設計装置10の操作者にデータを確認させる。パターン形状差異データの値の例を図4(b)に示す。図4(b)は、初期マスク設計データについてのパターン形状差異データの値と、1つの改善マスクパターン1についてのパターン形状差異データの値と、次の改善マスクパターン2についてのパターン形状差異データの値を示す。そして、処理指令入力手段15が、操作者に形状の差異の多少を判定させ、操作者に、図3の処理指令画面で次のステップとしてどの処理を行うかを選択させて動作指令データを作成する。操作者が形状の差異が少ないと判定した場合は、処理指令入力手段15が操作者にEB図形数計算処理指令スイッチ53を選択させ、それによりEB図形数計算処理指令データを作成し、EB図形数判定処理(ステップS8)に進む。操作者が形状の差異が大きいと判定した場合は、処理指令入力手段15が操作者に改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51を選択させ、それにより改善マスクパターン作成処理指令データを作成し改善マスクパターン作成手段20を動作させて再度改善マスクパターン作成工程(ステップS5)へ進む。
【0023】
(ステップS8)EB描画図形数判定工程
EB図形数判定処理(ステップS8)に進んだ場合は、EB描画図形数判定手段42が、ステップS7の工程において問題ないと評価された改善マスクパターンと、初期マスクパターンに対しそれぞれEBデータ変換処理を施す。それにより得られたEB描画数を計算しEB描画数データ56を作成する。また、EB描画数(描画図形種別)×種類毎の時間を計算することで描画時間データ57を計算する。そして、それらのデータをEB描画図形数データとして、図5(a)のように表示手段50に表示する。操作者が、表示されたEB描画図形数データを判定し、それによる改善マスクパターンのEB描画図形数の方が、初期マスクパターンよりも少ないか、さらにEB描画図形数を低減したパターンに変更可能かを検証し、それにより、図3の処理指令画面により、次に行うステップを選択する。検証の結果、操作者が改善が必要と判断した場合は、処理指令入力手段15が操作者に改善マスクパターン作成処理指令スイッチ51を選択させることで、改善マスクパターン作成処理指令データを作成し、改善マスクパターン作成手段20を動作させて再度改善マスクパターン作成工程(ステップS5)へ進む。問題ない場合は、処理指令入力手段15が操作者に改善マスクパターンデータ返信処理指令スイッチ54を選択させることで、改善マスクパターンデータ返信処理指令データを作成し、改善マスクパターンデータをレイアウト設計装置1に返信する工程(ステップS9)へ進む。
【0024】
(ステップS9)改善マスクパターンデータ返信工程
処理指令入力手段15により改善マスクパターンデータ返信処理指令データが作成された場合は、ステップS2からS4の判定処理により改善する必要がないと判断されたパターンと、ステップS5〜ステップS8の工程を経てできた改善パターンのデータを、通信ネットワーク2を介してレイアウト設計装置1へ返信しレイアウト設計装置1側での設計パターンの改善を促す。
【0025】
(ステップS10)マスク製造工程
レイアウト設計装置1側では、返信された改善マスクパターンの採否を判定し、判定結果データを作成し、その判定結果データを通信ネットワーク2を介してフォトマスク製造設計装置10に送信する。フォトマスク製造設計装置10は、処理指令入力手段15が、操作者にマスク製造処理指令スイッチ55を選択させることで、マスク製造処理指令データを作成する。マスク製造処理指令データが作成された場合は、フォトマスク製造設計装置10は、記憶手段11からレイアウト設計装置1に採用判定された改善マスクパターンデータと、改善を採用されなかった初期マスク設計データとの描画データを読み出して、通信ネットワーク2を介してフォトマスク描画装置3に送信する。フォトマスク描画装置3は、それぞれのマスクパターンの描画データを用いてマスクを描画してマスクを製造する。
【実施例】
【0026】
(改善マスクパターン作成工程(ステップS5))
改善マスクパターン作成工程(ステップS5)では、改善マスクパターン作成手段20が、段差検出手段21により、図6(a)に示す初期マスクパターン(初期マスク設計データ)から段差部103aと103bを抽出する。改善前の図6(a)に示す初期マスク設計データでは、その初期マスクパターンが、パターン左側エッジ101の長さとパターン右側エッジ102の長さが異なることにより、発生する2つのパターン段差部103aと103bのY座標値が異なり、その結果、パターン段差部103aに接続するY座標パターン分割線108aとパターン段差部103bに接続するY座標パターン分割線108bは平行な2本のY座標パターン分割線になり、そのY座標パターン分割線で分割される描画図形数は3個になる部分を有する。この初期マスク設計データに対して、補正量算出手段22が補正テーブル23のデータに従って、段差の補正量を算出し、描画データ修正手段24が、その補正量で初期マスク設計データを修正し、図6(b)のパターン段差部106aと106bを有する改善マスクパターンデータを作成する。図6(b)に示すように、2つのパターン段差部106aと106bとのY座標を同じ値に揃えた改善マスクパターンのデータを作成する。これにより、改善マスクパターンでは、パターン左側エッジ104の長さとパターン右側エッジ105の長さが同じになり、2つのパターン段差部106aと106bとが共通のY座標パターン分割線108cに接続され、このY座標パターン分割線108cで分割される描画図形数は2つになり、描画図形数が1つ低減される。これにより、初期マスク設計データの描画図形数を削減し描画時間を低減する。
【0027】
描画機の種類にもよるが基本的にEB系の描画機では斜め図形を描画する場合、描画時間が増加する傾向にある。補正量算出手段22は、初期マスク設計データから図7(a)の斜め図形パターン107のデータを抽出し、補正テーブル23のデータに従って図7(b)の矩形を形成するY座標パターン分割線108cのデータのパラメータを作成し、描画データ修正手段24が、そのパラメータを用いて、初期マスク設計データが含む斜め図形パターン107のデータを、図7(b)の矩形の集合から成る描画データに置き換えた改善マスクパターンデータを作成する。これにより、斜め図形パターン107を無くし、描画時間を低減する。
【0028】
図8は(a)は、四角形パターンにOPC処理を施した時に発生するパターン例である。図8(a)のようにパターンの角に、小さな四角形の角部小図形付加パターン109が付加された初期マスク設計データに対して、補正量検出手段22が、角部小図形付加パターン109の付加パターン接続部幅110を算出し、補正テーブル23のデータに従って付加パターン接続部幅110の修正値を作成し、描画データ修正手段24が、それに従って、図8(b)のように、付加パターン接続部幅110を広げた改善マスクパターンデータを作成する。これにより、付加パターン接続部幅110が狭いと描画したフォトマスクのパターンの検査時に欠陥が有ると判定され検査の妨げになる可能性があった問題を改善することができる効果がある。
【符号の説明】
【0029】
1・・・レイアウト設計装置
2・・・通信ネットワーク
3・・・フォトマスク描画装置
10・・・フォトマスク製造設計装置
11・・・記憶手段
12・・・OPC補正時間判定手段
13・・・パターン検査時間判定手段
14・・・製造欠陥発生可能性判定手段
15・・・処理指令入力手段
20・・・改善マスクパターン作成手段
21・・・段差検出手段
22・・・補正量算出手段
23・・・補正テーブル
24・・・描画データ修正手段
30・・・ウェハ転写シミュレーション手段
41・・・ウェハ転写形状差異判定手段
42・・・EB描画図形数判定手段
50・・・表示手段
51・・・改善マスクパターン作成処理指令スイッチ
52・・・ウェハ転写シミュレーション処理指令スイッチ
53・・・EB図形数計算処理指令スイッチ
54・・・改善マスクパターンデータ返信処理指令スイッチ
55・・・マスク製造処理処理指令スイッチ
56・・・EB描画数データ
57・・・描画時間データ
101、104・・・パターン左側エッジ
102、105・・・パターン右側エッジ
103a、103b、106a、106b・・・パターン段差部
107・・・斜め図形パターン
108a、108b、108c・・・Y座標パターン分割線
109・・・角部小図形付加パターン
110・・・付加パターン接続部幅
CD・・・ターゲットとするパターンの幅の最小寸法データ
Space・・・ターゲットとするパターン間のスペースの最小寸法データ
CD_NILS・・・CDの光強度の傾きデータ
Space_NILS・・・Spaceの光強度の傾きデータ
DOF・・・焦点深度データ
MEEF・・・マスク誤差拡大率データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイアウト設計装置から通信ネットワークを介して初期マスク設計データを受信し、描画データを作成し通信ネットワークを介してフォトマスク描画装置に送信するフォトマスク製造設計装置を備え、前記フォトマスク製造設計装置が表示手段と処理指令入力手段と、前記処理指令入力手段が制御する、改善マスクパターン作成手段と、ウェハ転写シミュレーション手段と、ウェハ転写形状差異判定手段と、EB描画図形数判定手段を有し、前記ウェハ転写形状差異判定手段が、ウェハ転写シミュレーションの結果のパターンとターゲットパターンとの差異をあらわす、ターゲットパターンの幅の最小寸法データ(CD)と、ターゲットとするパターン間のスペースの最小寸法データ(Space)と、CDの光強度の傾きデータ(CD_NILS)と、Spaceの光強度の傾きデータ(Space_NILS)と、焦点深度データ(DOF)と、マスク誤差拡大率データ(MEEF)とから成るパターン形状差異データを作成し前記表示手段に表示することを特徴とするフォトマスク製造方法。
【請求項2】
前記レイアウト設計装置および前記フォトマスク製造設計装置の間で取り扱うデータ形式は、GDSフォーマット、OASISフォーマット、MEBESフォーマット、JEOLフォーマット、VSBフォーマット、からなる群から選ばれたいずれかのデータ形式であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−197520(P2011−197520A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65890(P2010−65890)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】