説明

フォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法

【課題】本発明は、複数のラインパターンを短時間で形成することができるフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法は、所定の中心軸2Aから等距離に配置される複数の設置面22を有する支持部材2の各設置面22に、フォトレジスト層62を有する複数の基板61を固定する設置工程と、フォトレジスト層62に対してレーザ光を出射するヘッド3および支持部材2の少なくとも一方を中心軸2A回りに回転させるとともに、ヘッド3および支持部材2の少なくとも一方を中心軸2Aに沿うように移動させながら、ヘッド3からレーザ光を出射する露光工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の露光によりパターンが形成されるフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナノ〜サブミクロンオーダの凹凸パターンを形成する方法として、基板上に形成したフォトレジスト層に対して、EB(電子ビーム)描画やマスク露光などを行った後、現像することでフォトレジスト層に微細な穴部を形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−217390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、EB描画やマスク露光などは、極めて高価な設備が必要であり、生産性も低いといった問題があった。
【0005】
この問題に対し、本願発明者は、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層(レーザ光の照射だけで穴部が形成されるフォトレジスト層)に対して、レーザ光を所定パターンで走査することで、ナノ〜サブミクロンオーダの凹凸パターンを形成する方法を案出している。この方法は、設備を簡易化することができるとともに、現像工程が不要となるため生産性も高いといったメリットを有している。
【0006】
しかし、この方法でフォトレジスト層を有する基板に対して直線状のラインパターンを複数平行に形成する場合には、X−Yテーブルにて、レーザ光で1本のラインパターンを形成した後、パターンの幅だけずらしてから、再びレーザ光で新たなラインパターンを形成するといった動作を繰り返す必要があるため、加工時間が長くなるといった問題があった。具体的には、例えば20mm角の基板上に形成したフォトレジスト層に、0.5μmピッチでラインパターンを形成する場合には、4万本のラインパターンを形成する必要があるので、レーザ光が1本のラインパターンを形成して次のラインパターンの形成開始位置まで移動するまでの1サイクルにかかる時間を0.4秒としても、加工時間は約5時間になるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、複数のラインパターンを短時間で形成することができるフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法は、所定の中心軸から等距離に配置される複数の設置面を有する支持部材の各設置面に、フォトレジスト層を有する複数の基板を固定する設置工程と、前記フォトレジスト層に対してレーザ光を出射するヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記中心軸回りに回転させるとともに、前記ヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記中心軸に沿うように移動させながら、前記ヘッドからレーザ光を出射する露光工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、支持部材の各設置面に基板を固定させた後、例えば支持部材を中心軸回りに回転させるとともに、ヘッドを中心軸に沿って移動させながら、ヘッドからレーザ光を出射する。これにより、レーザ光が支持部材の中心軸を中心とした螺旋状に走査されることとなり、複数の基板のフォトレジスト層に複数のラインパターンが平行に形成される。したがって、ラインパターンを1本形成するごとにX−Yテーブルの停止・移動を繰り返すことでレーザ光を断続的に走査する方法に比べ、レーザ光を連続して走査することができるので、加工時間を短時間にすることができる。
【0010】
また、本発明に係るフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法では、前記露光工程において、前記フォトレジスト層に対するレーザ光の焦点位置が一定範囲に収まるように、レーザ光の焦点を前記フォトレジスト層に対して近付く方向および離れる方向に往復動させるのが望ましい。
【0011】
これによれば、レーザ光の焦点をフォトレジスト層に対して近付く方向および離れる方向に往復動させることで、フォトレジスト層に対するレーザ光の焦点位置が一定範囲に収まるので、フォトレジスト層上のレーザ光のスポット径を略一定にすることができ、フォトレジスト層に精度良く穴部を形成することができる。
【0012】
また、本発明に係るフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法では、前記フォトレジスト層が、ヒートモードの形状変化が可能な材料で形成されているのが望ましい。
【0013】
これによれば、フォトレジスト層にレーザ光を照射するだけで、レーザ光のスポット径よりも小さな穴部がフォトレジスト層に形成されるので、ナノ〜サブミクロンオーダの微細な穴部をフォトレジスト層に迅速に形成することができる。
【0014】
また、本発明に係るフォトレジスト層の加工方法およびパターン形成基板の製造方法では、前記支持部材を筒状に形成するとともに、前記設置面を支持部材の内面に配置するのが望ましい。
【0015】
これによれば、支持部材を中心軸回りに回転させる場合に、各基板に外方に向かう遠心力が加わっても、各基板が支持部材で押さえられ、遠心力で外方に飛ばされることが防止される。さらには、遠心力によって各基板が支持部材に向けて押圧されるので、各基板と支持部材とを強固に固定することができる。
【0016】
また、本発明に係るパターン形成基板の製造方法では、前記露光工程の後、前記基板の表面と前記フォトレジスト層の表面とに金属材料を成膜させてからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0017】
これによれば、金属によって、基板の表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【0018】
また、本発明に係るパターン形成基板の製造方法では、前記露光工程の後、前記基板をメッキ槽に入れて、露出した前記基板の表面にメッキ膜を成長させてからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面にメッキ材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0019】
これによれば、メッキ材料によって、基板の表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【0020】
また、本発明に係るパターン形成基板の製造方法では、前記露光工程の後、前記基板の表面に残ったフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行ってからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面にエッチングによる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0021】
これによれば、エッチングにより、基板の表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【0022】
また、本発明に係るパターン形成基板の製造方法では、前記露光工程の後、前記基板の表面と前記フォトレジスト層の表面とに連続して金属材料を成膜することで、前記基板の表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0023】
これによれば、フォトレジスト層を残した状態の基板の表面全体に金属材料を成膜させるだけで、基板の表面に金属材料からなる凹凸パターンを良好に形成することができる。また、この方法では、金属材料の成膜後にフォトレジスト層を除去する必要がないので、フォトレジスト層を除去するための設備等が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0024】
また、本発明に係るパターン形成基板の製造方法では、前記フォトレジスト層と前記基板との間に金属材料で形成される金属層を設け、前記露光工程の後、前記基板をメッキ槽に入れて、露出した前記金属層の表面にメッキ膜を成長させてからフォトレジスト層を除去することで、前記金属層の表面にメッキ材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0025】
これによれば、金属層を電極としてメッキを行うことができるので、比較的早くメッキ材料からなる凹凸パターンを形成することができる。
【0026】
また、本発明に係るパターン形成基板の製造方法では、前記フォトレジスト層と前記基板との間に金属材料で形成される金属層を設け、前記露光工程の後、前記金属層の表面に残ったフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行ってからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面に前記金属層からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0027】
これによれば、金属によって、基板の表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、レーザ光が支持部材の中心軸を中心とした螺旋状に走査されるので、中心軸から等距離に配置される各基板のフォトレジスト層に対して複数のラインパターンを短時間で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、フォトレジスト層加工装置1は、本発明に係るフォトレジスト層の加工方法を実行するための装置であり、主に、支持部材2、ヘッド3、振動装置4および制御装置5を備えて構成されている。
【0030】
支持部材2は、円柱状に形成されており、その外周面には、図1(b)に示すように、支持部材2の周方向および軸方向に一定間隔で並ぶ複数の凹部21が形成されている。これらの凹部21の底面は、支持部材2の中心軸2Aから等距離となる位置に形成されることで、ワーク6を設置するための設置面22となっている。そして、支持部材2は、制御装置5で適宜制御されることによって、中心軸2Aを中心として所定の回転速度で回転するようになっている。
【0031】
ワーク6は、図1(c)に示すように、矩形の基板61と、基板61上にスピンコート等の方法で均一な薄い膜厚で形成されるフォトレジスト層62とを備えて構成されている。ここで、本実施形態に係るフォトレジスト層62は、強い光の照射により光が熱に変換されてこの熱により材料が形状変化して穴部を形成することが可能な層であり、いわゆるヒートモード型のフォトレジスト材料の層である。なお、フォトレジスト層62の具体例については、後で詳述することとする。そして、ワーク6は、複数用意されて、支持部材2の各設置面22に接着剤やエア吸引等によって固定される。
【0032】
ヘッド3は、支持部材2に固定された各ワーク6のフォトレジスト層62に対してレーザ光を照射する装置である。そして、このヘッド3は、振動装置4に支持されるとともに、支持部材2の中心軸2Aに沿って振動装置4と一体に移動可能に構成されている。
【0033】
振動装置4は、ヘッド3とワーク6との間隔(ギャップ)が一定範囲に収まるように、ヘッド3をワーク6に対して近付く方向および離れる方向に往復動させるボイスコイルモータなどを有する装置であり、適宜制御装置5によって制御されている。言い換えると、この振動装置4は、ヘッド3から照射されるレーザ光の焦点位置がワーク6に対して一定範囲に収まるように、ヘッド3を光軸方向に往復動させてレーザ光の焦点を往復動させている。
【0034】
制御装置5は、ヘッド3を中心軸2Aに沿って移動させる制御や支持部材2を回転させる制御を実行する他、前述したようにヘッド3とワーク6とのギャップが一定範囲に収まるように、振動装置4でヘッド3を振動させる制御を実行する。具体的に、制御装置5は、図2(a)および(c)に示すように、レーザ光で、ワーク6の表面のうち移動方向前側に位置する前端6aや移動方向後側に位置する後端6bを走査する際には、ヘッド3を支持部材2の外周面2b(中心軸2A)から最も遠い位置P1に位置させる。また、図2(b)に示すように、レーザ光で、ワーク6の表面の中央部6cを走査する際には、ヘッド3を支持部材2の外周面2bに最も近い位置P2に位置させる。
【0035】
ここで、図2(a)および(c)に示すように、ワーク6の表面の前端6aと後端6bは、ワーク6の表面において支持部材2の中心軸2Aから最も遠い位置にあり、ワーク6の表面の中央部6cは、ワーク6の表面において支持部材2の中心軸2Aに最も近い位置にある。すなわち、ワーク6の表面の前端6a(または後端6b)と支持部材2の外周面2bとの距離は、最大値Dmaxになっており、ワーク6の表面の中央部6cと支持部材2の外周面2bとの距離は、最小値Dminになっている。そのため、制御装置5は、例えば最大値Dmaxと最小値Dminとの差に相当する距離の間でヘッド3を往復動させることで、ワーク6の前端6a、後端6bおよび中央部6cにおいて、ギャップを一定値αとしている。そして、このように制御することによって、前端6aから中央部6cまでの間や、中央部6cから後端6bまでの間においても、ギャップを略一定値αにすることが可能となっている。
【0036】
具体的には、例えば支持部材2の直径を300mm、ワーク6を20mm角とした場合、最大値Dmaxと最小値Dminとの差は、約0.33mmとなる。このとき、ワーク6の前端6aから後端6bまでをレーザ光で走査する時間の間にヘッド3を振幅0.165mmの正弦波に従った動きで往復動させることで、ヘッド3とワーク6の表面とのギャップの所定値αからのずれ量を約0.08mmまで抑制することができる。なお、このずれ量は、ギャップの変動が正弦波のような原点に対称な波形にならないことによって生じている。ここで、最大値Dmaxと最小値Dminとの差は、支持部材2の直径が大きい程小さくなるとともに、ワーク6が小さい程(ワーク6の枚数が多くなる程)小さくなるため、支持部材2の直径を大きくしたり、ワーク6の枚数を多くするのが望ましい。
【0037】
なお、各ワーク6の前端6a、後端6bおよび中央部6cにおいてギャップを一定値αとするには、各ワーク6間の距離や支持部材2の回転速度やヘッド3を振動させる速度等を適宜設定すればよい。すなわち、例えば図2(c)に示す位置から図2(a)に示す位置まで支持部材2が回転するまでの間に、ヘッド3が一往復(もしくは複数回往復)するように各ワーク6間の距離等を設定することで、次のワーク6の前端6aをレーザ光で走査する際に、ヘッド3を支持部材2の外周面2bから最も遠い位置P1に位置させることができる。
【0038】
また、制御装置5によるヘッド3の往復動の制御は、例えば支持部材2が一回転するたびに往復動の開始のタイミング(振動の位相および周期)を修正する等によって、ずれを抑制して精度を上げることもできる。
【0039】
次に、本発明に係るフォトレジスト層の加工方法を説明する。
図1(c)に示すように、基板61上にスピンコート等の方法でフォトレジスト層62を形成することで、ワーク6を複数製造する。複数のワーク6を、図1(a),(b)に示すように、支持部材2の各設置面22に固定させる(設置工程)。ここで、例えば支持部材2の直径を500mm、長さを600mmとし、ワーク6を20mm角とすれば、1000枚以上のワーク6を支持部材2に固定することができる。
【0040】
支持部材2を回転させ、回転が安定した後、ヘッド3を光軸方向に往復動させつつ支持部材2の中心軸2Aに沿って移動させながら、ヘッド3からレーザ光をワーク6に対して照射する(露光工程)。これにより、レーザ光が支持部材2の周りを螺旋状に走査することによって、各ワーク6に互いに平行となる複数のラインパターンが迅速に形成される。このとき、各ラインパターンのピッチが例えばナノ〜サブミクロンオーダ等の極めて小さな値に設定されている場合には、各ワーク6の左右のエッジ(支持部材2の軸方向における両端縁)に対して略平行なラインパターンを形成できる。ここで、例えばラインパターンのピッチを0.5μmとし、200rpmで支持部材2を回転させると、100時間で2000枚以上のワーク6を加工(すなわち、1枚当たり3分以下で加工)でき、極めて迅速に、サブミクロンのラインパターンを形成することができる。また、ヘッド3を中心軸2Aの方向に複数設置すれば、その分、加工時間をさらに短縮することができる。例えば、支持部材2の中心軸2Aの方向に並ぶ複数(例えば6枚)のワーク6に対して所定数(例えば2つ)のヘッド3を中心軸2Aの方向にずらして配設する場合、中心軸2A方向に並ぶワーク6の数をヘッド3の数で割った数(例えば3枚)ごとにヘッド3を配設すればよい。
【0041】
続いて、本発明に係るパターン形成基板の製造方法について説明する。なお、前述したフォトレジスト層の加工方法は、以下に説明するパターン形成基板の製造方法の一部の工程である。
【0042】
前述したように支持部材2の外周面全体に対して螺旋状にレーザ光を照射した後、各ワーク6を支持部材2から取り外すと、図3(a)に示すように、各ワーク6のフォトレジスト層62に、互いに平行となる複数のラインパターン62aが形成される。そして、支持部材2から取り外したワーク6を図示せぬ真空チャンバーに入れて、図3(b)に示すように、基板61の表面61aとフォトレジスト層62の表面62bに対して金属材料の一例としてのクロム7を蒸着またはスパッタリングにより成膜する。その後は、図3(c)に示すように、エタノールなどの洗浄液でフォトレジスト層62を洗い流すと、基板61の表面61aにクロム7からなるパターン(凸部)が形成される(凹凸形成工程)。これにより、クロム7からなるパターンを有したパターン形成基板の一例としての回折格子8が製造される。なお、パターン形成基板としては、回折格子8の他、偏光板、反射防止板、波長板などを採用できる。
【0043】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
レーザ光が支持部材2の中心軸2Aを中心とした螺旋状に走査されるので、複数のワーク6のフォトレジスト層62に複数の平行なラインパターン62aを迅速に形成することができる。すなわち、ラインパターンを1本形成するごとにX−Yテーブルの停止・移動を繰り返すことでレーザ光を断続的に走査する方法に比べ、レーザ光を連続して走査することができるので、加工時間を短時間にすることができる。
【0044】
ヘッド3をフォトレジスト層62に対して近付く方向および離れる方向に往復動させることで、フォトレジスト層62とヘッド3との間隔が一定範囲に収まるので、フォトレジスト層62上のレーザ光のスポット径を略一定にすることができ、フォトレジスト層62に精度良くラインパターン62aを形成することができる。
【0045】
フォトレジスト層62がヒートモードの形状変化が可能な材料で形成されているので、フォトレジスト層62にレーザ光を照射するだけで、レーザ光のスポット径よりも小さな穴部がフォトレジスト層62に形成される。そのため、ナノ〜サブミクロンオーダの微細な穴部(ラインパターン62a)をフォトレジスト層62に迅速に形成することができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、円柱状の支持部材2に矩形の凹部21を形成することで凹部21の底面を設置面22としたが、本発明はこれに限定されず、例えば支持部材を多角形に形成することで支持部材の各外面を設置面としてもよい。
【0047】
前記実施形態では、周方向に複数のワーク6を並べるとともに、軸方向にも複数のワーク6を並べたが、本発明はこれに限定されず、周方向のみに複数ワーク6を並べてもよい。
前記実施形態では、支持部材2を回転させ、ヘッド3を軸方向に移動したが、本発明はこれに限定されず、例えばヘッド3を回転させ、支持部材2を軸方向に移動してもよい。
【0048】
前記実施形態では、フォトレジスト層62にラインパターン62aを形成した後、クロム7を蒸着して、フォトレジスト層62を除去することで、基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4(a)〜(c)に示すように、メッキにより基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを形成してもよい。
【0049】
具体的に、この方法では、図4(a)に示すように、フォトレジスト層62にラインパターン62aを形成した後、ワーク6を図示せぬメッキ槽に入れて、図4(b)に示すように、基板61の露出する表面61aにメッキ材料Mからなるメッキ膜を成長させる。その後、フォトレジスト層62を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、図4(c)に示すように、基板61の表面61aにメッキ材料Mからなる凹凸パターンを形成する(凹凸形成工程)。この方法でも、基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを良好に形成することができる。なお、メッキ材料Mとしては、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、アルミニウム、チタン、銅などの金属または金属含有物などを採用できる。
【0050】
また、図5(a)〜(c)に示すように、エッチングにより基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを形成してもよい。
【0051】
具体的に、この方法では、図5(a)に示すように、フォトレジスト層62にラインパターン62aを形成した後、基板61の表面61aに残ったフォトレジスト層62をマスクとしてエッチングを行うことによって、図5(b)に示すように、基板61の表面61aに凹部61bを形成する。ここで、エッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチング、RIE(リアクティブイオンエッチング)など、種々のエッチング方法を採用できる。
【0052】
そして、凹部61bを形成した後は、フォトレジスト層62を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、基板61の表面61aにエッチングによる凹凸パターン(凹部61b)が形成される(凹凸形成工程)。この方法でも、基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを良好に形成することができる。
【0053】
また、図6(a),(b)に示すように、ラインパターン62aを形成したフォトレジスト層62の表面62bと基板61の表面61aとに連続するように、金属材料MMを蒸着またはスパッタリングによって成膜することで基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを形成してもよい。これによれば、前記実施形態のように蒸着またはスパッタリング処理の後に基板61の表面61aに残るフォトレジスト層62を除去することなく、凹凸パターンを形成することができるので、フォトレジスト層62を除去するための設備等が不要となり、製造コストを低減することができる。なお、図6のようにフォトレジスト層62の表面62bと基板61の表面61aとに連続するように金属材料MMを成膜するには、スパッタリングを採用するのが望ましく、図3のように金属材料(クロム7)を断続的に成膜するには、真空蒸着を採用するのが望ましい。また、この図6の実施形態については、基板61の表面61aが露出するまでラインパターン62aを形成する必要はない。すなわち、ラインパターン62aの底面で基板61の表面61aが覆われていても、金属材料MMからなる凹凸パターンを形成することができる。
【0054】
また、図7や図8に示すように、フォトレジスト層62と基板61との間に金属材料で形成される金属層63を設けて、メッキ処理やエッチング等によって金属層63に微細な凹凸パターンを形成してもよい。
【0055】
具体的に、金属層63を含むワーク6’をメッキ処理する場合には、図7(a)に示すように、フォトレジスト層62にラインパターン62aを形成した後、ワーク6’を図示せぬメッキ槽に入れて、図7(b)に示すように、金属層63の露出する表面63aにメッキ材料Mからなるメッキ膜を成長させる。その後、フォトレジスト層62を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、図7(c)に示すように、金属層63の表面63aにメッキ材料Mからなる凹凸パターンを形成する(凹凸形成工程)。この方法によれば、金属層63を電極としてメッキを行うことができるので、比較的早くメッキ材料Mからなる凹凸パターンを形成することができる。
【0056】
また、金属層63を含むワーク6’をエッチングする方法では、図8(a)に示すように、フォトレジスト層62にラインパターン62aを形成した後、金属層63の表面63aに残ったフォトレジスト層62をマスクとしてエッチングを行うことによって、図8(b)に示すように、金属層63に穴部63bを形成する。そして、穴部63bを形成した後は、フォトレジスト層62を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、基板61の表面61aに金属層63からなる凸部が形成される(凹凸形成工程)。この方法でも、基板61の表面61aに微細な凹凸パターンを良好に形成することができる。
【0057】
前記実施形態では、支持部材2の外周面に複数の設置面22を形成したが、本発明はこれに限定されず、図9に示すように、円筒状に形成される支持部材200の内周面201に複数の設置面202を形成してもよい。これによれば、支持部材200を中心軸210回りに回転させる場合に、各ワーク6(基板61)に外方に向かう遠心力が加わっても、各ワーク6が支持部材200で押さえられ、遠心力で外方に飛ばされることが防止される。さらには、遠心力によって各ワーク6が支持部材200に向けて押圧されるので、各ワーク6と支持部材200とを強固に固定することができる。
【0058】
前記実施形態では、ヘッド3を光軸方向に往復動させることでレーザ光の焦点位置を所定範囲に収めたが、本発明はこれに限定されず、ヘッドを構成する別の光学部品、例えば対物レンズを光軸方向に往復動させることでレーザ光の焦点位置を所定範囲に収めてもよい。さらには、レンズを屈折率変調素子で構成して、屈折率を適宜変更することで、レーザ光の焦点を往復動させてもよい。
前記実施形態では、ヘッド3を直線状に往復動させたが、本発明はこれに限定されず、例えば所定の支持棒で支持したヘッドを揺動させることでヘッドを円弧状に往復動させてもよい。
【0059】
前記実施形態では、フォトレジスト層62に互いに平行な複数のラインパターン62aを形成したが、本発明はこれに限定されず、例えば情報に対応して形成されるピットを形成してもよい。また、フォトレジスト層の加工には、前記実施形態のように実際に穴部が形成される形態が含まれる他、フォトレジスト層が露光によって現像液で溶解可能な物性に変化する材料で形成される場合には、フォトレジスト層に穴部が形成されなくても、露光により物性が変化した部分で所定のパターンが形成される場合も含まれる。
【0060】
フォトレジスト層62の材料としては、前記実施形態のようなヒートモード型の材料に限らず、例えばフォトンモード型の材料や、露光によって現像液で溶解可能(または溶解不能)な物性に変化する材料(ポジ型、ネガ型)などを採用することができる。ここで、前述したポジ型またはネガ型のフォトレジスト層を採用する場合には、露光工程と凹凸形成工程の間に、現像液でフォトレジスト層を除去する工程を設ければよい。なお、ヒートモード型のフォトレジスト材料の具体例や、フォトレジスト層の加工条件等は、以下に示す通りである。
【0061】
ヒートモード型のフォトレジスト材料は、従来、光記録ディスクなどの記録層に多用されている記録材料、たとえば、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、スクワリリウム系、アズレニウム系、チオール錯塩系、メロシアニン系などの記録材料を用いることができる。
【0062】
本発明におけるフォトレジスト層は、色素をフォトレジスト材料として含有する色素型とすることが好ましい。
従って、フォトレジスト層に含有されるフォトレジスト材料としては、色素等の有機化合物が挙げられる。なお、フォトレジスト材料としては、有機材料に限られず、無機材料または無機材料と有機材料の複合材料を使用できる。ただし、有機材料であると、成膜をスピンコートやスプレー塗布により容易にでき、転移温度が低い材料を得易いため、有機材料を採用するのが好ましい。また、有機材料の中でも、光吸収量が分子設計で制御可能な色素を採用するのが好ましい。
【0063】
ここで、フォトレジスト層の好適な例としては、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。中でも、メチン色素、オキソノール色素、大環状色素、アゾ色素が好ましい。
【0064】
かかる色素型のフォトレジスト層は、露光波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。特に、光の吸収量を示す消衰係数kの値は、その上限が、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1以下であることが最も好ましい。その理由は、消衰係数kが高すぎると、フォトレジスト層の光の入射側から反対側まで光が届かず、不均一な穴が形成されるからである。また、消衰係数kの下限値は、0.0001以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。その理由は、消衰係数kが低すぎると、光吸収量が少なくなるため、その分大きなレーザパワーが必要となり、加工速度の低下を招くからである。
【0065】
なお、フォトレジスト層は、前記したように露光波長において光吸収があることが必要であり、かような観点からレーザ光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変することができる。
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素などから選択することが有利である。この中でも、フタロシアニン色素またはペンタメチンシアニン色素を用いるのが好ましい。
また、レーザ光源の発振波長が660nm付近であった場合は、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素などから選択することが有利である。
さらに、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合は、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0066】
以下、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合、405nm付近であった場合に対し、フォトレジスト層(フォトレジスト材料)としてそれぞれ好ましい化合物の例を挙げる。ここで、以下の化学式1,2で示す化合物(I-1〜I-10)は、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合の化合物である。また、化学式3,4で示す化合物(II-1〜II-8)は、660nm付近であった場合の化合物である。さらに、化学式5,6で示す化合物(III-1〜III-14)は、405nm付近であった場合の化合物である。なお、本発明はこれらをフォトレジスト材料に用いた場合に限定されるものではない。
【0067】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化1】

【0068】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化2】

【0069】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化3】

【0070】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化4】

【0071】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化5】

【0072】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化6】

【0073】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、及び同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0074】
このような色素型のフォトレジスト層は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、基板上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成できる。その際、塗布液を塗布する面の温度は、10〜40℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、下限値が、15℃以上であり、20℃以上であることが更に好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚さを均一とすることができる。
なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、フォトレジスト層は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0075】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。なお、フッ素系溶剤、グリコールエーテル類、ケトン類が好ましい。特に好ましいのはフッ素形溶剤、グリコールエーテル類である。更に好ましいのは、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0076】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。なお、生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点でスピンコート法を採用するのが好ましい。
フォトレジスト層は、スピンコート法による形成に有利であるという点から、有機溶媒に対して0.3wt%以上30wt%以下で溶解することが好ましく、1wt%以上20wt%以下で溶解することがより好ましい。特にテトラフルオロプロパノールに1wt%以上20wt%以下で溶解することが好ましい。また、フォトレジスト材料は、熱分解温度が150℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることがより好ましい。
塗布の際、塗布液の温度は、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、25〜30℃の範囲であることが特に好ましい。
【0077】
塗布液が結合剤を含有する場合、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。フォトレジスト層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。
【0078】
また、フォトレジスト層には、フォトレジスト層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、及び同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0079】
なお、フォトレジスト層は材料の物性に合わせ、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜法によって形成することもできる。
【0080】
なお、色素は、穴部パターンの加工に用いるレーザ光の波長において、他の波長よりも光の吸収率が高いものが用いられる。
この色素の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長域内であるものに限定されず、紫外域や、赤外域にあるものであっても構わない。
【0081】
なお、穴部パターンを形成するためのレーザ光の波長λwは、大きなレーザパワーが得られる波長であればよく、例えば、フォトレジスト層に色素を用いる場合は、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nmなど、1000nm以下が好ましい。
【0082】
また、レーザ光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザ光を採用するのが好ましい。例えば、半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザを直接オンオフ変調できない場合は、外部変調素子で変調するのが好ましい。
【0083】
また、レーザパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザ光でフォトレジスト層を走査する速度;例えば、前記実施形態に係る支持部材2の回転速度)を上げなければならない。そのため、レーザパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wがさらに好ましく、1Wが最も好ましい。また、レーザパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWがさらに好ましい。
【0084】
さらに、レーザ光は、発信波長幅およびコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、露光ストラテジ(穴部パターンを適正に形成するための光パルス照射条件)は、光ディスクで使われているようなストラテジを採用するのが好ましい。すなわち、光ディスクで使われているような、露光速度や照射するレーザ光の波高値、パルス幅などの条件を採用するのが好ましい。
【0085】
フォトレジスト層の厚さは、エッチングに用いるエッチングガスの種類や、フォトレジスト層に形成する穴部の深さに対応させるのがよい。
この厚みは、例えば、1〜10000nmの範囲で適宜設定することができ、厚さの下限は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。その理由は、厚さが薄すぎると、エッチングマスクとしての効果が得難くなるからである。また、厚さの上限は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下である。その理由は、厚さが厚すぎると、大きなレーザパワーが必要になるとともに、深い穴を形成することが困難になるからであり、さらには、加工速度が低下するからである。
【0086】
また、フォトレジスト層tと、穴部の直径dとは、以下の関係であることが好ましい。すなわち、フォトレジスト層の厚さtの上限値は、t<10dを満たす値とするのが好ましく、t<5dを満たす値とするのがより好ましく、t<3dを満たす値とするのがさらに好ましい。また、フォトレジスト層の厚さtの下限値は、t>d/100を満たす値とするのが好ましく、t>d/10を満たす値とするのがより好ましく、t>d/5を満たす値とするのがさらに好ましい。なお、このように穴部の直径dとの関係でフォトレジスト層の厚さtの上限値および下限値を設定する理由は、前記した理由と同様である。
【実施例】
【0087】
次に、本発明の効果を確認した一実施例について説明する。
[ワーク作製]
基板として、20mm角のガラス板を用意し、その表面に、予め金属層としてのアルミニウムを300nmで蒸着した。さらに、アルミニウムの上にフォトレジスト層をスピンコートで塗布して、乾燥後の膜厚が100nmとなるように形成した。具体的に、フォトレジスト層の形成は、下記化学式の色素材料2gをTFP(テトラフルオロプロパノール)溶剤100mlに溶解し、その溶解液をスピンコートによりアルミニウム上に塗布することで行った。これにより、基板、金属層およびフォトレジスト層からなるワークを作製した。
【0088】
【化7】

【0089】
[設置工程]
前述したワークを960枚作製し、直径300mm、長さ500mmのロール(支持部材)に、周方向に48枚、軸方向に20枚を等間隔に配置して固定した。この際、ロールの外表面を多角形状に削って、その各面に基板を設置した。
【0090】
[露光工程]
パルステック工業株式会社製NE0500(波長405nm、NA0.85)で、複数の微細な凹部ラインを記録した。このときの条件は以下の通りである。
各凹部ラインの配列のピッチ:0.5μm
レーザ出力:2mW
線速度:5m/s
記録信号:5MHzの矩形波
なお、このような条件とするには、当然ながらロールを回転させながら、軸方向に少しずつ移動させることで、螺旋状に凹部ラインを形成した。
【0091】
その結果、56時間といった短い時間で、多量(960枚)のワークの加工が完了したことが確認された。なお、各ワークに凹部ラインを形成した後は、ロールからワークを取り外し、RIEにて基板表面に蒸着したアルミニウムをエッチングした。その後、フォトレジスト層を洗い流すことで、ガラス基板上にアルミニウムの細線パターンが形成されたことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係るフォトレジスト層の加工方法を実行するための加工装置を示す構成図(a)と、支持部材の設置面を示す断面図(b)と、ワークの詳細を示す断面図(c)である。
【図2】ワークの前端にレーザ光を照射している状態を示す断面図(a)と、ワークの中央にレーザ光を照射している状態を示す断面図(b)と、ワークの後端にレーザ光を照射している状態を示す断面図(c)である。
【図3】支持部材から取り外した状態のワークを示す断面図(a)と、フォトレジスト層の表面と基板の表面とにクロムを成膜した状態を示す断面図(b)と、基板の表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図4】メッキにより基板の表面に凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層にラインパターンが形成された状態を示す断面図(a)と、基板の表面にメッキ材料を成長させた状態を示す断面図(b)と、基板の表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図5】エッチングにより基板の表面に凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層にラインパターンが形成された状態を示す断面図(a)と、基板の表面をエッチングした状態を示す断面図(b)と、基板の表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図6】フォトレジスト層の表面と基板の表面とに連続するように金属材料を成膜することで凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層にラインパターンが形成された状態を示す断面図(a)と、フォトレジスト層の表面と基板の表面とに連続するように金属材料を成膜した状態を示す断面図(b)である。
【図7】フォトレジスト層と基板との間に金属層を設けた形態を示す断面図であり、フォトレジスト層にラインパターンが形成された状態を示す断面図(a)と、金属層の表面にメッキ材料を成長させた状態を示す断面図(b)と、金属層の表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図8】フォトレジスト層と基板との間に金属層を設けた形態を示す断面図であり、フォトレジスト層にラインパターンが形成された状態を示す断面図(a)と、金属層をエッチングした状態を示す断面図(b)と、金属層の表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図9】円筒状の支持部材の内周面に複数の設置面を形成した形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 フォトレジスト層加工装置
2 支持部材
2A 中心軸
2b 外周面
3 ヘッド
4 振動装置
5 制御装置
6 ワーク
7 クロム
8 回折格子
21 凹部
22 設置面
61 基板
62 フォトレジスト層
62a ラインパターン
63 金属層
M メッキ材料
MM 金属材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸から等距離に配置される複数の設置面を有する支持部材の各設置面に、フォトレジスト層を有する複数の基板を固定する設置工程と、
前記フォトレジスト層に対してレーザ光を出射するヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記中心軸回りに回転させるとともに、前記ヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記中心軸に沿うように移動させながら、前記ヘッドからレーザ光を出射する露光工程と、を備えたことを特徴とするフォトレジスト層の加工方法。
【請求項2】
前記露光工程において、
前記フォトレジスト層と前記ヘッドとの間隔が一定範囲に収まるように、前記ヘッドを前記フォトレジスト層に対して近付く方向および離れる方向に往復動させることを特徴とする請求項1に記載のフォトレジスト層の加工方法。
【請求項3】
前記フォトレジスト層が、ヒートモードの形状変化が可能な材料で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトレジスト層の加工方法。
【請求項4】
前記支持部材を筒状に形成するとともに、前記設置面を支持部材の内面に配置することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトレジスト層の加工方法。
【請求項5】
所定の中心軸から等距離に配置される複数の設置面を有する支持部材の各設置面に、フォトレジスト層を有する複数の基板を固定する設置工程と、
前記フォトレジスト層に対してレーザ光を出射するヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記中心軸回りに回転させるとともに、前記ヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記中心軸に沿うように移動させながら、前記ヘッドからレーザ光を出射する露光工程と、を備えたことを特徴とするパターン形成基板の製造方法。
【請求項6】
前記露光工程において、
前記フォトレジスト層に対するレーザ光の焦点位置が一定範囲に収まるように、レーザ光の焦点を前記フォトレジスト層に対して近付く方向および離れる方向に往復動させることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項7】
前記フォトレジスト層が、ヒートモードの形状変化が可能な材料で形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項8】
前記支持部材を筒状に形成するとともに、前記設置面を支持部材の内面に配置することを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項9】
前記露光工程の後、前記基板の表面と前記フォトレジスト層の表面とに金属材料を成膜させてからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項10】
前記露光工程の後、前記基板をメッキ槽に入れて、露出した前記基板の表面にメッキ膜を成長させてからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面にメッキ材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項11】
前記露光工程の後、前記基板の表面に残ったフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行ってからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面にエッチングによる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項12】
前記露光工程の後、前記基板の表面と前記フォトレジスト層の表面とに連続して金属材料を成膜することで、前記基板の表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項13】
前記フォトレジスト層と前記基板との間に金属材料で形成される金属層を設け、
前記露光工程の後、前記基板をメッキ槽に入れて、露出した前記金属層の表面にメッキ膜を成長させてからフォトレジスト層を除去することで、前記金属層の表面にメッキ材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。
【請求項14】
前記フォトレジスト層と前記基板との間に金属材料で形成される金属層を設け、
前記露光工程の後、前記金属層の表面に残ったフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行ってからフォトレジスト層を除去することで、前記基板の表面に前記金属層からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−282277(P2009−282277A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134017(P2008−134017)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】