説明

フォトレジスト層の表面にくぼみを形成する方法

フォトレジスト層(1)の表面(4)にくぼみ(15)を形成する方法が、フォトレジスト層の第1の部分(12)を第1の照射量の放射エネルギー(7)に曝す段階(100、120、101、102、122)を含む。また、層の第2の部分(17)を第2の照射量の放射エネルギー(7)に曝す(120、101、122)。第2の照射量は第1の照射量よりも少ない。層はベークされる(110、130、131、132)。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マイクロエレクトロニクス素子の微細構造を作成するためにフォトレジストエッチングを用いることが多い。例えば、フォトレジストエッチングを用いて、インクジェット印字ヘッドなどの流体噴射器の障壁層に、インクマニホルドと発射チャンバとを含む微小流体チャンバを作成する。また、インクジェット印字ヘッドの障壁層の上に配置されたオリフィス層にノズルまたは流体輸送孔を形成するのにフォトレジストエッチングを用いる。
【0002】
流体輸送孔またはノズルの出口に穴ぐり(counter-bore)を形成することにより、拭き取りによって生じるノズルの出口形状の損傷を少なくするか防止することができ、流体射出装置の有効寿命を長くすることができる。穴ぐりは、例えばノズル出口の波打ちを少なくするか防止し、パドリングと関連する流体の経路の問題を軽減または防止することができる。穴ぐりは、例えばレーザアブレーションによって形成されるが、この手法により生産コストは上昇しうる。
【0003】
フォトレジストオリフィスプレートおよび/または障壁層にマニホルド、チャンバおよびその他の特徴形状を形成する例示的な方法は、米国特許第6,162,589号(Chenら)および第6,520,628号(McClellandら)に開示されている。レーザアブレーションによって形成されたノズル穴ぐりを備えたインクジェット印字ヘッドは、例えば本出願と同一出願人による米国特許第6,527,370B1(Courianら)に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明の特徴および利点は、添付図面において示されているような例示的な実施形態についての以下の詳細な説明から当業者に容易に理解されるであろう。
【0005】
以下の詳細な説明および図面のいくつかにおいては、類似の要素は類似の参照番号で示すものとする。
【0006】
図1に、フォトレジストエッチングプロセスの例示的な実施形態によって形成された空隙2を有する架橋フォトレジスト層1の例示的な実施形態を示す。フォトレジストフィルム層1は、x−y平面に水平に配列され、このx−y平面の向きを矢印3で示す。空隙は、z軸6の方向に沿って層の上面4から深さ5まで拡がっている。水平x−y平面での空隙2の上面開口21の断面積は、x−y平面での空隙2の中間部分22の断面積よりも大きい。例示的な実施形態では、空隙2の下部分23の断面積は、中間部分22の断面積以上であってよい。
【0007】
例示的な実施形態では、フォトレジスト層は、Microchem CorporationからSU8(エポキシドフォトレジスト)の名前で販売されているようなネガ型フォトレジスト、DuPontにより製造されているIJ5000などのドライフィルムフォトレジスト、あるいは他の適切なフォトレジストフィルムからなっていてよい。フォトレジストは、例えばShin Etsuによって製造されたSINR−3170Mを含む、電磁放射の露光後に現像液に不溶となる多数の他のネガ型フォトレジスト材料の任意のものであってよい。
【0008】
図1の例示的な実施形態では、空隙は、空隙2の上面に向かって大きくなりかつ中間部分22に向かって狭くなる断面積を有する上部分24を有することができる。表面から上部分の傾斜に沿った断面形状25は、例えば概ね放物線の形(図1に図示)とすることができる。別態様として、断面形状25は、他の形状、例えば概ね円錐形とすることもできる。断面形状の下部分は、底面または下面に向かって大きくなる断面積を有している。
【0009】
図1の例示的な実施形態では、層1は、上面4および下面41を有する。空隙2は、上面開口21および下面開口42を有する。空隙は、例えば流体放射機構のオリフィス層、オリフィスプレートまたはオリフィス構造に、オリフィス(またはノズル)を形成する。例示的な実施形態では、層1の下面41によって、流体放射機構内の発射チャンバの上側境界を画定することができ、流体放射機構は、例えばインクジェット印字ヘッドである。上部分21は、オリフィスの穴ぐりの役割をするくぼみまたは他の凹部を含むことができる。
【0010】
図2A〜図2Eに、フォトレジストフィルム層に表面くぼみを有する空隙を形成するためのフォトレジストエッチングプロセスの例示的な実施形態を示す。この層は、特定のフォトレジストのために望ましい場合には、処理前に「ソフトベーク」によって準備されてもよい。例えば、レジスト被覆層の塗布後にソフトベークを行って蒸発によってレジストから溶剤を除去することができる。ソフトベークを行った後、フォトレジストは、溶剤を含まない熱可塑性物質からなっている。例示的な実施形態では、その溶剤を含まない熱可塑性物質は、約55℃のガラス転移温度を有するSU8からなる。他のレジストは、様々なガラス転移温度を有することができる。ガラス転移温度は、高分子が固体から粘性の液体に変わる温度である。また、ガラス転移温度は、フォトレジスト材料の比容積と温度との関係のグラフにおいて比容積の勾配が大きくなる温度として定義されることもある。
【0011】
次に図2Aを参照すると、フォトレジスト層1のマスク8で覆われていない部分が、放射エネルギー7に曝される。この露光は、例えばSVG Micralign Model 760露光ツールを使用して行うことができる。例示的な実施形態では、放射エネルギー7は単色光である。他の実施形態では、放射エネルギーは、あるスペクトル範囲にわたるエネルギーを含んでいてよい。例示的な実施形態では、SU8は、300〜380nmの範囲にわたる光反応性を有する。他のフォトレジストは、他の波長範囲にわたる光反応性を有する。1つの例示的な実施形態では、マスク8は、放射エネルギー7を実質的に透過する透過部分81と、放射エネルギー7を実質的に透過しない非透過部分82とを有する。例示的な態様では、マスク8は、クロム反射部分82を有するガラスマスクである。例示的な実施形態では、マスクは投影マスクであり、その場合、放射エネルギーはマスクを通過し、光学系を介してウェーハに導かれる。投影マスクを使用する場合、マスクは、ウェーハ上に投影されるマスクの像より大きくてもよい。投影マスクは、ウェーハ全体の露光パターンがマスク上に描かれているフルウェーハマスクでもよく、またはウェーハの一部分の露光パターンがマスク上に描かれていて、マスクを介して投影された像をウェーハ上で段階的に移動させて、ウェーハの異なる部分を別々に露光するステップアンドリピート式マスクでもよい。マスクとしては、所定の実施形態のために選択された特定のフォトレジストで処理可能な任意のタイプのものを使用することができる。
【0012】
マスク8により、放射エネルギー7が透過部分を透過できるようになっており、それにより、層の一部分12が露光され、非露光部分11が残される。フォトレジスト層1の非露光部分11の形状は、マスクの、放射エネルギーをフォトレジスト層に達しないように遮断している非透過部分82の形状によって画定されている。図2A〜図2Eに示す例示的な実施形態では、非透過部分82は、約20μm〜約40μmの範囲の直径の実質的に円形である。この実施形態では、x−y平面におけるマスク8の輪郭が、形成する空隙2の表面開口21(図2E)のx−y平面での形状を画定する。例えば、マスクによって円形でない特徴形状が画定される場合には、穴ぐりの形はその円形でない形状を有する。
【0013】
例示的な実施形態において、露光部分12は、SU8を使用する形態で、例えば約100mJ/cmまたは約75〜300mJ/cmの範囲内の比較的低い照射量の放射エネルギー7を受けてもよい。層は、リソグラフィ露光ツールを使用して露光されてもよい。特定の用途または実施形態において、照射量は、ある程度、使用するツールおよび/または放射エネルギーの波長、使用するフォトレジスト、レジスト中の光活性要素の効率、形成する穴ぐりおよび孔の所望の形状、深さおよび他の特徴に依存する。望ましい条件およびパラメータは、上述のパラメータに基づいて経験的に決定することができる。例示的な実施形態において、望ましい条件およびパラメータは、後続のPEBベークの温度を変化させるだけで深さの調整が可能な適切に形成された丸い穴ぐりができるよう選択される。例えば、約8〜30μmの範囲の厚みを有するSU8層で約100mJ/cmの露光を実施する場合には、約85〜120℃のPEBによって穴ぐりの深さが0.2μm〜3μmになる。この例示的な実施形態において、光酸(photo-acid)が露光部分12で生成され、非露光部分11では形成されないと考えられる。生成された光酸の量は、照射量とほぼ比例する。この例示的な実施形態において、露光部分12は界面14で非露光部分11と接している。
【0014】
図2Bにおいて、図2Aの露光フォトレジスト層1が、露光後ベーク(PEB)にかけられており、その際に露光部分12に架橋が生じた。PEBは、例えばSVGシリーズ86ベークトラックを使用して行うことができる。PEB中、架橋の開始後に遷移期間がある場合がある。遷移期間中、露光部分12において架橋マトリクスが粘性液体からゲルに変わり、最終的には架橋の三次元分子網様構造を形成すると考えられる。例示的な実施形態では、PEBを約5分間持続させてよい。しかし、通常、最初の数秒間のベーク中に構造変化および架橋の大部分が開始すると考えられる。この遷移期間中、界面14は、混合の熱力学的条件を満たす2つの異なる材料間の界面となる。混合の熱力学的条件は、領域11と12の材料が互いに溶け合うことができる場合に満たされる。一般に、この熱力学的条件は、材料の一方または両方が界面14を横切って拡散できるほどPEB温度が十分に高い場合に満たされる。これは、PEBの温度と穴ぐり照射量とを平衡させる操作である。照射量が少なすぎる場合は、高分子に十分な光酸が生成されないことがある。その結果、露光領域での架橋がごくわずかになるかきわめて遅くなり、その結果、露光界面の濃度勾配が小さくなって、界面を横切る拡散がほとんどまたは全くなくなる。照射量が多すぎる(例えば、500mJ超える)と、90℃のPEBで架橋が過度に迅速に進み穴ぐりが形成されない場合がある。
【0015】
例示的な実施形態において、PEBの際にフォトレジストの表面に凹部15ができる。これは、非露光部分11から露光部分12に界面14を横切る拡散16によって少なくとも部分的に生じると考えられる。拡散によって、界面のその領域の層表面がわずかに膨らむこともある。
【0016】
例示的な実施形態において、PEB温度は、PEBの際に、比較的高い拡散係数が得られるように選択され、この拡散係数は、時間の経過と共に架橋密度が高まるにつれて減少する。この拡散係数が十分に高いPEB温度は、例えば約80〜120℃の範囲のガラス転移温度より高くてもよい。架橋反応によって単量体が消費されると、露光界面14(集合した単量体の比較的大きいグループと単量体の小さいグループまたは単一ユニットとの界面)に、拡散に必要な熱力学的条件を作り出す濃度勾配ができる。また、温度は、単量体が高分子マトリクス内で拡散するのに十分なエネルギーを有するよう選択することができる。
【0017】
例示的な実施形態において、適切なPEB温度は、ガラス転移温度および/またはフォトレジスト樹脂の融点よりも高い。液状高分子は、比較的高い拡散係数を有する。フォトレジストが加熱されると、単量体は露光境界をどちらの方向にも自由に横切ることができる。PEBの際に時間が進むにつれて、架橋反応によって露光領域がゲル化し、露光領域から非露光領域への輸送が困難となる。非露光領域から露光領域への単量体の輸送により、架橋マトリクス内への単量体の正味の輸送が起こる。この単量体の不平衡の輸送によって非露光領域の体積が減少する。
【0018】
例示的な実施形態において、SU8フォトレジスト層のPEBは、約80〜120℃の範囲内の温度で行われる。温度は、架橋遷移期間中に界面14で十分な拡散係数が得られるように選択されなければならない。適切な温度範囲のうちの低い方の温度では、浅い断面形状を有するくぼみができ、適切な温度範囲のうちの高い方の温度では、深い断面形状を有する穴ぐりができることがある。例示的な実施形態では、約3ミクロンもの深さのくぼみを形成する。くぼみの深さは、照射量、マスクの形状およびベーク温度を制御または変更することによって調整することができる。PEBの際に時間が進むにつれて、露光領域の架橋密度は、単量体の輸送が立体障害によって制限されかつそれ以上形状変化が起こらない時点まで増大する。例示的な実施形態において、半径方向に対称的な露光境界により、ほぼ放物線または円錐形のくぼみ15が作成されうる。1つの例示的な実施形態では、PEB温度が高くなるほど、例えばSU8で100〜120℃であると、より円錐に近い形状の穴ぐりができる。別の例示的な実施形態では、PEB温度が低くなるほど、例えばSU8で80〜100℃であると、より放物線に近い形状の穴ぐりができる。照射量が約100mJ/cm未満の例示的な実施形態では、SU8に形成された穴ぐり形がひずむことがある。低照射量で穴ぐりの形がひずむのは、界面を横切る架橋材料の濃度勾配が適切に規定されず、その結果として遷移の非架橋側から架橋側への物質の正味の拡散が少なくなるからだと考えられる。また、少ない照射量での光はオリフィス層内で消滅し、その結果としてオリフィスの深い方の端部で露光が不十分になるので歪みが起こると考えられる。
【0019】
図2Cにおいて、フォトレジスト層は、第2のマスク8’を介して放射エネルギーを受ける。この例示的な実施形態において、非透過部分82’は、第1のマスク8(図2A)の非透過部分82よりも小さい。例示的な実施形態において、マスク8’は、層のうち前のステップで露光されなかった部分を露光しかつ前のステップでの露光で露光されなかった他の部分も非露光のままになるように配置される。層の第1の露光の際に露光されずかつ第2の露光の際に露光される部分は、部分的露光部分17を構成する。前の露光の際に露光されずかつこの露光の際でも非露光のままとなる部分は、非露光部分11’を構成する。x−y平面におけるマスク8’の断面形状は、空隙の中間部分の最も幅狭の部分の形状を画定する。例示的な実施形態において、中間部分の直径は、約15μmであってよい。この例示的な実施形態において、第2のマスク8’は、x−y平面において、非露光部分11’が部分的露光部分17によって取り囲まれているかまたは含まれるように配置される。
【0020】
例示的な実施形態において、露光は、部分的露光部分17に前の露光で露光部分12が受けた照射量よりも多い照射量をあてることができる。例示的な実施形態において、部分的露光部分は、約600〜2000mJ/cmの範囲(例えば約1000mJ/cm)の照射量を受ける。例示的な実施形態では、後続のPEBの際に単量体が非露光部分11’から部分的露光部分17に遷移部14’を横切って拡散するのを制限するために、非露光部分11’を画定するために使用される照射量は、部分12の第1の露光の露光エネルギーよりもやや多い。これは、部分的露光部分内の架橋の速度を高め、その結果、非露光部分から部分的露光部分に界面14’を横切る拡散を少なくすることによって、くぼみの歪みを小さくするためと考えられる。両方の露光で露光部分12が受ける総照射量は、部分的露光部分17が受ける総照射量よりも多い。
【0021】
図2Dにおいて、露光したフォトレジスト層をPEBにかけた。例示的な実施形態にでは、PEBの温度は、約80〜120℃の範囲(例えば約90℃)である。使用する温度が低すぎると、最終生成物のばらつきが大きくなることがある。使用する温度が高すぎると、フォトレジスト中に望ましくない応力が生じることがある。しかしながら、特定の実施形態において使用される特定の温度は、使用する材料、形成する構造、および生成物を使用する用途に依存させることができる。架橋は、PEBの際に部分的露光部分17内で起こる。また、拡散16’は、非露光部分11の上面にくぼみ15’を形成する遷移部14’を横切って起こると考えられる。例示的な実施形態において、遷移部14’に沿った部分的露光部分17の架橋材料が、形成すべき空隙の下部分の内壁を画定する。
【0022】
図2Eで、層1を、例えば溶剤を使用して現像する。例示的な実施形態において、溶剤は、乳酸エチル、ジアセトンアルコールまたはn−メチル−2−ピロリドン、あるいは使用される特定のフォトレジストに適した他の溶剤のうちの少なくとも1つからなる。溶剤は、非露光部分11’(図2Cに示す)を除去し、フォトレジスト層1内には空隙2が残る。空隙2は、下部分23、中間部分22、および上部分24からなる。本明細書の図2Eと他の図では、単なる例として下部分を平行な面で示している。例示的な実施形態において、下部分は底面または下面に向かって幅広になっていてもよいことを理解されたい。例示的な実施形態において、層1は、処理の際に別の材料層の上に配置される。例示的な実施形態では、その別の材料の層は、流体放射機構の障壁層のスペース内に配置され、例えば材料94が、流体放射機構の発射チャンバを形成するスペースを満たす(図6A)。材料94は、溶剤に溶けることができ、現像中に除去することができる(図6B)。
【0023】
当業者は、上記のおよびその他の実施形態において、フォトレジストの一部分に吸収される照射量が、有効照射量、すなわち本明細書で示す構造を形成する条件を作り出すのに十分な光酸を生成するのに十分な放射エネルギーであることを理解するであろう。この有効照射量は、放射エネルギーの強さに基づいたフォトレジストに入射するエネルギーの総照射量でなくてもよい。例えば、フォトレジストが特定の波長範囲の光に対して反応性が高く、別の波長範囲の光に対して反応性が低い場合は、光酸を生成する波長範囲全体にわたり放射線の強さを分布させることによって有効照射量を決定することができる。所定量の放射エネルギーの場合、より多量の光酸を生成する波長のエネルギーによって大きく重み付けされた分布は、光酸を生成する波長によってあまり大きく重み付けされていない分布よりも多い有効照射量を提供する。所望量の光酸を生成する任意の波長分布によって、所望の空隙形成条件を作り出するのに十分な光酸を生成するのに足る照射量または有効照射量を提供することができる。このような分布のどれにおいても、照射量を増やすことにより、光酸を生成する波長の強度を高めることができる。特定の波長分布は、特定の放射源を波長フィルタリングするか、光源の出力を調整するか、異なる光源を選択することによって得ることができる。
【0024】
図3A〜図3Cに、露光ステップを使用してフォトレジスト層1に空隙2を形成する別の例示的な実施形態を示す。図3Aにおいて、フォトレジスト層1は、マスク8を介して放射エネルギー7を受ける。マスクは、透過部分81、部分的透過部分83、および非透過部分82を有する。透過部分81により、放射エネルギー7がフォトレジスト1の露光部分12を露光することが可能となる。部分的透過部分83は、放射エネルギーを部分的に透過させる、つまり、一部の放射エネルギーを通過させ一部の放射エネルギーを遮断することを可能にする。部分的透過部分83は、一部の放射エネルギーがフォトレジスト1の部分的露光部分17を部分的に露光することを可能にする。部分的露光部分17は、透過部分81を介して露光部分12が受けた照射量よりも少ない照射量を受ける。非透過部分82は放射エネルギーを遮り、フォトレジスト1の非露光部分11を残す。SU8を使用する例示的な実施形態では、部分的透過部分83の透過率は5%〜50%の範囲である。例示的な実施形態において、透過部分81は、特定の波長または波長範囲の放射エネルギーを通す。フォトレジストは、第1の部分のフォトレジストが、本明細書に記載の空隙を形成するのに十分な光酸を生成できるだけの照射量を受けるように選択することができる。部分的透過部分は、異なる特定の波長または波長範囲の放射エネルギーを通す。フォトレジストは、第2の部分のフォトレジストが、本明細書に示した空隙を形成する十分な光酸を生成するだけの照射量を受けるように選択することができる。
【0025】
図3Bでは、図3Aの露光フォトレジストがPEBにかけられている。SU8フォトレジストを使用する例示的な実施形態では、PEBを、80〜120℃の範囲で行い、最大約5分間続ける。PEBの際に、部分的露光部分17と完全露光部分12の界面を横切って拡散16が起こると考えられ、部分的露光部分17と非露光部分11の界面14’を横切って拡散16’が起こると考えられる。拡散により、部分的露光部分17にくぼみ15が形成され、非露光部分にくぼみ15’が形成されると考えられる。例示的な実施形態において、拡散16’の量を最少にしかつ拡散16の量を最大にするようにプロセスパラメータを選択することができる。
【0026】
図3Cの例示的な実施形態において、フォトレジスト層1を現像し、それにより非露光部分からそれ以外の材料を除去した。得られた空隙2は、下部分23、中間部分22、および上部分24を有する。空隙2は、上面4の上面開口21から下面41の下面開口42まで拡がっている。例示的な実施形態において、層1の厚みは約8〜30μmの範囲内にある。厚みは、これよりも薄くても厚くてもよい。
【0027】
図4A〜図4Dに示したさらに別の例示的な実施形態において、表面くぼみを有する空隙を、最初の露光後にPEBを実行せずにフォトレジスト層に形成する。図4Aにおいて、フォトレジスト層が、マスク8を介して放射エネルギーを受ける。マスクは、非透過部分82と透過部分81を有する。透過部分は、放射エネルギーを通し、それにより露光部分が放射エネルギー7を受ける。非透過部分は、エネルギーが通るのを妨げ、それにより非露光部分11が残る。
【0028】
図4Bにおいて、フォトレジストは、透過部分81’と非透過部分82’とを有するマスク8’を介して放射エネルギー7を受ける。透過部分81’は、放射エネルギーを通し、それにより露光部分が追加の放射エネルギーを受け、部分的露光部分が放射エネルギーを受ける。非透過部分82’は放射エネルギーを遮り、それにより非露光部分11’が残る。例示的な実施形態において、照射量は約100〜2000mJ/cmの範囲にある。最初の露光後にはフォトレジストをPEBにかけない。露光間にPEBを行わない例示的な実施形態においては、マスク手順を逆にしてもよい。
【0029】
図4Cでは、フォトレジストがPEBにかけられている。PEBの際に、部分的露光部分17と完全露光部分12の間の界面14を横切って拡散16が起こり、部分的露光部分17と非露光部分11の間の界面14’を横切って拡散16’が起こる。拡散により、部分的露光部分17にくぼみ15が形成され、非露光部分にくぼみ15’が形成される。例示的な実施形態において、拡散16’の量を最小にし、かつ拡散16の量を最大にするようにプロセスパラメータを選択することができる。
【0030】
図4Dでは、層を現像し、それにより非露光部分から残りの材料が除去されている。得られた空隙2は、下部分23、中間部分22および上部24を有する。空隙2は、上面4の上面開口21から下面41の下面開口42まで広がっている。
【0031】
図5A、図5Bおよび図5Cはそれぞれ、図2A〜図2E、図3A〜図3C、および図4A〜図4Dに示したプロセスの例示的な実施形態を示す工程図である。図5Aの例示的な実施形態では、層を第1のマスクを介して第1の露光100にかけ、第1のPEB110にかけ、第2のマスクを介して第2の露光120にかけ、第2のPEB130にかけ、現像140する。図5Bの例示的な実施形態では、フォトレジスト層を非透過部分と部分的透過部分とを有するマスクを介して露光101にかけ、PEB131にかけ、現像141する。図5Cの例示的な実施形態では、フォトレジスト層を第1のマスクを介して第1の露光102にかけ、第2のマスクを介して第2の露光122にかけ、PEB132にかけ、現像142する。
【0032】
マスクが、フォトレジスト層に形成された複数の空隙およびくぼみに対応する複数の非透過部分および/または部分的透過部分を含みうることを理解されたい。例示的な実施形態では、複数の空隙およびくぼみは、インクジェット印字ヘッドなどの流体放射機構における、穴ぐりを有する複数および/またはアレイ状の穿孔(またはノズル)に対応することができる。
【0033】
図6Aに、空隙を形成する前の、基礎層9の表面91に配置されているフォトレジスト層の例示的な実施形態を示す。フォトレジスト層は、インクジェット印字ヘッドなどの流体放射機構のオリフィスプレートまたはオリフィス層1からなっていてよい。基礎層9は、流体放射機構の障壁層(またはチャンバ層)9からなっていてよい。障壁層9は、チャンバ93を画定する架橋したフォトレジスト92からなっている。チャンバ93またはチャンバは、例えば、発射チャンバや流体チャネルなどからなっていてよい。チャンバ93には、充填剤94を充填することができる。例示的な実施形態では、充填剤94は可溶性であり、フォトレジスト層(またはオリフィス層)1の現像の際に溶解する。例示的な実施形態において、充填剤は、フォトレジストまたはフォトレジスト樹脂からなることができる。例示的な実施形態において、充填剤は、Microchem Corporationによって製造されたPMGI(ポリメチルグルタルイミド)からなる。障壁層9は、基板100の表面に配置される。例示的な印字ヘッドでは、流体放射機構用の電気回路および抵抗発熱体を構成する薄膜層(図示せず)を基板100の表面101上に配置することができる。これらの特徴は、説明を分かりやすくするためにここでは省略する。
【0034】
図6Bに、フォトエッチングによって層1に空隙2を形成した後の図6Aの例示的な実施形態を示す。例示的な実施形態において、チャンバ93は、インクジェット印字ヘッドなどの流体放射機構の発射チャンバからなることができる。
【0035】
図7Aに、層1に空隙を形成する前のフォトレジスト層1の例示的な実施形態を示す。層1は、基板100の表面101に配置されたフォトレジスト材料の厚い層20のうちの表面部分である。層1は、露光100、101、102、120、122(図5A〜図5C)の際に厚い層20が露光される深さにより画定される。層1の下には、露光後も、サブ表面部分201が露光されないまま残る。厚い層20を予備処理(露光100、101、102、120、122(図5A〜図5C)の前)にかけて架橋部分202を形成してもよい。架橋部分の縁部203は、現像の際に形成されるチャンバの壁を画定することができる。
【0036】
図7Bに、層1内の空隙2をフォトエッチングした後の図7Aの例示的な実施形態を示す。現像の際に、露光されていないサブ表面部分201を除去した場所にチャンバが残る。
【0037】
層1は、基板5上に積層またはスピンコートすることができる。例示的な実施形態では、層をソフトベークによりあらかじめ処理することもできる。例示的な実施形態において、ソフトベークは、約15分間、80〜120℃の範囲で行うことができる。
【0038】
例示的な実施形態において、穴ぐりのない穿孔を作成する既存のプロセスを、穿孔に穴ぐりを設けるように修正してもよい。ノズル形成プロセスに追加されるステップの数は、使用する特定の実施形態に依存する。この技術は、様々な既存のプロセスに移行可能である。
【0039】
例示的な実施形態において、フォトエッチング表面くぼみのない空隙を形成するプロセスは、パターン形成露光、PEBおよび現像からなる。この実施形態は、追加の露光(図5C)あるいは追加の露光および追加のPEB(図5A)を加えるか、または露光(図5B)で使用するマスクを変更することによって変更が可能である。
【0040】
本明細書で述べたプロセスおよび方法の例示的な実施形態により、深さ−0.1μmから少なくとも3.5μmの範囲の深さの穴ぐりを形成することができる。負の深さを有する(すなわち表面から上に突出する)穴ぐりは、例えば約20μmの直径を有する比較的小さい穴ぐりを有する例示的な実施形態で形成される場合があり、この場合、穴ぐり領域に受ける照射量は比較的少なく、例えば、約100〜300mJ/cmの範囲にあり、レジストのバルク部分に受ける照射量が比較的多い、例えば、約1000mJ/cmの範囲にある。穴ぐりの深さの制御は、穴ぐりの直径またはベーク温度あるいはこの両方を調整することによって達成することができる。穴ぐりの深さは、主に、穴ぐり照射量(露光100、101、102(図5A〜図5C))とその後の穴ぐりPEB(PEB110、131、132(図5A〜図5C))によって制御される。
【0041】
以上説明した実施形態が、本発明の原理を表しうる特定の実施形態の単なる例示に過ぎないことを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することがなければ、当業者はこれらの原理に従って他の構成を容易に考案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】フォトレジスト層内の空隙の例示的な実施形態の断面図である。
【図2A】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図2B】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図2C】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図2D】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図2E】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図3A】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図3B】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図3C】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図4A】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図4B】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図4C】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図4D】層に空隙を形成する例示的なプロセスにおけるフォトレジスト層の例示的な実施形態の断面図である。
【図5A】フォトレジスト層に空隙を形成するプロセスの例示的な実施形態の例示的なプロセスフローを示す図である。
【図5B】フォトレジスト層に空隙を形成するプロセスの例示的な実施形態の例示的なプロセスフローを示す図である。
【図5C】フォトレジスト層に空隙を形成するプロセスの例示的な実施形態の例示的なプロセスフローを示す図である。
【図6A】基板上に配置されたフォトレジスト層の例示的な実施形態の図である。
【図6B】空隙を有するフォトレジスト層の例示的な実施形態の図である。
【図7A】基板上に配置されたフォトレジスト層の例示的な実施形態の図である。
【図7B】空隙を有するフォトレジスト層の例示的な実施形態の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト層(1)の表面(4)にくぼみ(15、15’、24)を形成する方法であって、
前記フォトレジスト層(1)の第1の部分(12)を、第1の照射量の放射エネルギー(7)で露光すること(100、120、101、102、122)と、
前記フォトレジスト層(1)の第2の部分(17)を、第1の照射量(100、120)より少ない第2の照射量の放射エネルギー(7)で露光すること(120、101、122)と、
前記層(1)を高温でベークすること(110、130、131、132)とを含み、
放射エネルギー(7)の前記照射量および前記高温が、前記ベーク(110、130、131、132)によって前記層(1)の前記表面に前記くぼみ(15、15’、24)が形成されるように、前記フォトレジストの材料に依存して選択される、方法。
【請求項2】
前記層(1)の前記ベーク(130、131、132)が、前記層(1)の前記第2の部分(17)を前記第2の照射量の放射エネルギーで露光した(120、101、122)後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層(1)の前記ベーク(110)が、
前記層(1)を、第1のマスク(8)を介して前記層(1)を露光した(100)後にかつ前記第2のマスク(8’)を介して前記層(1)を露光する(120)前にベークすること(100)と、
続いて、前記第2のマスク(8’)を介して前記層(1)を露光した(120)後に前記層(1)をベークすること(130)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フォトレジスト層(1)の前記第1の部分(12)を第1の照射量の放射で露光すること(100、120、102、122)が、前記層(1)の前記第1の部分(12)に対応する透過部分(81)と、前記層(1)の前記第2の部分(17)および第3の部分(11’)に対応する非透過部分(82)とを有する第1のマスク(8)を介して前記層(1)を露光すること(100、102)と、
前記層(1)の前記第1の部分(12)および第2の部分(17)に対応する透過部分(81’)と、前記層(1)の前記第3の部分(11’)に対応する非透過部分(82’)とを有する第2のマスク(8’)を介して前記層(1)を露光すること(120、122)とを含み、
前記フォトレジスト層(1)の前記第2の部分(17)を前記第2の照射量で露光すること(120、122)が、前記第2のマスク(8’)を介して前記層(1)を露光することを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のマスク(8)を介して前記層(1)を露光すること(100、102)が、前記層(1)を約75〜300mJ/cmの範囲の照射量で露光することを含む、請求項3または4に記載の方法、
【請求項6】
前記第2のマスク(8’)を介して前記層(1)を露光すること(120、122)が、前記層(1)を約600〜2000mJ/cmの範囲の照射量で露光することを含む、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記層(1)の第3の部分(11)に前記放射エネルギーを当てないままにすることをさらに含み、
前記層(1)の前記第1の部分(12)を前記第1の照射量で露光すること(101)が、前記層(1)の前記第1の部分(12)に対応する透過部分(81)を有するマスク(8)を介して前記層(1)を露光することを含み、
前記層(1)の前記第2の部分(17)を露光する前記段階(101)が、前記層(1)の前記第2の部分(17)に対応する部分的透過部分(83)も有する前記マスク(8)を介して前記層(1)に露光することを含み、
前記フォトレジスト層(1)の前記第3の部分(11)を前記放射エネルギーに露光されないままにすることが、前記層(1)の前記第3の部分(11)に対応する非透過部分(82)も有するマスク(8)を介して前記層(1)を露光することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記層(1)のベーク(110、130、131、132)を、80〜120℃の範囲の温度で行う、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記層(1)の前記くぼみ(15、15’、24)内にオリフィス(2)を形成することをさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2007−514201(P2007−514201A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543868(P2006−543868)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/040004
【国際公開番号】WO2005/062129
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】