説明

フォーカス可変光学系

【課題】収差を十分に補正し良好な画像を得る。
【解決手段】正パワーの前群光学系10およびこれと同パワーの後群光学系12と、これらの光軸方向の距離を相対変化させる光学系駆動部とを備え、前群光学系10が、レンズL1とレンズL2の接合レンズW2で構成される正パワーの第1群光学系G1と、レンズL3で構成され正パワーの第2群光学系G2と、レンズL4とレンズL5で構成される第3群光学系G3とを備え、後群光学系12が、レンズL7とレンズL6で構成される正パワーの第4群光学系G4と、正パワーのレンズL8で構成される第5群光学系G5と、レンズL10とレンズL9の接合レンズW19で構成され正パワーの第6群光学系G6とを備えるフォーカス可変光学系4を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカス可変光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡装置の対物レンズと結像レンズとの間に設けられ、対物レンズの作動距離を可変にするフォーカス可変光学系が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のフォーカス可変光学系は、対物レンズ側に配置される前群光学系と、結像レンズ側に配置される後群光学系とを備え、前群光学系の前側焦点を対物レンズの後側焦点近傍に配置し、前群光学系または後群光学系の少なくとも一方を光軸方向に駆動することにより、観察倍率の変化を抑えつつ対物レンズの作動距離を変化させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−69689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は概念を述べたものであり、前群光学系および後群光学系がそれぞれ単レンズに単純化されて記載されている。特許文献1の記載に従い単レンズを用いてフォーカス可変光学系を実現しようとすると、収差の影響により良好な画質を得ることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、収差を十分に補正し良好な画像を得ることができるフォーカス可変光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、試料からの光を略平行光束に変換する対物光学系と、該対物光学系により略平行光束に変換された前記光を所定の位置に結像する結像光学系とを備える顕微鏡システムに使用され、前記対物光学系と前記結像光学系との間に配置され、前記対物光学系の作動距離を可変にするフォーカス可変光学系であって、前記対物光学系側から順に配置された、全体として正パワーの前群光学系および全体として前記前群光学系と略等しい正パワーの後群光学系と、該前群光学系および後群光学系の少なくとも一方を光軸方向に駆動し、これら前群光学系および後群光学系の前記光軸方向の距離を相対的に変化させる光学系駆動部とを備え、前記前群光学系が、前記対物光学系側から順に配置された、全体として正パワーの第1群光学系と、全体として正パワーの第2群光学系と、第3群光学系とを備え、前記第1群光学系が、低屈折率・低分散材料のレンズと高屈折率・高分散材料のレンズとを接合してなる接合面が負パワーの1つの接合レンズで構成され、前記第2群光学系が、最も前記対物光学系側に該対物光学系に対して凸面を向けて配置された正パワーのレンズで構成され、前記第3群光学系が、2枚のレンズで構成され、最も前記対物光学系側に配置されたレンズが該対物光学系に対して凹面を向けて配置され、前記後群光学系が、前記対物光学系側から順に配置された、全体として正パワーの第4群光学系と、第5群光学系と、全体として正パワーの第6群光学系とを備え、前記第4群光学系が、前記対物光学系側から順に配置された正パワーのレンズと負パワーのレンズの2つのレンズで構成され、最も前記結像光学系側に配置された前記負パワーのレンズが前記結像光学系に対して凹面を向けて配置され、前記第5群光学系が、最も前記結像光学系側に該結像光学系に対して凸面を向けて配置された正パワーのレンズで構成され、前記第6群光学系が、低分散材料のレンズと高分散材料のレンズとを接合してなる接合面が負パワーの接合レンズで構成されるフォーカス可変光学系を提供する。
【0007】
本発明によれば、試料から発せられ対物光学系により略平行光束に変換された光は、正パワーの前群光学系により結像された後に発散し、正パワーの後群光学系により略平行光束に変換され、結像光学系により結像面に結像される。
【0008】
ここで、前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係にあるときは、対物光学系と前群光学系との間と後群光学系と結像光学系との間において光は共に略平行光束となる。一方、前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係からずれると、対物光学系と前群光学系との間において光が略平行光束からずれて発散したり収束したりし、これによって対物光学系の作動距離が変化する。したがって、光学系駆動部により、前群光学系および後群光学系の少なくとも一方を光軸方向に駆動させることで、対物光学系の作動距離を変化させることができる。
【0009】
この場合において、後群光学系のパワーと前群光学系のパワーとが略等しいので、対物光学系の倍率の絶対値を変えずに、試料からの光を対物光学系から結像光学系にリレーすることができる。また、第1群光学系の接合レンズの接合面により、軸上色収差を補正することができる。また、第2群光学系の最も前記対物光学系側に配置された正パワーのレンズにより対物光学系からの光が収束されるが、このレンズの凸面を対物光学系側に向けることで、球面収差の発生を小さくすることができる。また、第3群光学系の最も対物光学系側に配置されたレンズの凹面により、第2群光学系により発生する球面収差を補正することができる。また、この凹面により像面湾曲およびコマ収差を補正することができる。また、第4群光学系の最も結像光学系側に配置された負パワーのレンズの凹面により、第5群光学系により発生する球面収差を補正することができる。また、この凹面により像面湾曲およびコマ収差を補正することができる。また、第5群光学系の正パワーのレンズにより、前群光学系において収束・発散された光が平行光束に戻されるが、このレンズの凸面を結像光学系側に向けることで、球面収差の発生を小さくすることができる。さらに、第6群光学系の接合レンズの接合面により軸上色収差を補正することができる。以上より、収差を十分に補正し良好な画像を得ることができる。
【0010】
上記発明においては、以下の条件式(1)から条件式(6)を満たすこととしてもよい。
35<ν1L−ν1H<60・・・・・(1)
0.6<|F2/Fa|<0.9・・・(2)
0.1<|RG3/Fa|<0.3・・(3)
0.1<|RG4/Fb|<0.2・・(4)
0.9<|F5/Fb|<1.2・・・(5)
40<ν6L−ν6H<60・・・・・(6)
ここで、ν1Lは前記第1群光学系の接合レンズのうち低屈折率・低分散材料のレンズのd線のアッベ数、ν1Hは前記第1群光学系の接合レンズのうち高屈折率・高分散材料のレンズのd線のアッベ数、Faは前記前群光学系全体の焦点距離、Fbは前記後群光学系全体の焦点距離、F2は前記第2群光学系の焦点距離、RG3は前記第3群光学系における最も前記対物光学系側に配置されたレンズの凹面の曲率半径、RG4は前記第4群光学系における最も前記結像光学系側に配置された負パワーのレンズの凹面の曲率半径、F5は前記第5群光学系の焦点距離、ν6Lは前記第6群光学系の接合レンズのうち低屈折率・低分散材料のレンズのd線のアッベ数、ν6Hは前記第6群光学系の接合レンズのうち高屈折率・高分散材料のレンズのd線のアッベ数である。
【0011】
第1群光学系において、条件式(1)の下限値を下回ると軸上色収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(1)の上限値を上回る硝材はほとんど実在しない。
第2群光学系において、条件式(2)の下限値を下回ると球面収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(2)の上限値を上回ると光が十分に収束させられなくなる。
第3群光学系において、条件式(3)の下限値を下回るとコマ収差が補正過剰になる。一方、条件式(3)の上限値を上回ると球面収差、像面湾曲、コマ収差が補正不足になる。
第4群光学系において、条件式(4)の下限値を下回るとコマ収差が補正過剰になる。一方、条件式(4)の上限値を上回ると球面収差、像面湾曲、コマ収差が補正不足になる。
第5群光学系において、条件式(5)の下限値を下回ると球面収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(5)の上限値を上回ると光が平行光束に戻せなくなる。
第6群光学系において、条件式(6)の下限値を下回ると軸上色収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(6)の上限値を上回る硝材はほとんど実在しない。
【0012】
また、上記発明においては、前記前群光学系の前側焦点位置の値、および、前記後群光学系の後側焦点位置の値がともに負であることとしてもよい。
一般的な顕微鏡装置は、対物光学系の後側焦点位置(物体側がテレセントリック光学系の場合は瞳位置に相当。)の値が負であるので、前群光学系の前側焦点位置の値を負にすることにより、前群光学系の前側焦点を対物光学系の後側焦点の近傍に配置することができる。これにより、対物光学系の作動距離を変化させたときの倍率の変化を抑えることができる。また、後群光学系の後側焦点位置の値も負にすることで、結像光学系と組み合わせるときに全長を短くすることができる。
【0013】
また、上記発明においては、以下の条件式(7)および条件式(8)を満たすこととしてもよい。
−1.8<Fa/F3<0.2・・・(7)
1.5<Fb/F4<2.2・・・・(8)
ここで、F3は前記第3群光学系の焦点距離、F4は前記第4群光学系の焦点距離である。
【0014】
前群光学系の前側焦点を対物光学系の後側焦点の近傍に配置するには、第3群光学系のパワーを小さくするか負の値にするのが好ましい。前群光学系の前側焦点位置の値を負にする場合において、条件式(7)の下限値を下回るとコマ収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(7)の上限値を上回ると前群光学系の前側焦点位置を負の値にすることができない。
【0015】
また、後群光学系の後側焦点位置も負の値にする場合において、条件式(8)の下限値を下回ると後群光学系の後側焦点位置が負の値にならない。一方、条件式(8)の上限値を上回るとコマ収差が大きくなる。
【0016】
また、上記発明においては、以下の条件式(9)を満たすこととしてもよい。
0.1<Fa/Ftl<0.2・・・(9)
ここで、Ftlは前記結像光学系の焦点距離である。
【0017】
条件式(9)は、全長を長くすることなく収差を良好に補正するための条件である。条件式(9)の下限値を下回ると前群光学系と後群光学系との間の光束のNAが大きくなりすぎて種々の収差補正が困難になる。一方、条件式(9)の上限値を上回ると全長が長くなりすぎる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、収差を十分に補正し良好な画像を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォーカス可変光学系を備える顕微鏡システムの断面図である。
【図2】図1の結像光学系の断面図である。
【図3】図1の対物光学系の断面図である。
【図4】図3の対物光学系の先端部の断面図である。
【図5】図1のフォーカス可変光学系の断面図である。
【図6】図5のフォーカス可変光学系の後群光学系を光軸方向に駆動させた様子を示す断面図である。
【図7】(a)はフォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図8】(a)はフォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図9】(a)は本実施形態に係るフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のとき(d10=0、d20=0)の顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図10】(a)は本実施形態に係るフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のとき(d10=0、d20=0)の顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図11】(a)は本実施形態に係るフォーカス可変光学系のd10=+0.2、d20=−0.2のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図12】(a)は本実施形態に係るフォーカス可変光学系のd10=+0.2、d20=−0.2のときの顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図13】(a)は本実施形態に係るフォーカス可変光学系のd10=−0.4、d20=+0.4のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図14】(a)は本実施形態に係るフォーカス可変光学系のd10=−0.4、d20=+0.4のときの顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態の第1の変形例に係るフォーカス可変光学系の断面図である。
【図16】(a)は図15のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図17】(a)は図15のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態の第2の変形例に係るフォーカス可変光学系の断面図である。
【図19】(a)は図18のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図20】(a)は図18のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図21】本発明の一実施形態の第3の変形例に係るフォーカス可変光学系の断面図である。
【図22】(a)は図21のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図23】(a)は図21のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図24】本発明の一実施形態の第4の変形例に係るフォーカス可変光学系の断面図である。
【図25】(a)は図24のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図26】(a)は図24のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【図27】本発明の一実施形態の第5の変形例に係るフォーカス可変光学系の断面図である。
【図28】(a)は図27のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムの球面収差を示し、(b)は同じく非点収差を示し、(c)は同じく歪曲収差を示し、(d)は同じく倍率色収差を示す図である。
【図29】(a)は図27のフォーカス可変光学系の前群光学系と後群光学系とがアフォーカル光学系の関係のときの顕微鏡システムのコマ収差(M)を示し、(b)は同じくコマ収差(S)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るフォーカス可変光学系4について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るフォーカス可変光学系4は、図1に示されるように、照明光が照射された試料Sからの光を略平行光束に変換する対物光学系2と、対物光学系2により略平行光束に変換された光を所定の位置に結像する結像光学系6とを備える顕微鏡システム100に用いることができる。このフォーカス可変光学系4は、対物光学系2と結像光学系6との間に配置されるようになっている。例えば、図1において、対物光学系2とフォーカス可変光学系4との間の距離は1mmとし、フォーカス可変光学系4と結像光学系6との間の距離は120mmとする。
【0021】
以下の各実施形態において、対物光学系2は、像側への射出光が平行光束となる無限遠補正型の対物レンズであり、それ自体では結像しない。そこで、例えば、以下の表1に示すレンズデータを有し、図2にレンズ断面を示す結像光学系(焦点距離180mm、前側焦点位置−192.01mm、後側焦点位置157.044mm)4と組み合わせて使用される。図2〜図27において、符号Rsは番号s面の曲面、符号dsは面番号sの面間隔を示している。
【0022】
【表1】

【0023】
表1〜表28において、符号Sは面番号、符号Rは曲率半径(mm)、符号dは面間隔(mm)、符号ndはd線(587.56nm)までの屈折率、符号νはd線(587.56nm)のアッベ数、符号ERは有効半径(mm)を示している。
【0024】
対物光学系2のレンズデータを表2,3に、そのレンズ断面を図3に示す。
また、図4に対物光学系の先端部2aの部分を拡大した断面図を示す。表3は表2の続きである。
この対物光学系2は先端光学系2aと基端光学系2bで構成されている。
先端光学系2aは、平行平板からなるTD1と平凸レンズTDを接合した第1レンズ成分と、両凸レンズTD3と両凹レンズTD4からなる第2レンズ成分と、両凸レンズTD5と両凹レンズTD6からなる第3レンズ成分と、両凸レンズTD7からなる第4レンズ成分と、メニスカスレンズTD8と平凸レンズTD9からなる第5レンズ成分と、平凸レンズTD10と平行平板TD11からなる第6レンズ成分と両凸レンズTD12と両凹レンズTD13からなる第7レンズ成分からなる。
また、基端光学系2bは、平行平板T1からなる第1レンズ成分と、両凸レンズT2および両凹レンズT3の接合レンズで正屈折力を有する第2レンズ成分と、負メニスカスレンズT4からなる第3レンズ成分と、正メニスカスレンズT5からなる第4レンズ成分と、負メニスカスレンズT6および正メニスカスレンズT7の接合レンズで正屈折力を有する第5レンズ成分と、両凸レンズT8および負メニスカスレンズT9の接合レンズで正屈折力を有する第6レンズ成分とから構成されている。
物体面から第1面(S=1)の間隔*0(対物光学系作動距離)はフォーカス可変光学系4の条件により変化する(値は表7を参照。)。また、フォーカス可変光学系4がない場合は、0.204(mm)である。
【0025】
【表2】

【表3】

【0026】
フォーカス可変光学系4は、図5に示すように、対物光学系2側から順に配置された前群光学系10および後群光学系12と、前群光学系10および後群光学系12の少なくとも一方を光軸方向に駆動し、これら前群光学系10および後群光学系12の光軸方向の距離を相対的に変化させる光学系駆動部(図示略)とを備えている。このフォーカス可変光学系4は、表4に示すレンズデータを有している。
【0027】
【表4】

【0028】
図5および表4において、第10面(s=10)が前群光学系10の後側焦点に一致するようにd9の値を設定し、第11面(s=11)が後群光学系12の前側焦点に一致するようにd11の値を設定している。R10、R11は仮想面であり、実際にはガラスは無い。また、面間隔d10=0、および、面間隔d20=0のときにアフォーカル光学系として成立するようになっている。面間隔d10および面間隔d20は後群光学系12が光軸方向に動くことによりその値が変わるようになっている(値は表7を参照。)。
【0029】
前群光学系10および後群光学系12は、全体として共に略等しい正パワーを有している。前群光学系10全体の焦点距離Faは、表5に示すように、後群光学系12全体の焦点距離Fbに略等しくなっている。
【0030】
【表5】

【0031】
前群光学系10は、対物光学系2側から順に配置された第1群光学系G1と、第2群光学系G2と、第3群光学系G3とを備えている。
第1群光学系G1は、低屈折率・低分散ガラス(低分散材料)からなる両凸レンズL1と高屈折率・高分散ガラス(高分散材料)からなる凹平レンズL2とを接合した1つの接合レンズW2で構成され、全体として正パワーを有している(焦点距離F1が正。)。接合レンズW2の両凸レンズL1と凹平レンズL2との接合面R2は負パワーを有している。
【0032】
また、第1群光学系G1は、以下の条件式(1)を満たすことが好ましい。
35<ν1L−ν1H<60・・・・・・(1)
ここで、
ν1Hは、接合レンズW2のうち高屈折率・高分散ガラスからなる凹平レンズL2のd線のアッベ数、
ν1Lは、接合レンズW2のうち低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL1のd線のアッベ数である。
【0033】
第2群光学系G2は、正パワーのメニスカス単レンズL3(焦点距離F2が正。)で構成されている。メニスカス単レンズL3は、対物光学系2に対して凸面R4を向けて配置されている。
【0034】
また、第2群光学系G2は、以下の条件式(2)を満たすことが好ましい。
0.6<|F2/Fa|<0.9・・・(2)
ここで、
Faは、前群光学系10全体の焦点距離、
F2は、第2群光学系G2の焦点距離である。
【0035】
第3群光学系G3は、対物光学系2側から順に配置された凹平レンズL4と凸平レンズL5の2枚の単レンズで構成されている。対物光学系2側に配置された凹平レンズL4は、対物光学系2に対して凹面R6を向けて配置されている(凹平レンズL4と凸平レンズL5の合成焦点距離はF3。)。
【0036】
また、第3群光学系G3は、以下の条件式(3)を満たすことが好ましい。
0.1<|RG3/Fa|<0.3・・・(3)
ここで、RG3は、凹平レンズL4の凹面R6の曲率半径である。
【0037】
後群光学系12は、対物光学系2側から順に配置された第4群光学系G4と、第5群光学系G5と、第6群光学系G6とを備えている。
第4群光学系G4は、対物光学系2側から順に配置された両凸レンズL6と負パワーメニスカスレンズL7の2枚の単レンズで構成され、全体として正パワーを有している(焦点距離F4が正。)。この第4群光学系G4は、結像光学系6側に配置された負パワーメニスカスレンズL7が結像光学系6に対して凹面R15を向けて配置されている。
【0038】
また、第4群光学系G4は、以下の条件式(4)を満たすことが好ましい。
0.1<|RG4/Fb|<0.2・・・(4)
ここで、
Fbは、後群光学系12全体の焦点距離、
G4は、負パワーメニスカスレンズL7の凹面R15の曲率半径である。
【0039】
第5群光学系G5は、正パワーの両凸単レンズL8(焦点距離F5が正。)で構成されている。両凸単レンズL8により、第5群光学系G5の最も結像光学系6側の面は、結像光学系6に対して凸面R17を向けて配置されている。
【0040】
また、第5群光学系G5は、以下の条件式(5)を満たすことが好ましい。
0.9<|F5/Fb|<1.2・・・(5)
ここで、F5は、第5群光学系G5の焦点距離である。
【0041】
第6群光学系G6は、高屈折率・高分散ガラスからなる両凹レンズL9と低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL10とを接合した1つの接合レンズW19で構成され、全体として正パワーを有している(焦点距離F6が正。)。接合レンズW19の両凹レンズL9と両凸レンズL10との接合面R19は負パワーを有している。
【0042】
また、第6群光学系G6は、以下の条件式(6)を満たすことが好ましい。
40 < ν6L−ν6H < 60・・・・・・(6)
ここで、
ν6Lは、接合レンズW19のうち高屈折率・高分散ガラスからなる両凹レンズL9のd線のアッベ数、
ν6Hは、接合レンズW19のうち低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL10のd線のアッベ数である。
【0043】
上記条件式(1)〜(6)の値を表6に示す。
【表6】

【0044】
このように構成されたフォーカス可変光学系4によれば、試料Sに照明光を照射すると、試料Sからの光が対物光学系2により略平行光束に変換され、正パワーの前群光学系10により結像される。その後、光は発散し、正パワーの後群光学系12により略平行光束に変換され、結像光学系6により結像面に結像される。
【0045】
ここで、前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係にあるときは、対物光学系2と前群光学系10との間および後群光学系12と結像光学系6との間において、光は共に略平行光束となる。一方、前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係からずれると、対物光学系2と前群光学系10との間において光が略平行光束からずれて発散したり収束したりし、これによって対物光学系2の作動距離が変化する。
【0046】
したがって、例えば、図6に示すように、光学系駆動部の作動により、後群光学系12の全体を光軸方向に駆動させることにより、対物光学系2の作動距離を変化させることができる。後群光学系12の位置、対物光学系2の作動距離、フォーカス可変光学系4全体の倍率、対物光学系2の物体側NAの変化を表7に示す。表7によれば、後群光学系12の移動に対してフォーカス可変光学系4全体の倍率はほとんど変化しないが、対物光学系2の作動距離は略線形に変化していることが分かる。
【0047】
【表7】

【0048】
本実施形態において、後群光学系12のパワーを前群光学系10のパワーと略等しくすることで、対物光学系2の倍率の絶対値を変えずに、試料Sからの光を対物光学系2から結像光学系6にリレーすることができる。
【0049】
また、第1群光学系G1の接合レンズW2の接合面R2により、軸上色収差を補正することができる。第1群光学系G1において、条件式(1)の下限値を下回ると軸上色収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(1)の上限値を上回る硝材はほとんど実在しない。
【0050】
また、第2群光学系G2のメニスカス単レンズL3により、対物光学系2からの光が収束される。このメニスカス単レンズL3の凸面R4を対物光学系2側に向けて配置することで、球面収差の発生を小さくすることができる。第2群光学系G2において、条件式(2)の下限値を下回ると球面収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(2)の上限値を上回ると光が十分に収束させられなくなる。
【0051】
また、第3群光学系G3の凹平レンズL4の凹面R6により、第2群光学系G2により発生する球面収差を補正することができる。また、この凹面R6により像面湾曲およびコマ収差を補正することができる。第3群光学系G3において、条件式(3)の下限値を下回るとコマ収差が補正過剰になる。一方、条件式(3)の上限値を上回ると球面収差、像面湾曲、コマ収差が補正不足になる。
【0052】
また、第4群光学系G4の負パワーメニスカスレンズL7の凹面R15により、第5群光学系G5により発生する球面収差を補正することができる。また、この凹面R15により像面湾曲およびコマ収差を補正することができる。第4群光学系G4において、条件式(4)の下限値を下回るとコマ収差が補正過剰になる。一方、条件式(4)の上限値を上回ると球面収差、像面湾曲、コマ収差が補正不足になる。
【0053】
また、第5群光学系G5の両凸単レンズL8により、前群光学系10において収束・発散された光が平行光束に戻される。結像光学系6側に両凸単レンズL8の凸面R17を向けることで、球面収差の発生を小さくすることができる。第5群光学系G5において、条件式(5)の下限値を下回ると球面収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(5)の上限値を上回ると光が平行光束に戻せなくなる。
【0054】
さらに、第6群光学系G6の接合レンズW19の接合面R19により軸上色収差を補正することができる。第6群光学系G6において、条件式(6)の下限値を下回ると軸上色収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(6)の上限値を上回る硝材はほとんど実在しない。
【0055】
ここで、参考例として、フォーカス可変光学系を備えない顕微鏡システム、すなわち、対物光学系2と結像光学系6とからなる顕微鏡システムの使用データを表8に、その収差を図7(a),(b),(c),(d)および図8(a),(b)に示す。図7(a)は球面収差を示し、図7(b)は非点収差を示し、図7(c)は歪曲収差を示し、図7(d)は倍率色収差を示し、図8(a)はコマ収差(M)を示し、図8(b)はコマ収差(S)を示している。また、図7(a)〜(d)および図8(a),(b)は結像面での収差を示し、符号NAは物体側NA、符号FIYは物体高を示している。また、非点収差においては、実線がメリディオナル面の収差、点線がサジタル面の収差を表している。以下、対応する図9(a)〜(d)および図10(a),(b)、図11(a)〜(d)および図12(a),(b)、図13(a)〜(d)および図14(a),(b)、図16(a)〜(d)および図17(a),(b)、図19(a)〜(d)および図20(a),(b)、図22(a)〜(d)および図23(a),(b)、図25(a)〜(d)および図26(a),(b)、図28(a)〜(d)および図29(a),(b)において同様である。
【0056】
【表8】

【0057】
本実施形態に係るフォーカス可変光学系4を備える顕微鏡システム100の収差を図9(a)〜(d)および図10(a),(b)、図11(a)〜(d)および図12(a),(b)、図13(a)〜(d)および図14(a),(b)に示す。図9(a)〜(d)および図10(a),(b)は前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係、すなわち、d10=0、d20=0のときの収差を示している。図11(a)〜(d)および図12(a),(b)はd10=+0.2、d20=−0.2のときの収差を示している。図13(a)〜(d)および図14(a),(b)はd10=−0.4、d20=+0.4のときの収差を示している。
【0058】
本実施形態に係るフォーカス可変光学系4を備える顕微鏡システム100とフォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムとを比較すると、フォーカス可変光学系4の有無により、本実施形態に係るフォーカス可変光学系4を備える顕微鏡システム100は球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差の変化が小さいことが分かる。したがって、本実施形態に係るフォーカス可変光学系4によれば、収差を十分に補正し良好な画像を得ることができる。
【0059】
本実施形態においては、フォーカス可変光学系4が、以下の条件式(7)および条件式(8)を満たすこととしてもよい。
−1.8<Fa/F3<0.2・・・(7)
1.5<Fb/F4<2.2・・・・(8)
ここで、
F3は、第3群光学系G3の焦点距離、
F4は、第4群光学系G4の焦点距離である。
【0060】
条件式(7)を満たすことで、前群光学系10の前側焦点位置(前群光学系10の最も対物光学系2側の面を原点としたときの前群光学系10全体の前側焦点の座標。)Ffaの値を負にし、対物光学系2の後側焦点と前群光学系10の前側焦点とのずれを小さくすることができる。例えば、ずれが4.9mmとなる。このようにすることで、後群光学系12を光軸方向に動かした場合に、フォーカス可変光学系4全体の倍率の変化を小さくすることができる。この場合において、条件式(7)の下限値を下回るとコマ収差が大きくなりすぎる。一方、条件式(7)の上限値を上回ると前群光学系10の前側焦点位置を負の値にすることができない。
【0061】
また、条件式(8)を満たすことで、後群光学系12の後側焦点位置(後群光学系12の最も結像光学系6側の面を原点としたときの後群光学系12全体の後側焦点の座標。)Fbbの値を負にすることができる。このようにすることで、フォーカス可変光学系4が長くならないようにすることができる。この場合において、条件式(8)の下限値を下回ると後群光学系12の後側焦点位置が負の値にならない。一方、条件式(8)の上限値を上回るとコマ収差が大きくなる。
【0062】
また、本実施形態においては、フォーカス可変光学系4が、以下の条件式(9)を満たすこととしてもよい。
0.1<Fa/Ftl<0.2・・・(9)
ここで、Ftlは、結像光学系6の焦点距離である。
【0063】
条件式(9)は、フォーカス可変光学系4の全長を長くすることなく収差を良好に補正するための条件である。前群光学系10および後群光学系12の焦点距離は、例えば、それぞれ22.5mmとする。条件式(9)を満たすことで、フォーカス可変光学系4の全長が長くなりすぎず、かつ、収差も良好に補正することができる。この場合において、条件式(9)の下限値を下回ると前群光学系10と後群光学系12との間の光束のNAが大きくなりすぎて種々の収差補正が困難になる。一方、条件式(9)の上限値を上回ると全長が長くなりすぎる。
【0064】
また、本実施形態は以下のように変形することができる。
本実施形態においては、第6群光学系G6が、高屈折率・高分散ガラスからなる両凹レンズL9と低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL10とを接合した1つの接合レンズW2で構成されることとしたが、例えば、第1の変形例に係るフォーカス可変光学系14としては、図15に示すように、第6群光学系G6が、高分散ガラスからなる平凹レンズL19と低分散ガラスからなる両凸レンズL10を接合した1つの接合レンズW29で構成されることとしてもよい。
【0065】
この場合、第6群光学系G6は全体として正パワーを有し(焦点距離F6が正。)、接合レンズ12の接合面R19が負パワーを有することとすればよい。また、条件式(1)〜(6)をすべて満たし、球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差を良好に補正することが望ましい。第1群光学系G1〜第5群光学系G5の構成および条件式(7)〜(9)は上記一実施形態と同様である。本変形例に係るフォーカス可変光学系14は、表9に示すレンズデータを有している。
【0066】
【表9】

【0067】
前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係、すなわち、面間隔d10=0,d20=0のときの収差を図16(a)〜(d)および図17(a),(b)に示す。後群光学系12が光軸方向に動いたことによって面間隔d10,d20が変化したときのフォーカス可変光学系14の倍率、対物光学系2の物体側NA、対物光学系2の作動距離(対物光学系2、フォーカス可変光学系14、結像光学系6を組み合わせたときの値。)を表10に示す。また、フォーカス可変光学系14の各パラメータの値を表11に示す。さらに、条件式(1)〜(8)の値を表12に示す。
【0068】
【表10】

【表11】

【表12】

【0069】
ここで、フォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムの収差(図7(a)〜(d)および図8(a),(b))と、本変形例に係るフォーカス可変光学系14を備える顕微鏡システム100の収差(図16(a)〜(d)および図17(a),(b))とを比較すると、フォーカス可変光学系14の有無により、本変形例に係るフォーカス可変光学系14を備える顕微鏡システム100の球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差の変化が小さいことが分かる。
【0070】
次に、第2の変形例に係るフォーカス可変光学系24としては、例えば、以下のように変形することとしてもよい。すなわち、上記一実施形態においては、第3群光学系G3が凹平レンズL4と凸平レンズL5の2枚の単レンズで構成されることとしたが、本変形例では、図18に示すように、第3群光学系G3が、凹平レンズL4と凸平レンズL5を接合した接合レンズW27で構成され、対物光学系2側に配置された凹平レンズL4が対物光学系2に対して凹面R6を向けて配置されることとしてもよい。また、本変形例では、第4群光学系G4の結像光学系6側に配置された負パワーメニスカスレンズL7が結像光学系6に対して凹面R14を向けて配置されていることとすればよい。
【0071】
また、上記一実施形態においては、第5群光学系G5が正パワーの両凸単レンズL8で構成されることとしたが、本変形例では、第5群光学系G5が正パワーの平凸単レンズL28(焦点距離F5が正。)で構成されることとしてもよい。この場合、結像光学系6に対して平凸単レンズL28が凸面R16を向けて配置されることとすればよい。また、上記一実施形態においては、第6群光学系G6が高屈折率・高分散ガラスからなる両凹レンズL9と低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL10とを接合した1つの接合レンズW9で構成されることとしたが、第6群光学系G6が高分散ガラスからなる平凹レンズL29と低分散ガラスからなる両凸レンズL10を接合した1つの接合レンズW29で構成されることとしてもよい。この場合、接合レンズW29の接合面R18が負パワーを有することとすればよい。
【0072】
また、条件式(1)〜(6)をすべて満たし、球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差を良好に補正することが望ましい。第1群光学系G1、第2群光学系G2、第4群光学系G4の構成および条件式(8),(9)は上記一実施形態と同様である。本変形例に係るフォーカス可変光学系24は、表13に示すレンズデータを有している。
【0073】
【表13】

【0074】
前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係、すなわち、面間隔d9=0,d19=0のときの収差を図19(a)〜(d)および図20(a),(b)に示す。後群光学系12が光軸方向に動いたことによって面間隔d9,d19が変化したときのフォーカス可変光学系24の倍率、対物光学系2の物体側NA、対物光学系2作動距離(対物光学系2、フォーカス可変光学系24、結像光学系6を組み合わせたときの値。)を表14に示す。また、フォーカス可変光学系24の各パラメータの値を表15に示す。さらに、条件式(1)〜(8)の値を表16に示す。
【0075】
【表14】

【表15】

【表16】

【0076】
ここで、フォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムの収差(図7(a)〜(d)および図8(a),(b))と、本変形例に係るフォーカス可変光学系24を備える顕微鏡システム100の収差(図19(a)〜(d)および図20(a),(b))とを比較すると、フォーカス可変光学系24の有無により、本変形例に係るフォーカス可変光学系24を備える顕微鏡システム100の球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差の変化が小さいことが分かる。
【0077】
また、本変形例においても、条件式(7)を満たすことが望ましい、このようにすることで、前群光学系10の前側焦点位置(Ffa)の値を負にし、対物光学系2の後側焦点と前群光学系10の前側焦点とのずれを小さくすることができる。例えば、ずれが3.9mmとなる。したがって、上記一実施形態および第1の変形例よりも、対物光学系2の後側焦点と前群光学系10の前側焦点とのずれをさらに小さくすることができる。これにより、後群光学系12を光軸方向に動かした場合に、フォーカス可変光学系24全体の倍率の変化をより小さくすることができる。
【0078】
次に、第3の変形例に係るフォーカス可変光学系34としては、例えば、上記第2の変形例をさらに以下のように変形することとしてもよい。すなわち、第2の変形例においては、第2群光学系G2が正パワーのメニスカス単レンズL3で構成されることとしたが、図21に示すように、本変形例では第2群光学系G2が正パワーの両凸単レンズL33(焦点距離F2が正。)で構成されることとしてもよい。この場合、対物光学系2に対して両凸単レンズL33が凸面R4が第2群光学系G2の最も対物光学系2側の面にあたり、対物光学系2に向けて凸面R4を向けた配置になる。
【0079】
また、第2の変形例においては、第3群光学系G3が凹平レンズL4と凸平レンズL5の2枚の単レンズで構成されることとしたが、本変形例では第3群光学系G3が正パワーのメニスカスレンズL34と負パワーのメニスカスレンズL35を接合した接合レンズW37で構成されることとしてもよい。この場合、対物光学系2側にメニスカスレンズL34を対物光学系2に対して凹面R6を向けて配置することとすればよい。
【0080】
また、条件式(1)〜(6)をすべて満たし、球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差を良好に補正することが望ましい。第1群光学系G1、第4群光学系G4、第5群光学系G5、第6群光学系G6の構成および条件式(8),(9)は第2の変形例と同様である。本変形例に係るフォーカス可変光学系34は、表17に示すレンズデータを有している。
【0081】
【表17】

【0082】
前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係、すなわち、面間隔d9=0,d19=0のときの収差を図22(a)〜(d)および図23(a),(b)に示す。後群光学系12が光軸方向に動いたことによって面間隔d9,d19が変化したときのフォーカス可変光学系34の倍率、対物光学系2の物体側NA、対物光学系2の作動距離(対物光学系2、フォーカス可変光学系34、結像光学系6を組み合わせたときの値。)を表18に示す。また、フォーカス可変光学系34の各パラメータの値を表19に示す。さらに、条件式(1)〜(8)の値を表20に示す。
【0083】
【表18】

【表19】

【表20】

【0084】
ここで、フォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムの収差(図7(a)〜(d)および図8(a),(b))と、本変形例に係るフォーカス可変光学系34を備える顕微鏡システム100の収差(図22(a)〜(d)および図23(a),(b))とを比較すると、フォーカス可変光学系34の有無により、本変形例に係るフォーカス可変光学系34を備える顕微鏡システム100の球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差の変化が小さいことが分かる。
【0085】
本変形例においては、条件式(7)の値を上限に近いところに設定することが望ましい。このようにすることで、上記一実施形態および各変形例と比較して、前群光学系10の前側焦点を対物光学系2の接続部に対して近い位置に設定することができる(例えば、Ffa=−10.87。)。対物光学系2の後側焦点が胴つきに近い位置にある対物光学系2と組み合わせるときに倍率変化を小さくするのに有効である。
【0086】
次に、第4の変形例に係るフォーカス可変光学系44としては、例えば、上記一実施形態を以下のように変形することとしてもよい。すなわち、上記一実施形態においては、第2群光学系G2がメニスカス単レンズL3で構成されることとしたが、図24に示すように、本変形例では第2群光学系G2が正パワーの両凸単レンズL43(焦点距離F2が正。)で構成されることとしてもよい。この場合、対物光学系2に対して両凸単レンズL43が凸面R4が第2群の最も対物光学系2側の面にあたり、対物光学系2に向けて凸面R4を向けた配置になる。
【0087】
また、上記一実施形態においては、第4群光学系G4が両凸レンズL6と負パワーメニスカスレンズL7の2枚の単レンズで構成されることとしたが、本変形例では第4群光学系G4が両凸レンズL6と平凹レンズL47の2枚の単レンズで構成されることとしてもよい。この場合、第4群光学系G4全体で正のパワーを有し(焦点距離F4が正。)、かつ、結像光学系6側に平凹レンズL7を結像光学系6に対して凹面R15を向けて配置することとすればよい。
【0088】
また、上記一実施形態においては、第6群光学系G6が、両凹レンズL9と両凸レンズL10とを接合した1つの接合レンズW9で構成されることとしたが、本変形例では第6群光学系G6が高屈折率・高分散ガラスからなる平凹レンズL49と低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL10を接合した1つの接合レンズW49で構成されることとしてもよい。この場合、第6群光学系G6全体で正パワーを有し(焦点距離F6が正。)、接合レンズW49の接合面R19が負パワーを有することとすればよい。
【0089】
また、条件式(1)〜(6)を満たし、球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差を良好に補正することが望ましい。第1群光学系G1、第3群光学系G3および第5群光学系G5の構成および条件式(7)、(8)、(9)については上記一実施形態と同様である。本変形例に係るフォーカス可変光学系44は、表21に示すレンズデータを有している。
【0090】
【表21】

【0091】
前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係、すなわち、d10=0、d20=0のときの収差を図25(a)〜(d)および図26(a),(b)に示す。後群光学系12が光軸方向に動いたことによって面間隔d10,d20が変化したときのフォーカス可変光学系44の倍率、対物光学系2の物体側NA、対物光学系2の作動距離(対物光学系2、フォーカス可変光学系44、結像光学系6を組み合わせたときの値。)を表22に示す。また、フォーカス可変光学系44の各パラメータの値を表23に示す。さらに、条件式(1)〜(8)の値を表24に示す。
【0092】
【表22】

【表23】

【表24】

【0093】
ここで、フォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムの収差(図7(a)〜(d)および図8(a),(b))と、本変形例に係るフォーカス可変光学系44を備える顕微鏡システム100の収差(図25(a)〜(d)および図26(a),(b))とを比較すると、フォーカス可変光学系44の有無により、本変形例に係るフォーカス可変光学系44を備える顕微鏡システム100の球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差の変化が小さいことが分かる。
【0094】
次に、第5の変形例に係るフォーカス可変光学系54としては、例えば、上記一実施形態を以下のように変形することとしてもよい。すなわち、上記一実施形態においては、第4群光学系G4が両凸レンズL6と負パワーメニスカスレンズL7の2枚の単レンズで構成されることとしたが、図27に示すように、本変形例では第4群光学系G4が両凸レンズL6と平凹レンズL57の2枚の単レンズで構成されることとしてもよい。この場合、第4群光学系G4全体で正のパワーを有し(焦点距離F4が正。)、かつ、結像光学系6側に平凹レンズL7を結像光学系6に対して凹面R15を向けて配置することとすればよい。
【0095】
また、上記一実施形態においては、第6群光学系G6が、両凹レンズL9と両凸レンズL10とを接合した1つの接合レンズW9で構成されることとしたが、本変形例では第6群光学系G6が高屈折率・高分散ガラスからなる平凹レンズL59と低屈折率・低分散ガラスからなる両凸レンズL10を接合した1つの接合レンズW59で構成されることとしてもよい。この場合、第6群光学系G6全体で正パワーを有し(焦点距離F6が正。)、接合レンズW59の接合面R19が負パワーを有することとすればよい。
【0096】
また、条件式(1)〜(6)を満たし、球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差を良好に補正することが望ましい。第1群光学系G1〜第3群光学系G3、第5群光学系G5および第6群光学系G6および条件式(7)、(8)、(9)は上記一実施形態と同様である。本変形例に係るフォーカス可変光学系54は、表25に示すレンズデータを有している。
【0097】
【表25】

【0098】
前群光学系10と後群光学系12とがアフォーカル光学系の関係、すなわち、d10=0,d20=0のときの収差を図28(a)〜(d)および図29(a),(b)に示す。後群光学系12が光軸方向に動いたことによって面間隔d10,d20が変化したときのフォーカス可変光学系54の倍率、対物光学系2の物体側NA、対物光学系2の作動距離(対物光学系2、フォーカス可変光学系54、結像光学系6を組み合わせたときの値。)を表26に示す。また、フォーカス可変光学系54の各パラメータの値を表27に示す。さらに、条件式(1)〜(8)の値を表28に示す。
【0099】
【表26】

【表27】

【表28】

【0100】
ここで、フォーカス可変光学系を備えない参考例としての顕微鏡システムの収差(図7(a)〜(d)および図8(a),(b))と、本変形例に係るフォーカス可変光学系54を備える顕微鏡システム100の収差(図28(a)〜(d)および図29(a),(b))とを比較すると、フォーカス可変光学系54の有無により、本変形例に係るフォーカス可変光学系54を備える顕微鏡システム100の球面収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差の変化が小さいことが分かる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記一実施形態およびその変形例においては、後群光学系を動かすこととしたが、光学系駆動部の作動により、前群光学系10および後群光学系12の少なくとも一方を光軸方向に動かすこととすればよく、前群光学系10を動かすこととしてもよいし、前群光学系10と後群光学系12の両方を動かすこととしてもよい。
また、上記一実施形態および各変形例に係るフォーカス光学系4,14,24,34,44,54は、ステージ上で試料S(各種生体試料)を観察する顕微鏡や顕微鏡スライドを観察する顕微鏡に限られず、生体を直接的に観察するような顕微鏡的観察機能を有するあらゆる観察装置に適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0102】
2 対物光学系
4,14,24,34,44,54 フォーカス光学系
6 結像光学系
10 前群光学系
12 後群光学系
G1 第1群光学系
G2 第2群光学系
G3 第3群光学系
G4 第4群光学系
G5 第5群光学系
G6 第6群光学系
100 顕微鏡システム
S 標本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からの光を略平行光束に変換する対物光学系と、該対物光学系により略平行光束に変換された前記光を所定の位置に結像する結像光学系とを備える顕微鏡システムに使用され、前記対物光学系と前記結像光学系との間に配置され、前記対物光学系の作動距離を可変にするフォーカス可変光学系であって、
前記対物光学系側から順に配置された、全体として正パワーの前群光学系および全体として前記前群光学系と略等しい正パワーの後群光学系と、
該前群光学系および後群光学系の少なくとも一方を光軸方向に駆動し、これら前群光学系および後群光学系の前記光軸方向の距離を相対的に変化させる光学系駆動部とを備え、
前記前群光学系が、前記対物光学系側から順に配置された、全体として正パワーの第1群光学系と、全体として正パワーの第2群光学系と、第3群光学系とを備え、
前記第1群光学系が、低屈折率・低分散材料のレンズと高屈折率・高分散材料のレンズとを接合してなる接合面が負パワーの1つの接合レンズで構成され、
前記第2群光学系が、最も前記対物光学系側に該対物光学系に対して凸面を向けて配置された正パワーのレンズで構成され、
前記第3群光学系が、2枚のレンズで構成され、最も前記対物光学系側に配置されたレンズが該対物光学系に対して凹面を向けて配置され、
前記後群光学系が、前記対物光学系側から順に配置された、全体として正パワーの第4群光学系と、第5群光学系と、全体として正パワーの第6群光学系とを備え、
前記第4群光学系が、前記対物光学系側から順に配置された正パワーのレンズと負パワーのレンズの2つのレンズで構成され、最も前記結像光学系側に配置された前記負パワーのレンズが前記結像光学系に対して凹面を向けて配置され、
前記第5群光学系が、最も前記結像光学系側に該結像光学系に対して凸面を向けて配置された正パワーのレンズで構成され、
前記第6群光学系が、低屈折率・低分散材料のレンズと高屈折率・高分散材料のレンズとを接合してなる接合面が負パワーの1つの接合レンズで構されるフォーカス可変光学系。
【請求項2】
以下の条件式(1)から条件式(6)を満たす請求項1に記載のフォーカス可変光学系。
35<ν1L−ν1H<60・・・・・(1)
0.6<|F2/Fa|<0.9・・・(2)
0.1<|RG3/Fa|<0.3・・(3)
0.1<|RG4/Fb|<0.2・・(4)
0.9<|F5/Fb|<1.2・・・(5)
40<ν6L−ν6H<60・・・・・(6)
ここで、
ν1Lは、前記第1群光学系の接合レンズのうち低屈折率・低分散材料のレンズのd線のアッベ数、
ν1Hは、前記第1群光学系の接合レンズのうち高屈折率・高分散材料のレンズのd線のアッベ数、
Faは、前記前群光学系全体の焦点距離、
Fbは、前記後群光学系全体の焦点距離、
F2は、前記第2群光学系の焦点距離、
G3は、前記第3群光学系における最も前記対物光学系側に配置されたレンズの凹面の曲率半径、
G4は、前記第4群光学系における最も前記結像光学系側に配置された負パワーのレンズの凹面の曲率半径、
F5は、前記第5群光学系の焦点距離、
ν6Lは、前記第6群光学系の接合レンズのうち低屈折率・低分散材料のレンズのd線のアッベ数、
ν6Hは、前記第6群光学系の接合レンズのうち高屈折率・高分散材料のレンズのd線のアッベ数である。
【請求項3】
前記前群光学系の前側焦点位置の値、および、前記後群光学系の後側焦点位置の値がともに負である請求項1または請求項2に記載のフォーカス可変光学系。
【請求項4】
以下の条件式(7)および条件式(8)を満たす請求項3に記載のフォーカス可変光学系。
−1.8<Fa/F3<0.2・・・(7)
1.5<Fb/F4<2.2・・・・(8)
ここで、
F3は、前記第3群光学系の焦点距離、
F4は、前記第4群光学系の焦点距離である。
【請求項5】
以下の条件式(9)を満たす請求項1から請求項4のいずれかに記載のフォーカス可変光学系。
0.1<Fa/Ftl<0.2・・・(9)
ここで、Ftlは、前記結像光学系の焦点距離である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−212128(P2012−212128A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52508(P2012−52508)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】