説明

フォーリン・ネットワーク内のモバイル・ノードにデータをルーティングする方法およびシステム

ホーム・ネットワークを有し、前記ホーム・ネットワークとは異なるフォーリン・ネットワークに接続されたモバイル・ノードに、対応するネットワーク内の対応するノードから発する少なくとも1つのデータ・パケットを配信する方法であって、モバイル・ノードは、前記ホーム・ネットワークに属する長期IPアドレスと前記フォーリン・ネットワークのフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータのアドレスであるケアオブアドレスとを有し、前記ネットワークは、少なくとも1つのデータ・ストレージを含むIPネットワークに、それぞれホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ、対応するネットワーク・アクセス・ルータ、および前記フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータによって接続され、方法は、
a.前記少なくとも1つのデータ・パケットをインターセプトし、その宛先IPアドレスを検出することと、
b.前記少なくとも1つのデータ・ストレージを調査することであって、これによって前記モバイル・ノードの前記ケアオブアドレスは、前記少なくとも1つのパケットの宛先IPアドレスを使用することによって取り出される、調査することと、
c.前記少なくとも1つのデータ・パケットを前記ケアオブアドレスに直接に転送し、前記長期IPアドレスを前記フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータに示すことと
を含む、方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク・ルーティングに関し、より具体的には、モバイル・ノードのホーム・ネットワークとは異なるフォーリン・ネットワーク(foreign network)に入るモバイル・ノードの接続性を管理するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル・インターネット・プロトコル(IP)は、ある接続点から、その経路に沿って訪問される異なるネットワーク内の別の接続点に自由に移動することを可能にする。より具体的には、モバイルIPプロトコルは、モバイル・ノードがあるアクセス・ルータから別のアクセス・ルータへのハンドオーバ中に接続性を維持することを可能にするアクションを記述する。
【0003】
モバイルIPは、Internet Engineering Task Force(IETF)から見つけることができる仕様書および類似物、たとえばRFC(Request For Comments)3344およびRFC 3776に記載されている。モバイルIPは、モバイル・ノードを、その現在のインターネットへの接続点にかかわりなく、そのホーム・アドレスによって識別することを可能にする。モバイル・ノードがホーム・ネットワークから離れている時には、モバイル・ノードは、ケアオブアドレス(care−of−address)をも関連付けられ、このケアオブアドレスは、モバイル・ノードの現在位置に関する情報を提供する。通常、アクセス・ルータの間のハンドオーバ中には、ケアオブアドレスは変化するが、ホーム・アドレスは同一のままになる。
【0004】
次に、技術的現状のモバイルIPプロトコルの動作のおおまかな概要を提供する。
−モビリティ・エージェント(すなわち、フォーリン・エージェントおよびホーム・エージェント)は、Agent Advertisementメッセージを介してその存在をアドバタイズする。モバイル・ノードは、オプションで、Agent Solicitationメッセージを介して任意のローカルに接続されたモビリティ・エージェントにAgent Advertisementメッセージを請求することができる。
−モバイル・ノードは、これらのAgent Advertisementを受信し、そのホーム・ネットワークまたはフォーリン・ネットワークのどちらにいるのかを判定する。
−モバイル・ノードは、それがホーム・ネットワークに位置することを検出する時に、モビリティ・サービスなしで動作する。他所で登録された状態からそのホーム・ネットワークに戻る場合には、モバイル・ノードは、ホーム・エージェントとのRegistration RequestメッセージおよびRegistration Replyメッセージの交換を介してホーム・エージェントから登録解除する。
−モバイル・ノードは、フォーリン・ネットワークに移動したことを検出する時に、フォーリン・ネットワーク上のケアオブアドレスを入手する。
−その後、ホームから離れて動作するモバイル・ノードは、おそらくはフォーリン・エージェントを介して、そのホーム・エージェントとのRegistration RequestメッセージおよびRegistration Replyメッセージの交換を介して、そのホーム・エージェントにその新しいケアオブアドレスを登録する。
−モバイル・ノードのホーム・アドレスに送信されたデータグラムは、そのホーム・エージェントによってインターセプトされ、ホーム・エージェントによってモバイル・ノードのケアオブアドレスにトンネリングされ、トンネル・エンドポイントで受信され、最終的にモバイル・ノードに配信される。
−逆方向では、モバイル・ノードによって送信されたデータグラムは、一般に、必ずしもホーム・エージェントを通過せずに、標準IPルーティング機構を使用してその宛先に配信される。
【0005】
ホームから離れている時に、モバイルIPは、そのホーム・ネットワークとその現在位置との間の介在するルータからモバイル・ノードのホーム・アドレスを隠すのにプロトコル・トンネリングを使用する。このトンネルは、モバイル・ノードのケアオブアドレスで終端する。ケアオブアドレスは、データグラムを従来のIPルーティングを介してそこに配信できるアドレスでなければならない。ケアオブアドレスでは、オリジナル・データグラムが、トンネルから除去され、モバイル・ノードに配信される。
【0006】
この技術的現状の手法に伴う問題は、フォーリン・ネットワーク内のモバイル・ノードへのすべてのトラフィックが、モバイル・ノードのホーム・ネットワーク内のホーム・エージェントを介してルーティングされるので、いわゆる三角ルーティング(triangular routing)が、データ・トランスポート効率のよいものではないことである。モバイル・ノードのホーム・ネットワークに属する長期IPアドレスの使用によって、そのような方式が必要になっている。
【0007】
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、次の用語は、文脈がそうではないと明瞭に規定する場合を除いて、本明細書で特に関連付けられる意味を持つ。
【0008】
用語「ルータ」は、パケットを受信し、それらのパケットを宛先に向けて転送する、専用ネットワーク要素を指す。具体的には、ルータは、あるサブネットから別のサブネットにパケットを転送することによって、ネットワークを拡張しまたはセグメント化するのに使用される。ルータは、通常、ネットワーキングに関する開放型システム間相互接続(OSI)参照モデルのレイヤ3 TCP/IPで動作する。しかし、一部のルータは、TCP/IPのレイヤ3またはOSI参照モデルの上位で動作する追加の機能性を提供することができる。
【0009】
用語「アクセス・ルータ」は、コレスポンデント・ノードなど、モバイル・ノードとIPネットワーク上の他のノードとの間のIP接続性を提供する、モバイル・ノードに関連するルータを指す。アクセス・ルータは、IPネットワークに結合された専用ネットワーク要素であるが、無線ネットワークの1つまたは複数の接続点と通信している場合もある。
【0010】
用語「モバイル・ノード」は、その接続点をあるネットワークまたはサブネットワークから別のネットワークまたはサブネットワークに変更する(たとえば無線)デバイスを指す。モバイル・ノードは、接続性を失わずに、およびそのIPアドレスを変更せずに、その位置を変更することができ、接続点へのリンク層接続性が使用可能であると仮定すると、その(一定のまたは長期の)IPアドレスを使用して任意の位置で他のインターネット・ノードと通信し続けることができる。モバイル・ノードは、ホーム・ネットワーク上の長期ホームIPアドレスを与えられる。このホーム・アドレスは、「パーマネント」IPアドレスが静止ホストに与えられるのと実質的に同一の形で管理される。モバイル・ノードは、そのホーム・アドレスを介して到達可能でありながら、あるリンクから別のリンクへその接続点を変更することができる。
【0011】
用語「リンク層」は、データリンク層またはネットワーク・インターフェース層とも称するが、ケーブル、無線媒体、または類似物などのネットワーク媒体に物理的にインターフェースすることを可能にするように構成された、オペレーティング・システム内のデバイス・ドライバおよび対応するネットワーク・インターフェース・カードを指す。リンク層は、通常、ネットワーキングに関する開放型システム間相互接続(OSI)参照モデルのレイヤ2で動作する。
【0012】
用語「IP接続性」は、通常のIPパケットを送信し、受信する能力を指す。
【0013】
用語「フロー」は、パケットのフローを指す。
【0014】
用語「ケアオブアドレス」は、モバイル・ノードがホームから離れている間にモバイル・ノードに転送されたデータグラム用の、モバイル・ノードに向かうトンネルの終端点を指す。
【0015】
用語「コレスポンデント・ノード」は、モバイル・ノードが通信しているピアを指す。コレスポンデント・ノードは、モバイルまたは静止のいずれかとすることができる。
【0016】
用語「フォーリン・ネットワーク」は、モバイル・ノードのホーム・ネットワーク以外のすべてのネットワークを指す。
【0017】
用語「ホーム・アドレス」は、長い時間の期間にわたってモバイル・ノードに割り当てられるIPアドレスを指す。ホーム・アドレスは、ノードがどこでインターネットに接続されるのかにかかわりなく変更されないままになる。
【0018】
用語「ホーム・ネットワーク」は、モバイル・ノードのホーム・アドレスのネットワーク・プリフィックスと一致するネットワーク・プリフィックスを有する、おそらくは仮想のネットワークを指す。標準IPルーティング機構が、モバイル・ノードのホーム・アドレス宛のデータグラムをそのモバイル・ノードのホーム・ネットワークに配信することに留意されたい。
【0019】
用語「リンク」は、ノードがそれを介してリンク層で通信できる施設または媒体を指す。リンクは、ネットワーク層の下にある。
【0020】
用語「リンク層アドレス」は、物理リンクを介するある通信のエンドポイントを識別するのに使用されるアドレスを指す。通常、リンク層アドレスは、インターフェースの媒体アクセス制御(MAC)アドレスである。
【0021】
用語「モビリティ・エージェント」は、ホーム・エージェントまたはフォーリン・エージェントのいずれかを指す。
【0022】
用語「ノード」は、ホストまたはルータを指す。
【0023】
用語「トンネル」は、データグラムがカプセル化されている間にそのデータグラムがたどる経路を指す。モデルは、カプセル化されている間に、データグラムが、知識のあるカプセル化解除エージェントにルーティングされ、このカプセル化解除エージェントが、データグラムをカプセル化解除し、その最終的な宛先に正しく配信することである。
【0024】
用語「訪問されたネットワーク」は、モバイル・ノードが現在接続されている、モバイル・ノードのホーム・ネットワーク以外のネットワークを指す。
【0025】
用語「エージェント・ディスカバリ」は、ホーム・エージェントおよびフォーリン・エージェントが、それらがサービスを提供する各リンク上でその可用性をアドバタイズすることを指す。新たに到着したモバイル・ノードは、見込みのあるエージェントが存在するかどうかを知るために、リンク上で請求を送信することができる。
【0026】
用語「登録」は、モバイル・ノードがホームから離れている時に、モバイル・ノードがそのケアオブアドレスをそのホーム・エージェントに登録する時を指す。接続の方法に応じて、モバイル・ノードは、そのホーム・エージェントに直接に、または登録をホーム・エージェントに転送するフォーリン・エージェントを介してのいずれかで登録する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】RFC 3344
【非特許文献2】RFC 3776
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、モバイルIPでの三角ルーティングの必要を除去する方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第1の態様によれば、ホーム・ネットワークを有し、ホーム・ネットワークとは異なるフォーリン・ネットワークに接続されたモバイル・ノードに、対応するネットワーク内の対応するノードから発する少なくとも1つのデータ・パケットを配信する方法であって、モバイル・ノードは、ホーム・ネットワークに属する長期IPアドレスとフォーリン・ネットワークのフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータのアドレスであるケアオブアドレスとを有し、ホーム・ネットワーク、対応するネットワーク、およびフォーリン・ネットワークは、少なくとも1つのデータ・ストレージを含むIPネットワークによってお互いに結合され、ネットワークは、それぞれホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ、対応するネットワーク・アクセス・ルータ、およびフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータによってIPネットワークに接続され、方法は、対応するネットワーク・アクセス・ルータによって、
a.少なくとも1つのデータ・パケットをインターセプトし、その宛先IPアドレスを検出することと、
b.少なくとも1つのデータ・ストレージを調査することであって、これによってモバイル・ノードのケアオブアドレスは、少なくとも1つのパケットの宛先IPアドレスを使用することによって取り出される、調査することと、
c.少なくとも1つのデータ・パケットをケアオブアドレスに直接に転送し、さらに、フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータが少なくとも1つのデータ・パケットをモバイル・ノードに転送できるように、モバイル・ノードの長期IPアドレスをフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータに示すことと
を実行することを含む、方法が開示される。
【0030】
本発明の実施形態によれば、この方法は、データ・パケットごとに実行される。
【0031】
本発明の実施形態によれば、この方法は、データ・ストレージを調査することが、パケットごとに必要ではなくなるように、モバイル・ノードのケアオブアドレスの変化の通知を受信することをさらに含む。
【0032】
本発明の実施形態によれば、データ・ストレージは、DNSサーバを含む。
【0033】
本発明の実施形態によれば、対応するネットワーク・アクセス・ルータによってケアオブアドレスへ直接に少なくとも1つのデータ・パケットを転送することは、ISO参照モデルのレイヤ3接続性に基づく。
【0034】
本発明の実施形態によれば、この方法は、少なくとも1つのデータ・パケットを対応するネットワーク・アクセス・ルータとフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータとの間でトンネリングすることを含む。
【0035】
本発明の実施形態によれば、長期IPアドレスは、パブリック・アドレスである。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、ネットワークのアクセス・ルータによってストレージ上のモバイル・ノードのインターネット位置情報を更新する方法であって、ストレージは、インターネットを介してアクセス可能であり、モバイル・ノードのケアオブアドレスおよびモバイル・ノードの長期IPアドレスをIPネットワークを介してストレージに送信することを含む方法が開示される。
【0037】
本発明の実施形態によれば、アクセス・ルータは、モバイル・ノードのホーム・ネットワーク・アクセス・ルータである。
【0038】
本発明の実施形態によれば、アクセス・ルータは、モバイル・ノードのフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータである。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、IPネットワークのアクセス・ルータであって、そのドメインに属するモバイル・ノードの長期IPアドレスおよびケアオブアドレスを、アクセス・ルータがそれへのアクセスを提供するIPネットワーク内のDNSサーバに転送するように配置されたアクセス・ルータが開示される。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、IPネットワークのアクセス・ルータであって、そのドメイン内のノードから発する、そのドメインの外部のノードに向けられたデータ・パケットをインターセプトし、パケットの宛先アドレスを抽出し、パケットの宛先アドレスに対応するケアオブアドレスをIPネットワーク内のストレージから取り出すように配置されたアクセス・ルータが開示される。
【0041】
本発明のさらなる態様は、従属請求項によって説明される。従属請求項からの特徴、独立請求項のいずれかからの特徴、および他の従属請求項からのすべての特徴を、特許請求の範囲によって定義される特定の組合せだけではなく、当業者にとって適当と考えられるように組み合わせることができる。
【0042】
添付図面は、本発明の実施形態を例示するのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】モバイルIP機構が適用される通常のネットワーク・アーキテクチャの方式を示す図である。
【図2】技術的現状のIPルーティング機構を示す図である。
【図3】本発明の態様による改善されたモバイルIPルーティング機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
符号は、異なる図または線図内の同様のまたは等しい要素または特徴について同一になるように選択されている。
【0045】
それぞれの図面に関連して読まれる時の次の詳細な説明から、本発明の上記および他の有利な特徴および目的がより明白になり、本発明がよりよく理解される。
【0046】
本発明の諸態様の説明は、特定の実施形態によって、ある図面を参照して実行されるが、本発明は、これに限定されない。図示された図面は、概略的であるのみであって、限定的と解釈されてはならない。たとえば、ある種の要素または特徴が、他の要素に関して比率から外れてまたは不釣り合いに図示される場合がある。
【0047】
本発明によるある種の実施形態の説明では、さまざまな発明的態様のうちの1つまたは複数の理解を助けるために、さまざまな特徴が、時々、単一の実施形態、図面、またはその説明で一緒にグループ化される。これを、グループのすべての特徴が特定の問題を解決するために必ず存在するかのように解釈してはならない。発明的態様は、特定の実施形態の説明に存在する特徴のそのようなグループのすべてより少ない特徴に存する可能性がある。
【0048】
図1には、モバイルIP機構が適用される通常のネットワーク・アーキテクチャの方式が示されている。複数のアクセス・ネットワークすなわち、対応するネットワーク(CN)、ホーム・ネットワーク(HN)、およびフォーリン・ネットワーク(FN)が、インターネット・ネットワークによって相互接続される。端末は、アクセス・ネットワークによって接続される。端末は、通常、たとえば端末が接続されるアクセス・ネットワーク(ドメインと呼ばれる)内のエッジ・ルータであるレイヤ3ノードまでのレイヤ2接続性を有する。ネットワークのそれぞれは、それぞれのアクセス・ルータにすなわち対応するネットワーク・アクセス・ルータ(CNAR)、ホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ(HNAR)、およびフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータ(FNAR)によってインターネットに接続される。
【0049】
通常の状況では、たとえば対応するネットワーク・ドメインに属する、対応するノード(C)は、モバイル・ノード(M)にパケットを転送する。このモバイル・ノード(M)は、それがそこから長期IPアドレスを獲得したホーム・ネットワーク(HN)に属する。モバイル・ノードが、フォーリン・ネットワークに移動し、接続する時に、対応するノードからモバイル・ネットワークに送信されたデータ・パケットの配信は、モバイル・ノードの長期IPアドレスおよびケアオブアドレスに基づく。ケアオブアドレスは、通常、フォーリン・ネットワークのIPアドレス・アクセス・ルータとすることができる。
【0050】
図2に、技術的現状のモバイルIP機構の結果である、「三角ルーティング」の機構を示す。対応するノードからモバイル・ノードに向かってパケットを送信する時に、パケットは、モバイル・ノードの長期IPアドレスに向けられる。ホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ(HNAR)は、モバイル・ノード宛のパケットをインターセプトし、通常はフォーリン・ネットワークのアクセス・ルータ(FNAR)のIPアドレスであるモバイル・ノードのケアオブアドレスについてモバイル・ノードまたはFNARによって知らされている。その後、HNARは、パケットをモバイル・ノードのケアオブアドレスにトンネリングすることによって、パケットをFNARに転送する。FNARでは、トンネルが終わり、関連付けが、モバイル・ノードの長期IPアドレスとモバイル・ノードのリンク層(すなわちレイヤ2)アドレスとの間に存在し、FNARが情報をモバイル・ノードMに転送できるようになっている。この形のパケット・ルーティングは、データ・トランスポート効率のよいものではない。というのは、フォーリン・ネットワーク内のモバイル・ネットワークへのすべてのトラフィックが、モバイル・ノードのホーム・ネットワーク内のホーム・エージェントを介してルーティングされるからである。
【0051】
図3に、本発明の実施形態による改善されたモバイルIPルーティング機構を示す。必要な基本的アーキテクチャは、技術的現状のアーキテクチャに非常に似ているが、さらに、データ・ストレージ、たとえばドメイン名サーバ(DNS)を含む。DNSサーバの提案される使用は、対応するノードとモバイル・ノードとの間のパケットの三角ルーティングの必要を、次のように回避する。対応するノードが対応するネットワークおよび対応するネットワーク・アクセス・ルータ(CNAR)を介してモバイル・ノードに向かってこのパケットを送信する時に、CNARは、パケットをインターセプトし、モバイル・ノードの長期IPアドレスに基づいて位置データを取り出すためにストレージ手段(たとえば、DNSサーバ)を調査する。DNSでは、モバイル・ノードの長期IPアドレスが、モバイル・ノードのケアオブアドレスにリンクされる(またはこれに束縛される)。モバイル・ノードのケアオブアドレスをCNARに返すことができ、CNARは、インターネットを介してパケットをトンネリングすることによって、モバイル・ノードのケアオブアドレスに対応するフォーリン・ネットワークのアクセス・ルータにパケットを転送できるようになっている。FNARでは、トンネルが終わり、オリジナルIPパケットの宛先アドレスが、フォーリン・ネットワーク内のモバイル・ノードのリンク層アドレスに関連付けられる。その後、パケットを、リンク層接続性に基づいてモバイル・ノードに転送することができる。この手順は、三角ルーティングを回避することを可能にし、したがって、技術的現状の機構よりトランスポート効率がよい。この手順は、長期IPアドレス(好ましくはパブリックIPアドレス)が格納され、モバイル・ノードの最新のケアオブアドレスにリンクされるデータ・ストレージ、たとえばDNSの維持を必要とする。
【0052】
モバイル・ノードが異なるフォーリン・ネットワークに沿って移動しつつある時には、これらのフォーリン・ネットワークのそれぞれへのノードの登録は、これらのネットワークのそれぞれの中のケアオブアドレスの獲得を含む。ケアオブアドレスが技術的現状の機構によって獲得された後に、そのケアオブアドレスは、通常、モバイル・ノードによって直接にまたはフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータを介して間接に、ホーム・ネットワーク・アクセス・ルータに転送される。標準化されたモバイルIPプロトコルによれば、フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータおよびホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ(またはフォーリン・エージェントおよびホーム・エージェント)は、いつでもモバイル・ノードのケアオブアドレスを知っている。したがって、DNSの更新を、ホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ(またはホーム・エージェント)によって実行することができる。というのは、このホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ(またはホーム・エージェント)が、通常はトラステッド・パーティ(trusted party)であるからである。フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータ(またはフォーリン・エージェント)がトラステッド・パーティである場合には、DNS内のモバイル・ノードの長期IPアドレスとケアオブアドレスとの間の束縛情報の維持を、FNAR(またはフォーリン・エージェント)によって実行することができる。
【0053】
フォーリン・エージェント(FA)およびホーム・エージェント(HA)のモバイルIP標準規格に記載された標準表記が同一のままであるが、その機能が異なることに留意されたい。
−フォーリン・エージェント(FA)は、そのドメインを訪問するモバイル・ノードの位置を知っており、
−ホーム・エージェント(HA)は、そのドメインに属するすべてのモバイル・ノードの位置を知っており、これは、ホーム・エージェントが、端末を管理し、そのドメイン内の端末についてDNS内の情報を更新する好ましいトラステッド・エンティティ(trusted entity)であることを意味する。
【0054】
フォーリン・ネットワーク内のモバイル・ノードに関する登録プロセスは、技術的現状の登録プロセスに対応することができる。フォーリン・エージェントおよびホーム・エージェントは、レイヤ2ドメインのエッジに配置される。
【0055】
対応するノードからモバイル・ノードへの通信について、
−モバイル・ノードがそのホーム・ネットワーク内にある場合には、すべてのルーティングは、「モバイル」ノードのホーム・エージェントを介して行われ、パケットは、変更なしで転送される。これは、通常のモバイルIP挙動に対応する。
−モバイル・ノードが訪問された(すなわちフォーリン)ネットワーク内にある場合には、直接ルーティングが可能であり、ここで、パケットは、対応するネットワークのアクセス・ルータからフォーリン・ネットワークのアクセス・ルータ(またはフォーリン・エージェント)にトンネリングされる。これは、フォーリン・エージェントが、モバイルIP V4仕様に従って振る舞うことができることを意味する。
【0056】
本発明の実施形態の利点は、機構が、現在のIP V4アーキテクチャに適合しまたはこれと技術的に互換であり、端末に対する変更が不要であることである。重要な利点は、三角ルーティングを回避でき、より効率的なデータ・トランスポートを達成できることである。
【0057】
本発明の実施形態によれば、DNSの調査が、対応するノードからモバイル・ノードに転送されるパケットごとに必要になる可能性がある。というのは、モバイル・ノードが、アクセス・ネットワークを変更する可能性があり、したがって、ケアオブアドレスを変更する可能性があるからである。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、モバイル・ノードの長期IPアドレスとモバイル・ノードのケアオブアドレスとの間の束縛情報を含むDNSサーバは、モバイル・ノードについてケアオブアドレスの変化が生じる時に必ず、新しいケアオブアドレスを対応するネットワーク・アクセス・ルータに自動的に転送することができる(かつ、そのために適合され得る)。DNSサーバ内でそのような機構を適用することは、すべてのパケットに関する対応するネットワークのアクセス・ルータによるDNSサーバのアクティブ調査ステップの除去を可能にする。データ・ストリームの最初のパケットに関する調査の後に、そのような機構は、さらに、それ以上必要ではない可能性がある。
【0059】
本明細書で説明されたいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含み、他の特徴を含まないが、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組合せが、本発明の範囲に含まれ、異なる実施形態を形成することが意図されている。
【0060】
本発明の原理を、上で特定の実施形態に関連して示したが、この説明が、単に例として行われ、保護の範囲の限定として行われたのではなく、保護の範囲が添付の特許請求の範囲によって決定されることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーム・ネットワークを有し、前記ホーム・ネットワークとは異なるフォーリン・ネットワークに接続されたモバイル・ノードに、対応するネットワーク内の対応するノードから発する少なくとも1つのデータ・パケットを配信する方法であって、前記モバイル・ノードは、前記ホーム・ネットワークに属する長期IPアドレスと前記フォーリン・ネットワークのフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータのアドレスであるケアオブアドレスとを有し、前記ホーム・ネットワーク、前記対応するネットワーク、および前記フォーリン・ネットワークは、少なくとも1つのデータ・ストレージを含むIPネットワークによってお互いに結合され、前記ネットワークは、それぞれホーム・ネットワーク・アクセス・ルータ、対応するネットワーク・アクセス・ルータ、および前記フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータによって前記IPネットワークに接続され、前記方法は、前記対応するネットワーク・アクセス・ルータによって、
a.前記少なくとも1つのデータ・パケットをインターセプトし、その宛先IPアドレスを検出するステップと、
b.前記少なくとも1つのデータ・ストレージを調査するステップであって、これによって前記モバイル・ノードの前記ケアオブアドレスは、前記少なくとも1つのパケットの宛先IPアドレスを使用することによって取り出される、調査するステップと、
c.前記少なくとも1つのデータ・パケットを前記ケアオブアドレスに直接に転送し、さらに、前記フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータが前記少なくとも1つのデータ・パケットを前記モバイル・ノードに転送できるように、前記モバイル・ノードの前記長期IPアドレスを前記フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータに示すステップと
を実行することを含む、方法。
【請求項2】
データ・パケットごとに実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データ・ストレージを調査するステップが、パケットごとに必要ではなくなるように、前記モバイル・ノードの前記ケアオブアドレスの変化の通知を受信するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記データ・ストレージは、DNSサーバを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対応するネットワーク・アクセス・ルータによって前記ケアオブアドレスへ直接に前記少なくとも1つのデータ・パケットを転送する前記ステップは、ISO参照モデルのレイヤ3接続性に基づく、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのデータ・パケットを前記対応するネットワーク・アクセス・ルータと前記フォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータとの間でトンネリングするステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記長期IPアドレスは、パブリック・アドレスである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ネットワークのアクセス・ルータによってストレージ上のモバイル・ノードのインターネット位置情報を更新する方法であって、前記ストレージは、インターネットを介してアクセス可能であり、前記モバイル・ノードのケアオブアドレスおよび前記モバイル・ノードの長期IPアドレスを前記IPネットワークを介して前記ストレージに送信するステップを含む方法。
【請求項9】
前記アクセス・ルータは、前記モバイル・ノードのホーム・ネットワーク・アクセス・ルータである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アクセス・ルータは、前記モバイル・ノードのフォーリン・ネットワーク・アクセス・ルータである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
IPネットワークのアクセス・ルータであって、前記アクセス・ルータのドメインに属するモバイル・ノードの長期IPアドレスおよびケアオブアドレスを、前記アクセス・ルータがそれへのアクセスを提供する前記IPネットワーク内のDNSサーバに転送するように配置されたアクセス・ルータ。
【請求項12】
IPネットワークのアクセス・ルータであって、前記アクセス・ルータのドメイン内のノードから発する、前記アクセス・ルータのドメインの外部のノードに向けられたデータ・パケットをインターセプトし、前記パケットの宛先アドレスを抽出し、前記パケットの前記宛先アドレスに対応するケアオブアドレスを前記IPネットワーク内のストレージから取り出すように配置されたアクセス・ルータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514023(P2013−514023A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543652(P2012−543652)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069499
【国際公開番号】WO2011/073135
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】