説明

フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜およびその製造方法

適度の寸法と分布の微細孔を有し、且つ引張り強度および破断伸度で代表される機械的強度が優れた、精密濾過膜あるいは電池用セパレータとして有用なフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を与える。このフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、X線回折法により結晶配向部と結晶非配向部の混在が認められることが特徴であり、適度に広く、且つ全体として高い分子量分布を有するフッ化ビニリデン系樹脂を、フッ化ビニリデン系樹脂の可塑剤および良溶媒とともに混合して得た組成物の溶融押出組成物を、片側面からの冷却固化、可塑剤の抽出、延伸に付することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、薬剤または細菌等の精密濾過膜として使用される多孔質膜、あるいは電池用セパレータとして使用される多孔膜に関し、さらに詳しくは、引張り強度、破断伸度等の機械的強度に優れ、且つ孔径分布幅の狭いフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
従来より合成樹脂径多孔質膜は気体隔膜分離、気液分離、固液分離等の分離膜として、あるいは絶縁材、保温材、遮音材、断熱材などとして多方面に利用されている。これらの内、特に分離膜として使用される場合には分離機能に影響を与える以下の特性が要求される。まず、多孔質膜の分離効率を目的とする適度な空孔率を有すること、分離精度の向上を目的とした均一な孔径分布を有すること、加えて分離対象物に最適な孔径を有することが求められる。また、膜構成素材の性質としては、分離対象物の特性に対する耐薬品性、耐候性、耐熱性、強度等が要求される。さらに、多孔質膜使用時における機械的強度として充分な破断点伸度、破断点応力などが要求される。
この点、従来から開発されているポリオレフィン樹脂系の多孔膜(例えば特公昭46−40119号および同50−2176号公報)は、分離膜としての使用後の逆洗ならびにオゾン処理における耐薬品性に問題が残る。
フッ化ビニリデン系樹脂は耐候性、耐薬品性、耐熱性、強度等に優れているため、これら分離用多孔質膜への応用が検討されている。しかしながら、フッ化ビニリデン系樹脂は、前記した優れた特性を有する反面、非粘着性、低相溶性であるため成形性は必ずしもよくない。また、多孔質膜の開発としては分離性能向上を目的とした高い空孔率、狭い孔径分布を追求する余り、機械的強度において満足すべきものは得られていなかった。このため強度を補充するために、濾過膜として使用する場合には多孔質膜にサポートする膜を重ね合せて機械的物性を高めて使用しているのが現状である。また、電池用セパレータに使用される場合等には、多孔質膜が芯材に巻き付けて使用されることから、電池製造時の巻付け工程に耐え得る充分な破断点伸度、破断点応力等の機械的物性を有することが望まれる。加えて電池用セパレータに使用される際には、電極に使用される活物質の微粉末を遮断できる分布幅の狭い貫通孔径と多孔質膜を芯材に巻き付けた後に行われる電解液の高効率な含浸性が望まれている。また精密濾過膜として使用される際には、長期間に亘って高い濾過性を保持することが望まれている。
フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法として、特開平3−215535号公報には、ポリフッ化ビニリデン樹脂にフタル酸ジエチル等の有機液状体と無機微粉体として疎水性シリカを混合し、溶融成形後に有機液状体と疎水性シリカを抽出する方法が開示されている。こうして得られる多孔質膜は比較的大きい機械的強度を有する。しかしこの方法では、疎水性シリカを抽出するためにアルカリ水溶液を用いることから、膜を構成するフッ化ビニリデン系樹脂が劣化し易い。
これに対し、本発明者等の研究グループも、精密濾過膜あるいは電池用セパレータとして使用されるフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法に関して、幾つかの提案をしている。それらは例えばフッ化ビニリデン系樹脂を、制御された条件での結晶化−熱処理−延伸−緊張熱処理して多孔膜化する方法(特開昭54−62273号公報)、特定の分子量のフッ化ビニリデン系樹脂を可塑剤とともに製膜後、片側から冷却し次いで可塑剤を抽出する方法(特開平7−13323号公報)、通常分子量のフッ化ビニリデン系樹脂に耐熱変形性の向上のための高分子量フッ化ビニリデン系樹脂と有機質多孔化剤または無機質多孔化剤とを配合して膜形成した後、多孔化剤を抽出除去することにより、あるいは無機質多孔化剤の場合には、これを延伸時の応力集中核として作用させることにより、膜に孔を発生させて多孔膜とする方法(特開2000−309672号公報)、等である。しかし、可塑剤あるいは有機質多孔化剤の抽出による場合は、例えば多孔膜をろ過膜として使用する場合に、必要なろ過性能(透水量)あるいは機械的な物性が得られない場合がある。他方、これら特性の向上を目的として延伸を行おうとすると、膜が破断し易く十分な延伸倍率まで延伸できない欠点があった。特に、精密ろ過膜として使用する場合にはろ過圧力に耐えるべく膜厚みが50μm以上であるのが一般的であるが、膜厚みが50μm以上の比較的肉厚の膜において延伸適性が顕著に劣ることが判明した。
結局のところ、適度の寸法と分布の微細孔を有し、且つ機械的強度にも優れた精密濾過膜あるいは電池セパレータ等として適したフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は得られていなかったのが実情である。
【発明の開示】
従って、本発明の主要な目的は、適度の寸法と分布の微細孔を有し、且つ引張り強度および破断伸度で代表される機械的強度の優れたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を提供することにある。
本発明の別の目的は、上述したようなフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の安定且つ効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上述の目的で研究した結果、比較的広い分子量分布のフッ化ビニリデン系樹脂をその溶剤および可塑剤とともに溶融押出後、制御された条件下で冷却して製膜し、可塑剤を抽出し、更に延伸することにより適度の寸法と分布を有する微細多孔が発生され、且つ機械的強度も良好に維持された多孔膜が得られることが確認された。こうして得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、X線回折法により結晶配向部と結晶非配向部の混在が認められることが特徴的である。
すなわち、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、(A)重量平均分子量が20万以上であり且つ重量平均分子量/数平均分子量の比が2.5以上であるフッ化ビニリデン系樹脂、または(B)重量平均分子量が40万〜120万である第1のフッ化ビニリデン系樹脂2〜75重量%と、重量平均分子量が15万〜60万である第2のフッ化ビニリデン系樹脂25〜98重量%とを含有し、且つ第1のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量/第2のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量の比が1.2以上であるフッ化ビニリデン系樹脂、の多孔膜からなり、X線回折法により結晶配向部と結晶非配向部の混在が認められることを特徴とするものである。
また、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法は、上記(A)または(B)のフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対し、可塑剤を70〜250重量部およびフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒5〜80重量部を添加し、得られた組成物を膜状に溶融押出し、その片側面から優先的に冷却して固化成膜した後、可塑剤を抽出し、更に延伸することを特徴とするものである。
本発明の方法により、所望の特性のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜が得られるためには、幾つかの要因が相乗的に寄与していると考えられるが、端的に言って、冷却抽出までの過程において、制御された結晶特性と可塑剤の抽出後の微細孔の存在するフッ化ビニリデン系樹脂膜が形成されているため、従来は困難であったフッ化ビニリデン系樹脂膜の円滑な延伸が可能となり、更に安定的に所望の孔径(分布)を有する多孔膜が形成されたものと解される。特に有効に寄与しているファクターとしては、以下のものが挙げられる。イ)前記した特開2000−309672号公報に記載の技術においては、耐熱変形性の向上成分として考えられた高分子量フッ化ビニリデン系樹脂の通常分子量への添加によって代表される方法によって得られる広い分子量分布のフッ化ビニリデン系樹脂の使用により、溶融押出後の膜状物の冷却に際して、(球状)結晶の成長速度が調整(抑制)され、その後の延伸に適した結晶特性の膜が得られる。ロ)溶融押出後の膜状物の片側面からの冷却により厚み方向に緩やかに形成された結晶粒度分布(冷却面側が細かく、逆側が比較的粗くなる)が、その後の延伸を円滑化させる。ハ)冷却固化後の膜から可塑剤を抽出することにより形成された後に残る可塑剤の抜け孔が膜状物を柔軟化して延伸を容易化するとともに、一定の周期での延伸応力集中核を形成し、結果的に延伸後の膜に延伸による繊維(フィブリル)部と非延伸節(ノード)部の交互分布膜を形成し、これが全体として一様な細孔分布と、膜強度の維持に寄与する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例5により得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔質中空糸のX線回折写真である。
第2図は、図1のX線回折写真の説明図である。
第3図は、図1に対応するX線回折に基く、2θ=20.1±1°および2θ=23.0±1°における方位角(β角)強度分布曲線の多重記録グラフである。
第4図は、実施例5により得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔質中空糸の外表面の5000倍走査電子顕微鏡写真である。
第5図は、実施例5により得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔質中空糸の内表面の5000倍走査電子顕微鏡写真である。
第6図は、実施例5により得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔質中空糸の外表面近傍の横断面の5000倍走査電子顕微鏡写真である。
第7図は、実施例5により得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔質中空糸の内表面近傍の横断面の5000倍走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を、その好ましい製造方法である本発明の製造方法に従って順次説明する。
(フッ化ビニリデン系樹脂)
本発明においては、主たる膜原料として、(A)重量平均分子量が20万以上であり且つ重量平均分子量/数平均分子量の比が2.5以上(すなわち分子量分布が広い)フッ化ビニリデン系樹脂、または(B)重量平均分子量が40万〜120万である第1のフッ化ビニリデン系樹脂2〜75重量%と、重量平均分子量が15万〜60万である第2のフッ化ビニリデン系樹脂25〜98重量%とを含有し、且つ第1のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量/第2のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量の比が1.2以上であるフッ化ビニリデン系樹脂を用いる。
本発明において、フッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、すなわちポリフッ化ビニリデン、又はフッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体あるいはこれらの混合物が用いられる。フッ化ビニリデン系樹脂と共重合可能なモノマーとしては、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニル等の一種又は二種以上を用いることができる。フッ化ビニリデン系樹脂は、構成単位としてフッ化ビニリデンを70モル%以上含有することが好ましい。なかでも機械的強度の高さからフッ化ビニリデン100モル%からなる単独重合体を用いることが好ましい。
上記したような比較的高フッ化ビニリデンのフッ化ビニリデン系樹脂は、好ましくは乳化重合あるいは懸濁重合、特に好ましくは懸濁重合により得ることができ、この際重合条件を逐次変化させることにより、上述した広い分子量分布のフッ化ビニリデン系樹脂(A)を得ることもできる。しかし、より簡便には、異なる平均分子量の少なくとも二種のフッ化ビニリデン系樹脂をそれぞれ重合法により得て、これらを混合することにより重量平均分子量/数平均分子量の比が好ましくは2.5以上のフッ化ビニリデンのフッ化ビニリデン系樹脂(B)を得て、これを用いることが好ましい。本発明の好ましい態様によれば、上記第1のフッ化ビニリデン系樹脂5〜75重量%と、上記第2のフッ化ビニリデン系樹脂25〜95重量%とを含有する混合物を主たる膜原料として用いる。
本発明で用いるフッ化ビニリデン系樹脂は、未架橋であることが後述する組成物の溶融押出しの容易化のために好ましく、またその融点は、160〜220℃であることが好ましく、より好ましくは170〜180℃、さらに好ましくは、175〜179℃である。160℃未満では、生成する多孔膜の耐熱変形性がフ充分となりがちであり、220℃を超えると、溶融混合性が低下し、均一な膜形成が難しくなる。
融点は示差走査熱量計(DSC)により測定される樹脂の結晶融解に伴なう吸熱のピーク温度を意味する。
本発明に従い、上記のフッ化ビニリデン系樹脂に、フッ化ビニリデン系樹脂の可塑剤および良溶媒を加えて膜形成用の原料組成物を形成する。
(可塑剤)
可塑剤としては、一般に、二塩基酸とグリコールからなる脂肪族系ポリエステル、例えば、アジピン酸−プロピレングリコール系、アジピン酸−1,3−ブチレングリコール系等のアジピン酸系ポリエステル;セバシン酸−プロピレングリコール系、セバシン酸系ポリエステル;アゼライン酸−プロピレングリコール系、アゼライン酸−1,3−ブチレングリコール系等のアゼライン酸系ポリエステル等が用いられる。
(良溶媒)
また、フッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒としては、20〜250℃の温度範囲でフッ化ビニリデン系樹脂を溶解できる溶媒が用いられ、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、プロピレンカーボネート、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、ジメチルフタレート、およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。なかでも高温での安定性からN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。
(組成物)
膜形成用の原料組成物は、好ましくはフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対し、可塑剤70〜250重量部および良溶媒5〜80重量部を混合することにより得られる。
可塑剤が70重量部未満であると、空孔率が低くなるため電池セパレータにおいては電解液の含浸性が劣り、あるいは電気抵抗が増し、精密ろ過膜においてはろ過性能(透水量)に劣る。また、250重量部を超えると空孔率が大きくなり過ぎるため、機械的強度が低下する。
良溶媒が5重量部未満ではポリフッ化ビニリデン系樹脂と可塑剤を均一に混合できなかったり、あるいは混合に時間を要する。また、80重量部を超えると可塑剤の添加量に見合った空孔率が得られない。すなわち可塑剤の抽出による効率的な空孔形成が阻害される。
可塑剤と良溶媒の合計量は100〜250重量部の範囲が好ましい。両者はいずれも溶融押出し組成物の粘度低減効果があり、ある程度代替的に作用する。そのうち良溶媒は、5〜30重量%の割合が好ましい。
(混合・溶融押出し)
溶融押出組成物は、一般に140〜270℃、好ましくは150〜200℃、の温度で、中空ノズルあるいはT−ダイから押出されて膜状化される。従って、最終的に、上記温度範囲の均質組成物が得られる限りにおいて、フッ化ビニリデン系樹脂、可塑剤および良溶媒の混合並びに溶融形態は任意である。このような組成物を得るための好ましい態様の一つによれば、二軸混練押出機が用いられ、(好ましくは第1および第2のフッ化ビニリデン系樹脂の混合物からなる)フッ化ビニリデン系樹脂は、該押出機の上流側から供給され、可塑剤と良溶媒の混合物が、下流で供給され、押出機を通過して吐出されるまでに均質混合物とされる。この二軸押出機は、その長手軸方向に沿って、複数のブロックに分けて独立の温度制御が可能であり、それぞれの部位の通過物の内容により適切な温度調節がなされる。
(冷却)
本発明法に従い、溶融押出された膜状物は、その片面側から冷却・固化される。冷却は、T−ダイから押出された平坦シート状物が、表面温度調節された冷却ドラムないしローラと接触させることにより行われ、ノズルから押出された中空糸膜の場合は、水等の冷却媒体中を通過させることにより行われる。冷却ドラム等あるいは冷却媒体の温度は5〜120℃と、かなり広い温度範囲から選択可能であるが、好ましくは10〜100℃、特に好ましくは30〜80℃の範囲である。
(抽出)
冷却・固化された膜状物は、次いで抽出液浴中に導入され、可塑剤および良溶媒の抽出除去を受ける。抽出液としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解せず、可塑剤や良溶媒を溶解できるものであれば特に限定されない。例えばアルコール類ではメタノール、イソプロピルアルコールなど、塩素化炭化水素類ではジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタンなど、の沸点が30〜100℃程度の極性溶媒が適当である。
(熱処理)
抽出後の膜状物は、次いで引き続く延伸操作性の向上のために、80〜160℃、好ましくは100〜400℃の範囲1秒〜3600秒、好ましくは3秒〜900秒、熱処理して、結晶化度を増大させることが好ましい。
(延伸)
膜状物は、次いで延伸に付され、空孔率および孔径の増大並びに強伸度の改善を受ける。延伸は、例えばテンター法による二軸延伸も可能であるが、一般に、周速度の異なるローラ対等による膜状物の長手方向への一軸延伸を行うことが好ましい。これは、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の多孔率と強伸度を調和させるためには、延伸方向に沿って延伸フィブリル(繊維)部と未延伸ノード(節)部が交互に現われる微細構造が好ましいことが知見されているからである。延伸倍率は、1.2〜4.0倍、特に1.4〜3.0倍程度が適当である。
(溶離液処理)
上記工程を通じて、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜が得られるが、この多孔膜を溶離液による浸漬処理に付すことが著しく好ましい。この溶離液処理により、本発明の多孔膜の特質が本質的に損なわれることなく、その透水量が著しく増大するからである。溶離液としては、アルカリ液、酸液または可塑剤の抽出液が用いられる。
上記溶離液処理により、多孔膜の透水量が著しく増大する理由は、必ずしも明かではないが、延伸により拡開された微細孔壁に残存する可塑剤が露出し、溶離液処理により効率的に除かれるためではないかと推察される。溶離液としてのアルカリおよび酸は、フッ化ビニリデン系樹脂の可塑剤として用いられるポリエステルを分解して可溶化することによりその溶離・除去を促進する作用を有するものと解される。
したがって、アルカリ液としはて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の強塩基の水または水/アルコール溶液でpHが12以上、より好ましくは13以上のものが好ましく用いられる。他方、酸液としては、塩酸、硫酸、燐酸等の強酸の水または水/アルコール溶液がpHが4以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下のものが好ましく用いられる。
また、可塑剤の抽出液としては、延伸前に用いたものと同様に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解せず、可塑剤を溶解できるものであれば特に限定されない。例えばアルコール類では、メタノール、イソプロピルアルコールなど、塩素化炭化水素類ではジクロロメタン、1,1,1−トリクロロメタンなど、の沸点が30〜100℃程度の極性溶媒が適当である。
溶離液処理は、多孔膜を必要に応じて親液性を向上するための前浸漬を行った後、5〜100℃程度の温度で10秒〜6時間溶離液中に浸漬することにより行われる。溶離液処理を、加温下に行うときは、多孔膜の収縮が起らないように固定した状態で行われることが好ましい。
(フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜)
上記のようにして得られる本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜によれば、一般に空孔率が55〜90%、好ましくは60〜85%、特に好ましくは65〜80%、引張り強度が5MPa以上、破断伸度が5%以上、引張り降伏点応力が5MPa以上、好ましくは6MPa以上、降伏点伸度が3%以上、好ましくは5%以上の特性が得られ、これを透水処理膜として使用する場合には5m/m・day・100kPa以上の透水量が得られる。また厚さは、5〜800μm程度の範囲が通常であり、好ましくは50〜600μm、特に好ましくは150〜500μmである。中空糸の場合、その外径は0.3〜3mm程度、特に1〜3mm程度が適当である。
また、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、微細構造として、X線回折法により結晶配向部と、結晶非配向部(ランダム配向部)が認められることが特徴であり、これはそれぞれ延伸フィブリル部と未延伸ノード部に対応するものと解される。
(X線回折法)
より詳しくは、本明細書に記載する膜状物のX線回折特性は、以下の測定法による測定結果に基づくものである。
膜状物中空糸の場合は長手方向に沿って半割にしたものを、その長手方向が鉛直となるように試料台に取り付け、長手方向に垂直にX線を入射した。X線発生装置は理学電機社製「ロータフレックス200RB」を用い、30kV−100mAでNiフィルタを通したCuKα線をX線源とした。イメージングプレート(富士写真フィルム社製「BAS−SR127」)を用いて、試料−イメージングプレート間距離60mmで回折像を撮影した。図1は、後述する実施例5の中空糸について得られた回折像を示し、図2はその説明図である。図2を参照すれば分る通り、β角はデバイ環上をなぞる角度であり、2θ角は中心から外へ向う角度である。2θ=20.1±1°における方位角(β角)強度分布曲線(カーブ1)、および2θ=23.0±1°における方位角(β角)強度分布曲線(カーブ2)を作成し、それらを多重記録して図3を得た。2θ=20.1±1°におけるデバイ環はPVDFα型結晶の(110)面からの回折に相当し、2θ=23.0±1°における強度は回折X線のバックグラウンドに相当する。
一様に無配向の多孔膜の場合、典型的には抽出法または相転換法のみによって製造された多孔膜の場合にはカーブ1にはピークは現れないか、あるいは半値幅が90°以上のブロードなピークを有する。また、結晶方位がランダムであるためカーブ1は、いずれの方位角(β角)においてもカーブ2よりも強度が大きい。
一方、一様に配向した試料の場合、典型的には延伸のみによって製造された多孔膜の場合には結晶方位が選択配向を有するため、カーブ1はβ角=90°および270°(回折像における赤道線上)付近に鋭いピークを有する。また、β角=0°および180°(回折像における子午線上)付近ではバックグラウンド強度に近い弱い回折しか示さないため、β角=0°あるいは180°においては、カーブ1/カーブ2の強度比は1.1未満である。
本発明の多孔膜は配向したフィブリルと無配向のノード(節)を有するため回折像は結晶方位が選択配向した回折と結晶方位がランダムな回折の重なりとして現われる。すなわち、配向したフィブリルに由来してカーブ1はβ角=90°あるいは270°(回折像における赤道線上)付近に半値幅が80°以下、好ましくは60°以下、特に好ましくは40°以下のピークを有し、かつ無配向のノード(節)に由来してカーブ1はいずれの方位角(β角)においてもカーブ2よりも強度が大きく、β角=0°あるいは180°においてカーブ1/カーブ2強度比は1.1以上、好ましくは1.2以上となる。
結果的に、本発明の多孔膜における結晶配向部と結晶非配向部の混在は、X線回折法による回折角2θ=20.1±1°と2θ=23.0±1°における子午線上での回折強度比が1.1以上で、且つ2θ=20.1±1°における方位角強度分布曲線ピークの半値幅Δβが80°以下であることで、定量的に表現される。
【実施例】
以下、実施例、比較例により、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載を含め、上記したX線回折特性以外の本明細書に記載の特性は、以下の方法による測定値に基くものである。
(重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn))
日本分光社製のGPC装置「GPC−900」を用い、カラムに昭和電工社製の「Shodex KD−806M」、プレカラムに「Shodex KD−G」、溶媒にNMPを使用し、温度40℃、流量10ml/分にて、ゲルバーミエーションクロマトブラファー(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定した。
(空孔率)
多孔膜の長さ、並びに幅および厚さ(中空糸の場合は外径および内径)を測定して多孔膜の見掛け体積V(cm)を算出し、更に多孔膜の重量W(g)を測定して次式より空孔率を求めた。
【数1】

(透水量(フラックス))
多孔膜をエタノールに15分間浸漬し、次いで水に15分間浸漬して親水化した後、水温25℃、差圧100kPaにて測定した。多孔膜が中空糸形状の場合、膜面積は外径に基いて次式により算出した。
【数2】

(平均孔径)
ASTM F316−86およびASTM E1294−89に準拠し、Porous Materials,Inc.社製「パームポロメータCFP−200AEX」を用いてハーフドライ法により平均孔径を測定した。試液はパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を用いた。
(最大孔径)
ASTM F316−86およびASTM E1294−89に準拠し、Porous Materials,Inc.社製「パームポロメータCFP−200AEX」を用いてバブルポイント法により最大孔径を測定した。試液はパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を用いた。
(引張り強度および破断伸度)
引張り試験機(東洋ボールドウィン社製「RTM−100」)を使用して、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で初期試料長100mm、クロスヘッド速度200mm/分の条件下で測定した。
(引張り降伏点応力/伸度)
多孔質中空糸を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で初期試料長100mm、引張速度200mm/分の条件下で引張試験機(東洋ボールドウィン社製RTM−100)を使用してひずみ−応力曲線を測定し、応力の極大点が現れる場合には極大点の応力を降伏点とした。この降伏点における応力および伸度をそれぞれ引張り降伏点応力および引張り降伏点伸度とした。
また、該引張り降伏点応力から次式によりフィブリルの降伏点応力を算出した。
フィブリル降伏点応力(MPa)
=降伏点応力(MPa)×100/(100−空隙率(%))
【実施例1】
重量平均分子量(Mw)が6.59×10の第1のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(粉体)とMwが2.52×10の第2のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(粉体)を、それぞれ12.5重量%および87.5重量%となる割合で、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、Mwが3.03×10、Mw/Mn(数平均分子量)の比が2.53である混合物Aを得た。
脂肪族系ポリエステルとしてアジピン酸系ポリエステル可塑剤(旭電化工業株式会社社製「PN−150」)と、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を、87.5重量%/12.5重量%の割合で、常温にて撹拌混合して、混合物Bを得た。
同方向回転噛み合い型二軸押出機(プラスチック工学研究所社製「BT−30」、スクリュー直径30mm、L/D=48)を使用し、シリンダ最上流部から80mmの位置に設けられた粉体供給部から混合物Aを供給し、シリンダ最上流部から480mmの位置に設けられた液体供給部から温度100℃に加熱された混合物Bを、混合物A/混合物B=37.5/62.5(重量%)の割合で供給して、バレル温度210℃で混練し、混練物を外径7mm、内径3.5mmの円形スリットを有するノズルから吐出量13g/minで中空糸状に押し出した。
押し出された混合物を溶融状態のまま60℃の温度に維持され、且つノズルから10mm離れた位置に水面を有する(すなわちエアギャップが10mmの)水浴中に導き冷却・固化させ(水浴中の滞留時間:約10秒)、5m/分の引取速度で引き取った後、これを巻き取って第1中間成形体を得た。
次に、この第1中間成形体を長手方向に収縮しないように固定したままジクロロメタン中に振動を与えながら室温で30分間浸漬し、次いでジクロロメタンを新しいものに取り替えて再び同条件にて浸漬して、脂肪族系ポリエステルと溶媒を抽出し、次いで固定したまま温度120℃のオーブン内で1時間加熱してジクロロメタンを除去するとともに熱処理を行い第2中間成形体を得た。
次に、この第2中間成形体を雰囲気温度の25℃で長手方向に1.6倍の倍率に延伸し、次いで温度100℃のオーブン内で1時間加熱して熱固定を行い、ポリフッ化ビニリデン系多孔質中空糸を得た。
得られたポリフッ化ビニリデン系多孔質中空糸は、外径が1.486mm、内径が0.702mm、膜厚が0.392mm、気孔率が72%、透水量が18.01m/m・day・100kPa、平均孔径0.0864μm、最大孔径0.1839μm、引張り強度9.1MPa、破断伸度7%の物性を示した。
製造条件および得られたポリフッ化ビニリデン系多孔質中空糸の物性を、以下の実施例および比較例の結果と併せてまとめて後記表1および2に記す。
【実施例2】
溶融押出物を冷却する冷却水浴温度を11℃に且つ延伸倍率を1.8倍に変更する以外は実施例1と同様にして多孔質中空糸を得た。
【実施例3】
混合物Aと混合物Bの供給比率を42.9/57.1(重量%)に変更する以外は、実施例2と同様にして多孔質中空糸を得た。
【実施例4】
第1のPVDFと第2のPVDFの混合比率を50/50(重量%)と変更して得た混合物Aを用い、エアギャップを40mmに増大し、延伸倍率を2.4倍に変更する以外は、実施例2と同様にして多孔質中空糸を得た。
【実施例5】
延伸倍率を1.8倍に変更する以外は実施例4と同様にして多孔質中空糸を得た。
得られた多孔質中空糸のX線回折写真を図1、その説明を図2に、X線回折による2θ=20.1±1°および2θ=23.0±1°における方位角(β角)強度分布曲線の多重記録グラフを図3に示す。
また得られた多孔質中空糸の、外側表面、内側表面、外表面近傍の横断面および内表面近傍の横断面の、5000倍走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図4〜図7に示す。
【実施例6】
冷却水浴温度を40℃に、またノズルから冷却表面までのエアギャップを40mmにそれぞれ変更する以外は実施例5と同様にして多孔質長尺を得た。
【実施例7〜9】
冷却水浴温度を60℃(実施例7)、80℃(実施例8)および11℃(実施例9)に、それぞれ変更する以外は、実施例6と同様にして多孔質中空糸を得た。
【実施例10】
第1のPVDと第2のPVDとの混合比率を5/95(重量%)と変更して得た混合物Aを用い、エアギャップを5mmに変更する以外は実施例2と同様にして多孔質中空糸を得た。
比較例1
混合物Aの代りに、重量平均分子量が4.92×10のPVDFを単独で用い,PVDFと混合物の供給比率を実施例3と同じ42.9/57.1(重量%)とし、延伸倍率を2.0倍とする以外は、実施例5と同様にして、多孔質中空糸との製造を試みたが、延伸時に糸切れを起した。
比較例2
溶融押出組成物の冷却固化後の引取速度を10mm/分に変更する以外は、比較例1と同様の条件で多孔質中空糸を製造した。
比較例3
混合物Aの代りに第1のPVDF(Mw=63.59×10)のみを用い、PVDFと混合物の供給比率を33.3/66.7(%)に変更し、エアギャップを300mm/分とする以外は、実施例5と同様の条件で多孔質中空糸の製造を試みたが、延伸時に糸切れを起した。
比較例4
延伸倍率を1.3倍に低下する以外は、比較例3と同様の条件で多孔質中空糸を製造した。
比較例5
溶融押出組成物の冷却固化後の引取速度を10mm/分に変更する以外は、比較例3と同様の条件で多孔質中空糸を製造した。
比較例6
混合物Aの代りにMwが2.52×10のPVDF(実施例2で第2のPVDFとして用いたもの)を単独で用いる以外は実施例2と同様にして多孔質中空糸の製造を試みたが、延伸時に糸切れを起した。
比較例7
溶融押出組成物の冷却固化後の引取速度を10mm/分に変更する以外は、比較例6と同様の条件で多孔質中空糸の製造を試みたが、延伸時に糸切れを起した。
比較例8
溶融押出組成物の冷却固化後の引取速度を20mm/分に変更する以外は、比較例6と同様の条件で多孔質中空糸を製造した。
上記比較例において延伸時の糸切れを起さずに得られた多孔質中空糸の物性を表2にまとめて記す。


【実施例11】
実施例1で得た多孔質中空糸を長手方向に収縮しないように固定したまま、エタノールに15分間浸漬し、次いで純水に15分間浸漬して親水化した後、温度70℃に維持された苛性ソーダ20%水溶液(pH14)に1時間浸漬し、次いで水洗した後、温度60℃に維持された熱風オーブン中で1時間乾燥させた。
【実施例12】
実施例1で得た多孔質中空糸を長手方向に収縮しないように固定したまま、エタノールに15分間浸漬し、次いで純水に15分間浸漬して親水化した後、常温で塩酸35%水溶液(pH1)に1時間浸漬し、次いで水洗した後、温度60℃に維持された熱風オーブン中で1時間乾燥させた。
【実施例13】
実施例1で得た多孔質中空糸を長手方向に収縮しないように固定したまま、ジクロロメタン中に振動を与えながら30分間浸漬し、次いでジクロロメタンを新しいものに取り替えて再び同条件にて浸漬した後、温度60℃に維持された熱風オーブン中で1時間乾燥させた。
上記実施例11〜13の溶離液処理後の多孔質中空糸について、空孔率、透水量、平均孔径、最大孔径、引張り強度、破断伸度を測定した。結果を、実施例1のそれとまとめて、次表3に示す。

【産業上の利用可能性】
上記表1の結果を、表2と対比して見れば分かる通り、本発明によれば、適度に広く、且つ全体として高い分子量分布を有するフッ化ビニリデン系樹脂を、フッ化ビニリデン系樹脂の可塑剤および良溶媒とともに混合して得た組成物の溶融押出組成物を、片側面からの冷却固化、可塑剤の抽出、延伸に付することにより、適度の寸法と分布の微細孔を有し、且つ引張り強度および破断伸度で代表される機械的強度が優れた、精密濾過膜あるいは電池用セパレータとして有用なフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜が得られる。また、表3の結果を見ると、得られた多孔膜(実施例1)を、アルカリ、酸または有機溶媒による溶離液処理に付することにより、透水量の著しい増大効果が得られることがわかる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が20万以上であり且つ重量平均分子量/数平均分子量の比が2.5以上であるフッ化ビニリデン系樹脂、または
(B)重量平均分子量が40万〜120万である第1のフッ化ビニリデン系樹脂2〜75重量%と、重量平均分子量が15万〜60万である第2のフッ化ビニリデン系樹脂25〜98重量%とを含有し、且つ第1のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量/第2のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量の比が1.2以上であるフッ化ビニリデン系樹脂、
の多孔膜からなり、X線回折法により結晶配向部と結晶非配向部の混在が認められることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜。
【請求項2】
フッ化ビニリデン系樹脂が、重量平均分子量が40万〜120万である第1のフッ化ビニリデン系樹脂5〜75重量%と、重量平均分子量が15万〜60万である第2のフッ化ビニリデン系樹脂25〜95重量%とを含有し、且つ第1のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量/第2のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量の比が1.2以上である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項3】
空孔率が55〜90%、引張り強度が5MPa以上、破断伸度が5%以上である請求項1または2に記載の多孔膜。
【請求項4】
引張り降伏点応力が5MPa以上、降伏点伸度が5%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項5】
透水量が5m/m・day・100kPa以上である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項6】
厚さが5〜800μm、外径が0.3〜3mmの中空糸状をなす請求項1〜5のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項7】
(A)重量平均分子量が20万以上であり且つ重量平均分子量/数平均分子量の比が2.5以上であるフッ化ビニリデン系樹脂、または(B)重量平均分子量が40万〜120万である第1のフッ化ビニリデン系樹脂2〜75重量%と、重量平均分子量が15万〜60万である第2のフッ化ビニリデン系樹脂25〜98重量%とを含有し、且つ第1のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量/第2のフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量の比が1.2以上であるフッ化ビニリデン系樹脂、の100重量部に対し、可塑剤を70〜250重量部およびフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒5〜80重量部を添加し、得られた組成物を膜状に溶融押出し、その片側面から優先的に冷却して固化成膜した後、可塑剤を抽出し、更に延伸することを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法。
【請求項8】
フッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対し、良溶媒5〜30重量%を含む該良溶媒と可塑剤とを合計量で100〜250重量部使用して前記組成物を形成する請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記組成物を中空糸膜状に押出した後、5〜120℃の冷却媒体中で外側から冷却して固化成膜する請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
延伸後の多孔膜を溶離液により処理する工程を含む請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
溶離液がpH12以上のアルカリ液である請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
溶離液がpH4以下の酸液である請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
溶離液が可塑剤の抽出液である請求項10に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/081109
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503534(P2005−503534)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003074
【国際出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】