説明

フッ素化アルキルリン酸オニウム塩系酸発生剤

【課題】毒性金属を含まず、SbF6-塩に匹敵するカチオン重合性能や架橋反応性能を有し、かつこのものを使用した硬化物は特に耐熱試験後に透明性が低下する問題がない酸発生剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸オニウム塩であって、当該オニウム塩中のアルカリ金属成分の含有量が100ppm以下であることを特徴とする酸発生剤。
【化1】


[式(1)中、AはVIA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価nの元素を表し、nは1または2である。R1はAに結合している有機基であり、R1の個数はn+1である。Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1に、酸発生剤、より詳しくはフッ素化アルキルリン酸オニウム塩系酸発生剤に関する。
本発明は、第2に、当該酸発生剤を含有するエネルギー線硬化性組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。
本発明は、第3に、当該酸発生剤を含有する化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱あるいは光、電子線などの活性エネルギー線照射によってエポキシ化合物などのカチオン重合性化合物を硬化させるカチオン重合開始剤として、ヨードニウムやスルホニウム塩等のオニウム塩が知られている(特許文献1〜10)。
また、これらのオニウム塩は、熱あるいは活性エネルギー線照射によって酸を発生するので酸発生剤とも称され、レジストや感光性材料にも使用されている(特許文献11〜13)。
【0003】
ところで、これらの明細書に記載されているカチオン重合開始剤(酸発生剤)は、アニオンとして、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-を含有するが、カチオン重合性化合物の硬化性能や酸触媒による架橋反応性能はアニオンの種類で異なり、BF4-<PF6-<AsF6-<SbF6-の順に良くなる。しかし、重合や架橋性能の良いAsF6-、SbF6-を含有するカチオン重合開始剤(酸発生剤)は、As、Sbの毒性の問題から使用用途が限定され、SbF6-塩が光造形などの限定された用途で使用されているのみである。そのため、一般的には重合や架橋性能の劣るPF6-塩が利用されるが、PF6-塩は、例えば、SbF6-塩と同程度の硬化速度を得るには、後者の10倍近い量を添加する必要があり、未反応の開始剤(酸発生剤)、開始剤(酸発生剤)を溶解するために必要に応じて使用される溶剤量または開始剤の分解物の残存量が多くなるため、硬化物の物性が損なわれること、また開始剤の分解によって副生するHF量が多くなることから、基材や設備等が腐食されやすいことなどの問題がある。このため毒性金属を含まず、SbF6-塩に匹敵するカチオン重合開始能を有するカチオン重合開始剤が強く求められていた。
【0004】
また、ディスプレイ、光導波路や光学レンズ等の光学特性が求められる部材では、熱あるいは光、電子線などの活性エネルギー線照射によって硬化させた硬化物の透明性や耐熱試験後、耐湿試験後の硬化物の透明性が重要視される。
【0005】
本発明者らは、毒性金属を含まず、SbF6-塩に匹敵するカチオン重合性能や架橋反応性能を有するカチオン重合開始剤(酸発生剤)として、フッ素化アルキルリン酸オニウム塩系酸発生剤(特許文献14)を提案しているが、このものを使用した硬化物は特に耐熱試験後に透明性が低下する問題があり、上記の光学特性が必要な部材への適用が進んでいなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−151997号公報
【特許文献2】特開昭50−158680号公報
【特許文献3】特開平2−178303号公報
【特許文献4】特開平2−178303号公報
【特許文献5】米国特許4069054号公報
【特許文献6】米国特許4450360号公報
【特許文献7】米国特許4576999号公報
【特許文献8】米国特許4640967号公報
【特許文献9】カナダ国特許1274646号公報
【特許文献10】欧州公開特許203829号公報
【特許文献11】特開2002−193925号公報
【特許文献12】特開2001−354669号公報
【特許文献13】特開2001−294570号公報
【特許文献14】WO2005−116038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の背景において、本発明の第1の目的は、毒性金属を含まず、SbF6-塩に匹敵するカチオン重合性能や架橋反応性能を有し、かつこのものを使用した硬化物は特に耐熱試験後に透明性が低下する問題がないカチオン重合開始剤(酸発生剤)を提供することである。
本発明の第2の目的は、上記酸発生剤を利用したエネルギー線硬化性組成物及び硬化体を提供することである。
本発明の第3の目的は、上記酸発生剤を利用した化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及び硬化体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的に好適な酸発生剤を見出した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸オニウム塩であって、当該オニウム塩中のアルカリ金属成分の含有量が100ppm以下であることを特徴とする酸発生剤である。
【0009】
【化1】

【0010】
[式(1)中、AはVIA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価nの元素を表し、nは1または2である。R1はAに結合している有機基であり、R1の個数はn+1である。(n+1)個のR1はそれぞれ互いに同一であっても異なっても良い。また2個以上のR1が互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して元素Aを含む環構造を形成しても良い。Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0011】
また本発明は、上記一般式(1)で表される酸発生剤に、さらに下記一般式(2)で表されるオニウム塩を含んでなる酸発生剤である。
【0012】
【化2】

【0013】
[式(2)中のA’はVA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価mの元素を表し、mは1〜3の整数である。R1の定義は一般式(1)中の定義と同じで、R1の個数はm+1である。MはIIIA族〜VA族の元素を表し、cはMと結合するフッ素原子の個数を表し、4〜6の整数である。]
【0014】
また本発明は、上記の酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなるエネルギー線硬化性組成物およびこれらを硬化してなる硬化体である。
【0015】
また本発明は、上記の酸発生剤を含んでなる成分(A)と、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である成分(B)と、架橋剤成分(C)とを含んでなる、化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物およびこれらを硬化してなる硬化体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸発生剤は、Sb等の毒性の高い元素を含まず、SbF6-塩に匹敵するカチオン重合性能や架橋反応性能を有しており、かつこのものを使用した組成物を熱や紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させた硬化物は光学特性(透明性)が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明のフッ素化アルキルリン酸オニウム塩系酸発生剤としては、下記一般式(1)で表される。
【0019】
【化3】

【0020】
[式(1)中、AはVIA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価nの元素を表し、nは1または2である。R1はAに結合している有機基であり、R1の個数はn+1である。(n+1)個のR1はそれぞれ互いに同一であっても異なっても良い。また2個以上のR1が互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して元素Aを含む環構造を形成しても良い。Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0021】
式(1)中のAは、VIA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価nの元素を表し、有機基R1と結合してオニウムイオン[A+]を形成する。VIA族〜VIIA族の元素のうち好ましいのはカチオン重合性能や架橋反応性能に優れるS(硫黄)またはI(ヨウ素)であり、対応するオニウムイオンとしてはスルホニウム、ヨードニウムである。nは元素Aの原子価を表し、1または2である。
【0022】
式(1)中のR1はAに結合している有機基を表し、同一であっても異なってもよい。R1としては、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数2〜30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基およびハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0023】
上記において炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基などの単環式アリール基およびナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノンなどの縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0024】
炭素数4〜30の複素環基としては、酸素、窒素、硫黄などの複素原子を1〜3個含む環状のものが挙げられ、これらは同一であっても異なっていてもよく、具体例としてはチエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニルなどの単環式複素環基およびインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなどの縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜30のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキサデシル、オクダデシルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基が挙げられる。また、炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。さらに、炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−1−プロピニル、1−メチル−2−プロピニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。
【0026】
上記の炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数2〜30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクダデシルなど炭素数1〜18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなど炭素数1〜18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど炭素数3〜18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ドデシルオキシなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイルなど炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイルなど炭素数7〜11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルなど炭素数2〜19の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニルなど炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニルなど炭素数7〜11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシなど炭素数2〜19の直鎖または分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、ビフェニリルチオ、メチルフェニルチオ、クロロフェニルチオ、ブロモフェニルチオ、フルオロフェニルチオ、ヒドロキシフェニルチオ、メトキシフェニルチオ、ナフチルチオ、4−[4−(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4−(フェニルチオ)フェニルチオ、4−ベンゾイルフェニルチオ、4−ベンゾイル−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−メチルチオフェニルチオ、4−(メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ、など炭素数6〜20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、tert−ブチルチオ、ネオペンチルチオ、ドデシルチオなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチルなど炭素数6〜10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、キサンテニル、クロマニル、イソクロマニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなど炭素数4〜20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシなど炭素数6〜10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、tert−ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニルなど炭素数6〜10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニルなど炭素数の6〜10のアリールスルホニル基;アルキレンオキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンなどが挙げられる。
【0027】
また2個以上のR1が互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して元素Aを含む環構造を形成しても良い。
【0028】
スルホニウムイオンとしては従来公知のものが挙げられ、その具体例としては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、トリ−o−トリルスルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、1−ナフチルジフェニルスルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、トリ−1−ナフチルスルホニウム、トリ−2−ナフチルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジ−p−トリルスルホニウム、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4−(2−チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4−[ビス(4−メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4−[ビス(4−メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5−(4−メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−フェニルチアアンスレニウム、5−トリルチアアンスレニウム、5−(4−エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−(2,4,6−トリメチルフェニル)チアアンスレニウムなどのトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4−ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムなどのジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2−ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2−ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9−アントラセニルメチルフェナシルスルホニウムなどのモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウムなどのトリアルキルスルホニウムなどが挙げられる。
【0029】
ヨードニウムイオンとしては従来公知のものが挙げられ、その具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムおよび4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウムなどのヨードニウムイオンが挙げられる。
【0030】
式(1)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基などが挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満では、本発明のフッ素化アルキルフルオロリン酸オニウム塩系酸発生剤の重合および架橋性能が低下する。
【0031】
特に好ましいRfは、炭素数が1〜4、かつフッ素原子の置換率が100%の直鎖または分岐アルキル基であり、具体例としては、CF、CF3CF2、(CF32CF、CF3CF2CF2、CF3CF2CF2CF2、(CF32CFCF2、CF3CF2(CF3)CF、(CF33Cが挙げられる。
【0032】
式(1)においてRfの個数bは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4であり、特に好ましくは2または3である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては[(CF3CF23PF3、[(CF3CF2CF23PF3、[((CF32CF)3PF3、[((CF32CF)2PF4、[((CF32CFCF23PF3および[((CF32CFCF22PF4が挙げられる。
【0034】
式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸スルホニウム塩系酸発生剤の好ましい具体例は、トリフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、トリ−p−トリルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、[4−(2−チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビス[トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート]、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド ビス[トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート]、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド ビス[トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート]、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、5−(4−メトキシフェニル)チアアンスレニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、5−フェニルチアアンスレニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ジフェニルフェナシルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェートおよびオクタデシルメチルフェナシルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェートが挙げられる。
【0035】
式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩系酸発生剤の好ましい具体例は、ジフェニルヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ジ−p−トリルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェートおよび4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェートが挙げられる。
【0036】
アルカリ金属成分のカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンが挙げられる。
これらのアルカリ金属成分の対アニオンとしては、従来公知のアニオンであり例えば、本発明の酸発生剤の対アニオンであるフッ素化アルキルリン酸アニオン、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲンイオン;OH-;ClO4-;FSO3-、ClSO3-、CH3SO3-、C65SO3-、CF3SO3-などのスルホン酸イオン類;HSO4-、SO42-などの硫酸イオン類;HCO3-、CO32-などの炭酸イオン類;H2PO4-、HPO4 2-、PO43-などのリン酸イオン類; PF6-、PF5OH-などのフルオロリン酸イオン類;BF4-、B(C654-、B(C64CF3)4-などのホウ酸イオン類;AlCl4-;BiF6-;SbF6-、SbF5OH-などのフルオロアンチモン酸イオン類;AsF6-、AsF5OH-などのフルオロヒ素酸イオン類が挙げられる。
これらのアルカリ金属成分のカチオンとして、式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸オニウム塩中に100ppmを超えて含有するとそれを用いたエネルギー線硬化性組成物および化学増幅ネガ型レジスト組成物の硬化物が着色する。
硬化物の着色の観点から、アルカリ金属成分のカチオン含有量は、好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。
【0037】
本発明の酸発生剤は、さらに上記一般式(1)で表される酸発生剤と下記一般式(2)で表されるオニウム塩を含んでなる酸発生剤である。式(2)のオニウム塩を混合することで、さらにエネルギー線硬化性組成物および化学増幅ネガ型レジスト組成物の硬化物の透明性が向上する。
【0038】
【化4】

【0039】
[式(2)中のA’はVA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価mの元素を表し、mは1〜3の整数である。R1の定義は一般式(1)中の定義と同じで、R1の個数はm+1である。MはIIIA族〜VA族の元素を表し、cはMと結合するフッ素原子の個数を表し、4〜6の整数である。]
【0040】
一般式(2)中のA’はVA族〜VIIA族(CAS表記)の元素を表し、有機基R1と結合してオニウムイオン[A’+]を形成する。VA族〜VIIA族の元素のうち好ましいのはカチオン重合性能や架橋反応性能の観点から、S(硫黄)、I(ヨウ素)、N(窒素)、P(リン)であり、対応するオニウムイオンとしてはスルホニウム、ヨードニウム、アンモニウム、ホスホニウムである。特に好ましくはS、Iである。mは元素A’の原子価を表し、1〜3の整数である。
【0041】
式(2)中のR1は式(1)中のR1と同じ定義であり、R1の個数はm+1である。
【0042】
スルホニウムイオンの具体例は一般式(1)で挙げられたものと同じである。
【0043】
ヨードニウムイオンの具体例は一般式(1)で挙げられたものと同じである。
【0044】
アンモニウムイオンとしては従来公知のものが挙げられ、その具体例としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウム;N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウムなどのピロリジニウム;N,N'−ジメチルイミダゾリニウム、N,N'−ジエチルイミダゾリニウム、N−エチル−N'−メチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムなどのイミダゾリニウム;N,N'−ジメチルテトラヒドロピリミジニウムなどのテトラヒドロピリミジニウム;N,N'−ジメチルモルホリニウムなどのモルホリニウム;N,N'−ジエチルピペリジニウムなどのピペリジニウム;N−メチルピリジニウム、N−ベンジルピリジニウム、N−フェナシルピリジウムなどのピリジニウム;N,N'−ジメチルイミダゾリウム、などのイミダゾリウム;N−メチルキノリウム、N−ベンジルキノリウム、N−フェナシルキノリウムなどのキノリウム;N−メチルイソキノリウムなどのイソキノリウム;ベンジルベンゾチアゾニウム、フェナシルベンゾチアゾニウムなどのチアゾニウム;ベンジルアクリジウム、フェナシルアクリジウムなどのアクリジウムが挙げられる。
【0045】
ホスホニウムイオンとしては従来公知のものが挙げられ、その具体例としては、テトラフェニルホスホニウム、テトラ−p−トリルホスホニウム、テトラキス(2−メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(3−メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(4−メトキシフェニル)ホスホニウムなどのテトラアリールホスホニウム;トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルブチルホスホニウムなどのトリアリールホスホニウム;トリエチルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルフェナシルホスホニウム、トリブチルフェナシルホスホニウムなどのテトラアルキルホスホニウムなどが挙げられる。
【0046】
式(2)中のMはIIIA族〜VA族の元素を表し、cはMと結合するフッ素原子の個数を表し、4〜6の整数である。
MFとしては従来公知のものが挙げられ、その具体例としては、BF、AlF、PF、GaF、AsF、SbF、BiF、BiFなどが挙げられる。
Mとしてこれらの元素のうち好ましいのは、上記酸発生剤を使用したエネルギー線硬化性組成物および化学増幅ネガ型レジスト組成物の硬化物における着色の観点から、B(ホウ素)、P(リン)、Sb(アンチモン)であり、対応するアニオンとしては、BF、PF、SbFである。特に好ましくは毒性元素(Sb)を含有しないBF、PFである。
【0047】
一般式(1)で表される酸発生剤と併用する一般式(2)のオニウム塩の割合は、硬化物の着色及び硬化性の観点から、式(1)の酸発生剤100重量部に対して、5〜1000重量部が好ましく、さらに好ましくは、50〜700重量部、特に好ましくは70〜500重量部である。
併用する式(2)のオニウム塩がスルホニウム塩、ヨードニウム塩の場合、式(1)で表される酸発生剤と同一カチオン構造であっても、異なってもいても良いが、製造上の簡便さから同一カチオン構造が好ましい。
【0048】
式(1)または式(2)で表される酸発生剤を併用する場合は、カチオン重合性化合物や化学増幅ネガ型レジスト組成物への溶解を容易にするため、あらかじめ重合や架橋反応を阻害しない溶剤に溶かしておいてもよい。
【0049】
溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどのカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0050】
溶剤を使用する場合、溶剤の使用割合は、本発明の式(1)で表される酸発生剤まては式(2)のオニウム塩を併用した酸発生剤100重量部に対して、15〜1000重量部が好ましく、さらに好ましくは30〜500重量部である。使用する溶媒は、単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0051】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、上記酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなる。
エネルギー線硬化性組成物中のアルカリ金属含量は、硬化物の着色の観点から1.5ppm以下が好ましい。
【0052】
エネルギー線硬化性組成物の構成成分であるカチオン重合性化合物としては、環状エーテル(エポキシド及びオキセタン等)、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる{特開平11−060996号、特開平09−302269号、特開2003−026993号、特開2002−206017号、特開平11−349895号、特開平10−212343号、特開2000−119306号、特開平10−67812号、特開2000−186071号、特開平08−85775号、特開平08−134405号、特開2008−20838、特開2008−20839、特開2008−20841、特開2008−26660、特開2008−26644、特開2007−277327、フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年、工業調査会)、総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年、総合技術センター)、ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年、シーエムシー)、技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年、技術情報協会)、色材、68、(5)、286−293(1995)、ファインケミカル、29、(19)、5−14(2000)等}。
【0053】
エポキシドとしては、公知のもの等が使用でき、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドが含まれる。
【0054】
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0055】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。
【0056】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
【0057】
オキセタンとしては、公知のもの等が使用でき、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキセタン及びフェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
【0058】
エチレン性不飽和化合物としては、公知のカチオン重合性単量体等が使用でき、脂肪族モノビニルエーテル、芳香族モノビニルエーテル、多官能ビニルエーテル、スチレン及びカチオン重合性窒素含有モノマーが含まれる。
【0059】
脂肪族モノビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0060】
芳香族モノビニルエーテルとしては、2−フェノキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル及びp−メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0061】
多官能ビニルエーテルとしては、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
スチレンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン及びp−tert−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0063】
カチオン重合性窒素含有モノマーとしては、N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0064】
ビシクロオルトエステルとしては、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び1−エチル−4−ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ−[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0065】
スピロオルトカーボネートとしては、1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9−ジベンジル−1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0066】
スピロオルトエステルとしては、1,4,6−トリオキサスピロ[4.4]ノナン、2−メチル−1,4,6−トリオキサスピロ[4.4]ノナン及び1,4,6−トリオキサスピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0067】
さらに、1分子中に少なくとも1個のカチオン重合性基を有するポリオルガノシロキサンを使用することができる(特開2001−348482号公報、特開2000−281965号公報、特開平7−242828号公報、特開2008−195931号公報、Journal of Polym. Sci.、Part A、Polym.Chem.、Vol.28,497(1990)等に記載のもの)。
これらのポリオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0068】
これらのカチオン重合性化合物のうち、エポキシド、オキセタン及びビニルエーテルが好ましく、さらに好ましくはエポキシド及びオキセタン、特に好ましくは脂環式エポキシド及びオキセタンである。また、これらのカチオン重合性化合物は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0069】
エネルギー線硬化性組成物中の本発明の式(1)で表される酸発生剤の含有量もしくは式(1)と式(2)で表される酸発生剤を合計した含有量は、カチオン重合性化合物100重量部に対し、0.05〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。この範囲であると、カチオン重合性化合物の重合がさらに十分となり、硬化体の物性がさらに良好となる。なお、この含有量は、カチオン重合性化合物の性質やエネルギー線の種類と照射量、温度、硬化時間、湿度、塗膜の厚み等のさまざまな要因を考慮することによって決定され、上記範囲に限定されない。
【0070】
本発明のエネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて、公知の添加剤(増感剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、イオン補足剤、着色防止剤、溶剤、非反応性の樹脂及びラジカル重合性化合物等)を含有させることができる。
【0071】
増感剤としては、公知(特開平11−279212号及び特開平09−183960号等)の増感剤等が使用でき、アントラセン{アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン等};ピレン;1,2−ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン{チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントン等};フェノチアジン{フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、N−フェニルフェノチアジン等};キサントン;ナフタレン{1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、及び4−メトキシ−1−ナフトール等};ケトン{ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等};カルバゾール{N−フェニルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びN−グリシジルカルバゾール等};クリセン{1,4−ジメトキシクリセン及び1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等};フェナントレン{9−ヒドロキシフェナントレン、9−メトキシフェナントレン、9−ヒドロキシ−10−メトキシフェナントレン及び9−ヒドロキシ−10−エトキシフェナントレン等}等が挙げられる。
【0072】
増感剤を含有する場合、増感剤の含有量は、酸発生剤100部に対して、1〜300重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜200重量部である。
【0073】
顔料としては、公知の顔料等が使用でき、無機顔料(酸化チタン、酸化鉄及びカーボンブラック等)及び有機顔料(アゾ顔料、シアニン顔料、フタロシアニン顔料及びキナクリドン顔料等)等が挙げられる。
【0074】
顔料を含有する場合、顔料の含有量は、酸発生剤100部に対して、0.5〜400000重量部が好ましく、さらに好ましくは10〜150000重量部である。
【0075】
充填剤としては、公知の充填剤等が使用でき、溶融シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、ケイ酸カルシウム及びケイ酸リチウムアルミニウム等が挙げられる。
【0076】
充填剤を含有する場合、充填剤の含有量は、酸発生剤100部に対して、50〜600000重量部が好ましく、さらに好ましくは300〜200000重量部である。
【0077】
帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤等が使用でき、非イオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、カチオン型帯電防止剤、両性型帯電防止剤及び高分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0078】
帯電防止剤を含有する場合、帯電防止剤の含有量は、酸発生剤100部に対して、0.1〜20000重量部が好ましく、さらに好ましくは0.6〜5000重量部である。
【0079】
難燃剤としては、公知の難燃剤等が使用でき、無機難燃剤{三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びアルミン酸カルシウム等};臭素難燃剤{テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン及びデカブロモビフェニルエーテル等};及びリン酸エステル難燃剤{トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート等}等が挙げられる。
【0080】
難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は、酸発生剤100部に対して、0.5〜40000重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜10000重量部である。
【0081】
消泡剤としては、公知の消泡剤等が使用でき、アルコール消泡剤、金属石鹸消泡剤、リン酸エステル消泡剤、脂肪酸エステル消泡剤、ポリエーテル消泡剤、シリコーン消泡剤及び鉱物油消泡剤等が挙げられる。
【0082】
流動調整剤としては、公知の流動性調整剤等が使用でき、水素添加ヒマシ油、酸化ポリエチレン、有機ベントナイト、コロイド状シリカ、アマイドワックス、金属石鹸及びアクリル酸エステルポリマー等が挙げられる。
光安定剤としては、公知の光安定剤等が使用でき、紫外線吸収型安定剤{ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチレート、シアノアクリレート及びこれらの誘導体等};ラジカル補足型安定剤{ヒンダードアミン等};及び消光型安定剤{ニッケル錯体等}等が挙げられる。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤等が使用でき、フェノール系酸化防止剤(モノフェノール系、ビスフェノール系及び高分子フェノール系等)、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
密着性付与剤としては、公知の密着性付与剤等が使用でき、カップリング剤、シランカップリング剤及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
イオン補足剤としては、公知のイオン補足剤等が使用でき、有機アルミニウム(アルコキシアルミニウム及びフェノキシアルミニウム等)等が挙げられる。
着色防止剤としては、公知の着色防止剤が使用でき、一般的には酸化防止剤が有効であり、フェノール系酸化防止剤(モノフェノール系、ビスフェノール系及び高分子フェノール系等)、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられるが、高温時の耐熱試験時の着色防止にはほとんど効力がない。
【0083】
消泡剤、流動調整剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、イオン補足剤又は、着色防止剤を含有する場合、各々の含有量は、酸発生剤100部に対して、0.1〜20000重量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5000重量部である。
【0084】
溶剤としては、カチオン重合性化合物の溶解やエネルギー線硬化性組成物の粘度調整のために使用できれば制限はなく、上記酸発生剤の溶剤として挙げたものが使用できる。
【0085】
溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、酸発生剤100部に対して、50〜2000000重量部が好ましく、さらに好ましくは200〜500000重量部である。
【0086】
非反応性の樹脂としては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリブテン、スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体及びポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂の数平均分子量は、1000〜500000が好ましく、さらに好ましくは5000〜100000である(数平均分子量はGPC等の一般的な方法によって測定された値である。)。
【0087】
非反応性の樹脂を含有する場合、非反応性の樹脂の含有量は、酸発生剤100部に対して、5〜400000重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150000重量部である。
【0088】
非反応性の樹脂を含有させる場合、非反応性の樹脂をカチオン重合性化合物等と溶解しやすくするため、あらかじめ溶剤に溶かしておくことが望ましい。
【0089】
ラジカル重合性化合物としては、公知{フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年、工業調査会)、総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年、総合技術センター)、ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年、シーエムシー)、技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年、技術情報協会)}のラジカル重合性化合物等が使用でき、単官能モノマー、2官能モノマー、多官能モノマー、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
【0090】
ラジカル重合性化合物を含有する場合、ラジカル重合性化合物の含有量は、酸発生剤100部に対して、5〜400000重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150000重量部である。
【0091】
ラジカル重合性化合物を含有する場合、これらをラジカル重合によって高分子量化するために、熱又は光によって重合を開始するラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0092】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤等が使用でき、熱ラジカル重合開始剤(有機過酸化物、アゾ化合物等)及び光ラジカル重合開始剤(アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ミヒラーケトン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アシルホスフィン系開始剤等)が含まれる。
【0093】
ラジカル重合開始剤を含有する場合、ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0094】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合性化合物、酸発生剤及び必要により添加剤を、室温(20〜30℃程度)又は必要により加熱(40〜90℃程度)下で、均一に混合溶解するか、またはさらに、3本ロール等で混練して調製することができる。
【0095】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、エネルギー線を照射することにより硬化させて、硬化体を得ることができる。
エネルギー線としては、本発明の酸発生剤の分解を誘発するエネルギーを有する限りいかなるものでもよいが、低圧、中圧、高圧若しくは超高圧の水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光灯、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ又はFレーザ等から得られる紫外〜可視光領域(波長:約100〜約800nm)のエネルギー線が好ましい。なお、エネルギー線には、電子線又はX線等の高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。
【0096】
エネルギー線の照射時間は、エネルギー線の強度やエネルギー線硬化性組成物に対するエネルギー線の透過性に影響を受けるが、常温(20〜30℃程度)で、0.1秒〜10秒程度で十分である。しかしエネルギー線の透過性が低い場合やエネルギー線硬化性組成物の膜厚が厚い場合等にはそれ以上の時間をかけるのが好ましいことがある。エネルギー線照射後0.1秒〜数分後には、ほとんどのエネルギー線硬化性組成物はカチオン重合により硬化するが、必要であればエネルギー線の照射後、室温(20〜30℃程度)〜200℃で数秒〜数時間加熱しアフターキュアーすることも可能である。
【0097】
本発明のエネルギー線硬化性組成物の具体的な用途としては、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト(回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等)、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、ポジ型感光性材料、ネガ型感光性材料、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等)、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造用、及びマイクロ光造形用材料等が挙げられ、特に得られた硬化物の着色が少なく、透明性が優れるため、光学用途に最適である。
【0098】
本発明の酸発生剤は、光照射によっても強酸が発生することから、公知(特開2003−267968号公報、特開2003−261529号公報、特開2002−193925号公報等)の化学増幅型レジスト材料用の酸発生剤等としても使用できる。
【0099】
化学増幅型レジスト材料としては、(1)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂及び酸発生剤を必須成分とする2成分系化学増幅型ポジ型レジスト、(2)アルカリ現像液に可溶な樹脂、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる溶解阻害剤及び酸発生剤を必須成分とする3成分系化学増幅型ポジ型レジスト、並びに(3)アルカリ現像液に可溶な樹脂、酸の存在下で加熱処理することにより樹脂を架橋しアルカリ現像液に不溶とする架橋剤及び酸発生剤を必須成分とする化学増幅型ネガ型レジストが含まれる。
【0100】
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、光又は放射線照射により酸を発生する化合物である本発明の一般式(1)または式(1)と式(2)で表される酸発生剤を含んでなる成分(A)と、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含んでなることを特徴とする。
化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物中のアルカリ金属含量は、硬化物の着色の観点から1.3ppm以下が好ましい。
【0101】
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物において、成分(A)は、従来公知の他の酸発生剤と併用してもよい。他の酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物、トリアジン化合物、ニトロベンジル化合物のほか、有機ハロゲン化物類、ジスルホン等を挙げることができる。
【0102】
従来公知の他の酸発生剤として、好ましくは、オニウム化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物及びオキシムスルホネート化合物の群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0103】
そのような従来公知の他の酸発生剤を併用する場合、その使用割合は任意でよいが、通常、上記一般式(1)または式(1)と式(2)で表される酸発生剤の合計重量100重量部に対し、他の酸発生剤は10〜900重量部、好ましくは25〜400重量部である。
【0104】
上記成分(A)の含有量は、化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の固形分中、0.01〜10重量%とすることが好ましい。
【0105】
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)
本発明における「フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂」(以下、「フェノール樹脂(B)」という。)としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール−キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン縮合樹脂、フェノール性水酸基を含有するポリイミド樹脂等が用いられる。これらのなかでも、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂が好ましい。尚、これらのフェノール樹脂(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0106】
また、上記フェノール樹脂(B)には、成分の一部としてフェノール性低分子化合物が含有されていてもよい。
上記フェノール性低分子化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0107】
架橋剤(C)
本発明における架橋剤(C)は、前記フェノール樹脂(B)と反応する架橋成分(硬化成分)として作用するものであれば、特に限定されない。上記架橋剤(C)としては、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたベンゼンを骨格とする化合物、オキシラン環含有化合物、チイラン環含有化合物、オキセタニル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む)、ビニルエーテル基含有化合物等を挙げることができる。
【0108】
これらの架橋剤(C)のなかでも、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、オキシラン環含有化合物が好ましい。更には、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物及びオキシラン環含有化合物を併用することがより好ましい。
【0109】
本発明における架橋剤(C)の配合量は、前記フェノール樹脂(B)100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部である。この架橋剤(C)の配合量が1〜100重量部である場合には、硬化反応が十分に進行し、得られる硬化物は高解像度で良好なパターン形状を有し、耐熱性、電気絶縁性に優れるため好ましい。
また、アルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物及びオキシラン環含有化合物を併用する際、オキシラン環含有化合物の含有割合は、アルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物及びオキシラン環含有化合物の合計を100重量%とした場合に、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
この場合、得られる硬化膜は、高解像性を損なうことなく耐薬品性にも優れるため好ましい。
【0110】
架橋微粒子(D)
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、得られる硬化物の耐久性や熱衝撃性を向上させるために架橋微粒子(D)を更に含有させることができる。
架橋微粒子(D)としては、この架橋微粒子を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であれば特に限定されないが、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性モノマー(以下、単に「架橋性モノマー」という。)と、架橋微粒子(D)のTgが0℃以下となるように選択される1種又は2種以上の「他のモノマー」と、を共重合したものが好ましい。
特に、上記他のモノマーを2種以上併用し、且つ他のモノマーのうちの少なくとも1種が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等の重合性基以外の官能基を有するものであることが好ましい。
【0111】
上記架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を複数有する化合物を挙げることができる。これらのなかでも、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0112】
上記架橋微粒子(D)を製造する際に用いられる上記架橋性モノマーは、共重合に用いられる全モノマー100重量%に対して、1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0113】
また、上記他のモノマーとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン化合物、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等の不飽和ニトリル化合物類、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等の不飽和アミド類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール等の芳香族ビニル化合物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル等の不飽和酸化合物、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和化合物等を挙げることができる。
【0114】
これらの他のモノマーのなかでも、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等が好ましい。
【0115】
また、上記架橋微粒子(D)の製造には、他のモノマーとして、少なくも1種のジエン化合物、具体的にはブタジエンが用いられていることが好ましい。このようなジエン化合物は、共重合に用いる全モノマー100重量%に対して20〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜70重量%である。
他のモノマーとして、上記ブタジエン等のジエン化合物が全モノマー100重量%に対して20〜80重量%で共重合される場合には、架橋微粒子(D)がゴム状の軟らかい微粒子となり、得られる硬化膜にクラック(割れ)が発生するのを防止でき、耐久性に優れた硬化膜を得ることができる。
【0116】
尚、架橋微粒子(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0117】
架橋微粒子(D)の平均粒径は、通常30〜500nmであり、好ましくは40〜200nm、更に好ましくは50〜120nmである。
この架橋微粒子(D)の粒径のコントロール方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合により架橋微粒子を合成する場合、使用する乳化剤の量により乳化重合中のミセルの数を制御し、粒径をコントロールすることができる。
尚、架橋微粒子(D)の平均粒径とは、光散乱流動分布測定装置等を用い、架橋微粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。
【0118】
架橋微粒子(D)の配合量は、前記フェノール樹脂(B)100重量部に対して、0.5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜30重量部である。この架橋微粒子(D)の配合量が0.5〜50重量部である場合には、他の成分との相溶性又は分散性に優れ、得られる硬化膜の熱衝撃性及び耐熱性を向上させることができる。
【0119】
密着助剤(E)
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、基材との密着性を向上させるために、密着助剤を含有させることができる。
上記密着助剤としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有する官能性シランカップリング剤等が挙げられる。
【0120】
密着助剤の配合量は、前記フェノール樹脂(B)100重量部に対して、0.2〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部である。この密着助剤の配合量が0.2〜10重量部である場合には、貯蔵安定性に優れ、且つ良好な密着性を得ることができるため好ましい。
【0121】
溶剤
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節するために溶剤を含有させることができる。
上記溶剤は、特に制限されないが、具体例は前記載のものが挙げられる。
【0122】
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、必要により、増感剤を含有できる。このような増感剤としては、従来公知のものが使用でき、具体的には、前記のものが挙げられる。
【0123】
これらの増感剤の使用量は、上記一般式(1)または式(1)と式(2)で表される酸発生剤の合計重量100重量部に対し、5〜500重量部、好ましくは10〜300重量部である。
【0124】
他の添加剤
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、必要に応じて他の添加剤を本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤としては、無機フィラー、クエンチャー、レベリング剤・界面活性剤等が挙げられる。
【0125】
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法により調製することができる。また、各成分を中に入れ完全に栓をしたサンプル瓶を、ウェーブローターの上で攪拌することによっても調製することができる。
【0126】
本発明における硬化物は、前記化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物が硬化されてなる。
前述の本発明にかかる化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、残膜率が高く、解像性に優れていると共に、その硬化物は電気絶縁性、熱衝撃性、耐熱着色性(透明性)等に優れているため、その硬化物は特に透明性が要求される半導体素子、半導体パッケージやディスプレイ等の電子部品の表面保護膜、平坦化膜、層間絶縁膜材料等として好適に使用することができる。
【0127】
本発明の硬化物を形成するには、まず前述の本発明にかかる化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物を支持体(樹脂付き銅箔、銅張り積層板や金属スパッタ膜を付けたシリコンウエハーやアルミナ基板等)に塗工し、乾燥して溶剤等を揮発させて塗膜を形成する。その後、所望のマスクパターンを介して露光し、加熱処理(以下、この加熱処理を「PEB」という。)を行い、フェノール樹脂(B)と架橋剤(C)との反応を促進させる。次いで、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することにより所望のパターンを得ることができる。更に、絶縁膜特性を発現させるために加熱処理を行うことにより、硬化膜を得ることができる。
【0128】
樹脂組成物を支持体に塗工する方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、又はスピンコート法等の塗布方法を用いることができる。また、塗布膜の厚さは、塗布手段、組成物溶液の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、h線ステッパー、i線ステッパー、gh線ステッパー、ghi線ステッパー等の紫外線や電子線、レーザー光線等が挙げられる。また、露光量としては使用する光源や樹脂膜厚等によって適宜選定されるが、例えば、高圧水銀灯からの紫外線照射の場合、樹脂膜厚1〜50μmでは、100〜50000J/m2程度である。
【0129】
露光後は、発生した酸によるフェノール樹脂(B)と架橋剤(C)の硬化反応を促進させるために上記PEB処理を行う。PEB条件は樹脂組成物の配合量や使用膜厚等によって異なるが、通常、70〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜60分程度である。その後、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することによって所望のパターンを形成する。この場合の現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等を挙げることができる。現像条件としては通常、20〜40℃で1〜10分程度である。
【0130】
更に、現像後に絶縁膜としての特性を十分に発現させるために、加熱処理を行うことによって十分に硬化させることができる。このような硬化条件は特に制限されるものではないが、硬化物の用途に応じて、50〜250℃の温度で、30分〜10時間程度加熱し、組成物を硬化させることができる。また、硬化を十分に進行させたり、得られたパターン形状の変形を防止するために二段階で加熱することもでき、例えば、第一段階では、50〜120℃の温度で、5分〜2時間程度加熱し、更に80〜250℃の温度で、10分〜10時間程度加熱して硬化させることもできる。このような硬化条件であれば、加熱設備として一般的なオーブンや、赤外線炉等を使用することができる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、各例中の部は重量部を示す。
【0132】
〔製造例1〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−K1]の合成
【0133】
【化5】

【0134】
4−[(フェニル)スルフィニル]ビフェニル2.2部、4−(フェニルチオ)ビフェニル2.3部,無水酢酸2.4部,トリフルオロメタンスルホン酸1.44部及びアセトニトリル13.0部を均一混合し,60℃で2時間反応させた。反応溶液を室温(約25℃)まで冷却し,蒸留水60部中に投入し,ジクロロメタン60部で抽出し,水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。ジクロロメタン層をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し,褐色液状の生成物を得た。これに酢酸エチル20部を加え,60℃の水浴中で溶解させた後,ヘキサン60部を加え撹拌した後,5℃まで冷却し30分間静置してから上澄みを除く操作を2回行い,生成物を洗浄した。これをロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリフレート(トリフレート=トリフルオロメタンスルホン酸アニオン)を得た。
(複分解法)
このトリフレートをジクロロメタン55部に溶かし,10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部中に投入してから,室温(約25℃)で3時間撹拌し,ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後,ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−K1]を収率88%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は200ppmであった。
【0135】
〔製造例2〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−K2]の合成
複分解法の「水で3回洗浄」を「水で4回洗浄」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−K2]を収率88%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は100ppmであった。
【0136】
〔製造例3〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−K3]の合成
複分解法の「水で3回洗浄」を「水で6回洗浄」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−K3]を収率86%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は10ppmであった。
【0137】
〔製造例4〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−L1]の合成
複分解法の「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸リチウム水溶液43部」」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−L1]を収率87%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、Li含量は250ppmであった。
【0138】
〔製造例5〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−L2]の合成
複分解法の「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸リチウム水溶液43部」」に、「水で3回洗浄」を「水で6回洗浄」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−1−L2]を収率87%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、Li含量は10ppmであった。
【0139】
〔製造例6〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−1]の合成
【0140】
【化6】

【0141】
複分解法の「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「5%ヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液32部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−1]を収率89%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は1ppmであった。
【0142】
〔製造例7〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラフルオロボレート[P(2)−2]の合成
【0143】
【化7】

【0144】
複分解法の「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「5%テトラフルオロホウ酸カリウム水溶液24部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラフルオロボレート[P(2)−2]を収率85%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は1ppmであった。
【0145】
〔製造例8〕
[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート[P(2)−3]の合成
【0146】
【化8】

【0147】
複分解法の「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「5%ヘキサフルオロアンチモン酸カリウム水溶液48部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート[P(2)−3]を収率90%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は2ppmであった。
【0148】
〔製造例9〕
ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−2−K1]の合成
【0149】
【化9】

【0150】
ジフェニルスルホキシド1.6部、ジフェニルスルフィド1.5部,無水酢酸2.4部,トリフルオロメタンスルホン酸1.44部及びアセトニトリル13.0部を均一混合し,40℃で6時間反応させた。反応溶液を室温(約25℃)まで冷却し,蒸留水60部中に投入し,ジクロロメタン60部で抽出し,水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。ジクロロメタン層をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し,褐色液状の生成物を得た。これに酢酸エチル20部を加え,60℃の水浴中で溶解させた後,ヘキサン60部を加え撹拌した後,5℃まで冷却し30分間静置してから上澄みを除く操作を2回行い,生成物を洗浄した。これをロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリフレート(トリフレート=トリフルオロメタンスルホン酸アニオン)を得た。
(複分解法)
このトリフレートをジクロロメタン45部に溶かし,10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部中に投入してから,室温(約25℃)で3時間撹拌し,ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後,ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−2−K1]を収率86%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は250ppmであった。
【0151】
〔製造例10〕
ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−2−K2]の合成
複分解法の「水で3回洗浄」を「水で6回洗浄」に変更したこと以外、製造例9と同様にして、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(1)−2−K2]を収率84%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は10ppmであった。
【0152】
〔製造例11〕
ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−4]の合成
【0153】
【化10】

【0154】
複分解法の「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「5%ヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液32部」に変更したこと以外、製造例9と同様にして、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−4]を収率90%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は1ppmであった。
【0155】
〔製造例12〕
4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−3−K1]の合成
【0156】
【化11】

【0157】
4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム クロライド2.1部を水10部に攪拌下分散させ、10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部とジクロロメタン45部を攪拌下投入して,室温(約25℃)で3時間撹拌混合する。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後,ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−3−K1]を収率88%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は220ppmであった。
【0158】
〔製造例13〕
4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−3−K2]の合成
「水で3回洗浄」を「水で6回洗浄」に変更したこと以外、製造例12と同様にして、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−3−K2]を収率87%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は10ppmであった。
【0159】
〔製造例14〕
4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−5]の合成
【0160】
【化12】

【0161】
「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「5%ヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液32部」に変更したこと以外、製造例12と同様にして、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−5]を収率90%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は1ppmであった。
【0162】
〔製造例15〕
4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−4−K1]の合成
【0163】
【化13】

【0164】
4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム クロライド3.0部を水10部に攪拌下分散させ、10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部とジクロロメタン45部を攪拌下投入して,室温(約25℃)で3時間撹拌混合する。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後,ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−4−K1]を収率88%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は260ppmであった。
【0165】
〔製造例16〕
4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート [P(1)−4−K2]の合成
「水で3回洗浄」を「水で6回洗浄」に変更したこと以外、製造例15と同様にして、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート[P(1)−4−K2]を収率84%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は10ppmであった。
【0166】
〔製造例17〕
4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−6]の合成
【0167】
【化14】

【0168】
「10%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液42部」を「5%ヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液32部」に変更したこと以外、製造例15と同様にして、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート[P(2)−6]を収率88%で得た。
このもののアルカリ金属含量を原子吸光法にて測定し、K含量は1ppmであった。
【0169】
<エネルギー線硬化性組成物の調製及びその評価−1>
カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)に酸発生剤(P(1)−1、2およびP(2)−1〜4)を、表1に示した配合量で均一混合して、エネルギー線硬化性組成物(実施例C1〜C13および比較例C1〜C3)を調製した。
尚、酸発生剤中のアルカリ金属含量及び組成物中のアルカリ金属含量は原子吸光測定方法にて定量した。
【0170】
【表1】

【0171】
<UV硬化性(カチオン重合性能)評価−1>
上記で得た組成物をアプリケーターにてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に膜厚40μmで塗布した。上記塗布後のPETフィルムに紫外線照射装置を用いて、フィルターによって波長を限定した紫外光を照射した。なお、フィルターはIRCF02フィルター(アイグラフィックス株式会社製、340nm未満の光をカットするフィルター)を使用した。照射後、40分後の塗膜硬度を鉛筆硬度(JIS K5600−5−4:1999)にて測定し、以下の基準により評価した結果を表2に示す。鉛筆硬度が高いほど、エネルギー線硬化性組成物の感度(カチオン重合硬化性)が良好であることを示す。
【0172】
(評価基準)
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がH〜B
△:鉛筆硬度が2B〜4B
×:液状〜タックがあり、鉛筆硬度を測定できない
【0173】
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・照度(365nmヘッド照度計で測定):190mW/cm
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):800mJ/cm
【0174】
<耐熱性(黄変)試験−1>
上記で得た組成物をアプリケーターにてスライドガラス上に膜厚25μmで塗布した。上記塗布後のスライドガラスに紫外線照射装置を用いて、紫外線を照射した。
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・照度(365nmヘッド照度計で測定):190mW/cm
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):800mJ/cm
照射後30分間室温で硬化させた後、ホットプレートにて120℃×30分間アフターキュアーして耐熱試験用のサンプルを作成した。
このサンプルを240℃に温調したホットプレートにて15分間加熱し、塗膜の色相を目視で評価した。評価基準は下記の通り。
【0175】
(評価基準)
◎:無色(塗膜の黄変なし)
○:淡黄色〜黄色
×:褐色
【0176】
UV硬化性試験−1および耐熱性試験−1の結果を表2にまとめた。
【0177】
【表2】

【0178】
<エネルギー線硬化性組成物の調製及びその評価−2>
カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)に酸発生剤を、表3に示した配合量で均一混合して、エネルギー線硬化性組成物(実施例C1〜C4および比較例C1〜2)を調製した。
【0179】
【表3】

【0180】
<UV硬化性(カチオン重合性能)評価−2>
UV硬化性評価−1で、露光時に使用したフィルターを熱線カットフィルター(アイグラフィックス株式会社製)に、紫外光の照射条件を、積算光量(365nmヘッド照度計で測定):300mJ/cmとした以外は同様にして評価した。
【0181】
<耐熱性(黄変)試験−2>
耐熱性試験−1で、露光時に使用したフィルターを熱線カットフィルター(アイグラフィックス株式会社製)に、紫外光の照射条件を、積算光量(365nmヘッド照度計で測定):300mJ/cmとした以外は同様にして評価した。
【0182】
UV硬化性試験−2および耐熱性試験−2の結果を表4にまとめた。
【0183】
【表4】

【0184】
<ネガ型フォトレジスト組成物の調製及びその評価>
表5に示す通り、酸発生剤である成分(A)1重量部、フェノール樹脂である成分(B)として、p−ヒドロキシスチレン/スチレン=80/20(モル比)からなる共重合体(Mw=10,000)を100重量部、架橋剤である成分(C)として、ヘキサメトキシメチルメラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW−390」)を20重量部、架橋微粒子である成分(D)として、ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=64/20/8/6/2(重量%)からなる共重合体(平均粒径=65nm、Tg=−38℃)を10重量部、密着助剤である成分(E)として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、商品名「S510」)5重量部を溶剤−1(乳酸エチル)145重量部に均一に溶解して、本発明のネガ型フォトレジスト組成物(実施例N1、N2、比較例N1)を調製した。
【0185】
【表5】

【0186】
<UV硬化性(ネガ型レジスト)評価−3>
シリコンウェハー基盤上に、各組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱乾燥して約20μmの膜厚を有する樹脂塗膜を得た。その後、TME−150RSC(トプコン社製)を用いてパターン露光(i線;500mJ/cm)を行い、ホットプレートにより110℃で3分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた浸漬法により、2分間の現像処理を行い、流水洗浄し、窒素でブローして50μmのラインアンドスペースパターンを得た。
実施例N1、N2および比較例N1ともに現像前後の残膜の比率を示す残膜率が90%以上で、良好なパターン形状であった。
【0187】
<耐熱性(黄変)試験−3>
上記UV硬化性評価−3で得られたパターン付きシリコン基板を200℃に温調したホットプレートにて15分間加熱し、パターン部分の色相を目視で評価した結果を表6に示す。評価基準は下記の通り。
(評価基準)
◎:無色(塗膜の黄変なし)
○:淡黄色〜黄色
×:褐色
【0188】
【表6】

【0189】
表2、4、6の結果より、本発明の酸発生剤を用いたエネルギー線硬化性組成物およびネガ型レジスト組成物は、UV硬化性能が良好で、かつ耐熱試験後の硬化物の透明性が高い(黄変し難い)ことから、ディスプレイ、光導波路や光学レンズ等の光学特性が求められる部材として有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の酸発生剤を使用したエネルギー線硬化性組成物は、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト(回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等)、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、ポジ型感光性材料、ネガ型感光性材料、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等)、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造用、及びマイクロ光造形用材料等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸オニウム塩であって、当該オニウム塩中のアルカリ金属成分の含有量が100ppm以下であることを特徴とする酸発生剤。
【化1】

[式(1)中、AはVIA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価nの元素を表し、nは1または2である。R1はAに結合している有機基であり、R1の個数はn+1である。(n+1)個のR1はそれぞれ互いに同一であっても異なっても良い。また2個以上のR1が互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して元素Aを含む環構造を形成しても良い。Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
AがSまたはIである請求項1に記載の酸発生剤。
【請求項3】
さらに下記一般式(2)で表されるオニウム塩を含んでなる請求項1又は2に記載の酸発生剤。
【化2】

[式(2)中のA’はVA族〜VIIA族(CAS表記)の原子価mの元素を表し、mは1〜3の整数である。R1の定義は一般式(1)中の定義と同じで、R1の個数はm+1である。MはIIIA族〜VA族の元素を表し、cはMと結合するフッ素原子の個数を表し、4〜6の整数である。]
【請求項4】
A’がS、I、N、Pからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載の酸発生剤。
【請求項5】
MがB、P、Sbからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項3又は4に記載の酸発生剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなるエネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のエネルギー線硬化性組成物を硬化してなる硬化体。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の酸発生剤を含んでなる成分(A)と、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である成分(B)と、架橋剤成分(C)とを含んでなる、化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物を硬化してなる硬化体。

【公開番号】特開2012−246456(P2012−246456A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121560(P2011−121560)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000106139)サンアプロ株式会社 (32)
【Fターム(参考)】