説明

フッ素化炭水化物複合体

フッ素化炭水化物分子を含む新規複合体およびその複合体を合成するための方法を開示する。フッ素化炭水化物分子は放射性同位元素を含み得る。複合体を合成する方法は選択した分子を標識するために有用であり、その複合体は診断または治療方法において有用であり得る。特に、その複合体は診断または治療キットにおいて有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
放射免疫診断(「RAID」)、陽電子放射断層撮影法(「PET」)および磁気共鳴映像法(「MRI」)などの多くの診断方法、および放射免疫療法(「RAIT」)などの治療方法では、標識した小分子を使用する必要がある。およそ2時間の半減期と0.65MeVのエネルギーを有する陽電子放射体である18F(すなわち、「F−18」)は、上記方法の多くに使用される小分子を標識するのに望ましい放射性同位元素である。しかしながら、通常、F−18のような短寿命同位元素を診断的または治療的使用に有用な小分子に組み込む方法の解明は、多大な時間を必要とする複雑なプロセスである。そのため、F−18を小分子に容易に組み込む方法が望まれる。2−デオキシ−D−グルコースのF−18誘導体(例えば、F−18,2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース、ここで、C2炭素のフッ素原子がF−18である)は広く作製され、F−18炭水化物複合体または付加物を作製することによって小分子を標識するのに有用な分子である。
【発明の概要】
【0002】
第2の分子に結合されたフッ素化炭水化物分子を含んでなる複合体または付加物を本明細書において開示する。上記複合体は、診断または治療方法、例えば、標識した小分子を必要とする方法において有用である。そのようなものとして、フッ素化炭水化物分子としては、一般に、画像検査法(例えば、PET、MRI、RAID、など)によって検出できるフッ素の同位元素(例えば、F−17、F−18、F−19、F−20および/またはF−21)が挙げられる。いくつかの実施形態では、2以上のフッ素化炭水化物分子を第2の分子に結合することが望ましい場合がある。
【0003】
特に、第2の分子は担体もしくはターゲッティング分子であってよく、および/または、複合体が担体として、もしくはターゲッティング分子として有用であるように第2の分子を選択してもよい。第2の分子としては、アミノ酸、ペプチド、抗体または抗体フラグメントが挙げられる。二重特異性または多重特異性抗体を第2の分子として選択してもよい。
【0004】
フッ素化炭水化物分子としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、タロース、グロース、イドース、アルトロース、アロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオースおよび/もしくはグリセルアルデヒドをはじめとする種々の単糖類ならびに/またはそれらのエナンチオマーが挙げられる。フッ素化炭水化物分子はまた、ケトース糖(例えば、プシコース、フルクトース、ソルボースおよび/もしくはタガトース)、二糖類(例えば、ラクトース、マルトースおよび/もしくはスクロース)、ならびに/または多糖類も含み得る。
【0005】
複合体または付加物を作製するために特に好適なフッ素化炭水化物分子としては、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース、すなわち「FDG」(好ましくは、F−18,2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース)が挙げられる。FDG前駆体のフッ素化(例えば、F−18)誘導体(例えば、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースまたはマンノーストリフレート)も好適なフッ素化炭水化物分子である。フッ素化炭水化物分子は、任意の好適な結合、例えば、ヒドラゾン結合、ヒドラジン結合、アミド結合、アミノ結合、イミノ結合、オキシム結合、スルフィド結合、チオセミカルバゾン結合、セミカルバゾン結合、炭素−炭素結合(例えば、イリド反応によって形成される)またはボロン酸結合によって第2の分子に結合され得る。FDGのヘミアセタールを使用して、FDG複合体を作製してもよい。
【0006】
また、フッ素の同位元素を第2の分子に導入する簡単で便利な方法も開示する。一般に、この方法は、フッ素を第2の分子(例えば、担体またはターゲッティング分子)に導入するためのフッ素化炭水化物誘導体の使用を含む。容易に入手可能なFDG(例えば、F−18,FDG)を反応中間体として使用して、フッ素同位元素をペプチドまたは抗体などのターゲッティング分子に導入することができる。炭水化物を目的の分子に結合するために、FDGの活性官能基(例えば、アルコールおよび/またはアルデヒド)が使用され得る。このようにして標識し得る分子の種類としては、抗体、二重特異性抗体、抗体のフラグメント、ペプチド、アミノ酸、および同位元素で標識することが望ましいその他の分子が挙げられる。特に、この方法は、F−18,FDGをペプチドまたはタンパク質などの分子と結合するのに使用することができ、このペプチドまたはタンパク質は最終的にPETを利用して同定することができる。この方法は、F−19,FDGを、最終的にMRIを利用して同定することができる第2の分子と結合するのにも使用することができる。
【0007】
一実施形態では、ヒドラゾン結合を形成する目的で、アリール−ヒドラジン部分のような担体のヒドラジン部分を使用して、フッ素化炭水化物分子(例えば、FDG)のアルデヒド部分とのヒドラゾン結合を形成することができる。還元剤を用いてヒドラゾン結合を還元して、置換ヒドラジン結合を形成してもよい。
【0008】
もう1つの実施形態では、アミノ結合を形成する目的で、フッ素化炭水化物分子(例えば、FDG)のアルデヒド基が第2の分子のアミノ基とのイミン結合を形成し得る。例えば、そのイミノ結合をin-situで還元して、安定したアミノ結合を形成することができる。他の可能性ある結合としては、アミド結合、スルフィド結合、セミカルバゾン結合、チオセミカルバゾン結合、オキシム結合および炭素−炭素結合(例えば、イリド反応によって形成される)ならびに/またはボロン酸結合が挙げられる。
【0009】
あるいは、フッ素化炭水化物分子の求核性誘導体を作出し、それを次に、第2の分子の基と反応させてもよい。例えば、それらの還元末端に(すなわち、それらのアルデヒド基に)アミノオキシ、ヒドラジドまたはチオセミカルバジド基を有するFDGの誘導体を作出してもよい。これらの誘導体を、例えば、カルボニル炭素にある第2の分子と反応させて、オキシム、ヒドラゾンまたはチオセミカルバゾン結合を形成してもよい。
【0010】
第2の分子とフッ素化炭水化物分子が結合する限り、幅広い種類の第2の分子(例えば、担体および/またはターゲッティング分子)が記載される方法に好適である。例えば、担体がアミノ酸またはペプチド分子であってよい。ペプチドの場合、フッ素化炭水化物がペプチド内に存在する1以上の好適なアミノ酸に結合され得る。そのようなものとして、ペプチド分子は反応性基(例えば、アルデヒドまたはケト基)を含み得る。
【0011】
ペプチド分子がターゲッティング分子として機能するように、受容体ターゲッティング、抗体プレターゲッティング、または他の受容体ターゲッティング剤によって目的の部位に向けられるペプチド分子を設計してもよい。ペプチドとしては、ハプテンおよび/またはキレート剤が挙げられる。ペプチド分子がキレート剤を含んでなる場合、そのキレート剤は金属イオンと錯体を形成し得る。金属イオンとしては、放射性同位元素が挙げられる。好適なペプチドとしては、(アミノ末端からカルボキシ末端へと読むと):(1)HN−NH−CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;(2)O=CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;(3)HN−NH−C−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;(4)Ac−Cys−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(配列番号);(5)Gly−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(配列番号);(6)HN−NH−CS−NH−C−CO−D−Lys(X)−D−Glu−D−Lys(X)−NH;(7)HN−NH−CS−NH−C−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;および/または(8)HN−O−CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および/または軟酸キレート剤である)が挙げられる。
【0012】
特に、複合体は、フッ素化炭水化物分子に結合されている抗体分子または抗体フラグメントを含んでなり得る。ある方法では、フッ素化炭水化物分子を多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および/または多価抗体である抗体に結合し、そのようなものとして、標識抗体を提供することが望ましい。ペプチドの標識に使用する同じ化学を利用して、抗体(多重特異性抗体など)または抗体のフラグメントを標識することができる。フッ素化炭水化物分子と抗体または抗体フラグメントは、いくつかの異なる種類の結合、例えば、ヒドラゾン結合もしくはヒドラジン結合、アミノ結合もしくはイミノ結合、アミド結合、スルフィド結合、チオセミカルバゾン結合、セミカルバゾン結合、オキシム結合、炭素−炭素結合(例えば、イリド反応によって形成される)および/またはボロン酸結合によって結合され得る。
【0013】
1つの方法では、フッ素化炭水化物分子を担体と反応させて、フッ素化炭水化物分子を担体に結合することにより複合体を調製する。例えば、F−18,2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースをヒドラジン基を含む担体と反応させることにより複合体を調製してもよい。
【0014】
複合体を調製するもう1つの方法では、フッ素化炭水化物分子をまず、アミノ化誘導体(例えば、フッ素化炭水化物を、アンモニア、第1級もしくは第2級アミン、ヒドロキシルアミンまたはアミノオキシ含有分子、ヒドラジン、イリドあるいは別の窒素含有分子と反応させることにより)に変換し、次いで、それを第2の分子(例えば、カルボニル炭素を有する担体)と反応させて、アミド、アミノ、イミノ、ヒドラゾンおよび/またはオキシム結合を形成する。例えば、FDGをアミノオキシ、ヒドラジドまたはチオセミカルバジド基と反応させて中間体を形成し、次いで、その中間体を担体と反応させて、複合体を作製してもよい。さらに、その複合体を還元してもよい。あるいは、中間体を、担体と反応させる前に還元して(例えば、オキシム、ヒドラゾンおよび/またはチオセミカルバゾンを含有する中間体を形成し)、その還元した中間体を担体と反応させて、複合体を作製してもよい。
【0015】
複合体を調製するもう1つの方法では、フッ素化炭水化物分子またはフッ素化炭水化物分子の誘導体の1以上のヒドロキシル基を−Clまたは−Brなどの脱離基で置換して、さらにハロゲン化したFDG誘導体を作出する。このようなグルコース誘導体としては、1−クロロ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースもしくは1−ブロモ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含み得るし、大型グルコース誘導体の一部でもあり得る。例えば、Patt et al., Appl. Radiat. Isot. 2002, 57, 705-712の方法によって、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを3,4,6−トリ−O−アセチル−1−クロロ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースまたは3,4,6−トリ−O−アセチル−1−ブロモ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースそれぞれに変換してもよい。あるいは、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース分子をBF.EtOで処理してもよい。これらの誘導体を、次いで、チオール基(例えば、チオフェノールまたはシステインを含有するタンパク質)を有する担体と反応させて、スルフィド結合を形成する。スルフィド結合が形成した後、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース誘導体のアセチル基を加水分解する。
【0016】
調製についてのもう1つの方法では、フッ素化炭水化物分子をセミカルバジドまたはチオセミカルバジド基を有する担体と反応させて、セミカルバゾンまたはチオセミカルバゾンそれぞれを形成することにより複合体を作製する。例えば、担体のセミカルバジドまたはチオセミカルバジド基をフッ素化炭水化物分子の還元末端またはケトン基と反応させてもよい。
【0017】
実施形態のいくつかでは、複合体を還元して、より安定した結合を形成することが望ましい。
【0018】
もう1つの実施形態では、水活性イリド反応を利用することにより複合体を作製する。例えば、担体またはターゲッティング分子(ペプチドなど)の窒素イリドをフッ素化炭水化物分子の還元末端またはケトン基と反応させて、炭素−炭素結合を形成してもよい。
この複合体は、疾病に至る可能性のある疾病または症状を診断する方法において有用であり得る。例えば、診断方法は、(A)被験体に、標的組織に結合する少なくとも1つのアームと、複合体(すなわち、ターゲッティング可能な構築物)に結合する少なくとも1つの他のアームを有する抗体または抗体フラグメントを投与すること;(B)所望により、その被験体に、クリアリング組成物を投与し、その組成物によって非局在抗体または抗体フラグメントの循環からのクリアランスを可能にすること;および(C)その被験体に、少なくとも1つの診断薬(例えば、F−18)を含んでなるその複合体(すなわち、ターゲッティング可能な構築物)を投与することを含み得る。この複合体は、好ましくは、FDGおよび担体またはターゲッティング分子を含んでなる。抗体は多重特異性抗体または二重特異性抗体を含んでなってよい。特に、この複合体と抗体は、陽電子放射断層撮影法(「PET」)などの画像検査法を実施するために用いられ得る。
【0019】
別の診断方法では、ターゲッティング分子とともにまたはターゲッティング分子なしで使用するために、上記方法を利用して標識抗体を作出することが望ましい。標識抗体は、PETなどの画像検査法の実施するために使用し得る。18Fに加えて、診断薬として有用であり得る他の放射性核種としては、例えば、45Ti、68Y、111In、124I、131I、99mTc、186Re、188Re、177Lu、64Cu、67Cu、212Bi、213Biおよび/または68Gaが挙げられる。
【0020】
幅広い種類の抗体が方法に好適であり、それらとしては、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および/または多価抗体(例えば、三価抗体)が挙げられる。抗体の1つのアームは、標的組織に結合するモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントを含んでなり得る。抗体の別のアームは、複合体に結合するモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントを含んでなり得る。抗体(例えば、二重特異性抗体)は、動物、ヒト、キメラもしくはヒト化抗体であってよく、または動物、ヒト、キメラもしくはヒト化抗体のフラグメントを含んでなる。抗体の2つのアームは同じであっても異なっていてもよい。
【0021】
二重特異性抗体を選択する場合には、二重特異性抗体がMab Mu−9のFvおよびMab 679のFvを含んでなってもよいし、二重特異性抗体が抗CEA Mab MN−14のFvおよびMab 679のFvを含んでなってもよい。また、二重特異性抗体が融合タンパク質(例えば、Mu−9、679および/またはMN−14の1以上のCDRを含む融合タンパク質)を含んでなってもよい。
【0022】
また、診断方法が治療方法を含んでいてもよい。一例を挙げれば、複合体がF−18などの診断用核種を含み、抗体(すなわち、二重特異性抗体)が111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、64Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Auおよび/または211Pbなどの治療用核種を含む。
【0023】
抗体を、標的組織に存在する幅広い種類の天然または人工抗原(例えば、正常組織、罹患組織、病原体および/またはハプテンの抗原)を認識するように設計してもよい。
【0024】
標的組織は神経膠腫、肉腫および/または癌腫(例えば、腎臓癌、肺癌、腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌および/もしくは前立腺癌または肝臓癌)などの固形腫瘍であり得る。もう1つの実施形態では、標的組織が多発性骨髄腫、T細胞悪性腫瘍および/またはB細胞悪性腫瘍(例えば、緩徐進行型B細胞リンパ腫、急速進行型B細胞リンパ腫、慢性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および/または非ホジキンリンパ腫)である。
【0025】
標的組織は、結腸特異的抗原−p(CSAp)、癌胎児性抗原(CEA)、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD45、CD74、CD80、HLA−DR、Ia、Ii、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、NCA、EGFR、HER2/neu、PAM−4、TAG−72、EGP−1、EGP−2、A3、KS−1、Le(y)、S100、PSMA、PSA、テネイシン、フィブロネクチン(L. Tarli et al., Blood 1999; 94: 192-198参照)、葉酸受容体、VEGF、胎盤増殖因子(「PIGF」)、壊死抗原、IL−2、IL−6、インスリン様増殖因子−1(「IGF−1」)、T101およびMAGEから選択される抗原を産生する、または抗原に関連する腫瘍を含み得る。
【0026】
また、疾病または症状は、心血管疾患、感染性疾患(細菌性、真菌性、寄生虫性および/またはウイルス性)、炎症性疾患、自己免疫疾患および/または神経系疾患も含み得る。
【0027】
被験体において罹患組織を診断するために有用な、フッ素化炭水化物分子を含有する複合体を含むキットも開示する。キットでは、複合体が、一般に、診断薬を含む(例えば、F−18,2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースとしてF−18を含む)。複合体はターゲッティング可能な分子として機能することができ、そのようなものとして、複合体が、一般に、抗体によって認識可能な少なくとも1つのエピトープを含む。また、キットは、ターゲッティング可能な分子として複合体に結合することができ、かつ/または標的組織の選択した抗原に結合し得る分子(例えば、二重特異性分子または抗体)も含み得る。このようなキットでは、分子または抗体が、複合体に結合する少なくとも1つのアームと標的組織に存在する選択した抗原に結合する少なくとも1つのアームを含み得る。キットは、ターゲッティング可能な分子とともにまたはターゲッティング可能な分子なしで使用するために上記方法によって標識した抗体または抗体フラグメントを含んでなる複合体も含み得る。キットは、非局在抗体だけでなく抗体フラグメントをもクリアリングするのに有用なクリアリング組成物を含み得る。
【0028】
FDGまたは1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−[18F]−β−D−グルコースなどのFDGの誘導体を分離または精製する方法も開示する。この方法は、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含む溶液をボロン酸樹脂と接触させること、その2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含む樹脂を洗浄すること、およびその2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを溶出することを含み得る。もう1つの実施形態では、その方法が、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含む溶液をフェニルヒドラジン酸樹脂と接触させて、過剰の非標識グルコースを結合することを含む。分離方法のもう1つの実施形態では、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−[18F]−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースおよび未反応の1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース(「マンノーストリフレート」)を含む溶液を、活性化チオール−、アミノ−またはヒドラジノ含有樹脂などの樹脂に通し、その樹脂をアルキル化して、過剰の未反応マンノーストリフレートを除去することができる。分離または精製手法は、従来のクロマトグラフィー(例えば、シリカゲルクロマトグラフィー)または逆相HPLC、ならびにバッチ精製などの方法に適合させ得る。また、分離または精製手法は、F−18標識2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースまたは前駆体を濃縮するようにも適合させ得る。
【発明の具体的説明】
【0029】
第2の分子(例えば、担体、ターゲッティング分子または抗体分子)と結合したフッ素化炭水化物分子を含む複合体を開示する。一般に、フッ素化炭水化物分子は、診断または治療方法において有用であり得る同位元素(例えば、F−18、F−19、F−17、F−20および/またはF−21)を含む。
【0030】
フッ素化炭水化物分子としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、タロース、グロース、イドース、アルトロース、アロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオースおよび/もしくはグリセルアルデヒドをはじめとする種々の単糖類、それらのエナンチオマーならびに/または誘導体が挙げられる。フッ素化炭水化物分子はまた、ケトース糖(例えば、プシコース、フルクトース、ソルボースおよび/またはタガトース)、二糖類(例えば、ラクトース、マルトースおよび/またはスクロース)、ならびに/または多糖類も含み得る。特に好適なフッ素化炭水化物が2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースである。フッ素原子はF−18であってよいが、他の同位元素も同様に使用し得る。F−18標識炭水化物を合成するための方法は記載されている。例えば、Beuthien-Baumann et al., Carbohydrate Res. 2000, 327, 107-118; EP 0 167 103参照。フッ素化炭水化物分子は、ヒドラゾン結合、ヒドラジン結合、アミノ結合、アミド結合、イミノ結合、スルフィド結合、オキシム結合、セミカルバゾン結合、チオセミカルバゾン結合、炭素−炭素結合(例えば、イリド中間体によって形成される)またはボロン酸結合をはじめとする任意の好適な結合によって担体に結合され得る。
【0031】
FDGなどのフッ素化炭水化物分子の他、フッ素化炭水化物分子の前駆体または誘導体を使用して、複合体を作出してもよい。例えば、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースまたはマンノーストリフレートは、ヒドラゾン結合、ヒドラジン結合、アミノ結合、アミド結合、イミノ結合、スルフィド結合、オキシム結合、セミカルバゾン結合、チオセミカルバゾン結合、炭素−炭素結合(例えば、イリド中間体によって形成される)またはボロン酸結合によって第2の分子に結合され得る。アセチル基は、複合体形成前または後に加水分解される(例えば、ナトリウムメトキシド(NaOCH)で処理することによる)。
【0032】
一実施形態では、フッ素化炭水化物分子を担体などの第2の分子と直接反応させる。しかしながら、コンジュゲーションを容易にするために、フッ素化炭水化物分子をさらなる試薬で事前処理してもよい。例えば、フッ素化炭水化物のアミノ化誘導体を作出することが望ましい場合がある。そのアミノ化誘導体を、次いで、担体と反応させると、求核性窒素原子がその担体の求電子性原子(例えば、カルボニル炭素)を攻撃する。アミノ化誘導体は、アミノ、アミド、イミノ、アミノオキシおよび/またはヒドラジン基を含有しているため、アミノ化誘導体は担体との窒素含有結合を形成する。
【0033】
フッ素化炭水化物分子をハロゲン化剤で処理して、さらに置換したフッ素化炭水化物分子の誘導体を作出してもよい。1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースまたはマンノーストリフレートなどのFDGの前駆体または誘導体を、F−18で標識した後、塩素化剤または臭素化剤で処理してもよい。これらのさらなるフッ素化誘導体はC1位に優れた脱離基を含有しており、それらの脱離基を使用して、そのフッ素化炭水化物分子を、チオール基の硫黄原子またはアミノ基の窒素原子などの求核試薬を含有し得る第2の分子に結合することができる。FDGおよび2−ニトロイミダゾールの付加物(すなわち、複合体)の形成については記載されている。Patt et al., Applied Radiat. and Isot. 2002, 57, 705-712参照。チオール置換を介して複合体を合成するためのもう1つの方法は、(1)1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースまたはマンノーストリフレート分子のアセタールエステルをBFエーテルにより活性化すること;および(2)その活性化したエステルをペプチドまたはタンパク質(例えば、IMP222)のチオール基と反応させて、スルフィド結合を形成させることを含む。アセチル基を加水分解して、FDG−タンパク質複合体を得ることができる。
【0034】
第2の分子は、フッ素化炭水化物分子とコンジュゲートさせ得るいずれ分子であってもよいが、担体またはターゲッティング分子として機能し得るものである。特に、ペプチド分子が担体またはターゲッティング分子として好適である。好適なペプチドとしては、(アミノ末端からカルボキシ末端へと読むと):(1)HN−NH−CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;(2)O=CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;(3)HN−NH−C−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;(4)Ac−Cys−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(配列番号);(5)Gly−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(配列番号);(6)HN−NH−CS−NH−C−CO−D−Lys(X)−D−Glu−D−Lys(X)−NH;(7)HN−NH−CS−NH−C−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH;および/または(8)HN−O−CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および/または軟酸キレート剤である)が挙げられる。また、好適なペプチドを、式HN−NH−CS−NH−C−CO−Aaa(0−N)−Lys(X)−Aaa−Lys(X)−NH(式中、「Aaa」は「スペーサーアミノ酸」と考えてよく、「(0−N)」は「0」から(0を含む)「N」まで(Nを含む)のアミノ酸の数を表す)によって記載してもよい。ペプチドは、Lアミノ酸、Dアミノ酸またはDアミノ酸とLアミノ酸の混合物から作製され得る。ハプテンとしては、ヒスタミン−スクシニル−グルタミン(「HSG」)および/またはフルオレセインイソチオシアネートが挙げられる。硬酸キレート剤としては、DTPA、DOTA、NOTA(1,4,7−トリアザ−シクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸)およびTETA(p−ブロモアセタミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸)が挙げられる。XがDTPAであるように選択される場合、上記のペプチド(1)〜(5)をそれぞれ、IMP209、IMP213、IMP221、IMP222およびIMP223と呼ぶ。XがHSGであるように選択される場合、ペプチド(6)をIMP286と呼ぶ。軟酸キレート剤としては、Tscg−Cys(チオセミカルバゾニルグリオキシルシステイン)およびTsca−Cys(チオセミカルバジニル−アセチルシステイン)が挙げられる。キレート剤は金属イオン、例えば、インジウム−111と錯体を形成し得る。担体がペプチドである場合には、担体が抗体(例えば、多重特異性、多価または二重特異性抗体)であり得る。ペプチドの場合、フッ素化炭水化物はペプチド内に存在する1以上のアミノ酸に結合され得る。他の好適なペプチドについては、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる米国特許出願番号10/150,654に記載されている。
【0035】
フッ素化炭水化物分子は、数多くの結合によって担体またはターゲッティング分子に結合され得る。例えば、複合体は、ヒドラゾン/ヒドラジン結合、アミノ/イミノ結合、アミド結合、硫黄含有結合(例えば、スルフィド結合、ジスルフィド結合)、セミカルバゾン結合、チオセミカルバゾン結合、オキシム結合、炭素−炭素結合(例えば、イリド中間体によって形成される)またはボロン酸結合によって担体に結合された2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含む。
【0036】
例えば、FDGをNH−O−CH−CH−NH−BocまたはNH−NH−CH−CH−NH−Bocと反応させ、そのオキシムまたはそのヒドラゾンを還元し、そのBocを除去し、さらにその中間体を活性エステルと反応させて、アミドを形成することができる。もう1つの例では、FDGをNH−O−CH−CH−S−TrtまたはNH−NH−CH−CH−S−Trtと反応させた後、そのオキシムまたはそのヒドラゾンを還元し、そのトリチル基を除去し、さらにその中間体をマレイミドまたはクロロアセチル化合物などのチオール反応性基と反応させて、上記糖をペプチドまたはタンパク質などのターゲッティング分子に結合することができる。
【0037】
また、第2の分子と反応させるためにフッ素化糖分子を官能基化することもできる。アミノオキシ−、ヒドラジド−およびチオセミカルバジド−官能基化糖類を作出するための方法は記載されている。例えば、Andreana, et al., Organic Letts. 2002, 4, 1863-1866; Liu et al., J. Am Chem. Soc. 2003, 125, 1702-1703; Rodriguez et al., J. Org. Chem. 1998, 63, 7134-7135参照。官能基化糖類、例えば、アミノオキシ−、ヒドラジド−および/またはチオセミカルバジド−含有FDG誘導体を第2の分子の求電子性基(例えば、アルデヒドまたはケト基内のカルボニル炭素)と反応させて、オキシム、ヒドラゾンおよび/またはチオセミカルバゾン結合を形成する。第2の分子がアミノ酸またはペプチドである場合には、アルデヒド基またはカルボキシル基のカルボニル炭素を官能基化炭水化物と反応させて、結合を形成してもよい。あるいは、α−ケトカルボニルアミノ酸またはペプチドを作出して、官能基化炭水化物と結合するための新規カルボニル炭素を提供してもよい。α−ケトカルボニルペプチドの作出については記載されている。例えば、Papanikos et al., J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 2176-2181; Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 2003, 1, 56-61参照。
【0038】
もう1つの実施形態では、水活性イリド反応により複合体を作製する。イリド反応については記載されている。例えば、Kostik et al., J. Org. Chem. 2001, 66, 2618-2623参照。縮合例を図9に示している。この例では、窒素イリドを炭酸塩で活性化し、それをFDGと縮合させて、FDGとペプチドとの間に炭素−炭素結合を形成する。
【0039】
プレターゲッティング法における複合体の使用
開示した複合体は、プレターゲッティング方法論において有用であり得る。プレターゲッティング法は癌の画像化および治療に関してかなりの注目を浴びてきた。エフェクター分子(例えば、小担体に結合された放射性核種または薬物)が直接ターゲティング剤に結合される直接ターゲッティング系とは違い、プレターゲッティング系では、エフェクター分子はターゲッティング剤の後しばらくしてから与えられる。これにより、ターゲッティング剤を腫瘍病巣に局在させ、より重要なことには身体からクリアリングする時間ができる。ほとんどのターゲッティング剤は抗体タンパク質であったことから、それらは小さなエフェクター分子(通常、分の単位)よりもはるかにゆっくり身体からクリアリングされる傾向がある(通常、日の単位)。治療用放射性核種を含む直接ターゲッティング系では、ターゲッティング剤が腫瘍においてそのピークレベルにゆっくり達し、身体からクリアリングされる間中、身体および特に極めて傷つきやすい赤色骨髄が放射線に曝される。プレターゲッティング系では、放射性核種は通常、身体から極めて迅速にクリアリングされるキレートまたはペプチドなどの小「エフェクター」分子に結合されているので、正常な組織の暴露は最小となる。小分子は腫瘍の脈管構造を効率的に横断して一次ターゲッティング剤に結合するので、放射性核種の最大腫瘍取り込みもまた極めて迅速である。その大きさが小さいこともまた、腫瘍中でのより均一な分布を促す。
【0040】
望ましくは、ターゲッティング可能な構築物は、少なくとも2単位の認識可能なハプテンを有するペプチドを含む。認識可能なハプテンの例としては、限定されるものではないが、ヒスタミンスクシニルグリシン(HSG)またはDTPA(例えば、キレート111In)が挙げられる。ターゲッティング可能な構築物は罹患組織の処置または同定に有用な種々の薬剤(例えば、F−18)と結合させることができる。結合される薬剤の例としては、限定されるものではないが、キレート剤、金属キレート複合体、ホルモン、サイトカインおよびその他の免疫調節剤、薬物(例えば、カンプトテシン、アントラサイクリンなど)、毒素(例えば、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌腸毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、シュードモナス内毒素、アプリジン)ならびにその他のエフェクター分子が挙げられる。さらに、プロドラッグの活性化または薬物の標的特異的毒性の増強に有用な酵素を、ターゲッティング可能な構築物に結合させることができる。従って、ターゲッティング可能な構築物に対して反応性のあるbsAbの使用により、適用ごとに新しいbsAbを惹起することなく種々の治療および診断適用を行うことができる。
【0041】
開示した複合体をターゲッティング構築物として利用する二重特異性抗体(bsAb)プレターゲッティングは診断および治療適用の潜在的に免疫原性のない、選択性の高い代替法である。本明細書に記載のbsAbプレターゲッティング系は、種々の異なる造影剤または治療薬とともに用いるために開発できる可能性があるという点で、他のプレターゲッティング系に優る、さらなる著しい利点がある。この系の柔軟性は、ヒスタミン−スクシニル−グリシル(HSG)に対する抗体の使用とHSG残基を含むペプチドの開発に基づくものである。HSG含有ペプチドは111In、90Y、または177Luのキレート化のためのDOTA、あるいはテクネチウム/レニウムキレートを用いて合成したものである。また、In−DTPAに対する抗体をIn−DTPAおよび/または開発されたIn−DTPA含有ペプチドとともに使用することができる。プレターゲッティングでは、これらの抗原を発現する腫瘍に腫瘍ターゲッティング能を与えるために、これらのペプチドは、抗癌胎児性抗原(CEA)または抗結腸特異的抗原−p(CSAp)抗体のいずれかのFab’で化学的に安定化させた抗HSG Fab’を用い、二重特異性抗体との組合せにおいて使用された。しかしながら、他の抗原標的としては、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、HLA−DR、Ia、li、B7、HM1.24、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、NCA、EGFR、HER2/neu、PAM−4、BrE3、TAG−72(B72.3,CC49)、EGP−1(例えば、RS7)、EGP−2(例えば、17−1Aおよびその他のEp−CAM標的)、Le(y)(例えば、B3)、A3、KS−1、S100、IL−2、IL−6、T101、インスリン様増殖因子−1(「ILGF−1」)、壊死抗原、葉酸受容体、脈管形成マーカー(例えば、VEGF、胎盤増殖因子(「PIGF」)など)、テネイシン、フィブロネクチン、PSMA、PSA、腫瘍関連サイトカイン、MAGE、および/またはそのフラグメントなどに対する当技術分野で公知の多様な腫瘍関連抗原が挙げられる。組織特異的抗体(例えば、CD34、CD74などのような骨髄細胞に対するもの、パラチログロブリン抗体など)、ならびに血餅のフィブリン、アテローム性動脈硬化斑のマクロファージ抗原などの非悪性罹患組織に対する抗体(例えば、CD74抗体)、虚血性病巣に対する抗体(例えば、MN−3などの抗顆粒球抗体または抗NCA−95抗体(すなわち、抗CEACAM8)などのその他のNCA−交差反応性抗体)、アルツハイマー病患者の脳に蓄積するアミロイド沈着などの神経病変に対する抗体、また、特定の病原体の抗体(例えば、細菌、ウイルスおよび寄生虫に対するもの)が当技術分野で周知である。そのようなものとして、この診断方法は、心血管疾患、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患および/または神経系疾患の診断にも有用であり得る。種々の疾患に特有の抗原が二重特異性抗体により標的として選択される。
【0042】
腫瘍または感染病変(ウイルス、細菌、真菌および寄生虫感染ならびに/またはウイルス性、細菌性、真菌性および寄生虫性疾患を含む)によって生じる、またはそれらに関連するマーカー、ならびにそのような微生物に関連する抗原および産物に結合する多くの抗体および抗体フラグメントが、とりわけ、Hansen et al., 米国特許第3,927,193号およびGoldenberg 米国特許第4,331,647号、同第4,348,376号、同第4,361,544号、同第4,468,457号、同第4,444,744号、同第4,460,459号および同第4,460,561号、同第4,624,846号に、ならびに関連出願米国出願番号60/609,607および同60/633,999に開示されており、これらの総ての内容は引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0043】
感染性疾患としては、微生物または寄生虫の侵入によって引き起こされるものを含む。本明細書において「微生物」とは、ウイルス、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原生動物、真菌および同様の微生物を意味し、「寄生虫」とは、抗体誘導性クリアランスまたは細胞溶解もしくは食細胞破壊を受けやすい、感染性の、一般に、顕微鏡的もしくは微小型多細胞無脊椎動物、またはその卵もしくは幼形(例えば、蠕虫を含むマラリア原虫、スピロヘータなど)を意味し、一方、「感染因子」または「病原体」とは、微生物および寄生虫の両方を意味する。
【0044】
本発明の組成物を使用して、免疫調節異常疾患および関連自己免疫疾患を治療することができる。自己免疫疾患は、B細胞疾患に関連した疾患群である。例としては、重症筋無力症、狼瘡腎炎、紅斑性狼瘡および慢性関節リウマチ、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病のような免疫性血小板減少症などのクラスIII自己免疫疾患、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱,多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitisubiterans)、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(pamphigus vulgaris)、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および繊維性肺胞炎が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物は、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる"Immunotherapy of Autoimmune Disorders using Antibodies that Target B-Cells,"と題する2000年6月9日出願の係属中の米国出願番号09/590,284に開示される自己免疫疾患の治療方法において特に有用であり得る。
【0046】
また、本発明の組成物を使用して、悪性疾患を診断または治療することもできる。標的組織に存在する抗原としては、癌胎児性抗原、テネイシン、フィブロネクチン、上皮細胞増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、繊維芽細胞増殖因子受容体、血管内皮増殖因子受容体、ガングリオシド、インスリン様増殖因子、およびHER2/neu受容体が挙げられる。
【0047】
特に有用な二重特異性抗体は、MAb Mu−9などのCSApと反応性のある抗体のFvおよびMAb 679(抗HSG)のFvを含んでなる。Mu−9 および/または679は、ネズミのものでも、ヒトのものでも、キメラ化またはヒト化されたものでもよい。二重特異性抗体は、Mu−9の1以上のCDRまたは679の1以上のCDRを含んでなる。さらに、二重特異性抗体は融合タンパク質を含んでなる。
【0048】
もう1つの特に有用な二重特異性抗体は、MAb MN−14(抗CEA)などのクラスIII抗CEA抗体のFvおよびMAb 679のFvを含んでなる。MN−14および/または679は、ネズミのものでも、ヒトのものでも、キメラ化またはヒト化されたものでもよい。二重特異性抗体は、MN−14の1以上のCDRまたは679の1以上のCDRを含んでなる。さらに、二重特異性抗体は融合タンパク質を含んでなる。
【0049】
診断および治療方法における複合体の使用
さらに、哺乳類において標的細胞、組織または病原体を検出および/または処置する方法が含まれ、その方法は標的組織に結合する少なくとも1つのアームを含んでなる抗体または抗体フラグメントを含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。抗体または抗体フラグメントがターゲッティング可能な構築物に結合する少なくとも1つの他のアームを含んでいてよく、これらもまた被験体に投与することができる。開示される方法を利用して、ターゲッティング可能な構築物および/または抗体もしくは抗体フラグメントを標識してもよい。例えば、開示される複合体は、ターゲッティング可能な構築物または抗体もしくは抗体フラグメントを含んでなる。これらの方法を使用して、限定されるものではないが、悪性疾患、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患および/または神経系疾患をはじめとする種々の疾患を診断および処置することができる。特に、本明細書において開示されるような抗原または上記疾患に関連していると認識されている抗原を含む組織を標的化することにより上記疾患を診断および/または処置する。ターゲッティングおよび/またはプレターゲッティング法は2001年12月26日出願の60/342,104に記載されており、これらは引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0050】
診断/治療方法を使用して、病原体に曝されている細胞を検出および処置することができる。本明細書において「病原体」とは、限定されるものではないが、真菌(例えば、小胞子菌(Microsporum)、白癬菌(Trichophyton)、表皮菌(Epidermophyton)、スポロトリクス・シェンキー(Sporothrix schenckii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ヒストプラズム・カプスラツム(Histoplasma Capsulatum)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス、シミアンウイルス40、呼吸器多核体ウイルス、マウス乳癌ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ネズミ白血病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣贅ウイルスおよびブルータングウイルス)、寄生虫、細菌(例えば、炭疽菌(Anthrax bacillus)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、大腸菌(Escherichia coli)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎双球菌(Pneumococcus)、B型インフルエンザ菌(Hemophilis influenzae B)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ライム病スピロヘータ、緑膿菌(Pseudomona
s aeruginosa)、らい菌(Mycobacterium leprae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)および破傷風毒素)、マイコプラズマ(例えば、マイコプラズマ・アルスリティディス(Mycoplasma arthritidis)、M.ヒオリニス(M. hyorhinis)、M.オーラル(M. orale)、M.アルギニニ(M. arginini)、アコレプラスマ・ライドラウィー(Acholeplasma laidlawii)、M.サリバルム(M. salivarum)および肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae))、ならびに原生動物(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、ランゲリ・トリパノソーマ(Trypanosoma rangeli)、クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ローデシア・トリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiensei)、ブルセイ・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japanicum)、ウシバベシア(Babesia bovis)、エルメリア・テネラ(Elmeria tenella)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、タイレリア・パルバ(Theileria parva)、胞状条虫(Taenia hydatigena)、テニア・オビス(Taenia ovis)、カギナシサナダ(Taenia saginata)、単胞条虫(Echinococcus granulosus)およびメソセストイデス・コルチ(Mesocestoides corti))が挙げられる。引用することによりそのまま本明細書の一部とされる米国特許第5,332,567号参照。本発明において用いるそれに対する抗体を開発し得る典型的な病原感染性生物のさらなるリストが、Davis et al., "Microbiology" (Harper & Row, New York, 1973以降)の第2版以降の版に収録されており、それについては当業者は周知である。
【0051】
本発明の方法により処置することができる自己免疫疾患の例としては、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitisubiterans)、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(parnphigus vulgaris)、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬および繊維性肺胞炎が挙げられる。
【0052】
自己免疫疾患および腫瘍性疾患を処置するための方法をはじめとする本発明の方法を使用して、心血管疾患および炎症などの疾患を処置し得る。このような疾患としては、心筋梗塞、虚血性心疾患、血餅、塞栓およびアテローム性動脈硬化斑が挙げられる。例えば、検出を用いて、損傷した心臓および血管組織を検出する。罹患した心臓組織を標的化するために細胞剥離法を用いる。炎症を検出することができるし、あるいは抗顆粒球抗体(例えば、抗CD66、抗CD33、抗CD45)、抗リンパ球抗体(抗B細胞抗体または抗T細胞抗体)および/または抗単球抗体(例えば、抗Iaまたは抗CD74抗体)で処置することができる。
【0053】
限定されるものではないが、本組成物および方法は、心血管病変(梗塞、血餅、塞栓、アテローム性動脈硬化斑)、その他の病理学的病変(例えば、アミロイドーシスおよびアルツハイマー病におけるアミロイド)、癌(例えば、白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、癌腫、神経膠腫、皮膚癌)、感染性疾患(例えば、細菌、リケッチア、真菌、寄生虫およびウイルス病原体)、炎症(例えば、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症などの自己免疫疾患)、変位または異所性正常組織および細胞(例えば、子宮内膜、胸腺、脾臓、副甲状腺)、正常組織剥離(例えば、子宮内膜症、骨髄、脾臓)の治療および/または診断あるいは画像化に使用することができる。
【0054】
開示される複合体を使用することにより、神経系疾患(例えば、脳腫瘍)を診断または処置し得る。特に、テネイシン、フィブロネクチン、上皮細胞増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、繊維芽細胞増殖因子受容体、血管内皮増殖因子受容体、ガングリオシドおよびHER2/neu受容体などの抗原を認識する抗体または抗体フラグメントを使用して、神経系悪性腫瘍を診断または処置する。
【0055】
本開示内容において、化学療法薬としては、周知の化学療法薬総てが挙げられる。周知の化学療法薬としては、少なくとも、タキサン、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン;葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、ビンカアルカロイド、抗生物質、酵素、プラチナ配位錯体、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制薬またはアンタゴニストが挙げられる。より詳しくは、化学療法薬がステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲンまたはアンドロゲンである。さらに詳しくは、化学療法薬がアプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アザシチジン、ブレオマイシン、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、セレブレックスおよび他のCOX−2阻害剤、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、エチニルエストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルタミド、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、ゲムシタビン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、L−アスパラギナーゼ、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトーテン、酪酸フェニル、プレドニゾン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキサン、タキソール、プロピオン酸テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ベルケード、ビンブラスチン、ビノレルビンまたはビンクリスチンである。
【0056】
抗体および抗体フラグメント
本明細書ではまた、抗体および抗体フラグメントも提供され、それらの抗体および抗体フラグメントは開示される方法によって標識され、および/または診断/治療方法においてターゲッティング構築物とともに使用され得る。本明細書に記載の標識方法を使用して、フッ素化炭水化物複合体を含んでなる標識抗体またはフラグメントを作出し得る。抗体フラグメントは、抗体の抗原結合部分であり、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fabなどである。抗体フラグメントは、無傷の抗体によって認識される抗原と同一の抗原と結合する。例えば、抗CD22モノクローナル抗体フラグメントは、CD22のエピトープと結合する。
【0057】
「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原との結合によって複合体を形成する抗体のように作用する任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質も含まれる。例えば、抗体フラグメントには、重鎖および軽鎖の可変領域からなる単離フラグメントの「Fv」フラグメント、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカー(「sFvタンパク質」)によって連結されている組換え一本鎖ポリペプチド分子、および「超可変領域」を模倣するアミノ酸残基からなる最小の認識単位が含まれる。これらのいわゆる「超可変」領域または「相補性決定領域」(CDR)のうち3つが軽鎖または重鎖の各可変領域に見られる。各CDRは比較的保存されているフレームワーク領域(FR)によってフランキングされている。FRは可変領域の構造的完全性を維持しているものと思われる。軽鎖のCDRおよび対応する重鎖のCDRが抗原結合部位を形成する。CDRの「超可変性」が抗体の特異性の多様性を説明する。
【0058】
ターゲッティング可能な構築物
ターゲッティング可能な構築物は多様な構造であり得るが、これらは免疫応答の惹起を抑制するためだけでなく、bsAbターゲッティング法の範囲内で使用する場合はin vivoで迅速にクリアリングされるように選択される。強い免疫応答の惹起には疎水性の薬剤が最良であるのに対し、迅速なin vivoクリアリングのためには親水性の薬剤が好ましく、従って、疎水性と親水性の間のバランスを確立する必要がある。これは、多くの有機部分の固有の疎水性を相殺する親水性キレート剤の使用に一部依存することにより達成される。また、溶液の反対の性質を有するターゲッティング可能な構築物のサブユニット(例えば、ペプチド)を選択することができ、あるものは疎水性であり、またあるものは親水性であるアミノ酸を含む。ペプチド以外に、炭水化物を使用することができる。本明細書に記載の標識方法を使用して、フッ素化炭水化物複合体を含んでなる標識ターゲッティング分子を作出することができる。
【0059】
ターゲッティング可能な構築物は2つといったわずかなアミノ酸残基(好ましくはアミノ酸残基2〜10個)を有するペプチド主鎖を含むことができ、キレート剤などの他の部分と結合させることができる。ターゲッティング可能な構築物は、好ましくはキレート剤に結合されていてもよい任意の金属イオンを含めて50,000ダルトン未満、有利には約20,000ダルトン未満、10,000ダルトン、または5,000ダルトンの分子量を有する低分子量の構築物であるべきである。より通常には、ターゲッティング可能な構築物の抗原ペプチドは、4以上の残基を有する。
【0060】
ターゲッティング可能な構築物のハプテンも、例えば化学ハプテンなど、免疫認識部分を提供する。化学ハプテン、好ましくはHSGハプテンを用いると、抗体に対する構築物の高い特異性が示される。これは、HSGハプテンに対して惹起された抗体は公知であり、適当なbsAbに容易に組み込むことができることから生じる。従って、このペプチド主鎖に対するハプテンの結合はbsAbまたはbsFabに対して特異的なターゲッティング可能な構築物が生じる。
【0061】
ターゲッティング可能な構築物はまた、非天然アミノ酸、例えば、D−アミノ酸を、ペプチド主鎖構造に含んでいてもよく、このことが、最終的なbsAb/構築物系とともに用いる場合、ターゲッティング可能な構築物を認識するbsAbのアームが十分に特異的であることを保証する。複合体はさらに、非天然アミノ酸およびペプトイドから構築されたものなどの他の主鎖構造も含む。
【0062】
免疫原として使用されるペプチドは、固相支持体および標準的な連続的直交脱保護およびカップリング技術を用いた自動ペプチド合成装置によって便宜に合成される。ペプチド中の遊離のアミノ基(これは、後にキレート結合に使用される)を、アセチル基などの標準的な保護基でブロックするのが有利である。このような保護基は当業者に公知である。Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis, 1999 (John Wiley and Sons, N. Y.)参照。ペプチドをその後bsAb系で用いるために調製する場合、in vivoにおけるカルボキシペプチダーゼ活性を阻害するためにそれらを樹脂から切断して対応するC末端アミドを作出するのが有利である。
【0063】
ターゲッティング可能な構築物におけるキレート
ターゲッティング可能な構築物における親水性のキレート部分の存在は、迅速なin vivoクリアランスを保証する助けとなる。キレート剤は親水性の他、それらの金属結合特性に関して選択され、少なくとも、そのbsAbエピトープがペプチドの一部であるか、または非キレート化学ハプテンであるターゲッティング可能な構築物に関しては金属−キレート複合体の認識がもはや問題ではないので、所望に応じて変更してもよい。ターゲッティング可能な構築物がフッ素化炭水化物複合体を含んでなる場合、FDGに存在する核種(例えば、F−18)に加えて、核種でターゲッティング可能な構築物を標識するために金属キレート剤を使用してしてもよい。
【0064】
特に有用な金属−キレートの組み合わせとしては、放射イメージングおよびRAIT用の47Sc、52Fe、55Co、67Ga、68Ga、111In、89Zr、90Y、161Tb、177Lu、212Bi、213Bi、および225Acとともに用いる2−ベンジル−DTPA、ならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられる。開示されるbsAbとともに用いる場合、同じキレート剤をMRIで用いるMn、FeおよびGdなどの非放射活性金属と複合体を形成させる。NOTA(1,4,7−トリアザ−シクロノナン−N,N’,N”−三酢酸)、DOTA、およびTETA(p−ブロモアセタミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸)などの大環キレート剤は種々の金属および放射性金属とともに、より詳しくはそれぞれGa、YおよびCuの放射性核種とともに用いられる。
【0065】
DTPAおよびDOTA型のキレート剤は、リガンドがカルボン酸基またはアミン基などの硬塩基キレート官能基を含む場合、硬酸陽イオン、特にIIa族およびIIIa族金属陽イオンをキレート化するのに最も有効である。このような金属−キレート複合体は対象とする金属に環のサイズを適合させることで極めて安定にすることができる。RAITのための223Raなど、安定に結合する核種としては大環ポリエーテルなどの他の環状キレート剤が対象となる。ポルフィリンキレート剤は多くの放射性金属とともに用いることができ、bsAbに向けられた免疫光療法のための特定の非放射性金属複合体としても有用である。また、1を超える種類のキレート剤をターゲッティング可能な構築物に結合させて複数の金属イオン、例えば非放射性イオン、診断用放射性核種および/または治療用放射性核種と結合させてもよい。
【0066】
ターゲッティング可能な構築物のキレート剤に結合させることができる特に有用な治療用放射性核種としては、限定されるものではないが、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、64Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Auおよび/または211Pbが挙げられる。治療用放射性核種は好ましくは25〜10,000keVの範囲の崩壊エネルギーを有する。有用なβ粒子放出核種の崩壊エネルギーは好ましくは25〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、最も好ましくは500〜2,500keVである。また、オージェ放出粒子により実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、I−125、Ho−161、Os−189mおよびIr−192がある。有用なβ粒子放出核種の崩壊エネルギーは好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。また、α粒子の生成によって実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。このような放射性核種としては、限定されるものではないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213およびFm−255が挙げられる。有用なα粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは2,000〜9,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
【0067】
米国特許第5,753,206号(引用することにより本明細書の一部とされる)に開示されているものなどのキレート剤(特に、チオセミカルバゾニルグリオキシルシステイン(Tscg−Cys)およびチオセミカルバジニルアセチルシステイン(Tsca−Cys)キレート剤)を有利に使用して、Tc、Re、Bi、ならびに軟塩基リガンド(特に、硫黄またはリン含有リガンド)に強く結合する他の遷移金属、ランタニドおよびアクチニドの軟酸陽イオンを結合させる。これは、ペプチドへの1種より多い型のキレート剤、例えば、In(III)陽イオンにはDTPAなどの硬酸キレート剤、およびTc陽イオンには軟酸キレート剤(例えば、Tscg−Cysなどのチオール含有キレート剤)の結合に有用であり得る。ジ−DTPAハプテンに対する抗体が公知(Barbet‘395, 前掲)であり、標的抗体と容易に結合してbsAbを形成するので、プレターゲッティングプロトコールにおける放射性同位元素標的用の、非放射性ジ−DTPAキレート剤および放射性同位元素結合用の他のキレート剤を有するペプチドハプテンを使用することができる。このようなペプチドの一例は、Ac−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−Lys(Tscg−Cys)−NH(配列番号)(IMP192)である。このペプチドに予めIn(III)を付加した後、99−m−Tc陽イオンで標識することができ、In(III)イオンはDTPAによって優先的にキレート化され、Tc陽イオンはチオール含有Tscg−Cysに優先的に結合する。NOTA、DOTA、TETAなどの他の硬酸キレート剤を、DTPA基と置換することができ、それらに特異的なMabを、抗ジ−DTPA Mabを作製するのに使用されるものと類似の技術を用いて産生することができる。
【0068】
2つの異なる硬酸または軟酸キレート剤を、異なるサイズの陽イオン、キレート環の幾何学、および陽イオンの好ましい複合体イオン構造によって、2つの異なる硬酸または軟酸陽イオンに優先的に結合するように、ターゲッティング構築物に(例えば、異なるキレート環のサイズで)組込むことができると考えられる。これにより、2つの異なる金属(その1つまたは両方が放射性であるか、MRI増強に有用であるものでよい)を、プレターゲッティングされたbsAbによる最終的な捕捉のためのリンカーまたはターゲッティング構築物に組み込ませる。キレート剤は標準的な化学を用いてターゲッティング可能な構築物のペプチドに結合される。
【0069】
診断/治療方法に向けた標識抗体および/またはターゲッティング可能な構築物
標識方法を使用して、診断または治療方法に有用な抗体(例えば、多重特異性抗体、二重特異性抗体、多価抗体)または抗体のフラグメント(例えば、F−18,2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースに結合された抗体またはフラグメント)を作出することができる。あるいは、標識方法を使用して、ターゲッティング可能な構築物(例えば、F−18,FDGで標識したもの)を作出し、そのターゲッティング可能な構築物を、診断または治療方法において抗体または抗体フラグメントと併用してもよい。
【0070】
抗体および/またはターゲッティング構築物は1以上の同じまたは異なる診断用および/または治療用核種を含んでなり得る。
【0071】
以下に示される考察の多くは罹患組織を診断および/または処置する場合の、複合体の、二重特異性抗体と併用したターゲッティング可能な構築物としての使用に着目するものであることに注意すべきである。複合体は、米国特許第6,126,916号、同第6,077,499号、同第6,010,680号、同第5,776,095号、同第5,776,094号、同第5,776,093号、同第5,772,981号、同第5,753,206号、同第5,746,996号、同第5,697,902号、同第5,328,679号、同第5,128,119号、同第5,101,827号、および同第4,735,210号(これらは引用することにより本明細書の一部とされる)に記載の方法を用いて、二重特異性抗体とともに、正常な組織および臓器の処置および/またはイメージングにおいて有用であり得る。本明細書において「組織」とは、限定されるものではないが、卵巣、胸腺、副甲状腺、骨髄または脾臓由来の組織をはじめとする組織を指す。正常組織をターゲッティングする場合に重要な使用としては、子宮内膜症など、異所性の(すなわち、正規の位置からはずれている)組織を同定および処置することである。
【0072】
本複合体は、(A)その被験体に、標的組織に結合する少なくとも1つのアームと、ターゲッティング可能な構築物としての複合体に結合する少なくとも1つの他のアームを有する抗体または抗体フラグメントを投与すること;(B)所望により、その被験体に、クリアリング組成物を投与し、その組成物によって非局在抗体または抗体フラグメントの循環からのクリアランスを可能にすること;および(C)その被験体に、少なくとも1つの診断薬を含むターゲッティング可能な構築物として複合体を投与することを含む診断方法においてターゲッティング可能な構築物として使用される。抗体または抗体フラグメントは多重特異性、二重特異性および/または多価であってもよい。診断薬はF−18などの放射性核種であってよい。特に、この方法は陽電子放射断層撮影法(PET)を実施するために用いることができる。
投与時のターゲッティング構築物の比放射能が10mCi/6.0×10−5mmolまたは〜167Ci/mmolであることが好ましい。所望の用量は60mg/6.0×10−4mmolであり、患者当たりに使用されるFDGの量はおよそ10mCiである。一般に、投与されるターゲッティング構築物の量は投与される抗体のモル量の10分の1である。
【0073】
上記で論じたbsAbおよびターゲッティング可能な構築物の投与は、リンカー部分と結合した治療薬の投与前のいずれかの時間にbsAbを投与することにより行えばよい。試薬の用量およびタイミングは、当業者ならば容易に判断することができ、これは、使用する試薬の特定の性質によって異なる。bsAb−F(ab’)誘導体を最初に投与する場合、ターゲッティング可能な構築物の投与前に1〜6日間待機するのが適切である。IgG−Fab’bsAb複合体が一次標的ベクターである場合、このリンカー部分の投与前の待機時間はより長く、3〜15日間の範囲で指示すればよい。あるいは、bsAbおよびターゲッティング可能な構築物はカクテル型または一方の後に他方を投与することのいずれかで実質的に同時に投与することもできる。
【0074】
さらなる診断用試薬および治療用試薬
開示される方法によって組み込まれる同位元素の他、幅広い種類のさらなる診断用試薬および治療用試薬がターゲッティング可能な構築物および/または抗体に存在してもよい。一般に、診断薬および治療薬としては、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、サイトカイン複合体、ホルモン、増殖因子、複合体、放射性核種、造影剤、金属、細胞傷害剤および免疫調節剤が挙げられる。例えば、ガドリニウム金属は磁気共鳴イメージングに用いられ、フルオロクロムは光線力学療法と組み合わせることができる。さらに、造影剤はMRI造影剤(ガドリニウムイオン、ランタンイオン、マンガンイオン、鉄、クロム、銅、コバルト、ニッケル、ジスプロシウム、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム、ネオジム、またはその他の匹敵する標識など)、CT造影剤、および超音波造影剤であり得る。さらなる診断薬としては、蛍光標識化合物(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリセリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレスカミンなど)、化学発光化合物(ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルなど)、および生物発光化合物(ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンなど)が挙げられる。また、放射性核種も診断および/または治療薬として使用することができ、例えば、90Y、111In、124I、131I、99mTc、186Re、188Re、177Lu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、および/または18Fが挙げられる。
【0075】
治療薬としてはまた、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン、タキサン、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗血管形成剤、およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、SN−38、カンプトテシン、アプリジンなどの化学療法薬またはプロドラッグ、ならびにこれらおよび他種の抗癌剤に由来するものも含まれる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の治療薬としては、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ配位錯体、ホルモンなどが挙げられる。好適な治療薬は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 19th Ed. (Mack Publishing Co. 1995)、およびGOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。試験中の薬物など、その他の好適な治療薬は当業者に公知である。治療薬はまた、限定されるものではないが、他の薬物、プロドラッグおよび/または毒素も含み得る。「薬物」、「プロドラッグ」および「毒素」の用語は本明細書を通じて定義される。「診断薬」または「診断」とは、限定されるものではないが、検出剤、検出、または局在化を含む。
【0076】
ターゲッティング可能な構築物が診断薬を含む場合、bsAbは診断薬を含むターゲッティング可能な構築物の投与前に投与するのが好ましい。このbsAbが罹患組織をターゲッティングするのに十分な時間が経った後、診断薬を、ターゲッティング可能な構築物の手段により投与すれば、結果として画像化が達成できる。適当な波長の光を当てた後にそれを回収して種々の構造を直接的または間接的に可視化する手段により、または放射性プローブもしくは蛍光検出器などのような特殊な検出器によってであっても、体腔中の腫瘍を検出することができる。非電離放射線を当ててこれらの構造から再捕捉することができる限り、いずれの身体部位の病変も可視化することができる。例えば、高分解能で非侵襲性の画像化技術であるPETを、ヒト疾患の可視化のための本発明の抗体およびターゲッティング可能な構築物とともに使用することができる。PETでは、陽電子消滅崩壊の際に生じた511keVのγ光子が検出される。X線、コンピューター断層撮影(CT)、MRIおよびγイメージング(例えば、単光子放出コンピューター断層撮影法Single Photon Emission Computed Tomography (SPECT))もまた、これらの理学療法とともに機能する診断薬の使用を通して用いることができる。
【0077】
最初に考察したように、ターゲッティング可能な構築物は25〜10,000keVのγ、β、αおよびオージェ粒子および/または陽電子を放射する放射性診断薬を含み得る。このような薬剤の例としては、限定されるものではないが、18F、45Ti、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gdおよび175Luが挙げられる。
【0078】
抗体または二重特異性抗体を光活性剤または色素のようなその他の診断薬とコンジュゲートさせて抗体コンポジットを作製することもできる。蛍光およびその他の色素源または色素(可視光に感受性のあるポルフィリンなど)は、病変部に適当な光を照射することにより病変部を検出および処置するのに使用されてきた。療法では、これは光照射、光線療法または光線力学療法と呼ばれている(Jori et al. (eds.), Photodynamic Therapy of Tumors and Other Diseases (Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22: 430 (1986))。さらに、光線療法を達成するため、モノクローナル抗体が光活性化色素に結合されてきた。Mew et al., J. Immunol. 130: 1473 (1983); 同上, Cancer Res. 45: 4380 (1985); Oseroff et al., Proc. Natl. Acad, Sci. USA 83: 8744 (1986); 同上, Photochem. Photobiol. 46: 83 (1987); Hasan et al., Prog. Clin. Biol. Res. 283: 471 (1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med. 9: 422 (1989); Pelegrin et al., Cancer 67: 2529 (1991)。しかしながら、これらの初期の研究では内視鏡による治療適用(特に、抗体フラグメントまたはサブフラグメントを併用する場合)の使用は含まれていなかった。従って、本診断/治療方法は光活性剤または色素を含んでなる免疫複合体の治療的使用を含み得る。検出および治療の内視鏡法は、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる、米国特許第4,932,412号、同第5,525,338号、同第5,716,595号、同第5,736,119号、同第5,922,302号、同第6,096,289号、および同第6,387,350号に記載されている。
【0079】
X線およびコンピューター断層撮影を増強するためには放射線不透過剤および造影剤が用いられるが、これらにはヨウ素化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウム化合物などが含まれる。特定の化合物としては、バリウム、ジアトリゾエート、エチオド化オイル、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパン酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメ酸、イオタスル、イオテトル酸、イオサラム酸、イオトロキシ酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポデート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾエート、プロピリオドンおよび塩化タリウムが含まれる。また、デキストランおよびリポソーム、特にガス充填リポソームをはじめとする超音波造影剤も使用できる。
【0080】
一実施形態では、サイトカインなどの免疫調節剤を、リンカーによってまたは当業者に公知の他の方法を通じてターゲッティング可能な構築物、抗体または抗体フラグメントにコンジュゲートさせてもよい。本明細書において「免疫調節剤」とは、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン(腫瘍壊死因子(TNF)など)、および造血因子(インターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18およびIL−21)など)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、およびトロンボポエチンが挙げられる。好適な免疫調節剤部分の例としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。
【0081】
ターゲッティング可能な構築物または抗体はまた、標的部位で薬物/プロドラッグを活性化することができるか、または身体の解毒経路を制御することによって通常の治療薬の効果を向上させることができる酵素にコンジュゲートさせることもできる。例えば、bsAbの投与後、低分子量ハプテンを有するターゲッティング可能な構築物にコンジュゲートさせた酵素を投与する。酵素を、bsAb:ターゲッティング可能な構築物の結合によって標的部位にプレターゲッティングした後、標的部位で作用することが知られている細胞傷害剤を注射する。この薬物は、哺乳類の通常の解毒プロセスによって解毒されて毒性の低い中間体を形成するものであってもよい。例えば、薬物は、肝臓において潜在的に毒性の低いグルクロニドへと変換されるものであってもよい。解毒中間体は次に、標的部位でプレターゲッティング酵素によってより有毒な形態に再変換することができ、これにより標的部位での細胞傷害性が増大する。
【0082】
あるいは、投与したプロドラッグをプレターゲッティング酵素によって有効薬へと変換させることもできる。プレターゲッティング酵素は、解毒薬物の再循環によって治療の効率を改良する。このアプローチは、どんな酵素−薬物対との併用にも適用することができる。あるいは、ターゲッティング可能な構築物を酵素とともに、患者に投与する前にターゲッティングbsAbと混合することもできる。bsAb:ターゲッティング可能な構築物の複合体が標的部位に局在し、結合していないターゲッティング可能な構築物が循環からクリアリングされるのに十分な時間が経過した後、プロドラッグを投与する。上述のように、このプロドラッグは次に、プレターゲッティング酵素によりin situで薬物に変換される。
【0083】
抗癌治療に有用な特定の細胞傷害剤は血清に比較的不溶である。非結合形態では極めて有毒なものもあり、その毒性はプロドラッグへの変換によってかなり減少する。難溶性薬物のより溶解性の高い複合体(例えば、グルクロニド、親水性の酸のエステルまたは親水性アミンのアミド)への変換により、血清の水相でのその溶解性および静脈、動脈、または毛細血管の細胞壁を通り抜け、腫瘍が浸かっている間質液への到達能が向上する。標的部位にてプロドラッグが切断され、溶解性の低い薬物が蓄積する。このようなプロドラッグから薬物への変換についての多くの例が、Hansenの米国特許第5,851,527号に開示されている。
【0084】
芳香族または脂環式アルコール、チオール、フェノールおよびアミンなどの特定の毒性物質の肝臓内でのグルクロニドへの変換は、毒性物質を解毒し、尿中に排泄しやすくする身体の方法である。このような物質に変換することができる抗腫瘍薬の一種が、アントラサイクリングリコシドであり、ヒトβ−D−グルクロニダーゼの基質であることが示されている、ドキソルビシン(アドリアマイシン)の4−エピマー、エピルビシンである。例えば、Arcamone Cancer Res. 45: 5995 (1985)参照。極性基の少ない他の類似体はより親油性が高いと考えられ、このようなアプローチにより有望であると考えられる。芳香族または脂環式アルコール、チオールまたはアミン基を有する他の薬物または毒素は、このような複合体形成の候補である。これらの薬物またはその他のプロドラッグ形態は、開示される診断/治療方法の部位特異的増強法の好適な候補である。
【0085】
プロドラッグCPT−11(イリノテカン)は、in vivoにてカルボキシルエステラーゼによって活性な代謝産物SN−38に変換される。従って、開示される診断/治療方法の1つの適用では、腫瘍およびハプテン(例えば、ジ−DTPA)をターゲッティングするbsAbを用い、その後、ジ−DTPA−カルボキシルエステラーゼ複合体の注射を行う。一度、適切な腫瘍対バックグラウンド局在化比が達成すると、CPT−11を与え、腫瘍に局在しているカルボキシルエステラーゼは、腫瘍においてCPT−11をSN−38へと変換する働きをする。活性なSN−38は難溶性であるために腫瘍周辺に残存し、結果的にターゲッティングされている抗原に関して陰性である隣接腫瘍細胞に対して効果を発揮する。このことが本方法のさらなる利点である。改変型カルボキシルエステラーゼについては記載されており、開示される診断/治療方法の範囲内である。例えば、Potter et al., Cancer Res. 58 : 2646-2651 (1998)およびPotter et al., Cancer Res. 58: 3627-3632 (1998)参照。
【0086】
エトポシドは、そのグルクロニドの形成によって大幅に解毒される、広く使用されている制癌剤であり、これは開示される診断/治療方法の範囲内である。例えば、Hande et al. Cancer Res. 48: 1829-1834 (1988)参照。グルクロニド複合体は細胞傷害剤から調製でき、mAb−グルクロニダーゼ複合体でプレターゲッティングした腫瘍の治療薬として注射することができる。例えば、Wang et al. Cancer Res. 52: 4484-4491 (1992)参照。従って、このような複合体を本明細書に記載のプレターゲッティングアプローチと併用することもできる。同様に、ダウノマイシンおよびドキソルビシンの誘導体に基づいて設計されたプロドラッグについては、カルボキシルエステラーゼおよびグルクロニダーゼとの併用について記載されている。例えば、Bakina et al. J. Med Chem. 40: 4013-4018 (1997)参照。本診断/治療方法の範囲内で使用することができるプロドラッグ/酵素対の他の例としては、限定されるものではないが、フェノールマスタードのヒドロキシ誘導体のグルクロニドプロドラッグとβ−グルクロニダーゼ;フェノールマスタードまたはCPT−11とカルボキシペプチダーゼ;メトトレキサート置換α−アミノ酸とカルボキシペプチダーゼA;6−メルカプトプリンおよびドキソルビシンなどの薬物のペニシリンまたはセファロスポリン複合体とβ−ラクタマーゼ;およびリン酸エトポシドとアルカリ性ホスファターゼが挙げられる。
【0087】
あるいは、標的部位にてプロドラッグを活性化することができるか、または身体の解毒経路を制御することによって通常の治療薬の効果を向上させることができる酵素をハプテンとコンジュゲートさせてもよい。酵素−ハプテン複合体を、プレターゲッティングbsAbの投与後に被験体に投与し、標的部位に向かわせる。酵素を標的部位に局在させた後、標的部位において作用することが知られている細胞傷害剤またはプレターゲッティング酵素によってin situで薬物に変換されるそのプロドラッグ形態を注射する。上記のように、薬物は、哺乳類の通常の解毒プロセスを用いて解毒されて毒性の低い中間体、最も一般的にはグルクロニドを形成するものである。解毒された中間体、例えば、グルクロニドはプレターゲッティング酵素によってそのより有毒な形態に再変換されることにより、標的部位での細胞傷害性が増大する。これにより薬物が再循環する。同様に、投与されたプロドラッグを通常の生物学的プロセスによって活性な薬物に変換することもできる。プレターゲッティング酵素は、解毒された薬物の再循環によって治療効果を向上させる。このアプローチは、どんな酵素−薬物対との併用にも適用することができる。
【0088】
診断/治療方法の別の実施形態では、酵素−ハプテン複合体を患者への投与前にターゲッティングbsAbと混合することができる。酵素−ハプテン−bsAb複合体が標的部位に局在化し、結合していない複合体が循環からクリアリングされるのに十分な時間が経過した後に、プロドラッグを投与する。上述のように、このプロドラッグは次に、プレターゲッティング酵素によりin situで薬物に変換される。
【0089】
診断/治療方法のもう1つの実施形態では、ターゲッティング可能な構築物のペプチド主鎖をプロドラッグとコンジュゲートさせる。プレターゲッティングbsAbを患者に投与し、標的に局在させ、循環を実質的にクリアリングする。適当な時間の後、プロドラッグを含むターゲッティング可能な構築物(例えば、ポリ−グルタミン酸(SN−38−エステル)10)を与え、それによってプロドラッグを腫瘍標的に特異的に局在させる。腫瘍は、腫瘍内および腫瘍周囲の細胞の高速溶解によって、細胞内供給源から放出される酵素の量を増加させることが分かっている。実施者は、これらの酵素によって活性化することができるプロドラッグを適切に選択することによってこの事実を十分に利用することができる。例えば、カルボキシルエステラーゼは、ポリ−グルタミン酸(SN−38−エステル)10のエステル結合を切断することによってプロドラッグポリ−グルタミン酸(SN−38−エステル)10を活性化し、腫瘍において遊離型のSN−38の濃縮物を大量に放出する。あるいは、好適な酵素を腫瘍部位にターゲッティングすることもできる。
【0090】
ターゲッティング可能な構築物からの切断後、薬物は腫瘍細胞によってインターナライズされる。あるいは、標的での架橋によって無傷の複合体の一部として薬物をインターナライズすることができる。ターゲッティング可能な構築物は、腫瘍結合bsAbのインターナリゼーションを誘導し、それによってインターナライズされるべき薬物のレベルが高まることで治療効果を向上させることができる。
【0091】
種々のプロドラッグをターゲッティング可能な構築物とコンジュゲートさせることができる。ポリマー用途の上記の例は、プロドラッグCPT−11(イリノテカン)の活性代謝物SN−38と関係する。SN−38は、エステラーゼ型酵素に感受性を有するアリールエステルを作製する以上での記述で使用された芳香族ヒドロキシル基を有する。同様に、化学療法で広く使用されるカンプトセシン類似体のトポテカンは、SN−38に関して記載されるものと類似の様式で使用してエステラーゼ感受性ポリマー−プロドラッグを生成し得る利用可能な芳香族ヒドロキシル残基を有している。
【0092】
ドキソルビシンはまた、カンプトセシンファミリーに関して記載されるものと類似の酸触媒反応を用いてカルボン酸含有高分子担体とカップリングすることができる芳香族ヒドロキシル基を含む。同様に、ダウノマイシン、エピルビシンおよびイダルビシンのようなドキソルビシン類似体を、同じ様式でカップリングすることができる。高分子担体との化学的カップリングに十分に活性なアミノ「化学結合手」を有するドキソルビシンおよび他の薬物を、多数の方法においてこれらの遊離アミノ基を介して担体分子と効率的にカップリングすることができる。遊離カルボン酸基を有するポリマーをin situにて活性化し(EDC)、活性化したポリマーをドキソルビシンと混合して、薬物をアミド結合を介してポリマーの側鎖と直接結合することができる。ビス(スクシンイミジル)エステル基との反応後に2つのアミドとして2つのアミンを架橋するために、アミノ含有薬物を、市販の切断可能な架橋剤(例えば、エチレングリコビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS, Pierce Chemical Co,, Rockford, IL)またはビス−[2−(スクシンイミド−オキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES, Molecular Biosciences, Huntsville, AL))を混合することによってアミノペンダントポリマーとカップリングすることもできる。これはこれらの基が依然として酵素による切断に感受性を有しているために有利である。例えば、(ドキソルビシン−EGS)−ポリ−リシンは、依然として、エステラーゼなどの酵素によるEGS結合鎖内のジエステル基の酵素切断に感受性を有している。ドキソルビシンはまた、確立された手順(HyBn=p−HNNHCCOH)を用いて種々のペプチド(例えば、HyBnK(DTPA)YK(DTPA)−NH)と結合することができる。Kaneko et al., J. Bioconjugate Chem., 2: 133-141, 1991参照。
【0093】
さらに別の実施形態では、in vivoでの標的への治療薬またはプロドラッグポリマーの二重特異性抗体により指定される送達を放射性核種の二重特異性抗体送達と組み合わせて、化学療法と放射免疫治療の組合せを達成することができる。各診断/治療薬をターゲッティング可能な構築物とコンジュゲートし、同時投与してもよいし、または核種を第1のターゲッティング可能な構築物の一部として与え、薬物を第2のターゲッティング可能な構築物の一部として後のステップで与えてもよい。1つの簡単な実施形態では、単一のプロドラッグと単一の核種を含むペプチドを構築する。あるいは、別々のステップで化学療法薬および放射免疫治療薬を投与することによって併用療法を行うことができる。
【0094】
核種を先に与えるターゲッティング可能な構築物の一部として送達させた後、後のステップでプロドラッグ−ポリマーを投与する別の利点は、照射と薬物治療との相乗効果を操作し、それゆえ、その効果を最大にすることができることである。RAIT後の照射損傷により腫瘍がより「漏出性」になると推定される。こうして、ポリマー−プロドラッグを腫瘍により完全でかつ深く侵入させることができる。これにより化学治療が向上する。
【0095】
多価標的結合タンパク質
開示される複合体および方法はまた、特許出願第60/220,782号に記載されるような、少なくとも3つの異なる標的結合部位を有する多価標的結合タンパク質も意図することにもまた注目すべきである。多価標的結合タンパク質は、いくつかのFab様フラグメントを化学的リンカーを介して架橋することによって作製されている。米国特許第5,262,524号;同第5,091,542号およびLandsdorp et al., Euro. J. Immunol. 16: 679-83 (1986)参照。また、多価標的結合タンパク質は、いくつかの単鎖Fv分子(scFv)を共有結合して単一ポリペプチドを形成することによっても作製されている。米国特許第5,892,020号参照。基本的にはscFv分子の凝集物である多価標的結合タンパク質については、米国特許第6,025,165号および同第5,837,242号で開示されている。3つのscFv分子を含む3価の標的結合タンパク質については、Krott et al., Proten Engineering 10 (4): 423-433 (1997)で記載されている。
【0096】
クリアリング剤
bsAbの投与とターゲッティング可能な構築物の投与との間に与えられるクリアリング剤を使用することができる。新規の力学的作用を有するクリアリング剤(すなわち、bsAbの疾病標的アームに対して向けられるグリコシル化抗イディオタイプFab’フラグメント)を開示される診断/治療方法で使用することができることを発見した。抗CEA(MN−14Ab)×抗ペプチドbsAbを与え、疾病標的中で最大限の範囲まで付着させることができる。残るbsAbをクリアリングするために、WI2と呼ばれるMN−14に対する抗イディオタイプAbを、好ましくは、グリコシル化Fab’フラグメントとして与える。クリアリング剤が一価でbsAbと結合する一方で、その付加グリコシル残基が総ての複合体を肝臓に向け、そこで迅速な代謝が行われる。次いで、ターゲッティング可能な構築物と結合した治療薬または診断薬を被験体に与える。bsAbのMN−14アームに対するWI2 Abは、WI2−Fab’が一価部分であることから、架橋に関与しないために、高い親和性を有し、クリアランス機構は他の開示された機構(Goodwin et al., 前記参照)とは異なっている。
【0097】
投与
ターゲッティング可能な構築物および/または抗体は、静脈内、動脈内、術中、内視鏡的、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内投与、局所カテーテルによる潅流、または直接病変内局注により、持続注入または単一もしくは複数のボーラスにより、あるいは罹患組織の診断(検出)および治療に向けた当業者には公知のその他の方法によっても投与可能である。さらに、ターゲッティング可能な構築物は、罹患組織の検出および治療のための他の方法に向けた薬剤を含んでもよい(限定されるものではないが、これまでに記載されたような、超音波検査で使用するデキストランまたはリポソーム製剤のターゲッティング可能な構築物との複合体、またはX線、CT、PET、SPECTおよび超音波検査などの他の画像診断技術で使用する他の造影剤など)。
【0098】
抗体産生
開示される標識方法および診断/治療方法において有用な抗体および/または二重特異性抗体を、以下に概要を示す数多くの標準的な方法によって作製することができる。抗体または二重特異性抗体はモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントを含んでなり得る。さらに、抗体および/または二重特異性抗体は動物、ヒト、キメラもしくはヒト化抗体または動物、ヒト、キメラもしくはヒト化抗体のフラグメントを含んでよい。抗体のアームは同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
ペプチド主鎖および/またはハプテンに対するAbをAb産生に関する周知の方法によって作製する。例えば、正常な免疫能を有する動物にフロイントの完全アジュバント中の免疫原、例えば、(ペプチド)−KLH(ここで、KLHはキーホールリンペットヘモシアニンであり、かつn=1〜30)を注射し、続いて、フロイントの不完全アジュバント中に懸濁した同じ免疫原を2回注射し、抗原のi.v.追加免疫の3日後に脾臓細胞を回収した。次いで、回収した脾臓細胞を、Sp2/0−Ag14骨髄腫細胞と融合し、得られたクローンの培養物上清を、直接結合ELISAにより抗ペプチド反応性について解析する。産生したAbの詳細な特異性は、最初の免疫原のペプチド断片を用いて解析することができる。これらの断片は、自動ペプチド合成装置によって容易に作製することができる。Ab産生では、酵素欠損ハイブリドーマを単離して融合細胞株を選択することができる。この技術を使用してリンカー(例えば、In(III)−DTPAキレート)を含む1以上のキレートに対する抗体を惹起することもできる。In(III)−ジ−DTPAに対するマウスモノクローナル抗体が公知である(Barbet'395、前掲)。
【0100】
開示される方法において使用する抗体は、マーカー物質として種々の細胞表面または細胞内腫瘍関連抗原に特異的である。これらのマーカーは、腫瘍によって生じる物質であってもよいし、腫瘍部位に、腫瘍細胞表面上に、または腫瘍細胞(細胞質、核または種々の細胞小器官もしくは細胞以下の構造を問わない)内に蓄積する物質であってもよい。このような腫瘍関連マーカーのうち、Herberman, "Immunodiagnosis of Cancer", in Fleisher ed., "The Clinical Biochemistry of Cancer", page 347(American Association of Clinical Chemists, 1979)により、ならびに米国特許第4,150,149号;同第4,361,544号;および第同4,444,744号に開示されるものである。Thorpe et al.の米国特許第5,965,132号、Thorpe et al.の米国特許第6,004,554号、Epstein et al.の米国特許第6,071,491号、Epstein et al.の米国特許第6,017,514号、Epstein et al.の米国特許第5,882,626号、Epstein et al.の米国特許第5,019,368号、および Thorpe et al.の米国特許第6,342,221号も参照、これらは総て、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0101】
腫瘍関連マーカーは、Herberman, 前掲によって、癌胎児性抗原、胎盤抗原、発癌または腫瘍ウイルス関連抗原、組織関連抗原、器官関連抗原、異所性ホルモンおよび正常抗原もしくはその変異体をはじめとする数多くのカテゴリーに分類されている。腫瘍関連マーカーのサブユニットを使用して腫瘍特異性(例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)のβ−サブユニットまたは癌胎児性抗原(CEAの)のγ領域)の高い抗体を惹起することが時に有利であり、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第4,361,644号および同第4,444,744号で開示されるように、非腫瘍物質との交差反応性が極めて低い抗体の産生が刺激される。また、腫瘍血管構造(例えば、VEGF、PIGF)マーカー、腫瘍壊死(エプステインの特許)マーカー、膜受容体(例えば、葉酸受容体、EGFR)マーカー、トランスメンブラン抗原(例えば、PSMA)マーカー、および癌遺伝子産物(例えば、BCL−2、p53)マーカーは、抗体または抗体フラグメントの好適な腫瘍関連標的としての役割も果たし得る。腫瘍細胞で豊富に発現されるB細胞受容体抗原などの正常細胞構成要素のマーカー(例えば、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、およびB細胞悪性腫瘍のHLA−DR)、ならびに特定の腫瘍細胞で発現されるサイトカイン(例えば、T細胞悪性腫瘍のIL−2受容体ならびに多発性骨髄腫および多様な癌腫のIL−6)もまた、開示される複合体および方法の抗体および抗体フラグメントの好適な標的である。緩徐進行型B細胞リンパ腫、急速進行型B細胞リンパ腫、慢性白血病、多発性骨髄腫および急性リンパ性白血病に存在する抗原を選択してもよい。同様に、非ホジキンリンパ腫に関連する抗原を選択してもよい。開示される複合体および方法の抗体および抗体フラグメントによって標的化することができる他の周知の腫瘍関連抗原としては、限定されるものではないが、CEA、CSAp、TAG−72、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、EGP−1、EGP−2、BrE3−抗原、PAM−4−抗原、KC−4、A3、KS−1、PSMA、PSA、テネイシン、フィブロネクチン、T101、S100、MAGE、HLA−DR、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、およびCD74が挙げられる。
【0102】
対象となる別のマーカーとして、トランスメンブランアクチベーターおよびCAML−インターアクター(TACI)がある。Yu et al. Nat. Immunol. 1: 252-256 (2000)参照。簡潔には、TACIはB細胞悪性腫瘍(例えば、リンパ腫)のマーカーである。さらに、TACIおよびB細胞成熟抗原(BCMA)が腫瘍壊死因子相同体、増殖誘導リガンド(APRIL)と結合することは公知である。APRILは、一次BおよびT細胞のin vitro増殖を刺激し、in vivoでのB細胞の蓄積により脾臓重量が増加する。また、APRILは受容体結合に関してTALL−1(BLySまたはBAFFとも呼ばれる)と競合する。可溶性BCMAおよびTACIはAPRILの結合を特異的に妨げ、APRILにより刺激される一次B細胞の増殖を遮断する。BCMA−Fcは、マウスにおいてキーホールリンペットヘモシアニンおよびニューモバックスに対する抗体の産生も阻害し、BCMAおよび/またはTACIを介するAPRILおよび/またはTALL−1シグナル伝達が体液性免疫の生起に必要であることがわかる。このように、APRIL−TALL−1およびBCMA−TACIがBおよびT細胞機能の刺激に関係する2リガンド−2受容体経路を構成している。
【0103】
免疫原に対する抗体の最初の惹起後、抗体を配列決定し、その後、組換え技術によって製造することができる。ネズミ抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に周知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに導入し、次いで、ネズミ対応物のフレームワーク領域内でヒト残基と置換することによって作製される。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することで、ネズミ定常領域の免疫原性に関する潜在的な問題が排除される。ネズミ免疫グロブリン可変ドメインをクローニングする一般的方法は、例えば、引用することによりそのまま本明細書の一部とされるOrlandi et al.の刊行物、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86: 3833 (1989)に記載されている。ヒト化Mabの作製技術は、例えば、Jones et al., Nature 321: 522 (1986), Riechmann et al., Nature 332: 323 (1988), Verhoeyen et al., Science 239: 1534 (1988), Carter et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89: 4285 (1992), Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12: 437 (1992)、およびSinger et al., J. Immun. 150: 2844 (1993)に記載されており、その各々が引用することにより本明細書の一部とされる。
【0104】
あるいは、完全なヒトの抗体を、トランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、Mendez et al., Nature Genetics, 15: 146-156 (1997);米国特許第5,633,425号参照。例えば、ヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。マウス体液性免疫系を、内在性免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによってヒト化する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は、非常に複雑で、ヒトゲノムのほぼ0.2%を占める多数の不連続なセグメントを含む。トランスジェニックマウスにより確実に抗体の十分なレパートリーを作製し得るように、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座の大部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは段階的プロセスによって達成され、生殖細胞系配置中にヒト重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成によって開始される。各挿入物の大きさが約1Mbであるため、YAC構築には免疫グロブリン遺伝子座の重複断片の相同組換えが必要である。2つのYAC(一方は重鎖遺伝子座を含み、他方は軽鎖遺伝子座を含む)を、YAC含有酵母スフェロブラストとマウス胚幹細胞との融合を介してマウスに個別に導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られた雄キメラを、その生殖細胞系によってYACを伝達する能力についてスクリーニングし、ネズミ抗体産生不全マウスと交配させる。2つのトランスジェニック系統(一方はヒト重鎖遺伝子座を含み、他方はヒト軽鎖遺伝子座を含む)の交配により、免疫化に応答してヒト抗体を産生する子孫を作製する。
【0105】
非再配列ヒト免疫グロブリン遺伝子を、微小細胞媒介性染色体導入(MMCT)を介してマウス胚幹細胞に導入することもできる。例えば、Tomizuka et al., Nature Genetics, 16: 133 (1997)参照。この方法では、ヒト染色体を含む微小細胞をマウス胚幹細胞と融合する。導入された染色体は安定に維持され、成体キメラは好適な組織特異的発現を示す。
【0106】
あるいは、抗体または抗体フラグメントを、コンビナトリアル免疫グロブリンライブリーから単離されたヒト抗体フラグメントから誘導してもよい。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Barbas et al., METHODS: A Companion to Methods in Enzymology 2: 119 (1991)、およびWinter et al., Ann. Rev. Immunol. 12: 433 (1994)参照。B細胞の不死化によるモノクローナル抗体の作製に関連する多くの問題は、ファージディスプレーを用いて大腸菌(E.coli)中の抗体フラグメントを操作し、発現させることによって克服することができる。高親和性モノクローナル抗体を確実に回収するために、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーは幅広いレパートリーサイズであるべきである。典型的な戦略は、逆転写酵素を用いてcDNAを合成するために免疫化マウスのリンパ球または脾臓細胞から得たmRNAを利用する。重鎖および軽鎖遺伝子をPCRで個別に増幅し、ファージクローニングベクターに連結する。2つの異なるライブラリー(一方は重鎖遺伝子を含み、他方は軽鎖遺伝子を含む)を作製する。ファージDNAを各ライブラリーから単離し、重鎖および軽鎖配列をともに連結し、パッケージングしてコンビナトリアルライブラリーを作製する。各ファージは重鎖cDNAと軽鎖cDNAとの無作為な対を含み、大腸菌の感染の際に感染細胞での抗体鎖の発現を指示する。目的の抗原を認識する抗体を同定するために、ファージライブラリーをプレーティングし、プラーク中に存在する抗体分子をフィルターへ移す。フィルターを放射性標識抗原とともにインキュベートした後、洗浄して過剰の結合していないリガンドを除去する。オートラジオグラムによる放射性スポットにより、抗原と結合している抗体を含むプラークを同定する。ヒト免疫グロブリンファージライブラリーの作製に有用なクローニングベクターおよび発現ベクターを、例えば、STRATAGENEクローニングシステム(La Jolla, CA)から得ることができる。
【0107】
類似の戦略を用いて高親和性のscFvを得ることができる。例えば、Vaughn et al., Nat. Biotechnol., 14: 309-314 (1996)参照。幅広いレパートリーを有するscFvライブラリーを、総ての公知のV、VκおよびVλ遺伝子ファミリーに相当するPCRプライマーを用いて非免疫化ヒト供与体由来のV遺伝子を単離することによって構築することができる。増幅後、VκおよびVλプールを合わせて1つのプールとする。これらのフラグメントをファージミドベクターに連結する。次いで、scFvリンカー(Gly,Ser)をVフラグメントの上流のファージミドに連結する。Vおよびリンカー−Vフラグメントを増幅し、J領域で構成する。得られたV−リンカー−Vフラグメントをファージミドベクターに連結する。ファージミドライブラリーを上記のようにフィルターを用いるか、免疫チューブ(Nunc; Maxisorp)を用いてパンニングすることができる。免疫化ウサギのリンパ球または脾臓細胞由来のコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーを構築することによって、また、P.パストリス(P. pastoris)でscFv構築物を発現させることによって類似の結果を達成することができる。例えば、Ridder et al., Biotechnology, 13: 255-260 (1995)参照。さらに、好適なscFvの単離後、結合親和性が高く、解離速度が遅い抗体フラグメントをCDR3突然変異誘発および鎖のシャッフリングなどの親和性成熟プロセスによって得ることができる。例えば、Jackson et al., Br. J. Cancer, 78: 181-188 (1998); Osbourn et al., Immunotechnology, 2: 181-196 (1996)参照。
【0108】
抗体フラグメントの別の形態が単一のCDRをコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNA由来の可変領域を合成することによって作製される。例えば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2: 106 (1991); Courtenay-Luck, "Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al. (eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995);およびWard et al., "Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES; PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185 (Wiley-Liss, Inc. 1995)参照。
【0109】
bsAbを当技術分野で公知の技術によって調製することができる。例えば、抗CEA腫瘍Abおよび抗ペプチドAbを個別にペプシンで消化してそれぞれF(ab’)を得る。抗CEA−Ab−F(ab’)をシステインで還元してFab’単量体単位を作製し、これを架橋剤ビス(マレイミド)ヘキサンとさらに反応させてFab’−マレイミド部分を作製する。抗ペプチドAb−F(ab’)をシステインで還元し、精製し、回収した抗ペプチドFab’−SHを抗CEA−Fab’−マレイミドと反応させてFab’×Fab’二重特異性Abを作製する。あるいは、抗ペプチドFab’−SHフラグメントを抗CEA F(ab’)とカップリングしてF(ab’)×Fab’構築物を作製するか、抗CEA IgGとカップリングしてIgG×Fab’二重特異性構築物を作製する。一実施形態では、IgG×Fab’構築物を、過ヨウ素酸塩で酸化し、続いて、市販のヒドラジド−マレイミド架橋剤との反応によって活性化した抗CEA IgG重鎖炭水化物への抗ペプチドFab’チオール基の付着により部位特異的に調製することができる。使用した成分Abを公知の技術によってキメラ化またはヒト化することができる。キメラ抗体は齧歯動物由来の可変ドメインおよび相補性決定領域領域を含む組換えタンパク質であり、抗体分子の残りの部分はヒト抗体由来である。ヒト化抗体はモノクローナル抗体のネズミ相補性決定領域がネズミ免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域からヒト可変ドメインに導入された組換えタンパク質である。
【0110】
種々の組換え法を使用して二重特異性抗体および抗体フラグメントを作製することができる。例えば、二重特異性抗体および抗体フラグメントをトランスジェニック家畜の乳汁中で作製することができる。例えば、Colman, A., Biochem. Soc. Symp., 63: 141-147, 1998; 米国特許第5,827,690号参照。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖対をコードするDNAセグメントをそれぞれ含む2つのDNA構築物を調製する。フラグメントを、哺乳類上皮細胞において優先的に発現するプロモーター配列を含む発現ベクターにクローニングする。例としては、限定されるものではないが、ウサギ、ウシおよびヒツジカゼイン遺伝子、ウシα−ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジβ−ラクトグロブリン遺伝子、ならびにマウスホエイ酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。好ましくは、挿入したフラグメントは、哺乳類特異的遺伝子由来の同起源のゲノム配列のその3’側にフランキングしている。これにより、ポリアデニル化部位および転写安定配列が提供される。発現カセットを受精した哺乳類の卵子の前核に同時注入し、これを、その後、受容体である雌の子宮に移植し、懐胎させる。出産後、その子孫をサザン解析により両トランスジーンの存在についてスクリーニングする。抗体が存在するためには、重鎖および軽鎖遺伝子いずれもが同一細胞で同時に発現されなければならない。当技術分野では公知の標準的な免疫学的方法を使用し、トランスジェニック雌由来の乳汁を抗体または抗体フラグメントの存在および機能性について解析する。抗体は当技術分野で公知の標準的な方法により乳汁から精製することができる。
【0111】
キメラAbを、マウス軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコードするcDNA断片のヒト抗体由来のCドメインをコードする断片への連結によって構築する。Cドメインは抗原結合に寄与しないため、キメラ抗体は起源のマウスAbと同一の抗原特異性を維持するが、配列はヒト抗体により近い。キメラAbは、いくつかのマウス配列を依然含んでいるが、なお免疫原性である。ヒト化Abは、抗原を認識するのに必要なマウスアミノ酸のみを含む。この産物は、ヒト抗体フレームワークにマウス相補性決定領域由来のアミノ酸を確立することによって構築する。
【0112】
他の最近のbsAb作製方法としては、より一般的な免疫グロブリンイソタイプよりも強く架橋するように、さらなるシステイン残基を有する人工組換えAbが挙げられる。例えば、FitzGerald et al., Protein Eng. 10 (10): 1221-1225, 1997参照。別のアプローチは、必要な二重特異性を有する2以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメント部分と連結した組換え融合タンパク質を操作することである。例えば、Coloma et al., Nature Biotech. 15: 159-163, 1997参照。分子操作を用いて種々の二重特異性融合タンパク質を作製することができる。一形態では、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば、1つの抗原に対して1つの結合部位を有するscFvと第2の抗原に対して1つの結合部位を有するFabフラグメントからなる。別の形態では、二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば、1つの抗原に対して2つの結合部位を有するIgGと第2の抗原に対して2つの結合部位を有する2つのscFvからなる。
【0113】
ダイアボディーとも呼ばれる機能的二重特異性単鎖抗体(bscAb)を、組換え法を用いて哺乳類細胞で作製することができる。例えば、Mack et al., Proc. Natl, Acad. Sci., 92: 7021-7025, 1995参照。例えば、組換え法を用いたグリシン−セリンリンカーを介する2つの単鎖Fvフラグメントの連結によってbscAbを作製する。目的の2つの抗体のV軽鎖(V)およびV重鎖(V)ドメインを標準的なPCR法を用いて単離する。次いで、各ハイブリドーマから得たVおよびVcDNAを連結して2ステップ融合PCRにて単鎖フラグメントを形成する。第1のPCRステップにより、(Gly−Serリンカー(配列番号)を導入し、第2のステップにより、VおよびVアンプリコンを連結する。次いで、各単鎖分子を細菌発現ベクターにクローニングする。増幅後、単鎖分子の1つを切り出し、目的の第2の単鎖分子を含む他のベクターにサブクローニングする。得られたbscAbフラグメントを真核生物発現ベクターにサブクローニングする。機能タンパク質発現は、ベクターをチャイニーズハムスター卵巣細胞にトランスフェクトすることにより得ることができる。二重特異性融合タンパク質は同様に調製される。二重特異性単鎖抗体および二重特異性融合タンパク質は開示される複合体および方法の範囲内に含まれる。
【0114】
2以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントを結合した二重特異性融合タンパク質を同様に作製する。
【0115】
組換え法を用いて種々の融合タンパク質を作製することができる。例えば、ヒト化モノクローナル抗CEA抗体由来のFabフラグメントとネズミ抗ジDTPA由来のscFvを含む融合タンパク質を作製することができる。フレキシブルリンカー(例えば、GGGS(配列番号))によりscFvを抗CEA抗体の重鎖の定常領域に連結する。あるいは、scFvをhMN−14の軽鎖の定常領域に連結することができる。scFvへの重鎖Fdのインフレームでの連結に必要な好適なリンカー配列をPCR反応を通じてVおよびVドメインに導入する。次いで、scFvをコードするDNA断片を、C1ドメインをコードするDNA配列を含むステージングベクターに連結する。得られたscFv−C1構築物を切り出し、抗CEA抗体のV領域をコードするDNA配列を含むベクターに連結する。得られたベクターを使用して二重特異性タンパク質発現用の哺乳類細胞にトランスフェクトすることができる。
【0116】
大腸菌発現系を用いて大量のbscAbおよび融合タンパク質を作製することができる。例えば、Zhenping et al., Biotechnology, 14: 192-196, 1996参照。機能的なbscAbを、2つのフラグメントのVおよびVドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する2つの「交差」scFvフラグメントの大腸菌における同時発現によって作製することができる。目的の2つの抗体のV軽鎖(V)およびV重鎖(V)ドメインを標準的なPCR法を用いて単離する。次いで、cDNAを、目的の第1の抗体のVドメインのC末端をリンカーを介して第2の抗体のVドメインのN末端に連結するように細菌発現ベクターに連結する。同様に、目的の第2の抗体のVドメインのC末端をリンカーを介して第1の抗体のVドメインのN末端に連結する。得られた二シストロン型のオペロンを、強力なプロモーター(例えば、リン酸塩欠乏によって誘導される大腸菌アルカリ性ホスファターゼプロモーター)の転写制御下に置く。あるいは、単鎖融合構築物を、lacプロモーターおよび2%グリシンおよび1%Triton X−100からなる培地を用いて大腸菌で首尾よく発現させた。例えば、Yang et al., Appl. Environ. Microbiol., 64: 2869-2874, 1998参照。大腸菌の熱安定性エンテロトキシンIIシグナル配列を使用してペプチドを周縁質空間に向ける。分泌後、2つのペプチド鎖は会合して両方の抗原結合特異性を有する非共有結合ヘテロダイマーを形成する。bscAbは当技術分野で公知の標準的手順(例えば、ブドウ球菌プロテインAクロマトグラフィー)を用いて精製する。
【0117】
機能的bscAbおよび融合タンパク質をトランスジェニック家畜の乳汁中で作製することもできる。例えば、Colman, A., Biochem. Soc. Symp., 63: 141-147, 1998; 米国特許第5,827,690号参照。上記のように得たbscAbフラグメントを、哺乳類上皮細胞において優先的に発現するプロモーター配列を含む発現ベクターにクローニングする。例として、限定されるものではないが、ウサギ、ウシおよびヒツジカゼイン遺伝子、ウシα−ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジβ−ラクトグロブリン遺伝子、ならびにマウスホエイ酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。好ましくは、挿入したbscAbは、哺乳類特異的遺伝子由来の同起源のゲノム配列のその3’側にフランキングしている。これにより、ポリアデニル化部位および転写安定配列が提供される。次いで、発現カセットを受精した哺乳類の卵子の前核に注入し、これを、その後、受容体である雌の子宮に移植し、懐胎させる。出産後、その子孫をサザン解析により導入したDNAの存在についてスクリーニングする。当技術分野では公知の標準的な免疫学的方法を使用し、トランスジェニック雌由来の乳汁をbscAbの存在および機能性について解析する。bscAbは当技術分野では公知の標準的な方法により乳汁から精製することができる。乳汁中でbscAbのトランスジェニック産生により、大量のbscAbの効率的な取得法が提供される。
【0118】
機能的bscAbおよび融合タンパク質をトランスジェニック植物で作製することもできる。例えば、Fiedler et al., Biotech., 13: 1090-1093, 1995; Fiedler et al., Immunotechnology, 3: 205-216, 1997参照。このように作製することにより、いくつかの利点(低価格、大量生産および安定した長期保存など)が付与される。タンパク質を小胞体に向けるために、上記のように得たbscAbフラグメントを、プロモーター配列を含み、シグナルペプチド配列をコードする発現ベクターにクローニングする。実施者は、種々のプロモーターを利用して、発現産物を植物内の特定の位置に向けることができる。例えば、タバコ植物における遍在的な発現は、強力なカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを用いて達成することができ、器官特異的発現は種子特異的レグミンB4プロモーターを介して達成される。発現カセットを当技術分野で公知の標準的な方法によって形質転換する。形質転換をサザン解析によって評価する。当技術分野で公知の標準的な免疫学的方法を使用し、トランスジェニック植物をbscAbの存在および機能性について解析する。bscAbは当技術分野で公知の標準的な方法を用いて植物組織から精製することができる。
【0119】
さらに、トランスジェニック植物は、bscAbおよび融合タンパク質の長期保存を容易にする。機能的に活性なscFvタンパク質を、室温で1週間保存後にタバコの葉から抽出した。同様に、室温で1年間保存したトランスジェニックタバコ種子には、scFvタンパク質またはその抗原結合活性の喪失は認められない。
【0120】
機能的bscAbおよび融合タンパク質を昆虫細胞で作製することもできる。例えば、Mahiouz et al., J. Immunol. Methods, 212: 149-160 (1998)参照。昆虫に基づく発現系により、大量の均質で適切に折りたたまれたbscAbの作製手段が提供される。バキュロウイルスは広く使用されている昆虫細胞の発現ベクターであり、組換え抗体分子に首尾よく適用されてきた。例えば、Miller, L. K., Ann. Rev. Microbiol., 42: 177 (1988) ;Bei et al., J. Immunol. Methods, 186: 245 (1995)参照。あるいは、誘導プロモーターの転写制御下でのbscAb構築物を含む安定な昆虫細胞株を作製することにより誘導発現系を利用することができる。例えば、Mahiouz et al., J. Immunol. Methods, 212: 149-160 (1998)参照。上記のように得たbscAbフラグメントをキイロショウジョウバエ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターおよびヒトHLA−A2リーダー配列を含む発現ベクターにクローニングする。次いで、構築物をキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)SC−2細胞にトランスフェクトする。細胞を多量の銅、亜鉛、またはカドミウムに暴露することによって発現を誘導する。当技術分野で公知の標準的な免疫学的方法を使用して、bscAbの存在および機能性を判定する。精製bscAbは当技術分野で公知の標準的な方法を用いて得られる。
【0121】
開示される複合体および方法の好ましい二重特異性抗体は、MAb Mu−9のFvとMAb 679のFvまたはMAb MN−14のFvとMAb 679のFv、ならびにそれらの動物、ヒト、キメラ化またはヒト化対応物を組み込んだものである。MN−14、ならびにそのキメラ化およびヒト化対応物については、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,874,540号で開示されている。また、Mu−9、MN−14および/または679の1以上のCDRを組み込んだ二重特異性抗体も好ましい。また、抗体は融合タンパク質であり得るし、またはクラス−III 抗CEA抗体および679のFvを組み込んだ二重特異性抗体であり得る。クラス−III 抗CEAをはじめとするクラス−III 抗体については、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第4,818,709号で詳細に記載されている。
【0122】
開示される方法は、米国特許第6,096,289号で記載されているような、上記のターゲッティング可能な構築物と結合するbsAbおよび治療薬または診断薬の術中、血管内、内視鏡的腫瘍および病巣検出、生検ならびに治療における使用を包含する。
【0123】
複合体キット
被験体において罹患組織を診断または治療するのに有用なキットに、診断薬または治療薬を含む複合体を組み込むことができる。例えば、複合体はF−18で標識されている。複合体は少なくとも1つの認識可能なエピトープを有するターゲッティング可能な分子として機能する。キットはまた、抗体または抗体フラグメントも含み得る(例えば、抗体、二重特異性抗体および/またはフラグメントを含む本明細書に記載の複合体)。所望により、キットは診断または治療方法を通じて非局在抗体および抗体フラグメントをクリアリングするのに有用なクリアリング組成物を含んでよい。
【0124】
複合体のin vitroでの使用
開示される複合体は、治療または画像化目的だけでなく、in vitro研究の実施における補助手段として使用することができる。例えば、開示されるbsAbおよび/またはターゲッティング可能な構築物を本明細書に開示される方法によって標識し、それらをin vitroにて使用して、ターゲッティング可能な構築物が1以上のbsAbと安定した複合体を形成することができるかどうかを確かめることができる。このようなアッセイは、bsAbと安定した複合体を形成するターゲッティング可能な構築物の同定において当業者の手助けとなる。これにより、当業者は治療薬および/または造影剤として優れていると考えられるターゲッティング可能な構築物の同定が可能になる。
【0125】
アッセイは問題のターゲッティング可能な構築物を少なくとも2モル等量のbsAbと合わせることによって実施することが有利である。インキュベーション後、混合物をサイズ排除HPLCにより分析して構築物がbsAbと結合しているかどうかを判定する。あるいは、アッセイを標準的なコンビナトリアル法を使用して実施する(ここで、種々のbsAb溶液を標準96ウェルプレートに入れる)。各ウェルに、ターゲッティング可能な構築物の溶液を添加する。インキュベートし、分析した後、どの構築物がどのbsAbと最良の結合をするかが容易に判定できる。
【0126】
当然のことではあるが、bsAbのターゲッティング可能な構築物への添加順序は重要でない、すなわち、bsAbを構築物に添加してもよいし、逆の場合も同じである。また、bsAbも構築物も溶解状態である必要はない、すなわち、それらは、溶解状態またはストレートのいずれか都合のよい方法で添加してよい。最後に、結合が確立されさえすれば、結合についての解析方法は重要でない。よって、限定されるものではないが、サイズ排除HPLCと合わせた、もしくはその代わりの、FABMS、ESMS、MALDI、高電界型NMR、または他の好適な方法をはじめとする標準的な解析方法を使用して結合について解析し得る。
【実施例】
【0127】
本複合体および方法を以下の実施例によりさらに説明するが、これらは何ら限定されるものではない。以下の合成反応のさらなる例は、John Wiley & Sons, Inc. New York, LondonによるOrganic Syntheses Collective Volume III, Editor E. C. Horning Copyright 1965;およびJohn Wiley & Sons, Inc. New York, London, Sydney, TorontoによるOrganic Syntheses Collective Volume V, Editor Henry Baumgarten, Copyright 1973に見出せる。
【0128】
第2の分子がフッ素化炭水化物分子に結合される限り、幅広い種類の第2の分子(すなわち、担体またはターゲッティング分子)が記載された方法に好適であり、本明細書に記載の実施例において利用することができる。本明細書に記載のペプチドでは、HSGとDTPAを置き換えてもよい。第2の分子が放射性核種を含むターゲッティング構築物であり、そのターゲッティング構築物を診断方法に使用する場合、ターゲッティング構築物が特定レベルの比放射能(例えば、比放射能800〜1000Ci/mmolが望ましい)を有していることが望ましい。
【0129】
実施例1−ヒドラゾン/ヒドラジン結合を介するFDGの結合により作製される複合体
図1は、ヒドラゾン結合を形成するための2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースのHN−NH−C−CO−Lys(HSG)−Tyr−Lys(HSG)−NH(IMP278)との反応を示す。
【0130】
ペプチド、0.0209g(1.95×10−5mol,IMP278)を0.5mlの水に溶かし、0.0039g(2.14×10−5mol,110mol%,FDG)を加えた。次いで、バッファー、0.1ml(pH6 クエン酸バッファー,0.1M)を加えた。反応物を室温にてインキュベートし、HPLCによりモニタリングした。図2〜5参照。1時間40分の時点でのHPLC分析では、反応が約40%完了していることが分かった。図3参照。反応物を50℃の水浴中で約20分間加熱し、HPLCにより分析した。この分析により、反応がほぼ完了していることが分かった。図4参照。次いで、HPLCを用いて新しく生成されたペプチドIMP279(すなわち、複合体)を得た。エレクトロスプレー質量分析によるこのペプチドの推定質量はMH 1237であった。
【0131】
ヒドラゾン/ヒドラジン結合によるFDGとの複合体形成に好適な他のペプチドとしては、NH−NH−CH−CO−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−NH(IMP209)、NH−NH−C−CO−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−NH(IMP221)、NH−NH−C−CO−D−Lys(HSG)−D−Glu−D−Lys(HSG)−NH(IMP280)およびNH−NH−C−CO−D−Lys(HSG)−D−Ala−D−Lys(HSG)−NH(IMP283)が挙げられる。
【0132】
IMP278と同様に、図6に概要を示しているように、ヒドラジンペプチドIMP221(またはIMP209、IMP280、IMP283)をFDGと反応させることができる。図6では、担体分子のヒドラジン基の末端窒素原子がFDGのカルボニル炭素(すなわち、C1位)を攻撃する求核試薬として機能する。この結合の安定性は、金属キレート剤を含む非放射性、すなわち「コールドの」FDGペプチド(FDGはSigma, St. Louis, MOより入手可能である)を作製することにより調べることができる。in-vivoおよびin-vitroでの安定性をモニタリングするために、ペプチドをさらに、In−111で標識することができる。必要に応じて、ヒドラゾン結合をホウ化水素で還元してヒドラジン結合を形成することにより、結合を安定化させることができる。
【0133】
実施例2−アミノ/イミノまたはアミド結合を介するFDGの結合により作製される複合体
FDGをアミンなどの窒素誘導体、またはヒドラジン誘導体と反応させて、付加物を形成する。ペプチドを水溶液にpH5〜7にて溶かし、FDG付加物と混合する。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(または水素化ホウ素ナトリウム)を加え、室温にて15分間反応を進めた後、それを酢酸でクエンチし、結合したペプチドを精製する。
【0134】
特定の結合または連結の形成を推進するようにFDG分子(または担体)を改変してもよい。例えば、FDGを窒素含有分子で処理して(例えば、アミノオキシ、ヒドラジドおよび/またはチオセミカルバジド基と反応させることにより)、FDGのアミノ化誘導体を作出することが望ましい。アミノ化誘導体内の窒素原子がペプチド、タンパク質および抗体などの担体またはターゲッティング分子のカルボニル炭素の求核攻撃において作用する。特に、アミド、アミンまたはイミノ結合もしくは連結を形成するためには、FDGをアミノ化し、ペプチドと反応させる。より安定した結合を形成するためには、還元的アミノ化を用いる。例えば、FDGのアミノ化誘導体をO=CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(IMP213)などのカルボニル含有ペプチドと反応させる。あるいは、還元的アミノ化により安定した結合を形成するために、Gly−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−NH(IMP223)などのアミノ含有ペプチドをFDGと反応させてもよい。
【0135】
もう1つの実施形態では、オキシムを作出するために、ヒドロキシルアミン(またはアミノオキシ含有分子)をFDGまたは担体分子のいずれかと反応させる。次に、オキシムの窒素原子がFDGまたは担体分子のいずれかのカルボニル炭素の求核攻撃において作用して、アミド、アミンまたはイミン結合もしくは連結を形成する。アミノオキシ官能基化炭水化物の作出については記載されている。Rodriguez et al., J. Org. Chem. 1998, 63, 7134-7135参照。
【0136】
実施例3−IMP286:HN−NH−CS−NH−C−CO−D−Lys(HSG)−D−Glu−D−Lys(HSG)−NH MH 1097(チオセミカルバジド含有ペプチド)の合成
図7は、チオセミカルバジドリンカーを有する前駆体の合成についての模式図を示す。以下のとおり、チオセミカルバジド含有ペプチド(IMP286)を合成した。
【0137】
リンクアミド樹脂、2.026g(0.6mmol/g)を、Nパージ混合しながら、40mLのN−メチルピロリジノン(NMP)に30分間懸濁して、樹脂を膨潤させた。NMP中25%ピペリジン50mLでの2回の洗浄により樹脂のFmocを除去した。1回目のピペリジン切断洗浄液を樹脂と4分間混合し、2回目のピペリジン切断洗浄液を樹脂と17分間混合した。樹脂をNMPおよびイソプロパノール(IPA)により、以下の順序、NMP、IPA、NMP、IPA、4×NMPに従い、各40mLで洗浄した。第1のアミノ酸、Aloc−D−Lys(Fmoc)−OH、3.327g、7.35×10−3molを、1.222g N−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(HOBt)、1.2mL 1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)および28mL NMPと混合した。この溶液を樹脂と室温にて17時間Nパージ混合した。樹脂をNMPおよびIPAで洗浄した。上記のように、NMP中25%ピペリジンを用いてリシンの側鎖からFmocを切断した。樹脂をNMPおよびIPAで洗浄した。Trt−HSG−OH、3.228gを1.209g HOBt、1.0mL DIC、22mL NMP、2.2mL N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および1.0mL DICと混合した。トリチル−HSG−OH溶液を樹脂と20時間混合した後、NMPおよびIPAで洗浄した。反応していないアミンの存在について調べるためのニンヒドリン試験の結果は陰性であった。樹脂を3×各40mLのジクロロメタンで洗浄した。樹脂をほぼ等量に2つに分けた。最初の樹脂の半分をその後の反応に使用した。酢酸、1mLを2mLのピペリジンと混合し、40mLのジクロロメタンに溶かした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、0.2291gをジクロロメタン溶液に溶かした。水素化トリブチルスズ、5mLを樹脂に加えた。次いで、その樹脂にパラジウム溶液を加え、その溶液を1時間Nパージ混合した。第2のロットのパラジウムおよび水素化トリブチルスズによりAloc切断をさらに1時間繰り返した。樹脂を2×40mL ジクロロメタン、NMP、IPA、2×NMP中25%ピペリジン、NMP、IPA、NMP、IPAおよび4×NMPで洗浄した。次のアミノ酸、Fmoc−D−Glu(OBut)−OH、1.575g(3.7×10−3mol)を14mL NMP中0.572g HOBtおよび0.6mL DICと混合した。その溶液を樹脂に加え、18時間混合した。樹脂をNMPおよびIPAでの通常の洗浄によりで洗浄した。樹脂のニンヒドリン試験の結果は陰性であった。次いで、グルタミン酸残基のFmoc基をピペリジンで切断し、その樹脂を記載したようにNMPおよびIPAで洗浄した。上記のように、第2のAloc−D−Lys(Fmoc)−OHを加え、続いて、リシン側鎖へのトリチル−HSG−OHの導入を行った。リシンのα−Alocを除去し、他のアミノ酸カップリングに関して記載されているように、Boc−NH−NH−CS−NH−CCOH、2.08g(6.69×10−3mol)を樹脂とカップリングさせた。0.5mLアニソールおよび0.5mLトリイソプロピルシランを含有する20mL TFAを用いて樹脂からペプチドを切断した。ペプチドの切断を3時間行い、エーテル中で沈殿させた。HPLCによりペプチドを精製し、0.1105gの所望のペプチド(ESMS MH 1097)を得た。
【0138】
実施例4−チオセミカルバゾン結合を介するFDGの結合により作製される複合体
図8は、チオセミカルバゾン結合を形成するチオセミカルバジド含有ペプチドとFDGの反応により作製される複合体についての模式図を示す。以下のように、複合体の合成には実施例3のチオセミカルバジド含有ペプチドを使用した。
【0139】
IMP287の合成(チオセミカルバゾン結合によるFDG−ペプチド複合体)
【化1】

ペプチド、IMP286、0.0204g(1.86×10−5mol)を0.0038g(2.09×10−5mol)のFDGと混合し、それを、0.5mLの水と0.1mLの0.1Mクエン酸バッファーpH5.96の溶液に溶かした。反応物は室温にて一晩静置した。酢酸50μLを、2回に分け、4時間かけて加えた。ペプチドFDG複合体を水で希釈し、HPLCにより精製し、それを凍結乾燥した後、0.0065g(収率28%)の所望の生成物を得た。
【0140】
実施例5−イリド中間体によるFDG−ペプチド複合体の合成
図9は、窒素イリド中間体によるFDG−ペプチド複合体の合成についての模式図を示す。
【0141】
実施例6−ボロン酸リンカーを用いたペプチドの合成
図10は、NH−NH−C−CO−NH−D−Lys(HSG)−D−Glu−D−Lys(HSG)−NH(IMP280)のボロン酸分子(2−アセチルフェニルボロン酸)との反応により作製される、ボロン酸リンカーを含有するペプチド(IMP282)の合成を示す。
【0142】
ペプチド、IMP280:NH−NH−C−CO−NH−D−Lys(HSG)−D−Glu−D−Lys(HSG)−NH(0.0312g)を0.0194gの2−アセチルボロン酸と混合し、それを0.6mLの0.1Mクエン酸バッファーpH6.0に溶かした。その溶液を室温にて2時間インキュベートした後、HPLCにより精製し、0.0213gの精製複合体(ESMS MH 1166.)を得た。
【0143】
実施例7−F−18.2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースの合成および精製
図11は、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースからの(例えば、F−18を反応させ、ナトリウムメトキシドで加水分解することによる)F−18,2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースの合成を示す。FDGおよびその他のフッ素化糖の合成については記載されている。Beuthien-Baumann et al., Carbohydrate Res. 2000, 327, 107-118; EP 0 167 103参照。1mLの無水アセトニトリルに溶かした1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノース(20mg)をクリプトフィックス222および炭酸カリウムの存在下、乾燥F−18(Eastern isotope)と還流温度にて5分間反応させる。
【0144】
FDGを合成した後、そのFDGをボロン酸樹脂カラムに通すことによりそれを精製する。図12は、FDGのボロン酸樹脂との結合を示す。ボロン酸誘導体は、pH8.5にてグルコースおよびその他の炭水化物と結合するが、pH4にてそれらを解離することが知られている。表1の結果によって示されるように、ボロン酸樹脂を使用することにより、FDGが優先的に結合することに基づいてFDG/グルコース混合物からFDGを選択的に精製することができる。
【0145】
【表1】

【0146】
グルコース(0.0141g)を25mLの生理食塩水と3mLの1M NaHCOを含有する溶液に溶かした。その溶液(10mL)を1mLのボロン酸固定樹脂(Pierce社の20244)と混合し、それを、15mL遠心管で室温にて50分間混合しながらインキュベートした。その溶液をデカントし、市販のグルコースセンサーを用いてグルコース濃度を測定した。
【0147】
非放射性2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース、0.0161gを28mLの生理食塩水と3.4mLの1M NaHCOを含有する溶液に溶かした。グルコース溶液の場合と同様に、FDG溶液を処理した。
【0148】
また、FDGをフェニルヒドラジン樹脂カラムに通すことによってFDGを精製してもよい。図13参照。例えば、糖はpHおよそ5〜8にてフェニルヒドラジンに結合し、その糖はより酸性の強いpH(およそ2)でのみ樹脂から解離される。
【0149】
フェニルヒドラジン樹脂は、グルコースとはオサゾン結合を形成する(C1およびC2位で結合する)が、FDGとはヒドラゾン結合を形成する(C1位で結合する)しかない。そのようなものとして、FDGは低ストリンジェントな酸性条件下でフェニルヒドラジンカラムから解離される。
【0150】
また、FDG前駆体、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−[18F]−β−D−グルコースを、活性化チオール−、アミノ−またはヒドラジノ含有樹脂などのアルキル化することができる樹脂と反応混合物を接触させることにより分離または精製してもよい。活性化チオール含有樹脂は市販されている(例えば、Amersham Biosciences参照)し、あるいは、チオール含有樹脂(例えば、Novabiochem参照)を弱塩基で処理して、チオール基を脱プロトン化することによって、樹脂を活性化してもよい。活性化した樹脂を使用して、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−[18F]−β−D−グルコースおよび1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースの混合物から、それらの活性化チオール樹脂に対する反応性の違いに基づいて、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−[18F]−β−D−グルコースを精製することができる。マンノーストリフルオロメタンスルホニル(トリフレート)は、チオール含有樹脂がトリフレート基を置換することで樹脂と共有結合する(スルフィド結合を形成する)。フッ素化炭水化物は樹脂と共有結合を形成しないため、チオール含有樹脂とは反応しない。そのようなものとして、溶液の比放射能は、樹脂の入ったカラムに溶液を通し、1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−[18F]−β−D−グルコースおよび1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースを結合させ、および1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−[18F]−β−D−グルコースを洗浄および溶出して、F−18標識グルコースの濃度が高まった、より高い比放射能を有する溶液を得ることによって高めることができる。この分離はまた、シリカゲルクロマトグラフィーまたは逆相HPLCによって達成してもよい。
【0151】
sep−pakを用いて、標識生成物から未反応のF−18を分離することができる。0.1M HCLによりF−18は洗い流されるが、テトラアセチル炭水化物はC−18物質と固着している。生成物を次に、CHCl、THFまたはエタノールなどの好適な溶媒で溶出し、溶媒を蒸発させる。文献に記載されているように、アセチル基を次いで、塩基で加水分解する。その後、溶液を中和し、濃縮する。F−18,FDGをさらに、任意の好適なペプチド(例えば、IMP286などのチオセミカルバジドペプチド)と反応させてもよい。
【0152】
実施例8−スルフィド、アミノ、イミノまたはアミド結合を介するFDGの結合により作製される複合体
チオール基の硫黄原子による求核攻撃に優れた脱離基を提供するために、さらにハロゲン化したFDG誘導体を作出してもよい。例えば、遊離チオール基を含むAc−Cys−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−NH(IMP222)との反応には、C1位に塩素置換を含むFDG誘導体が有用である。例えば、3,4,6−トリ−O−アセチル−1−クロロ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースをIMP222とpH5〜9にて混合し、FDGとの反応が完了するまで混合物を室温にて攪拌する。
【0153】
さらにハロゲン化したFDG誘導体を作出するために、FDG分子または誘導体の1位のヒドロキシル基を選択的にClまたはBrなどのハロゲンに置き換える。例えば、Patt et al., Appl. Radiat. Isot. 2002, 57, 705-712により記載されているように、FDG前駆体を処理してもよい。担体またはターゲッティングペプチドと安定したスルフィド結合または連結を形成するために、C1ハロゲンは次に、チオール基(例えば、IMP222のチオール基)の硫黄原子に置き換えられる(例えば、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる、Zhu et al., J. Org. Chem. 2003, 68, 5641-51参照)。あるいは、C1ハロゲンは窒素原子(例えば、担体またはターゲッティングペプチドに存在するアミノ基内のもの)に置き換えられる。
【0154】
また、C1アセチルエステルをBFエーテルで処理することにより活性化してもよい。活性化したアセタールエステルが、チオール基(例えば、ペプチドまたはタンパク質のチオフェノールまたはシステイン残基内にあるもの)などの求核試薬に結合されてもよい。例えば、実施例7に記載したように、F−18標識テトラ−アセチルグルコースを作製する。標識テトラ−アセチルグルコースを次に、氷酢酸に溶かしたチオール含有ペプチドと反応させる。反応混合物に次いで、BFエーテルを加える。反応が完了したら(シンチレーション検出器を用いた逆相HPLCによるモニタリングを基に)、混合物を水で希釈し、sep−pakに載せ、水で洗浄する。反応生成物をさらに、エタノールで溶出する。アセチル基を弱塩基(0.33M NaOH)で加水分解する。
【0155】
実施例9−111Inでの標識
111In(〜300μCi/キット)を脱イオン水で0.5mLに希釈し、凍結乾燥キットに加えた。これらのキットを沸騰水浴中で15分間加熱し、それらのバイアルを冷却し、0.5M酢酸バッファー中2.56×10−5MのIn0.5mLを加え、これらのキットを再び沸騰水浴中で15分間加熱した。これら標識ペプチドのバイアルを室温まで冷却し、逆相HPLC(HPLC条件:Waters Nova−Pak C−18,8×100mm RCMカラム、100%(HO中0.1%TFA)〜100%(90%CHCN、0.1%TFA、10%HO)の直線勾配を用い3mL/分で溶出)によって評価した。このHPLC分析により、この組成を用いた場合に標識に必要な最低ペプチド濃度(非結合Inは4.7%)は35μg/mLであった。逆相HPLCトレースは、鋭い111In標識ペプチドピークを示した。この標識ペプチドは、過剰量の679IgGと混合した場合、サイズ排除HPLCMによれば、完全に結合した。
【0156】
実施例10−抗ペプチドAbの作製
正常な免疫能を有するマウスにフロイントの完全アジュバント中のペプチド抗原混合物を注射する。その後数週間かけて、フロイントの不完全アジュバントと混合したペプチドの2回の追加抗原注射を行う。動物から脾臓細胞を回収し、Sp2/0−Ag14骨髄腫細胞と融合する。得られたクローンの培養物上清を、ELISAにより最初のペプチド免疫原でコーティングしたプレートを用いて抗ペプチド反応性について解析する。酵素欠損ハイブリドーマを単離して融合細胞株を選択することができ、選択したクローンを培養培地で増殖させて抗ペプチドAbを産生させることができる。
【0157】
実施例11−抗ペプチドAbの精製
抗ペプチドAbをクロマトグラフィーにより(Aタンパク質カラムを用いてIgG画分を単離し、続いてイオン交換カラムを用いて所望の生成物を清浄化する)精製する。目的のAbは、固相支持体に結合された対象となるペプチドで構成される親和性カラム(前記ペプチドを活性化したビーズまたは樹脂と化学的に結合することにより調製される)を使用することにより最終的に精製される。
【0158】
実施例12−抗ペプチドAbのF(ab’)への消化
抗ペプチドAbを、200μg/μLのペプシンとpH4にて1時間インキュベートし、Aタンパク質のタンデムカラムで未消化のIgGを除去し、続いて、G−50−セファデックスで低分子量混入物を除去することによって精製する。
【0159】
実施例13−抗ペプチド−AbのFab’−SHへの還元
抗ペプチド−F(ab’)を、新しく調製した10mM EDTA含有0.1M PBS中システイン溶液と反応させることにより還元してFab’フラグメントにする。反応の経過をHPLCにより追跡し、約1時間で完了したら、スピンカラムクロマトグラフィーによりFab’−SHを精製し、10mM EDTAを含有する脱酸素バッファー中、pH<5にて保存する。
【0160】
実施例14−抗CEA−IgG×抗ペプチド−Fab’二重特異性Abの調製
実施例10のIgG−ヒドラジド−マレイミドを等モル量の抗ペプチドFab’−SHで室温、pH6.0にて、30分間処理する。残留する遊離チオール基をヨードアセタミドと30分間反応させることによりブロックする。サイズ排除クロマトグラフィーで未反応のFab’を除去し、続いて、固体相結合ペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーで未反応のIgGからIgG×Fab’を分離することによって、二重特異性Ab抗CEA−IgG×抗ペプチド−Fab’を精製する。
【0161】
実施例15−カルボキシルエステラーゼのジ−DTPA−ペプチドとの結合
0.2Mリン酸バッファー、pH8.0中のカルボキシルエステラーゼ(5mg)を、5倍モル過剰の架橋剤スルホ−スクシンイミジル−[4−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)で処理する。室温にて2時間攪拌した後、G−25セファデックスのスピンカラムを用いて活性化した酵素を低分子量混入物から分離し、1mM EDTA含有0.1Mリン酸バッファー、pH7で平衡化する。標識するペプチド(10倍モル過剰)を活性化酵素に加え、スピンカラムに使用したものと同じバッファーに溶かす。室温にて1時間攪拌した後、0.25M酢酸バッファー、pH6.0によるG−25セファデックスでのスピンカラムクロマトグラフィーにより、未反応のペプチドからペプチドカルボキシルエステラーゼ複合体を精製する。1アリコートの複合体をインジウム−111標識し、サイズ排除HPLCにより分析することによって、結合が成功したことが示される。
【0162】
本明細書に引用されている総ての特許およびその他の参照文献は、本発明が関係する当業者のスキルの水準を示すものである。さらに、総ての特許およびその他の参照文献はあらゆる表および図面を含めて、引用することにより、各参照文献が個別に引用することによりそのまま本明細書の一部とされる場合と同じく、そのまま本明細書の一部とされる。
【0163】
本発明が、記載される目的および利点、ならびにその中に固有のものが得られるようにうまく適合されることは、当業者には容易に理解できるであろう。本明細書に記載される方法、変形および組成物は、現在、好ましい実施形態を代表するものとして例示しているが、本発明の範囲を限定するものではない。当業者ならば、本発明の範囲内に包含されるその変形およびその他の使用も考えつく。
【0164】
本明細書に開示される本発明に対して、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、種々の置換および修飾をなし得ることは、当業者には容易に理解できる。例えば、種々の異なる結合対のみならず、種々の異なる治療薬および診断薬もまた利用することができる。従って、このようなさらなる実施形態は本発明の範囲内である。
【0165】
本発明は本明細書において例示として記載されているが、本明細書では具体的には開示されていない要素、制限がない場合でも適切に実施され得る。従って、例えば、本明細書でのいずれの場合においても、「含んでなる」、「本質的にからなる」および「からなる」のいずれかの用語を、残る2つの用語のいずれかで置き換えることができる。使用してきた用語および表現は、限定する用語としてではなく、説明する用語として使用され、このような用語および表現の、示され記載される特徴の等価物またはその一部を排除する使用を意図しないが、本発明の範囲内で種々の改変は可能であると認識されている。従って、当然のことながら、本発明は好ましい実施形態によって具体的に開示されているが、当業者ならば、本明細書に開示される概念の任意の特徴、改変およびバリエーションを用いることができ、このような改変およびバリエーションは本発明の範囲内であると考えられる。
【0166】
さらに、当業者ならば、本発明の特徴または態様がMarkush群またはそれに代わるその他の分類の点から記載されている場合、本発明もそれによって、Markush群またはその他の群の各メンバーまたはメンバーの亜群の点から記載されることも認識している。
【0167】
また、特に断りのない限り、実施形態に種々の数値が示されている場合、範囲のエンドポイントとして2つの異なる値を挙げてさらなる実施形態を記載している。このような範囲もまた、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースのHN−NH−C−CO−Lys(HSG)−Tyr−Lys(HSG)−NH(IMP278)との反応の模式図である。
【図2】非放射性FDG(すなわち、「非放射性」FDG)と反応させる前のIMP278のHPLC分析を示したグラフである。
【図3】「非放射性」FDGと反応させたIMP278の反応後30分の時点でのHPLC分析を示したグラフである。
【図4】「非放射性」FDGと反応させたIMP278の反応後1時間40分の時点でのHPLC分析を示したグラフである。
【図5】図4の反応物質の50℃にて20分間のインキュベーション後のHPLC分析を示したグラフである。
【図6】FDGのNH−NH−C−CO−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−NH(IMP221)との反応の模式図である。
【図7】チオセミカルバジドリンカーを用いたペプチド前駆体合成の模式図である。
【図8】FDGのチオセミカルバジドリンカー含有ペプチドとの反応の模式図である。
【図9】窒素イリド中間体によるFDG−ペプチド複合体作出の模式図である。
【図10】ボロン酸含有分子のNH−NH−C−CO−NH−D−Lys(HSG)−D−Glu−D−Lys(HSG)−NH(IMP280)との反応の模式図である。
【図11】アセチル化前駆体(1,3,4,6,−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース)の加水分解によるFDG合成の模式図である。
【図12】FDGのボロン酸樹脂との反応の模式図である。
【図13】グルコースおよびFDGのフェニルヒドラジン樹脂との反応の模式図である。
【図14】F−18,FDG−IMP222複合体合成の模式図である。
【図15】F−18標識テトラ−アセチル糖をBFエーテルで処理することにより作製されるF−18,FDG−IMP286複合体の合成の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の分子に結合されたF−18含有フッ素化炭水化物分子を含んでなる、複合体。
【請求項2】
フッ素化炭水化物分子が2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースが、ヒドラゾン結合、ヒドラジン結合、アミノ結合、イミノ結合、スルフィド結合、チオセミカルバゾン結合、セミカルバゾン結合、オキシム結合、炭素−炭素結合またはボロン酸結合の少なくとも1つによって第2の分子に結合されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
第2の分子がアミノ酸を含んでなる、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
第2の分子がペプチド分子を含んでなる、請求項2に記載の複合体。
【請求項6】
ペプチド分子が、HN−NH−CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
Xがインジウム−DTPA錯体を含んでなる、請求項6に記載の複合体。
【請求項9】
ペプチド分子が、O=CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項10】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
ペプチド分子が、HN−NH−C−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項12】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
ペプチド分子が、Ac−Cys−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(配列番号)(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項14】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
ペプチド分子が、HN−NH−CS−NH−C−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項16】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
ペプチド分子が、HN−O−CH−CO−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項18】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
ペプチド分子が、Gly−Lys(X)−Tyr−Lys(X)−NH(配列番号)(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項20】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項19に記載の複合体。
【請求項21】
ペプチド分子が、HN−NH−CS−NH−C−CO−D−Lys(X)−D−Glu−D−Lys(X)−NH(式中、Xは抗原分子、ハプテン、硬酸キレート剤および軟酸キレート剤からなる群から選択される分子を含む)を含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項22】
XがDTPAまたはHSGを含んでなる、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
第2の分子が抗体を含んでなる、請求項2に記載の複合体。
【請求項24】
第2の分子が多重特異性抗体または構築物を含んでなる、請求項2に記載の複合体。
【請求項25】
多重特異性抗体が二重特異性抗体である、請求項24に記載の複合体。
【請求項26】
第2の分子が多価抗体または構築物を含んでなる、請求項2に記載の複合体。
【請求項27】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがヒドラゾン結合またはヒドラジン結合によって第2の分子に結合されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項28】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがアミノ結合またはイミノ結合によって第2の分子に結合されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項29】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがスルフィド結合によって第2の分子に結合されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項30】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがチオセミカルバゾン結合によって第2の分子に結合されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項31】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがボロン酸結合によって第2の分子に結合されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項32】
アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アザシチジン、ブレオマイシン、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、エチニルエストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルタミド、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、ゲムシタビン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、L−アスパラギナーゼ、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトーテン、酪酸フェニル、プレドニゾン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキサン、タキソール、プロピオン酸テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ベルケード、ビンブラスチン、ビノレルビンまたはビンクリスチン、およびその混合物からなる群から選択される化学療法薬をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項33】
プロドラッグを含有する化学療法薬をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項34】
カルボキシルエステラーゼ、グルクロニダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、β−ラクタマーゼ、ホスファターゼ、およびその混合物からなる群から選択される酵素をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項35】
IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、G−CSFおよびGM−CSF、ならびにその混合物からなる群から選択される免疫調節剤をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項36】
光活性剤または色素をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項37】
造影剤をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項38】
MRI造影剤をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項39】
MRI造影剤がカドリニウムイオン、ランタンイオン、マンガンイオン、鉄、クロム、銅、コバルト、ニッケル、フッ素、ジスプロシウム、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム、ネオジム、またはその混合物を含んでなる、請求項38に記載の複合体。
【請求項40】
超音波造影剤をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項41】
超音波造影剤がデキストラン、リポソーム、ガス充填リポソーム、またはその混合物を含んでなる、請求項40に記載の複合体。
【請求項42】
CTまたはX線造影剤をさらに含んでなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項43】
CTまたはX線造影剤がヨウ素化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウム化合物、バリウム、ジアトリゾエート、エチオド化オイル、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパン酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメ酸、イオタスル、イオテトル酸、イオサラム酸、イオトロキシ酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポデート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾエート、プロピリオドン、塩化タリウム、またはその混合物を含んでなる、請求項42に記載の複合体。
【請求項44】
第2の分子に結合されたF−19含有フッ素化炭水化物分子を含んでなる、複合体。
【請求項45】
F−18を含有するフッ素化炭水化物分子を第2の分子と反応させて、フッ素化炭水化物分子と第2の分子を結合することを含んでなる、複合体の調製方法。
【請求項46】
フッ素化炭水化物分子が2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
フッ素化炭水化物分子が2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなり、かつ、第2の分子がヒドラジン基を含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
F−18を含有するフッ素化炭水化物分子をアミノ化誘導体に変換すること、およびそのアミノ化誘導体をカルボニル基を含有する第2の分子と反応させることを含んでなる、複合体の調製方法。
【請求項49】
フッ素化炭水化物分子が2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
第2の分子がチオール基を含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
フッ素化炭水化物分子が2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
フッ素化炭水化物分子が1−クロロ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
フッ素化炭水化物分子が3,4,6−トリ−O−アセチル−1−クロロ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
フッ素化炭水化物分子が1−ブロモ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
フッ素化炭水化物分子が3,4,6−トリ−O−アセチル−1−ブロモ−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
フッ素化炭水化物分子をBFエーテルと反応させることをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
フッ素化炭水化物分子をBFエーテルと反応させることをさらに含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
フッ素化炭水化物分子が1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
第2の分子がイリドを含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
F−19を含有するフッ素化炭水化物分子を第2の分子と反応させて、フッ素化炭水化物分子と第2の分子を結合することを含んでなる、複合体の調製方法。
【請求項61】
被験体において疾病に至る可能性のある疾病または症状を診断する方法であって、その被験体に、標的組織に結合する少なくとも1つのアームを有する抗体または抗体フラグメントを含んでなる請求項1に記載の複合体を投与することを含んでなる、方法。
【請求項62】
抗体または抗体フラグメントが多重特異性である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
抗体または抗体フラグメントが二重特異性である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
抗体または抗体フラグメントが多価である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
診断薬が放射性核種を含んでなる、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
複合体がF−18、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
診断薬が陽電子放射断層撮影法(PET)を実施するために用いられる診断薬である、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
手術処置、血管内処置、腹腔鏡的処置または内視鏡的処置中に実施される、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
被験体において疾病に至る可能性のある疾病または症状を診断する方法であって、
(A)被験体に、標的組織に結合する少なくとも1つのアームと、ターゲッティング可能な構築物に結合する少なくとも1つの他のアームとを有する抗体または抗体フラグメントを投与し;
(B)必要に応じて、その被験体に、クリアリング組成物を投与し、その組成物によって非局在抗体または抗体フラグメントの循環からのクリアランスを可能し;および
(C)その被験体に、ターゲッティング可能な構築物と少なくとも1つの診断薬を含んでなる請求項1に記載の複合体を投与する
ことを含んでなる、方法。
【請求項70】
抗体または抗体フラグメントが多重特異性である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
抗体または抗体フラグメントが二重特異性である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
抗体または抗体フラグメントが多価である、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
診断薬が放射性核種を含んでなる、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
複合体がF−18、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含んでなる、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
診断薬が陽電子放射断層撮影法(PET)を実施するために用いられる診断薬である、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
手術処置、血管内処置、腹腔鏡的処置または内視鏡的処置中に実施される、請求項69に記載の方法。
【請求項77】
標的組織が腫瘍を含んでなる、請求項61または69に記載の方法。
【請求項78】
腫瘍が、結腸特異的抗原−p(CSAp)、癌胎児性抗原(CEA)、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD45、CD74、CD80、HLA−DR、Ia、Ii、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、NCA、EGFR、HER2/neu、PAM−4、TAG−72、EGP−1、EGP−2、A3、KS−1、Le(y)、S100、PSMA、PSA、テネイシン、フィブロネクチン、葉酸受容体、VEGF、PIGF、ILGF−1、壊死抗原、IL−2、IL−6、T101およびMAGEからなる群から選択される抗原を産生する、または抗原に関連する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
疾病または症状が悪性疾患、心血管疾患、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患または神経系疾患を含む、請求項61または69に記載の方法。
【請求項80】
感染性疾患が細菌性疾患、真菌性疾患、寄生虫性疾患、ウイルス性疾患、およびその組合せからなる群から選択される、請求項61または69に記載の方法。
【請求項81】
感染性疾患が、小胞子菌、白癬菌、表皮菌、スポロトリクス・シェンキー、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、コクシジオイデス・イミチス、ヒストプラズム・カプスラツム、ブラストミセス・デルマティティディス、カンジダ・アルビカンス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス、シミアンウイルス40、呼吸器多核体ウイルス、マウス乳癌ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ネズミ白血病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣贅ウイルス、ブルータングウイルス、炭疽菌、ストレプトコッカス・アガラクチエ、レジュネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎双球菌、B型インフルエンザ菌、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、緑膿菌、らい菌、ウシ流産菌、結核菌、破傷風菌、蠕虫、マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ、ランゲリ・トリパノソーマ、クルーズ・トリパノソーマ、ローデシア・トリパノソーマ、ブルセイ・トリパノソーマ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、エルメリア・テネラ、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、回旋糸状虫、タイレリア・パルバ、胞状条虫、テニア・オビス、カギナシサナダ、単胞条虫、メソセストイデス・コルチ、マイコプラズマ・アルスリティディス、マイコプラズマ・ヒオリニス、マイコプラズマ・オーラル、マイコプラズマ・アルギニニ、アコレプラスマ・ライドラウィー、マイコプラズマ・サリバルム、肺炎マイコプラズマ、およびその組合せからなる群から選択される病原体によって引き起こされる、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
自己免疫疾患が、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitisubiterans)、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(parnphigus vulgaris)、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、繊維性肺胞炎、およびその組合せからなる群から選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
疾病または症状が心血管疾患を含み、かつ、抗体または抗体フラグメントが顆粒球、リンパ球、単球、またはその混合物に対して特異的な抗体または抗体フラグメントである、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
心血管疾患が心筋梗塞、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化斑、フィブリン血餅、塞栓、またはその組合せを含んでなる、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
疾病または症状が悪性疾患を含み、かつ、標的組織が癌胎児性抗原、テネイシン、フィブロネクチン、上皮細胞増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、繊維芽細胞増殖因子受容体、血管内皮増殖因子受容体、ガングリオシド、インスリン様増殖因子、HER/2neu受容体、およびその混合物からなる群から選択される抗原を含んでなる、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
疾病または症状が神経系疾患を含み、かつ、標的組織がアミロイド沈着を含んでなる、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
標的組織が多発性骨髄腫、B細胞悪性腫瘍、T細胞悪性腫瘍、またはその組合せを含んでなる、請求項61または69に記載の方法。
【請求項88】
B細胞悪性腫瘍が緩徐進行型B細胞リンパ腫、急速進行型B細胞リンパ腫、慢性白血病、多発性骨髄腫、および急性リンパ性白血病からなる群から選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
B細胞悪性腫瘍が非ホジキンリンパ腫またはホジキンリンパ腫である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
疾病または症状が固形腫瘍である、請求項61または69に記載の方法。
【請求項91】
固形腫瘍が黒色腫、癌腫、肉腫および神経膠腫からなる群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
癌腫が腎臓癌、肺癌、腸癌、胃癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌および卵巣癌からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
標的組織に結合する少なくとも1つのアームがモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントを含んでなる、請求項61または69に記載の方法。
【請求項94】
ターゲッティング可能な構築物に結合する少なくとも1つの他のアームがモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントを含んでなる、請求項69に記載の方法。
【請求項95】
標的組織に結合する少なくとも1つのアームがヒト、キメラもしくはヒト化抗体、またはヒト、キメラもしくはヒト化抗体のフラグメントを含んでなる、請求項61または69に記載の方法。
【請求項96】
ターゲッティング可能な構築物に結合する少なくとも1つの他のアームがヒト、キメラもしくはヒト化抗体、またはヒト、キメラもしくはヒト化抗体のフラグメントを含んでなる、請求項69に記載の方法。
【請求項97】
二重特異性抗体または抗体フラグメントが治療用核種をさらに含んでなる、請求項61または69に記載の方法。
【請求項98】
二重特異性抗体がMAb Mu−9のFvおよびMAb 679のFvを含んでなる、請求項61または69に記載の方法。
【請求項99】
Mu−9および/または679がキメラ化またはヒト化されている、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
Mu−9および/または679がヒトMu−9および679を含んでなる、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
二重特異性抗体がMu−9の1以上のCDRを含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項102】
二重特異性抗体が679の1以上のCDRを含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項103】
二重特異性抗体が融合タンパク質を含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項104】
二重特異性抗体が抗CEA MAb MN−14のFvおよびMAb 679のFvを含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項105】
MN−14および/または679がキメラ化またはヒト化されている、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
MN−14および/または679がヒトMN−14および679を含んでなる、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
二重特異性抗体がMN−14の1以上のCDRを含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項108】
二重特異性抗体が679の1以上のCDRを含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項109】
二重特異性抗体が融合タンパク質を含んでなる、請求項63または71に記載の方法。
【請求項110】
二重特異性抗体はクラスIII抗CEA抗体および679のFvが組み込まれている、請求項63または71に記載の方法。
【請求項111】
被験体において疾病に至る可能性のある疾病または症状を診断する方法であって、被験体に、選択された組織に結合する分子と結合し得るターゲッティング可能な構築物と少なくとも1つの診断薬を含んでなる請求項1に記載の複合体を投与することを含んでなる、方法。
【請求項112】
分子が多重特異性抗体または抗体フラグメントを含んでなる、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
分子が二重特異性抗体または抗体フラグメントを含んでなる、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
分子が多価抗体または抗体フラグメントを含んでなる、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
被験体において罹患組織を診断するために有用な、請求項1に記載の複合体を含んでなるキット。
【請求項116】
複合体が抗体または抗体フラグメントを含んでなる、請求項115に記載のキット。
【請求項117】
複合体がターゲッティング可能な構築物を含んでなる、請求項116に記載のキット。
【請求項118】
請求項1に記載の複合体および標的組織と結合し得る二重特異性分子をさらに含んでなる、請求項116に記載のキット。
【請求項119】
二重特異性分子が標的組織に結合する少なくとも1つのアームと、複合体に結合する少なくとも1つの他のアームを有する二重特異性抗体または抗体フラグメントを含んでなる、請求項118に記載のキット。
【請求項120】
複合体が二重特異性抗体または抗体フラグメントの少なくとも1つの他のアームによって認識可能な少なくとも1つのエピトープ、および少なくとも1つの診断薬を含むかまたは担持する、請求項119に記載のキット。
【請求項121】
診断薬がF−18を含んでなる、請求項120に記載のキット。
【請求項122】
非局在抗体および抗体フラグメントをクリアリングするのに有用なクリアリング組成物をさらに含んでなる、請求項120に記載のキット。
【請求項123】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを分離する方法であって、
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含む溶液をボロン酸樹脂と接触させ;
そのボロン酸樹脂を洗浄し;および
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを溶出する
ことを含んでなる、方法。
【請求項124】
溶液をカラムに通すことをさらに含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがF−18を含んでなる、請求項123に記載の方法。
【請求項126】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを分離する方法であって、
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースを含む溶液をフェニルヒドラジン樹脂と接触させる
ことを含んでなる、方法。
【請求項127】
溶液をカラムに通すことをさらに含む、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースがF−18を含んでなる、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−フッ素−β−D−グルコースを分離する方法であって、
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−フッ素−β−D−グルコースを含む溶液を樹脂と接触させ、その樹脂をアルキル化することができることを含んでなる、方法。
【請求項130】
溶液をカラムに通すことをさらに含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−フッ素−β−D−グルコースがF−18を含んでなる、請求項129に記載の方法。
【請求項132】
溶液が1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースを含んでなる、請求項129に記載の方法。
【請求項133】
樹脂が活性化チオール含有樹脂を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項134】
樹脂がアミノ含有樹脂を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項135】
樹脂がヒドラジノ含有樹脂を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項136】
請求項1に記載の複合体を含む安定した複合体についてスクリーニングする方法であって、ターゲッティング可能な構築物を抗体または抗体フラグメントと接触させることを含んでなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−524649(P2007−524649A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522012(P2006−522012)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024237
【国際公開番号】WO2005/086612
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】