説明

フッ素含有化合物を含む洗浄剤組成物及びその使用方法

【課題】処理される基材を劣化させることがなく、安価で、引火性がなく、優れた洗浄力及びレジスト除去能力を有する洗浄剤組成物など提供する。
【解決手段】洗浄剤組成物の総質量を基準として、(a)乳酸エチルを70質量%以上、及び、(b)化合物中のハロゲン含有分が60質量%以上であるフッ素含有化合物を30質量%以下の量で含み、引火点を示さない、洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸エチルとフッ素含有化合物とを含む洗浄剤組成物、レジスト除去剤組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリース類、ワックス類、精密機械部品や光学器械部品の加工時に使用される加工油類のための洗浄剤、電子電気部品のハンダ付け時に使用されるフラックスのための洗浄剤、光記録媒体の製造過程において行なわれる色素洗浄に使用される洗浄剤、又は、半導体デバイスの製造過程において行なわれるレジスト除去に使用されるレジスト除去剤として、溶剤が使用されている。かかる溶剤としては、たとえば、乳酸エチルや乳酸ブチルなどのヒドロキシカルボン酸エステル、ジアセトンアルコールなどのアルコール、あるいはジブチルエーテルなどのエーテルが使用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1は、基板上に記録層を形成する記録層形成工程と、該記録層を形成した後に前記基板の外周部に溶剤を吐出して、外周部における記録層を除去する洗浄工程とを含む、光情報記録媒体の製造方法において、上記溶剤として、ジアセトンアルコールなどのアルコール、あるいはジブチルエーテルなどのエーテルを使用することを記載している。
【0004】
また、特許文献2は、半導体デバイスの製造工程における、基板上にパターン状レジスト膜形成方法において、乳酸エチルをレジスト除去剤として使用している。
【0005】
上述の溶剤は引火性があり、その使用又は保管量に制限を受ける。かかる問題を解決するために、洗浄剤やレジスト除去剤などのための溶剤を不燃化しようとする試みがなされている。たとえば、特許文献3は、(a)非塩素系フッ素化合物と、(b)グリコールエーテルアセテート類及びヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含有する非引火性の洗浄剤組成物を開示している。該文献中、ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、広く、乳酸エステル、リンゴ酸エステル、酒石酸エステル、クエン酸エステルなどが挙げられ、また、乳酸エステルとしては乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル及び乳酸ペンチルが例示されている。一方、非塩素系フッ素化合物としては、広く、炭化水素類やエーテル類の水素原子の一部がフッ素原子によって置換されており、塩素原子を含まないものと記載されている。実施例において使用されているヒドロキシカルボン酸エステルは乳酸ブチルのみであり、しかも、60質量%以上の非塩素フッ素系化合物と、40質量%以下の乳酸ブチルとを含む洗浄剤組成物が例示されているのみである。
【0006】
しかしながら、乳酸ブチルは洗浄性は高いが、ポリカーボネートなどのプラスチック基材に対して、攻撃性が高く、被洗浄基材が劣化してしまうことがある。また、フッ素系化合物は高価な化合物であるため、洗浄剤組成物の主成分として含む場合にはコストが嵩んでしまう。
【0007】
【特許文献1】特開2004−185777号公報
【特許文献2】特許第3382028号公報
【特許文献3】特開2001−172685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、処理される基材を劣化させることがなく、安価で、引火性がなく、優れた洗浄力及びレジスト除去能力を有する洗浄剤組成物及びレジスト除去剤組成物を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1つの態様によると、(1)洗浄剤組成物の総質量を基準として、(a)乳酸エチルを70質量%以上、及び、(b)化合物中のハロゲン含有分が60質量%以上であるフッ素含有化合物を30質量%以下の量で含み、引火点を示さない、洗浄剤組成物を提供する。
【0010】
本発明は、別の態様によると、(2)レジスト除去剤組成物の総質量を基準として、(a)乳酸エチルを70質量%以上、及び、(b)化合物中のハロゲン含有分が60質量%以上であるフッ素含有化合物を30質量%以下の量で含み、引火点を示さない、レジスト除去剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄剤組成物及びレジスト除去剤組成物は、乳酸エチルを含有しており、ポリカーボネートなどのプラスチック基材に対する攻撃性がなく、優れた洗浄力や除去能力を発揮することができる。また、フッ素含有化合物の量が30質量%以下(特に、6質量%程度)の少量であっても、引火性を示さないので、組成物を安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明をその好適な態様に基づいて説明する。
本発明の組成物は、主成分として乳酸エチル(a)を含有する。乳酸エチルは、ポリカーボネートなどのプラスチック基材に対する損傷を与えることがないので、従来から一般的に使用されている乳酸ブチルを用いる場合よりも、処理対象となる基材に制限が少ない。一方、乳酸エチルはカウリブタノール値(KB値)が276であり、汚染物やレジストに対する溶解性が高く、洗浄効果及びレジスト除去効果に直接的に寄与する。しかし、乳酸エチルは引火点が53.5℃であり、単独では引火性のある物質である。本発明の組成物は、乳酸エチルに対して、少量のフッ素含有化合物を添加することで、引火性を示さないようになっている。乳酸エチルは組成物の総質量基準で70質量%以上の量で組成物中に含まれる。このような多量の乳酸エチルにより、組成物の洗浄力及びレジスト除去能力は十分な高さを維持することができる。また、スピン洗浄の目的では、揮発速度を抑制するように比較的に高い沸点の溶剤を使用することが望まれるが、乳酸エチルは沸点が154℃であるから、本発明の組成物はスピン洗浄用途に好適に使用される。なお、カウリブタノール値(KB値)は石油系溶剤の品質を評価するために用いられる。カウリブタノール溶液20gに溶剤を滴下したとき、溶液が一定の白濁状態になるまで要した溶剤の25℃におけるml数をもって示す。KB値が60以上の場合には、標定に試薬用特級トルエンを用い、その値を105とする。60未満の場合は、標定にヘプタン75%、トルエン25%の混合液を用い、その値を40とする。
【0013】
本発明の組成物に含まれるフッ素含有化合物(b)は、化合物中のハロゲン含有分が60質量%以上である。このようなハロゲン含有分はフッ素含有化合物の組成物への少量添加で組成物に十分な不燃性を付与する。フッ素含有化合物は、たとえば、ヒドロフルオロカーボン(HFC)又はヒドロフルオロエーテル(HFE)であることができる。フッ素含有化合物は、沸点が40〜140℃であるものが好ましい。沸点が高すぎると、組成物の乾燥速度が遅くなり、乾燥時間が長くなりすぎる。一方、沸点が低すぎると、基材が十分に濡れる前に組成物が蒸発し、洗浄等の操作が困難になる。特に、スピン洗浄用の洗浄剤組成物では、フッ素含有化合物の沸点が低すぎると、十分にスピン塗布されないので不適となる。このような条件を満たすフッ素含有化合物は、たとえば、炭素数が4〜6のヒドロフルオロカーボン(HFC)、又は、炭素数が4〜8のヒドロフルオロエーテル(HFE)である。また、フッ素含有化合物としては、塩素などの他のハロゲンを含んでよい。かかるハロゲンも組成物の不燃性に寄与するので、上述のハロゲン含有分として計上される。しかしながら、塩素を含むヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)はオゾン層破壊を促進する物質として知られているので、塩素を含まないフッ素含有化合物であることが望ましい。フッ素含有化合物は、好ましくは、分子中の水素原子数に対するハロゲン原子数の比が1以上である。より具体的には、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタン(分子中のハロゲン含有量(質量基準):70.6%)(商品名:Novec7300、住友スリーエム(株)製)、ノナフルオロブチルメチルエーテルおよびノナフルオロイソブチルメチルエーテルの混合物(分子中のハロゲン含有量(質量基準):68.4%)(商品名:Novec HFE−7100、住友スリーエム(株)製)、ノナフルオロブチルエチルエーテルおよびノナフルオロイソブチルエチルエーテルの混合物(分子中のハロゲン含有量(質量基準):64.8%)(商品名:Novec HFE−7200、住友スリーエム(株)製)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(分子中のハロゲン含有量(質量基準):75.4%)(商品名:Vertrel XF(HFC−4310mee)、三井デュポンフロロケミカル(株)製)、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(分子中のハロゲン含有量(質量基準):66.5%)(商品名:AE−3000(HFE−347pcf)、旭硝子(株)製)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロジクロロプロパンおよび1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパンの混合物(分子中のハロゲン含有量(質量基準):81.8%)(商品名:AK−225(HCFC−225)、旭硝子(株)製)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(分子中のハロゲン含有量(質量基準):64.2%)(商品名:Solkane 365mfc(HFC−365mfc)、ソルベー社製)などが挙げられる。
【0014】
組成物を不燃性とするために、すなわち、組成物が引火性を示さないようにするために必要とされるフッ素含有化合物の量は組成物の総質量基準で30質量%以下の量で十分であり、特定のフッ素含有化合物の場合には、5又は6質量%で十分である。フッ素含有化合物の量が5質量%未満の場合には、一般に引火性を有し、好ましくない。一方、フッ素含有化合物の量が30質量%を超える場合には、組成物のコストが嵩むとともに、洗浄力及びレジスト除去能力が低くなりすぎる。また、フッ素系化合物の種類によっては乳酸エチルと均一な混合物を形成できずに分離してしまう。
【0015】
本発明の好ましい洗浄剤及びレジスト除去剤組成物は、70〜94質量%の乳酸エチルと、6〜30質量%の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとから本質的になる組成物であり、特に、94質量%の乳酸エチルと、6質量%の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンからなる組成物である。これらの組成物は、引火点がなく、特に、洗浄力が高い。さらに、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンは、地球温暖化係数(GWP)が200と低く、かつオゾン破壊係数をもたないので環境にやさしい。なお、地球温暖化係数(GWP)は日本国特許第3099964号公報に記載されているとおり、周知であり、また、オゾン破壊係数は特定フロンであるCFC−11のオゾン破壊係数を1とした場合の相対的数値である。
【0016】
本発明の組成物には、上記の(a)及び(b)成分以外に、他の成分を含んでもよい。たとえば、組成物の酸化劣化を防止するために、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などの酸化防止剤を含んでよい。本発明の組成物は、さらに、界面活性剤、安定剤、消泡剤などの添加剤を含んでもよい。
【0017】
上述のとおり、本発明の洗浄剤組成物は光情報記録媒体の製造工程に用いられる洗浄剤組成物として有効である。本発明の組成物は、たとえば、以下のとおりに使用される。コンパクトディスク(CD−R)やデジタル多目的ディスク(DVD−R)などとして広く知られる追記型の光情報記録媒体には、記録領域として色素を含有する記録層が形成されている。この記録層は、色素含有溶液を基材表面にスピンコートして乾燥することにより形成される。スピンコートに使用されるスピンコータは、その特性上、基材の内周側では、ある程度限定した位置から塗布を開始することができるが、外周側の塗布範囲を制御することは難しい。このため、記録層を一度基材の全面に形成し、その外周縁部に洗浄液をスピンコートして除去する(洗浄工程)ことにより、外周縁部の色素を除去している。当該洗浄工程で、記録層の外周縁部(エッジ部)を洗浄して、次いで、基材の外周縁部で、該基材とカバー用基材を接着して、光記録媒体を形成することができる。また、記録層の外周縁部(エッジ部)の洗浄により、記録層の経時劣化を防ぐことができる。本発明は、1つの態様において、光情報記録媒体用色素を含有する記録層形成用溶液をプラスチック基材上もしくは該基材上に形成された金属膜上に塗布し、乾燥して、基材の全面に記録層を形成した後に、前記基材の外周部を洗浄するために、本発明の洗浄剤組成物をスピン塗布して外周部における記録層を除去し、洗浄剤組成物を乾燥することを含む、本発明の洗浄剤組成物の光情報記録媒体の製造における使用方法を提供する。この方法において、光情報記録媒体には、コンパクトディスク(CD−Rなど)、デジタル多目的ディスク(DVD−Rなど)、あるいは、次世代光記録媒体などが含まれる。また、記録層を形成する光情報記録媒体用色素には、たとえば、含ニッケルアゾ色素が用いられる。また、基材としては、ポリカーボネートなどのプラスチックが用いられる。従来のCD−RやDVD−Rの場合には、プラスチック基材上に記録層形成用溶液が塗布されて記録層が形成され、その上にアルミニウムなどの金属膜が反射膜として形成される。一方、次世代光記録媒体の場合には、基材上にアルミニウムなどの金属膜が形成され、該金属膜の上に記録層形成用溶液が塗布される。本発明の洗浄剤組成物は、ポリカーボネートなどのプラスチック基材及び金属膜に損傷を与えることがなく、含ニッケル色素を良好に除去することができるので、上記使用方法に特に好適である。
【0018】
本発明は、別の態様において、フラックスなどの汚染物が付着した電子回路基板上の該汚染物を、本発明の洗浄剤組成物によって除去する、洗浄剤組成物の使用方法を提供する。電子回路基板を本発明の洗浄剤組成物中に浸漬し、又は、シャワー洗浄するなどの適切な方法で汚染物を除去することができる。
【0019】
本発明は、別の態様において、パターン化レジスト膜の形成における本発明のレジスト除去剤組成物の使用方法を提供する。具体的には、基材の表面にレジスト材料の膜を適用し、エネルギー線をパターン照射し、次いで、本発明のレジスト除去剤組成物によってレジスト膜を、パターン照射に対応するパターンで除去して、パターン化レジスト膜を形成する。レジスト材料の膜は、レジスト材料が液体の場合には、該液体を塗布し、そして乾燥することで適用される。また、レジスト材料の膜は、レジスト材料がフィルム状の形態であれば、基材上に貼り付けることで適用できる。次いで、形成すべきレジストパターンに対応させて、光、電子線、X線などのエネルギー線をレジスト膜にパターン照射して、パターン照射されたレジスト膜を有する基材を形成する。次いで、本発明のレジスト除去剤組成物中に、パターン照射されたレジスト膜を有する基材を浸漬し、又は、レジスト除去剤組成物をレジスト膜上にスピンコートし、レジスト膜をパターン状に除去して、パターン化レジスト膜を形成する。
【実施例】
【0020】
以下において、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例中に用いる略語は以下のとおりである。
Novec7300:1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタン(商品名:Novec7300、住友スリーエム(株)製)
Novec HFE−7100:ノナフルオロブチルメチルエーテルおよびノナフルオロイソブチルメチルエーテルの混合物(商品名:Novec HFE−7100、住友スリーエム(株)製)
Novec HFE−7200:ノナフルオロブチルエチルエーテルおよびノナフルオロイソブチルエチルエーテルの混合物(商品名:Novec HFE−7200、住友スリーエム(株)製)
Vertrel XF:1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(商品名:Vertrel XF、三井デュポンフロロケミカル(株)製)
AE−3000:1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(商品名:AE−3000、旭硝子(株)製)
AK−225:1,1,1,2,2−ペンタフルオロジクロロプロパンおよび1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパンの混合物(商品名:AK−225、旭硝子(株)製)
Solkane 365mfc:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(商品名:Solkane 365mfc、ソルベー社製)
乳酸エチル:((株)武蔵野化学研究所製)
PDS−2072:光情報記録媒体用の含ニッケルアゾ系色素PDS−2072(三菱化学メディア株式会社製)
【0021】
実施例1〜10及び比較例A〜G:引火性
次の不燃性フッ素系化合物と乳酸エチルを表1の配合比に従い、室温(25℃)下で混合して混合物を得た。これらをペンスキーマルテンス密閉式自動引火点測定機により、ペンスキーマルテンス密閉式試験法(ISO 2719:1988)に準拠して引火点測定を実施した。結果を下記の表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例11:組成物の引火点管理方法
組成物が引火点を示さないようにするための引火点管理方法について記載する。この例において、乳酸エチルと、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタン(商品名:Novec7300、住友スリーエム(株)製)との混合物を用いた。下記の表2にそれぞれの組成における比重が示されている。
【0024】
【表2】

【0025】
上記の表1より、Novec7300が6質量%以上であると、組成物が引火点を示さないことが判っている。したがって、温度25℃では組成物の比重を1.056以上に管理することで、引火点を示さない組成物とすることができることが判る。また、温度40℃では組成物の比重を1.042以上に管理することで、引火点を示さない組成物とすることができることが判る。
【0026】
実施例12〜18及び比較例H〜K
直径100mmの円形ディスクのポリカーボネート基材上に、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(ダイキン工業株式会社製)中に0.5wt%の濃度で溶解させた光情報記録媒体用の含ニッケルアゾ系色素PDS−2072(三菱化学メディア株式会社製)を1000rpmのスピンコータで塗布し、乾燥させた。その後、色素が塗布されたポリカーボネート基材を再びスピンコータに設置し、1000rpmの条件下に、下記の表3に示す洗浄剤組成物を少量滴下して、その洗浄効果とポリカーボネートへのアタック性を目視で評価した。洗浄効果に関して色素が除去され、無色透明になった場合をOK、そうでない場合をNGと表記した。また、ポリカーボネート基材に対する損傷はいずれの洗浄剤組成物を用いた場合にも見られず、「なし」と表記した。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例19〜23及び比較例L〜P
以下において、種々の汚染物に対する洗浄性について調べた。まず、基材として、ガラス板及びポリカーボネートを用い、汚染物として、フラックス、ワックス、光情報記録媒体用色素を用いた。下記の表4に示す洗浄剤及びリンス剤を用いて、洗浄プロセス1〜3を行なった。目視により、洗浄効果を確認した。汚染物が完全に除去されている場合を「OK」、完全には除去されていない場合を「NG」とした。
【0029】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物の総質量を基準として、(a)乳酸エチルを70質量%以上、及び、(b)化合物中のハロゲン含有分が60質量%以上であるフッ素含有化合物を30質量%以下の量で含み、引火点を示さない、洗浄剤組成物。
【請求項2】
70〜94質量%の乳酸エチルと、6〜30質量%の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとからなる、請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
レジスト除去剤組成物の総質量を基準として、(a)乳酸エチルを70質量%以上、及び、(b)化合物中のハロゲン含有分が60質量%以上であるフッ素含有化合物を30質量%以下の量で含み、引火点を示さない、レジスト除去剤組成物。
【請求項4】
70〜94質量%の乳酸エチルと、6〜30質量%の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとからなる、請求項3記載のレジスト除去剤組成物。
【請求項5】
光情報記録媒体用色素を含有する記録層形成用溶液をプラスチック基材上もしくは該基材上に形成された金属膜上に塗布し、乾燥して、基材の全面に記録層を形成した後に、前記基材の外周部を洗浄するために、請求項1又は2記載の洗浄剤組成物をスピン塗布して外周部における記録層を除去し、洗浄剤組成物を乾燥することを含む、光情報記録媒体の製造における洗浄剤組成物の使用方法。
【請求項6】
汚染物が付着した電子回路基板上の該汚染物を、請求項1又は2記載の洗浄剤組成物によって除去する、洗浄剤組成物の使用方法。
【請求項7】
基材の表面にレジスト材料の膜を適用し、エネルギー線をパターン照射し、次いで、請求項3又は4記載のレジスト除去剤組成物によってレジスト膜を、パターン照射に対応するパターンで除去して、パターン化レジスト膜を形成する、レジスト除去剤の使用方法。

【公開番号】特開2007−211203(P2007−211203A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35050(P2006−35050)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】