説明

フッ素樹脂及び被覆電線

本発明の目的は、薄肉形成性に優れ、難燃性、耐熱性及び電気特性が良好な電線被覆材を形成し得るフッ素樹脂を提供することにある。本発明は、直径が0.05〜0.07mmである芯線に、樹脂温320〜370℃、引き落とし率〔DDR〕80〜120、引き落としバランス〔DRB〕1.0、線速700フィート/分、被覆厚30〜50μmの条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないことを特徴とするフッ素樹脂に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂及び被覆電線に関する。
【背景技術】
【0002】
芯線と、この芯線に樹脂を被覆成形することにより得られる被覆材とからなる被覆電線は、近年、モバイル機器等の用途物品の小型化に伴い、細径化が求められている。これに伴い、細径の芯線に被覆材を薄肉形成する必要が生じてきている。
【0003】
薄肉形成可能な樹脂として、ポリエチレン〔PE〕、ポリプロピレン〔PP〕等のポリオレフィン樹脂が用いられてきた。しかしながら、従来のポリオレフィン樹脂を用いた被覆電線は、薄肉化により伝送損失量が増大する問題があった。
【0004】
被覆電線は、通信技術の発達により大量の情報伝達が必要であり、そのために伝送損失は最小限に抑制することが求められる。発泡被覆することで比誘電率を下げ、絶縁特性の向上を図る方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、発泡させた被覆材では強度が不足するのに加え、これを克服するために厚みを増すと細線化が難しいという問題があった。
【0005】
従来、ポリオレフィン樹脂を被覆材として用いる場合にあっては、難燃性の面で問題があり、難燃化剤を添加することでこの問題を克服する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、難燃化剤を添加することで電気特性が低下するという問題があった。
【0006】
汎用のポリオレフィン樹脂を用い、これを架橋させることでハンダリフロー加工に耐え得る耐熱性を発現させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、これには非常に高価な装置が必要となり、経済性の面で問題があった。
【0007】
フッ素樹脂、特にテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA]からなるフッ素樹脂は、耐熱性、難燃性及び電気特性に優れており、その特徴を生かして種々の用途に用いられている。しかしながら、PFAには、例えば、射出成形法によって、微細な形状や複雑な形状の成形体を得ようとすると、成形体に表面荒れが発生する問題があった。
【0008】
成形体に表面荒れが発生する問題を解消したPFAとして、低分子量化し、分子量分布を調整して得たPFAが知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、このPFAは、被覆成形に用いる場合には、被覆を高速化しようとすると薄肉成形性が悪くなるとともに被覆切れを起こし易くなるという問題があった。
【0009】
被覆成形を高速化した際に薄肉成形性が悪くなる等の問題を解消したPFAとして、更に低分子量化して、溶融粘度を低下させたPFAが検討されている。しかし、このPFAは、低分子量化により機械特性が低下する問題が生じる。
【特許文献1】特開平8−7672号公報
【特許文献2】特開平7−182930号公報
【特許文献3】特開平6−168627号公報
【特許文献4】特開2002−53620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、薄肉形成性に優れ、難燃性、耐熱性及び電気特性が良好な電線被覆材を形成し得るフッ素樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、直径が0.05〜0.07mmである芯線に、樹脂温320〜370℃、引き落とし率〔DDR〕80〜120、引き落としバランス〔DRB〕1.0、線速700フィート/分、被覆厚30〜50μmの条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないことを特徴とするフッ素樹脂である。
【0012】
本発明は、360℃における臨界剪断速度が200〜500sec−1であるフッ素樹脂であって、上記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及び/又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなることを特徴とするフッ素樹脂である。
【0013】
本発明は、372℃におけるメルトフローレートが60(g/10分)を越えるフッ素樹脂であって、上記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及び/又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなることを特徴とするフッ素樹脂である。
本発明は、芯線と、上記フッ素樹脂を上記芯線に被覆成形することにより得られる被覆材とからなる被覆電線である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のフッ素樹脂は、炭素原子に直接結合しているフッ素原子を有する溶融加工性含フッ素重合体からなるものである。
本明細書において、上記「溶融加工性含フッ素重合体」は、150〜350℃の融点を有し、融点より50℃高い温度における溶融粘度が10(パスカル・秒)以下であるものである。
【0015】
本発明のフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン系共重合体〔TFE系共重合体〕からなるものが好ましい。
上記TFE系共重合体は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕とTFE以外の共単量体とを共重合し得られた重合体である。上記TFE系共重合体の全単量体単位に占めるTFE以外の共単量体単位の割合は、下限を、例えば1モル%、上限を、例えば30モル%とすることができるが、TFE以外の共単量体が後述のPAVEである場合、下限は0.01モル%であってもよいし、TFE以外の共単量体がエチレンである場合、上限は例えば50モル%未満であってもよい。
本明細書において、上記「全単量体単位」は、重合体の分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。
上記「TFE以外の共単量体単位」は、TFE系共重合体の分子構造上TFE以外の共単量体に由来する部分である。上記TFE以外の共単量体単位は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕に由来するものである場合、−[CF−CF(CF)]−で表される。
【0016】
上記TFE以外の共単量体としては特に限定されず、例えば、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕等のパーハロモノマー;
エチレン〔Et〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、フッ化ビニル〔VF〕、ヘキサフルオロイソブテン、下記一般式(i):
CH=CX(CF (i)
(式中、Xは、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは、1〜10の整数を表す。)で表される水素含有モノマー等が挙げられ、これらのなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記PAVEとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)〔PBVE〕等が挙げられるが、なかでも、耐熱性に優れる点で、PPVEが好ましい。
【0018】
上記TFE系共重合体は、上記TFEとTFE以外の共単量体と、更に微量単量体とを重合したものであってもよい。上記微量単量体としては、例えば、TFE以外の共単量体として上述したもの等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記TFE系共重合体としては特に限定されず、例えば、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、Et/TFE共重合体、Et/TFE/HFP共重合体、TFE/VdF/HFP共重合体等が挙げられる。本明細書において、これら例示した共重合体のように単量体で表した共重合体は、微量単量体を慣例に従い表さないことがあるが、表記した単量体に加え微量単量体をも共重合し得られた重合体を排除するものではない。
【0020】
本発明のフッ素樹脂としては、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体及び/又はEt/TFE共重合体からなるものが好ましい。
上記「TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体及び/又はEt/TFE共重合体」としては、TFE/PAVE共重合体単独、TFE/HFP共重合体単独又はEt/TFE共重合体単独であってもよいし、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体及びEt/TFE共重合体よりなる群から選ばれる2種以上の共重合体の混合物であってもよい。
上記2種以上の共重合体の混合物は、2種以上の共重合体をドライブレンドすることにより製造することが一般的である。
本明細書において、上述した「2種以上の共重合体の混合物」は、被覆成形開始前に溶融混練し得られたものでない点で、後述するポリマーアロイとは区別される概念である。
【0021】
本発明のフッ素樹脂がTFE/PAVE共重合体からなるものである場合、上記TFE/PAVE共重合体の全単量体単位に占めるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の割合は、0.01モル%〜10モル%であることが好ましい。
上記「パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位」は、TFE系共重合体の分子構造上パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に由来する部分である。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の割合が少ないと、被覆電線の耐クラック性が低下しやすい。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の割合を増やすと、メルトフローレート〔MFR〕が上昇し、薄膜形成性を向上することができる一方、電気特性が低下しやすく、耐熱性が低下する傾向にある。より好ましい下限は、0.5モル%、更に好ましい下限は、1モル%、更により好ましい下限は、1.9モル%であり、特に好ましい下限は2.5モル%である。より好ましい上限は、4.5モル%、更に好ましい上限は、4モル%である。
【0022】
従来、TFE/PAVE共重合体において、PAVEの含有量を増加した場合、融点が低下して、耐熱性が低下する問題があると考えられていたが、本発明のフッ素樹脂は、PAVEの含有量が大きいTFE/PAVE共重合体からなるものであっても、機械特性がよく、難燃性に優れている。
【0023】
本発明のフッ素樹脂としては、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体及びEt/TFE共重合体よりなる群から選ばれる2種以上の共重合体を用いて得られるポリマーアロイからなるものであってもよい。
本明細書において、上記「ポリマーアロイ」は、2種類以上のポリマーを被覆成形開始前に溶融混練し得られたものである。上記ポリマーアロイは、ポリマー鎖レベルで完全に相溶したものであってもよいし、2種類以上のポリマーが化学結合したものであってもよいし、ポリマーマトリックス中に、このマトリックスを構成するポリマー以外のポリマーからなるドメインを形成したものであってもよい。上記ドメインの大きさは、ポリマーマトリックス30μmに対して、好ましくは、1μm以下、より好ましくは、100nm以下である。
【0024】
本発明のフッ素樹脂は、上述したポリマーアロイからなるものである場合、共重合体の組み合わせとしては、TFE/HFP共重合体とEt/TFE共重合体、TFE/HFP共重合体とTFE/PAVE共重合体、Et/TFE共重合体とTFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体とEt/TFE共重合体とTFE/PAVE共重合体が挙げられ、なかでも、TFE/HFP共重合体とTFE/PAVE共重合体とがより好ましい。
本発明のフッ素樹脂が上記TFE/HFP共重合体とTFE/PAVE共重合体とのポリマーアロイからなるものである場合、ハンダリフロー加工等の耐熱用途では、TFE/PAVE共重合体をベースとしてTFE/HFP共重合体を添加することが好ましく、上記ポリマーアロイの総質量に占めるTFE/HFP共重合体の割合は、3〜40質量%であることが好ましい。より好ましい下限は、5質量%、より好ましい上限は、25質量%である。
また、本発明のフッ素樹脂がTFE/PAVE共重合体とTFE/HFP共重合体とからなるポリマーアロイである場合、ポリマーアロイ全体を構成するTFE単位、PAVE単位及びHFP単位の合計を100モル%とすると、該ポリマーアロイ中のPAVE単位は該合計100モル%の0.1〜4モル%であることが好ましい。
本発明のフッ素樹脂は、上記ポリマーアロイのみからなるものであってもよいし、上述した2種以上の共重合体の混合物と上記ポリマーアロイとからなるものであってもよいし、上記2種以上の共重合体の混合物ではないという意味でのTFE/PAVE共重合体単独、TFE/HFP共重合体単独又はEt/TFE共重合体単独と上記ポリマーアロイとからなるものであってもよい。
【0025】
上記TFE系共重合体の重合には、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の従来公知の重合方法を用いることができるが、工業上、懸濁重合又は乳化重合を用いることが好ましい。
【0026】
本発明のフッ素樹脂は、更に、充填剤を含むものであってもよい。上記充填剤としては特に限定されず、例えば、酸化アンチモン、リン酸カルシウム等の難燃化剤;コークス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化スズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス、タルク、マイカ、雲母、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
本発明のフッ素樹脂は、上記難燃化剤を含むものであってもよいが、上記難燃化剤を添加しなくとも、元来、充分な難燃性を有しているものであり、難燃化剤の添加による引っ張り破断強度の低下、耐クラック性の低下、電気特性の低下等がないものとすることができる。
【0028】
本発明のフッ素樹脂は、比誘電率が1.8〜2.7であることが好ましい。より好ましい上限は2.6、更に好ましい上限は2.2である。
本発明のフッ素樹脂は、例えば、2.45GHzにおいて、誘電正接が60×10−4以下であることが好ましい。より好ましい上限は、10×10−4、更に好ましい上限は、5×10−4である。誘電正接の値は上記範囲内であれば、下限を例えば、0.5×10−4とすることができる。
上記比誘電率及び誘電正接は、空胴共振器振動法で測定し得られた値である。本発明のフッ素樹脂は、比誘電率及び誘電正接が上述の範囲となるように電気特性に優れたものとすることができる。
【0029】
本発明のフッ素樹脂は、電気特性の観点では、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子によって置換されたパーフルオロポリマーからなるものが好ましい。
本発明のフッ素樹脂がTFE/PAVE共重合体からなるものである場合、電気特性の観点では、比誘電率が2.2以下であり、かつ上記TFE/PAVE共重合体の全単量体単位に占めるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の割合が0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることが更に好ましい。
【0030】
本発明のフッ素樹脂は、上述したように難燃性が高く、酸素指数が、通常30を越える、好ましくは90以上であるものである。
上記酸素指数は、ASTM D 2863に準拠して測定した値である。
上記酸素指数は、通常25〜27以上であれば、例えば、被覆電線を構成する被覆材として使用する通常の条件下において、火災に一時的にさらされても、自己消火性により継続して燃焼することはない。
【0031】
本発明のフッ素樹脂は、360℃における臨界剪断速度が200(sec−1)以上とすることもできる。
上記臨界剪断速度は、上述の範囲内であれば上限を、例えば、500(sec−1)とすることができ、被覆成形に用いる際の高速被覆化、薄肉成形性に優れる点で、より好ましい下限は、220(sec−1)である。
【0032】
本発明のフッ素樹脂は、メルトフローレート〔MFR〕が48(g/10分)以上であることが好ましい。上記MFRは、より好ましい下限が50(g/10分)、更に好ましい下限が60(g/10分)を越え、更により好ましい下限が62(g/10分)、特に好ましい下限が63(g/10分)である。MFRが高くなると、被覆成形に用いる場合に被覆の高速化が可能となり、薄肉成形性に優れ、得られる被覆材の表面平滑性と耐クラック性の向上が可能となる。MFRは、上記範囲内であれば、上限を、例えば100(g/10分)とすることができるが、機械的強度の点で、85(g/10分)とすることが好ましく、81(g/10分)とすることがより好ましい。
上記MFRは、ASTM D−1238に準拠して、温度372℃、荷重5.0kgの条件下で測定し得られる値である。
本発明のフッ素樹脂は、上述のようにMFRが高いものであるとポリマー鎖末端における活性末端基の数も多いものであり、芯線との密着性が向上する点においては有利である。しかしながら、電気特性向上の観点では、活性末端基の数が多いことは望ましくないので、所望の電気特性を達成する程度にポリマー鎖末端にフッ素化処理を施したものであってもよい。上記フッ素化処理としては、例えば、フッ素ガスに曝露する、水存在下に加熱する等の従来公知の方法を用いることができる。
【0033】
本発明のフッ素樹脂は、分子量分布〔Mw/Mn〕が1〜2の範囲にあることが好ましい。分子量分布が上記範囲にあるものであると、被覆成形に用いる場合に、被覆表面の平滑性を向上することができる。上記分子量分布〔Mw/Mn〕のより好ましい上限は、1.8である。
上記Mw/Mnは、Polym.Eng.Sci.,29(1989),645(W.H.Tuminello)に記載の方法に従って、測定される値である。
上記Mw/Mnの測定温度は330℃で、データ処理方法及びパラメーターについては上記文献に記載の通りである。
【0034】
本発明のフッ素樹脂は、直径が0.05〜0.07mmである芯線に、樹脂温320〜370℃、線速700フィート/分、引き落とし率〔DDR〕80〜120、引き落としバランス〔DRB〕1.0、被覆厚30〜50μmの条件(以下、「特定被覆条件」ということがある。)下に被覆したときに被覆切れを起こさないものである。上記特定被覆条件で被覆切れを起こすと、芯線に被覆成形する際、芯線とこの芯線に樹脂を被覆成形することにより得られる被覆材とからなる被覆線が絶縁性の点で不充分となる。
【0035】
本明細書において、上記「被覆切れを起こさない」とは、得られた被覆線に対し、JIS C 3005に準拠して、直流スパークテスターで電圧6kVを0.15秒以上印加したとき(本明細書において、以下、「被覆切れ検出条件」ということがある。)の1000mあたりのスパーク数が0であることを意味する。本発明のフッ素樹脂は、上述の特定被覆条件下に被覆したときに上記被覆切れ検出条件において1200mあたりのスパーク数を0とすることができ、好ましくは1500mあたりのスパーク数を0とすることもできる。
【0036】
上記樹脂温は、本発明のシリンダー部先端における温度であり、スプリング式固定熱電対(東洋電熱社製)を差し込み、シリンダー内部の温度を測定し得られた値である。上記樹脂温は、高すぎると、得られる被覆線にクラックや泡が生じる場合があり、低すぎると、得られる被覆線は表面平滑性に劣る場合がある。上記樹脂温の好ましい下限は、330℃、より好ましい下限は、340℃、好ましい上限は、360℃、より好ましい上限は、355℃である。
【0037】
上記被覆厚は、本発明のフッ素樹脂を被覆成形により溶融押出被覆し20〜30℃の常温まで冷却したのち得られる被覆の厚みである。上記「被覆厚30〜50μm」は、上記被覆厚が30〜50μmとなるような条件で被覆することである。
本発明のフッ素樹脂は、上記被覆厚の上限を、好ましくは45μm、より好ましくは40μm、更に好ましくは35μmにした場合であっても、上述の特定被覆条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないものとすることができる。
上記被覆厚は、レーザーマイクロダイアミター(タキカワエンジニアリング社製)を用いて計測した被覆線の外径値から、予め計測しておいた芯線の外径値を差し引いて得られた値を2で割ることにより算出される値である。本発明のフッ素樹脂は、上述の特定被覆条件下に被覆するときであっても被覆切れを起こすことなく上記被覆厚のように薄肉成形を可能とするものである。
【0038】
上記DDRの値は、本発明のフッ素樹脂としてTFE/PAVE共重合体又はTFE/HFP共重合体を用いる場合、80〜120の範囲で選択され、好ましい下限は、96、好ましい上限は、104であり、100と設定することができる。また、上記DDRの値は、本発明のフッ素樹脂としてEt/TFE共重合体を用いる場合、30〜70の範囲で選択され、好ましい下限は、40、好ましい上限は、65であり、60と設定することができる。
本明細書において、上記「DDR」は、下記式
DDR=(D−D)/(d−d
(式中、Dは、ダイの開口径を表し、Dは、チップの外径を表し、dは、被覆線の外径を表し、dは芯線の外径を表す。)に基づいて算出し得られる値である。
【0039】
上記DRBとしては、0.9〜1.1が許容範囲であるが、1.1を越えた場合は被覆切れを起こし易く、また0.9未満では被覆材の断面として真円を得にくく、楕円形になり易い傾向にあり、通常、1.0が選択される。
本明細書において、上記「DRB」は、下記式
DRB=(D/d)/(D/d
(式中、D、D、d及びdは、上記と同じ。)に基づいて算出し得られる値である。
【0040】
本発明のフッ素樹脂は、上記芯線の直径が0.13mm以下であっても上述の特定被覆条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないものとすることができるが、好ましい直径は0.05〜0.11mmであり、直径の上限をより好ましくは0.08mm、更に好ましくは0.07mmとした場合であっても被覆切れを起こさないものとすることができる。上記芯線は、細径であるほど、表面の曲率が大きくなり、この芯線上に樹脂を被覆成形しようとしても、従来の樹脂では芯線への「のり」が悪く、被覆切れを起こす問題があった。しかしながら、本発明のフッ素樹脂は、芯線の直径が0.07mm以下であるような細径であっても、上述の特定被覆条件下に被覆切れを起こさないものである。
上記芯線の直径は、金尺にて測定し得られた値であってもよいし、American Wire Gauge〔AWG〕の規格による値であってもよい。
上記芯線としては、被覆切れを測定するため、電気伝導性を有する電線を用い、例えば、銅、アルミニウム、鋼等であってもよいが、好ましくは銅を用いる。上記芯線の直径が0.05〜0.13mmであることは、American Wire Gauge〔AWG〕では44〜36であることに相当し、0.11mmであることは、AWGでは37〜38であることに相当し、0.07mmであることは、AWGでは41〜42であることに相当する。
【0041】
本発明のフッ素樹脂は、直径が0.05mmである芯線に、樹脂温320℃、線速700フィート/分、DDR120、DRB1.0、被覆厚30μmの条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないものであることがより好ましい。
本発明のフッ素樹脂は、全単量体単位に占めるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位が6〜10モル%であるTFE/PAVE共重合体からなるものである場合、直径が0.05mmである芯線に、樹脂温320℃、線速700フィート/分、DDR120、DRB1.0、被覆厚30μmの条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないものであることが好ましく、全単量体単位に占めるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位が1.9〜4.5モル%であるTFE/PAVE共重合体からなるものである場合、直径が0.05mmである芯線に、樹脂温340℃、線速700フィート/分、DDR120、DRB1.0、被覆厚30μmの条件下に被覆したときに被覆切れを起こさないものであることが好ましい。
本発明のフッ素樹脂は、以上のように、上述の被覆条件下に被覆したときであっても被覆切れを起こさないものであるので、被覆線形成に好適であり、電気特性が優れる点で、特に電線被覆に好適である。
【0042】
360℃における臨界剪断速度が200(sec−1)以上であるフッ素樹脂であって、TFE/PAVE共重合体及び/又はTFE/HFP共重合体からなるフッ素樹脂を、以下「フッ素樹脂(A)」ということがある。
上記フッ素樹脂(A)について、上記臨界剪断速度は、上述の範囲内であれば上限を、例えば、500(sec−1)とすることができ、被覆成形に用いる際の高速被覆化、薄肉成形性に優れる点で、より好ましい下限は、220(sec−1)である。
本明細書において、上記臨界剪断速度は、キャピログラフ(BOHLIN INSTRUMENTS製)を用い、温度360℃において、特定の剪断応力下にて、直径1mm、長さ16mmのオレフィスから流出するフッ素樹脂にメルトフラクチャーが発生し始める状態になる際の剪断速度である。
上記メルトフラクチャーは、粘弾性体を細い孔やスリットから押し出す際に、剪断速度が大きすぎると、押出物の形が、らせん状、不定形状、断続形状、鮫肌状等になる現象であり、例えば、顕微鏡、拡大鏡等を用いて16倍に拡大して、発生の有無を確認することができる。
上記フッ素樹脂(A)は、372℃におけるMFRが60(g/10分)を越えるものとすることができる。
【0043】
372℃におけるMFRが60(g/10分)を越えるフッ素樹脂であって、TFE/PAVE共重合体及び/又はTFE/HFP共重合体からなるフッ素樹脂を、以下、「フッ素樹脂(B)」ということがある。
上記フッ素樹脂(B)は、MFRが上記範囲内のように極めて高いので、被覆成形に用いる際の高速被覆化、薄肉成形性に非常に優れ、得られる被覆材の表面平滑性と耐クラック性を更に向上することができる。
【0044】
上記フッ素樹脂(A)又はフッ素樹脂(B)を構成するTFE系共重合体としてのTFE/PAVE共重合体は、該TFE/PAVE共重合体の全単量体単位に占めるPAVE単位の割合が1.9〜4.5モル%であるものが好ましく、より好ましい下限は2モル%、更に好ましい下限は2.5モル%であり、より好ましい上限は4モル%であり、TFE/PAVE共重合体とTFE/HFP共重合体とからなるポリマーアロイである場合、ポリマーアロイ全体を構成するTFE単位、PAVE単位及びHFP単位の合計を100モル%とすると、該ポリマーアロイ中のPAVE単位は該合計100モル%の0.1〜4モル%であることが好ましい。
上記フッ素樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)は、TFE/PAVE共重合体からなるものである場合、PAVE単位の割合が比較的多いにもかかわらず、融解開始温度及び融点の低下がほとんど見られず、優れた耐熱性を示す。このように優れた耐熱性を示すのは、重合処方による影響とも考えられるが、明確な原因は分かっていない。
本明細書において、フッ素樹脂(A)又はフッ素樹脂(B)を構成するTFE/PAVE共重合体は、TFEとPAVEとのみからなるものであってもよいし、TFEとPAVEと、更にTFE及びPAVEと共重合可能な微量単量体とからなる共重合体であってもよい。
【0045】
本明細書において、フッ素樹脂(A)又はフッ素樹脂(B)を構成するTFE系共重合体のうち、TFE/HFP共重合体は、TFEとHFPとのみからなるものであってもよいし、TFEとHFPと、更にTFE及びHFPと共重合可能な微量単量体とからなる共重合体であってもよい。
【0046】
上記フッ素樹脂(A)若しくはフッ素樹脂(B)を構成するTFE系共重合体としてのTFE/PAVE共重合体又はTFE/HFP共重合体における微量単量体は、該TFE系共重合体の全単量体単位の0.1〜1.5モル%であることが好ましい。
【0047】
本明細書において、TFEとHFPとPAVEとからなるTFE系共重合体は、該TFE系共重合体の全単量体単位に占めるHFP単位の割合とPAVE単位の割合とを比較し、HFP単位の割合がPAVE単位の割合よりも多いものをTFE/HFP共重合体、PAVE単位の割合がHFP単位の割合よりも多いものをTFE/PAVE共重合体という。
【0048】
上記フッ素樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)の372℃におけるMFRは、より好ましい下限が63(g/10分)である。
上記フッ素樹脂(A)及び上記フッ素樹脂(B)の372℃におけるMFRは、上述の範囲内であれば、上限を、例えば100(g/10分)とすることができるが、機械的強度の点で、85(g/10分)とすることが好ましく、81(g/10分)とすることがより好ましい。
【0049】
上記フッ素樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)は、何れも被覆高速化及び薄肉性形成に優れているので、一般に、上記被覆切れ検出条件において被覆切れを起こさず、また上述の範囲と同じ電気特性及び難燃性を示す。
【0050】
上記フッ素樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)を構成するTFE系共重合体としてはTFE/PAVE共重合体が好ましく、TFE/PAVE共重合体の場合、MFRが上述の範囲のように高いにもかかわらず、優れた機械特性を示し、更に該TFE/PAVE共重合体の全単量体単位に占めるPAVE単位の割合が2.5モル%〜4モル%である場合、より優れた機械特性を示し、例えば、MIT折り曲げ寿命が4000回以上にすることもできる。
上記MIT折り曲げ寿命は、フッ素樹脂を用いて作製したフィルム(厚さ220μm×幅13mm)について、折り曲げ試験機(安田精機社製)を用い、ASTM D−2176に準じて測定したものである。
【0051】
本明細書において、(A)又は(B)を付すことなく単に「フッ素樹脂」というときは、上述のフッ素樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)に加え、本発明のフッ素樹脂全てを含み得る概念である。
本発明のフッ素樹脂は、電線被覆用フッ素樹脂であることが好ましい。
【0052】
本発明の被覆電線は、芯線と、本発明のフッ素樹脂を上記芯線に被覆成形することにより得られる被覆材とからなるものである。
本発明の被覆電線は、本発明のフッ素樹脂を被覆材として被覆したものであるので、ハンダリフロー加工に耐え得る耐熱性を有するものとすることができる。
【0053】
本発明の被覆電線は、上述のように被覆材として本発明のフッ素樹脂を用いることにより、芯線が直径0.13mm以下と細径であっても容易に被覆することができる。芯線の直径は、好ましい上限が、0.08mm、より好ましい上限が、0.07mmである。なお、本発明の被覆電線は、芯線の直径が0.02mm以上であることが好ましい。
上記芯線の材質としては、銅、アルミニウム、鋼等が挙げられ、被覆材との密着性の点から、銅であることが好ましい。
【0054】
上記被覆材は、厚みが10μm〜60μmであることが好ましい。より好ましい下限は、15μm、更に好ましい下限は、20μm、より好ましい上限は、55μm、更に好ましい上限は、50μmである。
上記被覆材の厚みは、被覆後、20〜30℃の常温まで冷却した後の値である。
本発明の被覆電線は、被覆材の厚みを上述の範囲のように薄肉化することができ、耐クラック性を向上することができる。
上記被覆材の厚みは、特定被覆条件について上述した被覆厚と同様、レーザーマイクロダイアミター(タキカワエンジニアリング社製)を用いて測定した被覆電線の外径から、予め測定しておいた芯線外径を差し引いた値を2で割り得られた値である。
【0055】
本発明の被覆電線は、同軸ケーブルとして好適に用いられる。同軸ケーブルとしては、細径の同軸ケーブルも可能であり、例えば、携帯電話等のモバイル機器の小型化にも対応することができる。上記携帯電話は、折り畳み式の折り畳み部分に構造上の制約があり、強度を向上するために厚膜化を要する反面、細線化をも要するので、本発明の被覆電線を好適に用いることができる。
本発明の被覆電線は、また、医療用のビデオマイクロスコープの送影線にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明のフッ素樹脂は、上述の構成よりなるので、薄肉形成性に優れ、難燃性、耐熱性及び電気特性が良好な電線被覆材を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
合成例1 フッ素樹脂F−1の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]0.95kg、メタノール4.5kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.065kg追加して28時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−1を得た。
【0058】
合成例2 フッ素樹脂F−2の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとPPVE1.98kg、メタノール4.0kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.117kg追加して28時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−2を得た。
【0059】
合成例3 フッ素樹脂F−3の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水43Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕を43kgとPPVEを0.42kg、メタノールを0.45kg仕込み、系内の温度を25.5℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.83MPaまで圧入した後、重合開始剤(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液1.8kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続して供給し、系内圧力を0.83MPaに保った。重合の途中に重合開始後6時間経過までは(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液を2時間毎に0.15kg追加し、その後重合終了までは2.5時間毎に0.13kg追加した。また、メタノールは重合開始後1.5時間後に0.45kg追加し、10時間毎に0.45kg追加した。PPVEは、8時間ごとに0.12kg、合計0.36kg追加し、35時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して50kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−3を得た。
【0060】
合成例4 フッ素樹脂F−4の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水43Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、HFPを43kgとメタノールを0.55kg仕込み、系内の温度を25.5℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.83MPaまで圧入した後、重合開始剤(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液0.54kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続して供給し、系内圧力を0.83MPaに保った。重合の途中に重合開始後6時間経過までは(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液を2時間毎に0.10kg追加し、その後重合終了までは2.5時間毎に0.08kg追加した。また、メタノールは重合開始後1.5時間後に0.55kg追加し、10時間毎に0.55kg追加し、37時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して55kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−4を得た。
【0061】
合成例5 フッ素樹脂F−5の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水43Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、HFPを43kgとメタノールを0.24kg仕込み、系内の温度を25.5℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.83MPaまで圧入した後、重合開始剤(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液0.54kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続して供給し、系内圧力を0.83MPaに保った。重合の途中に重合開始後6時間経過までは(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液を2時間毎に0.10kg追加し、その後重合終了までは2.5時間毎に0.08kg追加した。また、メタノールは重合開始後1.5時間後に0.24kg追加し、10時間毎に0.24kg追加し、37時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して55kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−5を得た。
【0062】
合成例6 フッ素樹脂F−6の合成
合成例1の粉末14kgと合成例5の粉末1.1kgとをヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドし、表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−6を得た。
【0063】
合成例7 フッ素樹脂F−7の合成
合成例1の粉末14kgと合成例5の粉末2.9kgとをヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドし、表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−7を得た。
【0064】
合成例8 フッ素樹脂F−8の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水47Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン33.9kgとHFP5.5kgとPPVE 0.91kg、メタノール5.0kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.75MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.18kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.026kg追加して28時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−8を得た。
【0065】
合成例9 フッ素樹脂F−9の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水27Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとPPVE 1.4kg、メタノール1.0kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.03kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.065kg追加して28時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−9を得た。
【0066】
合成例10 フッ素樹脂F−10の合成
合成例4の粉末14kgと合成例9の粉末1.6kgとをヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドし、表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−10を得た。
【0067】
合成例11 フッ素樹脂F−11の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水51Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン32kgとシクロヘキサン0.25kg、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH=CFCFCFCFH)[H2P]0.34kgとを仕込み系内の温度を20℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレンを0.67MPaまで圧入し、さらにエチレン[Et]を0.86MPaまで圧入した。次いで、系内の温度を35℃まで昇温し、系内の圧力を1.2MPaまで昇圧した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.18kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEとEtの組成がモル比で55:45であるガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保ち、45時間継続した。放圧して大気圧に戻した後、水を取り除いた。次いで、蒸留水51Lを投入し、28質量%アンモニア水溶液を0.61kg仕込み、系内の温度を80℃、攪拌速度を200rpmに保って3時間継続した。放圧して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して25kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−11を得た。
【0068】
合成例12 フッ素樹脂F−12の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]1.42kg、メタノール3.0kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.072kg追加して26時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−12を得た。
【0069】
合成例13 フッ素樹脂F−13の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]1.42kg、メタノール3.2kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.072kg追加して25時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−13を得た。
【0070】
合成例14 フッ素樹脂F−14の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]1.42kg、メタノール3.6kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.072kg追加して26時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−14を得た。
【0071】
合成例15 フッ素樹脂F−15の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]1.60kg、メタノール3.6kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.080kg追加して26時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−15を得た。
【0072】
合成例16 フッ素樹脂F−16の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]0.84kg、メタノール4.6kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.052kg追加して23時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−16を得た。
【0073】
合成例17 フッ素樹脂F−17の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水34Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(CF=CFOCFCFCF)[PPVE]0.84kg、メタノール3.5kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン[TFE]を0.6MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.06kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEは一時間毎に0.052kg追加して23時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−17を得た。
【0074】
合成例18 フッ素樹脂F−18の合成
174L容積のオートクレーブに蒸留水43Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕を43kgとPPVEを1.15kg、メタノールを0.85kg仕込み、系内の温度を25.5℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、TFEを0.83MPaまで圧入した後、重合開始剤(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液1.8kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続して供給し、系内圧力を0.83MPaに保った。重合の途中に重合開始後6時間経過までは(H(CFCFCOO)の8質量%パーフルオロシクロヘキサン溶液を2時間毎に0.15kg追加し、その後重合終了までは2.5時間毎に0.13kg追加した。また、メタノールは重合開始後1.5時間後に0.85kg追加し、10時間毎に0.85kg追加した。PPVEは、8時間ごとに0.25kg、合計0.75kg追加し、35時間重合を継続した。放出して大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して50kgの粉末を得た。
この粉末を表1に示した溶融混練条件とペレット加熱条件により、ペレット状のフッ素樹脂F−18を得た。
【0075】
【表1】

【0076】
但し、表1中、C1、C2、C3及びC4は、シリンダーの4つの温度測定箇所を示す。上記温度測定箇所は、各々等間隔に離れており、C1からC4に向かうにつれ射出孔に近くなる。表1中、ADはアダプターの温度であり、Dはダイの温度を表す。
【0077】
合成例で得られたフッ素樹脂について以下のような物性評価を行った。
(1)フッ素樹脂の組成の測定
19F−NMR分析により測定した。
(2)融点(Tm)の測定
セイコー型示差走査熱量計[DSC]を用い、10℃/分の速度で昇温した時の融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点(Tm)とした。
(3)フッ素樹脂のメルトフローレート〔MFR〕の測定
メルトインデクサー(東洋精機製作所製)を用い、各測定温度において、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)あたりに流出するポリマーの質量(g)を測定した。
結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【実施例1】
【0079】
合成例1で作成したフッ素樹脂F−1を、銅線(0.07mmφ)を芯材として表3に示す成形条件で被覆成形を行った。
比誘電率、誘電正接及び酸素指数を以下の方法にて測定した。測定結果は表4に示した。
(4)フッ素樹脂の比誘電率及び誘電正接の測定
空胴共振器振動法(関東電子応用開発社製)にて測定した。なお、測定周波数は、2.45GHzで、サンプル形状は、1.8mm×1.8mm×130mmの角棒にて測定した。
(5)酸素指数
ASTM D−2863に準拠して測定した。
【実施例2】
【0080】
合成例2で作成したフッ素樹脂F−2を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例3】
【0081】
合成例3で作成したフッ素樹脂F−3を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例4】
【0082】
合成例4で作成したフッ素樹脂F−4を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例5】
【0083】
合成例6で作成したフッ素樹脂F−6を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例6】
【0084】
合成例7で作成したフッ素樹脂F−7を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例7】
【0085】
合成例8で作成したフッ素樹脂F−8を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例8】
【0086】
合成例10で作成したフッ素樹脂F−10を用いて、実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例9】
【0087】
合成例11で作成したフッ素樹脂F−11を用いて、押出速度を3.5(g/分)に変えた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例10】
【0088】
合成例12で作成したフッ素樹脂F−12を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例11】
【0089】
合成例13で作成したフッ素樹脂F−13を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例12】
【0090】
合成例14で作成したフッ素樹脂F−14を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例13】
【0091】
合成例15で作成したフッ素樹脂F−15を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例14】
【0092】
合成例16で作成したフッ素樹脂F−16を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例15】
【0093】
合成例17で作成したフッ素樹脂F−17を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【実施例16】
【0094】
合成例18で作成したフッ素樹脂F−18を用いた以外は実施例1と同じ押出条件下に被覆材を製造し、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【0095】
比較例1
低密度ポリエチレン(ミラソン3530、密度:0.925g/cm、MFR:0.25(g/10分)、三井デュポンポリケミカル社製)50質量%、水酸化マグネシウム50質量%で配合・混合し、表3に示す温度及び押出条件で被覆成形を行った。ついで、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【0096】
比較例2
高密度ポリエチレン(ハイゼックス7500M、密度:0.957g/cm、MFR:0.03(g/10分)、三井住友ポリオレフィン社製)50質量%、水酸化マグネシウム50質量%で配合・混合し、表3に示す温度及び押出条件で被覆成形を行った。ついで、実施例1と同様の評価方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
但し、表3中、C1、C2、C3、C4及びC5は、シリンダーの5つの温度測定箇所を示す。上記温度測定箇所は、各々等間隔に離れており、C1からC5に向かうにつれ射出孔に近くなる。表3中、ADはアダプターの温度であり、Dはダイの温度を表す。
【0099】
【表4】

【0100】
表4から、実施例1〜16にて作成した被覆材は、比較例1〜2にて作成した被覆材に比べて、比誘電率及び誘電正接が低いことがわかった。中でも、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、TFE/HFP/PPVE共重合体、又は、TFE/PAVE共重合体とTFE/HFP共重合体とからなるポリマーアロイからなるフッ素樹脂である実施例1〜8及び10〜16にて作成した被覆材は、特に比誘電率及び誘電正接が低く、更に、酸素指数が高いことから難燃性にも優れていることが分かった。
【0101】
実施例17〜24
表5に示したフッ素樹脂について、MFRを上述の(3)の方法にて測定し、臨界剪断速度及びMITを以下の評価方法にて測定した。
(6)フッ素樹脂の臨界剪断速度の測定
キャピログラフ(BOHLIN INSTRUMENTS製)を用い、360℃において、剪断応力下で直径1mm、長さ16mmのオレフィスから流出するフッ素樹脂にメルトフラクチャーが発生し始める状態になった際の剪断速度(sec−1)を測定した。なお、ポリマー表面のメルトフラクチャーの観察は、顕微鏡にて16倍に拡大して観察した。
(7)MIT折り曲げ寿命の測定
折り曲げ試験機(安田精機製)を用い、ASTM D−2176に準じて、荷重1.25kg、折り曲げ角度±135°、室温にて測定した。なお、測定試料として、フッ素樹脂を厚さ220μmのフィルムに成形し、幅13mmの短冊状に打ち抜いたものを使用した。
結果を表5に示す。
【0102】
【表5】

【0103】
実施例17及び19と実施例23とを比較したところ、MFRは同等であるが、PPVE単位が1.9モル%以上のTFE/PAVE共重合体はMIT値に優れることが分かった。
特にPPVE単位が2.5モル%以上のTFE/PAVE共重合体は更にMIT値に優れることが分かった。実施例17と実施例24とを比較したところ、MFRが高いにも関わらず、PPVE単位が1.9モル%以上のTFE/PAVE共重合体はMIT値を維持していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のフッ素樹脂は、例えば、高い電気絶縁性と薄肉形成性を要する細径電線の被覆材として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が0.05〜0.07mmである芯線に、樹脂温320〜370℃、引き落とし率〔DDR〕80〜120、引き落としバランス〔DRB〕1.0、線速700フィート/分、被覆厚30〜50μmの条件下に被覆したときに被覆切れを起こさない
ことを特徴とするフッ素樹脂。
【請求項2】
フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び/若しくはエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、並びに/又は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体よりなる群から選ばれる2種以上の共重合体を用いて得られるポリマーアロイからなる請求項1記載のフッ素樹脂。
【請求項3】
360℃における臨界剪断速度が200〜500sec−1であるフッ素樹脂であって、
前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及び/又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる
ことを特徴とするフッ素樹脂。
【請求項4】
372℃におけるメルトフローレートが60(g/10分)を越える請求項3記載のフッ素樹脂。
【請求項5】
372℃におけるメルトフローレートが60(g/10分)を越えるフッ素樹脂であって、
前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及び/又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる
ことを特徴とするフッ素樹脂。
【請求項6】
テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体は、全単量体単位に占めるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位が1.9〜4.5モル%である請求項2、3、4又は5記載のフッ素樹脂。
【請求項7】
電線被覆用フッ素樹脂である請求項1、2、3、4、5又は6記載のフッ素樹脂。
【請求項8】
芯線と、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のフッ素樹脂を前記芯線に被覆成形することにより得られる被覆材とからなる
ことを特徴とする被覆電線。
【請求項9】
芯線は、直径が0.02〜0.13mmである請求項8記載の被覆電線。
【請求項10】
被覆材は、厚みが10〜60μmである請求項8又は9記載の被覆電線。

【国際公開番号】WO2005/052015
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515792(P2005−515792)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017492
【国際出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】