説明

フッ素系溶剤スチーム洗浄方法

【課題】乾燥に用いられるフッ素系溶剤の消費量を低減させたフッ素系溶剤スチーム洗浄方法を提供する。
【解決手段】被洗浄物10を保持した被洗浄物治具11は、洗浄槽内20の超音波手段22により超音波が加えられたフッ素系溶剤中に浸漬されて洗浄され、洗浄後、フッ素系溶剤中から引き上げられ、引き上げられた被洗浄物治具11に、過加熱蒸気供給手段30により発生した過加熱のフッ素蒸気が噴射されて被洗浄物10が乾燥され、余剰の過加熱のフッ素蒸気は、チルド手段40により凝縮されて回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系溶剤により洗浄及び乾燥を行なうスチーム洗浄に係り、詳しくは、フッ素系溶剤の消費量を低減させたフッ素系溶剤スチーム洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来におけるフッ素系溶剤スチーム洗浄装置の構成を示す装置構成図である。図2において、フッ素系溶剤スチーム洗浄装置は、被洗浄物治具11と、洗浄槽20と、蒸気発生手段50と、チルド手段40とを有している。被洗浄物治具11は、被洗浄物10を保持し、被洗浄物10の洗浄及び乾燥に供する。洗浄槽20は、フッ素系溶剤21を蓄え、底部にはフッ素系溶剤21に超音波を加える超音波手段22を具備している。
【0003】
蒸気発生手段50は、フッ素系溶剤21を蓄え、底部にはフッ素系溶剤21を加熱するヒータ51を具備する。また蒸気発生手段50は、ヒータ51に加熱されて生成されるフッ素系溶剤21の蒸気を、被洗浄物10を保持した被洗浄物治具11に向けて誘導する蒸気誘導ガイド52を具備している。チルド手段40は、フッ素系溶剤21の蒸気を凝結させる冷却パイプ41と凝結したフッ素系溶剤21を回収する回収槽42とを具備している。
【0004】
再び図2において、被洗浄物10を保持した被洗浄物治具11は、洗浄槽20のフッ素系溶剤21に浸漬されて洗浄される。洗浄中、フッ素系溶剤21は、超音波手段22により超音波が加えられ、洗浄効果を高めている。洗浄が終了すると、被洗浄物治具11は、フッ素系溶剤21中から引き上げられ、蒸気発生手段50の蒸気誘導ガイド52から吹き出てくるフッ素系溶剤21の蒸気により乾燥される。余剰の蒸気は、チルド手段40の冷却パイプ41に触れて凝結し、凝結したフッ素系溶剤21は、回収槽42に回収される。
【0005】
この一連の洗浄と乾燥工程において、蒸気発生手段50のヒータ51は、フッ素系溶剤21を加熱して蒸気が発生するまでの応答時間が長いため、洗浄工程においても連続運転により蒸気を発生し続けている。この蒸気は、蒸気誘導ガイド52により洗浄槽20の上部に誘導され、さらにチルド手段40により凝縮されて回収されるが、この場合は被洗浄物治具11が所定の場所にないため、冷却パイプ41の中央部から多くの蒸気が回収されない状態で、無駄に装置外に放出されていた。蒸気発生手段50により発生される蒸気は、過加熱状態にないため、被洗浄物によっては、表面の凝縮量に差が生じ、洗浄ムラが発生する問題があった。
【0006】
特許文献1には、洗浄液を加熱することにより、100℃より高い温度と、飽和蒸気圧より低い蒸気圧とを持つ不飽和蒸気を発生させ、この不飽和蒸気を、処理室内においてノズルから低温のワークに向けて噴射することにより、この不飽和蒸気の一部をワーク表面に凝縮させて該ワークをウエット処理すると共に、この不飽和蒸気の熱でワークを過熱しかつ凝縮した洗浄液を蒸発させて該ワークを乾燥させる、旨の記載がある。
【特許文献1】特開2002−252199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、乾燥に用いられるフッ素系溶剤の消費量を低減させたフッ素系溶剤スチーム洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法は、フッ素系溶剤による洗浄及び乾燥を行なうフッ素系溶剤スチーム洗浄方法において、被洗浄物を保持する被洗浄物治具と、超音波手段とフッ素系溶剤とを具備する洗浄槽と、過加熱のフッ素蒸気を発生し、被洗浄物に噴射する過加熱蒸気供給手段と、過加熱のフッ素蒸気を凝縮して回収するチルド手段とを有し、被洗浄物を保持した被洗浄物治具は、洗浄槽内の超音波手段により超音波が加えられたフッ素系溶剤中に浸漬されて洗浄され、洗浄後、フッ素系溶剤中から引き上げられ、引き上げられた被洗浄物治具に、過加熱蒸気供給手段により発生した過加熱のフッ素蒸気が噴射されて被洗浄物が乾燥され、余剰の過加熱のフッ素蒸気は、チルド手段により凝縮されて回収されることを特徴とする。
【0009】
本発明のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法の過加熱のフッ素蒸気の過加熱温度は、60℃〜80℃であることを特徴とする。
【0010】
本発明のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法の過加熱蒸気供給手段は、被洗浄物が洗浄中は動作せず、被洗浄物が引き上げられて乾燥処理されるときのみ動作し、被洗浄物に過加熱のフッ素蒸気を噴射して乾燥させることを特徴とする。
【0011】
本発明のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法の過加熱蒸気供給手段は、蒸気加熱器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乾燥時においてのみフッ素液の過加熱のフッ素蒸気を発生させるため、乾燥に用いられるフッ素液の消費量を低減させることができ、且つ洗浄ムラが発生しないフッ素系溶剤スチーム洗浄方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明によるフッ素系溶剤スチーム洗浄方法の実施のための装置構成例を示す構成図である。図1において、フッ素系溶剤スチーム洗浄方法100は、図2における蒸気発生手段50に代わり過加熱蒸気供給手段30を有している。他の同様の装置構成要素については説明を省略する。図1において、過加熱蒸気供給手段30は、フッ素液を加熱する蒸気加熱器31と、フッ素液を貯蔵するフッ素液槽32と、被洗浄物10を保持した被洗浄物治具11に向けて過加熱のフッ素蒸気を噴射する噴射ノズル33とを具備している。
【0014】
再び図1において、被洗浄物10を保持した被洗浄物治具11は、洗浄槽20のフッ素系溶剤21に浸漬されて洗浄される。洗浄中、フッ素系溶剤21は、超音波手段22により超音波が加えられ、洗浄効果を高めている。洗浄が終了すると、被洗浄物治具11は、フッ素系溶剤21中から引き上げられ、過加熱蒸気供給手段30の噴射ノズル33から噴射される過加熱のフッ素蒸気により乾燥される。余剰のフッ素蒸気は、チルド手段40の冷却パイプ41に触れて凝結し、凝結したフッ素系溶剤21は、回収槽42に回収される。
【0015】
この洗浄及び乾燥工程において、過加熱蒸気供給手段30の蒸気加熱器31は、フッ素液槽32から供給されたフッ素液を直ちに過加熱のフッ素蒸気とし、噴射ノズル33を介して被洗浄物治具11に向けて噴射することができるため、乾燥工程においてのみ動作することが可能となる。このため、被洗浄物治具11の被洗浄物10を乾燥させた余剰蒸気は、効率よくチルド手段40により凝縮されて回収されるため、無駄に装置外に放出されることが無くなる。
【0016】
また洗浄槽20において超音波洗浄された被洗浄物10は、常温での洗浄であるため、乾燥工程における過加熱のフッ素蒸気を被洗浄物10の表面に瞬時に凝結させる。ところが被洗浄物10は、このフッ素蒸気の過加熱温度(60℃〜80℃)により直ちに温度上昇し、凝結して付着したフッ素液を再びフッ素蒸気に換えて蒸発させ、表面が乾燥するため、洗浄ムラの発生が防止される。蒸発したフッ素蒸気は、チルド手段40により凝縮されて回収される。
【0017】
以上説明したように本発明によれば、乾燥時においてのみフッ素液の過加熱のフッ素蒸気を発生させるため、乾燥に用いられるフッ素液の消費量を低減させることができ、且つ洗浄ムラが発生しないフッ素系溶剤スチーム洗浄方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるフッ素系溶剤スチーム洗浄方法の装置を示す装置構成図。
【図2】従来におけるフッ素系溶剤スチーム洗浄装置の構成を示す装置構成図。
【符号の説明】
【0019】
10 被洗浄物
11 被洗浄物治具
20 洗浄槽
21 フッ素系溶剤
22 超音波手段
30 過加熱蒸気供給手段
31 蒸気加熱器
32 フッ素液槽
33 噴射ノズル
40 チルド手段
41 冷却パイプ
42 回収槽
50 蒸気発生手段
51 ヒータ
52 蒸気誘導ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系溶剤による洗浄及び乾燥を行なうフッ素系溶剤スチーム洗浄方法において、
被洗浄物を保持する被洗浄物治具と、
超音波手段とフッ素系溶剤とを具備する洗浄槽と、
過加熱のフッ素蒸気を発生し、前記被洗浄物に噴射する過加熱蒸気供給手段と、
前記過加熱のフッ素蒸気を凝縮して回収するチルド手段とを有し、
前記被洗浄物を保持した前記被洗浄物治具は、前記洗浄槽内の前記超音波手段により超音波が加えられた前記フッ素系溶剤中に浸漬されて洗浄され、前記洗浄後、前記フッ素系溶剤中から引き上げられ、引き上げられた前記被洗浄物治具に、前記過加熱蒸気供給手段により発生した前記過加熱のフッ素蒸気が噴射されて前記被洗浄物が乾燥され、余剰の前記過加熱のフッ素蒸気は、前記チルド手段により凝縮されて回収されることを特徴とするフッ素系溶剤スチーム洗浄方法。
【請求項2】
前記過加熱のフッ素蒸気の過加熱温度は、60℃〜80℃であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法。
【請求項3】
前記過加熱蒸気供給手段は、前記被洗浄物が洗浄中は動作せず、前記被洗浄物が引き上げられて乾燥処理されるときのみ動作し、前記被洗浄物に前記過加熱のフッ素蒸気を噴射して乾燥させることを特徴とする請求項1に記載のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法。
【請求項4】
前記過加熱蒸気供給手段は、蒸気加熱器を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のフッ素系溶剤スチーム洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36175(P2010−36175A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205873(P2008−205873)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】